説明

レーザ発振装置

【課題】レーザ発振器の熱変形に伴なうミラー支持部材の変形を抑制したレーザ発振装置を提案する。
【解決手段】筐体を有し、この筐体の内部でレーザ光を発生するレーザ発振器、このレーザ発振器で発生したレーザ光を導く第1ミラー、および第1ミラーと平行に配置され第1ミラーからのレーザ光をさらに導く第2ミラーを備え、レーザ発振器が支持基板に取り付けられ、また、第1ミラーと第2ミラーがともに共通のミラー支持部材に取り付けられ、このミラー支持部材が、支持基板に対して、三角形の各頂点に位置する単に3つの固着部材により取り付けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ加工機などに使用されるレーザ発振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザビームにより被加工物を加工するレーザ加工機では、レーザ発振器と複数のミラーを備えたレーザ発振装置が使用される。レーザ発振器は、筐体を有し、この筐体の内部でレーザ光を発生する。このレーザ光は、レーザビームとして、複数のミラーを通じて被加工物を加工する加工部に伝送される。
【0003】
レーザ加工機は、例えば特開2002−316291号公報(特許文献1)の図1に開示される。この特許文献1に開示されたレーザ加工機のレーザ発振装置では、レーザ発振器から出力された直線偏光のレーザビームは、第1ベンドミラーによって円偏光され、この円偏光されたレーザビームは、第2ベンドミラー(凸面鏡)と第3ベンドミラー(凹面鏡)により、ビーム径を拡大するとともにほぼ平行ビームに補正され、加工部に送出される。一般に、レーザ発振器から出力されるレーザ光には、直線偏光成分が含まれており、このレーザ光の直線偏光成分により、被加工物に対するレーザ光の吸収率が加工方向に異なり、加工品質に異方性が生じる。このため、レーザ発振器から出力されたレーザ光を円偏光にしている。特許文献1の第1ベンドミラーは、直線偏光のレーサ光を円偏光に変換する円偏光ミラーを構成する。
【0004】
また、特開平11−163442号公報(特許文献2)の図1には、レーザ加工機に使用されるYAGレーザ発振装置が開示される。このYAGレーザ発振装置では、共通のベース板上に、基本波発振部と、第2高調波発生部と、第3高調波発生部とともに、特定波長の光を反射する2つのダイクロイックミラーを配置される。この特許文献2の基本波発振部は、レーザ発振器を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−316291号公報、とくに図1
【特許文献2】特開平11−163442号公報、とくに図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された円偏光ミラーを用いるレーザ発振装置では、円偏光ミラーはレーザ発振器の筐体に取り付けられる。このため、レーザ発振器の筐体の熱変形に伴ない、円偏光ミラーの角度が変化し、レーザ光軸にずれが生じる。円偏光ミラーから加工部までの距離は、一般には10m以上と長く、円偏光ミラーの僅かな角度変化によって、加工位置の大きな変化が生じる不都合がある。また、特許文献2に開示された2つのダイクロイックミラーを用いるレーザ発振装置でも、各ダイクロイックミラーが共通のベース板上に取り付けられる。このため、レーザ発振器の熱によりベース板が変形し、各ダイクロイックミラーの平行性が崩れ、レーザ光の光軸にずれが発生し、加工位置にずれが生じる不都合がある。
【0007】
この発明は、このようなレーザ光軸のずれを改善することのできるレーザ発振装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によるレーザ発振装置は、筐体を有し、この筐体の内部でレーザ光を発生するレーザ発振器、前記レーザ発振器で発生した前記レーザ光を導く第1ミラー、および前記第1ミラーと平行に配置され前記第1ミラーからの前記レーザ光をさらに導く第2ミラーを備えたレーザ発振装置であって、前記レーザ発振器が支持基板に取り付けられ、また、前記第1ミラーと前記第2ミラーがともに共通のミラー支持部材に取り付けられ、このミラー支持部材が、前記支持基板に対して、三角形の各頂点に位置する単に3つの固着部材により取り付けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によるレーザ発振装置では、レーザ発振器が支持基板に取り付けられ、また、第1ミラーと第2ミラーがともに共通のミラー支持部材に取り付けられ、このミラー支持部材が、前記支持基板に対して、三角形の各頂点に位置する単に3つの固着部材により取り付けられたので、レーザ発振器の筐体が熱変形しても、ミラー支持部材の変形を充分小さく抑制し、第1、第2ミラーのレーザ光軸のずれを充分小さく抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明によるレーザ発振装置の実施の形態1を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1におけるミラー支持部材の変形を説明する説明図である。
