説明

レーザ加工装置及びレーザ加工方法

【課題】深い溶け込み深さが要求され、かつ、溶接欠陥が発生し易い条件においても、溶込み深さと溶接欠陥の防止を両立させることができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】第1レーザ光源2から射出された第1レーザビームB1は、コリメートレンズ3により平行光線とされ、所定周期で回動方向8に回転ミラー4を回動させることにより、その反射角度が所定周期で変更され、固定ミラー5によりダイクロイックミラー6へ導かれ、ダイクロイックミラー6により反射されると共に第2レーザビームB2と重畳された後、集光レンズ7により集光されて、ウィービング方向9にウィービングされながら対象部材10に照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置及びレーザ加工方法に関し、例えば、レーザビームを用いて溶接等の熱加工を行う場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工は、レンズ等を用いてレーザビームを集光することにより、高いエネルギ密度の熱源とし、レーザビームを集光した状態で金属等の母材に照射することにより、母材を溶融させて、溶接、切断、肉盛り、表面処理等の加工を行うものである。
【0003】
例えば、レーザビームによる溶接(レーザ溶接)を行う際には、母材の開先部分に対して、集光されたレーザビームを一定速度で移動させながら連続的に照射して行う。このとき、母材の開先部分が瞬間的に溶融、蒸発され、その蒸発の反力により、母材の表面から内部まで一貫するキーホールが形成される。そして、キーホールの周囲には溶融金属からなる溶融池が形成され、キーホールの進行方向と逆方向の溶融池の溶融金属が冷却されて凝固して、溶接が行われることになる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−111519号公報
【特許文献2】特開2003−251484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、レーザ溶接では、集光して高エネルギ化したレーザビームを移動しながら母材へ照射することにより、形成したキーホールを移動させて溶接を行っている。この際、キーホールの生成、移動に伴い、ポロシティ(又はブローホール)と呼ばれる気泡状の空洞が取り残され、溶接欠陥となる問題があった。
【0006】
具体的には、レーザビームの移動に伴い、キーホールとして形成された穴も移動するが、キーホールの先端部付近では、キーホールの中の雰囲気ガスを巻き込み易く、気泡状の空洞が取り残された状態で凝固し、溶接欠陥となることがあった。又、レーザビームの移動に伴い、キーホールの中間部の形状が真直な形状ではなく、くびれた形状となり、キーホール中の雰囲気ガスを巻き込み易い状態となって、気泡状の空洞が取り残された状態で凝固して、溶接欠陥となることもあった。更に、溶融池の溶融金属の対流により、レーザビームの移動に伴い、キーホールの開口部を塞ぐように溶融金属が覆い被さり、気泡状の空洞が取り残された状態で凝固して、溶接欠陥となることもあった。このように、レーザ溶接を行う際、キーホールの形状が不安定になると、レーザ溶接を行った後の金属中には、ポロシティと呼ばれる気泡状の空洞が取り残され、これが溶接欠陥の要因となっていた。
【0007】
このように、レーザ溶接においては、キーホールの不安定崩壊に起因する欠陥(ポロシティ)を防止する方法が求められていた。このような問題に対する解決方法1つとして、本願の発明者等は、既に出願した特願2005−085319において、レーザ溶接の際、複数の波長のレーザビームを組み合わせると共にレーザビーム径を1mm以下に小さくすることにより、欠陥抑制効果が得られることを確認している。ところが、レーザビーム径を小さくしすぎると、溶込み深さが浅くなり、溶接時の効率が低下するという問題が発生していた。つまり、溶込み深さと欠陥抑制を両立させる方法はなく、深い溶込みが得られるレーザビーム径においても、溶接欠陥を防止する方法が求められていた。
【0008】
更には、レーザ溶接により、重ね溶接を行う際には、別の原因により、キーホールの形状が不安定になり、レーザ溶接を行った後の金属中にポロシティが取り残されて、溶接欠陥となっていた。この原因を、図17を参照して説明する。
【0009】
図17(a)に示すように、レーザ溶接により、重ね溶接を行う際には、母材となる下板と上板を重ね合わせ、母材の開先部分に対して、集光されたレーザビームを矢印方向に一定速度で移動させながら連続的に照射する。このとき、母材の開先部分が瞬間的に溶融、蒸発され、上板の表面から下板の方まで一貫するキーホールを形成することができ、キーホールの周囲に溶融金属からなる溶融池を形成することができる。従って、キーホールの進行に伴い、キーホールの進行方向と逆方向における溶融池の溶融金属が冷却されて溶接金属として凝固し、それにより、下板と上板とが溶接されることになる。
【0010】
ところが、重ね溶接を行う場合には、下板と上板と間にギャップ(隙間)が存在し、ギャップの境界面においては、キーホールの維持が困難で、くびれた形状となり易い状況であった(図17(a)、(b)参照。なお、理解しやすくするため、ギャップの厚さを誇張して大きく図示している。)。具体的には、重ね溶接の際には、下板と上板の完全な密着は不可能であり、そのため、下板と上板と間にギャップが生じ、上板を貫通したレーザビームにより再形成される下板側のキーホールは、その安定開口が難しく、境界面近傍におけるキーホールの不安定化は避けることができない状況であった。このような状況では、くびれた部分より先の部分において、キーホール中の雰囲気ガスを巻き込み易く、その結果、気泡状の空洞が取り残された状態で凝固してしまい、ポロシティ、つまり、溶接欠陥が発生していた(図17(c))。重ね溶接の場合、特に、上板が2mm以上の厚さになると、この溶接欠陥がより顕著に発生しており、より厚い厚さの板厚であっても、つまり、より深い溶け込み深さが要求され、かつ、より溶接欠陥が発生し易い状況であっても、溶込み深さを確保して、溶接欠陥を防止する方法が求められていた。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、深い溶け込み深さが要求され、かつ、溶接欠陥が発生し易い条件においても、溶込み深さと溶接欠陥の防止を両立させることができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する第1の発明に係るレーザ加工装置は、
1つ又は互いに異なる複数の波長からなる第1レーザビームを射出する第1レーザ光源と、
前記第1レーザビームより短い1つ又は互いに異なる複数の波長からなり、かつ、前記第1レーザビームより集光径を大きくする第2レーザビームを射出する第2レーザ光源と、
前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを重畳する重畳手段と、
重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを集光する集光手段とを備え、
集光された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを対象部材に照射して、所望のレーザ加工を行うレーザ加工装置において、
前記第1レーザビームの前記対象部材における照射位置を、レーザ加工を行う進行方向と同じ方向に周期移動させると共に、前記照射位置の周期移動量を、溶け込み深さが大きくなる条件の前記第1レーザビームが形成するキーホールの開口径の5%乃至100%の大きさ、望ましくは、40%の大きさとする第1周期移動手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第2の発明に係るレーザ加工装置は、
上記第1の発明に記載のレーザ加工装置において、
更に、前記第1レーザビームの前記対象部材における照射位置を、前記周期移動方向とは異なる方向に周期移動させる第2周期移動手段を少なくとも1つ以上設けたことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第3の発明に係るレーザ加工装置は、
上記第1又は第2の発明に記載のレーザ加工装置において、
更に、前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、レーザ加工を行う進行方向と同じ方向に周期移動させる第3周期移動手段を設けたことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第4の発明に係るレーザ加工装置は、
上記第3の発明に記載のレーザ加工装置において、
更に、前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、前記周期移動方向とは異なる方向に周期移動させる第4周期移動手段を少なくとも1つ以上設けたことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する第5の発明に係るレーザ加工装置は、
1つ又は互いに異なる複数の波長からなる第1レーザビームを射出する第1レーザ光源と、
前記第1レーザビームより短い1つ又は互いに異なる複数の波長からなり、かつ、前記第1レーザビームより集光径を大きくする第2レーザビームを射出する第2レーザ光源と、
前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを重畳する重畳手段と、
重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを集光する集光手段とを備え、
集光された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを対象部材に照射して、所望のレーザ加工を行うレーザ加工装置において、
重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、レーザ加工を行う進行方向と同じ方向に周期移動させると共に、前記照射位置の周期移動量を、溶け込み深さが大きくなる条件の前記第1レーザビームが形成するキーホールの開口径の5%乃至100%の大きさ、望ましくは、40%の大きさとする第5周期移動手段を設けたことを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決する第6の発明に係るレーザ加工装置は、
