説明

レーザ走査装置

【課題】レーザ光の光軸を偏向器の駆動軸と直交する軸に対して傾けていても、走査されるレーザ光の軌跡を直線状にすることができるレーザ走査装置を提供する。
【解決手段】レーザ光源2はレーザ光Lzを発する。偏向ミラー1は回動自在であり、レーザ光Lzを反射する。レーザ光Lzの光軸は偏向ミラー1の駆動軸と直交する軸に対して傾けられている。レンズ3の内周面及び外周面が曲面で形成されている。偏向ミラー1で反射したレーザ光Lzは内周面に入射して外周面から射出される。外周面から射出するレーザ光Lzは偏向ミラー1が回動されても常に所定の基準面に対して平行とされ、偏向ミラー1が回動することによって走査されるレーザ光Lzの軌跡を直線状に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を走査することにより映像を投影したり、対象物の存在、対象物の位置、対象物までの距離を検出したりするレーザ走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
偏向ミラーと偏向ミラーを駆動する駆動部とを有する偏向器によってレーザ光を1次元または2次元に走査して、スクリーン上に映像を投影したり、走査範囲内にある対象物の存在、対象物の位置も、対象物までの距離を検出したりするレーザ走査装置が知られている。この種のレーザ走査装置においては、偏向器により走査されたレーザ光がレーザ光源に入射しないように、レーザ光源を走査範囲外に配置する。そのため、レーザ光の光軸は、偏向器の駆動軸と直交する軸に対して傾いている。
【0003】
ここで、図27〜図33を用いて、レーザ走査装置の偏向ミラーに対するレーザ光の入射方向及び射出方向について説明する。図27は、xy平面上にある偏向ミラー1に、yz平面上でz軸から+θの角度でレーザ光Lzを入射した状態を示している。図28(A)〜(C)は、図27のxy平面図、yz平面図、xz平面図である。ここではレーザ光源の図示を省略している。図27及び図28(B)に示すように、レーザ光Lzはyz平面上でz軸から−θの角度に射出する。
【0004】
図29は、図27の状態から偏向ミラー1を、y軸を回転中心として+θの角度回転させた状態を示している。図30(A)〜(C)は、図29のxy平面図、yz平面図、xz平面図である。図29に破線で示す射出光をxy平面、yz平面、zx平面に投影すると、射出光はxy平面ではx軸から−θxy、yz平面ではz軸からθyz、zx平面ではz軸から2θの角度で射出する。θxy,θyzは次の(1)式,(2)式で導出される。
【0005】
θxy=tan−1(tanθ/sin2θ) …(1)
θyz=tan−1(tanθ/cos2θ) …(2)
【0006】
図31は、回転角度θ=0°のときの射出光に垂直な平面P0を示している。図32(A)〜(C)は、図31のxy平面図、yz平面図、xz平面図である。図33は、偏向ミラー1を、y軸を回転中心として−θ〜+θ回転させたときの平面P0上でのレーザ光Lzの軌跡を示している。図33に示すように、yz平面上でz軸から+θの角度から入射したレーザ光Lzを、y軸を回転中心とする偏向ミラー1で走査した射出光の軌跡は、平面P0上で直線とはならず、曲線となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−045601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、レーザ光Lzの光軸を偏向器の駆動軸と直交する軸に対して傾けているレーザ走査装置においては、走査されるレーザ光Lzの軌跡は直線ではなく曲線となってしまう。レーザ走査装置が映像を投影する装置として用いられる場合には、レーザ光Lzの軌跡が曲線であれば投影される映像は歪むことになる。また、レーザ走査装置が対象物を検出する装置として用いられる場合には、レーザ光Lzの軌跡が曲線であれば、特に広角方向で対象物を検出できない場合が発生する。
【0009】
このように、レーザ走査装置においてレーザ光Lzの軌跡が曲線であると、種々の不具合を招くことになるため、レーザ光Lzの軌跡を直線とすることができるレーザ走査装置が望まれていた。
