説明

レーザ加工装置およびレーザ加工方法

【課題】簡単に複数のレーザ光によるスポットを走査しながらほぼ同じ位置に時間差を設けて照射する。
【解決手段】レーザ光λaは、レンズ120aにより結像位置P1aにおいて結像した後、レンズ121aによりコリメートされ、2波長性ミラー123に入射する。レーザ光λbは、レンズ120bにより結像位置P1bにおいて結像した後、レンズ121bによりコリメートされ、全反射ミラー122により反射され、2波長性ミラー123に入射する。そして、レーザ光λaおよびレーザ光λbは、2波長性ミラー123により光路が結合され、2波長性レンズ124により結像位置P2a,P2bにおいて結像する。全反射ミラー119とレンズ120bを格納するモジュール131は、シフト機構132により、レンズ120bの光軸と垂直な方向にシフトする。本発明は、例えば、薄膜太陽電池パネルを加工するレーザ加工装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置およびレーザ加工方法に関し、特に、複数の種類のレーザ光を並行して使用するレーザ加工装置およびレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波長等が異なる2種類のレーザ光を所定の時間差で加工対象物に照射し、加工精度を向上させるようにしたレーザ加工装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の発明では、各レーザ光が通過する光ファイバの長さを変え、レーザ光の光路長差を調整することにより、各レーザ光が加工対象物に照射される時間差が調整される。
【0004】
また、特許文献2に記載の発明では、各レーザ光の光学系が全く独立しており、光学系毎にレーザ光を出射するタイミングを調整することにより、各レーザ光が加工対象物に照射される時間差が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−313858号公報
【特許文献2】特開2010−142829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば薄膜太陽電池パネルの薄膜除去の工程等では、2種類のレーザ光による各スポットを所定の方向に走査しながら、ほぼ同じ位置に時間差を設けて照射できるようにすることが望まれている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、レーザ光の走査速度によって、レーザ光を照射する時間差を調整するために光ファイバの長さを変える必要があり、時間と手間がかかる。また、予め準備されている長さの光ファイバの範囲内でしか時間差を調整することができない。
【0008】
また、特許文献2に記載の発明では、各レーザ光の光学系が全く独立しているため、2種類のレーザ光をほぼ同じ位置に照射するように調整することが難しい。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、簡単に複数のレーザ光による各スポットを所定の方向に走査しながら、ほぼ同じ位置に時間差を設けて照射できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面のレーザ加工装置は、少なくとも第1のレーザ光および第2のレーザ光を用いて加工対象物の加工を行うレーザ加工装置であって、第1のレーザ光が通過する第1の光路上の第1の結像位置において、第1のレーザ光を結像する第1のレンズと、第1の光路上の第1の結像位置より後で第1のレーザ光をコリメートする第2のレンズと、第2のレーザ光が通過する第2の光路上の第2の結像位置において、第2のレーザ光を結像する第3のレンズと、第2の光路上の第2の結像位置より後で第2のレーザ光をコリメートする第4のレンズと、第2のレンズおよび第4のレンズの後段において、第1のレーザ光と第2のレーザ光の光路を結合する結合手段と、結合手段と加工対象物の間に設けられ、第1のレーザ光および第2のレーザ光を結像する第5のレンズと、第2の光路を調整して、第5のレンズによる第2のレーザ光の結像位置である第3の結像位置の光軸と垂直な方向における位置を調整する調整手段とを備える。
【0011】
本発明の第1の側面のレーザ加工装置においては、第1のレーザ光が第1の光路上の第1の結像位置において結像した後、コリメートされ、第2のレーザ光が第2の光路上の第2の結像位置において結像した後、コリメートされ、その後、第1のレーザ光と第2のレーザ光の光路が結合された後、第1のレーザ光および第2のレーザ光が第5のレンズにより結像する。また、第2のレーザ光が通過する第2の光路が調整され、第2のレーザ光の第5のレンズによる結像位置の光軸と垂直な方向における位置が調整される。
【0012】
従って、簡単に複数のレーザ光による各スポットを所定の方向に走査することにより、ほぼ同じ位置に時間差を設けて照射することができる。
【0013】
この結合手段は、例えば、2波長性ミラーにより構成される。この調整手段は、例えば、アクチュエータ等を用いたシフト機構や回転機構により構成される。
【0014】
この調整手段には、第2の結像位置の光軸と垂直な方向の位置を調整させることにより、第3の結像位置の光軸と垂直な方向の位置を調整させることができる。
【0015】
これにより、簡単な構成で、簡単に複数のレーザ光による各スポットを所定の方向に走査することにより、ほぼ同じ位置に時間差を設けて照射することができる。
【0016】
このレーザ加工装置には、第1の光路上の第1のレンズと第2のレンズの間に設けられる第1のスリットと、第2の光路上の第3のレンズと第4のレンズの間に設けられる第2のスリットとをさらに設け、この調整手段には、第2のスリットの開口部の光軸と垂直な方向における位置を調整することにより、第3の結像位置の光軸と垂直な方向の位置を調整させることができる。
【0017】
これにより、レーザ光のスポットのエッジが鮮明になり、その結果、加工品質が向上する。
【0018】
