説明

レーザ加工装置、及び、レーザ加工方法

【課題】 少ない加工時間で加工を行う。
【解決手段】 パルスレーザビームを出射する加工用レーザ光源と、加工用レーザ光源を出射するパルスレーザビームに対する加工性が相対的に高い第1の材料と、加工性が相対的に低い第2の材料とが混合されて含まれる加工対象物であって、加工対象物の加工位置により、第1の材料と第2の材料の含有比率が異なる加工対象物を保持するステージと、加工用レーザ光源を出射したパルスレーザビームを、ステージに保持された加工対象物に伝搬する伝搬光学系と、第1の材料と第2の材料の含有比率に応じて、加工用レーザ光源から加工対象物の加工位置に投入する、単位面積当たりのトータルエネルギを制御する制御装置とを有するレーザ加工装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物にレーザビームを照射して加工を行うレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、穴開け加工の対象となるプリント基板の絶縁層は、樹脂とガラス繊維が混合されているものが主流となっている。そして、ガラス繊維の疎密により、加工に必要なレーザビームのエネルギ密度の最適値は異なる。
【0003】
そのような事情もあり、カメラで加工位置を撮影したり、加工対象物に入射するレーザビームの反射光の強度を計測することによって、レーザ加工のモニタリングを行う手法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。これらの手法を用い、加工対象部位の加工が終了したか否か、たとえば導電層上に絶縁層が積層されたプリント基板の絶縁層に貫通孔を形成する穴開け加工において、絶縁層に貫通孔が形成され、導電層が露出したか否かの判断を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−342484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、少ない加工時間で加工を行うことのできるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することである。
【0006】
また、良質の加工を実現できるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、パルスレーザビームを出射する加工用レーザ光源と、前記加工用レーザ光源を出射するパルスレーザビームに対する加工性が相対的に高い第1の材料と、加工性が相対的に低い第2の材料とが混合されて含まれる加工対象物であって、該加工対象物の加工位置により、前記第1の材料と前記第2の材料の含有比率が異なる加工対象物を保持するステージと、前記加工用レーザ光源を出射したパルスレーザビームを、前記ステージに保持された加工対象物に伝搬する伝搬光学系と、前記第1の材料と前記第2の材料の含有比率に応じて、前記加工用レーザ光源から前記加工対象物の加工位置に投入する、単位面積当たりのトータルエネルギを制御する制御装置とを有するレーザ加工装置が提供される。
【0008】
また、本発明の他の観点によると、(a)加工用レーザ光源を出射するパルスレーザビームに対する加工性が相対的に高い第1の材料と、加工性が相対的に低い第2の材料とが混合されて含まれる加工対象物であって、該加工対象物の加工位置により、前記第1の材料と前記第2の材料の含有比率が異なる加工対象物に、前記加工用レーザ光源を出射したパルスレーザビームを入射させる工程と、(b)前記第1の材料と前記第2の材料の含有比率に応じて、前記加工用レーザ光源から前記加工対象物の加工位置に投入する、単位面積当たりのトータルエネルギを制御する工程とを有するレーザ加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少ない加工時間で加工を行うことが可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することができる。
【0010】
また、良質の加工を実現可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1Aは、第1の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図であり、図1Bは、プリント基板50の概略的な断面図であり、図1Cは、ガルバノスキャナ13の走査範囲と参照用レーザビーム15aの通過範囲との関係を示す概略的な平面図である。
【図2】図2Aは、エポキシ樹脂とガラスの光吸収率の波長依存性を示す概略的なグラフであり、図2B〜図2Dは、参照用レーザビーム15aの光強度の波長依存性を示す概略的なグラフである。
【図3】図3は、第2の実施例によるレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【図4】図4は、第3の実施例によるレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【図5】図5は、第4の実施例によるレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【図6】図6Aは、第5の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図であり、図6Bは、ラインセンサ17及び分光器18の配設位置を示す概略的な平面図である。
【図7】図7は、ヒュームの発光強度の波長依存性を示す概略的なグラフである。
