説明

レーダトランスポンダ

【課題】不要な信号が出力されてしまうことを抑圧できるレーダトランスポンダを提供する。
【解決手段】パフォーマンスモニタ6は、周波数制御信号発生器25と、可変減衰器28と、を備える。周波数制御信号発生器25は、電圧制御発振器27に対して周波数制御信号を送信することにより、前記応答信号の周波数を、第2周波数から第1周波数に変化させる動作と、第1周波数から第2周波数に変化させる動作とを実現可能である。可変減衰器28は、前記応答信号の周波数が第1周波数から第2周波数に変化するときの少なくとも一部の期間は、当該応答信号の出力レベルを減衰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダトランスポンダに関する。詳細には、当該レーダトランスポンダにおいて不要な信号を抑圧するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーダ装置からの信号を受信し、これに応じて応答信号を送信するレーダトランスポンダが知られている。このようなレーダトランスポンダとして、例えばレーダパフォーマンスモニタやSART(Search and Rescue Radar Transponder:捜索救助用レーダトランスポンダ)等がある。
【0003】
以下、レーダパフォーマンスモニタについて簡単に説明する。即ち、レーダ装置が備える発振器や検波器等は、使用とともに劣化したり、外部からの大きな信号によって損傷したりすることがある。そこで、レーダ装置の送信強度及び受信感度が良好であるか否かを確認するために、当該レーダ装置にレーダパフォーマンスモニタが設けられることがある。レーダ装置は、レーダパフォーマンスモニタとの間で所定の信号をやり取りし、その結果がレーダ装置の性能の確認等に用いられる。
【0004】
このようなレーダパフォーマンスモニタとしては、例えば特許文献1が開示する構成が挙げられる。特許文献1は、アンテナ部と、検波回路と、発振器と、制御回路と、結合手段と、を備えたレーダパフォーマンスモニタを開示している。
【0005】
また、特許文献1が開示するレーダパフォーマンスモニタは、発振器の出力信号を漸次減衰させるための可変減衰器を備えている。即ち、レーダ装置本体の受信感度が低下すると、減衰量が大きい信号(信号強度が小さい信号)は検出されなくなる。従って、減衰量を漸次変化させた信号をレーダパフォーマンスモニタから送信し、レーダ装置本体側で当該信号を受信し、レーダ装置本体側で検出することができた信号の範囲を見ることにより、当該レーダ装置の受信感度を判断することができる。
【0006】
ちなみに、発振器の後段に減衰器を備えた他の構成としては、例えば特許文献2が開示するPLLシンセサイザや、特許文献3が開示するコードレス電話付き複合機等がある。特許文献2及び特許文献3においては、発振器の負荷変動を抑えるために減衰器が用いられている。なお、特許文献2及び特許文献3においては、減衰器の減衰量を変化させる旨の記載は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3005095号公報
【特許文献2】特開平8−8739号公報
【特許文献3】特開2008−160217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、レーダパフォーマンスモニタ等のレーダトランスポンダにおいては、信号を送信してきたレーダ装置に対して当該レーダパフォーマンスモニタからの応答信号を確実に受信させるため、受信した信号と同じ周波数で前記応答信号を送信することが理想的である。しかし、これを厳密に行おうとすると周波数の同期回路等が必要となり、構成が複雑になって信頼性が低下してしまう。そこで、レーダトランスポンダにおいては、同期回路を省略し、レーダ装置本体の受信周波数を含む所定の周波数範囲内で送信周波数を連続的に変化させる信号(いわゆるチャープ信号)を、前記応答信号として送信するように構成されることがある。このようなレーダトランスポンダとしては、特許文献1が開示するレーダパフォーマンスモニタがある。
【0009】
図8(a)に、応答信号としての前記チャープ信号の周波数が時間的に変化する様子を模式的に示す。図に示すように、応答信号の周波数を、レーダ装置本体の受信帯域をカバーする所定範囲で連続的に変化させることにより、当該応答信号の周波数がレーダ装置本体の受信帯域を通過する。即ち、応答信号の周波数と、レーダ装置本体の受信帯域と、が一致している期間が必ず発生する。従って、レーダトランスポンダ側に同調回路を設けなくても、当該レーダトランスポンダからの応答信号をレーダ装置本体に確実に受信させることができる。
【0010】
前記応答信号を受信したレーダ装置本体の表示器には、図8(b)に示すように、前記応答信号に対応して円弧状の領域が表示される。なお、図面での説明の都合上、本願図面においては、レーダ映像の濃淡の階調をハッチングの間隔で表す場合がある。
【0011】
レーダ装置のオペレータは、このように表示器に表示されたレーダ映像に基づいて、レーダトランスポンダの種類に応じた情報を得ることができる。例えばレーダトランスポンダがレーダパフォーマンスモニタである場合、レーダ装置のオペレータは、表示器に表示された前記円弧状の領域の位置等を確認することにより、レーダ装置の性能を判断することができる。また例えばレーダトランスポンダがSARTである場合、レーダ装置のオペレータは、表示器に表示された前記円弧状の領域の位置等を確認することにより、遭難船の位置を判断することができる。
【0012】
しかし、上記の構成では以下のような問題があった。即ち、レーダトランスポンダからチャープ信号を送信した後、次のチャープ信号を送信する前に、レーダトランスポンダの発振器の発振周波数を元に戻す必要がある。このとき、図8(a)に示すように戻り信号(不要信号)が生成される。この戻り信号の周波数がレーダ装置本体の受信帯域を通過することにより、レーダ装置本体に信号が検出され、図8(b)に示すように、当該レーダ装置の表示器に(チャープ信号に基づく領域とは別の)円弧状の領域が表示されてしまう。なお厳密に言えば、この戻り信号も周波数が連続的に変化しているという点でチャープ信号であるが、本明細書では、目的のチャープ信号とは区別して「戻り信号」と称する。
【0013】