この第2のスリットを、第2の結像位置付近に設け、この調整手段には、第2の結像位置を第2のスリットの開口部とともに移動させることができる。
【0019】
これにより、スリットによるレーザ光の損失を軽減することができる。
【0020】
このレーザ加工装置には、第4のレンズの後段において、第2の光路の方向を結合手段の方向に変更する変更手段をさらに設け、この調整手段には、第2の光路を第5のレンズの光軸と一致する回転軸を中心に回転させることにより、第3の結像位置の光軸と垂直な方向の位置を調整させることができる。
【0021】
これにより、第2のレーザ光のスポットの照射位置の調整の自由度を増すことができる。
【0022】
このレーザ加工装置には、第1のレーザ光および第2のレーザ光を伝送する光ファイバと、光ファイバから出射された第1のレーザ光および第2のレーザ光をコリメートする第6のレンズと、第6のレンズの後段において、第1のレーザ光と第2のレーザ光の光路を第1の光路と第2の光路に分離する分離手段とをさらに設けることができる。
【0023】
これにより、レーザ光の断面の強度を均一化することができ、その結果、加工品質が向上する。
【0024】
この分離手段は、例えば、2波長性ミラーにより構成される。
【0025】
光ファイバの出射端面の形状を角形にすることができる。
【0026】
これにより、例えば、スリットによるレーザ光の損失を軽減することができる。
【0027】
このレーザ加工装置には、加工対象物の表面上で、第3の結像位置を移動させる走査手段をさらに備えることができる。
【0028】
この走査手段は、例えば、結像位置を加工対象物の表面で走査するガルバノミラーや、加工対象物を移動させるXYステージや、レーザ加工装置を移動させるガントリステージ、またはそれらの組み合わせにより実現することができる。
【0029】
本発明の第2の側面のレーザ加工方法は、少なくとも第1のレーザ光および第2のレーザ光を用いて加工対象物の加工を行うレーザ加工方法において、第1のレーザ光と第2のレーザ光を発生させ、第1のレーザ光と第2のレーザ光をそれぞれ同一形状または異なる形状、かつ加工対象物の表面に隣接して結像させ、隣接させた結像の並んだ方向に結像位置を移動させ、または加工対象物の相対的な位置を移動させ、連続的に対象物の表面を加工する。
【0030】
本発明の第2の側面においては、第1のレーザ光と第2のレーザ光が発生され、第1のレーザ光と第2のレーザ光がそれぞれ同一形状または異なる形状、かつ加工対象物の表面に隣接して結像され、隣接させた結像の並んだ方向に結像位置が移動され、または加工対象物の相対的な位置が移動され、連続的に対象物の表面が加工される。
【0031】
従って、簡単に複数のレーザ光による各スポットを走査しながら、ほぼ同じ位置に時間差を設けて照射することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の第1の側面によれば、簡単に複数のレーザ光による各スポットを所定の方向に走査することにより、ほぼ同じ位置に時間差を設けて照射することができる。
【0033】
また、本発明の第2の側面によれば、簡単に複数のレーザ光による各スポットを走査しながら、ほぼ同じ位置に時間差を設けて照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用したレーザ加工装置の第1の実施の形態を示す図である。
【図2】本発明の効果を説明するための図である。
【図3】レーザスポットの面積の関係の例を示す図である。
【図4】本発明を適用したレーザ加工装置の第2の実施の形態を示す図である。
【図5】本発明を適用したレーザ加工装置の第3の実施の形態を示す図である。
【図6】薄膜太陽電池パネルのエッジデリーションについて説明するための図である。
【図7】レーザスポットの位置関係を示す図である。
【図8】本発明を適用したレーザ加工装置の第4の実施の形態を示す図である。
【図9】レーザスポットの照射位置の変化を示す図である。
【図10】本発明を適用したレーザ加工装置の第5の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(基本形)
2.第2の実施の形態(XYスリット機構を用いた例)
3.第3の実施の形態(XYスリット機構のみをシフトさせるようにした例)
4.第4の実施の形態(レーザ光λbの光路を回転させるようにした例)
5.変形例
【0036】
<1.第1の実施の形態>
[レーザ加工装置の構成例]
図1は、本発明を適用したレーザ加工装置の第1の実施の形態を示す図である。
【0037】
なお、以下、レーザ光の進行方向をz軸方向とし、z軸方向に垂直で、かつ互いに直交する所定の方向を、それぞれx軸方向およびy軸方向とする。
【0038】
レーザ加工装置101は、レーザ発振器111a,111b、ビームエキスパンダ112a,112b、全反射ミラー113、ビームスプリッタ114、2波長性(Dichroic)ファイバ結合レンズ115、光ファイバ116、2波長性(Dichroic)結像加工光学系レンズ117、2波長性(Dichroic)ミラー118、全反射ミラー119、結像加工光学系レンズ120a,120b,121a,121b、全反射ミラー122、2波長性(Dichroic)ミラー123、および、2波長性(Dichroic)結合加工光学系レンズ124を含むように構成される。
【0039】
なお、2波長性結像加工光学系レンズ117,124は、それぞれ1枚の凸レンズとして図示されているが、複数の凸レンズや凹レンズの組み合わせにより構成される場合がある。同様に、結像加工光学系レンズ120a,120b,121a,121bも、それぞれ1枚の凸レンズとして図示されているが、複数の凸レンズや凹レンズの組み合わせにより構成される場合がある。
【0040】
なお、以下、2波長性結像加工光学系レンズ117,124を、単に2波長性レンズ117,124と称し、結像加工光学系レンズ120a,120b,121a,121bを、単にレンズ120a,120b,121a,121bと称する。
【0041】