【図8】図8は、第6の実施例によるレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【図9】図9は、第7の実施例によるレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【図10】図10は、第8の実施例によるレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1Aは、第1の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。第1の実施例によるレーザ加工装置は、加工用レーザ光源10、ビーム整形器11、折り返しミラー12、ガルバノスキャナ13、fθレンズ14、参照用レーザ光源15、フィルタ16、ラインセンサ17、XYステージ20、制御装置30、及び、記憶装置31を含んで構成される。XYステージ20上には、加工対象物であるプリント基板50が載置されている。XYステージ20は、プリント基板20を保持し、XY平面(水平面)内で移動させることができる。
【0013】
加工用レーザ光源10は、たとえば炭酸ガスレーザ発振器を含み、パルスレーザビームである加工用レーザビーム10aを出射する。加工用レーザビーム10aは、ビーム整形器11でビームの断面形状を整形され、折り返しミラー12で反射された後、ガルバノスキャナ13、fθレンズ14を経由して、XYステージ20上に保持されたプリント基板50に入射する。ガルバノスキャナ13は2枚の揺動ミラーを含み、加工用レーザビーム10aの出射方向を変化させ、プリント基板50上における入射位置を移動させることができるビーム走査器である。加工用レーザビーム10aは、鉛直方向下向き(Z軸負方向)にプリント基板50に入射する。
【0014】
図1Bに、プリント基板50の概略的な断面図を示す。プリント基板50は、たとえば銅で形成される導電層(金属層)51上に絶縁層52が積層され、更にその上に、たとえば銅で形成される導電層(金属層)53が積層される構造を有する。加工用レーザビーム10aは、鉛直上方からプリント基板50の導電層53側に入射する。複数ショットの加工用レーザビーム10aの照射により、導電層53及び絶縁層52を貫通し、導電層51表面を底面とする貫通孔が形成される。加工用レーザビーム10aがプリント基板50の絶縁層52に入射するとき、入射位置からヒューム(絶縁層52が分解した気体状生成物)が発生する。
【0015】
絶縁層52は、たとえばFR−4(flame retardant type 4)であり、エポキシ樹脂とガラス繊維とが混合され、練り込まれた、エポキシ樹脂とガラスの複合材料層である。エポキシ樹脂は、加工用レーザビーム10aに対する加工性(除去性)が相対的に高く(加工されやすく)、ガラス繊維は、加工用レーザビーム10aに対する加工性が相対的に低い(加工されにくい)。絶縁層52の面内方向におけるガラス繊維の疎密に起因して、プリント基板50(絶縁層52)上の位置により、加工用レーザビーム10aに対する絶縁層52の加工性は異なる。ガラス繊維が密に含有されている位置は加工されにくく、疎に含有されている位置は加工されやすい。
【0016】
再び図1Aを参照する。参照用レーザ光源15は、たとえば可視光の波長領域の連続波の参照用レーザビーム15aを出射する。参照用レーザビーム15aの進行方向は、X軸正方向である。参照用レーザビーム15aは、X軸に垂直な仮想平面に入射するビームの断面形状が、Y軸方向を長軸方向、Z軸方向を短軸方向とする矩形状の2次元ラインビームである。参照用レーザビーム15aは、XYステージ20に保持されたプリント基板50の上方、加工用レーザビーム10aが絶縁層52に入射することで発生するヒューム60を通過するように、参照用レーザ光源15から出射される。参照用レーザビーム15aは、加工用レーザビーム10aの光軸と交差、本例においては直交する。
【0017】
参照用レーザビーム15aは、特定の波長範囲の光のみを透過するフィルタ16に入射する。参照用レーザビーム15aのうちフィルタ16を透過した光は、受光デバイスであるラインセンサ17に入射する。ラインセンサ17は、たとえば多数のフォトダイオード(受光素子)が、Y軸方向に沿って配列された構成を有し、ヒューム60を通過した参照用レーザビーム15aを検出可能な検出器である。ラインセンサ17で検出された参照用レーザビーム15aに関する情報は、制御装置30に送信される。
【0018】
制御装置30は、加工用レーザ光源10、参照用レーザ光源15からのレーザビーム10a、15aの出射を制御する。また、ガルバノスキャナ13による、加工用レーザビーム10aのプリント基板50上における入射位置の制御を行う。更に、XYステージ20によるプリント基板50の移動を制御する。たとえばメモリである記憶装置31は、プリント基板50上における加工用レーザビーム10aの入射位置(貫通孔形成位置)の座標を記憶している。制御装置30は、記憶装置31の記憶内容に基いて、プリント基板50上の貫通孔形成位置に、加工用レーザビーム10aが入射し貫通孔を形成するように、ガルバノスキャナ13の動作を制御する。
【0019】
制御装置30は、後に詳述するように、ラインセンサ17で検出された参照用レーザビーム15aに関する情報、たとえば光強度の情報に基いて、各貫通孔形成位置に投入する、単位面積当たりのトータルエネルギを制御する。
【0020】
図1Cは、ガルバノスキャナ13の走査範囲と参照用レーザビーム15aの通過範囲との関係を示す概略的な平面図である。本図においては、ガルバノスキャナ13の2枚の揺動ミラーの向きを変化させることによって、加工用レーザビーム10aを走査することのできるプリント基板上の範囲(走査範囲)に50の符号を付した。ガルバノスキャナ13の走査範囲50に配置されるプリント基板上の貫通孔形成位置に、加工用レーザビーム10aが照射され、照射位置に、導電層53及び絶縁層52を貫通し、導電層51に至る貫通孔が形成される。プリント基板50に対する穴開けは、たとえばサイクル加工で行われる。ガルバノスキャナ13の走査範囲内の貫通孔形成位置に対する穴開け加工が終了したら、XYステージ20の動作により、プリント基板50の他の加工範囲をガルバノスキャナ13の走査範囲に移動させ、当該加工範囲の穴開け加工を行う。
