説明

レーザ露光装置

【課題】 廉価なレーザ露光装置によって、12800dpi以上の解像度を実現でき、グラビア製版、オフセット製版、フレキソ製版等における高解像度のレーザ製版を行い得るようにすること、更には、プリント基板、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の電子部品における回路パターンのレーザ露光や紙幣等における偽造防止用特殊印刷等にも用いることのできる高解像度のレーザ露光装置を提供する。
【解決手段】 投影光学部の結像部に配列されるレーザスポットの夫々が矩形であるレーザ露光装置において、該レーザスポットの夫々を長手方向で少なくとも2以上の領域に等しく分割し、隣接するレーザスポット同士がその少なくとも1つの分割領域で互いに重なり合うようにオーバーラップ配列にすることにより、該レーザスポットの長手方向のサイズよりも4辺いずれもが小さい四角形のピクセルを露光するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア製版、オフセット製版、フレキソ製版等におけるレーザ製版で用いることができ、更には、プリント基板、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の電子部品における回路パターンのレーザ露光や紙幣等における偽造防止用特殊印刷等にも用いることのできる高解像度のレーザ露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷は、円筒状の版胴(グラビアシリンダ)の表面に形成された微細な凹部(セル)内にインキを充填し、余分なインキはドクターで掻き取りつつ、版胴を被印刷体(紙等)に押圧して、セル内のインキを被印刷体に転写するものであり、セルの深さの程度によって、インキの階調や濃淡が表現されるようになっている。グラビア印刷における製版は、グラビアシリンダの表面にセルを形成することによって行われるところ、従来からの機械的彫刻によるものもあるが、近年では高精細度印刷や生産性向上などの観点から半導体レーザを用いたX−Y走査方式のレーザ露光装置によって製版情報(文字や画像等のデジタルデータ)を直接に露光するレーザ製版が主流となってきている。レーザ製版は、高速回転するグラビアシリンダ表面に塗布された感光材被膜に対し、例えば波長830nmの半導体レーザを製版情報で光変調して露光し、現像し、エッチングし、クロムメッキするというものである。レーザ製版は、文字や画像等の製版情報のデジタルデータをフィルムを経由せずに直接プレートに出力して製版する所謂CTP(computer to plate)において特に好適に利用される。また、レーザ製版はグラビア製版だけでなく、オフセット製版、フレキソ製版等の各種製版にも使用されている。既に、本発明者らは、このレーザ製版の全工程を全自動化したレーザ製版システムを開発し、大変な好評を得ている(例えば、特許文献1等)。
【0003】
現在、レーザグラビア製版用のレーザ露光装置としては、3200dpi(dot per inch)程度の解像度を有するものが広く普及しており、この場合、1ピクセル(画素)を約7.92μm2で表現している。この3200dpiという解像度は、通常の本、雑誌、カタログ、包装フィルム等の一般的な印刷業の分野では充分な性能であると言えるが、応用分野として可能性があるプリント基板、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の電子部品の製造業の分野において、従来のマスクフィルムを重ねて一括露光やステップ露光することに替えて、X−Y走査方式のレーザ露光装置によって各種回路パターンを露光する場合や、或いは紙幣等における偽造防止用特殊印刷等では更なる高解像度が要求される。
【0004】
従来のレーザ露光装置の場合、感光材である版材に照射されるレーザ光のレーザスポットの形状には、円形と矩形のものがある(図4及び図5参照)。円形のレーザスポットとは、図4に示した如くのものであり、山形の光量分布と円形のレーザスポット形状をなすものである〔図4(a)、特許文献3及び特許文献4参照〕。このような円形のレーザスポットS’では、多数のレーザ光の配列がずれて重なるようにオーバーラップ配列とされるが〔図4(b)参照〕、露光部と非露光部の界面が波形乃至ギザギザの形状となるため高解像度の露光には限界がある。
【0005】