上記第5の発明に記載のレーザ加工装置において、
更に、重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、前記周期移動方向とは異なる方向に周期移動させる第6周期移動手段を少なくとも1つ以上設けたことを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決する第7の発明に係るレーザ加工装置は、
上記第6の発明に記載のレーザ加工装置において、
前記第5周期移動手段又は前記第6周期移動手段のうち前記対象部材に近い方を、重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの反射角度を周期的に変更する凸側のシリンドリカル面を用いたシリンドリカルミラーとしたことを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決する第8の発明に係るレーザ加工装置は、
上記第6の発明に記載のレーザ加工装置において、
前記第5周期移動手段又は前記第6周期移動手段のうち前記対象部材に近い方を、重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの反射角度を周期的に変更する凸側のトロイダル面を用いたトロイダルミラーとしたことを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決する第9の発明に係るレーザ加工装置は、
上記第1乃至第8のいずれかの発明に記載のレーザ加工装置において、
前記第1周期移動手段、前記第2周期移動手段、前記第3周期移動手段、前記第4周期移動手段、前記第5周期移動手段、又は、前記第6周期移動手段の少なくとも一つを、前記第1レーザビーム又は前記第2レーザビーム、若しくは、前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの反射角度を周期的に変更する回転ミラーとしたことを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決する第10の発明に係るレーザ加工装置は、
上記第1乃至第9のいずれかの発明に記載のレーザ加工装置において、
前記第1周期移動手段、前記第2周期移動手段、前記第3周期移動手段、前記第4周期移動手段、前記第5周期移動手段、又は、前記第6周期移動手段の少なくとも一つを、前記第1レーザビーム又は前記第2レーザビーム、若しくは、前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの光路を周期的に平行移動する平行移動ミラーとしたことを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決する第11の発明に係るレーザ加工装置は、
上記第1乃至第10のいずれかの発明に記載のレーザ加工装置において、
前記第1周期移動手段、前記第2周期移動手段、前記第3周期移動手段、前記第4周期移動手段の少なくとも一つを、前記第1レーザ光源又は前記第2レーザ光源、若しくは、前記第1レーザ光源及び前記第2レーザ光源の入射位置を入射平面上で周期的に平行移動する平行移動手段としたことを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決する第12の発明に係るレーザ加工装置は、
上記第1乃至第11の発明のいずれかに記載のレーザ加工装置において、
前記対象部材は、重ね合わせた部材であることを特徴とする。
【0024】
上記課題を解決する第13の発明に係るレーザ加工方法は、
1つ又は互いに異なる複数の波長からなる第1レーザビームと、前記第1レーザビームより短い1つ又は互いに異なる複数の波長からなり、かつ、前記第1レーザビームより集光径を大きくする第2レーザビームとを重畳し、
重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを集光し、
集光された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを対象部材に照射して、所望のレーザ加工を行うレーザ加工方法において、
前記第1レーザビームの前記対象部材における照射位置を、レーザ加工を行う進行方向と同じ方向に周期移動させると共に、前記照射位置の周期移動量を、溶け込み深さが大きくなる条件の前記第1レーザビームが形成するキーホールの開口径の5%乃至100%の大きさ、望ましくは、40%の大きさとすることを特徴とする。
【0025】
上記課題を解決する第14の発明に係るレーザ加工方法は、
上記第13の発明に記載のレーザ加工方法において、
更に、前記第1レーザビームの前記対象部材における照射位置を、前記周期移動方向とは異なる少なくとも1つ以上の方向に周期移動させることを特徴とする。
【0026】
上記課題を解決する第15の発明に係るレーザ加工方法は、
上記第13又は第14の発明に記載のレーザ加工方法において、
更に、前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、レーザ加工を行う進行方向と同じ方向に周期移動させることを特徴とする。
【0027】
上記課題を解決する第16の発明に係るレーザ加工方法は、
上記第15の発明に記載のレーザ加工方法において、
更に、前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、前記周期移動方向とは異なる少なくとも1つ以上の方向に周期移動させることを特徴とする。
【0028】
上記課題を解決する第17の発明に係るレーザ加工方法は、
1つ又は互いに異なる複数の波長からなる第1レーザビームと、前記第1レーザビームより短い1つ又は互いに異なる複数の波長からなり、かつ、前記第1レーザビームより集光径を大きくする第2レーザビームとを重畳し、
重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを集光し、
集光された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを対象部材に照射して、所望のレーザ加工を行うレーザ加工方法において、
重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、レーザ加工を行う進行方向と同じ方向に周期移動させると共に、前記照射位置の周期移動量を、溶け込み深さが大きくなる条件の前記第1レーザビームが形成するキーホールの開口径の5%乃至100%の大きさ、望ましくは、40%の大きさとすることを特徴とする。
【0029】
上記課題を解決する第18の発明に係るレーザ加工方法は、
上記第17の発明に記載のレーザ加工方法において、
更に、重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、前記周期移動方向とは異なる1つ以上の方向に周期移動させることを特徴とする。
【0030】
上記課題を解決する第19の発明に係るレーザ加工方法は、
上記第18の発明に記載のレーザ加工方法において、
前記周期移動は、凸側のシリンドリカル面のシリンドリカルミラーを前記対象部材に近い方のミラーとして用い、重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの反射角度を周期的に変更することにより行うことを特徴とする。
【0031】
上記課題を解決する第20の発明に係るレーザ加工方法は、
上記第18の発明に記載のレーザ加工方法において、
前記周期移動は、凸側のトロイダル面のトロイダルミラーを前記対象部材に近い方のミラーとして用い、重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの反射角度を周期的に変更することにより行うことを特徴とする。
【0032】
上記課題を解決する第21の発明に係るレーザ加工方法は、
上記第13乃至第20のいずれかの発明に記載のレーザ加工方法において、
前記周期移動は、回転ミラーを用い、前記第1レーザビーム又は前記第2レーザビーム、若しくは、前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの反射角度を周期的に変更することにより行うことを特徴とする。
【0033】
上記課題を解決する第22の発明に係るレーザ加工方法は、
上記第13乃至第21のいずれかの発明に記載のレーザ加工方法において、
前記周期移動は、平行移動ミラーを用い、前記第1レーザビーム又は前記第2レーザビーム、若しくは、前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの光路を周期的に平行移動することにより行うことを特徴とする。
【0034】
上記課題を解決する第23の発明に係るレーザ加工方法は、
上記第13乃至第22のいずれかの発明に記載のレーザ加工方法において、
前記周期移動は、前記第1レーザ光源又は前記第2レーザ光源、若しくは、前記第1レーザ光源及び前記第2レーザ光源の入射位置を入射平面上で周期的に平行移動することにより行うことを特徴とする。
【0035】
上記課題を解決する第24の発明に係るレーザ加工方法は、
上記第13乃至第23の発明のいずれかに記載のレーザ加工方法において、
前記対象部材は、重ね合わせた部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、レーザ加工の進行方向と同じ方向に、少なくとも、キーホールを形成する第1レーザビームを所定周期、所定量で周期振動させながら照射するので、溶接欠陥が発生し易い条件、例えば、重ね溶接等を行う場合であっても、実質的なキーホール径を拡大することにより、キーホールの不安定崩壊に起因する溶接欠陥を防止することができ、大きな溶込み深さを確保すると共に溶接欠陥の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法の実施形態のいくつかを説明する。
【実施例1】
【0038】
図1は、本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の一例を示す概略図である。なお、本発明に係るレーザ加工装置において、実際の光学系の構成は複雑なものであるが、本実施例を示す図1を含め、後述する他の実施例を示す図面においても、その構成を簡略化して、模式的に図示する。
【0039】