【0021】
ガルバノスキャナ13の走査範囲は、たとえばX軸、Y軸方向にそれぞれ50mmの正方形状の領域である。参照用レーザ光源15は、ガルバノスキャナ13の走査範囲のX軸負方向側に配置され、フィルタ16とラインセンサ17は、ガルバノスキャナ13の走査範囲のX軸正方向側に配置される。参照用レーザビーム15aは、平面視上、その通過範囲がガルバノスキャナ13の走査範囲全域を覆うように、参照用レーザ光源15から出射され、フィルタ16を透過し、ラインセンサ17に入射する。
【0022】
2次元ラインビームである参照用レーザビーム15aを、ガルバノスキャナ13の走査範囲50全域の上方を通過させることにより、参照用レーザビーム15aを、走査範囲50内のすべての貫通孔形成位置から発生するヒュームに入射させることができる。ラインセンサが水平方向に移動したり、角度を変更することによって、レーザ入射点を監視させるようにしてもよい。
【0023】
図2Aは、エポキシ樹脂とガラスの光吸収率の波長依存性を示す概略的なグラフである。グラフの横軸は波長を単位「nm」で示し、縦軸は光吸収率を単位「%」で示す。曲線aは、エポキシ樹脂の光吸収率の波長依存性を表し、曲線bは、ガラスの光吸収率の波長依存性を表す。グラフ中の波長λは、エポキシ樹脂の光吸収率が小さく、ガラスの光吸収率が大きい波長である。波長λは、参照用レーザ光源15から出射される参照用レーザビーム15aの波長である。
【0024】
図2B〜図2Dは、参照用レーザビーム15aの光強度の波長依存性を示す概略的なグラフである。グラフの横軸は波長を単位「nm」で表し、縦軸は光強度を単位「W/cm」で表す。
【0025】
図2Bに示すのは、非加工時(ヒューム不発生時)にフィルタ16を透過する前の参照用レーザビーム15aにおける波長と光強度の関係である。参照用レーザビーム15aの光強度は、波長λにおいて最も強い。
【0026】
図2Cに示すのは、非加工時(ヒューム不発生時)にフィルタ16を透過し、ラインセンサ17に入射する参照用レーザビーム15aにおける波長と光強度の関係である。参照用レーザビーム15aの光強度は、波長λにおいて最も強く、その値はFである。フィルタ16は、たとえば波長λ〜λの光を透過するバンドパスフィルタである。
【0027】
図2Dに示すのは、絶縁層52の加工時(ヒューム発生時)に、参照用レーザビーム15aのうち、貫通孔形成位置の上方でヒュームを通過した後、フィルタ16を透過し、ラインセンサ17に入射した光、すなわちたとえばヒュームが発生している加工中の穴とY座標が等しい位置に配置されたフォトダイオードに入射した光における波長と光強度の関係である。
【0028】
エポキシ樹脂とガラスを含む複合材料層である絶縁層52の加工時に発生するヒュームを通過する際、参照用レーザビーム15aの一部はこれに吸収される。図2Aに示すように、エポキシ樹脂は波長λの光を多くは吸収しないが、ガラスは高い吸収率で吸収する。このため、絶縁層52におけるガラスの含有率に応じて、ヒュームが発生している加工中の穴とY座標が等しい位置に配置されたフォトダイオードに入射する参照用レーザビーム15a(波長λの光)の光強度はFより小さい値の範囲内で変化する。ガラスの含有率が相対的に高い場合の光強度は、ガラスの含有率が相対的に低い場合の光強度よりも小さい。本図に示す例においては、波長λの光の強度はFである。
【0029】
ラインセンサ17は、たとえば加工に先立って、ヒューム不発生時にフィルタ16を透過し、ラインセンサ17に入射する参照用レーザビーム15a(波長λの光)を検出し、その光強度Fを把握する。把握された光強度Fは、制御装置30に送信され記憶装置31に記憶される。
【0030】
たとえば、参照用レーザ光源15から参照用レーザビーム15aが出射されている状態で、プリント基板50の絶縁層52に加工用レーザビーム10aが照射され、穴開け加工が行われる。加工用レーザビーム10aが入射した位置から発生するヒュームを通過した参照用レーザビーム15a(波長λの光)は、ラインセンサ17で検出され、その光強度、たとえばFが把握される。ラインセンサ17で検出された参照用レーザビーム15aに関する情報、たとえば、加工用レーザビーム10aが入射した位置から発生するヒュームを通過した参照用レーザビーム15a(波長λの光)の強度がFであるという情報は、制御装置30に送信される。
【0031】
制御装置30は、記憶装置31に記憶されている貫通孔形成位置の座標に基き、プリント基板50上の所定位置に、加工用レーザビーム10aが入射するように、加工用レーザ光源10からの加工用レーザビーム10aの出射、及び、ガルバノスキャナ13の動作を制御しているため、得られた光強度Fが、形成中のどの穴から発生したヒュームを通過した参照用レーザビーム15a(波長λの光)の光強度であるかを把握可能である。また、ラインセンサ17による検出は、加工用レーザビーム10aの出射と同期させて行えばよい。制御装置30は、光強度Fと光強度Fとから、(F−F)/Fを吸収率α(ヒュームによる参照用レーザビーム15a(波長λの光)の吸光率α)として算出し、貫通孔形成位置と対応づけて記憶装置31に記憶させる。(F−F)は、参照用レーザビーム15a(波長λの光)の、ヒュームによる吸収量に対応する値である。
【0032】
図3は、第2の実施例によるレーザ加工方法を示すフローチャートである。以下、実施例によるフローチャートには、一つの貫通孔形成位置における加工手順を示す。また、実施例によるレーザ加工方法は、制御装置30による制御のもとで行われる。更に、プリント基板50に入射させる加工用レーザビーム10aの入射領域(ビームスポット)の面積は、すべてのショット間で相互に等しい。
【0033】
ステップS101において、貫通孔形成位置に1ショットめのレーザパルスを入射させる。パルスエネルギ密度はたとえば40J/cmである。1ショットめのレーザパルスをプリント基板50(導電層53)に照射することで、導電層53を貫通し、絶縁層52表面を露出する穴が形成される。
