レーザ加工装置
【課題】集光レンズを動かすことなく集光レンズの中心をレーザ光線の光軸が通るように調整することを可能とする。
【解決手段】発振器42から発せられたレーザ光線LがY方向調整ミラー43、X方向調整ミラー44、角度調整ミラー45をそれぞれ反射して集光レンズ47に導かれる構成において、Y方向調整ミラー43をY方向に移動可能に、X方向調整ミラー44をX方向に移動可能に設け、これらミラー43,44を移動させるとともに、必要に応じて角度調整ミラー45によるレーザ光線Lの反射角度を調整して、レーザ光線Lの光軸を集光レンズ47の中心に通す調整を行う。レーザ光線Lの光軸の方を動かすことにより、集光レンズ47を動かすことなく集光レンズ47の中心にレーザ光線Lの光軸を通すことができる。
【解決手段】発振器42から発せられたレーザ光線LがY方向調整ミラー43、X方向調整ミラー44、角度調整ミラー45をそれぞれ反射して集光レンズ47に導かれる構成において、Y方向調整ミラー43をY方向に移動可能に、X方向調整ミラー44をX方向に移動可能に設け、これらミラー43,44を移動させるとともに、必要に応じて角度調整ミラー45によるレーザ光線Lの反射角度を調整して、レーザ光線Lの光軸を集光レンズ47の中心に通す調整を行う。レーザ光線Lの光軸の方を動かすことにより、集光レンズ47を動かすことなく集光レンズ47の中心にレーザ光線Lの光軸を通すことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等のワークにレーザ光線を照射して切断や溝形成等の加工を施すレーザ加工装置に係り、特にレーザ光線の光軸調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板状の半導体ウェーハからなるワークの表面に格子状の分割予定ラインにより多数の矩形状のデバイス領域を区画してこれらデバイス領域にICやLSI等の電子回路を形成し、次いで裏面を研削した後に研磨するなど必要な処理を施してから、分割予定ラインに沿って切断するダイシングを行って各デバイス領域を個片化して、1枚のワークから多数のデバイス(半導体チップ)を得ている。ワークのダイシングは、高速回転させた切削ブレードをワークに切り込ませて切断するダイサーと呼ばれる切削装置が広く用いられているが、近年では、レーザ光線を分割予定ラインに照射してレーザ加工を施し、ワークを切断する方法も試みられている(特許文献1等参照)。
【0003】
レーザ光線を照射するレーザ加工装置は、発振器から発せられたレーザ光線をミラーで反射させてから集光レンズを通すことによりワークに集光して照射する構成が一般的である。このような構成にあっては、目的箇所を高精度で加工するために集光レンズの中心をレーザ光線の光軸が通る必要がある。したがって装置の立ち上げ時や発振器の取替え時などには、集光レンズを動かして中心にレーザ光線の光軸が通るようにする集光レンズの位置合わせ作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかして、一般的なレーザ加工装置にあっては、集光レンズの周辺には加工の際に生じた屑を除去する機構やワークの表面位置を測定する機構などが集中して配置されているため、集光レンズの位置合わせを行うための機構を集光レンズの周辺に組み込むことがきわめて困難であった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、集光レンズを動かすことなく集光レンズの中心をレーザ光線の光軸が通るように調整することを可能とするレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワークを保持する保持機構と、該保持機構に保持されたワークにレーザ光線を照射してレーザ加工を施すレーザ照射機構と、前記保持機構と前記レーザ照射機構とを加工送り方向に相対的に移動させる加工送り機構とを有するレーザ加工装置であって、前記レーザ照射機構は、レーザ光線を発する発振器と、該発振器から発せられたレーザ光線を前記保持機構に保持されたワークへ向けて集光する集光レンズと、前記ワークの表面に照射されたレーザ光線の照射位置および照射角度を調整する光軸調整手段とを備え、前記光軸調整手段は、レーザ光線の前記照射位置における前記加工送り方向の位置を調整する加工送り方向調整ミラーと、該加工送り方向調整ミラーを直線的に移動させる加工送り方向移動部と、レーザ光線の前記照射位置における前記加工送り方向と直交する割出し送り方向の位置を調整する割出し送り方向調整ミラーと、該割出し送り方向調整ミラーを直線的に移動させる割出し送り方向移動部と、レーザ光線の前記照射角度を調整する角度調整ミラーと、該角度調整ミラーを回転移動させる回転移動部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のレーザ加工装置では、発振器から発せられたレーザ光線が、光軸調整手段の加工送り方向調整ミラー、割出し送り方向調整ミラーおよび角度調整ミラーといった各調整ミラーを反射することにより集光レンズに導かれる。そして、各調整ミラーに付随する各移動部によって各調整ミラーを移動させることにより、レーザ光線の光軸を集光レンズの中心に通す光軸調整を行うことができる。すなわち、集光レンズではなくレーザ光線の光軸の方を動かすことにより、集光レンズの中心をレーザ光線の光軸が通るように調整することができる。
【0009】
なお、本発明で言うワークは特に限定はされないが、例えば、シリコンやガリウムヒ素(GaAs)等からなる半導体ウェーハ、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミックやガラス、サファイア(Al2O3)系あるいはシリコン系の無機材料基板、液晶表示装置を制御駆動するLCDドライバ等の各種電子部品、さらにはミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料等が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、集光レンズを動かすことなく集光レンズの中心をレーザ光線の光軸が通るように調整することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置のワーク(半導体ウェーハ)を示す斜視図であって、該ウェーハが環状のフレームに粘着テープを介して支持された状態を示している。
【図2】本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置の全体斜視図であって、装置カバーを取り外した状態を示している。
【図3】一実施形態のレーザ加工装置の全体斜視図であって、装置カバーを装着した状態を示している。
【図4】図2のIII部拡大図である。
【図5】同レーザ加工装置が具備するレーザ照射機構の筐体内の構成を示す斜視図である。
【図6】同レーザ照射機構の構成を示すX方向から見た側面図である。
【図7】同レーザ照射機構の構成を示すY方向から見た側面図である。
【図8】同レーザ照射機構のX方向調整ミラーによりウェーハに対するレーザ光線のX方向の照射位置が調整される様子を示す側面図である。
【図9】同レーザ照射機構の角度調整ミラーによりウェーハに対するレーザ光線のY方向の照射角度が調整される様子を示す側面図である。
【図10】同レーザ照射機構の角度調整ミラーによりウェーハに対するレーザ光線のX方向の照射角度が調整される様子を示す側面図である。
【図11】同レーザ照射機構における光軸確認部の蛍光板の表面を示す図であって、該蛍光板を透過するレーザ光線の照射光およびウェーハからの反射光を示している。
【図12】本発明の他の実施形態に係るレーザ照射機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置を説明する。
[1]ウェーハ
はじめに、図1に示す一実施形態でのワークである円板状の半導体ウェーハ(以下、ウェーハ)1を説明する。ウェーハ1は、厚さが例えば100〜700μm程度のシリコンウェーハ等であり、表面には格子状の分割予定ライン2によって多数の矩形状のデバイス領域3が区画されている。各デバイス領域3には、図示せぬICやLSI等の電子回路が形成されている。ウェーハ1の周面の所定箇所には、半導体の結晶方位を示すオリエンテーション・フラットと呼ばれる直線状の切欠き4が形成されている。ウェーハ1は、図2に示すレーザ加工装置10によって全ての分割予定ライン2がレーザ加工されてから、各デバイス領域3が個片化されて多数のデバイス(半導体チップ)にダイシングされる。
【0013】
ウェーハ1は、図1に示すように、環状のフレーム5の円形状開口部5aに粘着テープ6を介して同心状に配され、かつ一体に支持されたワークユニット7とされて、レーザ加工装置10に供給される。粘着テープ6は片面が粘着面とされたもので、その粘着面にフレーム5とウェーハ1の裏面が貼り付けられる。フレーム5は、金属等の板材からなる剛性を有するものであり、フレーム5を支持することにより、ウェーハ1はワークユニット7ごと搬送される。
【0014】
[2]レーザ加工装置
(1)レーザ加工装置の基本的な構成および動作