【図3】4点固着構造におけるミラー支持部材の変形を説明する説明図である。
【図4】実施の形態1におけるミラーの平行性を示す説明図である。
【図5】この発明によるレーザ発振装置の実施の形態2を示す斜視図である。
【図6】この発明によるレーザ発振装置の実施の形態3を示す斜視図である。
【図7】実施の形態3における箱形ミラー支持体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下この発明のいくつかの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明によるレーザ発振装置の実施の形態1を示す斜視図である。この実施の形態1のレーザ発振装置100は、例えばレーザ加工機に使用される。
【0013】
実施の形態1のレーザ発振装置100は、レーザ発振器10と、光学ユニット20を備えている。レーザ発振器10は、筐体11を有し、この筐体11の内部でレーザ光を発生する。筐体11は、金属、例えば鋼板で直方体の箱形に形成され、正面壁11Aと、裏面壁11Bと、周壁11Cを有する。レーザ発振器10で発生したレーザ光は、レーザビームLBとなり、正面壁11Aからそれと垂直に交差する方向に導出される。正面壁11Aには、3つの取付台12A、12B、12Cが形成される。
【0014】
レーザ発振器10には、例えば特開昭60−254684号公報の第2図に開示されたレーザ発振器が使用される。このレーザ発振器は、ガスレーザ発振器であり、筐体11の内部には、COなどのレーザガスが封入される。レーザガスを封入した筐体11内には、特開昭60−254684号公報の第2図に示されるように、レーザガスを循環させる送風機と、レーザガスを冷却させる熱交換器と、レーザガスを励起する一対の放電電極が配置される。レーザ発振中には、レーザガスに温度差が生じ、筐体11には温度分布が発生し、この温度分布に基づき、筐体11の熱変形が発生する。例えばレーザ加工機に使用されるレーザ発振器10は高出力として構成され、内部に発生する熱量が大きいので、筐体11の熱変形を避けられない。
【0015】
光学ユニット20は、ミラー系21と、ミラー支持部材41を有する。ミラー系21は、互いに平行に配置された第1ミラー22と第2ミラー24を含む。実施の形態1では、第1ミラー22は円偏光ミラーであり、第2ミラー24は反射鏡で構成されたベンドミラーである。円偏光ミラー22は、レーザビームLBが、45°の入射角で入射するように設置される。
【0016】
特開平8−192283号公報の図25には、レーザ発振器から出力される直線偏光のレーザ光を円偏光にする方法が開示される。入射角45°で使用するミラーの反射面に対し、直線偏光のレーザ光の偏光面がS偏光軸(またはP偏光軸)と45°をなす入射配置(方位角45°)にて、反射するレーザ光のS偏光とP偏光の両成分間に90°(λ/4)の位相差が生じるように光学膜設計された誘電体多層膜を形成することにより、直線偏光を円偏光に変換することができ、このようなミラーを円偏光ミラーと呼ぶ。ここで、S偏光とは、入射面に垂直な偏光面を持つ成分であり、P偏光とは、それに垂直、すなわち入射面に平行な偏光面を持つ成分である。円偏光ミラー22は、この特開平8−192283に開示された円偏光ミラーと同じに構成される。
【0017】
ミラー支持部材41は、金属、例えば鋼板で長方形の平板状に形成される。このミラー支持部材41は、相対向する一対の主面41A、41Bと、相対向する一対の長辺42A、42Bと、相対向する一対の短辺42C、42Dと、4つのコーナー部43A〜43Dを有する。主面41A、41Bは互いに平行な平面である。コーナー部43Aは、左長辺42Aと上短辺42Cとの間に形成され、コーナー部43Bは、右長辺42Bと上短辺42Cとの間に形成され、コーナー部43Cは、右長辺42Bと下短辺42Dとの間に形成され、コーナー部43Dは、左長辺42Aと下短辺42Dとの間に形成される。
【0018】
第1ミラー22は、ミラーブロック23に取り付けられ、このミラーブロック23は、ミラー支持部材41の主面41Aの上部中央に直接取り付けられる。第2ミラー24は、ミラーブロック25に取り付けられ、このミラーブロック25は、ミラー支持部材41の主面41Aの下部中央に直接取り付けられる。ミラーブロック23、25は、それぞれの両端面を直角二等辺三角形として、三角柱状に形成される。ミラー22、24は、それぞれのミラーの中心面がミラー支持部材41の主面41Aに対して45°傾斜して、互いに平行な状態で、ミラーブロック23、25により支持される。レーザビームLBは第1ミラー22の入射面に45°の角度で入射して、その入射面から45°の角度で反射し、その後、第2ミラー24の入射面に45°の入射角で入射し、その入射面から45°の角度で反射され、レーザ加工機の加工部に導かれる。