【0010】
本発明はこのような要望に対応するため、レーザ光の光軸を偏向器の駆動軸と直交する軸に対して傾けていても、走査されるレーザ光の軌跡を直線状にすることができるレーザ走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、レーザ光(Lz)を発するレーザ光源と(2)、前記レーザ光源より発せられたレーザ光を反射する回動自在の偏向ミラー(1)を有し、前記偏向ミラーを前記レーザ光の入射光の光軸が前記偏向ミラーの駆動軸と直交する軸に対して傾くように設けた偏向器と、内周面及び外周面が曲面で形成され、前記偏向ミラーで反射したレーザ光が前記内周面に入射して前記外周面から射出され、前記外周面から射出するレーザ光は前記偏向ミラーが回動されても常に所定の基準面に対して平行とされ、前記偏向ミラーが回動することによって走査されるレーザ光の軌跡を直線状に変換するレンズ(3〜8)とを備えることを特徴とするレーザ走査装置を提供する。
【0012】
前記レンズの第1の好適な態様は、前記レンズは、前記内周面上の周方向の各位置における前記内周面に沿った前記レンズの底面側から上面側に向かう直線と前記基準面とが傾きを有し、前記内周面は、前記傾きが前記レンズの周方向において順次変化している曲面で構成されていることである。
【0013】
第1の好適な態様において、前記傾きは周方向の両端から前記レンズの中央に向かうにつれて、順次変化していることが好ましい。
また、第1の好適な態様において、前記レンズは、前記外周面が、前記レンズの底面側から上面側に向かう前記外周面の周方向の各位置における前記外周面に沿った直線が前記基準面に対して周方向の全てで同じ角度に傾いている曲面で構成されていることが好ましい。
【0014】
前記レンズの第2の好適な態様は、前記レンズは、前記外周面上の周方向の各位置における前記外周面に沿った前記レンズの底面側から上面側に向かう直線と前記基準面とが傾きを有し、前記外周面は、前記傾きが前記レンズの周方向において順次変化している曲面で構成されていることである。
【0015】
第2の好適な態様において、前記傾きは周方向の両端から前記レンズの中央に向かうにつれて、順次変化していることが好ましい。
また、第2の好適な態様において、前記レンズは、前記内周面が、前記レンズの底面側から上面側に向かう前記内周面の周方向の各位置における前記内周面に沿った直線が前記基準面に対して周方向の全てで同じ角度に傾いている曲面で構成されていることが好ましい。
【0016】
前記レンズの第3の好適な態様は、前記レンズは、前記レンズを、前記内周面に沿った前記レンズの底面側から上面側に向かう直線と前記偏向ミラー上でレーザ光を反射する反射点とを通る面で切断した断面が、前記反射点を焦点位置とする形状であり、前記レンズは、前記断面を、前記焦点位置を通って前記基準面と垂直な軸を中心に所定角度回転させた形状であることである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のレーザ走査装置によれば、レーザ光の光軸を偏向器の駆動軸と直交する軸に対して傾けていても、走査されるレーザ光の軌跡を直線状にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のレーザ走査装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態で用いるレンズの構成図である。
【図3】第1実施形態におけるレンズの周方向中央部におけるレーザ光の入射及び射出の状態を示す図である。
【図4】第1実施形態におけるレンズの周方向中央部以外におけるレーザ光の入射及び射出の状態を示す図である。
【図5】本発明のレーザ走査装置の第2実施形態を示す斜視図である。
【図6】第2実施形態で用いるレンズの構成図である。
【図7】第2実施形態におけるレンズの周方向中央部におけるレーザ光の入射及び射出の状態を示す図である。
【図8】第2実施形態におけるレンズの周方向中央部以外におけるレーザ光の入射及び射出の状態を示す図である。
【図9】本発明のレーザ走査装置の第3実施形態を示す斜視図である。
【図10】第3実施形態で用いるレンズの構成図である。