レーザ発振器111aは、例えば、Nd:YAGレーザにより構成され、図示せぬ制御装置から入力される出射信号Saに同期して、所定の波長λaのパルス状のレーザ光(以下、レーザ光λaと称する)を発振し、出射する。レーザ発振器111aから出射されたレーザ光λaは、ビームエキスパンダ112aによりビーム径が拡大されて、ビームスプリッタ114に入射する。
【0042】
レーザ発振器111bは、例えば、Nd:YAGレーザにより構成され、図示せぬ制御装置から入力される出射信号Sbに同期して、所定の波長λbのパルス状のレーザ光(以下、レーザ光λbと称する)を発振し、出射する。レーザ発振器111bから出射されたレーザ光λbは、ビームエキスパンダ112bによりビーム径が拡大された後、全反射ミラー113により反射され、ビームスプリッタ114に入射する。
【0043】
なお、以下、波長λaが、Nd:YAGレーザの基本波の波長である1064nmに設定され、波長λbが、Nd:YAGレーザの第2高調波(SHG)の波長である532nmに設定されている場合について説明する。
【0044】
ビームスプリッタ114は、波長λaの光を透過し、波長λbの光を反射する特性を有している。従って、レーザ光λaがビームスプリッタ114を透過し、レーザ光λbがビームスプリッタ114により反射されることにより、レーザ光λaとレーザ光λbの光路が結合する。そして、レーザ光λaおよびレーザ光λbは、2波長性ファイバ結合レンズ115により集光されて、光ファイバ116に入射し、伝送される。
【0045】
光ファイバ116の出射端面116Aの断面は正方形になっており、光ファイバ116から出射されるレーザ光λa,λbの断面B1は、幅(一辺の長さ)d1の正方形となる。また、レーザ光λa,λbの断面B1の強度がほぼ均一化される。そして、光ファイバ116から出射されたレーザ光λa,λbは、2波長性レンズ117によりコリメートされ、2波長性ミラー118に入射する。
【0046】
2波長性ミラー118は、波長λaの光を透過し、波長λbの光を反射する特性を有している。従って、レーザ光λaが2波長性ミラー118を透過し、レーザ光λbが2波長性ミラー118により反射されることにより、レーザ光λaとレーザ光λbの光路が分離される。
【0047】
2波長性ミラー118を透過したレーザ光λaは、レンズ120aにより結像位置P1aにおいて結像する。結像位置P1aにおけるレーザ光λaの像B2a(レンズ120aにより形成される光ファイバ116の出射端面116Aの像B2a)の幅d2aは、次式(1)により求められる。
【0048】
d2a=d1×(f2a/f1) ・・・(1)
【0049】
なお、f1は2波長性レンズ117の焦点距離を表し、f2aはレンズ120aの焦点距離を表している。
【0050】
その後、レーザ光λaは、結像位置P1aより後で、レンズ121aによりコリメートされ、2波長性ミラー123に入射する。
【0051】
一方、2波長性ミラー118により反射されたレーザ光λbは、さらに全反射ミラー119により反射された後、レンズ120bにより結像位置P1bにおいて結像する。結像位置P1bにおけるレーザ光λbの像B2b(レンズ120bにより形成される光ファイバ116の出射端面116Aの像B2b)の幅d2bは、次式(2)により求められる。
【0052】
d2b=d1×(f2b/f1) ・・・(2)
【0053】
なお、f2bは、レンズ120bの焦点距離を表している。
【0054】
その後、レーザ光λbは、結像位置P1bより後で、レンズ121bによりコリメートされ、全反射ミラー122により反射され、2波長性ミラー123に入射する。
【0055】
2波長性ミラー123は、波長λaの光を透過し、波長λbの光を反射する特性を有している。従って、レーザ光λaが2波長性ミラー123を透過し、レーザ光λbが2波長性ミラー123により反射されることにより、レーザ光λaとレーザ光λbの光路が結合する。
【0056】
その後、レーザ光λaおよびレーザ光λbは、2波長性レンズ124により、それぞれ結像位置P2aおよび結像位置P2bにおいて結像する。そして、加工対象物の加工面が結像位置P2a,P2b付近に設置されることにより、結像位置P2a付近におけるレーザ光λaの像B3a(以下、レーザスポットB3aと称する)、および、結像位置P2b付近におけるレーザ光λbの像B3b(以下、レーザスポットB3bと称する)により加工対象物の加工が行われる。
【0057】
なお、結像位置P2aにおけるレーザスポットB3aの幅d3a、および、結像位置P2b付近におけるレーザスポットB3bの幅d3bは、それぞれ次式(3)および(4)により求められる。
【0058】
d3a=d2a×(f4/f3a)
=d1×(f2a・f4/f1・f3a) ・・・(3)
d3b=d2b×(f4/f3b)
=d1×(f2b・f4/f1・f3b) ・・・(4)
【0059】
なお、f3aはレンズ121aの焦点距離を表し、f3bはレンズ121bの焦点距離を表し、f4は2波長性レンズ124の焦点距離を表している。
【0060】
また、全反射ミラー119とレンズ120bは1つのモジュール131内に格納されている。モジュール131は、例えば、アクチュエータ等により構成されるシフト機構132により、電動または手動で、レンズ120bの光軸と垂直な所定の方向にシフトさせることができる。なお、以下、モジュール131のシフト方向がx軸方向と一致するものとして説明する。
【0061】
そして、モジュール131がx軸方向にシフトするのに伴い、全反射ミラー119およびレンズ120bがx軸方向にシフトする。これに伴い、レーザ光λbの光路および結像位置P1bがx軸方向にシフトし、その結果、レーザ光λbの結像位置P2b(レーザスポットB3bの照射位置)が、レンズ124の光軸と垂直な方向にシフトする。
【0062】
例えば、光ファイバ116の出射端面116Aから結像位置P1bへの結像倍率をRM1、結像位置P1bから結像位置P2bへの結像倍率をRM2とした場合、モジュール131のx軸方向の移動距離dに対する結像位置P2bの移動距離Dは、次式(5)により求められる。
【0063】
D=d×RM1×RM2 ・・・(5)
【0064】