【0019】
ミラー支持部材41は、単に3つの固着具45A、45B、45Cを含む3点固着構造により、レーザ発振器10の筐体11の正面壁11Aに形成された取付台12A、12B、12Cに直接取り付けられる。固着具45Aはミラー支持部材41のコーナー部43Aを正面壁11Aに固着する。固着具45Bはミラー支持部材41のコーナー部43Bを正面壁11Aに固着する。固着具45Cはミラー支持部材41のコーナー部43Cを正面壁11Aに固着する。コーナー部43Dには、固着具は配置されず、このコーナー部43Dは、正面壁11Aに固着されず、フリーの状態とされる。このように、単に3つの固着具45A、45B、45Cが、3つのコーナー部45A、45B、45Cを正面壁11Aに固着する結果、3つの固着具45A、45B、45Cは、三角形の各頂点に位置する。これらの固着具45A、45B、45Cは、例えば互いに同じ外形寸法を持ったボルトで構成される。
【0020】
図2、図3は、レーザ発振器10における筐体11の正面壁11Aの熱変形と、これに伴なうミラー支持部材41の変形を説明する説明図である。図2は、実施の形態1による3点固着構造における正面壁11Aの熱変形と、これに伴なうミラー支持部材41の変形を示し、また図3は、図2と比較するために4点固着構造における正面壁11Aの熱変形と、これに伴なうミラー支持部材41の変形を示す。図2の3点固着構造は、ミラー支持部材41のコーナー部43A〜43Cを固着具45A〜45Cにより、正面壁11Aの取付台12A〜12Cに固着した構造である。図3の4点固着構造は、ミラー支持部材41のコーナー部43Dにも固着具45Dを設け、ミラー支持部材41が、4つの固着具45A〜45Dにより、正面壁11Aの取付台12A〜12Dに固着された構造である。
【0021】
実施の形態1による3点固着構造では、図2に示すように、正面壁11Aが熱変形しても、ミラー支持部材41には、変形が殆んど発生しないが、4点固着構造では、図3に示すように、正面壁11Aの熱変形に伴ない、ミラー支持部材41に大きな変形が発生する。具体的には、正面壁11Aの取付台12A〜12Dが、正面壁11Aの熱変形に基づき、互いに異なる隆起量で隆起した場合を想定する。4点固着構造では、4つの固着具45A〜45Dによる過剰拘束のために、各取付台12A〜12Dの互いに異なる隆起量に基づき、長辺42A、42B、および短辺42C、42Dのそれぞれにおいて、平行性が変化する。このように、ミラー支持部材41の平面度が変化するため、ミラー22、24の相対角度が変化し、それらの平行性が崩れる。4点以上の多点固着構造を採用すれば、4点固着構造よりも、さらに過剰拘束となり、ミラー22、24の相対角度は変化する。
【0022】
実施の形態1の3点固着構造では、筐体11の正面壁11Aが熱変形した場合に、固着具45Aと固着具45Bとを結ぶ線、および固着具45Bと固着具45Cとを結ぶ線は、移動するが、コーナー部43Dがフリーとされる結果、両辺を含む平面は一意に決まり平面度が変化することはない。したがって、ミラー支持部材41の平面度も一定となり、円偏光ミラー22とベンドミラー24の相対角度も一定に保つことができる。
【0023】
図4は、ミラー22、24の平行性に関する説明図である。ミラー支持部材41は、レーザ発振器10における筐体11の正面壁11Aに固着されるので、正面壁11Aの熱変形に伴なうミラー支持部材41の姿勢変化は回避できないが、実施の形態1の3点固着構造では、ミラー支持部材41の姿勢変化は単調変化となり、その姿勢変化は、円偏光ミラー22とベンドミラー24の平行性を実質的に保つような姿勢変化となる。例えば図4に示すように、第1ミラー22が、第2ミラー24よりも正面壁11Aから離れるような単調な姿勢変化では、ミラー22、24との平行性は実質的に保持される。この場合、ミラー22、24の光軸の角度は、図4に実線で示す状態から点線で示すように変化するが、第1ミラー22の光軸の角度変化と、第2ミラー24の光軸の角度変化は、実質的に互いに相殺されるので、第2ミラー24から出力されるレーザビームLBの光軸角度の変化は実質的に生じることなく、実質的に一定に保たれ、加工位置の変化も実質的に解消することができ、良好な加工品質を得ることができる。
【0024】
このように実施の形態1では、第1ミラー22と第2ミラー24がともにミラー支持部材41に取り付けられ、このミラー支持部材41が、レーザ発振器10における筐体11に対して、三角形の各頂点に位置する単に3つの固着具45A〜45Cにより取り付けられるので、筐体10の熱変形に伴なうミラー支持部材41の変形を充分小さく抑制し、レーザ光の光軸の変化を抑制することができる。
【0025】
実施の形態2.