【図11】第3実施形態におけるレンズの周方向中央部におけるレーザ光の入射及び射出の状態を示す図である。
【図12】第3実施形態におけるレンズの周方向中央部以外におけるレーザ光の入射及び射出の状態を示す図である。
【図13】本発明のレーザ走査装置の第4実施形態を示す斜視図である。
【図14】第4実施形態で用いるレンズの構成図である。
【図15】第4実施形態におけるレンズの周方向中央部におけるレーザ光の入射及び射出の状態を示す図である。
【図16】第4実施形態におけるレンズの周方向中央部以外におけるレーザ光の入射及び射出の状態を示す図である。
【図17】本発明のレーザ走査装置の第5実施形態を示す斜視図である。
【図18】第5実施形態で用いるレンズを説明するための図である。
【図19】第5実施形態で用いるレンズの構成図である。
【図20】第5実施形態におけるレンズの周方向中央部におけるレーザ光の入射及び射出の状態を示す図である。
【図21】第5実施形態におけるレンズの周方向中央部以外におけるレーザ光の入射及び射出の状態を示す図である。
【図22】本発明のレーザ走査装置の第6実施形態を示す斜視図である。
【図23】第6実施形態で用いるレンズを説明するための図である。
【図24】第6実施形態で用いるレンズの構成図である。
【図25】第6実施形態におけるレンズの周方向中央部におけるレーザ光の入射及び射出の状態を示す図である。
【図26】第6実施形態におけるレンズの周方向中央部以外におけるレーザ光の入射及び射出の状態を示す図である。
【図27】xy平面上にある偏向ミラーにレーザ光を入射した状態を示す斜視図である。
【図28】図27のxy平面図、yz平面図、xz平面図である。
【図29】図27の状態から偏向ミラーを回転させた状態を示す斜視図である。
【図30】図29のxy平面図、yz平面図、xz平面図である。
【図31】回転角度が0°のときの射出光に垂直な平面を示す斜視図である。
【図32】図31のxy平面図、yz平面図、xz平面図である。
【図33】偏向ミラーを回転させたときのレーザ光の軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のレーザ走査装置の各実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1において、偏向ミラー1には、レーザ光源2から発せられたレーザ光Lzが入射される。偏向ミラー1を駆動する駆動部の図示を省略している。レーザ光Lzは偏向ミラー1で反射して射出する。偏向ミラー1を有する偏向器は、レーザ光Lzの光軸が偏向器(偏向ミラー1)の駆動軸と直交する軸に対して傾くように設けられている。偏向ミラー1に対してレーザ光Lzの射出側にはレンズ3が配置されている。偏向ミラー1で反射されたレーザ光Lzはレンズ3を通って射出される。一点鎖線で示す平面は、xz平面を、x軸を中心に−θの角度傾けた基準面Pbsを示している。−θは、図27〜図32で説明した角度である。
【0021】
なお、偏向ミラー1とレーザ光源2とレンズ3は、所定の筐体内に図1に示す位置関係で位置決めされており、偏向ミラー1が図示していない駆動部によって駆動されて所定の角度範囲で回動される。
【0022】
図1,図2を用いてレンズ3の具体的構成について説明する。図2において、(A)はレンズ3の上面図、(B)は側面図、(C)は偏向ミラー1側からレンズ3を見た平面図、(D)は偏向ミラー1の周方向の中央部である(C)におけるA−A断面図、(E)はレンズ3の底面図である。図1及び図2(E)より分かるように、レンズ3の底面は、レンズ3の周方向の両端から中央部に近付くに従って順次幅広となる略三日月状となっている。なお、図2(E)においては、レンズ3の底面から上方を見たときに見える上面側の形状を含めて図示している。図1及び図2(A)より分かるように、レンズ3の上面は、リングを直径方向で切断したような形状となっている。
【0023】
図2(A)及び図2(E)より分かるように、レンズ3を底面側から上面側に見たときに、上面の内周における周方向の中央部の位置は、底面における内周側の周方向の中央部の位置と一致している。レンズ3の周方向の断面は、両端で三角形であり、中央部に近付くに従って順次底面側が拡大していき、図2(D)に示すように中央部で長方形となる。