続いて、図2を参照して一実施形態に係るレーザ加工装置10の基本構成を説明する。図2の符号11は基台であり、この基台11の奥側(X2側)の端部には壁部12が立設されている。基台11上には、XY移動テーブル20が、水平なX方向およびY方向に移動自在に設けられている。XY移動テーブル20には、ワークユニット7を保持するチャックテーブル(保持機構)30が設置されている。チャックテーブル30の上方には、チャックテーブル30に保持されたウェーハ1に向けてレーザ光線を照射してレーザ加工を施すレーザ照射機構40が、チャックテーブル30に対向する状態に配設されている。レーザ照射機構40は、壁部12に固定されている。
【0015】
XY移動テーブル20は、基台11上にX方向に移動自在に設けられたX軸ベース21と、このX軸ベース21上にY方向に移動自在に設けられたY軸ベース22との組み合わせで構成されている。X軸ベース21は、基台11上に固定されたX方向に延びる一対の平行なガイドレール211に摺動自在に取り付けられており、モータ212でボールねじ213を作動させるX軸駆動機構(加工送り機構)214によってX方向に移動させられる。一方、Y軸ベース22は、X軸ベース21上に固定されたY方向に延びる一対の平行なガイドレール221に摺動自在に取り付けられており、モータ222でボールねじ223を作動させるY軸駆動機構224によってY方向に移動させられる。
【0016】
Y軸ベース22の上面には、円筒状のチャックベース31が固定されており、このチャックベース31の上に、チャックテーブル30がZ方向(鉛直方向)を回転軸として回転自在に支持されている。チャックテーブル30は、負圧作用によりワーク(この場合はウェーハ1)を吸着して保持する一般周知の真空チャック式のものである。チャックテーブル30は、チャックベース31内に収容された図示せぬ回転駆動手段によって一方向または両方向に回転駆動される。チャックテーブル30の周囲には、ワークユニット7のフレーム5を着脱自在に保持する複数のクランプ32が配設されている。これらクランプ32は、チャックベース31に取り付けられている。
【0017】
XY移動テーブル20においては、X軸ベース21がX方向に移動する時が、レーザ光線を分割予定ライン2に沿って照射する加工送りとされる。そして、Y軸ベース22がY方向に移動することにより、レーザ光線を照射する対象の分割予定ライン2を切り替える割出し送りがなされる。なお、加工送り方向と割出し送り方向は、この逆、つまり、Y方向が加工送り方向、X方向が割出し送り方向に設定されてもよく、限定はされない。
【0018】
レーザ照射機構40は、壁部12のX1側の前面に一端が固定され、その一端からチャックテーブル30の上方に向かってX1方向に延びる直方体状の筐体41を有している。筐体41のX1側の先端下部には、レーザ光線をほぼ鉛直下方に向けて照射する照射口411が設けられている。
【0019】
筐体41内には、レーザ光線を発する発振器、レーザ光線を集光する集光レンズ、発振器から発せられたレーザ光線を集光レンズに導くとともにレーザ光線の光軸を調整する光軸調整手段、レーザ光線の光軸がワーク(ウェーハ1)の表面に対して垂直に入射しているか否かを確認する光軸確認部といったレーザ照射機構40を構成する要素が収容されているが、これら構成要素に関しては後で詳述する。
【0020】
レーザ加工装置10は、レーザ光線をウェーハ1に照射する際にセットされる装置カバー13を備えている。装置カバー13は、下方およびX2側に開口する直方体状の箱体であり、天板131と、X1側、Y1側、Y2側を塞ぐ側板132を有している。また、天板131のX2側の中央には、レーザ照射機構40の筐体41が嵌合する切欠き133が形成されている。装置カバー13は、図3に示すように基台11上に載置されてセットされる。このセット状態で、筐体41は切欠き133に嵌合して下部が装置カバー13に覆われる。また、基台11上のXY移動テーブル20やチャックテーブル30は装置カバー13で完全に覆われる。
【0021】
また、筐体41の先端下部であって照射口411の近傍には、ウェーハ1の分割予定ライン2を撮像してレーザ光線の照射位置を認識するための図示せぬアライメント手段が配設されている。このアライメント手段は、ウェーハ1の表面を照明する照明手段や光学系、該光学系で捕らえられた像を撮像するCCD等からなる撮像素子等を備えている。
【0022】
以上がレーザ加工装置10の基本構成であり、この装置10では、まず、チャックテーブル30にワークユニット7を保持し、次いで装置カバー13をセットしてからウェーハ1の分割予定ライン2にレーザ光線を照射してレーザ加工を施す。
【0023】
チャックテーブル30へのワークユニット7の保持は、チャックテーブル30を真空運転し、ウェーハ1を粘着テープを介してチャックテーブル30に載置して吸着、保持させ表面を露出した状態とし、フレーム5をクランプ32で保持することによりなされる。この後、装置カバー13をセットする。装置カバー13により、照射口411からウェーハ1までのレーザ光線の光路は目視できない状態になる。
【0024】
分割予定ライン2へのレーザ加工は、上記アライメント手段で分割予定ライン2を撮像し、レーザ光線の照射位置を認識してから行われる。レーザ加工は、XY移動テーブル20のX軸ベース21をX方向に移動させながら、レーザ照射機構40の照射口411からX方向と平行にされた分割予定ライン2に沿ってレーザ光線を照射することによって行われる。分割予定ライン2をX方向すなわち加工送り方向と平行にするには、チャックテーブル30を回転させてウェーハ1を自転させることによりなされる。また、レーザ光線を照射する分割予定ライン2の選択は、XY移動テーブル20のY軸ベース22をY方向に移動させて、照射口411から照射されるレーザ光線の照射位置のY方向位置を加工対象の分割予定ライン2に合わせる割出し送りによってなされる。
【0025】
なお、分割予定ライン2に沿って施す本実施形態でのレーザ加工は、分割予定ライン2を完全に切断するフルカットが挙げられるが、この他には、分割予定ライン2を弱化させる加工も採用することができる。フルカットは、ウェーハ1の成分を溶融・蒸散させるアブレーション加工で行われる。また、弱化加工は、アブレーション加工によって分割予定ライン2の表面側に一定深さの溝を形成したり、あるいはウェーハ1の内部に脆弱な変質層を形成したりすることにより行われる。これらレーザ加工の種類は、照射するレーザ光線の種類(波長、出力)や照射回数などによって選択される。
【0026】
全ての分割予定ライン2にレーザ光線を照射してレーザ加工を施したら、レーザ照射機構40によるレーザ光線の照射を停止し、また、チャックテーブル30の真空運転を停止してウェーハ1の保持を解除する。そして装置カバー13を取り外し、クランプ32によるフレーム5の保持を解除してから、ワークユニット7をチャックテーブル30から取り上げる。この後、ウェーハ1は洗浄工程等を経てから、個片化されたデバイス領域3すなわちデバイス(半導体チップ)を粘着テープ6からピックアップする工程に移される。なお、分割予定ライン2が上記のようにフルカットされた場合はそのままピックアップ工程に移されるが、上記弱化加工の場合には、外力を付与することにより弱化した分割予定ライン2を割断した後、ピックアップ工程に移される。
【0027】
(2)レーザ照射機構
次に、上記レーザ照射機構40を詳述する。
上記筐体41内には、図5に示すように、レーザ光線Lを発する発振器42と、上記光軸調整手段を構成するY方向調整ミラー(割出し送り方向調整ミラー)43、X方向調整ミラー(加工送り方向調整ミラー)44および角度調整ミラー45と、1/2λ波長板46と、集光レンズ47と、光軸確認部48等が収容されている。
【0028】
発振器42は、ウェーハ1のレーザ加工に応じたレーザ光線(例えばパルスレーザ光線等)を発生させるもので、図6に示すように、筐体41内のY2側の端部の底部に固定されている。発振器42からは、水平なレーザ光線LがY1方向に照射される。発振器42から照射されたレーザ光線Lは、図5〜図7に示すように、1/2λ波長板46を透過してからY方向調整ミラー43、X方向調整ミラー44、角度調整ミラー45の順に反射した後、下方に進行し、集光レンズ47を透過してチャックテーブル30に保持されたウェーハ1に照射される。
【0029】
Y方向調整ミラー43は、この場合偏光ビームスプリッタで構成されており、1/2λ波長板46を透過したレーザ光線Lは、図6に示すようにY方向調整ミラー43を透過する成分(透過光L1)と反射する成分(反射光L2)の2つに分離される。Y方向調整ミラー43を透過したレーザ光線L1はアブソーバ49で吸収され進行が停止する。一方、Y方向調整ミラー43で反射したレーザ光線L2は90°の角度で上方のX方向調整ミラー44に向かう。Y方向調整ミラー43で反射してX方向調整ミラー44に向かうレーザ光線L1は、ウェーハ1のレーザ加工に用いられる加工用の光束である。
【0030】
