レーダ装置、及び物標検出方法
【課題】レーダ波の周波数変調を行わないスキャンのときに物標の速度が急変したとしても、次回のスキャンで実際に検出される物標の距離が乖離しないような距離の予測を行う。
【解決手段】過去の検出物標の距離と速度とに基づき現在の距離を予測する物標距離予測手段と、予測された距離に対応する物標が検出されないときは、予測された距離に対応する物標が検出された回数をカウントし、前記カウントの値が規定数に達したときに、前記検出された物標の距離を出力する連続性判定手段と、周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信した場合には、予測された距離と、そのスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する物標推定手段を有するレーダ装置により、次回のスキャンで検出される距離と乖離しない距離を予測することが可能となる。
【解決手段】過去の検出物標の距離と速度とに基づき現在の距離を予測する物標距離予測手段と、予測された距離に対応する物標が検出されないときは、予測された距離に対応する物標が検出された回数をカウントし、前記カウントの値が規定数に達したときに、前記検出された物標の距離を出力する連続性判定手段と、周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信した場合には、予測された距離と、そのスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する物標推定手段を有するレーダ装置により、次回のスキャンで検出される距離と乖離しない距離を予測することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数変調を施したレーダ波を送受信して所定領域をスキャンし、前記スキャンごとに物標の距離または速度を検出するレーダ装置及び物標検出方法に関し、特に、過去のスキャンで検出された物標の距離と速度とに基づき現在のスキャンでの当該物標の距離を予測する物標距離予測手段と、前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出されないときは、前記予測された距離と前記過去のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する物標推定処理を行う物標推定手段と、前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出された回数をカウントし、前記カウントの値が規定数に達したときに、前記検出された物標の距離を出力する連続性判定手段とを有するレーダ装置、及び物標検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両前方をスキャンして先行車両などの物標を検出する、車載用のレーダ装置が知られている。かかるレーダ装置は、送信したレーダ波の反射波を受信し、反射波のピークが形成される方位角において、レーダ波を反射した先行車両を検出する。また、かかるレーダ装置は、レーダ波を送信する際、これをFM−CW(Frequency Modulated-Continuous Wave)方式で周波数変調して送信し、送受信波の周波数差から、先行車両の距離、速度を検出する。そして、レーダ装置は、先行車両の方位角、距離、速度などの情報を、車両の動作を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)に出力する。すると、車両ECUが、これらの情報に基づき、車間距離を一定に保つように追従走行制御を行う。
【0003】
車載用のレーダ装置は、車両ECUへ出力する物標の情報の信頼性を担保するため、連続したスキャンにおいて継続して検出できた、つまり、連続性の履歴を有する物標の情報のみを出力する。具体的には、レーダ装置は、前回のスキャンで検出された物標(以下、「前回検出物標」という)の距離、速度から現在の物標の距離を予測し、予測された距離と一致または誤差の少ない距離に対応する物標が今回のスキャンで検出されたときに、今回のスキャンで検出された物標(以下、「今回検出物標」という)は連続性を有すると判定する。そして、レーダ装置は、連続性を有すると判定した回数が規定回数に達したときに、最新の物標の方位角、速度、距離等の情報を出力する。
【0004】