レーダトランスポンダにおいては、チャープ信号による線状(円弧状)の表示パターンをオペレータが認識できることが重要であるところ、不要な戻り信号が表示器に表示されるとオペレータによる誤認識の原因となり得る。従って、戻り信号が表示器に表示されてしまうと、例えばレーダパフォーマンスモニタの場合はレーダ装置の診断を適切に行うことができず、SARTの場合は遭難船の捜索を適切に行うことができない等の問題があった。
【0014】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、不要な信号が出力されてしまうことを抑圧できるレーダトランスポンダを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0015】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0016】
本発明の第1の観点によれば、レーダ装置から受信したレーダ信号に応答して、所定の周波数の応答信号を送信するレーダトランスポンダであって、以下のように構成されたレーダトランスポンダが提供される。即ち、このレーダトランスポンダは、発振制御部と、減衰部と、を備える。前記発振制御部は、前記応答信号の周波数を、所定の第2周波数から所定の第1周波数に変化させる動作と、前記第1周波数から前記第2周波数に変化させる動作とを実現可能である。前記減衰部は、前記応答信号の周波数が前記第1周波数から前記第2周波数に変化するときの少なくとも一部の期間は、当該応答信号の出力レベルを減衰させる。
【0017】
即ち、第2周波数から第1周波数まで周波数が変化する応答信号(チャープ信号)を送信したい場合、当該チャープ信号を出力した後、応答信号の周波数を第2周波数まで戻す必要がある。このとき、第1周波数から第2周波数まで周波数が変化する応答信号(戻り信号)が出力される。この戻り信号がレーダ装置側に受信されてしまうことが望ましくない場合、上記のように構成することにより、前記戻り信号を抑圧することができる。
【0018】
前記のレーダトランスポンダにおいては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記第1周波数から前記第2周波数までの周波数範囲には、前記レーダ装置の受信帯域が含まれている。前記減衰部は、前記応答信号の周波数が前記第1周波数から前記第2周波数に変化するときにおいて、当該応答信号の周波数が少なくとも前記レーダ装置の受信帯域内にあるときには、当該応答信号の出力レベルを減衰させる。また前記減衰部は、前記応答信号の周波数が前記第2周波数から前記第1周波数に変化するときにおいて、当該応答信号の周波数が少なくとも前記レーダ装置の受信帯域内にあるときには、当該応答信号の出力レベルを所定の出力レベル以上に維持する。
【0019】
このように、応答信号の周波数を、レーダ装置の受信帯域をカバーする範囲内で変化させることで、当該応答信号をレーダ装置に確実に受信させることができる。そして、応答信号の周波数を第1周波数から第2周波数に戻すときにおいて、当該周波数がレーダ装置の受信帯域内にあるときは減衰部によって出力レベルを減衰させることができるので、不要な戻り信号を抑圧することができる。
【0020】
前記のレーダトランスポンダにおいては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記発振制御部は、前記応答信号の周波数を、前記第2周波数から前記第1周波数まで変化させる動作と、前記第1周波数から前記第2周波数まで変化させる動作と、からなる信号生成動作を複数回行うように構成される。前記減衰部は、前記第2周波数から前記第1周波数まで変化させた前記応答信号を前記複数回の信号生成動作ごとに異なる減衰量で減衰させる可変減衰器である。そして、前記応答信号の周波数が前記第1周波数から前記第2周波数まで変化するときに対する減衰量が、前記複数回の信号生成動作ごとに与えられる減衰量よりも大きくなるように構成されている。
【0021】
これにより、異なる信号レベルの応答信号を送信することができる。更に、可変減衰器が、不要な戻り信号を除去する機能と、応答信号の信号レベルを変化させる機能と、の両方の役割を兼ねるため、構成を簡素化して安価なレーダトランスポンダを得ることができる。
【0022】
前記のレーダトランスポンダは、レーダパフォーマンスモニタとして構成することができる。
【0023】
このレーダパフォーマンスモニタから送信される応答信号は、不要な戻り信号が抑圧されているので、当該応答信号に基づいて、レーダ装置の劣化や故障等を的確に診断することができる。
【0024】
前記のレーダトランスポンダは、捜索救助用レーダトランスポンダとして構成することもできる。
【0025】
この捜索救助用レーダトランスポンダから送信される応答信号は、不要な戻り信号が抑圧されているので、当該応答信号に基づいて、遭難船等の捜索を的確に行うことができる。
【0026】
本発明の第2の観点によれば、前記のレーダパフォーマンスモニタとしてのレーダトランスポンダを備えるレーダ装置が提供される。
【0027】
これにより、不要な信号をレーダ装置本体側で受信することが無いので、レーダ装置の表示部に、当該不要な信号がプロットされて表示されてしまうことを防止できる。従って、当該レーダ装置本体が備える受信回路や送信回路の劣化及び故障を、ユーザが的確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーダ装置の概略的な構成を示す模式図。
【図2】本発明の一実施形態に係るパフォーマンスモニタの機能ブロック図。
【図3】パフォーマンスモニタ使用時における表示器の表示例。
【図4】パフォーマンスモニタのタイミングチャート。
【図5】本発明の第2実施形態に係るパフォーマンスモニタのタイミングチャート。
【図6】第2実施形態のパフォーマンスモニタ使用時における表示器の表示例。
【図7】本発明の第3実施形態に係るSARTの信号を受信したレーダ装置が備える表示器の表示例。
【図8】従来技術のレーダパフォーマンスモニタの応答信号の発振周波数と、当該レーダパフォーマンスモニタからの信号を受信したレーダ装置の表示器の表示例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本発明の1実施形態に係るパフォーマンスモニタ6を備えた、船舶用パルスレーダ装置1の概略的な構成を示す模式図である。