RM1=f2b×f1、RM2=f4×f3bなので、式(5)は、次式(6)のように変形することができる。
【0065】
D=(d・f2b・f3b)/(f1・f4) ・・・(6)
【0066】
なお、図1の例の場合、結像位置P2bは、モジュール131の移動方向とは逆方向にシフトする。
【0067】
[本発明の効果の説明]
従って、レーザスポットB3bの照射位置を、レーザスポットB3aとは独立して簡単に調整することができ、レーザスポットB3aとレーザスポットB3bを異なる位置に照射することができる。
【0068】
これにより、レーザスポットB3a,B3bを、所定の方向に走査しながら、ほぼ同じ位置に時間差を設けて照射することが、簡単に実現できるようになる。この点について、図2を参照しながら、レーザスポットB3a,B3bを矢印A1の方向に走査しながら、レーザスポットB3b、レーザスポットB3aの順に、時間差を設けて照射する場合を例に挙げて説明する。
【0069】
例えば、レーザ光λbとレーザ光λbの出射タイミングに所定の間隔(時間差)を設けて、レーザスポットB3bとレーザスポットB3aをほぼ同じ位置に照射するようにした場合、レーザスポットの走査速度が速くなるほど、レーザスポットの照射位置のズレを小さくするために、出射タイミングの間隔を短くする必要がある(例えば、数10から数100ns程度)。そのため、出射タイミングの間隔の精度を高めるために、高度かつ安定した制御を行う必要が生じ、必要なコストが上昇する。
【0070】
一方、レーザ加工装置101では、モジュール131のx軸方向の位置を調整することにより、簡単に図2の上の図に示されるように、レーザスポットB3bとレーザスポットB3aを、走査方向に隣接するように照射することができる。そして、時間差を設けずに同じタイミングでレーザ光λa,λbを出射するように制御することにより、レーザスポットB3bを照射した位置に、次の照射タイミングでレーザスポットB3aをほぼ正確に重ねて照射することが可能になる。
【0071】
このように、レーザ光の出射タイミングの制御を行わずに、モジュール131のx軸方向の位置を調整するだけで、レーザスポットB3a,B3bを、矢印A1の方向に走査しながら、ほぼ同じ位置に所定の順番で時間差を設けて照射することができる。その結果、装置に必要なコストを下げることができるとともに、電気的な制御が不要で、ハード的な調整のみでよいため、長期的に安定した加工が可能になる。
【0072】
さらに、最初の照射タイミングでレーザ光λaのみ出射を停止し、最後の照射タイミングでレーザ光λbの出射を停止するようにすることにより、図2の右端のレーザスポットB3a(1)および左端のレーザスポットB3b(n)の照射を停止することができる。これにより、レーザスポットB3bとレーザスポットB3aを、走査の開始位置から終了位置まで、順番にきれいに重ねて照射することが可能になる。
【0073】
以上のようにして、例えば、薄膜太陽電池パネルの薄膜を除去する場合に、レーザスポットB3bにより所定の層の薄膜を除去した後、レーザスポットB3aにより同じ位置の異なる層の薄膜を除去することができ、加工品質を向上させることができる。
【0074】
また、式(3)および式(4)より、レーザスポットB3aの幅d3aは、レンズ120aの焦点距離f2aに比例し、レーザスポットB3aの幅d3bは、レンズ120bの焦点距離f2bに比例する。従って、レーザ加工装置101では、レンズ120aやレンズ120bを交換することにより、レーザスポットB3aおよびレーザスポットB3bの大きさを、それぞれ個別に簡単に調整することができる。
【0075】
例えば、図2を参照して上述したように、レーザスポットB3bに、レーザスポットB3aを重ねて照射する場合、図3に示されるように、レーザスポットB3bの面積をレーザスポットB3aの面積より大きくした方が、加工品質が向上する場合がある。
【0076】
例えば、両者の面積が同じ場合、レーザスポットB3bの照射時に、加工エッジの熱影響によるロールアップ(土手のような盛り上がり)が発生し、次のレーザスポットB3aの照射時に、このロールアップ部からスパッタが四方に飛散るおそれがある。一方、レーザスポットB3bの面積をレーザスポットB3aの面積より若干大きくすることにより、このロールアップ部からのスパッタの発生を防止することができる。
【0077】
なお、レーザスポットB3bのエッジとレーザスポットB3aのエッジの間の幅Wは、上述したように、レンズ120aの焦点距離f2aおよびレンズ120bの焦点距離f2bのうち少なくとも一方を変えることにより、簡単に調整することができる。
【0078】
<2.第2の実施の形態>
[レーザ加工装置の構成例]
図4は、本発明を適用したレーザ加工装置の第2の実施の形態を示す図である。なお、図中、図1と対応する部分には同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
【0079】
図4のレーザ加工装置201は、図1のレーザ加工装置101に、XYスリット機構211a,211bを追加し、モジュール131の代わりにモジュール231を設け、シフト機構132の代わりにシフト機構232を設けたものである。
【0080】
XYスリット機構211aは、開口部Oaがレーザ光λaの結像位置P1aとほぼ一致するように設置される。また、XYスリット機構211aは、矩形の開口部Oaの縦横の幅を個別に調整することができ、レンズ120aにより結像されたレーザ光λaの断面を開口部Oaの形状に整形して、レンズ121aに入射させる。
【0081】
XYスリット機構211bは、開口部Obがレーザ光λbの結像位置P1bとほぼ一致するように設置される。また、XYスリット機構211bは、矩形の開口部Obの縦横の幅を個別に調整することができ、レンズ120bにより結像されたレーザ光λbの断面を開口部Obの形状に整形して、レンズ121bに入射させる。
【0082】
モジュール231は、全反射ミラー119、レンズ120b、および、XYスリット機構211bを格納するように構成される。
【0083】