1/2λ波長板46は回転可能に設置されており、回転させることにより、Y方向調整ミラー43で反射するレーザ光線と透過するレーザ光線の割合が変化するようになっている。すなわち、1/2λ波長板46を回転させることにより、Y方向調整ミラー43で反射する加工用のレーザ光線L(L2)の量が調整されて当該レーザ照射機構40の実質的なレーザ光線の出力が調整されるようになっている。本実施形態ではY方向調整ミラー43がレーザ光線の出力調整機能も有しているため、レーザ光線の出力調整機構を別途具備させる必要がなく、その結果、部品点数の削減ならびに軽量化や、コスト低減といった利点を得ることができる。
【0031】
Y方向調整ミラー43によって上方に90°の角度で反射したレーザ光線Lは、X方向調整ミラー44に入射して90°の角度でX1方向に反射し、次いで角度調整ミラー45に入射し、この角度調整ミラー45によりほぼ90°の角度で下方に向けて反射される。そして角度調整ミラー45により下方に向けられたレーザ光線Lは、角度調整ミラー45の下方の上記照射口411に着脱可能に配設された集光レンズ47により集光されてウェーハ1に照射される。上記各調整ミラー43,44,45は、それぞれ筐体41内の所定位置に固定された移動部431,441,451に、所定の方向に移動可能に設けられている。
【0032】
Y方向調整ミラー43は、図5および図6に示すように、筐体41内のY1側の端部の底部に固定されたY方向移動部(割出し送り方向移動部)431の上面に、Y方向に直線的に移動可能に支持されている。Y方向移動部431には、Y方向調整ミラー43をY方向に移動させる操作部材としてY方向調整ダイヤル432を有している。Y方向調整ダイヤル432は、筐体41の側面からY1方向に突出して外部に露出しており、このY方向調整ダイヤル432をつまんで回転させると、Y方向調整ミラー43が図5の矢印Aに示すようにY方向に直線的に移動するようになっている。このようにY方向調整ミラー43をY方向に移動させることにより、図6に示すように(点線が移動後とする)、Y方向調整ミラー43でのレーザ光線LのY方向の入射/反射位置が変化する。その結果として、ウェーハ1の表面に照射されるレーザ光線Lの照射位置におけるY方向の位置が調整される。
【0033】
X方向調整ミラー44は、図5〜図7に示すように、Y方向調整ミラー43の上方に位置付けられて筐体41内の上面に固定されたX方向移動部(加工送り方向移動部)441のX1側の側面に、上下方向に直線的に移動可能に支持されている。X方向移動部441には、X方向調整ミラー44を上下方向に移動させる操作部材としてX方向調整ダイヤル442が設けられている。X方向調整ダイヤル442は、筐体41の上面から上方に突出して外部に露出しており、このX方向調整ダイヤル442をつまんで回転させると、X方向調整ミラー44が図5の矢印Bに示すように上下方向に直線的に移動するようになっている。このようにX方向調整ミラー44を上下方向に移動させることにより、図8に示すように(点線が移動後とする)、X方向調整ミラー44でのレーザ光線Lの上下方向の入射/反射位置が変化する。これにより、角度調整ミラー45でのレーザ光線Lの入射/反射位置がX方向に変化し、結果としてウェーハ1の表面に照射されるレーザ光線Lの照射位置におけるX方向の位置が調整される。
【0034】
角度調整ミラー45は、図5および図7に示すように、X方向調整ミラー44のX1側に対向配置されて筐体41内に固定された回転移動部451におけるX2側の端面に支持されている。回転移動部451は、筐体41に固定された支持部452と、この支持部452のX2側の端面にZ方向(鉛直方向)を回転軸として水平方向に回転可能に支持された水平回転部453と、この水平回転部453のX2側の端面にY方向を回転軸として上下方向に回転可能に支持された上下回転部454とを備えている。
【0035】
水平回転部453は、支持部452に設けられたY方向角度調整ダイヤル455をつまんで回転させることにより、図5の矢印Cに示すように水平方向に回転移動するようになっている。このように水平回転部453を水平方向に回転移動させることにより、図9に示すように(点線が移動後とする)、角度調整ミラー45によって下方に反射するレーザ光線LのY方向への反射角度が調整される。その結果、ウェーハ1の表面に照射されるレーザ光線LのY方向の照射角度が調整される。
【0036】
また、上下回転部454は、水平回転部453に設けられたX方向角度調整ダイヤル456をつまんで回転させることにより、図5の矢印Dに示すように上下方向に回転移動するようになっている。このように上下回転部454を上下方向に回転移動させると、図10に示すように(点線が移動後とする)、角度調整ミラー45によって下方に反射するレーザ光線LのX方向への反射角度が調整される。その結果、ウェーハ1の表面に照射されるレーザ光線LのX方向の照射角度が調整される。
【0037】
Y方向角度調整ダイヤル455は、筐体41の側面からY1方向に突出して外部に露出している。また、X方向角度調整ダイヤル456は、筐体41の上面から上方に突出して外部に露出している。これら角度調整ミラー455,456を適宜に回転操作することにより、角度調整ミラー45によって下方に反射するレーザ光線LのX・Y方向の照射角度が調整され、結果として上記のようにウェーハ1に対するレーザ光線のX・Y方向の照射角度が調整される。
【0038】
図4に示すように、上記Y方向調整ダイヤル432、X方向調整ダイヤル442、Y方向角度調整ダイヤル455、X方向角度調整ダイヤル456は、装置カバー13をセットした状態において露出し、回転操作が可能となっている。本実施形態では、Y方向調整ミラー43と該ミラー43をY方向に移動させるY方向移動部431、X方向調整ミラー44と該ミラー44をX方向に移動させるX方向移動部441、および角度調整ミラー45と該ミラー45の角度をY方向・X方向に変化させる回転移動部451により、本発明の光軸調整手段が構成されている。
【0039】
図7に示すように、筐体41内の角度調整ミラー45と集光レンズ47との間に、上記光軸確認部48が配設されている。光軸確認部48は、直方体状のケーシング481と、ケーシング481内に収容された蛍光板482と、蛍光板482の表面側を撮像する撮像部483とを備えている。ケーシング481には、角度調整ミラー45によって下方に反射したレーザ光線Lが透過する透過孔481a,481bが上下に形成されており、蛍光板482は、下側の透過孔481bを塞ぐ状態にケーシング481に固定されている。撮像部483は、蛍光板482の表面を撮像し得る位置に配され、ケーシング481に固定されている。
【0040】
角度調整ミラー45によって下方に反射したレーザ光線Lは、ケーシング481の上側の透過孔481a、蛍光板482、下側の透過孔481bを透過して集光レンズ47に至り、集光レンズ47によってウェーハ1に集光される。蛍光板482はレーザ光線Lが照射されると撮像部483が認識し得る波長の光を発光する特性を有しており、したがってレーザ光線Lが透過する照射光の位置がスポット状に発光する。また、ウェーハ1に集光して照射されたレーザ光線Lはウェーハ1の表面で反射し、その反射光が蛍光板482を照射してその照射位置が発光する。
【0041】
図10の破線で示すように、ウェーハ1の表面に対するレーザ光線Lの照射角度が垂直である場合には、ウェーハ1からの反射光は照射光と一致するため、図11のLa点のように蛍光板482での発光点は1箇所になる。一方、図10の一点鎖線で示すように、ウェーハ1の表面に対するレーザ光線Lの照射角度が垂直でない場合には、ウェーハ1からの反射光は照射光と一致せず、図11のLb点、Lc点のように蛍光板482での発光点は2箇所になる(Lb点が照射光、Lc点が反射光)。このような蛍光板482での発光状態は撮像部483で撮像され、撮像は図示せぬモニタによって確認される。
【0042】
光軸確認部48はケーシング481ごと1つのユニットとして取り扱われ、図7に示すように筐体41内に設けられた固定部484にケーシング481が着脱自在にセットされる。したがって、蛍光板482は所定位置にケーシング481ごと着脱自在に固定される。光軸確認部48は、筐体41の側面開口412から出し入れされて固定部484に対し着脱される。側面開口412は、着脱自在なカバー413で覆われる。
【0043】
(3)レーザ照射機構の作用
次に、上記レーザ照射機構40の作用を説明する。このレーザ照射機構40によれば、次のような光軸調整を行うことができる。
【0044】
(3−1)ウェーハに対するレーザ光線の照射角度を垂直にする調整
ウェーハ1の表面に対するレーザ光線Lの照射角度は、目的箇所を高精度で加工するために垂直である必要がある。本装置10では、ウェーハ1の表面に対する照射角度は光軸確認部48によって確認され、照射角度の調整は、Y方向角度調整ダイヤル455およびX方向角度調整ダイヤル456により角度調整ミラー45の反射角度を調整することで行うことができる。
【0045】
照射角度の調整作業は、まず、照射口411から集光レンズ47を外した状態とする。そして装置カバー13をセットし、レーザ光線Lが外部に漏れないようにする。次いで、発振器42を作動させてレーザ光線Lをチャックテーブル30に保持したウェーハ1に照射する。そして、撮像部483で蛍光板482を撮像し、その撮像をモニタで確認する。
【0046】
蛍光板482は、図11に示したようにレーザ光線Lの照射光とウェーハ1からの反射光が透過することにより発光する。その発光点が、図11のLa点で示したように1箇所であれば反射光は照射光と一致しており、したがってウェーハ1の表面に対するレーザ光線Lの照射角度は垂直であると判断される。