上記のような連続性の判定手順において、ある程度連続性の履歴を有する物標が、反射面の角度が変動するなどして反射波の受信レベルが低下することにより検出されない場合がある。すなわち、物標がロストされる場合がある。すると、その時点で連続性の履歴が中断するので、仮に将来のスキャンで同じ物標が再度検出されるときには、新規の物標として検出される。すると、レーダ装置がその物標の情報を出力するためには、再度、規定回数にいたるまで連続性の履歴を必要とするので、物標の情報が車両ECUに出力される時期が遅くなる。
【0005】
よって、かかる事態を防ぐため、前回検出物標から、ロストした物標を推定する方法が提案されている。具体的には、前回検出物標の方位角、速度、及び予測された距離に対応する物標が検出されたものと推定する。なお、このようして推定された今回スキャンでの物標を、以下では「今回推定物標」という。かかる方法によれば、物標をロストしたときには、推定された物標に基づいて次回のスキャンでの物標の距離を予測でき、次回のスキャンで物標が再度検出されたときに連続性の履歴を維持できる。よって、出力時期の遅れを防ぐことができる。その一例として、特許文献1には、前回検出物標の位置、速度から、今回のスキャンでのその物標の位置を推定するレーダ装置の例が記載されている。
【特許文献1】特開2004−226120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車載用のレーダ装置は、その動作の信頼性を担保するため、定期的に自らの故障診断を行う。具体的には、レーダ装置は、10〜20回のスキャンにつき1回の頻度で、レーダ波の周波数変調を行わないスキャンを実行する。そして、レーダ装置は、路面による反射波の受信レベルが予め設定した閾値を超えるか否かにより、自らの動作の正常・異常を診断する。すると、従来のレーダ装置は、かかる故障診断処理を行うスキャンでは物標の検出を休止するので、過去に検出された物標についてこれをロストした場合の推定処理を行うことにより、次回のスキャンで再度同じ物標を検出したときにその連続性の履歴が維持できるようにする。
【0007】
しかしながら、この場合、例えば先行車両が急ブレーキをかけるなどしてその速度が急変すると、今回推定物標から予測される距離と、次回のスキャンで実際に検出される物標の距離とが大きく乖離し、連続性の履歴が中断されるおそれがある。すると、物標の情報を出力する時期が遅れてしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、レーダ波の周波数変調を行わないスキャンのときに物標の速度が急変したとしても、次回のスキャンで実際に検出される物標の距離が乖離しないような距離の予測を行うことが可能なレーダ装置と、その物標検出方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面におけるレーダ装置は、周波数変調を施した第1のレーダ波を送受信して所定領域をスキャンし、前記スキャンごとに物標の距離と速度を検出するレーダ装置であって、過去のスキャンで検出された物標の距離と速度とに基づき現在のスキャンでの当該物標の距離を予測する物標距離予測手段と、前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出された回数をカウントし、前記カウントの値が規定数に達したときに、前記検出された物標の距離を出力する連続性判定手段と、前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出されないときは、前記予測された距離と前記過去のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する第1の物標推定処理を行う物標推定手段とを有する。そして、前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、前記予測された距離と当該現在のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する第2の推定処理を行うことを特徴とする。
【0010】
上記側面の好ましい実施態様によれば、前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、検出された前記速度が規定速度のときに、前記第2の物標推定処理を行うことを特徴とする。
【0011】
上記側面の別の好ましい実施態様によれば、前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、過去のスキャンで検出された物標の方位角に一致する方位角を有する規定数の物標が検出されたときに、前記第2の物標推定処理を行うことを特徴とする。なお、過去のスキャンで検出された物標の方位角に一致する方位角は、過去のスキャンで検出された物標の方位角との誤差が所定の許容範囲に含まれる方位角を含む。