本実施例のレーザ加工装置1は、図1に示すように、第1レーザビームB1の光学系として、1つ又は互いに異なる複数の波長からなる第1レーザビームB1を射出する第1レーザ光源2と、射出された第1レーザビームB1を平行光線にするコリメートレンズ3と、第1レーザビームB1を反射すると共に、図示しないモータ等により回転角度を所定周期で変更することにより、第1レーザビームB1の反射角度を所定周期で変更する回転ミラー4(第1周期移動手段)と、第1レーザビームB1を反射する固定ミラー5と、第1レーザビームB1を反射すると共に後述の第2レーザビームB2を透過して、第1レーザビームB1と第2レーザビームB2を重畳するダイクロイックミラー6(重畳手段)と、平行光線の第1レーザビームB1を集光する集光レンズ7(集光手段)を有している。
【0040】
更に、本実施例のレーザ加工装置1は、第2レーザビームB2の光学系として、第1レーザビームB1とは波長が異なり、1つ又は互いに異なる複数の波長からなる第2レーザビームB2を射出する第2レーザ光源11と、射出された第2レーザビームB2を平行光線にするコリメートレンズ12と、第2レーザビームB2を透過すると共に上記第1レーザビームB1を反射するダイクロイックミラー6と、平行光線の第2レーザビームB2を集光する集光レンズ7を有している。
【0041】
従って、第1レーザ光源2から射出された第1レーザビームB1は、コリメートレンズ3により平行光線とされ、回転ミラー4を回動方向8に所定周期で回動させることにより反射角度が所定周期で変更され、固定ミラー5によりダイクロイックミラー6側へ導かれ、ダイクロイックミラー6により反射される際、第2レーザビームB2と重畳される。又、第2レーザ光源11から射出された第2レーザビームB2は、コリメートレンズ12により平行光線とされ、ダイクロイックミラー6を透過する際、第1レーザビームB1と重畳される。そして、重畳された第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2は、集光レンズ7により集光されて、第1レーザビームB1がウィービング方向9に所定周期でウィービング(周期移動)されながら対象部材10に照射されて、所望のレーザ加工を行うことになる。
【0042】
第1レーザ光源2は、例えば、1つ又は複数のYAGレーザやファイバレーザ等から構成され、直接的に、又は、光ファイバ等を介して間接的にレーザ加工装置1に接続されている。又、第2レーザ光源11は、例えば、1つ又は複数の半導体レーザ(レーザダイオード等)から構成され、同じく、直接的に、又は、光ファイバ等を介して間接的にレーザ加工装置1に接続されている。
【0043】
又、第1レーザ光源2から射出される第1レーザビームB1は、レーザ加工装置1の中心ビームとなるものであり、溶け込みを促進すべく、針状のキーホールを形成するために照射されるものであり、第2レーザ光源11から射出される第2レーザビームB2は、主に、溶融池の安定化のために照射されるものである。例えば、第1レーザビームB1は、1070nmの波長としており、又、第2レーザビームB2の波長は、第1レーザビームB1より短い波長、例えば、808nm、940nm、980nm等の複数の波長を有する構成としている。
【0044】
又、コリメートレンズ3、12は、各々独立してズーム動作が可能なように、第1レーザビームB1の光軸、第2レーザビームB2の光軸に沿って、その位置が移動可能である。集光レンズ7も、第1レーザビームB1の集光径、第2レーザビームB2の集光径を所望の大きさに調整可能なように、第1レーザビームB1の光軸、第2レーザビームB2の光軸に沿って、その位置が移動可能である。本発明において、第2レーザビームB2の対象部材10における集光径は、第1レーザビームB1の対象部材10における集光径より相対的に大きくすることが望ましく、そのような状態になるように、コリメートレンズ3、12、集光レンズ7等の光学系は適宜に設定されている。
【0045】
又、ダイクロイックミラー6は、第1レーザビームB1と第2レーザビームB2を重畳するため、第1レーザビームB1を反射し、第2レーザビームB2を透過する透過・反射特性を有し、透過・反射特性の遷移域の変化が急峻なものが望ましい。
【0046】
なお、図示していないが、レーザ加工装置1には、キーホール及び溶融池が形成される対象部材10の周囲に、アルゴン等のシールドガスを供給するシールドガス供給装置が設けてあり、レーザ加工の際に対象部材10の酸化を防ぐようにしている。
【0047】
又、同じく図示していないが、レーザ加工装置1と対象部材10の相対位置を移動可能な駆動装置も設けてあり、対象部材10の形状に応じて、その相対位置を移動することにより、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の照射位置を任意の位置に移動し、レーザ加工の進行方向を制御して、対象部材の所望の位置を溶接可能としている。
【0048】
本実施例においては、上記駆動装置を制御することにより、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の進行方向、即ち、レーザ加工の進行方向を制御しているが、更に、ウィービング方向9をレーザ加工の進行方向と同じ方向として、第1レーザビームB1の対象部材10における照射位置を、直線状(一次元方向)にウィービング動作している。
【0049】
ここで、図2を用いて、第1レーザビームB1のウィービング動作の説明を行う。なお、図2において、実線は、第1レーザビームB1の対象部材10における集光径を示し、点線は、第2レーザビームB2の対象部材10における集光径を示している。又、図2においては、上方方向をレーザ加工の進行方向としている。
【0050】
図2に示すように、対象部材10表面において、第2レーザビームB2の集光径は、第1レーザビームB1の集光径より大きくなるように設定されており、例えば、第1レーザビームB1の集光径は100〜200μm程度、第2レーザビームB2の集光径は750μm程度としている。
【0051】
そして、第1レーザビームB1と第2レーザビームB2は、基準位置(図2における0°参照)において、それらの集光径の中心位置を同軸にして照射され、第1レーザビームB1は、その中心位置をウィービング動作の中心位置として、照射位置がウィービングされている。
【0052】
具体的には、図1に示したレーザ加工装置1における回転ミラー4を、回動方向8に所定周期で回動させることにより、第1レーザビームB1の照射位置を、図2上における上下方向(ウィービング方向9)にウィービング動作させている。例えば、回転ミラー4を所定周期で、その角度を±1°の範囲で回動させると、図2に示すように、回転ミラー4の回転角度に応じて、第1レーザビームB1の照射位置が移動すると共にその照射形状も変化する。例えば、0°において、第1レーザビームB1のビーム形状は、第2レーザビームB2のビーム形状に同心の円形状であるが、±0.5°、±1°と角度が大きくなるに従い、ビーム形状は、そのウィービング方向9に長い楕円形状となっている。
【0053】
本願発明者等の知見によれば、図3の上段のグラフに示すように、形成されたキーホールの開口径に対して、第1レーザビームB1のウィービング量を変化させた場合、ポロシティの発生個数に関しては、形成されたキーホールの開口径に対して、所定のウィービング量(下記条件における最適値は40%)以上であれば、その発生個数を0にすることができる。これは、ウィービング量の下限値を規定する条件であり、対象部材10の種類、溶接の進行速度、要求される溶込み深さ等に応じて、適宜な条件に設定され、最小値としては5%程度となる。
一方、図3の下段のグラフに示すように、形成されたキーホールの開口径に対して、第1レーザビームB1のウィービング量を変化させた場合、レーザビームが形成する溶込み深さに関しては、形成されたキーホールの開口径に対して、所定のウィービング量(同40%)までは、溶込み深さは微減するに止まり、所定のウィービング量(同40%)から100%までは、溶込み深さが徐々に減少し、ウィービング量が100%を越えると、溶込み深さが大きく減少し、所望の溶込み深さを得難い状況になる。これは、ウィービング量の上限値を規定する条件となる。
つまり、ポロシティ発生の抑制と所望の溶込み深さを両立させるには、第1レーザビームB1のウィービング量は、ウィービング停止時において、溶け込み深さが大きくなる条件(例えば、レーザビームの出力、集光径等)の第1レーザビームB1により形成されるキーホールの開口部の径の5%乃至100%の大きさ、望ましくは、40%程度の大きさが最適であった。これは、後述する他の実施例でも同様である。従って、少なくとも、第1レーザビームB1による溶込み深さができるだけ大きくなるように、第1レーザビームB1の出力、集光径等の条件を設定すると共に、生成されるキーホールの開口径の40%程度となるように、第1レーザビームB1のウィービング量を設定すればよい。又、第1レーザビームB1のウィービングの周期(周波数)も、対象部材10の種類、溶接の進行速度、要求される溶込み深さ等に応じて、適宜な条件に設定される。例えば、対象部材10をステンレス鋼、溶接の進行速度を0.4m/分とする条件の場合、ウィービングの周波数は、60Hz〜100Hz程度、ウィービング量は、0.5mm程度が良好であった。
【0054】
次に、上記ウィービング動作に伴う作用、効果について、図4を用いて説明する。
図4(a)に示すように、対象部材である下板10aと上板10bを重ね溶接する場合、下板10aと上板10bの間に生じるギャップ10cは避けることができない。なお、ここでも、理解しやすくするため、ギャップ10cの厚さを誇張して大きく図示している。
【0055】
対象部材10を溶接する際には、第1レーザビームB1、第2レーザビームB2を溶接の進行方向13に移動させながら溶接を行う。このとき、上板10bの上方側から第1レーザビームB1、第2レーザビームB2を照射して、第1レーザビームB1によりキーホール14を形成すると共に、第2レーザビームB2によりキーホール14の周囲に溶融池16を形成している。本実施例においては、第1レーザビームB1を、進行方向13と同じ方向のウィービング方向9に、所定周期でウィービング動作しているため、図4(a)の実線で示すキーホール14のように、実質的なキーホール14の径を拡大すると共に安定的に開口することが可能となる。参考のため、ウィービングが無い状態を点線のキーホール15として図示している。
【0056】