【0030】
図1に示すように、レーダ装置1は、アンテナユニット2と、表示器3と、制御部9と、を備えている。アンテナユニット2は、鋭い指向性を有するレーダアンテナ4と、当該レーダアンテナ4を所定周期で回転させるための駆動部及びギアボックス等を内蔵したケース5と、を備える。制御部9は、受信回路7及び送信回路8を有している。なお、本明細書において「レーダ装置本体の受信帯域」とは、レーダアンテナ4及び受信回路7による受信帯域を意味する。
【0031】
本実施形態のレーダ装置1は、一般的なパルスレーダ装置として構成されている。即ち、レーダアンテナ4を水平面内で回転させつつ、当該レーダアンテナ4から所定の周期でパルス状のレーダ信号を送信し、物標からの反射波(エコー)を当該レーダアンテナ4によって受信するように構成されている。制御部9は、レーダ信号を送信してから反射波を受信するまでの時間に基づいて、エコー源(陸、物標など)までの距離を取得することができる。また、制御部9は、信号を送受信したときにレーダアンテナ4が向いている方向により、エコー源が存在する方向を取得することができる。そして、レーダアンテナ4を回転させながら信号の送受信を繰り返すことにより、水平面上に存在する自装置周囲のエコー源の位置を取得することができる。制御部9は、エコー源の位置を2次元画像上にプロットすることにより、当該エコー源の水平面上の位置を示すレーダ映像を生成するように構成されている。
【0032】
表示器3は、例えばカラー表示可能なラスタスキャン式の表示装置として構成されており、上記レーダ映像をリアルタイムで表示することが可能に構成されている。これにより、オペレータは、表示器3の表示を見ることにより自船周囲の陸や物標の様子を確認することができる。
【0033】
また本実施形態のレーダ装置1は、アンテナユニット2のケース5の側面に固定されるパフォーマンスモニタ(レーダパフォーマンスモニタ)6を備えている。なお、パフォーマンスモニタ6の位置はレーダアンテナ4の近傍であれば特に限定されず、例えばケース5の内部に内蔵しても良いし、ケース5とは別体としてアンテナユニット2の近傍に配置する構成としても良い。なお、本明細書において、レーダ装置1の構成のうち、パフォーマンスモニタ6以外の構成をまとめて「レーダ装置本体」と呼ぶことがある。
【0034】
次に、図2のブロック図を参照して、パフォーマンスモニタ6の構成について説明する。図2に示すように、パフォーマンスモニタ6(以下PMと略記する場合がある)は、PMアンテナ10と、バンドパスフィルタ11と、方向性結合器12と、受信部13と、送信部14と、を備えている。パフォーマンスモニタ6は、レーダ装置本体のレーダアンテナ4からのレーダ信号をPMアンテナ10によって受信すると、これに応じて当該PMアンテナ10から所定の応答信号を送信するよう構成されている。即ち、パフォーマンスモニタ6は、いわゆるレーダトランスポンダとして構成されていると言うことができる。
【0035】
なお、前記PMアンテナ10、受信部13及び送信部14等の各構成は、レーダ装置本体の構成(レーダアンテナ4、受信回路7及び送信回路8など)とは別の構成として設けられている。即ち、パフォーマンスモニタ6は、レーダ装置本体の電波の送受信とは独立して電波の送受信を行うことができるとともに、レーダ装置側の受信回路7又は送信回路8が劣化又は故障しても当該パフォーマンスモニタ6の機能には影響が無いように構成されている。
【0036】
以下、本実施形態のパフォーマンスモニタ6の使用方法について簡単に説明する。まず、レーダ装置本体側において、レーダアンテナ4を回転させながらレーダ信号を所定の強度で送信する。すると、ケース5側面に配置されたパフォーマンスモニタ6のPMアンテナ10側にレーダアンテナ4が向いたときに、当該レーダアンテナ4から送信されたレーダ信号が、前記PMアンテナ10によって受信される。パフォーマンスモニタ6は、受信したレーダ信号の信号強度に応じた応答信号を、PMアンテナ10から送信する。このPMアンテナ10が送信した応答信号は、レーダアンテナ4によって受信される。すると、レーダ装置本体の表示器3に、図3に示すような円弧状のレーダ映像(詳しくは後述)が表示される。オペレータは、このレーダ映像を確認することにより、レーダ装置本体の送信強度等に異常が無いかどうかを判断することができる。なお、レーダ映像から送信強度等を判断する方法については後述する。
【0037】
次に、パフォーマンスモニタ6の構成について更に詳しく説明する。
【0038】
前述のように、パフォーマンスモニタ6は、PMアンテナ10と、受信部13と、送信部14と、を備えている。PMアンテナは、例えばマイクロストリップラインアンテナとして構成される。このPMアンテナ10と受信部13及び送信部14とは、方向性結合器12を介して接続されている。
【0039】
なお、PMアンテナ10と方向性結合器12との間には、バンドパスフィルタ11が接続されている。これにより、レーダ装置本体の送受信帯域以外の信号は除去されるように構成されている。
【0040】
受信部13は、固定減衰器20と、ログ検波器21を備えている。PMアンテナ10で受信された受信信号は、予め設定された減衰量を持つ固定減衰器20を通過して所定の信号レベル以下に減衰され、ログ検波器21においてビデオ信号(受信信号を検波した後の信号)へ変換される。このビデオ信号は、送信部14へ出力される。
【0041】
送信部14は、ピークホールド回路22と、ノコギリ波発生器23と、コンパレータ24と、周波数制御信号発生器25と、減衰量制御信号発生器26と、電圧制御発振器27と、可変減衰器28と、を備えている。
【0042】
以下、図4のタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0043】
前記受信部13からのビデオ信号は、ピークホールド回路22とノコギリ波発生器23に入力される。ピークホールド回路22は、ビデオ信号の信号レベルのピーク値を検出し、当該ピーク値をコンパレータ24に出力するように構成される。一方、ノコギリ波発生器23は、ビデオ信号をトリガとして、ノコギリ波状の掃引信号(スイープ信号)を生成し、コンパレータ24に出力するように構成される。この掃引信号は、弱い信号レベルから強い信号レベルに向かって信号レベルを掃引(連続的に変化させること)するような信号である。
