説明

レーザ装置の出力調整方法、レーザ装置および検査装置

【課題】異なる波長の光を用いて和周波発生手段により所定の光を出射するレーザ装置について、簡便且つ正確にその出力を調整することのできる方法と、この方法により出力調整可能なレーザ装置と、このレーザ装置を光源として備えた検査装置とを提供する。
【解決手段】第2の非線形光学結晶4は、波長266nmのレーザ光を出射する。第3の非線形光学結晶8は、波長782nmのレーザ光を出射する。これらの光は第4の非線形光学結晶11に入射し、和周波発生により波長変換されて、波長198.5nmの光になる。反射ミラー5の角度と、波長選択性反射ミラー9の角度と、測定部13で測定された波長198.5nmの光の出力とは、それぞれ制御装置14に送られる。制御装置14は、出力が最大となるよう反射ミラー5と波長選択性反射ミラー9の角度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ装置の出力調整方法、レーザ装置および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化および大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅は益々狭くなっている。半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスクまたはレチクルを指す。以下では、マスクと総称する。)を用い、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。こうした微細な回路パターンをウェハに転写するためのマスクの製造には、微細パターンを描画可能な電子ビーム描画装置が用いられる。また、レーザビームを用いて描画するレーザビーム描画装置の開発も試みられている。尚、電子ビーム描画装置は、ウェハに直接パターン回路を描画する場合にも用いられる。
【0003】
ところで、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになろうとしている。歩留まりを低下させる大きな要因の1つとして、マスクのパターン欠陥が挙げられる。そして、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検出する検査装置には、高い検査精度が必要とされる。
【0004】
欠陥検出をする手法の1つとして、「ダイ−トゥ−データベース(die to database)検査」がある。これは、描画データ(設計パターンデータ)を検査装置に入力し、これをベースに設計画像データ(参照画像)を生成して、パターンを撮像して得られた測定データ(光学画像)と比較する手法である。ここで、描画データは、パターン設計されたCADデータが描画装置に入力可能なフォーマットに変換されたものである。
【0005】
ダイ−トゥ−データベース検査では、光源から出射された光が光学系を介して検査対象であるマスクに照射される。マスクはテーブル上に載置されており、テーブルが移動することによって照射された光がマスク上を走査する。マスクを透過または反射した光はレンズを介して画像センサ上に結像し、画像センサで撮像された光学画像は測定データとして比較部へ送られる。比較部では、測定データと参照データとが適当なアルゴリズムにしたがって比較される。そして、これらのデータが一致しない場合には欠陥ありと判定される(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
光源から出射される光には、ステッパで使用される波長またはこれに近い波長の光が使用される。例えば、波長198.5nmのレーザ光を検査光として用いる場合、この光は、波長782nmと波長266nmの2つのレーザ光を重ね合わせて非線形光学結晶に入射させ波長変換することで得られる(例えば、特許文献2および3参照。)。
【0007】
特許文献3には、波長1064〜1065nmのレーザ光を波長変換して得た第4高調波と、波長1560〜1570nmのレーザ光を波長変換して得た第2高調波とから、和周波発生手段を用いて波長198.3〜198.8nmのレーザ光を発生させる方法が記載されている。
【0008】
このような和周波発生により所定波長の光を所望の出力で得るには、重ね合わされる光が非線形光学結晶に同軸入射しなければならない。このため、光源であるレーザ装置においては正確な光軸調整が必要になる。レーザ光の照射によって非線形光学結晶や光学素子が劣化したり、光源に機械的な要因が加わったりすると、光軸にずれが生じて所望の出力の光を得られなくなる。それ故、定期的なメンテナンスによって出力調整を行わなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−112178号公報
【特許文献2】特開2007−86101号公報