この状況を更に詳細に説明すると、例えば、図4(b)に示すように、溶接の進行に伴い、第1レーザビームB1aの照射時のある瞬間に、従来と同様な気泡17がキーホール15aの下方側に形成されたとしても、図4(c)に示すように、次の瞬間には、ウィービング動作により後方側へ移動した第1レーザビームB1bの照射と共にキーホール15bも後方側へ移動して、形成された気泡17がキーホール15bに吸収されることになる。つまり、ウィービング動作により移動したキーホールにより、気泡17が強制的に吸収(排除)されて、進行方向13の後方に気泡17を残留させることが無いようにしている。特に、前述したように、重ね溶接においては、ギャップ10cの存在により、その近傍において、キーホールが不安定となり、気泡17が残留して、ポロシティとなることが多いが、本実施例のように、第1レーザビームB1をウィービングさせることにより、気泡の残留を防止し、その結果、ポロシティの生成を防止することができる。
【0057】
図5は、図4の状況を実際に確認するため、溶接時におけるキーホールの形成状況を、時間を追ってX線により観測した断面写真である。なお、(1)→(2)→(3)は従来法で行ったものあり、(4)→(5)→(6)は、本発明の方法で行ったものである。これらの溶接条件は、総レーザパワー(第1レーザビームB1と第2レーザビームB2の出力の和)を5kW、溶接の進行速度を0.4m/分、対象部材を1枚の平板のステンレス鋼(SUS304)、シールドガスをアルゴン(Ar)としており、ウィービング条件を、その周波数を60Hz、その量を0.5mmとしており、ウィービングの有無以外は同条件で溶接を行っている。
【0058】
図5の(1)→(2)→(3)に示すように、従来法においては、溶接時におけるキーホールの進行(溶接の進行)に伴い、気泡が形成されると共に進行方向後方側に残留されて、ポロシティとなる様子がわかる。これに対して、本発明の方法では、図5の(4)→(5)→(6)に示すように、溶接時におけるキーホールの進行に伴い、ある瞬間、気泡が形成されてはいるが、次の瞬間には、進行方向後方側に残された気泡が、ウィービングにより後方に移動したキーホールに再び吸収されて、気泡として残留することはなく、ポロシティの生成が防止できることがわかる。
【0059】
本発明の効果を、重ね溶接において確認するため、放射線透過(RT:Radiography Test)検査により、X線等を用いて内部欠陥を検査したものが図6である。ここでも、従来法との比較を行っている。なお、ここでの溶接条件は、総レーザパワーを4kW、溶接の進行速度を4m/分、対象部材を厚さ2mmのアルミニウム(A6061)の平板を2枚重ねたものとしており、ウィービング条件を、その周波数を80Hz、回転ミラー4の回転角度を±0.6°としており、ウィービングの有無以外は同条件で溶接を行っている。
【0060】
図6に示す断面マクロ(1)及びRT検査結果(2)からわかるように、従来法の溶接では、多数のポロシティが形成されている。特に、従来法では、上板が2mm以上の厚さなると、より顕著に発生していた。これに対して、図6に示す断面マクロ(3)及びRT検査結果(4)からわかるように、本発明の方法では、ポロシティが全く生成されていないことがわかり、本発明の有効性が確認できた。なお、図6に示すRT検査結果(4)には、溶接部分がわかるように、点線を付してある。
【0061】
このように、本発明においては、上述したような制御下でレーザ加工を行うことにより、溶込み深さを維持しつつ、実質的なキーホール径を拡大することができ、その結果、キーホールの不安定崩壊を抑制して、ポロシティの残留による溶接欠陥の発生を防止することができる。又、本発明は、対象部材を、重ね合わせた部材(例えば、図4に示す下板10a、上板10b)とする場合に、特に有用となる。
【0062】
なお、本実施例において、第1レーザビームB1のウィービング方向9は、レーザ加工の進行方向13と同じ方向としているが、更に、レーザ加工の進行方向13と異なる少なくとも1つ以上の方向に、所定周期、所定量のウィービング動作を追加するようにしてもよい(第2周期移動手段)。例えば、固定ミラー5を回転ミラー4とは異なる方向の回動軸を持つ回転ミラーに変更することにより、第1レーザビームB1のウィービング方向を2次元方向にウィービング動作するようにしてもよい。この場合、制御が複雑になるが、第1レーザビームB1のウィービングの軌跡を円状、楕円状とすることもできる。このことにより、レーザ加工の進行方向に対して、第1レーザビームB1の対象部材10における照射位置を任意の方向にウィービング可能となり、複雑な形状のレーザ加工に対応することができる。
【実施例2】
【0063】
図7は、本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例を示す概略図である。なお、図7においては、上記実施例に示したレーザ加工装置と同等の構成には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0064】
図7に示すように、本実施例のレーザ加工装置21は、第2レーザビームB2の光学系は上記実施例1(図1)と同等の構成であるが、第1レーザビームB1の光学系としては、第1レーザビームB1を射出する第1レーザ光源2と、射出された第1レーザビームB1を平行光線にするコリメートレンズ3と、第1レーザビームB1を反射すると共に、図示しない移動装置等により所定周期で平行移動(スライド)することにより、第1レーザビームB1の光路を所定周期で平行移動する平行移動ミラー22(第1周期移動手段)と、第1レーザビームB1を反射する固定ミラー5と、第1レーザビームB1を反射し、第2レーザビームB2を透過するダイクロイックミラー6と、平行光線の第1レーザビームB1を集光する集光レンズ7を有している。
【0065】
従って、第1レーザ光源2から射出された第1レーザビームB1は、コリメートレンズ3により平行光線とされ、平行移動ミラー22を平行移動方向23に所定周期で平行移動させることにより光路が所定周期で平行移動され、固定ミラー5によりダイクロイックミラー6側へ導かれ、ダイクロイックミラー6により反射される際、第2レーザビームB2と重畳される。そして、重畳された第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2は、集光レンズ7により集光されて、第1レーザビームB1がウィービング方向24に所定周期でウィービング(周期移動)されながら対象部材10に照射されて、所望のレーザ加工を行うことになる。
【0066】
実施例1と同様に、本実施例においても、駆動装置を制御することにより、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の進行方向、即ち、レーザ加工の進行方向を制御しており、更に、ウィービング方向24をレーザ加工の進行方向と同じ方向として、第1レーザビームB1の対象部材10における照射位置を、直線状(一次元方向)にウィービング動作している。
【0067】
なお、第1レーザビームB1のウィービング方向24は、レーザ加工の進行方向と同じ方向でもよいが、更に、レーザ加工の進行方向と異なる少なくとも1つ以上の方向に、所定周期、所定量のウィービング動作を追加するようにしてもよい(第2周期移動手段)。例えば、平行移動ミラー22とは異なる方向(例えば、平行移動方向23に垂直な方向)に平行移動する他の平行移動ミラーを設けることにより、第1レーザビームB1のウィービング方向を2次元方向(例えば、円状、楕円状)にウィービング動作してもよい。このことにより、レーザ加工の進行方向に対して、第1レーザビームB1の対象部材10における照射位置を任意の方向にウィービング可能となり、複雑な形状のレーザ加工に対応することができる。
【実施例3】
【0068】
図8は、本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例を示す概略図である。なお、図8においても、上記実施例に示したレーザ加工装置と同等の構成には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0069】
図8に示すように、本実施例のレーザ加工装置31は、第2レーザビームB2の光学系は上記実施例1(図1)と同等の構成であるが、第1レーザビームB1の光学系として、第1レーザビームB1を射出すると共に、入射平面上での入射位置を所定周期で平行移動させる平行移動手段(第1周期移動手段)を有する第1レーザ光源32と、射出された第1レーザビームB1を平行光線にするコリメートレンズ3と、第1レーザビームB1を反射する固定ミラー33と、第1レーザビームB1を反射する固定ミラー5と、第1レーザビームB1を反射し、第2レーザビームB2を透過するダイクロイックミラー6と、平行光線の第1レーザビームB1を集光する集光レンズ7を有している。例えば、第1レーザビームB1の入射位置を移動する際、第1レーザ光源32が光ファイバを用いてレーザ加工装置31と接続されている場合には、光ファイバの接続位置を平行移動方向34に移動すればよい。なお、第1レーザ光源32のレーザ光源部分の構成は、実施例1で説明した第1レーザ光源2と同等のものでよい。
【0070】
従って、第1レーザ光源32から射出された第1レーザビームB1は、その入射位置を平行移動方向34に所定周期で平行移動させることにより光路が所定周期で平行移動され、コリメートレンズ3により平行光線とされ、固定ミラー33及び固定ミラー5によりダイクロイックミラー6側へ導かれ、ダイクロイックミラー6により反射される際、第2レーザビームB2と重畳される。そして、重畳された第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2は、集光レンズ7により集光されて、第1レーザビームB1がウィービング方向35に所定周期でウィービングされながら対象部材10に照射されて、所望のレーザ加工を行うことになる。
【0071】
実施例1と同様に、本実施例においても、駆動装置を制御することにより、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の進行方向、即ち、レーザ加工の進行方向を制御しており、更に、ウィービング方向35をレーザ加工の進行方向と同じ方向として、第1レーザビームB1の対象部材10における照射位置を、直線状(一次元方向)にウィービング動作している。
【0072】