図5は、この発明によるレーザ発振装置の実施の形態2を示す斜視図である。この実施の形態2のレーザ発振装置100Aは、実施の形態1における光学ユニット20に代わって、光学ユニット20Aを使用する。この光学ユニット20Aは、ミラー系21と、ミラー支持構造30と、ミラー支持部材411を有する。ミラー系21は、実施の形態1と同じに、第1ミラー22と、第2ミラー24を有する。ミラー支持構造30は、これらのミラー22、24を共通に支持する。このミラー支持構造30は、実施の形態2では、円筒状のミラー支持体31とされる。ミラー支持部材411は、実施の形態1で使用されたミラー支持部材41に一対の取付アーム46を付加して構成される。この取付アーム46はミラー支持部材411の主面41Aに一体に形成され、この取付アーム46によりミラー支持体31がミラー支持部材411に取り付けられる。第1ミラー22が取り付けられるミラーブロック23Aおよび第2ミラー24が取り付けられるミラーブロック25Aは、円筒状のミラー支持体31の両端部にねじ込まれるように、円筒状に構成される。その他は、実施の形態1と同じに構成される。
【0026】
この実施の形態2でも、ミラー支持部材411は、その4つのコーナー部43A〜43Dの中の3つのコーナー部43A〜43Cが、単に3つの固着具45A〜45Cを含む3点固着構造により、レーザ発振器10における筐体11の正面壁11Aに固着され、コーナー部43Dには、固着具は設けられず、コーナー部43Dはフリーとされる。
【0027】
ミラー支持体31は、金属、例えば鋼板により円筒状に構成され、平板に比べて、より高い剛性を持つ。このミラー支持体31は、筐体11の正面壁11Aと対向して、その中心軸が鉛直方向に沿って延びるように、配置される。このミラー支持体31の上端部に、第1ミラー22のミラーブロック23Aが取り付けられ、ミラー支持体31の下端部に、第2ミラー24のミラーブロック25Aが取り付けられる。この実施の形態2でも、第1ミラー22は円偏光ミラーであり、第2ミラー24はベンドミラーである。レーザ発振器10からのレーザビームLBは、円偏光ミラー22の入射面に45°の入射角で入射してその入射面で45°の角度に反射され、その後、ミラー支持体31の内部を通り、ベンドミラー24に入射面に45°の入射角で入射し、その入射面で45°の角度で反射され、レーザ加工機の加工部に導かれる。
【0028】
ミラーブロック23A、25Aには、冷却配管33が付設される。この冷却配管33には、冷却水34が供給され、ミラー22、24を冷却する。レーザ加工機に用いられるレーザ発振器10は、出力が高く、ミラー22、24は、その高出力のレーザビームLBの一部を吸収するので、冷却配管33によるミラー22、24の冷却は重要である。
【0029】
ミラー支持体31は、レーザ発振器10の運転前には、外気温度に等しい温度になり、ミラー支持体31は、そのどの部分でも外気温度と等しい温度となるが、レーザ発振器10の運転開始に伴ない、冷却配管33によりミラーブロック23A、23Bが冷却されると、ミラー22、24の周辺部と、冷却配管33の接続部の周辺では、局部的に温度が低下するため、ミラー支持体31に局部的な温度変化が生じ、ミラー支持体31に熱応力が発生する。しかし、ミラー支持体31は、平板よりも剛性の高い円筒状に構成されるので、ミラー支持体31は、その熱応力によっても、曲がりとねじりの変形は小さく抑制される。したがって、冷却配管33による冷却によっても、ミラー支持体31の変形は小さく、ミラー22、24の平行性を実質的に維持することができ、レーザビームLBの光軸の変化は充分小さく抑制することができる。
【0030】
実施の形態2では、実施の形態1と同様な効果が得られ、加えてミラー支持体31を剛性の高い円筒状に構成したので、冷却配管33によりミラー22、24を冷却しても、ミラー支持体31の変形は小さく、ミラー22、24の平行性が実質的に維持することができ、レーザビームLBの光軸の変化を充分小さく抑制することができ、良好な加工を行なうことができる。
【0031】
実施の形態3.