【特許文献3】特開2007−86104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、異なる波長の光を用いて和周波発生手段により所定の光を出射するレーザ装置について、簡便且つ正確にその出力を調整することのできる方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、異なる波長の光を用いて和周波発生手段により所定の光を出射するとともに、簡便且つ正確にその出力を調整することのできるレーザ装置と、このレーザ装置を光源として備えた検査装置とを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、波長λの光を第1のミラーで反射させて第2のミラーに照射し、第2のミラーで反射した波長λの光と第2のミラーを透過した波長λの光とを重ね合わせて非線形光学結晶に入射させ、非線形光学結晶で波長λの光と波長λの光との和周波光である波長λの光を発生させるレーザ装置の出力調整方法において、
第1のミラーと第2のミラーの各角度を変えたときの波長λの光の出力変化を測定し、出力が最大となるよう第1のミラーと第2のミラーの各角度を調整することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第1の態様において、λは266nm〜266.25nmであり、
λは780nm〜785nmであり、
λは198.3nm〜198.8nmであることが好ましい。
【0014】
本発明の第2の態様は、波長λの光を発生する第1の光発生手段と、
波長λの光を発生する第2の光発生手段と、
波長λの光を反射する第1のミラーと、
波長λの光を反射し、波長λの光を透過する第2のミラーと、
第2のミラーで反射した波長λの光と、第2のミラーを透過した波長λの光とが入射する非線形光学結晶と、
非線形光学結晶で発生した波長λの光の出力を測定する測定部と、
第1のミラーと第2のミラーの各角度を制御する制御部とを有し、
波長λの光は、波長λの光と波長λの光との和周波光であり、
制御部は、第1のミラーと第2のミラーの各角度を自動的に変えるとともに、測定部から情報を受け取って、各角度を変えたときの波長λの出力変化を取得し、出力が最大となるよう第1のミラーと第2のミラーの各角度を調整することを特徴とするレーザ装置に関する。
【0015】
本発明の第2の態様において、λは266nm〜266.25nmであり、
λは780nm〜785nmであり、
λは198.3nm〜198.8nmであることが好ましい。
【0016】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様のレーザ装置から出射された光を検査対象に照射して光学画像を取得し、この光学画像と、検査対象の設計データから作成された参照画像または上記光を検査対象に照射して得られた別の光学画像とを比較して欠陥を検出することを特徴とする検査装置に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の態様によれば、異なる波長の光を用いて和周波発生手段により所定の光を出射するレーザ装置について、簡便且つ正確にその出力を調整することのできる方法が提供される。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、異なる波長の光を用いて和周波発生手段により所定の光を出射するとともに、簡便且つ正確にその出力を調整することのできるレーザ装置が提供される。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、異なる波長の光を用いて和周波発生手段により所定の光を出射するとともに、簡便且つ正確にその出力を調整することのできるレーザ装置を光源として備えた検査装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態における検査装置の構成図である。
【図2】本実施の形態におけるデータの流れを示す概念図である。
【図3】検査工程を示すフローチャートである。
【図4】光学画像の取得手順を説明するための図である。
【図5】フィルタ処理を説明する図である。
【図6】本実施の形態における光源の光学系の概略構成図である。
【図7】本実施の形態のレーザ装置の出力調整方法を示すフローチャートである。
【図8】第1のミラーのX方向の角度と、第2のミラーのX方向の角度と、レーザ光の出力との関係を示した一例である。
【図9】第1のミラーのY方向の角度と、第2のミラーのY方向の角度と、レーザ光の出力との関係を示した一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本実施の形態における検査装置の構成図である。この図に示すように、検査装置100は、光学画像取得部Aと制御部Bを有する。
【0022】
光学画像取得部Aは、光源103と、水平方向(X方向、Y方向)および回転方向(θ方向)に移動可能なXYθテーブル102と、透過照明系を構成する照明光学系170と、拡大光学系104と、フォトダイオードアレイ105と、センサ回路106と、レーザ測長システム122と、オートローダ130とを有する。
【0023】
制御部Bでは、検査装置100全体の制御を司る制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照回路112、展開回路111、オートローダ制御部113、テーブル制御回路114、記憶装置の一例となる磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置116、CRT117、パターンモニタ118およびプリンタ119に接続されている。XYθテーブル102は、テーブル制御回路114によって制御されたX軸モータ、Y軸モータおよびθ軸モータによって駆動される。これらのモータには、例えば、ステップモータを用いることができる。