【0012】
上記側面のさらに好ましい実施態様によれば、前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、受信された前記第2のレーダ波のレベルに基づき、検出される前記速度に重み付けをして前記第2の物標推定処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記側面によれば、前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、前記予測された距離と当該現在のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定するので、前回のスキャンの後物標の速度が急変しても、これを今回のスキャンでの推定処理に反映できる。よって、当該推定結果に基づき、次回のスキャンで検出される距離と乖離しない距離を予測することが可能となる。よって、連続性の履歴が中断することによる物標の情報を出力する時期の遅れを防ぐことができる。
【0014】
上記の好ましい実施態様によれば、前記物標推定手段は、検出された前記速度が規定速度のとき、つまり、路面や静止物に対応する速度でないときに、前記物標推定処理を行うので、路面や静止物を物標として検出することを防ぐことができる。路面や静止物を誤って物標として推定すると、次回のスキャンで検出される物標の連続性の履歴が中断するおそれがあるが、本実施態様によれば、かかる事態を回避できる。
【0015】
上記の別の好ましい実施態様によれば、前記物標推定手段は、過去のスキャンで検出された物標の方位角に一致する方位角を有する規定数の物標が検出されたときに、前記第2の物標推定処理を行う。ここで、規定数を単数に設定しておけば、方位角が近似していても速度が異なる複数の物標を検出した場合には物標推定処理を中止できるので、過去に検出された物標に対応して異なる複数の物標を推定することにより、異なった物標間で連続性を判定し、誤った物標の情報を出力するといった事態を防ぐことができる。
【0016】
上記のさらに好ましい実施態様によれば、前記物標推定手段は、受信された前記第2のレーダ波のレベルに基づき、検出された前記速度に重み付けをして前記物標推定処理を行う。すなわち、受信波のレベルが低い場合は、他の物標からの反射波による干渉や種々のノイズの影響を受けやすく、検出される物標の速度の信頼性が低くなる。よって、かかる場合は、今回検出される速度を物標推定処理に反映させる割合を小さくすることにより、推定結果の信頼性が低下することを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0018】
図1は、本実施形態におけるレーダ装置が車両に搭載されたときの使用状況を説明する図である。本実施形態におけるレーダ装置10は、車両1の前部フロントグリル内に搭載され、車両1前面のバンパーやフロントグリル、ナンバープレート板脇などに設けられるレドームを透過してレーダ波の送受信を行い、車両1前方Fを中心とする角度範囲α(例えば、前方Fを中心として±8度)で定まる領域をスキャンする。
【0019】
なお、本実施形態では、レーダ装置10は、レーダ波を送受信するアンテナを揺動させることにより角度範囲αをスキャンする、メカニカルスキャン式のレーダ装置を例とするが、複数アンテナで送受信するレーダ波の位相差を利用してスキャンを行う電子スキャン式のレーダ装置であってもよい。
【0020】
図2は、レーダ装置10が送信するレーダ波の周波数変調モードについて説明する図である。本実施形態では、レーダ装置10が車両1前方の角度範囲αを1回走査する期間を1スキャンとする。そして、図2では、レーダ波の時間に対する周波数変化が示される。
【0021】
CWモードのスキャンは、故障検出を目的として、路面からの反射波のレベルを検出するために実行される。よって、故障検出の機会を確保するため、レーダ装置10は、これら2つのモードのスキャンを、定期的に切り替えて実行する。具体的には、CWモードのスキャンは、FM−CWモードのスキャンが例えば10〜20回実行されるごとに1回の頻度で実行される。
【0022】
図3は、各スキャンモードでの、物標の距離等を検出する原理を説明する図である。
FM−CWモードのスキャンでは、レーダ波を反射する物標の方位角、距離、速度が検出される。
【0023】
