説明

レーダ装置、及びターゲットの速度進行方向推定方法

【課題】特に、ターゲットの速度が遅いときに、精度の高いターゲットの速度、及び進行方向を推定できるレーダ装置を提供する。
【解決手段】ターゲットの速度、及び進行方向を推定して衝突予測を行うレーダ装置であって、所定の時間一定の周期でターゲットを捕捉するターゲット捕捉部と、ターゲット捕捉部が捕捉した捕捉点に基づいて、ターゲットの速度、及び進行方向を推定して衝突を予測する衝突予測部と、衝突予測部の推定したターゲットの速度が所定速度以下である場合、推定したターゲットの速度に応じてターゲットを捕捉する時間を増加させて捕捉点の数を増加させるターゲット捕捉制御部とを備え、衝突予測部は、前記ターゲット捕捉制御部が捕捉点の数を増加させた後の全ての捕捉点に基づいて、ターゲットの速度、及び進行方向を推定して衝突を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置、及びターゲットの速度進行方向推定方法に関し、より特定的には、特に、ターゲットの速度が遅いときに、精度の高いターゲットの速度、及び進行方向推定ができるレーダ装置、ターゲットの速度進行方向推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーダ装置において、レーダによって捕捉したターゲットの捕捉点に基づいて、ターゲットの速度、及び進行方向を推定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、捕捉点の位置を位置微分することにより、ターゲットの速度を求め、捕捉点の軌跡を直線近似することにより、ターゲットの進行方向を求める。
【特許文献1】特開2006−133956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の技術では、ターゲットの速度、及び進行方向の推定において、捕捉点の数は固定値を使用していたため、レーダによって補足したターゲットの捕捉点のバラツキの影響を大きく受けていた。特に、ターゲットの速度が遅い場合には、その捕捉点のバラツキの影響はより大きくなる。そのため、精度よくターゲットの速度、及び進行方向を推定するには改善の余地がある。
【0004】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされた。すなわち、特に、ターゲットの速度が遅いときに、精度の高いターゲットの速度、及び進行方向を推定できるレーダ装置、及びターゲットの速度進行方向推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の局面は、ターゲットの速度、及び進行方向を推定して衝突予測を行うレーダ装置に向けられている。本発明は、所定の時間一定の周期でターゲットを捕捉するターゲット捕捉部と、ターゲット捕捉部が捕捉した捕捉点に基づいて、ターゲットの速度、及び進行方向を推定して衝突を予測する衝突予測部と、衝突予測部の推定したターゲットの速度が所定速度以下である場合、推定したターゲットの速度に応じてターゲットを捕捉する時間を増加させて捕捉点の数を増加させるターゲット捕捉制御部とを備え、衝突予測部は、前記ターゲット捕捉制御部が捕捉点の数を増加させた後の全ての捕捉点に基づいて、ターゲットの速度、及び進行方向を推定する。
【0006】
これにより、ターゲットの速度、及び進行方向を推定する捕捉点の数を増加させるため、特に、ターゲットの速度が遅いときに、精度の高いターゲットの速度、及び進行方向推定ができるレーダ装置を提供することができる。
【0007】
また、ターゲット捕捉制御部は、前記衝突予測部が推定したターゲットの速度が遅くなるに連れて、階段状に捕捉点の数を増加させることが好ましい。
【0008】
これにより、ターゲットの速度、及び進行方向を推定する捕捉点の数をターゲットの速度が遅くなるに連れて階段状に増加させるため、特に、ターゲットの速度が遅いときに、精度の高いターゲットの速度、及び進行方向推定ができるレーダ装置を提供することができる。
【0009】
また、ターゲット捕捉部は、ミリ波レーダであることが好ましい。
【0010】
本発明の第2の局面は、ターゲットの速度進行方向推定方法に向けられている。本発明は、所定の時間一定の周期でターゲットを捕捉するターゲット捕捉ステップと、ターゲット捕捉ステップで捕捉した捕捉点に基づいて、ターゲットの速度、及び進行方向を推定して衝突を予測する衝突予測ステップと、衝突予測ステップで推定したターゲットの速度が所定速度以下である場合、推定したターゲットの速度に応じてターゲットを捕捉する時間を増加させて捕捉点の数を増加させるターゲット捕捉制御ステップとを備え、衝突予測ステップでは、ターゲット捕捉制御ステップで捕捉点の数を増加させた後の全ての捕捉点に基づいて、ターゲットの速度、及び進行方向を推定する。