【0024】
データベース方式の基準データとなる設計パターンデータは、磁気ディスク装置109に格納されており、検査の進行に合わせて読み出されて展開回路111に送られる。展開回路111では、設計パターンデータがイメージデータ(設計画素データ)に変換される。その後、このイメージデータは、参照回路112に送られて参照データの生成に用いられる。
【0025】
尚、図1では、本実施の形態で必要な構成要素を記載しているが、検査に必要な他の公知要素が含まれていてもよい。
【0026】
図2は、本実施の形態におけるデータの流れを示す概念図である。
【0027】
図2に示すように、本実施の形態の描画条件に対応したCADデータ201は、OASISなどの階層化されたフォーマットの設計中間データ202に変換される。設計中間データ202には、レイヤ(層)毎に作成されて基板上に形成されるパターンデータが格納される。上述したように、電子ビーム描画装置300は、OASISデータを直接読み込めるようには構成されていないので、OASISデータは、レイヤ毎に各電子ビーム描画装置に固有のフォーマットデータ203に変換された後に電子ビーム描画装置300に入力される。同様に、検査装置100もOASISデータを直接読み込めるようには構成されておらず、電子ビーム描画装置300と互換性のあるフォーマットデータ203に変換された上でデータ入力される。尚、検査装置100に固有のフォーマットデータに変換された上でデータ入力される場合もある。
【0028】
ところで、描画用または検査用のフォーマットデータ、あるいは、これらに変換する前のOASISデータには、マスクに描画するパターンの解像度を高めるための補助パターンや、パターンの線幅および空隙の精度を維持することを目的としてパターン形状を複雑に加工するための図形が付加されている。それ故、パターンデータの容量は肥大化しており、電子ビーム描画装置や検査装置では、描画時間や検査時間の停滞を防ぐための工夫がなされている。具体的には、パターンデータを読み出してデータ展開する機構部分に、大容量で高速処理が可能な並列処理計算機と、処理に必要な読み出し速度に十分対応できるよう設計されたハードディスク装置とが組み合わされるなどしている。
【0029】
図3は、検査工程を示すフローチャートである。
【0030】
図3に示すように、検査工程は、光学画像取得工程(S202)と、設計パターンデータの記憶工程(S212)と、設計画像データ生成工程の一例となる展開工程(S214)およびフィルタ処理工程(S216)と、比較工程(S226)とを有する。
【0031】
S202の光学画像取得工程では、図1の光学画像取得部Aが、マスク基板101の光学画像(測定データ)を取得する。ここで、光学画像は、設計パターンに含まれる図形データに基づく図形が描画されたマスクの画像である。光学画像の具体的な取得方法は、例えば、次に示す通りである。
【0032】
検査試料となるマスク基板101は、XYθ各軸のモータによって水平方向および回転方向に移動可能に設けられたXYθテーブル102上に載置される。そして、マスク基板101に形成されたパターンに対し、XYθテーブル102の上方に配置された光源103から光が照射される。より詳しくは、光源103から照射される光束が、照明光学系170を介してマスク基板101に照射される。マスク基板101の下方には、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105およびセンサ回路106が配置されている。マスク基板101を透過した光は、拡大光学系104を介して、フォトダイオードアレイ105に光学像として結像する。ここで、拡大光学系104は、図示しない自動焦点機構によって自動的に焦点調整がなされるよう構成されていてもよい。
【0033】
図4は、光学画像の取得手順を説明するための図である。
【0034】
検査領域は、図4に示すように、Y方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ140に仮想的に分割され、さらにその分割された各検査ストライプ140が連続的に走査されるようにXYθテーブル102の動作が制御され、X方向に移動しながら光学画像が取得される。フォトダイオードアレイ105では、図4に示されるようなスキャン幅Wの画像が連続的に入力される。そして、第1の検査ストライプ140における画像を取得した後、第2の検査ストライプ140における画像を今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの画像が連続的に入力される。そして、第3の検査ストライプ140における画像を取得する場合には、第2の検査ストライプ140における画像を取得する方向とは逆方向、すなわち、第1の検査ストライプ140における画像を取得した方向に移動しながら画像を取得する。このように、連続的に画像を取得していくことで、無駄な処理時間を短縮することができる。
【0035】