【0044】
コンパレータ24は、ビデオ信号のピーク値(ピークホールド回路22からの入力)と掃引信号(ノコギリ波発生器23からの入力)の信号レベルを比較し、掃引信号の信号レベルがビデオ信号のピーク値を超えたときに、送信トリガ信号を発生させるように構成されている。以上により、ビデオ信号のピーク値が大きいほど、当該ビデオ信号のピーク値を掃引信号の信号レベルが超えるまでに掛かる時間が長くなるように構成されている。従って、PMアンテナ10が受信したレーダ信号の信号レベルが高いほど、当該レーダ信号を受信してからコンパレータ24で送信トリガ信号が生成されるまでの時間が長くなるようになっている。なお、前記送信トリガ信号は、周波数制御信号発生器25と、減衰量制御信号発生器26に出力される。
【0045】
周波数制御信号発生器25は、パフォーマンスモニタ6が送信する応答信号の周波数を制御する発振制御部として構成されている。具体的には、周波数制御信号発生器25は、前記送信トリガ信号をトリガとして、電圧制御発振器27の発振周波数を制御するための周波数制御信号を発生させる。この周波数制御信号は、図4に示すように、第2周波数制御電圧Vf2から第1周波数制御電圧Vf1に向かって電圧値が連続的に変化する部分を含んでいる。
【0046】
一方、電圧制御発振器27は、第1周波数制御電圧Vf1が印加されると、その発振周波数が第1周波数となるように構成される。また、電圧制御発振器27は、第2周波数制御電圧Vf2が印加されると、その発振周波数が第2周波数となるように構成される。
【0047】
従って、前記の周波数制御信号(第2周波数制御電圧Vf2から第1周波数制御電圧Vf1に向かって電圧値が連続的に変化する周波数制御信号)が電圧制御発振器27に入力されることにより、当該電圧制御発振器27からは、第2周波数から第1周波数まで周波数を連続的に変化させる信号(チャープ信号)が出力される。
【0048】
電圧制御発振器27が出力した信号は、後述の可変減衰器28、前述の方向性結合器12及びバンドパスフィルタ11を介して、PMアンテナ10から外部に送信される。以上の構成で、第2周波数から第1周波数まで周波数が連続的に変化するチャープ信号を、パフォーマンスモニタ6からの応答信号として送信することができる。
【0049】
なお、第1周波数から第2周波数までの周波数範囲には、レーダ装置本体の受信帯域が含まれている。具体的には、レーダ装置本体の受信帯域の下限周波数をfmin、上限周波数をfmaxとすると、
第1周波数≧上限周波数fmax>下限周波数fmin≧第2周波数
となるように、第1周波数及び第2周波数が決定されている。これを周波数制御信号の電圧の観点から説明すると、以下のような関係がある。即ち、電圧制御発振器27の周波数が下限周波数fminと一致するときの周波数制御信号の電圧をVf_min、電圧制御発振器27の周波数が上限周波数fmaxと一致するときの周波数制御信号の電圧をVf_maxとすると、
第1周波数制御電圧Vf1≧Vf_max>Vf_min≧第2周波数制御電圧Vf2
となるように、前記第1周波数制御電圧Vf1及び第2周波数制御電圧Vf2が決定されている。
【0050】
従って、前記チャープ信号がパフォーマンスモニタ6からの応答信号として送信されると、当該チャープ信号の周波数がレーダ装置本体の受信帯域を通過することになる。なお、図4に、チャープ信号の周波数がレーダ装置本体の受信帯域を通過するときの周波数制御信号の範囲(周波数制御信号の電圧がVf_minからVf_maxまで変化する部分)を、符号Aで示す。
【0051】
以上の構成で、パフォーマンスモニタ6に周波数の同調回路を設けなくても、当該パフォーマンスモニタ6からの応答信号をレーダ装置本体に受信させることができる。このように、同調回路を省略することで、パフォーマンスモニタ6の構成を単純化して信頼性を高めることが可能となっている。
【0052】
ところで、周波数制御信号発生器25において、第2周波数制御電圧Vf2から第1周波数制御電圧Vf1まで周波数制御信号を変化させた後は、当該周波数制御信号を前記第2周波数制御電圧Vf2に戻す必要がある。第1周波数制御電圧Vf1から第2周波数制御電圧Vf2まで周波数制御信号の電圧を戻すとき、電圧制御発振器27からは、周波数が第1周波数から第2周波数まで変化する信号(戻り信号)が出力される。
【0053】
ここで、本実施形態においては、前記チャープ信号(周波数が第2周波数から第1周波数まで変化する信号)のみをレーダ装置本体に受信させたいのであって、前記戻り信号(周波数が第1周波数から第2周波数まで連続的に変化する信号)は、いわば不要な信号である。しかしながら、この戻り信号も周波数が連続的に変化する信号であるため、当該戻り信号の周波数がレーダ装置本体の受信帯域を通過する期間がある。従って、この戻り信号もレーダ装置本体に受信され得る。なお、図4に、戻り信号の周波数がレーダ装置本体の受信帯域を通過するときの周波数制御信号の範囲(周波数制御信号の電圧がVf_maxからVf_minまで変化する部分)を、符号Bで示す。
【0054】
この点、本実施形態では、前記戻り信号が応答信号として送信されてしまう時間を可能な限り短くすべく、図4に示すようにノコギリ波状の周波数制御信号を周波数制御信号発生器25から出力している。即ち、第2周波数制御電圧Vf2から第1周波数制御電圧Vf1までは比較的ゆっくりと電圧を変化させ、第1周波数制御電圧Vf1から第2周波数制御電圧Vf2までは急激に電圧を戻している。
【0055】
しかしながら、周波数制御信号はアナログな電圧信号であるから、第1周波数制御電圧Vf1と第2周波数制御電圧Vf2との間を完全に不連続で変化させることはできず、電圧制御発振器27において戻り信号が生成されることを完全に防止することはできない。従って、電圧制御発振器27からの信号を、そのまま応答信号としてPMアンテナ10から送信してしまうと、周波数制御信号の電圧が図4の符号Bの範囲内にある期間に、レーダ装置本体側で不要な戻り信号が受信されてしまう。
【0056】
そこで本実施形態においては、電圧制御発振器27と方向性結合器12との間に可変減衰器(減衰部)28を設け、戻り信号がPMアンテナ10から出力される前に、当該戻り信号を前記可変減衰器28で減衰させることが可能に構成されている。以下、詳細に説明する。