【0034】
ステップS102において、露出した絶縁層52表面に2ショットめのレーザパルスを入射させる。これは絶縁層52に対して入射させる、1ショットめのレーザパルスであり、パルスエネルギ密度はたとえば30J/cmである。このレーザパルスの照射により、絶縁層52の厚さ方向に途中までの深さの穴が形成される。
【0035】
ステップS103において、その貫通孔形成位置から発生したヒュームを通過した参照用レーザビーム15a(波長λの光)の強度を検出し、吸収率αを算出する。吸収率αの算出に当たっては、あらかじめ図2Cに示す参照用レーザビーム15a(波長λの光)の光強度Fを測定しておく。
【0036】
ステップS104において、吸収率αと所定の閾値S、S、Sとを比較する。閾値S、S、Sは、加工に先立って実験を行い、適切な値を求め、記憶装置31に記憶させておく。たとえば閾値Sは50%、Sは30%、Sは1%である。制御装置30は、吸収率αと閾値S、S、Sとを比較する。
【0037】
<αのとき、すなわち絶縁層52の貫通孔形成位置(ビーム入射位置)から発生したヒュームによる参照用レーザビーム15a(波長λの光)の吸収率が50%を超え、たとえば80%であるとき、ステップS105に進む。S<αである場合、その貫通孔形成位置における絶縁層52のガラス繊維含有率が相対的に高い(ガラス繊維が密に含まれている)と判断される。すなわち、その位置の絶縁層52は加工性は相対的に低く、穴の形成深さは相対的に浅い。このため、投入エネルギを大きくして次ショット(3ショットめ)を入射させる。次ショットのレーザパルスのパルスエネルギ密度はたとえば40J/cmである。
【0038】
制御装置30は、たとえば加工用レーザ光源10から出射されるレーザパルス10aのパルスエネルギを大きくすることで、絶縁層52に入射するレーザパルス10aのエネルギ密度を大きくする。または、図1Aに示す例においては、ビーム整形器11からfθレンズ14までで構成され、加工用レーザ光源10から出射されたレーザビーム10aを、XYステージ20上に保持されたプリント基板50に伝搬する伝搬光学系に、アッテネータを含ませ、その減衰率を小さくすることで、絶縁層52に入射するレーザパルス10aのエネルギ密度を大きくしてもよい。あるいは伝搬光学系に音響光学素子を含ませ、絶縁層52に入射するレーザパルス10aのパルス幅を大きくすることで、絶縁層52に入射するレーザパルス10aのエネルギ密度を大きくすることもできる。
【0039】
<α≦Sのとき、すなわち絶縁層52の貫通孔形成位置(ビーム入射位置)から発生したヒュームによる参照用レーザビーム15aの吸収率が30%を超え50%以下、たとえば40%であるとき、ステップS106に進む。S<α≦Sである場合、その貫通孔形成位置における絶縁層52のガラス繊維含有率は平均的である(ガラス繊維が平均的な密度で含まれている)と判断される。すなわち、その位置の絶縁層52の加工性、及び、穴の形成深さは相対的に平均的である。このため、投入エネルギを維持して(パルスエネルギ密度をたとえば30J/cmのままとして)次ショット(3ショットめ)を入射させる。
【0040】
<α≦Sのとき、すなわち絶縁層52の貫通孔形成位置(ビーム入射位置)から発生したヒュームによる参照用レーザビーム15aの吸収率が1%を超え30%以下、たとえば20%であるとき、ステップS107に進む。S<α≦Sである場合、その貫通孔形成位置における絶縁層52のガラス繊維含有率が相対的に低い(ガラス繊維が疎に含まれている)と判断される。すなわち、その位置の絶縁層52は加工性は相対的に高く、穴の形成深さは相対的に深い。このため、投入エネルギを小さくして次ショット(3ショットめ)を入射させる。次ショットのレーザパルスのパルスエネルギ密度はたとえば20J/cmである。
【0041】
制御装置30は、たとえば加工用レーザ光源10から出射されるレーザパルス10aのパルスエネルギを小さくすることで、絶縁層52に入射するレーザパルス10aのエネルギ密度を小さくする。または伝搬光学系にアッテネータを含ませ、その減衰率を大きくすることで、絶縁層52に入射するレーザパルス10aのエネルギ密度を小さくしてもよい。あるいは伝搬光学系に音響光学素子を含ませ、絶縁層52に入射するレーザパルス10aのパルス幅を小さくすることで、絶縁層52に入射するレーザパルス10aのエネルギ密度を小さくすることもできる。
【0042】
α≦Sのとき、すなわち絶縁層52の貫通孔形成位置(ビーム入射位置)から発生したヒュームによる参照用レーザビーム15a(波長λの光)の吸収率が1%以下であるときは、絶縁層52を貫通する穴が形成されたと判断し、ステップS108に進み、その貫通孔形成位置に対する加工を終了する。
【0043】
ステップS105〜ステップS107に進んだ場合、その後、ステップS103に戻る。すなわち3ショットめ(絶縁層52に対する2ショットめ)のレーザパルス10aの照射で発生したヒュームについても、ヒュームを通過した参照用レーザビーム15a(波長λの光)の強度を検出し、吸収率αを算出して、ステップS104において、閾値S、S、Sと比較する。そして吸収率αと閾値S、S、Sとの大小関係に基き、ステップS105〜ステップS108の処理に進む。
【0044】
最終的に、α≦Sとなったとき、その貫通孔形成位置に対する加工は完了する。
【0045】
たとえば、2ショットめのレーザパルスの照射により発生したヒュームを通過した参照用レーザビーム15a(波長λの光)の強度から算出された吸収率αが、S<αであったとき、3ショットめのレーザパルスを、40J/cmのパルスエネルギ密度で絶縁層52に入射させるため、そのショット(合計3ショット)で導電層53及び絶縁層52を貫通する穴を形成することができる。吸収率αの値に応じ、ガラス繊維が密に含有されていると判断される位置に対しては、次ショットの投入エネルギを増加させるので、従来の加工であれば、たとえば4ショットのレーザパルスの照射で貫通孔を形成していた位置に、3ショットで穴を形成することができる。このためショット数を削減し、加工時間を短縮することができる。