フォトダイオードアレイ105上に結像したパターンの像は、フォトダイオードアレイ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換される。フォトダイオードアレイ105には、センサが配置されている。このセンサの例としては、TDI(タイムディレイインテグレータ)センサが挙げられる。XYθテーブル102がX軸方向に連続的に移動しながら、TDIセンサによってマスク基板101のパターンが撮像される。ここで、光源103、拡大光学系104、フォトダイオードアレイ105およびセンサ回路106により高倍率の検査光学系が構成される。
【0036】
XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下、テーブル制御回路114によって駆動され、X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X−Y−θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータには、例えばステップモータを用いることができる。そして、XYθテーブル102の移動位置は、レーザ測長システム122により測定されて位置回路107に送られる。また、XYθテーブル102上のマスク基板101は、オートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130から自動的に搬送され、検査終了後には自動的に排出される様になっている。
【0037】
センサ回路106から出力された測定データ(光学画像)は、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上でのマスク基板101の位置を示すデータとともに、比較回路108に送られる。測定データは、例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調を表現している。
【0038】
図3のS212は記憶工程であり、マスク基板101のパターン形成時に用いた設計パターンデータが、記憶装置(記憶部)の一例である磁気ディスク装置109に記憶される。
【0039】
設計パターンに含まれる図形は、長方形や三角形を基本図形としたものである。磁気ディスク装置109には、例えば、図形の基準位置における座標、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報であって、各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納される。
【0040】
さらに、数十μm程度の範囲に存在する図形の集合を一般にクラスタまたはセルと称するが、これを用いてデータを階層化することが行われている。クラスタまたはセルには、各種図形を単独で配置したり、ある間隔で繰り返し配置したりする場合の配置座標や繰り返し記述も定義される。クラスタまたはセルデータは、さらにフレームまたはストライプと称される、幅が数百μmであって、長さがフォトマスクのX方向またはY方向の全長に対応する100mm程度の短冊状領域に配置される。
【0041】
図3のS214は展開工程である。この工程においては、図1の展開回路111が、磁気ディスク装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出されたマスク基板101の設計パターンデータを2値ないしは多値のイメージデータ(設計画像データ)に変換する。そして、このイメージデータは参照回路112に送られる。
【0042】
図形データとなる設計パターンデータが展開回路111に入力されると、展開回路111は、設計パターンデータを図形毎のデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計画像データを展開する。展開された設計画像データは、センサ画素に相当する領域(マス目)毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算する。そして、各画素内の図形占有率が画素値となる。
【0043】
図3のS216はフィルタ処理工程である。この工程では、参照回路112によって、送られてきた図形のイメージデータである設計画像データに適切なフィルタ処理が施される。
【0044】
図5は、フィルタ処理を説明する図である。
【0045】
センサ回路106から得られた光学画像としての測定データは、拡大光学系104の解像特性やフォトダイオードアレイ105のアパーチャ効果等によってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続的に変化するアナログ状態にある。したがって、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データにもフィルタ処理を施すことにより、測定データに合わせることができる。このようにして光学画像と比較する参照画像(光学データ)を作成する。
【0046】
測定データは、上述したように、比較回路108に送られる。そして、設計パターンデータは、展開回路111および参照回路112により参照画像データに変換され、比較回路108に送られる。
【0047】