【0057】
本実施形態のパフォーマンスモニタ6は、可変減衰器28の減衰量を制御するための減衰量制御信号を出力する減衰量制御信号発生器26を備えている。具体的には、可変減衰器28は、電圧制御式の可変減衰器として構成されている。減衰量制御信号は、具体的にはアナログ電圧信号である。そして、減衰量制御信号発生器26は、減衰量制御信号の電圧を、チャープ信号用減衰量制御電圧Vacと戻り信号用減衰量制御電圧Varとの間で切り替えることができるように構成されている。
【0058】
可変減衰器28は、減衰量制御信号の電圧がチャープ信号用減衰量制御電圧Vacの場合には、その減衰量が所定のチャープ信号用減衰量となるように構成されている。また、可変減衰器28は、減衰量制御信号の電圧が戻り信号用減衰量制御電圧Varの場合には、その減衰量が所定の戻り信号用減衰量となるように構成されている。また、(戻り信号用減衰量)>(チャープ信号用減衰量)とされている。即ち、可変減衰器28の減衰量をチャープ信号用減衰量とする場合と比べて、戻り信号用減衰量とする場合の方が、パフォーマンスモニタ6から送信される応答信号の出力レベルを、より減衰させることができる。なお、可変減衰器28は、減衰量制御信号の電圧が高いほど、その減衰量を小さくするように構成されている。従って、Vac>Varとなっている。
【0059】
前述のように、減衰量制御信号発生器26には、周波数制御信号発生器25と同様に、コンパレータ24からの送信トリガ信号が入力されている。減衰量制御信号発生器26は、送信トリガ信号をトリガとして、前記可変減衰器28の減衰量を制御するための減衰量制御信号発生させるように構成されている。これにより、周波数制御信号とタイミングを合わせて減衰量制御信号を発生させることができる。即ち、応答信号の周波数変化と同期して、可変減衰器28の減衰量を切り替えることができる。
【0060】
減衰量制御信号発生器26が生成する減衰量制御信号の電圧の経時的な変化の様子を、図4のタイミングチャートに示す。図4に示すように、減衰量制御信号発生器26は、コンパレータ24から送信トリガ信号を受信すると、少なくとも周波数制御信号が符号Aの範囲にある間はチャープ信号用減衰量制御電圧Vacとなり、少なくとも周波数制御信号が符号Bの範囲にある間は戻り信号用減衰量制御電圧Varとなるような減衰量制御信号を生成している。
【0061】
即ち、チャープ信号の周波数がレーダ装置本体の受信帯域を通過するとき(図4の符号Aの期間)に比べて、戻り信号の周波数がレーダ装置本体の受信帯域を通過するとき(図4の符号Bの期間)の方が、可変減衰器28による減衰量が大きくなるように構成されている。これにより、応答信号を受信したレーダ装置の表示器3に表示されるレーダ映像において、チャープ信号に比べて戻り信号が目立たないようにすることができる。勿論、戻り信号用減衰量を十分大きな値とすれば、戻り信号がレーダ装置本体で受信されなくなり、当該戻り信号が表示器3に全く表示されないようにすることができる。
【0062】
なお、可変減衰器28を通過してPMアンテナ10から送信されるチャープ信号は、応答信号としてレーダ装置本体に受信させる必要がある。従って、チャープ信号用減衰量は、応答信号の出力レベルをレーダ装置本体で受信することができるレベル以上に維持できるような、十分小さい減衰量とされる。この点、チャープ信号用減衰量はゼロであっても良い(即ち、可変減衰器28で応答信号を全く減衰させなくても良い)。
【0063】
次に、パフォーマンスモニタ6からの応答信号を受信したレーダ装置本体側の表示器3に表示されるレーダ映像について、図3を参照して説明する。
【0064】
前述のように、パフォーマンスモニタ6は、レーダ装置本体からのレーダ信号を受信してから、コンパレータ24によって送信トリガ信号が生成されるまでは応答信号としてのチャープ信号を送信しないように構成されている。応答信号を受信したレーダ装置本体から見ると、レーダ信号を送信した後に信号を受信することになるので、所定距離離れた位置に存在する物標からのエコーを受信した場合と同様の処理が当該レーダ装置本体側で行われる。即ち、レーダ装置本体がパフォーマンスモニタ6からの応答信号を受信すると、レーダ映像の中心位置(自装置の位置)から所定距離離れた位置に応答信号がプロットされ、当該レーダ映像が表示器3に表示される。そして、レーダアンテナ4を回転させながらレーダ信号を送信し、パフォーマンスモニタ6からの応答信号を受信するという動作を繰り返すことにより、表示器3には、図3に示すように自装置位置を中心にした所定半径の略円弧状の模様が表示される。
【0065】
なお、上記のように(円状ではなくて)略円弧状の模様となるのは、図1に示すように、パフォーマンスモニタ6はケース5の一側面に備えられているので、レーダアンテナ4がパフォーマンスモニタ6から大きく外れた方向を向いているときには、レーダ装置本体とパフォーマンスモニタ6との間で電波の送受信が行われないためである。
【0066】
次に、パフォーマンスモニタ6を使用して表示器3に表示されたレーダ映像(図3に示す)に基づいて、レーダ装置本体の送信強度をオペレータが判定する方法について説明する。
【0067】
前述のように、本実施形態のパフォーマンスモニタ6は、レーダ装置本体から受信したレーダ信号の信号レベルが高いほど、コンパレータ24から送信トリガ信号が出力されるタイミングが遅くなるように構成されている。即ち、レーダ装置本体の送信強度が強いほど、応答信号としてのチャープ信号を送るタイミングを遅らせるように構成されている。これにより、レーダ装置本体の送信強度が強いほど、表示器3に表示される円弧がレーダ映像の中心部から外側に向かって移動した位置に表示される。
【0068】
従って、本実施形態のレーダ装置1においては、パフォーマンスモニタ6の使用時において、表示器3に表示されている円弧の位置をオペレータが確認することで、レーダ装置本体の送信強度がどの程度低下しているかを判断することができる。
【0069】
そして前述のように、本実施形態のレーダ装置1が備えるパフォーマンスモニタ6は、不要な戻り信号を抑圧できるように構成されている。ここで仮に、戻り信号が抑圧されずにレーダ装置本体で受信されると、表示器3には当該戻り信号による余分な円弧が表示されるので、この余分な円弧と、チャープ信号による円弧と、をオペレータが混同してしまう可能性がある。しかしながら、本実施形態では前記余分な円弧が表示器3に表示されることを防止できるので、表示器3に表示された円弧の位置をオペレータが誤認識するおそれがなく、レーダ装置本体の劣化や故障を的確に判断することができる。