シフト機構232は、例えば、アクチュエータ等により構成され、電動または手動で、レンズ120bの光軸と垂直な所定の方向にモジュール231をシフトさせる。なお、以下、モジュール231のシフト方向がx軸方向と一致するものとして説明する。
【0084】
そして、モジュール231がx軸方向にシフトするのに伴い、全反射ミラー119、レンズ120b、および、XYスリット機構211bがx軸方向にシフトする。これに伴い、レーザ光λbの光路およびXYスリット機構211bの開口部Obがx軸方向にシフトし、XYスリット機構211bを通過するレーザ光λbの位置がx軸方向にシフトする。このとき、レーザ光λbの結像位置Pb1(不図示)とXYスリット機構211bの開口部Obとは、ほぼ一致したままx軸方向にシフトする。その結果、レーザ光λbの結像位置P2b(レーザスポットB3bの照射位置)が、レンズ124の光軸と垂直な方向にシフトする。なお、この例の場合、結像位置P2bは、モジュール231の移動方向とは逆方向に、上述した式(6)に示される距離だけシフトする。
【0085】
従って、レーザ加工装置101と同様に、レーザスポットB3bの照射位置を、レーザスポットB3aとは独立して簡単に調整することができ、レーザスポットB3aとレーザスポットB3bを異なる位置に照射することができる。
【0086】
また、レーザスポットB3aおよびレーザスポットB3bのエッジが鮮明になり、加工エッジがシャープになる。その結果、加工精度を向上させることができる。
【0087】
さらに、XYスリット機構211aの開口部Oaの形状を調整することにより、レンズ120aを交換することなく、レーザスポットB3aの形状および大きさを簡単に調整することができる。同様に、XYスリット機構211bの開口部Obの形状を調整することにより、レンズ120bを交換することなく、レーザスポットB3bの形状および大きさを簡単に調整することができる。
【0088】
<3.第3の実施の形態>
[レーザ加工装置の構成例]
図5は、本発明を適用したレーザ加工装置の第3の実施の形態を示す図である。なお、図中、図4と対応する部分には同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
【0089】
図5のレーザ加工装置301は、図4のレーザ加工装置201と比較して、シフト機構311が追加され、レンズ120bの代わりにレンズ120b’が設けられている。また、全反射ミラー119、レンズ120b’、および、XYスリット機構211bがモジュール化されておらず、シフト機構232が設けられていない。
【0090】
レンズ120b’の焦点距離f2b’は、図4のレンズ120bの焦点距離f2b’より大きい値に設定される。また、XYスリット機構211bは、レンズ120b’の焦点位置より前に配置される。
【0091】
シフト機構311は、例えば、アクチュエータ等により構成され、電動または手動で、
XYスリット機構211bを、光軸に垂直で、かつ、互いに直交する方向にシフトさせる。なお、以下、XYスリット機構211bのシフト方向が、x軸方向およびy軸方向と一致するものとして説明する。
【0092】
そして、XYスリット機構211bがx軸方向またはy軸方向にシフトするのに伴い、XYスリット機構211bの開口部Obがx軸方向またはy軸方向にシフトし、XYスリット機構211bを通過するレーザ光λbの位置がx軸方向またはy軸方向にシフトする。その結果、レーザ光λbの結像位置P2b(レーザスポットB3bの照射位置)が、レンズ124の光軸と垂直な方向にシフトする。なお、この例の場合、結像位置P2bは、XYスリット機構211bの移動方向とは逆方向に、上述した式(6)に示される距離だけシフトする。
【0093】
従って、XYスリット機構211bのシフト量およびシフト方向を調整することにより、所定の距離の範囲内で、レーザスポットB3aに対するレーザスポットB3bの照射位置を任意の方向に設定することができる。
【0094】
[加工処理の具体例]
ここで、図6および図7を参照して、レーザ加工装置301を用いて、薄膜太陽電池パネル351のエッジデリーションを行う場合について説明する。なお、エッジデリーションは、矢印A11、矢印A12、矢印A13、矢印A14の方向の順番に行われるものとする。また、図2の例と同様に、レーザスポットB3bが照射された後に、レーザスポットB3aを照射することにより、エッジデリーションが行われるものとする。
【0095】
上述したように、レーザスポットB3aに対するレーザスポットB3bの照射位置を任意の方向に設定することができる。例えば、図7に示されるように、レーザスポットB3aとともに、レーザスポットB3aの四方に隣接する領域D1乃至D4のいずれかにレーザスポットB3bを照射することが可能である。
【0096】
従って、まず、領域D2にレーザスポットB3bを照射するように、シフト機構311によりXYスリット機構211bの位置を調整し、矢印A11の方向のエッジデリーションを行う。次に、領域D3にレーザスポットB3bが照射されるように、シフト機構311によりXYスリット機構211bの位置を調整し、矢印A12の方向のエッジデリーションを行う。次に、領域D4にレーザスポットB3bが照射されるように、シフト機構311によりXYスリット機構211bの位置を調整し、矢印A13の方向のエッジデリーションを行う。最後に、領域D1にレーザスポットB3bが照射されるように、シフト機構311によりXYスリット機構211bの位置を調整し、矢印A14の方向のエッジデリーションを行う。
【0097】
これにより、レーザ加工装置301では、レーザスポットB3aとレーザスポットB3bを同時に薄膜太陽電池パネル351に照射しながら、両者の照射位置を所定の順番で正確に重ねることができ、その結果、エッジデリーションの品質が向上する。また、薄膜太陽電池パネル351の各コーナーにおいて、XYスリット機構211bの位置を調整するだけでよく、制御が簡単であり、かつ、加工時間を短くすることができる。
【0098】
<4.第4の実施の形態>
[レーザ加工装置の構成例]