図6は、この発明によるレーザ発振装置の実施の形態3を示す斜視図であり、図7は、実施の形態3における箱形ミラー支持体35をレーザ発振器10の側から見た斜視図である。
【0032】
この実施の形態3のレーザ発振装置100Bは、レーザ発振器10と、支持基板17と、光学ユニット20Bを含む。支持基板17は、例えば水平に配置される。この支持基板17上にレーザ発振器10と、光学ユニット20Bとが、間隔をおいて取り付けられ、レーザ発振器10と光学ユニット20Bとは、共通な支持基板17上で互いに機械的に結合される。レーザ発振器10は、その周壁11Cの中の底壁13が支持基板17に接合するようにして、支持基板17上に固着具15により取り付けられる。底壁13は、長方形形状を有し、4つのコーナー部14を有するが、それらのすべてのコーナー部14が固着具15により支持基板17に固着される。固着具15は、例えばボルトである。
【0033】
光学ユニット20Bは、ミラー系21と、ミラー支持構造30を有する。ミラー系21は、実施の形態1と同じく、第1ミラー22と第2ミラー24を有し、これらのミラー22、24は、それぞれ実施の形態1と同じミラーブロック23、25に取り付けられる。ミラーブロック23、25には、冷却配管33が付設される。この冷却配管33には、冷却水34が供給され、ミラー22、24を冷却する。
【0034】
ミラー支持構造30は、この実施の形態3では、箱形ミラー支持体35とされる。この箱形ミラー支持体35は、金属、例えば鋼板により直方体の箱形に構成される。この箱形ミラー支持体35は、ミラー支持部材412と、相対向する一対の側壁36A、36Bと、ミラー支持部材412と対向する上壁37と、正面壁38と、一対の対角リブ39A、39Bを有する。これらのミラー支持部材412と、一対の側壁36A、36Bと、上壁37と、正面壁38と、一対の対角リブ39A、39Bは、互いに一体に形成される。
【0035】
箱形ミラー支持体35は、4つのコーナー部35A〜35Dを有する。コーナー部35Aは、側壁36Aと上壁37との間に形成される。コーナー部35Bは、側壁36Bと上壁37との間に形成される。コーナー部35Cは、側壁36Aとミラー支持部材412との間に形成される。コーナー部35Dは、側壁36Bとミラー支持部材412との間に形成される。対角リブ39Aは、コーナー部35Aとコーナー部36Dとの間を延びるように形成され、対角リブ39Bは、コーナー部35Bとコーナー部36Cとの間を延びるように形成される。これらの対角リブ39A、39Bは、それらの中間位置で互いに交差する。
【0036】
ミラーブロック23は、箱形ミラー支持体35の正面壁38の上部中央に取り付けられ、また、ミラーブロック25は、その正面壁38の下部中央に取り付けられる。この実施の形態3でも、第1ミラー22は円偏光ミラーであり、第2ミラー24はベンドミラーである。レーザ発振器10からのレーザビームLBは、第1ミラー22の入射面に45°の入射角で入射してその入射面で45°の角度に反射され、その後、第2ミラー24に入射面に45°の入射角で入射し、その入射面で45°の角度で反射され、レーザ加工機の加工部に導かれる。
【0037】
ミラー支持部材412は、長方形形状に構成される。このミラー支持部材412は、実施の形態1におけるミラー支持部材41と同様に、4つのコーナー部43A〜43Dを有し、3点固着構造により、支持基板17に固着される。4つのコーナー部43A〜43Dの中で、3つのコーナー部43A〜43Cには、それぞれ固着具45A〜45Cが配置され、コーナー部43A〜43Cは、それぞれ固着具45A〜45Cにより支持基板17上に固着される。固着具45A〜45Cは、支持基板17に形成された取付台12A〜12Cにコーナー部43A〜43Cを固着する。コーナー部43Dには、固着具は配置されず、このコーナー部43Dは、フリーとされる。ミラー支持部材412は、単に3つの固着具45A〜45Cを含む3点固着構造とされる。支持基板17は、レーザ発振器10から熱変形を受けて変形するが、ミラー支持部材412が3点固着構造により支持基板17に固着されるので、支持基板17の変形に伴なう箱形ミラー支持体35の変形は充分小さく抑制される。