また、矩形のレーザスポットとは、図5に示した如くのものであり、角形乃至台形の光量分布で矩形のレーザスポット形状をなすものである〔図5(a)、特許文献5参照〕。このような矩形のレーザスポットS”は、1ピクセル(画素)と同サイズの矩形のレーザスポットにすることも勿論可能であるが、長さ(X方向)又は幅(Y方向)の一方(例えばX方向)だけを1ピクセルと等しいサイズとし、他方(例えばY方向)は1ピクセルよりも小さいサイズの矩形のレーザスポットS”として、これを1ピクセルよりも小さいサイズの方向(例えばY方向)でスライドせしめることで1ピクセルP分を露光することによっても行われている〔図5(a)、特許文献5参照〕。例えば3200dpi(1ピクセル=約7.92μm2)の場合であれば、長さ約7.9μ×幅1μmの矩形のレーザスポットS”とし、これを1ピクセルP内の幅方向(Y方向)の一側端から他側端にスライドせしめ、約7.92μm2の1ピクセルPを露光するというものである。
【0006】
しかし、このような矩形のレーザスポットを採用した場合、水平方向又は垂直方向の直線を表現する場合であれば、露光部と非露光部の界面も直線状になるが、斜線や曲線を表現する場合は、1ピクセル単位で段差が生じるため、階段状のギザギザの形状が生じることとなる〔図5(b)、図6(b)〕。これを解消するためには、レーザ露光装置自体の性能を向上させて、より微細なレーザスポットを照射し、より微細なピクセル単位で表現できるようにすれば理論上は可能であるが、そのようなレーザ露光装置を開発する技術的困難性に加え、開発費用や時間の問題があり、仮に製造可能だとしても、非常に高価な装置となり量産に適さず現実的ではない。従って、例えば、比較的廉価な普及品である3200dpi(1ピクセル=約7.92μm2)程度のレーザ露光装置と同程度の性能(解像度)と価格で、製造コストも高騰させずに、その4倍以上の12800dpi(1ピクセル=約1.92μm2)以上の解像度を有するレーザ露光装置を実現することは困難であった。
【特許文献1】特開平10−193551号公報
【特許文献2】特開平6−84741号公報
【特許文献3】特開2001−109163号公報
【特許文献4】特開平9−85927号公報
【特許文献5】特開2000−318195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、比較的廉価な従来の3200dpi程度の解像度を有するレーザ露光装置と同程度の性能のレーザ露光装置によって、その4倍以上の12800dpi以上の解像度を実現でき、グラビア製版、オフセット製版、フレキソ製版等における高解像度のレーザ製版を行い得るようにすること、更には、プリント基板、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の電子部品における回路パターンのレーザ露光や紙幣等における偽造防止用特殊印刷等にも用いることのできる高解像度のレーザ露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のレーザ露光装置は、レーザ光を発振するレーザ光源と、該レーザ光を複数の制御信号で空間的に配列分割して光変調する光変調部と、光変調部からの配列された出力光を縮小投影する投影光学部とを備え、投影光学部の結像部に配列されるレーザスポットの夫々が矩形であるレーザ露光装置において、該レーザスポットの夫々を長手方向(X方向)で少なくとも2以上の領域に等しく分割し、隣接するレーザスポット同士がその少なくとも1つの分割領域で互いに重なり合うようにオーバーラップ配列にすることにより、該レーザスポットの長手方向(X方向)のサイズよりも4辺いずれもが小さい四角形のピクセルを露光するようにしたことを特徴とする。
【0009】
前記分割領域の長手方向(X方向)のサイズと同じサイズ分だけ前記レーザスポットを該長手方向と直交する幅方向(Y方向)にスライドせしめ、該レーザスポットの長手方向(X方向)のサイズよりも4辺いずれもが小さい正方形のピクセルを露光するようにすることが好ましい。また、前記レーザスポットを4つの領域に等しく分割し、隣接するレーザスポット同士がその4分の3の分割領域で重なり合うようにオーバーラップ配列とすることが好ましい。
【0010】
即ち、矩形のレーザスポット(例えば、長さ約7.9μm×幅1μmの長方形)は、3200dpi程度の解像度を有するレーザ露光装置であれば出力できるが、これでそのまま約7.92μm2の1ピクセルを露光するのではなく、このレーザスポットをその長手方向(X方向)で少なくとも2以上の領域に等しく分割し(例えば4等分して、1.9μm×1μmの分割領域とし)、隣接するレーザスポット同士の少なくとも1つの分割領域(例えば4等分した場合の4分の3の分割領域)で互いに重なり合うようにオーバーラップ配列にする。そして、この分割領域の長手方向(X方向)のサイズ(4等分した場合なら1.9μm)と同じサイズ分だけ該レーザスポットを該長手方向と直交する幅方向(Y方向)にスライドして、正方形(4等分した場合なら1.92μm2)の1ピクセルを露光することとしたものである。