【0024】
レンズ3の内周面の周方向の所定の位置で底面側から上面側に向かう内周面に沿った直線は、周方向の中央部を除き、基準面Pbsと直交する方向に対して傾いている。この内周面に沿った直線の傾きは、周方向の中央部に向かうに従って傾斜が順次緩やかになっていき、周方向の中央部で基準面Pbsと直交する方向と平行となる。
【0025】
レンズ3の外周面の周方向の所定の位置で底面側から上面側に向かう外周面に沿った直線は、全て基準面Pbsと直交する方向と平行となっている。
【0026】
第1実施形態のレンズ3は、図1及び図2に示すような形状を有することにより、周方向でレーザ光Lzの屈折角が変化している。
【0027】
図3は、レンズ3の周方向中央部におけるレーザ光Lzの入射及び射出状態を示している。図3に示すように、基準面Pbs上の走査中心に射出するレーザ光Lzは、レンズ3の入射面31への入射角が0°であり、レンズ3の射出面32からの射出角も0°である。図4は、レンズ3の周方向中央部以外におけるレーザ光Lzの入射及び射出状態を示している。図4のレンズ3の周方向中央部以外における入射面33は、基準面Pbsと直交する方向に対して角度θt1傾いている。レンズ3の周方向中央部以外における射出面34からの射出角は0°である。基準面Pbsと入射するレーザ光Lzのなす角はθである。レンズ3の屈折率をnとすると、θt1は次の(3)式となる。
【0028】
θt1=tan−1(sinθ/(n-cosθ))) …(3)
【0029】
第1実施形態のレンズ3の形状を図3,図4を用いてさらに説明する。レンズ3の入射面(図3では31、図4では33)と基準面Pbsとのなす角は90°−θt1である。図3ではθt1は0°であるので、入射面31と基準面Pbsとのなす角は90°である。レンズ3の入射面と基準面Pbsとのなす角は、射出面(図3では32、図4では34)から射出するレーザ光Lzが基準面Pbsと平行になるように周方向に変化している。射出面と基準面Pbsとのなす角は周方向に一定であり、90°である。
【0030】
これにより、第1実施形態においては、レンズ3から射出する周方向全てのレーザ光Lzは基準面Pbsと平行となる。従って、第1実施形態によれば、走査されるレーザ光Lzの軌跡を直線状にすることができる。
【0031】
<第2実施形態>
図5,図7,図8において、図1,図3,図4と同一部分には同一符号を付し、その説明を適宜省略する。図5〜図8に示す第2実施形態は、第1実施形態におけるレンズ3の代わりにレンズ4を用いている。
【0032】
図5,図6を用いてレンズ4の具体的構成について説明する。図6において、(A)はレンズ4の上面図、(B)は側面図、(C)は偏向ミラー1側からレンズ4を見た平面図、(D)は偏向ミラー1の周方向の中央部である(C)におけるA−A断面図、(E)はレンズ4の底面図である。図5及び図6(E)より分かるように、レンズ4の底面は、レンズ4の周方向の両端で所定の幅を有しており、両端から中央部に近付くに従って順次幅広となる形状となっている。なお、図6(E)においては、レンズ4の底面から上方を見たときに見える上面側の形状を含めて図示している。図6(A)も同様に、レンズ4の上面から底面側を見たときに見える形状を含めて図示している。
【0033】
図5及び図6(A)より分かるように、レンズ4の上面は、リングを直径方向で切断したような形状となっている。レンズ4の上面よりも底面の方が径が大きいため、レンズ4の上面から底面側を見たとき、底面の外周端部が見えている。
【0034】
レンズ4の周方向の断面は、両端で台形であり、中央部に近付くに従って順次底面側が拡大していき、図6(D)に示すように中央部で平行四辺形となる。レンズ4の内周面の周方向の所定の位置で底面側から上面側に向かう内周面に沿った直線は、周方向の中央部を除き、基準面Pbsと直交する方向に対して傾いている。この内周面に沿った直線の傾きは、周方向の中央部に向かうに従って傾斜が順次緩やかになっていく。
【0035】