【0047】
ところが、図11のLb点(照射光)およびLc点(反射光)で示したように、蛍光板482での発光点が2箇所である場合には、反射光が照射光と同じ位置を通っておらずウェーハ1の表面への照射角度は垂直ではないと判断され、垂直にする調整作業を行う必要がある。それには、モニタを確認しながら、Y方向角度調整ダイヤル455およびX方向角度調整ダイヤル456を操作して、蛍光板482の発光点が互いに近付き、やがて1箇所になるように角度調整ミラー45の角度を適宜に調整する。
【0048】
本実施形態によれば、筐体41および装置カバー13でレーザ光線Lを完全に覆った状態で、ウェーハ1に対するレーザ光線Lの照射角度を垂直にする光軸調整を行うことができる。これはすなわち筐体41から各ダイヤル455,456が露出しており操作が可能であるためである。このため、装置を遮光パーテションで覆ってレーザ光線が外部に漏れることを防いだ状態として遮光パーテションの中で作業員がレーザ光線遮断用の保護ゴーグルを目に装着するといった、従来行われていた煩雑な手間が省かれる。そして、照射角度の調整を容易、かつ短時間で、しかも作業員の安全が十分に確保された状態で行うことができる。
【0049】
また、本実施形態では、光軸確認部48がケーシング481ごと1つのユニットとして構成されているため、蛍光板482と撮像部483との相対位置等は、組み立ての際に撮像可能な状態に適切に設定して固定しておけば、その後に調整する必要がなく、使い勝手がよいという利点がある。
【0050】
なお、光軸確認部48はウェーハ1に対するレーザ光線Lの照射角度の確認および調整を行う時にのみ、固定部484にセットされ、通常のレーザ加工時にはレーザ光線Lの光路から外される。また、光軸確認部48は、作業員の手によって固定部484にセットするような構成でもよく、また、搬送装置によってレーザ光線Lの光路から外れた退避位置と固定部484へのセット位置との間を搬送する構成を採ってもよい。
【0051】
また、筐体41内に収容される光軸確認部48は、上記一実施形態では角度調整ミラー45と集光レンズ47との間に配置されているが、レーザ光線Lの光路の途中であればいかなる箇所に配置されていてもよい。ウェーハ1に対するレーザ光線Lの照射角度が垂直でない場合には、ウェーハ1から遠いほど照射光と反射光の振れ幅が大きくなるので、僅かな傾きも検出することができるようになり、ウェーハ1への照射角度の垂直度合いの精度をより高くすることができる。この観点から、光軸確認部48は、レーザ光線Lの光路中においてウェーハ1からなるべく遠い箇所に配置されることが好ましい。
【0052】
また、光軸確認部48は1つに限定されず、例えば2つの光軸確認部48を、レーザ光線Lの光路中において1つは上記一実施形態のように角度調整ミラー45と集光レンズ47との間であってウェーハ1に近い場所に配置し、他の1つをウェーハ1から比較的離れた遠い場所(例えば発振器42と1/2λ波長板46との間)に配置する形態としてもよい。このように光軸確認部48をレーザ光線Lの光路の離間した2箇所に配置した場合には、はじめにウェーハ1に近い側の光軸確認部48で比較的大まかな一次調整を行い、次にウェーハ1から遠い側の光軸確認部48で精密な二次調整を行うといった調整方法を採ることにより、的確に、かつ高精度でウェーハ1へのレーザ光線Lの照射角度を垂直にする作業を行うことができる。なお、ウェーハ1へのレーザ光線Lの照射角度が大幅に傾いていてウェーハ1から遠い側の二次調整用の光軸確認部48を反射光が通らない場合がある。このような状況にあっては、上記一次調整を行うことで二次調整用の光軸確認部48に反射光を通すことができる。つまり、一次調整用の光軸確認部48は二次調整用の光軸確認部48に反射光を確実に導くという役割も有しているのである。
【0053】
(3−2)集光レンズの中心にレーザ光線の光軸を通す調整
目的箇所を高精度で加工するためには、発振器42から発せられたレーザ光線Lの光軸が集光レンズ47の中心を通ることも必要である。本装置10では、Y方向調整ダイヤル432を操作してY方向調整ミラー43をY方向に移動させることにより、集光レンズ47に入射するレーザ光線Lの光軸がY方向に移動して調整される。また、X方向調整ダイヤル442を操作してX方向調整ミラー44をX方向に移動させることにより、集光レンズ47に入射するレーザ光線Lの光軸がX方向に移動して調整される。したがって、この2つのダイヤル432,442を適宜に操作することにより、レーザ光線Lの光軸が集光レンズ47の中心を通るようにすることができる。
【0054】
このようにして集光レンズ47の中心にレーザ光線Lの光軸を通す調整作業は、上記照射角度調整を行った後に行うことが好ましく、調整は集光レンズ47を照射口411に装着して行う。なお、集光レンズ47の中心にレーザ光線Lの光軸が通っているか否かを確認する手法は任意であるが、例えば、試験的にウェーハ1にレーザ光線Lを照射し、ウェーハ1への加工痕の位置を顕微鏡で確認するといった方法が採られる。そして加工痕の位置に基づいて、レーザ光線Lの光軸をX・Y方向に調整する。
【0055】
本実施形態では、集光レンズ47ではなくレーザ光線Lの光軸の方を動かすことにより、集光レンズ47の中心をレーザ光線Lの光軸が通るように調整することができるため、集光レンズ47を動かす必要がない。本実施形態とは逆に、集光レンズ47の方を動かしてレーザ光線Lの光軸を集光レンズ47の中心に通るように調整した場合には、レーザ光線Lの照射位置が大きく変わるおそれがある。このため、例えば装置に記憶させたレーザ光線Lの照射位置情報を設定し直す必要が生じ、煩雑なことになるといった不具合を招く。ところが本実施形態のように集光レンズ47は動かさずにレーザ光線Lの光軸を動かすといった形態によれば、光軸のずれは比較的小さくて済み、位置情報を設定し直す手間が省ける場合もあり得る。
【0056】
(4)レーザ照射機構の他の実施形態
図12は、上記レーザ照射機構40の他の実施形態を示している。この形態では、上記一実施形態でのX方向調整ミラー44と角度調整ミラー45を1つのミラー(ここでは角度調整ミラー45と称することにする)で構成している。換言すると、角度調整ミラー45がX方向調整ミラー44を兼用している。このため、X方向調整ミラー44が省略される。
【0057】
図12に示すように、発振器42から発せられたレーザ光線LはY方向調整ミラー43に入射するが、この形態ではY方向調整ミラ43ーに入射したレーザ光線LはX1方向に反射し、角度調整ミラー45に直接入射する。そして、角度調整ミラー45に入射したレーザ光線Lは下方に反射されてウェーハ1に照射される。
【0058】
角度調整ミラー45を回転移動可能に支持する上記回転移動部451は、筐体41に固定されたX方向移動部457のX2側の側面に、上下方向(Z方向)に直線的に移動可能に支持されている。そして回転移動部451は、X方向移動部457に設けられたX方向調整ダイヤル458をつまんで回転させることにより、矢印Eに示すように上下方向に移動するようになっている。
【0059】
X方向調整ダイヤル458は、図示はしないが筐体41の上面から上方に突出して外部に露出しており、筐体41の外部から操作可能とされている。X方向調整ダイヤル458によって回転移動部451を上下方向に移動させることにより、角度調整ミラー45が回転移動部451と一体に上下方向に移動する。これにより、角度調整ミラー45によるレーザ光線LのX方向の反射位置が調整され、結果としてウェーハ1へのレーザ光線LのX方向の照射位置が調整される。
【0060】
この実施形態では、先の一実施形態におけるX方向調整ミラー44が省略されてミラーの数が削減され、構成の簡素化、コスト低減などが図られるといった利点がある。
【符号の説明】
【0061】
1…半導体ウェーハ(ワーク)
10…レーザ加工装置
20…XY移動テーブル
214…X軸駆動機構(加工送り機構)
30…チャックテーブル(保持機構)
40…レーザ照射機構
41…筐体
42…発振器
43…Y方向調整ミラー(割出し送り方向調整ミラー)
431…Y方向移動部(割出し送り方向移動部)
44…X方向調整ミラー(加工送り方向調整ミラー)
441…X方向移動部(加工送り方向移動部)
45…角度調整ミラー
451…回転移動部
47…集光レンズ
48…光軸確認部
482…蛍光板
483…撮像部
484…固定部
L…レーザ光線
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等のワークにレーザ光線を照射して切断や溝形成等の加工を施すレーザ加工装置に係り、特にレーザ光線の光軸調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板状の半導体ウェーハからなるワークの表面に格子状の分割予定ラインにより多数の矩形状のデバイス領域を区画してこれらデバイス領域にICやLSI等の電子回路を形成し、次いで裏面を研削した後に研磨するなど必要な処理を施してから、分割予定ラインに沿って切断するダイシングを行って各デバイス領域を個片化して、1枚のワークから多数のデバイス(半導体チップ)を得ている。ワークのダイシングは、高速回転させた切削ブレードをワークに切り込ませて切断するダイサーと呼ばれる切削装置が広く用いられているが、近年では、レーザ光線を分割予定ラインに照射してレーザ加工を施し、ワークを切断する方法も試みられている(特許文献1等参照)。