【0046】
また、吸収率αが、S<α≦Sであったとき、3ショットめのレーザパルスを、30J/cmのパルスエネルギ密度で入射させた場合も、そのショット(合計3ショット)で導電層53及び絶縁層52を貫通する穴が形成される。
【0047】
更に、吸収率αが、S<α≦Sであったとき、3ショットめのレーザパルスを、20J/cmのパルスエネルギ密度で絶縁層52に入射させた場合も、そのショット(合計3ショット)で導電層53及び絶縁層52を貫通する穴が形成される。吸収率αの値に応じ、ガラス繊維が疎に含有されていると判断される位置に対しては、次ショットの投入エネルギを減少させるので、従来の加工であれば、たとえば3ショットめも30J/cm、合計100J/cmのエネルギを投入して貫通孔を形成していた位置に、合計90J/cmのエネルギの投入で穴を形成することができる。余分なエネルギの投入を少なくして穴を形成することができるため、たとえばオーバーハングのない、良質な穴加工を実現することができる。
【0048】
図4は、第3の実施例によるレーザ加工方法を示すフローチャートである。第3の実施例は、ステップS104において、吸収率αを一つの閾値Sと比較する点で、第2の実施例と異なる。
【0049】
第3の実施例においては、S<αのとき、ステップS106において、投入エネルギを維持し、パルスエネルギ密度を30J/cmのままとして、次ショット(3ショットめ)を絶縁層52に入射させる。α≦Sのときは、ステップS108に進み、その貫通孔形成位置に対する加工を終了する。ステップS106に進んだ場合は、その後、ステップS103に戻り、以後の処理を繰り返す。
【0050】
第2の実施例は、検出された参照用レーザビーム15a(波長λの光)の強度から算出された吸収率αの値に基き、ガラス繊維含有率の多寡に応じて、次ショットの投入エネルギを増減させたが、第3の実施例においては、次ショットの投入エネルギは変化させない。
【0051】
加工用レーザビーム10aの照射により発生したヒュームを通過した参照用レーザビーム15a(波長λの光)の強度を検出し、ヒュームによる参照用レーザビーム15a(波長λの光)の吸収率αを算出し、α≦Sとなったとき、その貫通孔形成位置に対する加工を終了することで、ガラス繊維が密に含有されている位置には相対的に多いショット数で、疎に含有されている位置には相対的に少ないショット数で穴を形成することができる。このため、貫通孔形成位置によらず一定のショット数のレーザパルスを照射し、貫通孔を形成する場合よりもショット数を削減し加工時間を短くするとともに、良質の加工を実現することができる。
【0052】
図5は、第4の実施例によるレーザ加工方法を示すフローチャートである。第4の実施例においては、次ショット以降の投入エネルギは維持し、次ショット以降、貫通孔形成に至るまでのショット数を、吸収率αに基いて決定する。なお、次ショットを入射させない場合は、次ショット以降のショット数は0となる。
【0053】
たとえばステップS104において、吸収率αと閾値S、S、Sとを比較し、S<αのときは、ステップS109に進んで、パルスエネルギ密度30J/cmのレーザパルス10aの投入ショット数を2とする。その貫通孔形成位置にサイクル加工であと2ショット、加工用レーザビーム10aを入射させて、ステップS111に進み、その貫通孔形成位置に対する加工を終了する。
【0054】
<α≦Sのとき、及び、S<α≦Sのとき、すなわちS<α≦Sのときは、ステップS110に進んで、その貫通孔形成位置に対する加工終了までの投入ショット数を1とする。その位置にあと1ショットだけ、パルスエネルギ密度30J/cmの加工用レーザビーム10aを入射させて、ステップS111に進み、加工を終了する。
【0055】
α≦Sのときは、ステップS111に進み、その貫通孔形成位置に対する加工を終了する。
【0056】
第4の実施例によるレーザ加工方法も、絶縁層52面内方向におけるガラス繊維の疎密に応じ、貫通孔形成位置に対して照射する加工用レーザビーム10aのショット数を変化させる。このため、ショット数を削減し加工時間を短くするとともに、良質の加工を実現することができる。
【0057】
なお、次ショット以降の照射ショット数を、S<αのときは2とし、S<α≦Sのときは1とし、α≦Sのときは0とするところから、ステップS104においては、αとS、Sのみを比較してもよい。
【0058】
第2〜第4の実施例によるレーザ加工方法は、ラインセンサ17で検出された参照用レーザビーム15aに関する情報、たとえば光強度の情報に基いて、貫通孔形成位置の絶縁層52から発生したヒュームによる、参照用レーザビーム15a(波長λの光)の吸収率(吸収量対応値)を求め、その位置の絶縁層52におけるガラス繊維の含有率の高低、及び、その位置に形成されている穴の深浅を判断し、その貫通孔形成位置に投入する、単位面積当たりのトータルエネルギを制御するレーザ加工方法である。
【0059】
なお、第1のレーザ加工装置においては、加工用レーザビーム10aとして、炭酸ガスレーザ(赤外線の波長領域のレーザビーム)を用い、参照用レーザビーム15aとして、可視光の波長領域のレーザビームを使用した。両レーザビーム10a、15aの波長領域が異なっているため、ヒュームによる参照用レーザビーム15a(波長λの光)の吸収率αの算出において、誤差を小さくすることができる。
【0060】
図6Aは、第5の実施例によるレーザ加工装置を示す概略図である。第5の実施例によるレーザ加工装置は、第1の実施例によるレーザ加工装置と比較したとき、参照用レーザ光源15を含まず、入射する光を分光(スペクトルに分解)する分光器18を備える点で相違する。分光器18は、第1の実施例におけるフィルタ16の配設位置に設置される。なお、分光器18に代えて、たとえばバンドパスフィルタであるフィルタ16を使用することもできる。