図8は、本発明を適用したレーザ加工装置の第4の実施の形態を示す図である。なお、図中、図4と対応する部分には同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
【0099】
図8のレーザ加工装置401は、図4のレーザ加工装置201と比較して、シフト機構411が追加され、モジュール231の代わりにモジュール421が設けられ、シフト機構232が削除されている。
【0100】
シフト機構411は、例えば、アクチュエータ等により構成され、電動または手動で、レンズ120bの光軸に垂直な方向に、XYスリット機構211bをシフトさせる。なお、以下、XYスリット機構211bのシフト方向が、x軸方向と一致するものとして説明する。
【0101】
また、2波長性ミラー118、全反射ミラー119、レンズ120b、XYスリット機構211b、レンズ121b、全反射ミラー122、2波長性ミラー123、および、シフト機構411がモジュール421内に格納されている。モジュール421は、レンズ124の光軸と一致する回転軸を中心に、矢印A21に示される方向に回転させることができる。これにより、2波長性ミラー118から2波長性ミラー123までのレーザ光λbの光路が、レンズ124の光軸と一致する回転軸を中心に回転する。その結果、レーザスポットB3aとレーザスポットB3bの相対位置を回転させることができる。
【0102】
例えば、モジュール421を回転軸回りに図8の上方向に90度回転させることにより、図9の上の図から下の図に示されるように、レーザスポットB3aに対するレーザスポットB3bの照射位置を90度回転させることができる。
【0103】
従って、モジュール421を回転軸回りに180度回転できるようにすれば、XYスリット機構211bのシフト方向とモジュール421の回転方向の組み合わせにより、レーザ加工装置301と同様に、所定の距離の範囲内で、レーザスポットB3aに対するレーザスポットB3bの照射位置を任意の方向に設定することができる。また、モジュール421を回転軸回りに90度回転できるようにすれば、XYスリット機構211bのシフト方向とモジュール421の回転方向の組み合わせにより、図7を参照して上述したように、レーザスポットB3aの四方に隣接する領域D1乃至D4のいずれかにレーザスポットB3bを照射することが可能になる。
【0104】
これにより、例えば、レーザ加工装置301と同様に、図6を参照して上述した方法により薄膜太陽電池パネル351のエッジデリーションを実行することが可能になる。
【0105】
<5.変形例>
以下、本発明の実施の形態の変形例について説明する。
【0106】
[変形例1]
本発明の実施の形態では、例えば、レーザ発振器111aから出射されたレーザ光λaおよびレーザ発振器111bから出射されたレーザ光λbを、光路を結合せずに、それぞれ直接レンズ120aまたはレンズ120bに入射するようにすることも可能である。この場合、レーザ発振器111aとレンズ120aの間において、レーザ光λaのビーム径を拡大したり、レーザ光λaをコリメートしたり、レーザ光λaの断面の強度を均一化するようにすることが望ましい。強度の均一化には、例えば、ホモジナイザ、カライドスコープを用いることができる。レーザ発振器111bとレンズ120bの間についても同様である。
【0107】
[変形例2]
また、図1のレーザ加工装置101において、モジュール131のシフト方向をレンズ120bの光軸と垂直な2つ以上の方向(例えば、x軸方向とy軸方向)にシフトできるようにしてもよい。これにより、図5のレーザ加工装置301や図8のレーザ加工装置401と同様に、レーザスポットB3aに対するレーザスポットB3bの照射位置を任意の方向に設定することが可能になる。
【0108】
[変形例3]
同様に、図4のレーザ加工装置201において、モジュール231のシフト方向をレンズ120bの光軸と垂直な2つ以上の方向(例えば、x軸方向とy軸方向)にシフトできるようにしてもよい。これにより、図5のレーザ加工装置301や図8のレーザ加工装置401と同様に、レーザスポットB3aに対するレーザスポットB3bの照射位置を任意の方向に設定することが可能になる。
【0109】
[変形例4]
また、本発明は、3種類以上の波長のレーザ光を用いる場合にも適用することが可能である。3種類以上の波長のレーザ光を用いる場合、例えば、光ファイバ116からレーザ光が出射された後、各レーザ光の光路を分岐し、光路毎に、図1、図4、図5または図8を参照して上述したレーザ光λaまたはレーザ光λbの光路上の構成と同様の構成を設けるようにすればよい。その後、各レーザ光の光路を合成した後、2波長性レンズ124に入射するようにすればよい。なお、3波長以上の波長を用いる場合、2波長レンズ124には、その波長に対応した多波長レンズが用いられる。
【0110】
なお、必ずしも全てのレーザ光の光路を個々に分岐する必要はなく、複数のレーザ光の光路を共通にするようにしてもよい。例えば、レーザ光λa,λb,λcの3種類のレーザ光を使用する場合、レーザ光λbだけ分岐し、レーザ光λaとレーザ光λcの光路を共通にするようにしてもよい。
【0111】
[変形例5]
また、以上の説明では、それぞれ異なるレーザ発振器から異なる波長のレーザ光を出射する例を示したが、1台のレーザ発振器から異なる波長のレーザ光を出射するようにしてもよい。この場合、例えば、1台のレーザ発振器から、異なる波長のパルス状のレーザ光が、所定の時間間隔で所定の順番で出射される。
【0112】
[変形例6]
さらに、以上の説明では、波長が異なる複数の種類のレーザ光を並行して使用する例を示したが、本発明は、波長以外の他の要素(例えば、偏光方向、エネルギー等)がそれぞれ異なる複数の種類のレーザ光を並行して使用する場合にも適用することができる。
【0113】
図10は、偏光方向が異なるレーザ光を用いた場合のレーザ加工装置の実施の形態を示す図である。なお、図中、図1と対応する部分には同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
【0114】