レンズ4の外周面の周方向の所定の位置で底面側から上面側に向かう外周面に沿った直線は、周方向の両端から中央部にかけて全て同じ角度で基準面Pbsと直交する方向に対して傾いている。
【0036】
第2実施形態のレンズ4は、図5及び図6に示すような形状を有することにより、周方向でレーザ光Lzの屈折角が変化している。
【0037】
図7は、レンズ4の周方向中央部におけるレーザ光Lzの入射及び射出状態を示している。図7に示すように、基準面Pbs上の走査中心に射出するレーザ光Lzは、レンズ4の入射面41への入射角及び射出面42からの射出角が角度θである。図8は、レンズ4の周方向中央部以外におけるレーザ光Lzの入射及び射出状態を示している。レンズ4の周方向中央部以外における入射面43は、基準面Pbsと直交する方向に対して角度θt2傾いている。レンズ4の周方向中央部以外における射出面44は、基準面Pbsと直交する方向に対して角度θ傾いている。基準面Pbsとレーザ光Lzのなす角はθである。
【0038】
第2実施形態のレンズ4の形状を図7,図8を用いてさらに説明する。レンズ4の入射面(図7では41、図8では43)と基準面Pbsとのなす角は90°−θt2である。レンズ4の入射面と基準面Pbsとのなす角は、射出面(図7では42、図4では44)から射出するレーザ光Lzが基準面Pbsと平行になるように周方向に変化している。射出面と基準面Pbsとのなす角は周方向に一定であり、90°−θである。
【0039】
これにより、第2実施形態においても、レンズ4から射出する周方向全てのレーザ光Lzは基準面Pbsと平行となる。従って、第2実施形態によれば、走査されるレーザ光Lzの軌跡を直線状にすることができる。第2実施形態においては、図7,図8より分かるように、レンズ4に対するレーザ光Lzの入射角が0°とならないため、レンズ4の表面での破線で示す反射光Lzrfがレーザ光源2に戻ることがない。よって、レーザ光源2によるレーザ光Lzの出力を不安定にすることがなく、反射光Lzrfが図示していない受光素子に入射して不要な信号が検出されることがない。
【0040】
<第3実施形態>
図9,図11,図12において、図1,図3,図4と同一部分には同一符号を付し、その説明を適宜省略する。図9〜図12に示す第3実施形態は、第1実施形態におけるレンズ3の代わりにレンズ5を用いている。
【0041】
図9,図10を用いてレンズ5の具体的構成について説明する。図10において、(A)はレンズ5の上面図、(B)は側面図、(C)は偏向ミラー1側からレンズ5を見た平面図、(D)は偏向ミラー1の周方向の中央部である(C)におけるA−A断面図、(E)はレンズ5の底面図である。図9及び図10(E)より分かるように、レンズ5の底面は、リングを直径方向で切断したような形状となっている。なお、図10(E)においては、レンズ5の底面から上方を見たときに見える上面側の形状を含めて図示している。図9及び図10(A)より分かるように、レンズ5の上面は、レンズ5の周方向の両端で所定の幅を有しており、両端から中央部に近付くに従って順次幅狭となる形状となっている。
【0042】
図10(A)及び図10(A)より分かるように、レンズ5の内周面は、円筒を直径方向に切断した状態の曲面となっている。レンズ5を底面側から上面側に見たときに、上面の外周における周方向の中央部の位置は、底面の外周における周方向の中央部の位置と一致している。底面の外周は直径が一定であるのに対して上面の外周の直径は中央部から離れるに従って拡大していくので、底面の外周と上面の外周とは中央部から離れるに従って順次離れていく。
【0043】
レンズ5の内周面の周方向の所定の位置で底面側から上面側に向かう内周面に沿った直線は、周方向の両端から中央部にかけて全て基準面Pbsと直交する方向と平行となっている。
【0044】
レンズ5の外周面の周方向の所定の位置で底面側から上面側に向かう外周面に沿った直線は、周方向の中央部を除き、基準面Pbsと直交する方向に対して傾いている。この外周面に沿った直線の傾きは、周方向の中央部に向かうに従って傾斜が順次緩やかになっていき、周方向の中央部で基準面Pbsと直交する方向と平行となる。
【0045】
第3実施形態のレンズ5は、図9及び図10に示すような形状を有することにより、周方向でレーザ光Lzの屈折角が変化している。