【0011】
これにより、ターゲットの速度、及び進行方向を推定する捕捉点の数を増加させるため、特に、ターゲットの速度が遅いときに、精度の高いターゲットの速度、及び進行方向推定ができるターゲットの速度進行方向推定方法を提供することができる。
【0012】
また、ターゲット捕捉制御ステップでは、前記衝突予測ステップで推定したターゲットの速度が遅くなるに連れて、階段状に捕捉点の数を増加させることが好ましい。
【0013】
これにより、ターゲットの速度、及び進行方向を推定する捕捉点の数をターゲットの速度が遅くなるに連れて階段状に増加させるため、特に、ターゲットの速度が遅いときに、精度の高いターゲットの速度、及び進行方向推定ができるターゲットの速度進行方向推定方法を提供することができる。
【0014】
また、ターゲット捕捉ステップでは、ミリ波レーダによってターゲットを捕捉することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、ターゲットの速度、及び進行方向を推定するための捕捉点の数を増加させるので、特に、ターゲットの速度が遅いときに、精度の高いターゲットの速度、及び進行方向推定ができるレーダ装置、及びターゲット速度進行方向推定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態に係るレーダ装置について、図面に従って詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係るレーダ装置100の全体構成を示すブロック図である。図1において、レーダ装置100は、ターゲット捕捉部110、衝突予測部120、及びターゲット捕捉制御部130を備える。
【0018】
ターゲット捕捉部110は、ミリ波レーダである。例えば、複数の素子アンテナを所定の間隔で配列したアレーアンテナであって、アレー配列の一端に位置し空間に電波を送出する送信素子アンテナを備え、電磁波であるミリ波を自車周辺に照射する。また、電波を受信する受信素子アンテナを備え、ミリ波を照射することによって自車周辺のターゲットから反射される反射波を受信する。受信した反射波に基づいて、所定時間一定の周期でターゲットを捕捉する。捕捉したターゲットの捕捉点を保持する。
【0019】
衝突予測部120は、ターゲット捕捉部110が捕捉した捕捉点に基づいて、位置微分、及びフィルタ処理により、ターゲットの速度を推定すると共に、直線近似により、ターゲットの進行方向を推定し、ターゲットの速度、及び進行方向を推定して衝突を予測する。
【0020】
ターゲット捕捉制御部130は、衝突予測部120の推定したターゲットの速度が所定速度以下である場合、推定したターゲットの速度に応じてターゲットを捕捉する時間を増加させて捕捉点の数を増加させる。衝突予測部120は、ターゲット捕捉制御部130が捕捉点の数を増加させた後の全ての捕捉点に基づいて、ターゲットの速度、及び進行方向を推定して衝突を予測する。
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係るレーダ装置100の動作について図2のフロー図に従って説明する。
【0022】
まず、ターゲット捕捉部110は、所定時間一定の周期でターゲットを捕捉し、その捕捉点を保持する(ステップS201)。ここでは、N個の捕捉点を保持するとする。
【0023】
次に、衝突予測部120は、ターゲット捕捉部110が捕捉して保持するN個の捕捉点に基づいて、位置微分、及びフィルタ処理により、ターゲットの速度を推定する(ステップS202)。
【0024】
次に、衝突予測部120は、推定したターゲットの速度が所定速度以下であるか否かを判定する(ステップS203)。
【0025】
ステップS203において、ターゲットの速度が所定速度以下であると判定された場合、ターゲット捕捉制御部130は、ターゲットを捕捉する時間を増加させて捕捉点を増加させる(ステップS204)。ここでは、捕捉点をn個増加させるものとする。なお、例えば、推定したターゲットの速度が60km/h〜80km/hのときは、捕捉点を2個増加させ、40km/h〜60km/hのときは、捕捉点を4個増加させ、20km/h〜40km/hのときは、捕捉点を6個増加させるなど、ターゲットの速度が遅くなるに連れて捕捉点の数を階段状に増加させる構成としてもよい。
【0026】
次に、衝突予測部120は、ターゲット捕捉制御部130が捕捉点の数をn個増加させた後のN+n個の全ての捕捉点に基づいて、位置微分、及びフィルタ処理により、ターゲットの速度を推定すると共に、図3に示すような直線近似により、ターゲットの進行方向を推定し、衝突予測を行う(ステップS205)。
【0027】