なお、第1レーザビームB1のウィービング方向35は、レーザ加工の進行方向と同じ方向でもよいが、更に、レーザ加工の進行方向と異なる少なくとも1つ以上の方向に、所定周期、所定量のウィービング動作を追加してもよい(第2周期移動手段)。例えば、第1レーザビームB1の入射位置を平行移動方向34とは異なる方向(例えば、平行移動方向34に垂直な方向)に移動することにより、第1レーザビームB1のウィービング方向を2次元方向(例えば、円状、楕円状)にウィービング動作してもよい。このことにより、レーザ加工の進行方向に対して、第1レーザビームB1の対象部材10における照射位置を任意の方向にウィービング可能となり、複雑な形状のレーザ加工に対応することができる。
【実施例4】
【0073】
図9は、本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例を示す概略図であり、実施例1(図1)の変形例に相当する。なお、図9においても、上記実施例に示したレーザ加工装置と同等の構成には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0074】
本実施例のレーザ加工装置41は、実施例1(図1)に示したレーザ加工装置1では、第1レーザビームB1のみをウィービングする構成であったのに対して、第2レーザビームB2もウィービングする構成としたものである。
【0075】
具体的には、本実施例のレーザ加工装置41は、第1レーザビームB1の光学系は上記実施例1(図1)と同等の構成であるが、第1レーザビームB1とは波長が異なる第2レーザビームB2の光学系として、第2レーザビームB2を射出する第2レーザ光源11と、射出された第2レーザビームB2を平行光線にするコリメートレンズ12と、第2レーザビームB2を反射すると共に、図示しないモータ等により回転角度を所定周期で変更することにより、第2レーザビームB2の反射角度を所定周期で変更する回転ミラー42(第3周期移動手段)と、第2レーザビームB2は透過し、第1レーザビームB1を反射するダイクロイックミラー6と、平行光線の第2レーザビームB2を集光する集光レンズ7を有している。
【0076】
従って、第2レーザ光源11から射出された第2レーザビームB2は、コリメートレンズ12により平行光線とされ、回転ミラー42を回動方向43に所定周期で回動させることにより反射角度が所定周期で変更され、ダイクロイックミラー6を透過する際、第1レーザビームB1と重畳される。そして、重畳された第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2は、集光レンズ7により集光されて、第1レーザビームB1はウィービング方向9に、第2レーザビームB2はウィービング方向44に、所定周期でウィービングされながら対象部材10に照射されて、所望のレーザ加工を行うことになる。つまり、本実施例のレーザ加工装置41は、第1レーザビームB1の光学系及び第2レーザビームB2の光学系の各々に、ウィービング機能を有する構成である。
【0077】
実施例1と同様に、本実施例においても、駆動装置を制御することにより、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の進行方向、即ち、レーザ加工の進行方向を制御しており、更に、ウィービング方向9、44をレーザ加工の進行方向と同じ方向として、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の対象部材10における照射位置を、直線状(一次元方向)にウィービング動作している。又、第2レーザビームB2は、第1レーザビームB1のウィービングと同期してウィービング動作することが望ましく、第2レーザビームB2のウィービング量は、第1レーザビームB1のウィービング量に比例した量としている。
【0078】
なお、第2レーザビームB2のウィービング方向44は、レーザ加工の進行方向と同じ方向でもよいが、更に、レーザ加工の進行方向と異なる少なくとも1つ以上の方向に、所定周期、所定量のウィービング動作を追加してもよい(第4周期移動手段)。例えば、回転ミラー42とは異なる方向の回動軸を持つ回転ミラーを追加することにより、第2レーザビームB2のウィービング方向を2次元方向(例えば、円状、楕円状)にウィービング動作してもよい。このことにより、レーザ加工の進行方向に対して、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の対象部材10における照射位置を任意の方向にウィービング可能となり、複雑な形状のレーザ加工に対応することができる。
【実施例5】
【0079】
図10は、本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例を示す概略図であり、実施例2(図7)の変形例に相当する。なお、図10においても、上記実施例に示したレーザ加工装置と同等の構成には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0080】
本実施例のレーザ加工装置51は、実施例2(図7)に示したレーザ加工装置21では、第1レーザビームB1のみをウィービングする構成であったのに対して、第2レーザビームB2もウィービングする構成としたものである。
【0081】
具体的には、本実施例のレーザ加工装置51は、第1レーザビームB1の光学系は上記実施例1(図1)と同等の構成であるが、第1レーザビームB1とは波長が異なる第2レーザビームB2の光学系として、第2レーザビームB2を射出する第2レーザ光源11と、射出された第2レーザビームB2を平行光線にするコリメートレンズ12と、第2レーザビームB2を反射すると共に、図示しない移動装置等により所定周期で平行移動(スライド)することにより、第2レーザビームB2の光路を所定周期で平行移動する平行移動ミラー52(第3周期移動手段)と、第2レーザビームB2は透過し、第1レーザビームB1を反射するダイクロイックミラー6と、平行光線の第2レーザビームB2を集光する集光レンズ7とを有している。
【0082】
従って、第2レーザ光源11から射出された第2レーザビームB2は、コリメートレンズ12により平行光線とされ、平行移動ミラー52を平行移動方向53に所定周期で平行移動させることにより光路が所定周期で平行移動され、ダイクロイックミラー6を透過する際、第1レーザビームB1と重畳される。そして、重畳された第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2は、集光レンズ7により集光されて、第1レーザビームB1はウィービング方向24に、第2レーザビームB2はウィービング方向54に、所定周期でウィービングされながら対象部材10に照射されて、所望のレーザ加工を行うことになる。つまり、本実施例のレーザ加工装置51は、第1レーザビームB1の光学系及び第2レーザビームB2の光学系の各々に、ウィービング機能を有する構成である。
【0083】
実施例1と同様に、本実施例においても、駆動装置を制御することにより、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の進行方向、即ち、レーザ加工の進行方向を制御しており、更に、ウィービング方向24、54をレーザ加工の進行方向と同じ方向として、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の対象部材10における照射位置を、直線状(一次元方向)にウィービング動作している。又、第2レーザビームB2は、第1レーザビームB1のウィービングと同期してウィービング動作することが望ましく、第2レーザビームB2のウィービング量は、第1レーザビームB1のウィービング量に比例した量としている。
【0084】
なお、第2レーザビームB2のウィービング方向54は、レーザ加工の進行方向と同じ方向でもよいが、更に、レーザ加工の進行方向と異なる少なくとも1つ以上の方向に、所定周期、所定量のウィービング動作を追加してもよい(第4周期移動手段)。例えば、平行移動ミラー52とは異なる方向(例えば、平行移動方向53に垂直な方向)に平行移動する他の平行移動ミラーを設けることにより、第2レーザビームB2のウィービング方向を2次元方向(例えば、円状、楕円状)にウィービング動作してもよい。このことにより、レーザ加工の進行方向に対して、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の対象部材10における照射位置を任意の方向にウィービング可能となり、複雑な形状の加工に対応することができる。
【実施例6】
【0085】
図11は、本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例を示す概略図であり、実施例3(図8)の変形例に相当する。なお、図11においても、上記実施例に示したレーザ加工装置と同等の構成には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0086】
本実施例のレーザ加工装置61は、実施例3(図8)に示したレーザ加工装置31では、第1レーザビームB1のみをウィービングする構成であったのに対して、第2レーザビームB2もウィービングする構成としたものである。
【0087】
具体的には、本実施例のレーザ加工装置61は、第1レーザビームB1の光学系は上記実施例1(図1)と同等の構成であるが、第1レーザビームB1とは波長が異なる第2レーザビームB2の光学系として、第2レーザビームB2を射出すると共に、入射平面上での入射位置を所定周期で平行移動させる平行移動手段(第3周期移動手段)を有する第2レーザ光源62と、射出された第2レーザビームB2を平行光線にするコリメートレンズ12と、第2レーザビームB2は透過し、第1レーザビームB1を反射するダイクロイックミラー6と、平行光線の第2レーザビームB2を集光する集光レンズ7を有している。例えば、第2レーザビームB2の入射位置を移動する際、第2レーザ光源62が光ファイバを用いてレーザ加工装置61と接続されている場合には、光ファイバの接続位置を平行移動方向63に移動すればよい。なお、第2レーザ光源62のレーザ光源部分の構成は、実施例1で説明した第2レーザ光源11と同等のものでよい。
【0088】