【0046】
図11は、レンズ5の周方向中央部におけるレーザ光Lzの入射及び射出状態を示している。図11に示すように、基準面Pbs上の走査中心に射出するレーザ光Lzは、レンズ5の周方向中央部における入射面51への入射角が0°であり、射出面52からの射出角も0°である。図12は、レンズ5の周方向中央部以外におけるレーザ光Lzの入射及び射出状態を示している。レンズ5の周方向中央部以外における入射面53は、基準面Pbsと垂直な曲面となっている。レンズ5の周方向中央部以外における射出面54は、基準面Pbsと直交する方向に対して角度θt3傾いている。基準面Pbsとレンズ5に入射するレーザ光Lzのなす角はθである。レンズ5の屈折率をnとすると、θt3は次の(4)式となる。
【0047】
θt3=tan−1(sin(sin−1(sinθ/n))/(cos(sin−1(sinθ/n))-1/n)) …(4)
【0048】
第3実施形態のレンズ5の形状を図11,図12を用いてさらに説明する。レンズ5の入射面(図11では51、図12では53)と基準面Pbsとのなす角は90°であり、周方向に一定である。射出面(図11では52、図12では54)と基準面Pbsとのなす角は90°−θt3である。図11ではθt3は0°であるので、射出面52と基準面Pbsとのなす角は90°である。レンズ5の射出面と基準面Pbsとのなす角は、射出面から射出するレーザ光Lzが基準面Pbsと平行になるように周方向に変化している。
【0049】
これにより、第3実施形態においても、レンズ5から射出する周方向全てのレーザ光Lzは基準面Pbsと平行となる。従って、第5実施形態によれば、走査されるレーザ光Lzの軌跡を直線状にすることができる。
【0050】
<第4実施形態>
図13,図15,図16において、図1,図3,図4と同一部分には同一符号を付し、その説明を適宜省略する。図13〜図16に示す第4実施形態は、第1実施形態におけるレンズ3の代わりにレンズ6を用いている。
【0051】
図13,図14を用いてレンズ6の具体的構成について説明する。図14において、(A)はレンズ6の上面図、(B)は側面図、(C)は偏向ミラー1側からレンズ6を見た平面図、(D)は偏向ミラー1の周方向の中央部である(C)におけるA−A断面図、(E)はレンズ6の底面図である。図13及び図14(E)より分かるように、レンズ6の底面は、リングを直径方向で切断したような形状となっている。なお、図14(E)においては、レンズ6の底面から上方を見たときに見える上面側の形状を含めて図示している。図14(A)も同様に、レンズ6の上面から底面側を見たときに見える形状を含めて図示している。図13及び図14(A)より分かるように、レンズ6の上面は、レンズ6の周方向の両端で所定の幅を有しており、両端から中央部に近付くに従って順次幅狭となる形状となっている。
【0052】
図14(A)及び図14(E)より分かるように、レンズ6の内周面は、底面から上面に向かうに従って径が拡大している。また、レンズ6の外周面も、底面から上面に向かうに従って径が拡大している。レンズ6の周方向の断面は、両端で台形であり、中央部に近付くに従って上底と下底との差が少なくなり、図14(D)に示すように中央部で平行四辺形となる。
【0053】
レンズ6の内周面の周方向の所定の位置で底面側から上面側に向かう内周面に沿った直線は、周方向の両端から中央部にかけて全て同じ角度で基準面Pbsと直交する方向に対して傾いている。
【0054】
レンズ6の外周面の周方向の所定の位置で底面側から上面側に向かう外周面に沿った直線は、基準面Pbsと直交する方向に対して傾いている。この外周面に沿った直線の傾きは、周方向の中央部に向かうに従って傾斜が順次緩やかになっていく。
【0055】
第4実施形態のレンズ6は、図13及び図14に示すような形状を有することにより、周方向でレーザ光Lzの屈折角が変化している。
【0056】