【0070】
以上で説明したように、本実施形態のパフォーマンスモニタ6は、レーダ装置本体から受信したレーダ信号に応答して、所定の周波数の応答信号を送信するレーダトランスポンダであって、以下のように構成されている。即ち、このパフォーマンスモニタ6は、周波数制御信号発生器25と、可変減衰器28と、を備える。周波数制御信号発生器25は、電圧制御発振器27に対して周波数制御信号を送信することにより、前記応答信号の周波数を、第2周波数から第1周波数に変化させる動作と、第1周波数から第2周波数に変化させる動作とを実現可能である。可変減衰器28は、前記応答信号の周波数が第1周波数から第2周波数に変化するときの少なくとも図4の符号Bで示す期間は、当該応答信号の出力レベルを減衰させる。
【0071】
即ち、第2周波数から第1周波数まで周波数が変化する応答信号(チャープ信号)を送信したい場合、当該チャープ信号を出力した後、応答信号の周波数を第2周波数まで戻す必要がある。このとき、第1周波数から第2周波数まで周波数が変化する応答信号(戻り信号)が出力される。この戻り信号がレーダ装置側に受信されてしまうことが望ましくない場合、上記のように構成することにより、前記戻り信号を抑圧することができる。
【0072】
また本実施形態のパフォーマンスモニタ6は、以下のように構成されている。即ち、第1周波数から第2周波数までの周波数範囲には、レーダ装置本体の受信帯域が含まれている。可変減衰器28は、前記応答信号の周波数が第1周波数から第2周波数に変化するときにおいて、当該応答信号の周波数が少なくともレーダ装置本体の受信帯域内にあるとき(図4の符号Bで示す期間)には、当該応答信号の出力レベルを減衰させる。また可変減衰器28は、前記応答信号の周波数が第2周波数から第1周波数に変化するときにおいて、当該応答信号の周波数が少なくとも前記レーダ装置本体の受信帯域内にあるとき(図4の符号Aで示す期間)には、当該応答信号の出力レベルを所定の出力レベル以上に維持する。
【0073】
このように、応答信号の周波数を、レーダ装置本体の受信帯域をカバーする範囲内で変化させることで、当該応答信号をレーダ装置本体に確実に受信させることができる。そして、応答信号の周波数を第1周波数から第2周波数に戻すときにおいて、当該周波数がレーダ装置本体の受信帯域内にあるときは可変減衰器28によって出力レベルを減衰させることができるので、不要な戻り信号を抑圧することができる。
【0074】
また、本実施形態のパフォーマンスモニタ6が以上のように構成されていることにより、当該パフォーマンスモニタ6から送信される応答信号は、不要な戻り信号が抑圧されているので、当該応答信号に基づいて、レーダ装置の劣化や故障等を的確に診断することができる。
【0075】
そして、本実施形態のレーダ装置1はこのパフォーマンスモニタ6を備えているので、不要な信号をレーダ装置本体側で受信することが無く、当該不要な信号が表示器3にプロットされて表示されてしまうことを防止できる。従って、当該レーダ装置本体が備える受信回路7や送信回路8の劣化及び故障を、ユーザが的確に判断することができる。
【0076】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同一又は類似の構成については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0077】
上記第1実施形態のパフォーマンスモニタ6は、レーダ装置本体の表示器3に表示された円弧の位置を確認することにより、レーダ装置本体の送信強度を診断することができるように構成されていた。一方、本実施形態のレーダパフォーマンスモニタは、レーダ装置本体の送信強度に加え、当該レーダ装置本体の受信感度も診断することができるように構成したものである。以下、図5のタイミングチャートを参照して具体的に説明する。
【0078】
本実施形態のパフォーマンスモニタにおいても、前記第1実施形態と同様に、レーダ装置本体から受信したレーダ信号の信号レベルが高いほど、コンパレータ24で送信トリガ信号が生成されるタイミングが遅くなるように構成されている。
【0079】
本実施形態のパフォーマンスモニタは、レーダ装置本体からのレーダ信号を受信すると、次のレーダ信号を受信するまでの間に、上記チャープ信号を所定の時間間隔を空けて複数回(具体的には5回)発生させるように構成されている。具体的には、図5に示すように、本実施形態の周波数制御信号発生器25は、送信トリガ信号を受信すると、第2制御電圧Vf2から第1制御電圧Vf1まで電圧値を変化させ、第2制御電圧Vf2まで電圧値を戻すという周波数制御信号を、5回繰り返して出力する。これにより、パフォーマンスモニタの応答信号の周波数を第2周波数から第1周波数まで連続的に変化させ、第2周波数まで戻すという信号生成動作を繰り返し行うことができる。
【0080】
次に、減衰量制御信号発生器26で生成する減衰量制御信号について説明する。第1実施形態において、減衰量制御信号発生器26は、減衰量制御信号の電圧を2段階(チャープ信号用減衰量制御電圧Vacと戻り信号用減衰量制御電圧Var)で切替可能な構成としていた。一方、図5に示すように、本実施形態の減衰量制御信号発生器26は、減衰量制御信号の電圧を6段階で切替可能としている。
【0081】
具体的には、減衰量制御信号の電圧は、前記5回のチャープ信号に対応した5段階のチャープ信号用減衰量制御電圧(第1チャープ信号用減衰量制御電圧Va1、第2チャープ信号用減衰量制御電圧Va2、第3チャープ信号用減衰量制御電圧Va3、第4チャープ信号用減衰量制御電圧Va4、第5チャープ信号用減衰量制御電圧Va5)と、戻り信号用減衰量制御電圧Varと、の6段階で切替可能である。なお、Va1>Va2>Va3>Va4>Va5>Varとなるように設定されている。
【0082】
そして、送信トリガ信号が発生した後の最初のチャープ信号の周波数が少なくともレーダ装置本体の受信帯域を通過するとき(図中の符号A1の期間)には減衰量制御信号の電圧がVa1になるように、2番目のチャープ信号の周波数が少なくともレーダ装置本体の受信帯域を通過するとき(図中の符号A2の期間)には減衰量制御信号の電圧がVa2になるように、・・・というように、5回のチャープ信号に対する減衰量制御信号の電圧が信号生成動作ごとに異なるように構成されている。