【0003】
レーザ光線を照射するレーザ加工装置は、発振器から発せられたレーザ光線をミラーで反射させてから集光レンズを通すことによりワークに集光して照射する構成が一般的である。このような構成にあっては、目的箇所を高精度で加工するために集光レンズの中心をレーザ光線の光軸が通る必要がある。したがって装置の立ち上げ時や発振器の取替え時などには、集光レンズを動かして中心にレーザ光線の光軸が通るようにする集光レンズの位置合わせ作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかして、一般的なレーザ加工装置にあっては、集光レンズの周辺には加工の際に生じた屑を除去する機構やワークの表面位置を測定する機構などが集中して配置されているため、集光レンズの位置合わせを行うための機構を集光レンズの周辺に組み込むことがきわめて困難であった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、集光レンズを動かすことなく集光レンズの中心をレーザ光線の光軸が通るように調整することを可能とするレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワークを保持する保持機構と、該保持機構に保持されたワークにレーザ光線を照射してレーザ加工を施すレーザ照射機構と、前記保持機構と前記レーザ照射機構とを加工送り方向に相対的に移動させる加工送り機構とを有するレーザ加工装置であって、前記レーザ照射機構は、レーザ光線を発する発振器と、該発振器から発せられたレーザ光線を前記保持機構に保持されたワークへ向けて集光する集光レンズと、前記ワークの表面に照射されたレーザ光線の照射位置および照射角度を調整する光軸調整手段とを備え、前記光軸調整手段は、レーザ光線の前記照射位置における前記加工送り方向の位置を調整する加工送り方向調整ミラーと、該加工送り方向調整ミラーを直線的に移動させる加工送り方向移動部と、レーザ光線の前記照射位置における前記加工送り方向と直交する割出し送り方向の位置を調整する割出し送り方向調整ミラーと、該割出し送り方向調整ミラーを直線的に移動させる割出し送り方向移動部と、レーザ光線の前記照射角度を調整する角度調整ミラーと、該角度調整ミラーを回転移動させる回転移動部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のレーザ加工装置では、発振器から発せられたレーザ光線が、光軸調整手段の加工送り方向調整ミラー、割出し送り方向調整ミラーおよび角度調整ミラーといった各調整ミラーを反射することにより集光レンズに導かれる。そして、各調整ミラーに付随する各移動部によって各調整ミラーを移動させることにより、レーザ光線の光軸を集光レンズの中心に通す光軸調整を行うことができる。すなわち、集光レンズではなくレーザ光線の光軸の方を動かすことにより、集光レンズの中心をレーザ光線の光軸が通るように調整することができる。
【0009】
なお、本発明で言うワークは特に限定はされないが、例えば、シリコンやガリウムヒ素(GaAs)等からなる半導体ウェーハ、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミックやガラス、サファイア(Al2O3)系あるいはシリコン系の無機材料基板、液晶表示装置を制御駆動するLCDドライバ等の各種電子部品、さらにはミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料等が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、集光レンズを動かすことなく集光レンズの中心をレーザ光線の光軸が通るように調整することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置のワーク(半導体ウェーハ)を示す斜視図であって、該ウェーハが環状のフレームに粘着テープを介して支持された状態を示している。
【図2】本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置の全体斜視図であって、装置カバーを取り外した状態を示している。
【図3】一実施形態のレーザ加工装置の全体斜視図であって、装置カバーを装着した状態を示している。
【図4】図2のIII部拡大図である。
【図5】同レーザ加工装置が具備するレーザ照射機構の筐体内の構成を示す斜視図である。
【図6】同レーザ照射機構の構成を示すX方向から見た側面図である。
【図7】同レーザ照射機構の構成を示すY方向から見た側面図である。
【図8】同レーザ照射機構のX方向調整ミラーによりウェーハに対するレーザ光線のX方向の照射位置が調整される様子を示す側面図である。
【図9】同レーザ照射機構の角度調整ミラーによりウェーハに対するレーザ光線のY方向の照射角度が調整される様子を示す側面図である。
【図10】同レーザ照射機構の角度調整ミラーによりウェーハに対するレーザ光線のX方向の照射角度が調整される様子を示す側面図である。
【図11】同レーザ照射機構における光軸確認部の蛍光板の表面を示す図であって、該蛍光板を透過するレーザ光線の照射光およびウェーハからの反射光を示している。
【図12】本発明の他の実施形態に係るレーザ照射機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置を説明する。
[1]ウェーハ
はじめに、図1に示す一実施形態でのワークである円板状の半導体ウェーハ(以下、ウェーハ)1を説明する。ウェーハ1は、厚さが例えば100〜700μm程度のシリコンウェーハ等であり、表面には格子状の分割予定ライン2によって多数の矩形状のデバイス領域3が区画されている。各デバイス領域3には、図示せぬICやLSI等の電子回路が形成されている。ウェーハ1の周面の所定箇所には、半導体の結晶方位を示すオリエンテーション・フラットと呼ばれる直線状の切欠き4が形成されている。ウェーハ1は、図2に示すレーザ加工装置10によって全ての分割予定ライン2がレーザ加工されてから、各デバイス領域3が個片化されて多数のデバイス(半導体チップ)にダイシングされる。
【0013】
ウェーハ1は、図1に示すように、環状のフレーム5の円形状開口部5aに粘着テープ6を介して同心状に配され、かつ一体に支持されたワークユニット7とされて、レーザ加工装置10に供給される。粘着テープ6は片面が粘着面とされたもので、その粘着面にフレーム5とウェーハ1の裏面が貼り付けられる。フレーム5は、金属等の板材からなる剛性を有するものであり、フレーム5を支持することにより、ウェーハ1はワークユニット7ごと搬送される。
【0014】
[2]レーザ加工装置
(1)レーザ加工装置の基本的な構成および動作
続いて、図2を参照して一実施形態に係るレーザ加工装置10の基本構成を説明する。図2の符号11は基台であり、この基台11の奥側(X2側)の端部には壁部12が立設されている。基台11上には、XY移動テーブル20が、水平なX方向およびY方向に移動自在に設けられている。XY移動テーブル20には、ワークユニット7を保持するチャックテーブル(保持機構)30が設置されている。チャックテーブル30の上方には、チャックテーブル30に保持されたウェーハ1に向けてレーザ光線を照射してレーザ加工を施すレーザ照射機構40が、チャックテーブル30に対向する状態に配設されている。レーザ照射機構40は、壁部12に固定されている。
【0015】
XY移動テーブル20は、基台11上にX方向に移動自在に設けられたX軸ベース21と、このX軸ベース21上にY方向に移動自在に設けられたY軸ベース22との組み合わせで構成されている。X軸ベース21は、基台11上に固定されたX方向に延びる一対の平行なガイドレール211に摺動自在に取り付けられており、モータ212でボールねじ213を作動させるX軸駆動機構(加工送り機構)214によってX方向に移動させられる。一方、Y軸ベース22は、X軸ベース21上に固定されたY方向に延びる一対の平行なガイドレール221に摺動自在に取り付けられており、モータ222でボールねじ223を作動させるY軸駆動機構224によってY方向に移動させられる。
【0016】
Y軸ベース22の上面には、円筒状のチャックベース31が固定されており、このチャックベース31の上に、チャックテーブル30がZ方向(鉛直方向)を回転軸として回転自在に支持されている。チャックテーブル30は、負圧作用によりワーク(この場合はウェーハ1)を吸着して保持する一般周知の真空チャック式のものである。チャックテーブル30は、チャックベース31内に収容された図示せぬ回転駆動手段によって一方向または両方向に回転駆動される。チャックテーブル30の周囲には、ワークユニット7のフレーム5を着脱自在に保持する複数のクランプ32が配設されている。これらクランプ32は、チャックベース31に取り付けられている。
【0017】