図15は、レンズ6の周方向中央部におけるレーザ光Lzの入射及び射出状態を示している。図15に示すように、基準面Pbs上の走査中心に射出するレーザ光Lzは、レンズ6の入射面61への入射角及び射出面62からの射出角が角度θである。図16は、レンズ6の周方向中央部以外におけるレーザ光Lzの入射及び射出状態を示している。レンズ6の周方向中央部以外における入射面63は、基準面Pbsと直交する方向に対して角度θ傾いている。レンズ6の周方向中央部以外における射出面64は、基準面Pbsと直交する方向に対して角度θt4傾いている。基準面Pbsとレンズ6に入射するレーザ光Lzのなす角はθである。
【0057】
第4実施形態のレンズ6の形状を図15,図16を用いてさらに説明する。レンズ6の入射面(図15では61、図16では63)と基準面Pbsとのなす角は90°−θであり、周方向に一定である。射出面(図15では62、図16では64)と基準面Pbsとのなす角は、90°−θt4となる。レンズ6の射出面と基準面Pbsとのなす角は、射出面から射出するレーザ光Lzが基準面Pbsと平行になるように周方向に変化している。
【0058】
これにより、第4実施形態においても、レンズ6から射出する周方向全てのレーザ光Lzは基準面Pbsと平行となる。従って、第4実施形態によれば、走査されるレーザ光Lzの軌跡を直線状にすることができる。第6実施形態においては、角度θを角度θの最大値より大きくすることにより、レンズ6に対するレーザ光Lzの入射角が0°とならないため、レンズ6の表面での破線で示す反射光Lzrfがレーザ光源2に戻ることがない。よって、レーザ光源2によるレーザ光Lzの出力を不安定にすることがなく、反射光Lzrfが図示していない受光素子に入射して不要な信号が検出されることがない。
【0059】
<第5実施形態>
図17,図20,図21において、図1,図3,図4と同一部分には同一符号を付し、その説明を適宜省略する。図17〜図21に示す第5実施形態は、第1実施形態におけるレンズ3の代わりにレンズ7を用いている。図17に示すレンズ7は、図18に示すように、偏向ミラー1上でレーザ光Lzを反射する点(反射点)を焦点位置Fpとするレンズ断面を、焦点位置Fpを通って基準面Pbsと垂直な軸Axを中心に回転してできるリング形状を直径方向で切断した形状となっている。図18より分かるように、レンズ7より射出する全てのレーザ光Lzは基準面Pbsと平行となる。
【0060】
図19において、(A)はレンズ7の上面図、(B)は側面図、(C)は偏向ミラー1側からレンズ7を見た平面図、(D)は偏向ミラー1の周方向の中央部である(C)におけるA−A断面図、(E)はレンズ7の底面図である。図20は、レンズ7の高さ方向の中央部に入射するレーザ光Lzの入射及び射出状態を示している。図21は、レンズ7の高さ方向の中央部以外に入射するレーザ光Lzの入射及び射出状態を示している。基準面Pbsと直交する面に対するレンズ7に入射するレーザ光Lzのなす角はθである。角度θが何度であってもレンズ7より射出する全てのレーザ光Lzは基準面Pbsと平行となる。即ち、焦点位置Fpを通るレーザ光であれば、基準面Pbsと平行にすることができる。第5実施形態によれば、走査されるレーザ光Lzの軌跡を直線状にすることができる。
【0061】
<第6実施形態>
図22,図25,図26において、図1,図3,図4と同一部分には同一符号を付し、その説明を適宜省略する。図22〜図26に示す第6実施形態は、第1実施形態におけるレンズ3の代わりにレンズ8を用いている。図22に示すレンズ8は、図23に示すように、偏向ミラー1上でレーザ光Lzを反射する点を焦点位置Fpとするレンズ断面であり、レンズ断面の直線部分を軸Axに対して傾けたレンズ断面を、軸Axを中心に回転してできるリング形状を直径方向で切断した形状となっている。即ち、レンズ8の内周面は軸Axに対して傾いている。図23より分かるように、レンズ8より射出する全てのレーザ光Lzは基準面Pbsと平行となる。
【0062】
図24において、(A)はレンズ8の上面図、(B)は側面図、(C)は偏向ミラー1側からレンズ8を見た平面図、(D)は偏向ミラー1の周方向の中央部である(C)におけるA−A断面図、(E)はレンズ8の底面図である。図25は、レンズ8の基準面Pbsの方向におけるレーザ光Lzの入射及び射出状態を示している。図26は、レンズ8の基準面Pbsから外れた方向におけるレーザ光Lzの入射及び射出状態を示している。基準面Pbsとレンズ8に入射するレーザ光Lzとのなす角θが何度であってもレンズ8より射出する全てのレーザ光Lzは基準面Pbsと平行となる。即ち、焦点位置Fpを通るレーザ光であれば、基準面Pbsと平行にすることができる。