【0061】
図6Bに、ラインセンサ17及び分光器18の配設位置の概略を示す。加工用レーザビーム10aがプリント基板50の絶縁層52に入射して発生するヒュームは、それ自体発光している。ラインセンサ17と分光器18は、ヒュームからの発光を受光可能な位置、本図に示す例においては、ガルバノスキャナ13の走査範囲50のX軸正方向側に、走査範囲50の右辺よりも広い範囲に配置される。ヒュームの発光は、分光器18を透過し、スペクトルに分解された後、ラインセンサ17に入射する。ラインセンサ17は、ヒュームから発せられ、スペクトルに分解された光の所定波長における光強度を検出することが可能な検出器である。
【0062】
図7は、ヒュームの発光強度の波長依存性を示す概略的なグラフである。グラフの横軸は波長を単位「nm」で示し、縦軸は光強度を単位「W/cm」で示す。曲線aは、エポキシ樹脂の含有率が相対的に高く、ガラス繊維の含有率が相対的に低い(ガラス繊維が疎に含まれている)貫通孔形成位置に加工用レーザビーム10aが入射したときに発生するヒュームの発光に関する光強度の波長依存性を表す。曲線bは、エポキシ樹脂の含有率が相対的に低く、ガラス繊維の含有率が相対的に高い(ガラス繊維が密に含まれている)貫通孔形成位置に加工用レーザビーム10aが入射したときに発生するヒュームの発光に関する光強度の波長依存性を表す。グラフ中の波長λは、エポキシ樹脂の発光のピーク波長(エポキシ樹脂に加工用レーザビーム10aが入射したときに発生するヒュームから発せられる光のピーク波長)であり、グラフ中の波長λは、ガラス繊維の発光のピーク波長(ガラス繊維に加工用レーザビーム10aが入射したときに発生するヒュームから発せられる光のピーク波長)である。
【0063】
本図に示す例においては、ガラス繊維が疎に含まれている貫通孔形成位置に加工用レーザビーム10aが入射したときに発生するヒュームから発せられる光は、波長λにおける光強度がFであり、波長λにおける光強度がFである。また、ガラス繊維が密に含まれている貫通孔形成位置に加工用レーザビーム10aが入射したときに発生するヒュームから発せられる光は、波長λにおける光強度がFであり、波長λにおける光強度がFである。
【0064】
波長λにおける光強度と、波長λにおける光強度の比は、ガラス繊維が疎に含まれている位置の絶縁層52が分解されて発生するヒュームからの発光については、F/Fであり、ガラス繊維が密に含まれている位置の絶縁層52が分解されて発生するヒュームからの発光については、F/Fとなる。F/Fは、F/Fよりも大きい。
【0065】
第5の実施例によるレーザ加工装置においては、加工用レーザビーム10aが絶縁層52に入射したときに発生するヒュームから発せられる光の、波長λにおける光強度Fと、波長λにおける光強度Fに基き、たとえばその比F/Fに基いて、その貫通孔形成位置におけるガラス繊維の疎密、及び、その位置に形成されている穴の深浅を判断し、その貫通孔形成位置に投入する、単位面積当たりのトータルエネルギを制御する。
【0066】
図8は、第6の実施例によるレーザ加工方法を示すフローチャートである。以下に示す第6〜第8の実施例によるレーザ加工方法は、第5の実施例によるレーザ加工装置を用いて行う。第6の実施例によるレーザ加工方法は、第1の実施例によるレーザ加工装置を使用して行う第2の実施例によるレーザ加工方法に対応する。
【0067】
ステップS121において、貫通孔形成位置に1ショットめのレーザパルスを入射させる。パルスエネルギ密度はたとえば40J/cmである。1ショットめのレーザパルスをプリント基板50(導電層53)に照射することで、導電層53を貫通し、絶縁層52表面を露出する穴が形成される。
【0068】
ステップS122において、露出した絶縁層52表面に2ショットめのレーザパルスを入射させる。これは絶縁層52に対して入射させる、1ショットめのレーザパルスであり、パルスエネルギ密度はたとえば30J/cmである。このレーザパルスの照射により、絶縁層52の厚さ方向に途中までの深さの穴が形成される。
【0069】
ステップS123において、その貫通孔形成位置から発生したヒュームが発する光を検出する。たとえば波長λにおける光強度F、及び、波長λにおける光強度Fを検出し、その比β(=F/F)を算出する。ヒュームが発する光の検出は、分光器18及びラインセンサ17を用いて行われ、検出されたヒュームからの発光に関する情報は、ラインセンサ17から制御装置30に送信される。比βの値は、制御装置30が算出する。ヒュームが発する光に関する情報、たとえば光強度F、F、比βの値は記憶装置31に記憶される。
【0070】
ステップS124において、光強度Fと所定の閾値Sとを比較する。閾値Sは、加工に先立って実験を行い、適切な値を求め、記憶装置31に記憶させておく。
【0071】
≦Sのとき、すなわちヒュームが発する光のうち、波長λにおける光強度Fが閾値S以下であるときは、絶縁層52を貫通する穴が形成されたと判断し、ステップS129に進み、その貫通孔形成位置に対する加工を終了する。
【0072】
<Fのとき、絶縁層52を貫通する穴は形成されていないと判断し、ステップS125に進み、βと閾値S、Sとを比較する。閾値S、Sは、加工に先立って実験を行い、適切な値を求め、記憶装置31に記憶させておく。
【0073】
なお、ステップS124においては、光強度Fと閾値Sとを比較し、F≦Sのとき、ステップS129に進み、その貫通孔形成位置に対する加工を終了し、S<Fのとき、ステップS125に進むこととしてもよい。閾値Sではなく、他の閾値を用いることもできる。
【0074】