XY移動テーブル20においては、X軸ベース21がX方向に移動する時が、レーザ光線を分割予定ライン2に沿って照射する加工送りとされる。そして、Y軸ベース22がY方向に移動することにより、レーザ光線を照射する対象の分割予定ライン2を切り替える割出し送りがなされる。なお、加工送り方向と割出し送り方向は、この逆、つまり、Y方向が加工送り方向、X方向が割出し送り方向に設定されてもよく、限定はされない。
【0018】
レーザ照射機構40は、壁部12のX1側の前面に一端が固定され、その一端からチャックテーブル30の上方に向かってX1方向に延びる直方体状の筐体41を有している。筐体41のX1側の先端下部には、レーザ光線をほぼ鉛直下方に向けて照射する照射口411が設けられている。
【0019】
筐体41内には、レーザ光線を発する発振器、レーザ光線を集光する集光レンズ、発振器から発せられたレーザ光線を集光レンズに導くとともにレーザ光線の光軸を調整する光軸調整手段、レーザ光線の光軸がワーク(ウェーハ1)の表面に対して垂直に入射しているか否かを確認する光軸確認部といったレーザ照射機構40を構成する要素が収容されているが、これら構成要素に関しては後で詳述する。
【0020】
レーザ加工装置10は、レーザ光線をウェーハ1に照射する際にセットされる装置カバー13を備えている。装置カバー13は、下方およびX2側に開口する直方体状の箱体であり、天板131と、X1側、Y1側、Y2側を塞ぐ側板132を有している。また、天板131のX2側の中央には、レーザ照射機構40の筐体41が嵌合する切欠き133が形成されている。装置カバー13は、図3に示すように基台11上に載置されてセットされる。このセット状態で、筐体41は切欠き133に嵌合して下部が装置カバー13に覆われる。また、基台11上のXY移動テーブル20やチャックテーブル30は装置カバー13で完全に覆われる。
【0021】
また、筐体41の先端下部であって照射口411の近傍には、ウェーハ1の分割予定ライン2を撮像してレーザ光線の照射位置を認識するための図示せぬアライメント手段が配設されている。このアライメント手段は、ウェーハ1の表面を照明する照明手段や光学系、該光学系で捕らえられた像を撮像するCCD等からなる撮像素子等を備えている。
【0022】
以上がレーザ加工装置10の基本構成であり、この装置10では、まず、チャックテーブル30にワークユニット7を保持し、次いで装置カバー13をセットしてからウェーハ1の分割予定ライン2にレーザ光線を照射してレーザ加工を施す。
【0023】
チャックテーブル30へのワークユニット7の保持は、チャックテーブル30を真空運転し、ウェーハ1を粘着テープを介してチャックテーブル30に載置して吸着、保持させ表面を露出した状態とし、フレーム5をクランプ32で保持することによりなされる。この後、装置カバー13をセットする。装置カバー13により、照射口411からウェーハ1までのレーザ光線の光路は目視できない状態になる。
【0024】
分割予定ライン2へのレーザ加工は、上記アライメント手段で分割予定ライン2を撮像し、レーザ光線の照射位置を認識してから行われる。レーザ加工は、XY移動テーブル20のX軸ベース21をX方向に移動させながら、レーザ照射機構40の照射口411からX方向と平行にされた分割予定ライン2に沿ってレーザ光線を照射することによって行われる。分割予定ライン2をX方向すなわち加工送り方向と平行にするには、チャックテーブル30を回転させてウェーハ1を自転させることによりなされる。また、レーザ光線を照射する分割予定ライン2の選択は、XY移動テーブル20のY軸ベース22をY方向に移動させて、照射口411から照射されるレーザ光線の照射位置のY方向位置を加工対象の分割予定ライン2に合わせる割出し送りによってなされる。
【0025】
なお、分割予定ライン2に沿って施す本実施形態でのレーザ加工は、分割予定ライン2を完全に切断するフルカットが挙げられるが、この他には、分割予定ライン2を弱化させる加工も採用することができる。フルカットは、ウェーハ1の成分を溶融・蒸散させるアブレーション加工で行われる。また、弱化加工は、アブレーション加工によって分割予定ライン2の表面側に一定深さの溝を形成したり、あるいはウェーハ1の内部に脆弱な変質層を形成したりすることにより行われる。これらレーザ加工の種類は、照射するレーザ光線の種類(波長、出力)や照射回数などによって選択される。
【0026】
全ての分割予定ライン2にレーザ光線を照射してレーザ加工を施したら、レーザ照射機構40によるレーザ光線の照射を停止し、また、チャックテーブル30の真空運転を停止してウェーハ1の保持を解除する。そして装置カバー13を取り外し、クランプ32によるフレーム5の保持を解除してから、ワークユニット7をチャックテーブル30から取り上げる。この後、ウェーハ1は洗浄工程等を経てから、個片化されたデバイス領域3すなわちデバイス(半導体チップ)を粘着テープ6からピックアップする工程に移される。なお、分割予定ライン2が上記のようにフルカットされた場合はそのままピックアップ工程に移されるが、上記弱化加工の場合には、外力を付与することにより弱化した分割予定ライン2を割断した後、ピックアップ工程に移される。
【0027】
(2)レーザ照射機構
次に、上記レーザ照射機構40を詳述する。
上記筐体41内には、図5に示すように、レーザ光線Lを発する発振器42と、上記光軸調整手段を構成するY方向調整ミラー(割出し送り方向調整ミラー)43、X方向調整ミラー(加工送り方向調整ミラー)44および角度調整ミラー45と、1/2λ波長板46と、集光レンズ47と、光軸確認部48等が収容されている。
【0028】
発振器42は、ウェーハ1のレーザ加工に応じたレーザ光線(例えばパルスレーザ光線等)を発生させるもので、図6に示すように、筐体41内のY2側の端部の底部に固定されている。発振器42からは、水平なレーザ光線LがY1方向に照射される。発振器42から照射されたレーザ光線Lは、図5〜図7に示すように、1/2λ波長板46を透過してからY方向調整ミラー43、X方向調整ミラー44、角度調整ミラー45の順に反射した後、下方に進行し、集光レンズ47を透過してチャックテーブル30に保持されたウェーハ1に照射される。
【0029】
Y方向調整ミラー43は、この場合偏光ビームスプリッタで構成されており、1/2λ波長板46を透過したレーザ光線Lは、図6に示すようにY方向調整ミラー43を透過する成分(透過光L1)と反射する成分(反射光L2)の2つに分離される。Y方向調整ミラー43を透過したレーザ光線L1はアブソーバ49で吸収され進行が停止する。一方、Y方向調整ミラー43で反射したレーザ光線L2は90°の角度で上方のX方向調整ミラー44に向かう。Y方向調整ミラー43で反射してX方向調整ミラー44に向かうレーザ光線L1は、ウェーハ1のレーザ加工に用いられる加工用の光束である。
【0030】
1/2λ波長板46は回転可能に設置されており、回転させることにより、Y方向調整ミラー43で反射するレーザ光線と透過するレーザ光線の割合が変化するようになっている。すなわち、1/2λ波長板46を回転させることにより、Y方向調整ミラー43で反射する加工用のレーザ光線L(L2)の量が調整されて当該レーザ照射機構40の実質的なレーザ光線の出力が調整されるようになっている。本実施形態ではY方向調整ミラー43がレーザ光線の出力調整機能も有しているため、レーザ光線の出力調整機構を別途具備させる必要がなく、その結果、部品点数の削減ならびに軽量化や、コスト低減といった利点を得ることができる。
【0031】
Y方向調整ミラー43によって上方に90°の角度で反射したレーザ光線Lは、X方向調整ミラー44に入射して90°の角度でX1方向に反射し、次いで角度調整ミラー45に入射し、この角度調整ミラー45によりほぼ90°の角度で下方に向けて反射される。そして角度調整ミラー45により下方に向けられたレーザ光線Lは、角度調整ミラー45の下方の上記照射口411に着脱可能に配設された集光レンズ47により集光されてウェーハ1に照射される。上記各調整ミラー43,44,45は、それぞれ筐体41内の所定位置に固定された移動部431,441,451に、所定の方向に移動可能に設けられている。
【0032】
Y方向調整ミラー43は、図5および図6に示すように、筐体41内のY1側の端部の底部に固定されたY方向移動部(割出し送り方向移動部)431の上面に、Y方向に直線的に移動可能に支持されている。Y方向移動部431には、Y方向調整ミラー43をY方向に移動させる操作部材としてY方向調整ダイヤル432を有している。Y方向調整ダイヤル432は、筐体41の側面からY1方向に突出して外部に露出しており、このY方向調整ダイヤル432をつまんで回転させると、Y方向調整ミラー43が図5の矢印Aに示すようにY方向に直線的に移動するようになっている。このようにY方向調整ミラー43をY方向に移動させることにより、図6に示すように(点線が移動後とする)、Y方向調整ミラー43でのレーザ光線LのY方向の入射/反射位置が変化する。その結果として、ウェーハ1の表面に照射されるレーザ光線Lの照射位置におけるY方向の位置が調整される。
【0033】