【0038】
箱形ミラー支持体35は、レーザ発振器10の運転前には、外気温度に等しい温度になり、ミラー支持体35は、そのどの部分でも外気温度と等しい温度となるが、レーザ発振器10の運転開始に伴ない、冷却配管33によりミラーブロック23、25が冷却されると、正面壁38では、ミラーブロック23、25の周辺部で、局部的に温度が低下するため、正面壁38に局部的な温度変化が生じ、箱形ミラー支持体35に熱応力が発生する。しかし、箱形ミラー支持体35は、対角リブ39A、39Bを含んだ剛性の高い箱形に構成されるので、箱形ミラー支持体35の正面壁38では、その熱応力によっても、曲がりとねじりの変形を充分小さく抑制する。したがって、冷却配管33による冷却によっても、箱形ミラー支持体35の変形は小さく、ミラー22、24の平行性を実質的に維持することができ、レーザビームLBの光軸の変化は充分小さく抑制することができる。
【0039】
実施の形態3では、実施の形態1と同様な効果が得られ、加えて箱形ミラー支持体35が対角リブ39A、39Bを含む剛性の高い構造されるので、冷却配管33によりミラー22、24を冷却しても、ミラー支持体35の変形は小さく、ミラー22、24の平行性が実質的に維持することができ、レーザビームLBの光軸の変化は充分小さく抑制することができ、良好な加工を行なうことができる。
【0040】
実施の形態1、2、3は、いずれも、第1ミラー22を円偏光ミラーとし、第2ミラー24をベンドミラーとしたが、レーザ光の発振波長を選択する場合には、第1、第2ミラー22、24をともにダイクロイックミラーに置き換える。この場合にも、実施の形態1、2、3と同様な効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明によるレーザ発振装置は、レーザ加工機など出力の高いレーザ光を用いる機器に利用される。
【符号の説明】
【0042】
100、100A、100B:レーザ発振装置、10:レーザ発振器、11:筐体、
20、20A、20B:光学ユニット、21、21A:ミラー系、22:第1ミラー、
24:第2ミラー、41、411、412:ミラー支持部材、17:支持基板、
30:ミラー支持体、31:円筒状ミラー支持体、
35:箱形ミラー支持体、39A、39B:対角リブ、33:冷却配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体を有し、この筐体の内部でレーザ光を発生するレーザ発振器、
前記レーザ発振器で発生した前記レーザ光を導く第1ミラー、および
前記第1ミラーと平行に配置され前記第1ミラーからの前記レーザ光をさらに導く第2ミラーを備えたレーザ発振装置であって、
前記レーザ発振器の筐体が支持基板に取り付けられ、また、前記第1ミラーと前記第2ミラーがともに共通のミラー支持部材に取り付けられ、このミラー支持部材が、前記支持基板に対して、三角形の各頂点に位置する単に3つの固着部材により取り付けられたことを特徴とするレーザ発振装置。
【請求項2】
請求項1記載のレーザ発振装置であって、前記第1ミラーと前記第2ミラーを共通に支持する方形の箱形ミラー支持体を備え、この箱形ミラー支持体は、前記ミラー支持部材を含み、また、4つのコーナー部と、この各コーナー部を連結する対角リブを含むことを特徴とするレーザ発振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−71351(P2012−71351A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241983(P2011−241983)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【分割の表示】特願2006−158646(P2006−158646)の分割
【原出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】