従って、第2レーザ光源62から射出された第2レーザビームB2は、その入射位置を平行移動方向63に所定周期で平行移動させることにより光路がウィービングされ、コリメートレンズ12により平行光線とされ、ダイクロイックミラー6を透過し、第1レーザビームB1と重畳される。そして、重畳された第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2は、集光レンズ7により集光されて、第1レーザビームB1はウィービング方向35に、第2レーザビームB2はウィービング方向64に、所定周期でウィービングされながら対象部材10に照射されて、所望のレーザ加工を行うことになる。つまり、本実施例のレーザ加工装置61は、第1レーザビームB1の光学系及び第2レーザビームB2の光学系の各々に、ウィービング機能を有する構成である。
【0089】
実施例1と同様に、本実施例においても、駆動装置を制御することにより、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の進行方向、即ち、レーザ加工の進行方向を制御しており、更に、ウィービング方向35、64をレーザ加工の進行方向と同じ方向として、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の対象部材10における照射位置を、直線状(一次元方向)にウィービング動作している。又、第2レーザビームB2は、第1レーザビームB1のウィービングと同期してウィービング動作することが望ましく、第2レーザビームB2のウィービング量は、第1レーザビームB1のウィービング量に比例した量としている。
【0090】
なお、第2レーザビームB2のウィービング方向64は、レーザ加工の進行方向と同じ方向でもよいが、更に、レーザ加工の進行方向と異なる少なくとも1つ以上の方向に、所定周期、所定量のウィービング動作を追加してもよい(第4周期移動手段)。例えば、第2レーザビームB2の射出位置を平行移動方向63とは異なる方向(例えば、平行移動方向63に垂直な方向)に移動することにより、第2レーザビームB2のウィービング方向を2次元方向(例えば、円状、楕円状)にウィービング動作してもよい。このことにより、レーザ加工の進行方向に対して、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の対象部材10における照射位置を任意の方向にウィービング可能となり、複雑な形状の加工に対応することができる。
【実施例7】
【0091】
図12は、本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例を示す概略図であり、実施例4(図9)の変形例に相当する。なお、図12においても、上記実施例に示したレーザ加工装置と同等の構成には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0092】
本実施例のレーザ加工装置71は、実施例4(図9)に示したレーザ加工装置41では、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2を一軸方向にウィービングする構成であったのに対して、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2を二軸方向に独立してウィービング動作する構成としたものである。なお、本実施例では、各光学系(第1レーザビームB1の光学系、第2レーザビームB2の光学系)に回転ミラーを2つ設けた構成であるが、更に多くの回転ミラーを設けても、本発明に係るウィービング動作は可能である。
【0093】
本実施例のレーザ加工装置71は、具体的には、図12に示すように、第1レーザビームB1の光学系として、第1レーザビームB1を射出する第1レーザ光源2と、射出された第1レーザビームB1を平行光線にするコリメートレンズ(図示省略)と、第1レーザビームB1を反射すると共に、図示しないモータ等により回転角度を所定周期で変更することにより、第1レーザビームB1の反射角度を所定周期で変更する回転ミラー4と、第1レーザビームB1を反射し、第2レーザビームB2を透過すると共に、回転ミラー4とは異なる方向に、図示しないモータ等により回転角度を所定周期で変更することにより、第1レーザビームB1の反射角度を所定周期で変更する回転ダイクロイックミラー72と、平行光線の第1レーザビームB1を集光する集光レンズ7を有している。なお、回転ダイクロイックミラー72は、回転可能である以外、実施例1で説明したダイクロイックミラー6と同等のものでよい。
【0094】
又、本実施例のレーザ加工装置71は、第1レーザビームB1とは波長が異なる第2レーザビームB2の光学系として、第2レーザビームB2を射出する第2レーザ光源11と、射出された第2レーザビームB2を平行光線にするコリメートレンズ(図示省略)と、第2レーザビームB2を反射すると共に、図示しないモータ等により回転角度を所定周期で変更することにより、第2レーザビームB2の反射角度を所定周期で変更する回転ミラー42と、第2レーザビームB2を反射すると共に、回転ミラー42とは異なる方向に、図示しないモータ等により回転角度を所定周期で変更することにより、第2レーザビームB2の反射角度を所定周期で変更する回転ミラー74と、第2レーザビームB2は透過し、第1レーザビームB1を反射する回転ダイクロイックミラー72と、平行光線の第2レーザビームB2を集光する集光レンズ7を有している。
【0095】
従って、第1レーザ光源2から射出された第1レーザビームB1は、コリメートレンズにより平行光線とされ、回転ミラー4を回動方向8に所定周期で回動させることにより反射角度が所定周期で変更され、更に、回転ダイクロイックミラー72を回動方向73に所定周期で回動させることにより、反射角度が所定周期で変更されて反射されると共に、回転ダイクロイックミラー72において、回転ダイクロイックミラー72を透過する第2レーザビームB2と重畳される。又、第2レーザ光源11から射出された第2レーザビームB2は、コリメートレンズにより平行光線とされ、回転ミラー42を所定周期で回動方向43に回動させることにより反射角度が所定周期で変更され、回転ミラー74を回動方向75に所定周期で回動させることにより反射角度が所定周期で変更され、回転ダイクロイックミラー72を透過して、第1レーザビームB1と重畳される。そして、重畳された第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2は、集光レンズ7により集光され、所定方向に所定周期でウィービングされながら対象部材10に照射されて、所望のレーザ加工を行うことになる。つまり、本実施例のレーザ加工装置71は、第1レーザビームB1の光学系及び第2レーザビームB2の光学系の各々に、複数軸で回動可能なウィービング機能を有する構成である。
【0096】
なお、回転ミラー4又は回転ダイクロイックミラー72のいずれか一方は、重畳された第1レーザビームB1の対象部材10における照射位置を、レーザ加工を行う進行方向と同じ方向にウィービングさせるものであることが望ましい。又、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2は、同期してウィービング動作することが望ましい。
【0097】
本実施例のレーザ加工装置71の場合、2つの光学系のミラーを各々独立して制御する必要があるが、最終段の回転ミラーとなる回転ダイクロイックミラー72の大きさを比較的小さくすることができる。
【実施例8】
【0098】
図14は、本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例を示す概略図である。なお、図14においても、上記実施例に示したレーザ加工装置と同等の構成には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0099】
本実施例のレーザ加工装置81は、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2を重畳した後に、複数の回転ミラー82、83により、重畳した第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2を同時にウィービング動作する構成としたものである。なお、本実施例では、回転ミラーを2つ設けた構成であるが、回転ミラーは少なくとも1つあればよく、又、3つ以上としても、本発明に係るウィービング動作は可能である。
【0100】
本実施例のレーザ加工装置81は、具体的には、図14に示すように、第1レーザビームB1のみの光学系として、第1レーザビームB1を射出する第1レーザ光源2と、射出された第1レーザビームB1を平行光線にするコリメートレンズ3と、第1レーザビームB1を反射する固定ミラー5とを有し、又、第1レーザビームB1とは波長が異なる第2レーザビームB2のみの光学系として、第2レーザビームB2を射出する第2レーザ光源11と、射出された第2レーザビームB2を平行光線にするコリメートレンズ12とを有する。
【0101】
更に、本実施例のレーザ加工装置81は、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2共通の光学系として、第1レーザビームB1を反射し、第2レーザビームB2を透過するダイクロイックミラー6と、ダイクロイックミラー6において重畳された第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2を反射すると共に、図示しないモータ等により回転角度を所定周期で変更することにより、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の反射角度を所定周期で変更する回転ミラー82(第5周期移動手段)と、重畳された第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2を反射すると共に、回転ミラー82とは異なる方向に、図示しないモータ等により回転角度を所定周期で変更することにより、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の反射角度を所定周期で変更する回転ミラー83(第6周期移動手段)と、平行光線の第1レーザビームB1を集光する集光レンズ7を有している。
【0102】