まず、レーダ波の周波数は、図3(A)の実線W1で示すように、周波数fm、振幅ΔFの三角波に従って、その上昇期間UPで漸増し、下降期間DNで漸減する。そして、このレーダ波が物標により反射されると、点線W2で示すように、物標の距離に応じた時間的遅れΔTと、物標の速度(相対速度)に応じたドップラ周波数ΔDとに対応する周波数偏移を受けて、レーダ装置10により受信される。
【0024】
ここで、物標の方位角は、次のようにして検出される。レーダ装置10が上記の角度範囲αをスキャンする際、単位方位角(例えば1度)ごとに一対の上昇期間UPと下降期間DNが対応するように上記のレーダ波を送受信する。そして、反射波が得られる隣接した方位角において、上昇期間UPに対応する反射波の受信レベルと、下降期間DNに対応する反射波の受信レベルとがそれぞれピークを形成する方位角の例えば平均の方位角が、物標の方位角として検出される。
【0025】
また、物標の距離、速度は、次のようにして検出される。上記のような送受信波をミキシングして得られるビート信号の周波数は、両者の周波数差に対応して、図3(B)の実線B1で示すように時間に対し変化する。すなわち、上昇期間UPでは周波数fu、下降期間DNでは周波数fdとなる。そして、これらの周波数から、物標の距離Rと速度Vfは、次の式により算出される(なお、Cは光速、f0は送信されるレーダ波の中心周波数である)。
R=C・(fu+fd)/(8・ΔF・fm)
Vf=C・(fd−fu)/(4.f0)
CWモードのスキャンでは、物標の方位角と速度が検出される。
【0026】
CWモードのスキャンでは一定の周波数で角度範囲αがスキャンされるので、物標の方位角は、反射波の到来方向から検出される。また、物標の速度は、次のようにして検出される。
【0027】
レーダ波の周波数は、図3(C)の実線C1に示すように、一定の周波数fcに固定される。そして、このレーダ波が物標により反射されると、受信波の周波数は点線C2に示すように、物標の速度に応じたドップラ周波数fpだけ変移する。
【0028】
すると、このときの送受信波をミキシングして得られるビート信号の周波数は、図3(D)の実線BS2で示すように、ドップラ周波数fpとなる。そして、このドップラ周波数fpから、物標の速度Vcは次の式により算出される。
Vc=C・fp/(2・fc)
また、レーダ装置10は、上記の原理を用いて、CWモードのスキャンのときに故障診断を実行する。その方法は、次のとおりである。
【0029】
車載用のレーダ装置においては、アンテナの感度低下や回路部品の接続不良といった不具合が、反射波の受信レベル低下として表れる。よって、同一の物標から得られる反射波のレベル変化を定期的に監視することにより、かかる不具合を検出できる。この点、車載用のレーダ装置においては、路面からの反射波のレベルが最も安定していることに着目し、そのレベルを監視する。
【0030】
CWモードのスキャンでは、上記のように、物標からの反射波に基づくビート信号を処理することで、その物標の速度に対応するドップラ周波数の成分が検出される。ここで、路面は静止しているので、その速度は自車両の速度から求められる。よって、自車両の速度をパラメータにして、これに対応するドップラ周波数をマップ演算などにより求めることにより、ビート信号からそのドップラ周波数に対応する成分のレベル、つまり路面による反射波の受信レベルが検出される。そして、レーダ装置10は、そのレベルが予め実験結果等に基づき設定した閾値を下回ったときに、故障と診断する。
【0031】
さらに、本実施形態においては、レーダ装置10は、CWモードのときに、先行車両などの物標の速度をさらに検出する。
【0032】
ここで、各モードのスキャンでレーダ装置10が検出する物標の情報の種類を、図4に示す。すなわち、レーダ装置10は、FM−CWモードのスキャンfS_n(n=1、2、3、…)で、方位角A_nにおける物標Ob_nを検出する。そして、レーダ装置10は、図3(A)、(B)で説明した方法により、その物標Ob_nの距離R_n、速度V_nを検出する。また、レーダ装置10は、CWモードのスキャンcS_nで、方位角A_nにおける物標Ob_nを検出する。そして、レーダ装置10は、図3(C)、(D)で説明した方法により、物標Ob_nの速度V_nを検出する。
【0033】
図5は、本実施形態におけるレーダ装置の構成を示す。レーダ装置10の動作は、制御部30により統合的に制御される。制御部30は、例えば特定目的用集積回路で構成され、送信制御部32、物標検出部34は、制御部30内部のメモリに格納された制御プログラムや処理プログラムに従って動作するプロセッサにより実現される。
【0034】