【0083】
また、本実施形態においては、送信されるタイミングが遅いチャープ信号に対する減衰量制御信号ほど、電圧が小さくなるように構成されている。即ち、前記5回分のチャープ信号の中で、送信されるタイミングの遅いチャープ信号ほど、大きい減衰量で減衰される。これにより、PMアンテナ10から出力される5回のチャープ信号の出力レベルが段階的に小さくなっていくように構成されている。
【0084】
一方、5回のチャープ信号を発生させた後に発生する戻り信号の周波数が少なくともレーダ装置本体の受信帯域を通過するとき(図中の符号Bの期間)には、減衰量制御信号の電圧が戻り信号用減衰量制御電圧Varになるように構成されている。前述のように、この戻り信号用減衰量制御電圧Varは、5回のチャープ信号に対応するそれぞれのチャープ信号用制御電圧Va1〜Va5よりも低い。即ち、5回分の戻り信号のそれぞれの減衰量は、5回分のチャープ信号のそれぞれの減衰量よりも大きい。これにより、5回分のチャープ信号に対応して発生する5回分の戻り信号をそれぞれ適切に抑圧することができる。
【0085】
次に、本実施形態のパフォーマンスモニタからの応答信号(複数回分のチャープ信号)を受信したレーダ装置本体側の表示器3に表示されるレーダ映像について、図6を参照して説明する。
【0086】
前述のように、本実施形態のパフォーマンスモニタは、レーダ装置本体からのレーダ信号を受信すると、所定の時間間隔を空けて複数のチャープ信号を送信するように構成されている。これにより、図6に示すように複数本の円弧が表示器3に表示される。
【0087】
次に、パフォーマンスモニタを使用して表示器3に表示されたレーダ映像に基づいて、レーダ装置本体の送信強度及び受信感度をオペレータが判定する方法について説明する。
【0088】
前述したように、本実施形態のパフォーマンスモニタにおいても、第1実施形態と同様に、レーダ装置本体の送信強度が強いほど、応答信号としてのチャープ信号を送るタイミングを遅らせるように構成されている。これにより、レーダ装置本体の送信強度が強いほど、表示器3に表示される複数の円弧がレーダ映像の中心部から外側に向かって移動した位置に表示される。
【0089】
従って、本実施形態のレーダ装置1においては、パフォーマンスモニタの使用時において、表示器3に表示されている複数の円弧のうち、一番内側の円弧の位置をオペレータが確認することで、レーダ装置本体の送信強度がどの程度低下しているかを判断することができる。
【0090】
また前述のように、本実施形態においては、5回分のチャープ信号の中で、送信されるタイミングの遅いチャープ信号ほど、大きく減衰されて送信されるように構成されている。従って、表示器3に表示される前記複数本の円弧のうち、内側の円弧は減衰量の小さい(出力レベルの強い)チャープ信号に対応し、外側の円弧は減衰量の大きい(出力レベルの弱い)チャープ信号に対応する。ここで、レーダ装置本体側の受信感度が低下してくると、出力レベルの弱い信号から順に検出できなくなり、外側の円弧から順に表示器3に表示されなくなる。例えば図3においては、4本の円弧しか表示されておらず、内側から数えて5本目の円弧、即ち最も外側の円弧をレーダ映像上で目視で確認することができない。
【0091】
従って、本実施形態のレーダ装置1においては、パフォーマンスモニタの使用時において、表示器3に表示されている円弧の数をオペレータが確認することで、レーダ装置本体の受信感度がどの程度低下しているかを判断することができる。
【0092】
以上で説明したように、本実施形態のパフォーマンスモニタは、以下のように構成されている。即ち、周波数制御信号発生器25は、前記応答信号の周波数を、第2周波数から第1周波数まで変化させる動作と、前記第1周波数から前記第2周波数まで変化させる動作と、からなる信号生成動作を複数回行うように構成される。可変減衰器28は、前記第2周波数から前記第1周波数まで変化させた前記応答信号を前記複数回の信号生成動作ごとに異なる減衰量で減衰させる。そして、前記第1周波数から前記第2周波数まで変化するときの前記応答信号に対する減衰量が、前記複数回の信号生成動作ごとに与えられる減衰量よりも大きくなるように構成されている。
【0093】
これにより、異なる信号レベルの応答信号を送信することができる。更に、可変減衰器が、不要な戻り信号を除去する機能と、応答信号の信号レベルを変化させる機能と、の両方の役割を兼ねるため、構成を簡素化して安価なレーダトランスポンダを得ることができる。
【0094】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、本発明のレーダトランスポンダを上述のSART(捜索救助用レーダトランスポンダ)として採用したものである。なお本実施形態のSARTのブロック図等は省略するが、SARTにおいては受信したレーダ信号の信号レベルに応じて応答信号を送信するタイミングを遅らせる必要はないので、第1実施形態及び第2実施形態のパフォーマンスモニタが備えるピークホールド回路22、ノコギリ波発生器23及びコンパレータ24等は省略することができる。
【0095】
SARTは、遭難時に、付近を航行する船舶や航空機等に対して自分の位置を知らせるための装置である。自船が遭難した際にSARTの電源が入れられると、当該SARTは、船舶や航空機のレーダ装置からのレーダ信号を受信して、当該レーダ信号と同じ周波数帯のSART信号を発信する。ここで、同期回路を省略して信頼性を高めつつ、他の船舶又は航空機にSART信号を確実に検出してもらうため、前記SART信号としてチャープ信号を用いる。また、前記チャープ信号は、第2実施形態のパフォーマンスモニタと同様に、複数回(例えば十数回)送信される。なおSARTにおいては、複数回分のチャープ信号の信号レベルを徐々に低下させるという第2実施形態の構成は必要ないので、これを省略することができる。
【0096】
救助活動を行っている船舶や航空機のレーダ装置が前記SART信号を受信すると、当該レーダ装置の表示器には、例えば図7に示すように、レーダ映像の距離方向に並んだ短い縞状のパターンが表示される。このようなパターンが現れた場合、そのパターンの先頭(距離方向内側の端部)に、SARTが存在することになる。従って、図7の例では、点線の円で示す位置に遭難船があると推定することができる。