比較回路108では、センサ回路106から得られた光学画像と参照回路112で生成した参照画像を適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較し、誤差が所定の値を超えた場合にその箇所を欠陥と判断する。欠陥と判断した場合には、その座標と、欠陥判定の根拠となったセンサ撮影画像(光学画像)および参照画像とを検査結果として保存する。
【0048】
光源103は、所定の波長の光を発生するレーザ装置である。そして、光源103から出射される光は、ステッパで使用される波長またはこれに近い波長の光であることが好ましい。本実施の形態では、波長198.5nmの光を光源103からの出射光として用いる。この光は、波長782nmと波長266nmの2つのレーザ光を重ね合わせて非線形光学結晶に入射させ波長変換することで得られる。
【0049】
図6は、光源103の光学系の概略構成図である。
【0050】
図6において、第1の半導体レーザ1からは、波長1064nm〜1065nmのレーザ光が出射される。また、第2の半導体レーザ6からは、波長1560nm〜1570nmのレーザ光が出射される。
【0051】
第1の光発生手段である第1の半導体レーザ1から出射されたレーザ光は、第1の集光レンズ2で集光された後、第1の非線形光学結晶3に入射する。第1の非線形光学結晶3としては、例えばKTP(KTiOPO)結晶が用いられる。第1の非線形光学結晶3は、波長1064nm〜1065nmのレーザ光の第2高調波として、波長532nm〜532.5nmのレーザ光を出射する。第1の非線形光学結晶3から出射された波長532nm〜532.5nmのレーザ光は、第2の非線形光学結晶4に入射する。第2の非線形光学結晶4としては、例えばBBO(BaB)結晶が用いられる。第2の非線形光学結晶4は、波長1064nm〜1065nmのレーザ光の第4高調波として、波長266nm〜266.25nmのレーザ光を出射する。
【0052】
第2の光発生手段である第2の半導体レーザ6から出射されたレーザ光は、第2の集光レンズ7で集光された後、第3の非線形光学結晶8に入射する。第3の非線形光学結晶8としては、例えばLBO(LiB)結晶が用いられる。第3の非線形光学結晶8は、波長1560nm〜1570nmのレーザ光の第2高調波として、波長780nm〜785nmのレーザ光を出射する。
【0053】
第2の非線形光学結晶4から出射された波長266nm〜266.25nmのレーザ光は、第1のミラーである反射ミラー5で反射された後、第2のミラーである波長選択性反射ミラー9に斜めに照射される。波長選択性反射ミラー9は、波長266nm〜266.25nmのレーザ光を反射する一方、第3の非線形光学結晶8から出射された波長780nm〜785nmのレーザ光を透過させる。
【0054】
波長選択性反射ミラー9により反射された波長266nm〜266.25nmのレーザ光と、波長選択性反射ミラー9を透過した波長780nm〜785nmのレーザ光とは、重なり合って同じ方向に進み、整合レンズ系10で整合された後、第4の非線形光学結晶11である和周波発生用非線形光学結晶に入射する。第4の非線形光学結晶11としては、例えばBBO結晶が用いられる。第4の非線形光学結晶11では、整合レンズ系10から出射された波長266nm〜266.25nmのレーザ光と波長780nm〜785nmのレーザ光とが和周波混合されて、波長198.3nm〜198.8nmのレーザ光になる。その後、波長198.3nm〜198.8nmのレーザ光は、コリメータレンズ12で平行光となってレーザ装置から出力される。
【0055】
尚、第1〜第4の非線形光学結晶は、上記例に限られるものではなく、波長変換の際における各波長において透明であり、且つ、それぞれの波長変換過程において位相整合するものであれば、上記例以外の他の結晶を用いてもよい。
【0056】
波長266nm〜266.25nmのレーザ光と、波長780nm〜785nmのレーザ光とが第4の非線形光学結晶11に入射する際には、位相整合条件を保つため、これらの光が同軸入射することが必要になる。しかしながら、レーザ光の照射によって非線形光学結晶やレンズおよびミラーなどの光学素子が劣化したり、光源に機械的な要因が加わったりすると、光軸にずれが生じて所望の出力の光を得られなくなる。そこで、定期的なメンテナンスによって出力を調整することが必要になる。
【0057】
ここで、出力調整方法としては、波長266nm〜266.25nmのレーザ光と、波長780nm〜785nmのレーザ光とについてそれぞれ光軸を調整し、それによって波長198.3nm〜198.8nmのレーザ光の出力を調整することが考えられる。
【0058】
例えば、まず、波長782nmのレーザ光を2つのミラーで光路調整してフォトダイオードに導く。そして、フォトダイオードに入射するレーザ光の光量が最大となるよう、2つのミラーの角度を調整する。次に、波長266nmのレーザ光を同じフォトダイオードに入射させる。このとき、782nmで調整した一方のミラーの角度を基準として波長266nmの光量が最大となるよう、他方のミラーの角度を調整する。
【0059】
しかしながら、上記方法では、光軸調整を波長782nmの光と波長266nmの光について行うので、調整したミラー角度で波長198.5nmの光を出射しても、それが必ずしもレーザ装置の最大出力になるとは限らない。また、重ね合わせる2つの光についてそれぞれ光軸調整を行う上に、光軸調整には専用のハードウェアが必要となるためその立ち上げや調整にも時間がかかり、メンテナンス時間が長くなることも問題である。