βの値が相対的に小さいとき、その貫通孔形成位置にはガラス繊維が疎に含まれており、βの値が相対的に大きいとき、その貫通孔形成位置にはガラス繊維が密に含まれている。そこで、ステップS125において、S<βのときは、その貫通孔形成位置における絶縁層52のガラス繊維含有率が相対的に高く、穴の形成深さが相対的に浅いと判断し、ステップS126に進んで、投入エネルギを大きくして次ショット(3ショットめ)を絶縁層52に入射させる。次ショットのレーザパルス10aのパルスエネルギ密度はたとえば40J/cmである。パルスエネルギ密度を大きくする方法は、たとえば第2の実施例によるレーザ加工方法の場合と同様である。
【0075】
<β≦Sのときは、その貫通孔形成位置における絶縁層52のガラス繊維含有率が平均的であり、穴の形成深さも平均的であると判断し、ステップS127に進んで、投入エネルギを維持し、パルスエネルギ密度が30J/cmの加工用レーザビーム10aを、次ショット(3ショットめ)として絶縁層52に入射させる。
【0076】
β≦Sのときは、その貫通孔形成位置における絶縁層52のガラス繊維含有率が相対的に低く、穴の形成深さが相対的に深いと判断し、ステップS128に進んで、投入エネルギを小さくして次ショット(3ショットめ)を入射させる。次ショットのレーザパルス10aのパルスエネルギ密度はたとえば20J/cmである。パルスエネルギ密度を小さくする方法は、たとえば第2の実施例によるレーザ加工方法の場合と同様である。
【0077】
ステップS126〜ステップS128に進んだ場合、その後、ステップS123に戻る。すなわち3ショットめのレーザパルスの照射で発生したヒュームについても、ヒュームが発する光、たとえば波長λにおける光強度F、及び、波長λにおける光強度Fを検出し、比βを算出する。そしてステップS124において次ショット照射の要否を判定し、「要」の場合は、ステップS125及びステップS126〜ステップS128で、βの値を反映したパルスエネルギ密度で次ショットを、その貫通孔形成位置の絶縁層52に入射させる。「否」の場合には、その貫通孔形成位置に対する加工は完了する。
【0078】
第6の実施例によるレーザ加工方法によっても、ショット数の削減による加工時間の短縮、及び、良質な加工を実現することができる。
【0079】
図9は、第7の実施例によるレーザ加工方法を示すフローチャートである。第7の実施例は、第6の実施例とは異なり、比βを用いない。第7の実施例によるレーザ加工方法は、第1の実施例によるレーザ加工装置を使用して行う第3の実施例によるレーザ加工方法に対応する。
【0080】
第7の実施例においては、ステップS123において、たとえば波長λにおける光強度Fを検出し、記憶装置31に記憶させる。そしてステップS124において、光強度Fと閾値Sとの比較を行い、F≦SのときはステップS129に進み、その貫通孔形成位置に対する加工を終了する。S<FのときはステップS127に進み、投入エネルギを維持して次ショットを入射させる。ステップS127に進んだ場合は、その後、ステップS123に戻り、ステップS129でその位置の穴加工が終了するまで、以後の処理を繰り返す。
【0081】
なお、ステップS123において光強度Fを検出し、ステップS124においては、光強度Fと閾値Sとを比較し、F≦Sのとき、ステップS129に進み、その貫通孔形成位置に対する加工を終了し、S<Fのとき、ステップS127に進むこととしてもよい。閾値Sではなく、他の閾値を用いることもできる。
【0082】
第6の実施例は、光強度F及びFに基き、たとえばそれらの比βを算出して、ガラス繊維含有率の多寡に応じて、次ショットの投入エネルギを増減させたが、第7の実施例においては、次ショットの投入エネルギは変化させない。
【0083】
加工用レーザビーム10aの照射により発生したヒューム自体の発光を検出し、たとえば波長λにおける光強度Fを測定して、F≦Sとなったとき、その貫通孔形成位置に対する加工を終了することで、ガラス繊維が密に含有されている位置には相対的に多いショット数で、疎に含有されている位置には相対的に少ないショット数で穴を形成することができる。このため、貫通孔形成位置によらず一定のショット数のレーザパルスを照射し、貫通孔を形成する場合よりも、ショット数を削減し加工時間を短くするとともに、良質の加工を実現することができる。
【0084】
図10は、第8の実施例によるレーザ加工方法を示すフローチャートである。第8の実施例によるレーザ加工方法は、第1の実施例によるレーザ加工装置を使用して行う第4の実施例によるレーザ加工方法に対応する。第8の実施例においては、次ショット以降の投入エネルギは維持し、次ショット以降、貫通孔形成に至るまでのショット数を、比βに基いて決定する。次ショットを入射させない場合は、次ショット以降のショット数は0となる。
【0085】
ステップS121〜ステップS125までは、第6の実施例によるレーザ加工方法と等しい。またF≦Sのとき、その貫通孔形成位置には、それ以上加工用レーザビーム10aを入射させず、加工を終了する(図10においてステップS132)点も第6の実施例と等しい。
【0086】
第8の実施例においては、ステップS125で、比βと閾値S、Sとを比較し、S<βのときは、ステップS130に進んで、パルスエネルギ密度30J/cmのレーザパルス10aの投入ショット数を2とする。その貫通孔形成位置にサイクル加工であと2ショット、加工用レーザビーム10aを入射させて、ステップS132に進み、その貫通孔形成位置に対する加工を終了する。
【0087】
<β≦Sのとき、及び、β≦Sのとき、すなわちβ≦Sのときは、ステップS131に進んで、その貫通孔形成位置に対する加工終了までの投入ショット数を1とする。その位置にあと1ショットだけ、パルスエネルギ密度30J/cmの加工用レーザビーム10aを入射させて、ステップS132に進み、加工を終了する。
【0088】
なお、S<βのときに投入ショット数を2とし(ステップS130)、β≦Sのときに投入ショット数を1とする(ステップS131)ところから、ステップS125においては、βと閾値Sのみを比較してもよい。
【0089】