【0011】
なお、レーザースポットの幅方向(Y方向)へのスライドは必須ではない。例えば、矩形のレーザスポットを長さ約7.9μm×幅1.9μmの長方形とし、これをレーザスポットの長手方向(X方向)で4等分して、1.9μm×1.9μmの分割領域とし、隣接するレーザスポット同士の4等分した分割領域の4分の3で互いに重なり合うようにオーバーラップ配列にした場合であれば、既に1ピクセルは1.9μm×1.9μmの正方形をなしているので、上述したようなレーザースポットの幅方向(Y方向)へのスライドは行わなくともよい。
【0012】
これによれば本来3200dpi程度の解像度を有するに過ぎないレーザ露光装置でも、実質的に、1ピクセルを1.92μm2以下とし、12800dpi以上の解像度を有するようにすることができる。前記レーザ光源は、複数の発振部(マルチエミッタ)を有する半導体レーザアレイであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来の3200dpi程度の解像度を有するレーザ露光装置と同程度の性能のレーザ露光装置によって、その4倍以上の12800dpi以上の高解像度を実現でき、グラビア製版、オフセット製版、フレキソ製版等における高解像度のレーザ製版を行うことができ、更には、プリント基板、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の電子部品における回路パターンのレーザ露光や紙幣等における偽造防止用特殊印刷等にも用いることのできる高解像度のレーザ露光装置を提供することができるという著大な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されたもので、本発明の技術的思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことは言うまでもない。
【0015】
まず、本発明のレーザ露光装置を装置構成ついて以下に説明する。図1は、本発明のレーザ露光装置の基本的装置構成を示すブロック図である。図中、符号10はレーザ露光装置であり、レーザ露光装置10はレーザ走査機構4を有し、レーザ走査機構4は、レーザ光源1と、レーザ光を所定のビーム形状に成形するビーム成形照射部2とから構成されており、また、製版情報に基づいて、レーザ光源1、ビーム成形照射部2、レーザ走査機構4及び版胴5の動作を制御する制御部3を備えている。製版対象となる版胴5には、その表面に感光材である版材6が膜形成されている。
【0016】
レーザ光源1は、例えば波長830nmの半導体レーザのレーザ発振部を複数有する半導体レーザアレイであり、連続的にレーザ発振する。レーザ光源1から出射されたレーザ光はビーム成形照射部2に入射する。
【0017】
ビーム成形照射部2は、開口成形部7と光変調部8と投影光学部9より構成されている。開口成形部7は、入射したレーザ光のビーム形状を光変調部8の入射開口に合わせて成形し、光変調部8に入射させる。本発明では、レーザスポットの形状を矩形とする必要があるので、ビーム形状も矩形に成形する。なお、ビーム形状を矩形に成形する方法は公知の方法によればよいが、例えば、レーザ光を長方形の孔を有する光弁に通過させるようにすればよい(特許文献5参照)。
【0018】
光変調部8は、数十から数百の独立した光変調開口を有する液晶型空間変調器や電気駆動される微小ミラーアレイ、或いは音響光学空間変調器などから構成される光変調部であり、製版情報に基づいて複数の信号でレーザ光を空間的に配列分割して光変調制御する。例えば電子駆動される微小ミラーを多数配列した回折格子型ミラーアレイの場合、数エレメントを1チャンネルとして駆動制御され200kHz程度で入射するレーザ光線の光強度変調が可能であり、数百チャンネルくらいの独立した光変調器として使用できるものである。制御部3からの製版情報を付与された変調信号によって個々独立に強度変調され数百チャンネル分の配列されたパルス的回折光として出射する。
【0019】