送信制御部32は、FM−CWモードのスキャンと、CWモードのスキャンの切替を三角波生成部12に指示する。すると、三角波生成部12は、指示に応答して、FM−CWモードのときは三角波状の電圧信号、CWモードのときは一定のバイアス電圧信号を生成して、電圧制御発信器14に入力する。すると、電圧制御発信器14は、入力信号に応じて周波数変調されたレーダ波を生成する。すると、生成されたレーダ波は、サーキュレータ16を介して、アンテナ駆動部18により揺動されるアンテナ20から送信される。また、レーダ波の一部は、ミキサ22にも入力される。
【0035】
このとき、送信制御部32は、車両1前方Fを中心に角度範囲αを往復してアンテナ20を揺動させるように、アンテナ駆動部18を制御する。また、このとき、単位方位角ごとに、一対の上昇期間UPと下降期間DNが対応するように、レーダ波の周波数変調周期に対しアンテナ20の動作速度が制御される。そして、物標により反射されたレーダ波は、アンテナ20により受信される。
【0036】
受信されたレーダ波は、サーキュレータ16によりミキサ22に入力される。そして、ミキサ22は、1スキャンごとに送受信波をミキシングして、両者の周波数差に対応する周波数のビート信号を生成する。そして、生成されたビート信号は、帯域通過フィルタ24により高周波ノイズが除去され、制御部30のAD変換部26に入力される。
【0037】
AD変換されたビート信号は、物標検出部34に入力される。また、物標検出部34には、車速センサから自車両の速度が入力される。そして、物標検出部34は、図6以降で示す一連の処理手順を実行する。そして、物標検出部34は、故障や動作異常を検出したときは、これを音声・表示出力装置に出力する。また、物標検出部34は、検出した物標の方位角、距離、速度などの情報を車両ECUに出力する。
【0038】
[第1の実施例]
図6は、本実施形態の第1の実施例における、レーダ装置10によるメイン動作の手順を説明するフローチャート図である。図6に示す手順は、1スキャンごとに、物標検出部34により実行される。まず、物標検出部34は、AD変換されたビート信号のディジタルデータ取得を完了すると(S2のYES)、今回のスキャンでの周波数変調モードの判定を行う(S4)。
【0039】
周波数変調モードがFM−CWモードのときは、手順S6から手順S10が実行される。物標検出部34は、まず、ビート信号を単位方位角ごとにFFT(高速フーリエ変換)処理し、送信波の周波数の上昇期間UPでの方位角方向におけるビート信号のピークと、下降期間DNでの方位角方向におけるビート信号のピークとを抽出する(S6)。
そして、物標検出部34は、上昇期間UPでのピークと下降期間DNでのピークとで、ピークが形成される方位角が近似したピーク同士を抽出し、これらの対応付け、つまりペアリングを行う。このように、同一物標から得られた蓋然性が大きいビート信号の上昇期間UPでの周波数と下降期間DNでの周波数とが対応づけされる。そうすることにより、それぞれのピークが形成された方位角の、例えば平均の方位角において、1つの物標が検出される(S8)。
【0040】
そして、物標検出部34は、対応づけた上昇期間UPと下降期間DNの周波数から、その物標の距離、速度を算出する(S10)。このようにして、ビート信号から物標の方位角、距離、速度が検出される。
【0041】
次に、物標検出部34は、後述する手順に従い、検出した物標の連続性判定処理(S12)を行う。そして、物標検出部34は、連続性有りと判定された回数が規定回数(例えば3回)に達したとき、その物標の方位角、速度、距離を含む情報のうち、予め設定された出力条件に適合する情報を選択し(S16)、その情報を車両ECUに出力する(S18)。ここで、出力条件は、例えば、車間距離が一定以下となり、追従走行制御あるいは衝突対応制御の対象となることを基準として、距離、速度などについて設定される。
【0042】
一方、手順S4での判定の結果、周波数変調モードがCWモードのときは、手順S20から手順S24が実行される。ここで、CWモードのスキャンは、上述したように、レーダ装置10の故障検出を目的として実行される。よって、物標検出部34は、ビート信号をFFT処理し、各物標からの受信波に含まれるドップラ周波数の成分を検出する。そして、物標検出部34は、車速センサから取得した自車両の速度に対応するドップラ周波数をマップ演算などにより求め、そのドップラ周波数の大きさに対応する、路面による反射波の成分のレベルを抽出する。そして、そのレベルを閾値と比較することにより、故障診断を行う(S20)。なお、故障や動作異常等の検出結果は、音声や表示出力によりユーザに報知される。
【0043】