【0097】
救助活動を行う船舶や航空機のレーダ装置のオペレータは、前記縞状のパターンをレーダ映像の中に見つけることにより、遭難船の存在及び位置を把握する。ここで、仮にチャープ信号とともに戻り信号が検出されてしまうと、表示器に表示される特徴的な縞状のパターンをオペレータが認識しにくくなり、遭難船を発見できないおそれがある。
【0098】
この点、本発明のレーダトランスポンダをSARTとして用いることにより、発振器が戻り信号を出力する際には可変減衰器の減衰量を上昇させて、SARTのアンテナから戻り信号が送信されることを抑圧することができる。この結果、戻り信号が表示器に表示されることを抑止することができるので、余分な信号が表示されず、SART信号の特徴的な表示パターンをオペレータが認識し易くすることができる。
【0099】
以上で説明したように、本発明のレーダトランスポンダは、捜索救助用レーダトランスポンダ(SART)として構成することもできる。
【0100】
この捜索救助用レーダトランスポンダから送信される信号は、不要な戻り信号が抑圧されているので、当該捜索救助用レーダトランスポンダからの信号に基づいて、遭難船等の捜索を的確に行うことができる。
【0101】
以上の本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記の構成は例えば以下のように構成することができる。
【0102】
周波数制御信号はノコギリ波状としたが、これに限らず、例えば逆ノコギリ波状の信号でも良い。また、本発明においては、戻り信号(第1周波数から第2周波数に周波数を変化させる部分)は可変減衰器によって減衰させているから、必ずしも第1周波数から第2周波数まで急激に変化させて戻り信号が送信される時間を短縮する必要は無い。従って、周波数制御信号は例えば三角波状の信号でも良い。
【0103】
第1実施形態のレーダパフォーマンスモニタは船舶用レーダ装置に用いられているが、本発明は、船舶用以外のレーダ装置にも適用することができる。
【0104】
上記実施形態のパフォーマンスモニタにおいて、PMアンテナは送受信で共通の構成としたが、送信用のアンテナと受信用のアンテナを別々に備える構成としても良い。
【0105】
上記の可変減衰器はアナログ電圧で制御するタイプとしたが、これに限らず、減衰量を切り替えることができる減衰器であればどのようなものでも良い。また、パフォーマンスモニタの発振器は電圧制御発振器としたが、これに限らず、周波数を変更できる発振器であれば任意の構成のものを使用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 レーダ装置
2 アンテナユニット
3 表示器
4 レーダアンテナ
5 ケース
6 パフォーマンスモニタ(レーダパフォーマンスモニタ、レーダトランスポンダ)
10 PMアンテナ(アンテナ)
13 受信部
14 送信部
25 周波数制御信号発生器(発振制御部)
27 電圧制御発振器
28 可変減衰器(減衰部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ装置から受信したレーダ信号に応答して、所定の周波数の応答信号を送信するレーダトランスポンダであって、
前記応答信号の周波数を、所定の第2周波数から所定の第1周波数に変化させる動作と、前記第1周波数から前記第2周波数に変化させる動作と、を実現する発振制御部と、
前記応答信号の周波数が前記第1周波数から前記第2周波数に変化するときの少なくとも一部の期間に、当該応答信号の出力レベルを減衰させる減衰部と、
を備えることを特徴とするレーダトランスポンダ。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダトランスポンダであって、
前記第1周波数から前記第2周波数までの周波数範囲には、前記レーダ装置の受信帯域が含まれており、
前記減衰部は、前記応答信号の周波数が前記第1周波数から前記第2周波数に変化するときにおいて、当該応答信号の周波数が少なくとも前記レーダ装置の受信帯域内にあるときには、当該応答信号の出力レベルを減衰させ、
前記減衰部は、前記応答信号の周波数が前記第2周波数から前記第1周波数に変化するときにおいて、当該応答信号の周波数が少なくとも前記レーダ装置の受信帯域内にあるときには、当該応答信号の出力レベルを所定の出力レベル以上に維持することを特徴とするレーダトランスポンダ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーダトランスポンダであって、
前記発振制御部は、前記応答信号の周波数を、前記第2周波数から前記第1周波数まで変化させる動作と、前記第1周波数から前記第2周波数まで変化させる動作と、からなる信号生成動作を複数回行うように構成され、
前記減衰部は、前記第2周波数から前記第1周波数まで変化させた前記応答信号を前記複数回の信号生成動作ごとに異なる減衰量で減衰させる可変減衰器であり、
前記応答信号の周波数が前記第1周波数から前記第2周波数まで変化するときに対する減衰量が、前記複数回の信号生成動作ごとに与えられる減衰量よりも大きくなるように構成されていることを特徴とするレーダトランスポンダ。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のレーダトランスポンダであって、
レーダパフォーマンスモニタとして構成されたことを特徴とするレーダトランスポンダ。
【請求項5】
請求項1から3までの何れか一項に記載のレーダトランスポンダであって、
捜索救助用レーダトランスポンダとして構成されたことを特徴とするレーダトランスポンダ。
【請求項6】
請求項1から4までの何れか一項に記載のレーダトランスポンダを備えることを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−43351(P2011−43351A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190129(P2009−190129)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】