従って、第1レーザ光源2から射出された第1レーザビームB1は、コリメートレンズ3により平行光線とされ、固定ミラー5で反射されて、ダイクロイックミラー6へ導かれ、又、第2レーザ光源11から射出された第2レーザビームB2は、コリメートレンズ12により平行光線とされて、ダイクロイックミラー6へ導かれ、ダイクロイックミラー6において、第1レーザビームB1と第2レーザビームB2が重畳されることとなる。そして、重畳された第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2は、回転ミラー83を回動方向84に所定周期で回動させることにより、その反射角度が所定周期で変更され、更に、回転ミラー83を回動方向84と異なる回動方向85に所定周期で回動させることにより、その反射角度が所定周期で変更された後、集光レンズ7により集光され、その結果、重畳された第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の対象部材10における照射位置が、所定方向に所定周期でウィービングされながら対象部材10に照射されて、所望のレーザ加工を行うことになる。
【0103】
つまり、本実施例のレーザ加工装置81は、第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2を重畳した後の共通の光学系に、複数軸で回動可能なウィービング機能を有する構成である。従って、重畳された第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2を、1対の回転ミラー82、83のみの制御でウィービング動作が可能となる。なお、回転ミラー82、83は、重畳した第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2を反射する必要があることから、広範囲の波長を反射可能なミラーを用いる。
【0104】
なお、回転ミラー82又は回転ミラー83のいずれか一方は、重畳された第1レーザビームB1の対象部材10における照射位置を、レーザ加工を行う進行方向と同じ方向にウィービングさせるものであることが望ましい。
【0105】
又、図14に示す1対の回転ミラー82、83は、ウィービング量によっては、1対の回転ミラーの後段側の面積を大きく取る必要がある(図15(a)参照)。そこで、対象部材10に近い方の回転ミラー83に替えて、図15(b)に示すように、半円柱形状の凸側のシリンドリカル面をミラー面とするシリンドルカルミラー91を用いてウィービング動作を行うようにしてもよい。シリンドルカルミラー91を用いると、シリンドルカルミラー91の角度を少し変更しても、重畳された第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の反射角度を大きく変更することができるため、シリンドルカルミラー91の寸法を小さくすることができる。その結果、高速周期のウィービング動作が容易となると共に、回動駆動のためのモータの小型化、更には、レーザ加工装置全体の小型化が可能となる。
又、前述の図12において、回転駆動するミラーは、駆動量が大きい場合、振幅(回転量)が大きくなり、特に、高周波数領域で使用すると、能力の高い駆動モータが必要となる上、振動しやすくなり、望ましくない。そこで、図13に示すように、ウィービング光学系の後段側に、上記シリンドリカルミラー91を設置することにより、少ない振幅で大きく駆動することが可能となる。なお、図13に示す構成は、シリンドリカルミラー91以外は、図12に示す構成と同じである。
【0106】
同じく、対象部材10に近い方の回転ミラー83に替えて、図16に示すように、環状形状の凸側のトロイダル面をミラー面とするトロイダルミラー92を用いてウィービング動作を行うようにしてもよい。トロイダルミラー92を用いる場合も、トロイダルミラー92の角度を少し変更しても、重畳された第1レーザビームB1及び第2レーザビームB2の反射角度を大きく変更することができるため、トロイダルミラー92の寸法を小さくすることができる。その結果、高速周期のウィービング動作が容易となると共に、回動駆動のためのモータの小型化、更には、レーザ加工装置全体の小型化が可能となる。
又、前述の図14に示すウィービング光学系の後段側に、上記トロイダルミラー92を設置することにより、より広いエリアを容易にスキャン可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法は、重ね溶接に適用して好適なものであるが、重ね溶接だけでなく、通常の溶接に適用しても溶接欠陥の発生を防止できるものであり、更に、他のレーザ加工、例えば、肉盛り等の加工に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の一例(実施例1)を説明する概略図である。
【図2】本発明に係るレーザ加工装置におけるウィービング動作を説明する図である。
【図3】本発明に係るレーザ加工装置において、ウィービング量に対するポロシティの発生個数及び溶込み深さを説明するグラフである。
【図4】本発明に係るレーザ加工装置において、ウィービング動作によるキーホールの形成状況を説明する図である。
【図5】ウィービング動作の有無におけるキーホール及びポロシティの形成状況を示すX線写真である。
【図6】ウィービング動作の有無における溶接欠陥の状況を示すX線写真である。
【図7】本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例(実施例2)を説明する概略図である。
【図8】本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例(実施例3)を説明する概略図である。
【図9】本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例(実施例4)を説明する概略図である。
【図10】本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例(実施例5)を説明する概略図である。
【図11】本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例(実施例6)を説明する概略図である。
【図12】本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例(実施例7)を説明する概略図である。
【図13】本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例(実施例7の変形例)を説明する概略図である。
【図14】本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例(実施例8)を説明する概略図である。
【図15】本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例(実施例8の第1変形例)を説明する概略図である。
【図16】本発明に係るレーザ加工装置の実施形態の他の一例(実施例8の第2変形例)を説明する概略図である。
【図17】レーザによる重ね溶接において、溶接欠陥が発生する原因を説明する図である。
【符号の説明】
【0109】
1、21、31、41、51、61、71、81 レーザ加工装置
2、32 第1レーザ光源
3、12 コリメートレンズ
4、42、74、82、83 回転ミラー
5、33 固定ミラー
6 ダイクロイックミラー
7 集光レンズ
10 対象部材
10a 下板
10b 上板
10c ギャップ
11、62 第2レーザ光源
14、15、15a、15b キーホール
16 溶融池
17 気泡
22、52 平行移動ミラー
72 回転ダイクロイックミラー
91 シリンドリカラミラー
92 トロイダルミラー
B1 第1レーザビーム
B2 第2レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は互いに異なる複数の波長からなる第1レーザビームを射出する第1レーザ光源と、
前記第1レーザビームより短い1つ又は互いに異なる複数の波長からなり、かつ、前記第1レーザビームより集光径を大きくする第2レーザビームを射出する第2レーザ光源と、
前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを重畳する重畳手段と、
重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを集光する集光手段とを備え、
集光された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを対象部材に照射して、所望のレーザ加工を行うレーザ加工装置において、
前記第1レーザビームの前記対象部材における照射位置を、レーザ加工を行う進行方向と同じ方向に周期移動させると共に、前記照射位置の周期移動量を、溶け込み深さが大きくなる条件の前記第1レーザビームが形成するキーホールの開口径の5%乃至100%の大きさ、望ましくは、40%の大きさとする第1周期移動手段を設けたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
更に、前記第1レーザビームの前記対象部材における照射位置を、前記周期移動方向とは異なる方向に周期移動させる第2周期移動手段を少なくとも1つ以上設けたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工装置において、
更に、前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、レーザ加工を行う進行方向と同じ方向に周期移動させる第3周期移動手段を設けたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザ加工装置において、
更に、前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、前記周期移動方向とは異なる方向に周期移動させる第4周期移動手段を少なくとも1つ以上設けたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
1つ又は互いに異なる複数の波長からなる第1レーザビームを射出する第1レーザ光源と、
前記第1レーザビームより短い1つ又は互いに異なる複数の波長からなり、かつ、前記第1レーザビームより集光径を大きくする第2レーザビームを射出する第2レーザ光源と、
前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを重畳する重畳手段と、
重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを集光する集光手段とを備え、
集光された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを対象部材に照射して、所望のレーザ加工を行うレーザ加工装置において、