光変調部8を出射し、それぞれ光変調されたレーザ光は、独立の光変調開口に相当する配列されたレーザ光線になっており、これを投影光学部9に入射させる。投影光学部9は入射光を所定の倍率で縮小投影する複数のレンズで構成された縮小投影光学系であり、レンズ系及びオートフォーカス機能などを有し、光変調部8を入射光源面として版材6面上を結像面とする縮小光学系である。光変調部8の位置でのチャンネルの形状で決められるレーザ光ビーム径とレーザ光ビーム間隔を、版材面上で所定のビームスポットとレーザスポット間隔になるように縮小投影する。例えば、投影光学部の縮小比を10対1とすると、光変調部8で50μm径、50μm間隔で配列されたレーザスポット列は版材6面上でのレーザスポット列は5μm径で5μm間隔に縮小投影される。
【0020】
これらのレーザ光源1から投影光学部9までの光学系を搭載しているレーザ走査機構4は、製版情報によって順次版胴5に沿って走査される。版材6は感光材であり、制御部3からの製版情報に基づく版胴5の回転と、レーザ走査機構4のビーム照射部2の版胴5面に沿った水平移動との協働により、感光材全面がスパイラルに或いはステップ走査でレーザ照射される。
【0021】
版材6は、レーザ照射された部分が感光され、非照射部は感光されないため、版胴5面全体に製版情報が付与される。その後、版胴5は、現像、金属面のエッチング、レジスト剥離、クロムメッキ処理によって、グラビア印刷版として供される。このようなレーザ露光装置としては、例えば 特許文献2記載のレーザ露光装置を利用できる。
【0022】
次に、本発明のレーザ露光装置の動作について説明する。図2は、本発明のレーザ露光装置によるレーザスポットの一例を示す模式説明図であり、(a)は1つのレーザスポットであり、(b)は5つのレーザスポットをオーバーラップ配列した状態である。図3は、本発明のレーザ露光装置によって斜線を露光した場合の模式説明図である。図中、符号Sはレーザスポットであり、符号Pはピクセルである。
【0023】
なお、解像度(dpi)とピクセルサイズ(μm2)の対応関係は例えば以下の通りであり、以下の説明では、3200dpiの解像度を有するレーザ露光装置で、実質的に12800dpiの解像度を実現する場合について説明するが、その他の解像度の場合でも原理は同様である。
〔解像度(dpi)とピクセルサイズ(μm2)の対応関係〕
3200dpi=7.93752μm2
4800dpi=5.29162μm2
6400dpi=3.96872μm2
8000dpi=3.1752μm2
9600dpi=2.64582μm2
12800dpi=1.98432μm2
16000dpi=1.58752μm2
25600dpi=0.99212μm2
【0024】
解像度3200dpiのレーザ露光装置は、上記の通り、1ピクセルを約7.92μm2で露光する能力を備えている。解像度3200dpiのレーザ露光装置で、そのまま解像度3200dpi(1ピクセルを約7.92μm2)で露光する場合であれば、上述した図5(a)に示したように、長さ約7.9μm×幅1μmの矩形のレーザスポットS”とし、これを1ピクセルP内の幅方向(Y方向)の一側端から他側端にスライドせしめ、約7.92μm2の1ピクセルPを露光している。しかし、斜線や曲線を表現する場合は、1ピクセル単位毎(例えば約7.92μm2毎)で段差が生じるため、階段状のギザギザの形状が生じることとなる〔図5(b)、図6(b)〕。
【0025】
解像度3200dpiの4倍の解像度である12800dpiを表現するためには、上記対応関係の通り、1ピクセルを約1.92μm2で露光する必要がある。そこで、本発明では、上記解像度3200dpiのレーザ露光装置と同様の長さ約7.9μm×幅1μmの矩形のレーザスポットSをその長手方向(X方向)で4つの領域Sa,Sb,Sc,Sdに等しく分割する〔図2(a)〕。すると、各分割領域Sa,Sb,Sc,Sdはその長手方向(X方向)の長さが約1.9μmの分割領域Sa,Sb,Sc,Sdとなる〔図2(a)〕。他方、レーザスポットSの幅は1μmであるので、分割領域Sa,Sb,Sc,Sdの長手方向(X方向)の長さと同じにして正方形にするため、レーザスポットSを幅方向(Y方向)に0.9μmだけ(合計で1.9μmの幅となるように)スライドして露光する。してみると、露光された全体領域としては、長さ約7.9μm×幅1.9μmの矩形領域が露光されたことになるが、これを4等分した分割領域Sa,Sb,Sc,Sdとしてみた場合は、幅1.9μm×長さ約1.9μmの正方形の4つのピクセルP1,P2,P3,P4が露光されることとなる〔図2(a)〕。
【0026】