次に、物標検出部34は、方位角方向におけるビート信号のピークを検出する(S22)。なお、この手順は、この後の図7により詳述する。そして、物標検出部34は、それぞれのピークが形成される方位角における物標を検出し、そのピーク成分のドップラ周波数から速度を検出する(S24)。このように、CWモードのときに、物標の方位角と速度とが検出される。
【0044】
図7は、レーダ波の周波数変調モードがCWモードのときの、ピーク検出処理の詳細な動作手順を説明するフローチャート図である。図7に示す手順は、図6の手順S22に対応する。
【0045】
まず、物標検出部34は、FFT処理により、単位方位角ごとにビート信号の周波数成分を求めて(S32)、同一周波数の成分をレベルの強度順にソートする(S34)。そして、物標検出部34は、それぞれの方位角方向において、強度順にソートされた周波数成分をレベルの大きい順に抽出する。
【0046】
ここで、各ピークは、物標からの反射波が最大のレベルとなる方位角において形成される。よって、物標検出部34は、抽出した周波数成分がピークとして採用可能なレベルに該当するかを判断する。そして、該当しない場合(S38のNO)はこれを除外し、該当する場合(S38のYES)はその方位角と周波数成分のレベルを制御部30内のメモリに格納する(S40)。そして、この処理は、抽出したピークが規定数に達するまで処理が反復される(S36、S42)。このようにして抽出されたピークに対応する方位角が、物標の方位角として検出される。
【0047】
図8は、物標検出部34による連続性判定処理の詳細な動作手順を説明するフローチャート図である。図8の手順は、図6の手順S12に対応する。
【0048】
物標検出部34は、全ての前回検出物標について1物標ずつ、今回も検出されているかを判定するために、手順S52からS60の処理を実行する(S50、S62)。
【0049】
まず、物標検出部34は、今回のスキャンでの周波数変調モードを判定する(S52)。そして、FM−CWモードの場合、物標検出部34は、処理中の前回検出物標について、検出された距離と速度、及び1スキャン分の経過時間とを用いて、今回スキャンでのその物標の距離を予測する。ここにおいて、かかる手順を実行する物標検出部34は、「物標距離予測手段」に対応する。
【0050】
そして、今回検出物標のうち、前回検出物標と方位角が一致もしくは所定の誤差範囲内にある物標を抽出し、抽出した今回検出物標の距離と予測された距離との差が許容範囲内のときは、その今回検出物標は連続性を有すると判定する(S54)。そして、その今回検出物標の連続性の履歴を更新するとともに、今回検出物標の方位角、距離、速度などの情報を制御部30内のメモリに格納する。
【0051】
しかし、前回検出物標と方位角が一致もしくは所定の誤差範囲内にある物標のうち、予測された距離との差が許容範囲内の距離に対応する物標がない場合、あるいは、前回検出物標と方位角が一致もしくは所定の誤差範囲内にある物標がない場合は、今回検出物標は連続性を有しないと判定する。そして、その場合は前回検出物標からの連続性の履歴を更新せずに、今回検出物標の方位角、距離、速度などの情報を新規の今回検出物標として制御部30内のメモリに格納する。
【0052】
ここにおいて、かかる手順を実行する物標検出部34は、「連続性判定手段」に対応する。
【0053】
そして、物標検出部34は、処理中の前回検出物標が今回も検出された場合、つまり、今回検出物標のうち連続性を有すると判定されたものがあった場合(S56のYES)は処理を終了し、次の前回検出物標について同様の処理を行う。
【0054】
しかし、前回検出物標が今回検出されない場合、つまり、今回検出物標のうち連続性を有すると判定されたものが無く、前回検出物標がロストされた場合は(S56のNO)、前回検出物標から予測した距離と、前回検出物標の方位角及び速度とを有する物標が検出されたものとして、その物標を今回検出物標として推定する。ここにおいて、かかる手順を実行する物標検出部34は、「物標推定手段」に対応する。そして、物標検出部34は、このように推定された今回推定物標の情報をメモリに格納し(S66)、その今回推定物標について、前回検出物標からの連続性の履歴を更新する。
【0055】
また、手順S52において判定結果がCWモードの場合は、次のような手順に従って、前回検出物標が今回検出されたかについて、その物標の連続性を判定する(S64)。
図9は、CWモードで検出された物標の連続性判定手順を詳細に説明するフローチャート図である。図9の手順は、図8の手順S64に対応する。
【0056】