一方、ステップS203において、ターゲットの速度が所定速度より大きいと判定された場合、衝突予測部120は、N個の捕捉点に基づいて、位置微分、及びフィルタ処理により、ターゲットの速度を推定すると共に、直線近似により、ターゲットの進行方向を推定し、衝突予測を行う(ステップS203→S205)。
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、ターゲットの速度、及び進行方向を推定する捕捉点の数を増加させるため、特に、ターゲットの速度が遅いときに、精度の高いターゲットの速度、及び進行方向推定ができるレーダ装置、及びターゲット速度進行方向推定方法を提供することができる。
【0029】
また、ターゲットの速度、及び進行方向を推定する捕捉点の数をターゲットの速度が遅くなるに連れて階段状に増加させた場合、特に、ターゲットの速度が遅いときに、精度の高いターゲットの速度、及び進行方向推定ができるレーダ装置、及びターゲット速度進行方向推定方法を提供することができる。
【0030】
上記実施の形態で説明した構成は、単に具体例を示すものであり、本願発明の技術的範囲を制限するものではない。本願の効果を奏する範囲において、任意の構成を採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、特に、ターゲットの速度が遅いときに、精度の高いターゲットの速度、及び進行方向を推定できるレーダ装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係るレーダ装置の全体構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態に係るレーダ装置の動作を示すフロー図
【図3】直線近似によるターゲットの進行方向推定の様子を示す模式図
【符号の説明】
【0033】
100 レーダ装置
110 ターゲット捕捉部
120 衝突予測部
130 ターゲット捕捉制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットの速度、及び進行方向を推定して衝突予測を行うレーダ装置であって、
所定の時間一定の周期でターゲットを捕捉するターゲット捕捉部と、
前記ターゲット捕捉部が捕捉した捕捉点に基づいて、ターゲットの速度、及び進行方向を推定して衝突を予測する衝突予測部と、
前記衝突予測部の推定したターゲットの速度が所定速度以下である場合、推定したターゲットの速度に応じてターゲットを捕捉する時間を増加させて捕捉点の数を増加させるターゲット捕捉制御部とを備え、
前記衝突予測部は、前記ターゲット捕捉制御部が捕捉点の数を増加させた後の全ての捕捉点に基づいて、ターゲットの速度、及び進行方向を推定する、レーダ装置。
【請求項2】
前記ターゲット捕捉制御部は、前記衝突予測部が推定したターゲットの速度が遅くなるに連れて、階段状に捕捉点の数を増加させることを特徴とする、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記ターゲット捕捉部は、ミリ波レーダであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
ターゲットの速度進行方向推定方法であって、
所定の時間一定の周期でターゲットを捕捉するターゲット捕捉ステップと、
前記ターゲット捕捉ステップで捕捉した捕捉点に基づいて、ターゲットの速度、及び進行方向を推定して衝突を予測する衝突予測ステップと、
前記衝突予測ステップで推定したターゲットの速度が所定速度以下である場合、推定したターゲットの速度に応じてターゲットを捕捉する時間を増加させて捕捉点の数を増加させるターゲット捕捉制御ステップとを備え、
前記衝突予測ステップでは、前記ターゲット捕捉制御ステップで捕捉点の数を増加させた後の全ての捕捉点に基づいて、ターゲットの速度、及び進行方向を推定する、ターゲットの速度進行方向推定方法。
【請求項5】
前記ターゲット捕捉制御ステップでは、前記衝突予測ステップで推定したターゲットの速度が遅くなるに連れて、階段状に捕捉点の数を増加させることを特徴とする、請求項4に記載のターゲットの速度進行方向推定方法。
【請求項6】
前記ターゲット捕捉ステップでは、ミリ波レーダによってターゲットを捕捉することを特徴とする、請求項4又は5に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−71855(P2010−71855A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240898(P2008−240898)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】