重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、レーザ加工を行う進行方向と同じ方向に周期移動させると共に、前記照射位置の周期移動量を、溶け込み深さが大きくなる条件の前記第1レーザビームが形成するキーホールの開口径の5%乃至100%の大きさ、望ましくは、40%の大きさとする第5周期移動手段を設けたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ加工装置において、
更に、重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、前記周期移動方向とは異なる方向に周期移動させる第6周期移動手段を少なくとも1つ以上設けたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザ加工装置において、
前記第5周期移動手段又は前記第6周期移動手段のうち前記対象部材に近い方を、重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの反射角度を周期的に変更する凸側のシリンドリカル面を用いたシリンドリカルミラーとしたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】
請求項6に記載のレーザ加工装置において、
前記第5周期移動手段又は前記第6周期移動手段のうち前記対象部材に近い方を、重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの反射角度を周期的に変更する凸側のトロイダル面を用いたトロイダルミラーとしたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のレーザ加工装置において、
前記第1周期移動手段、前記第2周期移動手段、前記第3周期移動手段、前記第4周期移動手段、前記第5周期移動手段、又は、前記第6周期移動手段の少なくとも一つを、前記第1レーザビーム又は前記第2レーザビーム、若しくは、前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの反射角度を周期的に変更する回転ミラーとしたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のレーザ加工装置において、
前記第1周期移動手段、前記第2周期移動手段、前記第3周期移動手段、前記第4周期移動手段、前記第5周期移動手段、又は、前記第6周期移動手段の少なくとも一つを、前記第1レーザビーム又は前記第2レーザビーム、若しくは、前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの光路を周期的に平行移動する平行移動ミラーとしたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のレーザ加工装置において、
前記第1周期移動手段、前記第2周期移動手段、前記第3周期移動手段、前記第4周期移動手段の少なくとも一つを、前記第1レーザ光源又は前記第2レーザ光源、若しくは、前記第1レーザ光源及び前記第2レーザ光源の入射位置を入射平面上で周期的に平行移動する平行移動手段としたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のレーザ加工装置において、
前記対象部材は、重ね合わせた部材であることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項13】
1つ又は互いに異なる複数の波長からなる第1レーザビームと、前記第1レーザビームより短い1つ又は互いに異なる複数の波長からなり、かつ、前記第1レーザビームより集光径を大きくする第2レーザビームとを重畳し、
重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを集光し、
集光された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを対象部材に照射して、所望のレーザ加工を行うレーザ加工方法において、
前記第1レーザビームの前記対象部材における照射位置を、レーザ加工を行う進行方向と同じ方向に周期移動させると共に、前記照射位置の周期移動量を、溶け込み深さが大きくなる条件の前記第1レーザビームが形成するキーホールの開口径の5%乃至100%の大きさ、望ましくは、40%の大きさとすることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項14】
請求項13に記載のレーザ加工方法において、
更に、前記第1レーザビームの前記対象部材における照射位置を、前記周期移動方向とは異なる少なくとも1つ以上の方向に周期移動させることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項15】
請求項13又は請求項14に記載のレーザ加工方法において、
更に、前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、レーザ加工を行う進行方向と同じ方向に周期移動させることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項16】
請求項15に記載のレーザ加工方法において、
更に、前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、前記周期移動方向とは異なる少なくとも1つ以上の方向に周期移動させることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項17】
1つ又は互いに異なる複数の波長からなる第1レーザビームと、前記第1レーザビームより短い1つ又は互いに異なる複数の波長からなり、かつ、前記第1レーザビームより集光径を大きくする第2レーザビームとを重畳し、
重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを集光し、
集光された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームを対象部材に照射して、所望のレーザ加工を行うレーザ加工方法において、
重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、レーザ加工を行う進行方向と同じ方向に周期移動させると共に、前記照射位置の周期移動量を、溶け込み深さが大きくなる条件の前記第1レーザビームが形成するキーホールの開口径の5%乃至100%の大きさ、望ましくは、40%の大きさとすることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項18】
請求項17に記載のレーザ加工方法において、
更に、重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの前記対象部材における照射位置を、前記周期移動方向とは異なる1つ以上の方向に周期移動させることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項19】
請求項18に記載のレーザ加工方法において、
前記周期移動は、凸側のシリンドリカル面のシリンドリカルミラーを前記対象部材に近い方のミラーとして用い、重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの反射角度を周期的に変更することにより行うことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項20】
請求項18に記載のレーザ加工方法において、
前記周期移動は、凸側のトロイダル面のトロイダルミラーを前記対象部材に近い方のミラーとして用い、重畳された前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの反射角度を周期的に変更することにより行うことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項21】
請求項13乃至請求項20のいずれかに記載のレーザ加工方法において、
前記周期移動は、回転ミラーを用い、前記第1レーザビーム又は前記第2レーザビーム、若しくは、前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの反射角度を周期的に変更することにより行うことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項22】
請求項13乃至請求項21のいずれかに記載のレーザ加工方法において、
前記周期移動は、平行移動ミラーを用い、前記第1レーザビーム又は前記第2レーザビーム、若しくは、前記第1レーザビーム及び前記第2レーザビームの光路を周期的に平行移動することにより行うことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項23】
請求項13乃至請求項22のいずれかに記載のレーザ加工方法において、
前記周期移動は、前記第1レーザ光源又は前記第2レーザ光源、若しくは、前記第1レーザ光源及び前記第2レーザ光源の入射位置を入射平面上で周期的に平行移動することにより行うことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項24】
請求項13乃至請求項23のいずれかに記載のレーザ加工方法において、
前記対象部材は、重ね合わせた部材であることを特徴とするレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−319878(P2007−319878A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150911(P2006−150911)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構 エネルギー使用合理化技術戦略的開発 エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発 コアードビームによるキーホール内三次元エネルギー投入の最適化、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】