X方向調整ミラー44は、図5〜図7に示すように、Y方向調整ミラー43の上方に位置付けられて筐体41内の上面に固定されたX方向移動部(加工送り方向移動部)441のX1側の側面に、上下方向に直線的に移動可能に支持されている。X方向移動部441には、X方向調整ミラー44を上下方向に移動させる操作部材としてX方向調整ダイヤル442が設けられている。X方向調整ダイヤル442は、筐体41の上面から上方に突出して外部に露出しており、このX方向調整ダイヤル442をつまんで回転させると、X方向調整ミラー44が図5の矢印Bに示すように上下方向に直線的に移動するようになっている。このようにX方向調整ミラー44を上下方向に移動させることにより、図8に示すように(点線が移動後とする)、X方向調整ミラー44でのレーザ光線Lの上下方向の入射/反射位置が変化する。これにより、角度調整ミラー45でのレーザ光線Lの入射/反射位置がX方向に変化し、結果としてウェーハ1の表面に照射されるレーザ光線Lの照射位置におけるX方向の位置が調整される。
【0034】
角度調整ミラー45は、図5および図7に示すように、X方向調整ミラー44のX1側に対向配置されて筐体41内に固定された回転移動部451におけるX2側の端面に支持されている。回転移動部451は、筐体41に固定された支持部452と、この支持部452のX2側の端面にZ方向(鉛直方向)を回転軸として水平方向に回転可能に支持された水平回転部453と、この水平回転部453のX2側の端面にY方向を回転軸として上下方向に回転可能に支持された上下回転部454とを備えている。
【0035】
水平回転部453は、支持部452に設けられたY方向角度調整ダイヤル455をつまんで回転させることにより、図5の矢印Cに示すように水平方向に回転移動するようになっている。このように水平回転部453を水平方向に回転移動させることにより、図9に示すように(点線が移動後とする)、角度調整ミラー45によって下方に反射するレーザ光線LのY方向への反射角度が調整される。その結果、ウェーハ1の表面に照射されるレーザ光線LのY方向の照射角度が調整される。
【0036】
また、上下回転部454は、水平回転部453に設けられたX方向角度調整ダイヤル456をつまんで回転させることにより、図5の矢印Dに示すように上下方向に回転移動するようになっている。このように上下回転部454を上下方向に回転移動させると、図10に示すように(点線が移動後とする)、角度調整ミラー45によって下方に反射するレーザ光線LのX方向への反射角度が調整される。その結果、ウェーハ1の表面に照射されるレーザ光線LのX方向の照射角度が調整される。
【0037】
Y方向角度調整ダイヤル455は、筐体41の側面からY1方向に突出して外部に露出している。また、X方向角度調整ダイヤル456は、筐体41の上面から上方に突出して外部に露出している。これら角度調整ミラー455,456を適宜に回転操作することにより、角度調整ミラー45によって下方に反射するレーザ光線LのX・Y方向の照射角度が調整され、結果として上記のようにウェーハ1に対するレーザ光線のX・Y方向の照射角度が調整される。
【0038】
図4に示すように、上記Y方向調整ダイヤル432、X方向調整ダイヤル442、Y方向角度調整ダイヤル455、X方向角度調整ダイヤル456は、装置カバー13をセットした状態において露出し、回転操作が可能となっている。本実施形態では、Y方向調整ミラー43と該ミラー43をY方向に移動させるY方向移動部431、X方向調整ミラー44と該ミラー44をX方向に移動させるX方向移動部441、および角度調整ミラー45と該ミラー45の角度をY方向・X方向に変化させる回転移動部451により、本発明の光軸調整手段が構成されている。
【0039】
図7に示すように、筐体41内の角度調整ミラー45と集光レンズ47との間に、上記光軸確認部48が配設されている。光軸確認部48は、直方体状のケーシング481と、ケーシング481内に収容された蛍光板482と、蛍光板482の表面側を撮像する撮像部483とを備えている。ケーシング481には、角度調整ミラー45によって下方に反射したレーザ光線Lが透過する透過孔481a,481bが上下に形成されており、蛍光板482は、下側の透過孔481bを塞ぐ状態にケーシング481に固定されている。撮像部483は、蛍光板482の表面を撮像し得る位置に配され、ケーシング481に固定されている。
【0040】
角度調整ミラー45によって下方に反射したレーザ光線Lは、ケーシング481の上側の透過孔481a、蛍光板482、下側の透過孔481bを透過して集光レンズ47に至り、集光レンズ47によってウェーハ1に集光される。蛍光板482はレーザ光線Lが照射されると撮像部483が認識し得る波長の光を発光する特性を有しており、したがってレーザ光線Lが透過する照射光の位置がスポット状に発光する。また、ウェーハ1に集光して照射されたレーザ光線Lはウェーハ1の表面で反射し、その反射光が蛍光板482を照射してその照射位置が発光する。
【0041】
図10の破線で示すように、ウェーハ1の表面に対するレーザ光線Lの照射角度が垂直である場合には、ウェーハ1からの反射光は照射光と一致するため、図11のLa点のように蛍光板482での発光点は1箇所になる。一方、図10の一点鎖線で示すように、ウェーハ1の表面に対するレーザ光線Lの照射角度が垂直でない場合には、ウェーハ1からの反射光は照射光と一致せず、図11のLb点、Lc点のように蛍光板482での発光点は2箇所になる(Lb点が照射光、Lc点が反射光)。このような蛍光板482での発光状態は撮像部483で撮像され、撮像は図示せぬモニタによって確認される。
【0042】
光軸確認部48はケーシング481ごと1つのユニットとして取り扱われ、図7に示すように筐体41内に設けられた固定部484にケーシング481が着脱自在にセットされる。したがって、蛍光板482は所定位置にケーシング481ごと着脱自在に固定される。光軸確認部48は、筐体41の側面開口412から出し入れされて固定部484に対し着脱される。側面開口412は、着脱自在なカバー413で覆われる。
【0043】
(3)レーザ照射機構の作用
次に、上記レーザ照射機構40の作用を説明する。このレーザ照射機構40によれば、次のような光軸調整を行うことができる。
【0044】
(3−1)ウェーハに対するレーザ光線の照射角度を垂直にする調整
ウェーハ1の表面に対するレーザ光線Lの照射角度は、目的箇所を高精度で加工するために垂直である必要がある。本装置10では、ウェーハ1の表面に対する照射角度は光軸確認部48によって確認され、照射角度の調整は、Y方向角度調整ダイヤル455およびX方向角度調整ダイヤル456により角度調整ミラー45の反射角度を調整することで行うことができる。
【0045】
照射角度の調整作業は、まず、照射口411から集光レンズ47を外した状態とする。そして装置カバー13をセットし、レーザ光線Lが外部に漏れないようにする。次いで、発振器42を作動させてレーザ光線Lをチャックテーブル30に保持したウェーハ1に照射する。そして、撮像部483で蛍光板482を撮像し、その撮像をモニタで確認する。
【0046】
蛍光板482は、図11に示したようにレーザ光線Lの照射光とウェーハ1からの反射光が透過することにより発光する。その発光点が、図11のLa点で示したように1箇所であれば反射光は照射光と一致しており、したがってウェーハ1の表面に対するレーザ光線Lの照射角度は垂直であると判断される。
【0047】
ところが、図11のLb点(照射光)およびLc点(反射光)で示したように、蛍光板482での発光点が2箇所である場合には、反射光が照射光と同じ位置を通っておらずウェーハ1の表面への照射角度は垂直ではないと判断され、垂直にする調整作業を行う必要がある。それには、モニタを確認しながら、Y方向角度調整ダイヤル455およびX方向角度調整ダイヤル456を操作して、蛍光板482の発光点が互いに近付き、やがて1箇所になるように角度調整ミラー45の角度を適宜に調整する。
【0048】
本実施形態によれば、筐体41および装置カバー13でレーザ光線Lを完全に覆った状態で、ウェーハ1に対するレーザ光線Lの照射角度を垂直にする光軸調整を行うことができる。これはすなわち筐体41から各ダイヤル455,456が露出しており操作が可能であるためである。このため、装置を遮光パーテションで覆ってレーザ光線が外部に漏れることを防いだ状態として遮光パーテションの中で作業員がレーザ光線遮断用の保護ゴーグルを目に装着するといった、従来行われていた煩雑な手間が省かれる。そして、照射角度の調整を容易、かつ短時間で、しかも作業員の安全が十分に確保された状態で行うことができる。
【0049】
また、本実施形態では、光軸確認部48がケーシング481ごと1つのユニットとして構成されているため、蛍光板482と撮像部483との相対位置等は、組み立ての際に撮像可能な状態に適切に設定して固定しておけば、その後に調整する必要がなく、使い勝手がよいという利点がある。
【0050】
なお、光軸確認部48はウェーハ1に対するレーザ光線Lの照射角度の確認および調整を行う時にのみ、固定部484にセットされ、通常のレーザ加工時にはレーザ光線Lの光路から外される。また、光軸確認部48は、作業員の手によって固定部484にセットするような構成でもよく、また、搬送装置によってレーザ光線Lの光路から外れた退避位置と固定部484へのセット位置との間を搬送する構成を採ってもよい。
【0051】