そして、この4等分した分割領域を正方形の4つのピクセルとして扱うために、隣接するレーザスポット同士が4分の3の分割領域で互いに重なり合うようにオーバーラップ配列にする〔図2(b)〕。即ち、レーザスポットS1の右側3/4の分割領域とレーザスポットS2の左側3/4の分割領域とが重なり合うようにし、レーザスポットS2の右側3/4の分割領域とレーザスポットS3の左側3/4の分割領域とが重なり合うようにし、レーザスポットS3の右側3/4の分割領域とレーザスポットS4の左側3/4の分割領域とが重なり合うようにし、レーザスポットS4の右側3/4の分割領域とレーザスポットS5の左側3/4の分割領域とが重なり合うようにしてオーバーラップ配列とするものである〔図2(b)〕。
【0027】
このようにして、長さ約7.9μm×幅1μmの矩形のレーザスポットS1〜S5によって、実質的に、幅1.9μm×長さ約1.9μmの正方形の8つのピクセルP1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8を表現することができることとなる。なお、レーザスポットSの幅を1μmではなく、最初から1.9μmで露光している場合であれば、レーザスポットSを幅方向(Y方向)にスライドさせる必要はない。
【0028】
本発明によれば、斜線や曲線を表現する場合でも、上記要領で、長さ約7.9μm×幅1μmの矩形のレーザスポットSによって、長さ1.9μm×幅1.9μmの正方形のピクセルを表現できるため、図3に示したように、1.92μm2のピクセル単位で段差を表現でき、極めて微細な露光が可能となる〔図3、図6(a)〕。ちなみに、1.92μm2のピクセル単位での段差程度であれば、後述する図6(a)に示されるように、露光後の現像、エッチング及びクロムメッキの各処理を通じて端面が多少なだらかにされるため、最終製品にはほとんど段差としては残らず、略完全に綺麗な直線状の斜線や曲線を表現できるようになるものである。
【0029】
また、上記実施の形態では、3200dpiの解像度を有するレーザ露光装置で、実質的に12800dpiの解像度を表現する場合を説明したが、同様に、幅1μm×長さ約7.9μmの矩形のレーザスポットSを5等分すれば16000dpi=約1.62μm2のピクセルを表現でき、8等分すれば、25600dpi=約12μm2のピクセルを表現することが可能である。
【実施例】
【0030】
以下に本発明の実施例をあげてさらに具体的に説明するが、各実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0031】
(実施例1)
レーザグラビア製版システムを次のように構成した。版胴(グラビアシリンダ)は円周600mmで幅1100mmのアルミニウム製グラビアシリンダに80μmの銅メッキを施し、表面を鏡面研磨(表面粗さRy=0.12μm)した。感光液としてはTSER−2104〔(株)シンク・ラボラトリー製造販売〕を用い、感光膜の膜厚3.5μm、塗布後45分間の風乾(温度23℃)させた。感光液塗布装置としてはコーティング−FX−1300〔(株)シンク・ラボラトリー製造販売〕を用いた。レーザ露光装置として、LaserStream−FX−1300〔(株)シンク・ラボラトリー製造販売〕を用い、露光パワーを230mJ/cm2とし、露光時シリンダ回転数を200rpmとした。現像液にはTLD現像液〔(株)シンク・ラボラトリー製造販売〕を用い、現像方法は回転浸漬現像80秒(温度25℃)で行った。
【0032】
上記システム構成中のレーザ露光装置において、長さ約7.9μm×幅1μmの矩形のレーザスポットを4等分して、隣接するレーザスポット同士が4分の3の分割領域で互いに重なり合うようにオーバーラップ配列として、実質的に約1.92μm2のピクセル単位(12800dpi)で露光し、その他は通常のレーザグラビア製版を行った。その結果を図6(a)に示す。図6(a)に示される如く、斜線部分にもほとんど段差やギザギザは表れず、略完全に直線状の斜線を形成でき、極めて精確に微細な露光及び製版を行うことができた。
【0033】
(比較例1)
実施例1と同様のレーザグラビア製版システムを用い、該システム構成中のレーザ露光装置において、長さ約7.9μm×幅1μmの矩形のレーザスポットをそのまま用いて(図5のようにして)約7.92μm2のピクセル単位(3200dpi)で露光した以外は、実施例1と同様にして、レーザグラビア製版を行った。その結果を図6(b)に示す。図6(b)に示される如く、斜線部分にはピクセル単位の段差によるギザギザが表れており、充分に微細な露光及び製版を行うことはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