図10のレーザ加工装置501は、図1のレーザ加工装置101と比較して、レーザ発振器111a,111b、ビームスプリッタ114、2波長性ファイバ結合レンズ115、光ファイバ116、2波長性結像加工光学系レンズ117、2波長性ミラー118,123、および、2波長性結合加工光学系レンズ124の代わりに、レーザ発振器511a,511b、偏光ビームスプリッタ(PBS)512、ファイバ結合レンズ513、偏波面保存ファイバ(PANDA(Polarization-maintaining AND Absorption-reducing)ファイバ)514、結像加工光学系レンズ515、偏光ビームスプリッタ(PBS)516,517、および、結合加工光学系レンズ518を含むように構成される。
【0115】
また、全反射ミラー113、119、122は、S波の光をほぼ100%反射可能なミラーにより構成される。
【0116】
なお、結像加工光学系レンズ515,518は、それぞれ1枚の凸レンズとして図示されているが、複数の凸レンズや凹レンズの組み合わせにより構成される場合がある。
【0117】
また、以下、結像加工光学系レンズ515,518を、単にレンズ515,518と称する。
【0118】
レーザ発振器511aは、例えば、Nd:YAGレーザにより構成され、図示せぬ制御装置から入力されるパルス状の出射信号Saに同期して、所定の波長のP波のパルス状のレーザ光(以下、レーザ光Pと称する)を発振し、出射する。レーザ発振器511aから出射されたレーザ光Pは、ビームエキスパンダ112aによりビーム径が拡大されて、偏光ビームスプリッタ512に入射する。
【0119】
レーザ発振器511bは、例えば、Nd:YAGレーザにより構成され、図示せぬ制御装置から入力される出射信号Sbに同期して、レーザ光Pと同じ波長のS波のパルス状のレーザ光(以下、レーザ光Sと称する)を発振し、出射する。レーザ発振器511bから出射されたレーザ光Sは、ビームエキスパンダ112bによりビーム径が拡大された後、全反射ミラー113により反射され、偏光ビームスプリッタ512に入射する。
【0120】
なお、以下、図内に示されるように、レーザ光Pの偏光方向を紙面の上下方向とし、レーザ光Sの偏光方向を紙面に垂直な方向とする。
【0121】
偏光ビームスプリッタ512は、P波の光を透過し、S波の光を反射する特性を有している。従って、レーザ光Pが偏光ビームスプリッタ512を透過し、レーザ光Sが偏光ビームスプリッタ512により反射されることにより、レーザ光Pとレーザ光Sの光路が結合する。そして、レーザ光Pおよびレーザ光Sは、ファイバ結合レンズ513により集光されて、偏波面保存ファイバ514に入射し、偏光方向がそのまま維持されたまま伝送される。
【0122】
偏波面保存ファイバ514の出射端面514Aの断面は正方形になっており、偏波面保存ファイバ514から出射されるレーザ光P,Sの断面B1は、幅(一辺の長さ)d1の正方形となる。また、レーザ光P,Sの断面B1の強度がほぼ均一化される。そして、偏波面保存ファイバ514から出射されたレーザ光P,Sは、レンズ515によりコリメートされ、偏光ビームスプリッタ516に入射する。
【0123】
偏光ビームスプリッタ516は、波長Pの光を透過し、波長Sの光を反射する特性を有している。従って、レーザ光Pが偏光ビームスプリッタ516を透過し、レーザ光Sが偏光ビームスプリッタ516により反射されることにより、レーザ光Pとレーザ光Sの光路が分離される。
【0124】
偏光ビームスプリッタ516を透過したレーザ光Pは、レンズ120aにより結像位置P1aにおいて結像する。さらに、レーザ光Pは、レンズ121aによりコリメートされ、偏光ビームスプリッタ517に入射する。
【0125】
一方、偏光ビームスプリッタ516により反射されたレーザ光Sは、さらに全反射ミラー119により反射された後、レンズ120bにより結像位置P1bにおいて結像する。さらに、レーザ光Sは、レンズ121bによりコリメートされ、全反射ミラー122により反射され、偏光ビームスプリッタ517に入射する。
【0126】
偏光ビームスプリッタ517は、波長Pの光を透過し、波長Sの光を反射する特性を有している。従って、レーザ光Pが偏光ビームスプリッタ517を透過し、レーザ光Sが偏光ビームスプリッタ517により反射されることにより、レーザ光Pとレーザ光Sの光路が結合する。
【0127】
その後、レーザ光Pおよびレーザ光Sは、レンズ518により、それぞれ結像位置P2aおよび結像位置P2bにおいて結像する。そして、加工対象物の加工面が結像位置P2a,P2b付近に設置されることにより、結像位置P2a付近におけるレーザ光Pの像B3a(レーザスポットB3a)、および、結像位置P2b付近におけるレーザ光Sの像B3b(レーザスポットB3b)により加工対象物の加工が行われる。
【0128】
これにより、上述した実施の形態と同様に、波長が同じで偏光方向が異なるレーザスポットB3a,B3bを、所定の方向に走査しながら、ほぼ同じ位置に時間差を設けて照射することを、簡単に実現することができる。そのため、例えば、1種類の波長で効率の良い加工ができるような素材に対して、2倍の速度で加工することが可能になる。
【0129】
なお、本発明は、1種類の要素だけでなく、複数の要素の組み合わせ(例えば、波長と偏光方向の組み合わせ等)が異なる複数の種類のレーザ光を並行して使用する場合にも適用することも可能である。
【0130】
[変形例7]
また、レーザ光の光路を分離または結合したり、レーザ光の光路の方向を変更したりする手段は、上述した例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上述した例以外に、プリズムやハーフミラー等を用いることも可能である。
【0131】
[変形例8]
さらに、以上の説明では、XYスリット機構の開口部の形状を矩形とする例を示したが、矩形以外の形状、例えば、円形や楕円形等にすることも可能である。また、以上の説明では、光ファイバ161および偏波面保存ファイバ514の出射端面の形状を正方形とする例を示したが、矩形等の他の形状にすることも可能である。
【0132】
[変形例9]