まず、物標検出部34は、複数の今回検出物標が同一速度のときは(S70のYES)、処理を終了する。CWモードのときは、同一物標からの反射波が複数のピークを形成し、これにより複数の方位角が同一の速度に対応する場合、ピークが形成される方位角に基づき物標を特定することが困難となる。よって、かかる場合に処理を中断することで、単一の物標を複数の物標として誤検出することを防ぐ。
【0057】
なお、手順S70では、さらに、検出された速度が規定速度に該当するか否かを判定する条件に加えても良い。ここで、規定速度は、自車両の速度に対応する路面あるいは路側の静止物の速度を基準とし、路面と混同されないような速度に設定される。そうすることにより、路面や静止物を誤って検出することを防ぐことができる。
【0058】
そして、物標検出部34は、「物標距離予測手段」として、今回検出物標ごとに速度が異なる場合(S70のNO)、前回検出物標の距離、速度、及び経過時間から、今回の物標の距離を予測する(S72)。
【0059】
次に、物標検出部34は、「物標推定手段」として、前回検出物標の全てについて、反射波のピークのレベルの差、方位角の差、及び速度の差が最小となる今回検出物標を抽出する(S74、S76,S78)。
【0060】
ここで、手順S76では、今回検出物標を抽出するときの速度差条件を設けないことも可能である。そうすることにより、速度が急変した場合であっても、方位角と反射波の受信レベルとに基づいて連続性を判定でき、かつ、今回推定物標に急変した速度を反映することができる。
【0061】
そして、その物標の速度と方位角、及び前回検出物標から予測した距離とを有する物標を今回検出物標として推定し、これを今回推定物標としてメモリに格納する(S80)。また、このとき、物標検出部34は「連続性判定手段」として、抽出した今回検出物標、つまり今回推定物標は前回検出物標からの連続性を有すると判定して、その連続性の履歴を更新する。
【0062】
ここで、図10〜図12を参照しながら、図6〜図9の手順を詳細に説明する。図10〜図12はいずれも、時間に対して各スキャンで検出される物標の距離、速度等の情報、これらから予測される次のスキャンでの距離、各スキャンでの連続性判定結果の関係を模式的に示す。
【0063】
図10は、連続する複数のFM−CWモードのスキャンで、物標がロストされることなく検出される場合を示す。レーダ装置10は、スキャンfS_1において、新規の物標Ob_1の方位角A_1、距離R_1、速度V_1を検出する(図6手順S4〜S10)。
【0064】
次にこの今回検出物標Ob_1の連続性を判定する(図6手順S12、図8手順S50〜S62)。このとき、前回のスキャンで同一物標は検出されていないので、この今回検出物標Ob_1は連続性を有さない。よって、物標検出部34は、方位角A_1、距離R_1と速度V_1を有する今回検出物標Ob_1を新規の検出物標として処理し、これにより連続性履歴を格納したカウンタ変数の値は「1」となる(図8の手順S50、S52、S54、S62)。
【0065】
次のスキャンfS_2では、物標検出部34は、方位角A_2にて物標Ob_2を検出すると、その距離R_2、速度V_2を検出する(図6手順S4〜S10)。そして、この今回検出物標の連続性を判定する(図6の手順S12、図8の手順S50〜S62)。
【0066】
このとき、スキャンfS_2がFM−CWモードであるので(図8のS52)、物標検出部34は、前回検出物標Ob_1の距離R_1と速度V_1、及び1スキャン分の経過時間とを用い、スキャンfS_2でのその物標の距離pR_2を予測する。そして、前回検出物標Ob_1の方位角A_1と、今回検出物標Ob_2の方位角A_2との差が許容範囲内であれば、検出した距離R_2と予測された距離pR_2とを比較する。そして、その誤差が予め定めた許容範囲内であれば、スキャンfS_2での今回検出物標Ob_2は連続性を有すると判定する。そして、連続性履歴を格納したカウンタ変数の値を「1」インクリメントさせて「2」とし、方位角A_2、距離R_2、及び速度V_2をメモリに格納する(図8のS54)。
【0067】
さらに、その次のスキャンfS_3では、物標検出部34は、方位角A_3にて物標Ob_3を検出すると、その距離R_3、速度V_3を検出する(図6手順S4〜S10)。そして、この今回検出物標Ob_3の連続性を判定する(図6手順S12、図8手順S50〜S62)。
【0068】