【0060】
そこで、本発明者は、鋭意研究した結果、本発明に至った。図6〜図9を参照して、本実施の形態によるレーザ装置の出力調整方法について説明する。
【0061】
図7は、レーザ装置の出力調整方法を示すフローチャートである。レーザ装置のメンテナンスでは、図6の反射ミラー5と波長選択性反射ミラー9をシフトさせてこれらのミラーとレーザ光の光軸とがなす最適な角度を求める。すなわち、反射ミラー5で反射され、さらに波長選択性反射ミラー9に照射された後このミラーで反射された波長266nm〜266.25nmのレーザ光と、波長選択性反射ミラー9を透過した波長780nm〜785nmのレーザ光とが、重なりあって同じ方向に進むよう、そして、第4の非線形光学結晶11で和周波混合されて生成した波長198.3nm〜198.8nmのレーザ光の出力が最大となるよう、これらのミラーの角度を調整する。
【0062】
具体的には、第2の非線形光学結晶4から出射された波長266nm〜266.25nmのレーザ光が反射ミラー5に照射されるとき、および、反射ミラー5で反射されるときのミラーと光軸のなす各角度、波長266nm〜266.25nmのレーザ光が波長選択性反射ミラー9に照射されるとき、および、波長選択性反射ミラー9で反射されるときのミラーと光軸のなす各角度、並びに、波長780nm〜785nmのレーザ光が波長選択性反射ミラー9を透過するときのミラーと光軸のなす角度をそれぞれ調整する。これらの角度は、光軸と、各ミラーの面内のX方向とミラー面に垂直なY方向の角度とによって定義される。
【0063】
本実施の形態におけるレーザ装置の出力調整方法では、まず、反射ミラー5のX方向の角度と波長選択性反射ミラー9のX方向の角度を変えながら測定部13で波長198.3nm〜198.8nmのレーザ光の出力を測定する。そして、出力が最大となるときの反射ミラー5と波長選択性反射ミラー9の各X方向の角度を求めて最適角度とする。
【0064】
図8は、第1のミラーである反射ミラー5のX方向の角度と、第2のミラーである波長選択性反射ミラー9のX方向の角度と、波長198.5nmのレーザ光の出力との関係を示した一例である。この例では、出力が最大値(90.1mW)となるときの反射ミラー5のX方向の角度(−85mdeg)と波長選択性反射ミラー9のX方向の角度(−932mdeg)がそれぞれ最適角度になる。
【0065】
続いて、反射ミラー5のY方向の角度と波長選択性反射ミラー9のY方向の角度を変えながら測定部13で波長198.3nm〜198.8nmのレーザ光の出力を測定する。そして、出力が最大となるときの反射ミラー5と波長選択性反射ミラー9の各Y方向の角度を求めて最適角度とする。
【0066】
図9は、第1のミラーである反射ミラー5のY方向の角度と、第2のミラーである波長選択性反射ミラー9のY方向の角度と、波長198.5nmのレーザ光の出力との関係を示した一例である。この例では、出力が最大値(92.4mW)となるときの反射ミラー5のY方向の角度(−190mdeg)と波長選択性反射ミラー9のY方向の角度(−473mdeg)がそれぞれ最適角度になる。
【0067】
本実施の形態では、図6の制御装置14でミラーの角度の最適化が行われる。すなわち、制御装置14は、反射ミラー5と波長選択性反射ミラー9の各角度を自動的に変えて、それによる波長198.3nm〜198.8nmのレーザ光の出力の変化を取得する。つまり、反射ミラー5の角度と、波長選択性反射ミラー9の角度と、測定部13で測定した波長198.3nm〜198.8nmのレーザ光の出力とは、それぞれ制御装置14に送られ、制御装置14は、図8および図9に示すような関係を取得し、出力が最大となるよう反射ミラー5と波長選択性反射ミラー9の角度を調整する。尚、上記例では、ミラーのX方向の角度を調整してからY方向の角度を調整したが、これらの順序は逆であってもよい。
【0068】
上記のようにして反射ミラー5と波長選択性反射ミラー9の最適角度を調整した後は、図7に示すように非線形光学結晶11の結晶温度を最適化する。尚、ミラーの角度を調整しても波長198.3nm〜198.8nmのレーザ光の出力が最大とならない場合には、再度上記工程を繰り返してミラーの角度を調整する。その結果、レーザ光の出力値が最大となれば各非線形光学結晶の結晶温度を最適化する。一方、レーザ光の出力値が最大とならない場合には、手動に切り替えてミラーの角度を調整する。
【0069】
非線形光学結晶11の結晶温度を最適化した後は、レーザ装置のメンテナンスを終了する。
【0070】
以上述べたように、本実施の形態のレーザ装置の出力調整方法では、波長266nm〜266.25nmのレーザ光と、波長780nm〜785nmのレーザ光とについてそれぞれ光軸を調整し、それによってレーザ装置の出力を調整するのではなく、実際に発振される波長198.3nm〜198.8nmのレーザ光の出力を検出しながら調整するので、正確な出力調整を行うことができる。また、光軸調整は、ミラーの角度とレーザ光の出力とを制御装置に送り、制御装置で出力が最大となるようミラーの角度を調整することにより行うので、専用のハードウェアを必要としない。したがって、簡便且つ短時間で出力調整を行うことができる。
【0071】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0072】