上記説明では、主にグラビア製版に適用される場合について説明したが、本発明のレーザ露光装置は、グラビア製版だけでなく、オフセット製版、フレキソ製版などの各種レーザ製版にも使用できる。また、プリント基板、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の電子部品の製造業の分野においても、従来のマスクフィルムを重ねて一括露光やステップ露光することに替えて、X−Y走査方式のレーザ露光装置によって各種回路パターンを露光するのにも利用可能である。更に、紙幣等における偽造防止用特殊印刷等にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のレーザ露光装置の基本的装置構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のレーザ露光装置によるレーザスポットの一例を示す模式説明図であり、(a)は1つのレーザスポットであり、(b)は5つのレーザスポットをオーバーラップ配列した状態である。
【図3】本発明のレーザ露光装置によって斜線を露光した場合の模式説明図である。
【図4】従来のレーザ露光装置による円形のレーザスポットの一例を示す模式説明図であり、(a)はレーザスポットの投影形状と光量分布を示し、(b)はオーバーラップ配列にした場合である。
【図5】従来のレーザ露光装置による矩形のレーザスポットの一例を示す模式説明図であり、(a)はレーザスポットの投影形状と光量分布を示し、(b)は斜線を表現するために階段状に配列した場合である。
【図6】製版されたグラビアシリンダの電子顕微鏡写真であり、(a)は実施例1(12800dpi)の結果を示し、(b)は比較例1(3200dpi)の結果を示している。
【符号の説明】
【0036】
1:レーザ光源、2:ビーム成形照射部、3:制御部、4:レーザ走査機構、5:版胴(グラビアシリンダ)、6:版材(感光材)、7:開口成形部、8:光変調部、9:投影光学部、10:レーザ露光装置、S,S’,S”,S1,S2,S3,S4,S5:レーザスポット、Sa,Sb,Sc,Sd:レーザスポットの分割領域、P,P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8:ピクセル。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発振するレーザ光源と、該レーザ光を複数の制御信号で空間的に配列分割して光変調する光変調部と、光変調部からの配列された出力光を縮小投影する投影光学部とを備え、投影光学部の結像部に配列されるレーザスポットの夫々が矩形であるレーザ露光装置において、該レーザスポットの夫々を長手方向で少なくとも2以上の領域に等しく分割し、隣接するレーザスポット同士がその少なくとも1つの分割領域で互いに重なり合うようにオーバーラップ配列にすることにより、該レーザスポットの長手方向のサイズよりも4辺いずれもが小さい四角形のピクセルを露光するようにしたことを特徴とするレーザ露光装置。
【請求項2】
前記分割領域の長手方向のサイズと同じサイズ分だけ前記レーザスポットを該長手方向と直交する幅方向にスライドせしめ、該レーザスポットの長手方向のサイズよりも4辺いずれもが小さい正方形のピクセルを露光するようにしたことを特徴とする請求項1記載のレーザ露光装置。
【請求項3】
前記レーザスポットを4つの領域に等しく分割し、隣接するレーザスポット同士がその4分の3の分割領域で重なり合うようにオーバーラップ配列とすることを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ露光装置。
【請求項4】
前記1ピクセルが1.92μm2以下であり、12800dpi以上の解像度を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のレーザ露光装置。
【請求項5】
前記レーザ光源は、複数の発振部を有する半導体レーザアレイであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のレーザ露光装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−53499(P2006−53499A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241320(P2004−241320)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000131625)株式会社シンク・ラボラトリー (52)
【Fターム(参考)】