また、レーザスポットB3a,B3bの走査は、例えば、ガルバノミラー等による結像位置P2a,P2bの走査、加工対象物の移動、レーザ加工装置の移動、またはそれらの組み合わせにより実施することができる。
【0133】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0134】
101 レーザ加工装置
111a,111b レーザ発振器
112a,112b ビームエキスパンダ
113 全反射ミラー
114 ビームスプリッタ
115 2波長性ファイバ結合レンズ
116 光ファイバ
117 2波長性結像加工光学系レンズ
118 2波長性ミラー
119 全反射ミラー
120a乃至121b,120b’ 結像加工光学系レンズ
122 全反射ミラー
123 2波長性ミラー
124 2波長性結合加工光学系レンズ
131 モジュール
132 シフト機構
201 レーザ加工装置
211a,211b XYスリット機構
231 モジュール
232 シフト機構
301 レーザ加工装置
311 シフト機構
401 レーザ加工装置
411 シフト機構
421 モジュール
501 レーザ加工装置
511a,511b レーザ発振器
512 偏光ビームスプリッタ
513 ファイバ結合レンズ
514 偏波面保存ファイバ
515 結像加工光学系レンズ
516,517 偏光ビームスプリッタ
518 結合加工光学系レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のレーザ光および第2のレーザ光を用いて加工対象物の加工を行うレーザ加工装置において、
前記第1のレーザ光が通過する第1の光路上の第1の結像位置において、前記第1のレーザ光を結像する第1のレンズと、
前記第1の光路上の前記第1の結像位置より後で前記第1のレーザ光をコリメートする第2のレンズと、
前記第2のレーザ光が通過する第2の光路上の第2の結像位置において、前記第2のレーザ光を結像する第3のレンズと、
前記第2の光路上の前記第2の結像位置より後で前記第2のレーザ光をコリメートする第4のレンズと、
前記第2のレンズおよび前記第4のレンズの後段において、前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光の光路を結合する結合手段と、
前記結合手段と前記加工対象物の間に設けられ、前記第1のレーザ光および前記第2のレーザ光を結像する第5のレンズと、
前記第2の光路を調整して、前記第5のレンズによる前記第2のレーザ光の結像位置である第3の結像位置の光軸と垂直な方向における位置を調整する調整手段と
を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記第2の結像位置の光軸と垂直な方向の位置を調整することにより、前記第3の結像位置の光軸と垂直な方向の位置を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記第1の光路上の前記第1のレンズと前記第2のレンズの間に設けられる第1のスリットと、
前記第2の光路上の前記第3のレンズと前記第4のレンズの間に設けられる第2のスリットと
をさらに備え、
前記調整手段は、前記第2のスリットの開口部の光軸と垂直な方向における位置を調整することにより、前記第3の結像位置の光軸と垂直な方向の位置を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記第2のスリットは、前記第2の結像位置付近に設けられ、
前記調整手段は、前記第2の結像位置を前記第2のスリットの開口部とともに移動させる
ことを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記第4のレンズの後段において、前記第2の光路の方向を前記結合手段の方向に変更する変更手段を
さらに備え、
前記調整手段は、前記第2の光路を前記第5のレンズの光軸と一致する回転軸を中心に回転させることにより、前記第3の結像位置の光軸と垂直な方向の位置を調整する
ことを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記第1のレーザ光および前記第2のレーザ光を伝送する光ファイバと、
前記光ファイバから出射された前記第1のレーザ光および前記第2のレーザ光をコリメートする第6のレンズと、
前記第6のレンズの後段において、前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光の光路を前記第1の光路と前記第2の光路に分離する分離手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記光ファイバの出射端面の形状が角形である
ことを特徴とする請求項6に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記加工対象物の表面上で、前記第3の結像位置を移動させる走査手段を
さらに備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
少なくとも第1のレーザ光および第2のレーザ光を用いて加工対象物の加工を行うレーザ加工方法において、
前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光を発生させ、
前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光をそれぞれ同一形状または異なる形状、かつ加工対象物の表面に隣接して結像させ、
隣接させた前記結像の並んだ方向に結像位置を移動させ、または加工対象物の相対的な位置を移動させ、
連続的に対象物の表面を加工することを特徴とするレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−135808(P2012−135808A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291337(P2010−291337)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】