【0063】
第6実施形態によれば、走査されるレーザ光Lzの軌跡を直線状にすることができる。図25,図26より分かるように、レンズ8の内周面を基準面Pbsと垂直な軸Axに対して傾けているため、レンズ8の入射面での破線で示す反射光Lzrfjはレーザ光源2に戻ることがない。よって、レーザ光源2によるレーザ光Lzの出力を不安定にすることがなく、反射光Lzrfが図示していない受光素子に入射して不要な信号が検出されることがない。
【0064】
本発明は以上説明した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 偏向ミラー
2 レーザ光源
3〜8 レンズ
Lz レーザ光
Pbs 基準面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発するレーザ光源と、
前記レーザ光源より発せられたレーザ光を反射する回動自在の偏向ミラーを有し、前記偏向ミラーを前記レーザ光の入射光の光軸が前記偏向ミラーの駆動軸と直交する軸に対して傾くように設けた偏向器と、
内周面及び外周面が曲面で形成され、前記偏向ミラーで反射したレーザ光が前記内周面に入射して前記外周面から射出され、前記外周面から射出するレーザ光は前記偏向ミラーが回動されても常に所定の基準面に対して平行とされ、前記偏向ミラーが回動することによって走査されるレーザ光の軌跡を直線状に変換するレンズと、
を備えることを特徴とするレーザ走査装置。
【請求項2】
前記レンズは、前記内周面上の周方向の各位置における前記内周面に沿った前記レンズの底面側から上面側に向かう直線と前記基準面とが傾きを有し、
前記内周面は、前記傾きが前記レンズの周方向において順次変化している曲面で構成されていることを特徴とする請求項1記載のレーザ走査装置。
【請求項3】
前記傾きは周方向の両端から前記レンズの中央に向かうにつれて、順次変化していることを特徴とする請求項2記載のレーザ走査装置。
【請求項4】
前記レンズは、前記外周面が、前記レンズの底面側から上面側に向かう前記外周面の周方向の各位置における前記外周面に沿った直線が前記基準面に対して周方向の全てで同じ角度に傾いている曲面で構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のレーザ走査装置。
【請求項5】
前記レンズは、前記外周面上の周方向の各位置における前記外周面に沿った前記レンズの底面側から上面側に向かう直線と前記基準面とが傾きを有し、
前記外周面は、前記傾きが前記レンズの周方向において順次変化している曲面で構成されていることを特徴とする請求項1記載のレーザ走査装置。
【請求項6】
前記傾きは周方向の両端から前記レンズの中央に向かうにつれて、順次変化していることを特徴とする請求項5記載のレーザ走査装置。
【請求項7】
前記レンズは、前記内周面が、前記レンズの底面側から上面側に向かう前記内周面の周方向の各位置における前記内周面に沿った直線が前記基準面に対して周方向の全てで同じ角度に傾いている曲面で構成されていることを特徴とする請求項5または6に記載のレーザ走査装置。
【請求項8】
前記レンズは、前記レンズを、前記内周面に沿った前記レンズの底面側から上面側に向かう直線と前記偏向ミラー上でレーザ光を反射する反射点とを通る面で切断した断面が、前記反射点を焦点位置とする形状であり、
前記レンズは、前記断面を、前記焦点位置を通って前記基準面と垂直な軸を中心に所定角度回転させた形状であることを特徴とする請求項1記載のレーザ走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2013−7811(P2013−7811A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139175(P2011−139175)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】