第8の実施例によるレーザ加工方法も、絶縁層52面内方向のガラス繊維の相対的な疎密に応じ、貫通孔形成位置に対して照射する加工用レーザビーム10aのショット数を変化させる。このため、ショット数を削減し加工時間を短くするとともに、良質の加工を実現することができる。
【0090】
第6〜第8の実施例によるレーザ加工方法は、ヒューム自体から発せられ、分光器18を介してラインセンサ17で検出された光に関する情報、たとえば波長λにおける光強度F、波長λにおける光強度F、それら光強度の比β(=F/F)に基いて、その貫通孔形成位置の絶縁層52におけるガラス繊維の含有率の高低や、その位置に形成されている穴の深浅を判断し、その貫通孔形成位置に投入する、単位面積当たりのトータルエネルギを制御するレーザ加工方法である。
【0091】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0092】
たとえば、第1〜第4の実施例においては、エポキシ樹脂の光吸収率が相対的に小さく、ガラスの光吸収率が相対的に大きい波長λの光の吸収率を用いたが、エポキシ樹脂の光吸収率が相対的に大きく、ガラスの光吸収率が相対的に小さい波長の光の吸収率を用いてもよい。
【0093】
また、第1〜第4の実施例においては、参照用レーザビーム15aを使用したが、レーザビームでなくてもよく、広く参照光とすることができる。
【0094】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0095】
たとえば、加工対象物を構成する材料が分解され、ヒュームが発生するレーザ加工に利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
10 加工用レーザ光源
10a 加工用レーザビーム
11 ビーム整形器
12 折り返しミラー
13 ガルバノスキャナ
14 fθレンズ
15 参照用レーザ光源
15a 参照用レーザビーム
16 フィルタ
17 ラインセンサ
18 分光器
20 XYステージ
30 制御装置
31 記憶装置
50 プリント基板
51、53 銅層
52 樹脂層
60 ヒューム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスレーザビームを出射する加工用レーザ光源と、
前記加工用レーザ光源を出射するパルスレーザビームに対する加工性が相対的に高い第1の材料と、加工性が相対的に低い第2の材料とが混合されて含まれる加工対象物であって、該加工対象物の加工位置により、前記第1の材料と前記第2の材料の含有比率が異なる加工対象物を保持するステージと、
前記加工用レーザ光源を出射したパルスレーザビームを、前記ステージに保持された加工対象物に伝搬する伝搬光学系と、
前記第1の材料と前記第2の材料の含有比率に応じて、前記加工用レーザ光源から前記加工対象物の加工位置に投入する、単位面積当たりのトータルエネルギを制御する制御装置と
を有するレーザ加工装置。
【請求項2】
更に、
前記加工用レーザ光源を出射したパルスレーザビームを、前記ステージに保持された加工対象物の加工位置に入射させたときに発生するヒュームを通過する参照光を出射する参照用光源と、
前記参照用光源を出射し、前記ヒュームを通過した前記参照光を検出する検出器と
を含み、
前記制御装置は、前記検出器によって検出された前記参照光の、ヒュームによる吸収量に基いて、前記加工対象物の加工位置に投入する、単位面積当たりのトータルエネルギを制御する請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記伝搬光学系は、前記加工用レーザ光源を出射したパルスレーザビームの、前記加工対象物上の入射位置を移動させるビーム走査器を含み、
前記パルスレーザビームが前記加工対象物に入射する方向から見たとき、前記参照用光源は、前記参照光を、前記ビーム走査器のビーム走査範囲全域を覆うように出射し、
前記検出器は、前記参照光を検出するラインセンサである請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
(a)加工用レーザ光源を出射するパルスレーザビームに対する加工性が相対的に高い第1の材料と、加工性が相対的に低い第2の材料とが混合されて含まれる加工対象物であって、該加工対象物の加工位置により、前記第1の材料と前記第2の材料の含有比率が異なる加工対象物に、前記加工用レーザ光源を出射したパルスレーザビームを入射させる工程と、
(b)前記第1の材料と前記第2の材料の含有比率に応じて、前記加工用レーザ光源から前記加工対象物の加工位置に投入する、単位面積当たりのトータルエネルギを制御する工程と
を有するレーザ加工方法。
【請求項5】
前記工程(a)において、前記加工対象物にパルスレーザビームを入射させたときに発生するヒュームに参照光を通過させ、
前記工程(b)において、前記参照光の前記ヒュームによる吸収量に基いて、前記加工対象物の加工位置に投入する、単位面積当たりのトータルエネルギを制御する請求項4に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記工程(a)において、ビーム走査器を用い、前記パルスレーザビームを前記加工対象物上に走査しながら入射させ、前記参照光を、前記パルスレーザビームが前記加工対象物に入射する方向から見たとき、前記ビーム走査器のビーム走査範囲全域を覆うように出射させる請求項5に記載のレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−103257(P2013−103257A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249703(P2011−249703)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】