例えば、上記実施の形態では、波長266nm〜266.25nmのレーザ光と、波長780nm〜785nmのレーザ光とを用いて、和周波発生により波長198.3nm〜198.8nmのレーザ光を出射する例について述べたが、本発明は上記各波長に限られるものではない。異なる波長の光を用いて和周波発生手段により所定の光を出射するレーザ装置であれば本発明を適用することができる。
【0073】
また、上記実施の形態では、ダイ−トゥ−データベース方式を例に説明したが、欠陥検査の方法はダイ−トゥ−ダイ方式であってもよい。すなわち、本発明の検査装置は、本発明のレーザ装置から出射された光を検査対象に照射して取得した光学画像同士を比較して欠陥を検出するものであってもよい。
【0074】
さらに、上記実施の形態では、本発明の説明に直接必要としない装置構成や制御手法などに関する記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができることは言うまでもない。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全て検査装置または検査方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0075】
100 検査装置
101 マスク基板
102 XYθテーブル
103 光源
104 拡大光学系
105 フォトダイオードアレイ
106 センサ回路
107 位置回路
108 比較回路
109 磁気ディスク装置
110 制御計算機
111 展開回路
112 参照回路
113 オートローダ制御部
114 テーブル制御回路
115 磁気テープ装置
116 フレキシブルディスク装置
117 CRT
118 パターンモニタ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
130 オートローダ
170 照明光学系
201 CADデータ
202 設計中間データ
203 フォーマットデータ
300 描画装置
1 第1の半導体レーザ
2 第1の集光レンズ
3 第1の非線形光学結晶
4 第2の非線形光学結晶
5 反射ミラー
6 第2の半導体レーザ
7 第2の集光レンズ
8 第3の非線形光学結晶
9 波長選択性反射ミラー
10 整合レンズ系
11 第4の非線形光学結晶11
12 コリメータレンズ
13 測定部
14 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長λの光を第1のミラーで反射させて第2のミラーに照射し、前記第2のミラーで反射した前記波長λの光と前記第2のミラーを透過した波長λの光とを重ね合わせて非線形光学結晶に入射させ、前記非線形光学結晶で前記波長λの光と前記波長λの光との和周波光である波長λの光を発生させるレーザ装置の出力調整方法において、
前記第1のミラーと前記第2のミラーの各角度を変えたときの前記波長λの光の出力変化を測定し、前記出力が最大となるよう前記第1のミラーと前記第2のミラーの各角度を調整することを特徴とするレーザ装置の出力調整方法。
【請求項2】
λは266nm〜266.25nmであり、
λは780nm〜785nmであり、
λは198.3nm〜198.8nmであることを特徴とする請求項1に記載のレーザ装置の出力調整方法。
【請求項3】
波長λの光を発生する第1の光発生手段と、
波長λの光を発生する第2の光発生手段と、
前記波長λの光を反射する第1のミラーと、
前記波長λの光を反射し、前記波長λの光を透過する第2のミラーと、
前記第2のミラーで反射した前記波長λの光と、前記第2のミラーを透過した前記波長λの光とが入射する非線形光学結晶と、
前記非線形光学結晶で発生した波長λの光の出力を測定する測定部と、
前記第1のミラーと前記第2のミラーの各角度を制御する制御部とを有し、
前記波長λの光は、前記波長λの光と前記波長λの光との和周波光であり、
前記制御部は、前記第1のミラーと前記第2のミラーの各角度を自動的に変えるとともに、前記測定部から情報を受け取って、前記各角度を変えたときの前記波長λの出力変化を取得し、前記出力が最大となるよう前記第1のミラーと前記第2のミラーの各角度を調整することを特徴とするレーザ装置。
【請求項4】
λは266nm〜266.25nmであり、
λは780nm〜785nmであり、
λは198.3nm〜198.8nmであることを特徴とする請求項3に記載のレーザ装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のレーザ装置から出射された光を検査対象に照射して光学画像を取得し、前記光学画像と、前記検査対象の設計データから作成された参照画像または前記光を前記検査対象に照射して得られた別の光学画像とを比較して欠陥を検出することを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−128376(P2011−128376A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286816(P2009−286816)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】