また、筐体41内に収容される光軸確認部48は、上記一実施形態では角度調整ミラー45と集光レンズ47との間に配置されているが、レーザ光線Lの光路の途中であればいかなる箇所に配置されていてもよい。ウェーハ1に対するレーザ光線Lの照射角度が垂直でない場合には、ウェーハ1から遠いほど照射光と反射光の振れ幅が大きくなるので、僅かな傾きも検出することができるようになり、ウェーハ1への照射角度の垂直度合いの精度をより高くすることができる。この観点から、光軸確認部48は、レーザ光線Lの光路中においてウェーハ1からなるべく遠い箇所に配置されることが好ましい。
【0052】
また、光軸確認部48は1つに限定されず、例えば2つの光軸確認部48を、レーザ光線Lの光路中において1つは上記一実施形態のように角度調整ミラー45と集光レンズ47との間であってウェーハ1に近い場所に配置し、他の1つをウェーハ1から比較的離れた遠い場所(例えば発振器42と1/2λ波長板46との間)に配置する形態としてもよい。このように光軸確認部48をレーザ光線Lの光路の離間した2箇所に配置した場合には、はじめにウェーハ1に近い側の光軸確認部48で比較的大まかな一次調整を行い、次にウェーハ1から遠い側の光軸確認部48で精密な二次調整を行うといった調整方法を採ることにより、的確に、かつ高精度でウェーハ1へのレーザ光線Lの照射角度を垂直にする作業を行うことができる。なお、ウェーハ1へのレーザ光線Lの照射角度が大幅に傾いていてウェーハ1から遠い側の二次調整用の光軸確認部48を反射光が通らない場合がある。このような状況にあっては、上記一次調整を行うことで二次調整用の光軸確認部48に反射光を通すことができる。つまり、一次調整用の光軸確認部48は二次調整用の光軸確認部48に反射光を確実に導くという役割も有しているのである。
【0053】
(3−2)集光レンズの中心にレーザ光線の光軸を通す調整
目的箇所を高精度で加工するためには、発振器42から発せられたレーザ光線Lの光軸が集光レンズ47の中心を通ることも必要である。本装置10では、Y方向調整ダイヤル432を操作してY方向調整ミラー43をY方向に移動させることにより、集光レンズ47に入射するレーザ光線Lの光軸がY方向に移動して調整される。また、X方向調整ダイヤル442を操作してX方向調整ミラー44をX方向に移動させることにより、集光レンズ47に入射するレーザ光線Lの光軸がX方向に移動して調整される。したがって、この2つのダイヤル432,442を適宜に操作することにより、レーザ光線Lの光軸が集光レンズ47の中心を通るようにすることができる。
【0054】
このようにして集光レンズ47の中心にレーザ光線Lの光軸を通す調整作業は、上記照射角度調整を行った後に行うことが好ましく、調整は集光レンズ47を照射口411に装着して行う。なお、集光レンズ47の中心にレーザ光線Lの光軸が通っているか否かを確認する手法は任意であるが、例えば、試験的にウェーハ1にレーザ光線Lを照射し、ウェーハ1への加工痕の位置を顕微鏡で確認するといった方法が採られる。そして加工痕の位置に基づいて、レーザ光線Lの光軸をX・Y方向に調整する。
【0055】
本実施形態では、集光レンズ47ではなくレーザ光線Lの光軸の方を動かすことにより、集光レンズ47の中心をレーザ光線Lの光軸が通るように調整することができるため、集光レンズ47を動かす必要がない。本実施形態とは逆に、集光レンズ47の方を動かしてレーザ光線Lの光軸を集光レンズ47の中心に通るように調整した場合には、レーザ光線Lの照射位置が大きく変わるおそれがある。このため、例えば装置に記憶させたレーザ光線Lの照射位置情報を設定し直す必要が生じ、煩雑なことになるといった不具合を招く。ところが本実施形態のように集光レンズ47は動かさずにレーザ光線Lの光軸を動かすといった形態によれば、光軸のずれは比較的小さくて済み、位置情報を設定し直す手間が省ける場合もあり得る。
【0056】
(4)レーザ照射機構の他の実施形態
図12は、上記レーザ照射機構40の他の実施形態を示している。この形態では、上記一実施形態でのX方向調整ミラー44と角度調整ミラー45を1つのミラー(ここでは角度調整ミラー45と称することにする)で構成している。換言すると、角度調整ミラー45がX方向調整ミラー44を兼用している。このため、X方向調整ミラー44が省略される。
【0057】
図12に示すように、発振器42から発せられたレーザ光線LはY方向調整ミラー43に入射するが、この形態ではY方向調整ミラ43ーに入射したレーザ光線LはX1方向に反射し、角度調整ミラー45に直接入射する。そして、角度調整ミラー45に入射したレーザ光線Lは下方に反射されてウェーハ1に照射される。
【0058】
角度調整ミラー45を回転移動可能に支持する上記回転移動部451は、筐体41に固定されたX方向移動部457のX2側の側面に、上下方向(Z方向)に直線的に移動可能に支持されている。そして回転移動部451は、X方向移動部457に設けられたX方向調整ダイヤル458をつまんで回転させることにより、矢印Eに示すように上下方向に移動するようになっている。
【0059】
X方向調整ダイヤル458は、図示はしないが筐体41の上面から上方に突出して外部に露出しており、筐体41の外部から操作可能とされている。X方向調整ダイヤル458によって回転移動部451を上下方向に移動させることにより、角度調整ミラー45が回転移動部451と一体に上下方向に移動する。これにより、角度調整ミラー45によるレーザ光線LのX方向の反射位置が調整され、結果としてウェーハ1へのレーザ光線LのX方向の照射位置が調整される。
【0060】
この実施形態では、先の一実施形態におけるX方向調整ミラー44が省略されてミラーの数が削減され、構成の簡素化、コスト低減などが図られるといった利点がある。
【符号の説明】
【0061】
1…半導体ウェーハ(ワーク)
10…レーザ加工装置
20…XY移動テーブル
214…X軸駆動機構(加工送り機構)
30…チャックテーブル(保持機構)
40…レーザ照射機構
41…筐体
42…発振器
43…Y方向調整ミラー(割出し送り方向調整ミラー)
431…Y方向移動部(割出し送り方向移動部)
44…X方向調整ミラー(加工送り方向調整ミラー)
441…X方向移動部(加工送り方向移動部)
45…角度調整ミラー
451…回転移動部
47…集光レンズ
48…光軸確認部
482…蛍光板
483…撮像部
484…固定部
L…レーザ光線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持機構と、該保持機構に保持されたワークにレーザ光線を照射してレーザ加工を施すレーザ照射機構と、前記保持機構と前記レーザ照射機構とを加工送り方向に相対的に移動させる加工送り機構と、を有するレーザ加工装置であって、
前記レーザ照射機構は、
レーザ光線を発する発振器と、該発振器から発せられたレーザ光線を前記保持機構に保持されたワークへ向けて集光する集光レンズと、前記ワークの表面に照射されたレーザ光線の照射位置および照射角度を調整する光軸調整手段と、を備え、
前記光軸調整手段は、
レーザ光線の前記照射位置における前記加工送り方向の位置を調整する加工送り方向調整ミラーと、該加工送り方向調整ミラーを直線的に移動させる加工送り方向移動部と、レーザ光線の前記照射位置における前記加工送り方向と直交する割出し送り方向の位置を調整する割出し送り方向調整ミラーと、該割出し送り方向調整ミラーを直線的に移動させる割出し送り方向移動部と、レーザ光線の前記照射角度を調整する角度調整ミラーと、該角度調整ミラーを回転移動させる回転移動部と、
を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項1】
ワークを保持する保持機構と、該保持機構に保持されたワークにレーザ光線を照射してレーザ加工を施すレーザ照射機構と、前記保持機構と前記レーザ照射機構とを加工送り方向に相対的に移動させる加工送り機構と、を有するレーザ加工装置であって、
前記レーザ照射機構は、
レーザ光線を発する発振器と、該発振器から発せられたレーザ光線を前記保持機構に保持されたワークへ向けて集光する集光レンズと、前記ワークの表面に照射されたレーザ光線の照射位置および照射角度を調整する光軸調整手段と、を備え、
前記光軸調整手段は、
レーザ光線の前記照射位置における前記加工送り方向の位置を調整する加工送り方向調整ミラーと、該加工送り方向調整ミラーを直線的に移動させる加工送り方向移動部と、レーザ光線の前記照射位置における前記加工送り方向と直交する割出し送り方向の位置を調整する割出し送り方向調整ミラーと、該割出し送り方向調整ミラーを直線的に移動させる割出し送り方向移動部と、レーザ光線の前記照射角度を調整する角度調整ミラーと、該角度調整ミラーを回転移動させる回転移動部と、
を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−173128(P2011−173128A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36864(P2010−36864)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
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