このとき、スキャンfS_3がFM−CWモードであるので(図8のS52)、物標検出部34は、前回検出物標Ob_2の距離R_2と速度V_2、及び1スキャン分の経過時間から距離pR_2を予測する。そして、前回検出物標Ob_2の方位角A_2と、今回検出物標Ob_3の方位角A_3との差が許容範囲内であれば、検出した距離R_3と予測された距離pR_3とを比較する。そして、その誤差が予め定めた許容範囲内であれば、スキャンfS_3での今回検出物標Ob_3は連続性を有すると判定する。そして、連続性履歴を格納したカウンタ変数の値を「1」インクリメントさせて「3」とし、方位角A_3、距離R_3、及び速度V_3をメモリに格納する(図8のS54)。
【0069】
そして、カウンタ変数の値が「3」に達したので、物標検出部34は、今回検出物標Ob_3の方位角A_3、距離R_3、及び速度V_3を車両ECUに出力する(図6の手順S16、S18)。
【0070】
図11は、連続する複数のFM−CWモードのスキャンのうちの1スキャンにおいて、物標がロストされる場合を示す。スキャンfS_1における動作は、図10(A)と同じであるので、説明を省略する。なお、スキャンfS_1で検出される物標が新規の物標でなく、既に連続性判定済みの物標である場合も、次の手順が適用される。
【0071】
次のスキャンfS_2では、前回検出物標Ob_1の方位角A_1との差が許容範囲内の今回検出物標が存在しないので(図8のS56のNO)、物標検出部34は、前回検出物標Ob_1の距離R_nと速度V_n、及び1スキャン分の経過時間とから求められるその物標の距離pR_n+1、及び、前回検出物標Ob_1の方位角A_1、速度V_1に対応する今回検出物標Ob_2が検出されたものと推定し(図8のS66)、これを今回推定物標として格納する。
【0072】
すると、その次のスキャンfS_3では、物標検出部34は、前回検出物標として推定されたOb_2の距離pR_2と速度V_1、及び1スキャン分の経過時間から距離pR_3を予測する。そして、前回検出物標として推定されたOb_2の方位角A_1と、今回検出物標Ob_3の方位角A_3との差が許容範囲内であれば、検出した距離R_3と予測された距離pR_3とを比較する。そして、その誤差が予め定めた許容範囲内であれば、スキャンfS_3での今回検出物標Ob_3は連続性を有すると判定する。そして、連続性履歴を格納したカウンタ変数の値を「1」インクリメントさせて「3」とし、方位角A_3、距離R_3、及び速度V_3をメモリに格納する(図8のS54)。
【0073】
そして、物標検出部34は、カウンタ変数の値が「3」に達したので、今回検出物標Ob_3の方位角A_3、距離R_3、及び速度V_3を車両ECUに出力する(図6の手順S16、S18)。
【0074】
このように、物標がロストされた場合は、前回検出物標から推定された今回検出物標を用いて次のスキャンでの距離を予測する。そして、次のスキャンでは、その予測距離を用いて連続性を判定する。そうすることにより、物標がロストされたことにより連続性が中断されることなく、次のスキャンでは連続性が維持される。
【0075】
次に、図12は、連続した複数のFM−CWモードのスキャンfS_nの間に、CWモードのスキャンcS_nが実行される場合を示す。スキャンfS_1における動作は、図10と同じであるので、説明を省略する。なお、スキャンfS_1で検出される物標が新規の物標でなく、既に連続性判定済みの物標である場合も、次の手順が適用される。
【0076】
レーダ装置10は、CWモードのスキャンcS_2において、まず方位角A_2における物標Ob_2を検出する。そして、レーダ装置10は、図3(C)、(D)で説明した方法により、この今回検出物標Ob_2の速度V_2を検出する(図6手順S4、S20、S22、S24)。そして、今回検出物標Ob_2の連続性を判定する(図6手順S12、図8手順S50、S52、S64)。
【0077】
ここで、スキャンcS_2では距離は検出されないので、レーダ装置10は、前回検出物標Ob_1の方位角A_1と、今回検出物標の方位角A_2とを比較し、その誤差が所定の範囲内であれば、物標Ob_2は連続性を有すると判定し、連続性履歴を格納したカウンタ変数の値を「1」インクリメントさせて「2」とする(図9の手順S70〜S78)。そして、物標Ob_2は方位角A_2、距離pR_2、速度V_2の今回検出物標として推定される(図9のS80)。
【0078】
そして、次のスキャンfS_3では、物標検出部34は、前回検出物標として推定されたOb_2の距離pR_2と速度V_2、及び1スキャン分の経過時間から距離pR_3を予測する。そして、前回検出物標として推定されたOb_2の方位角A_2と、今回検出物標Ob_3の方位角A_3との差が許容範囲内であれば、検出した距離R_3と予測された距離pR_3とを比較する。そして、その誤差が予め定めた許容範囲内であれば、スキャンfS_3での今回検出物標Ob_3は連続性を有すると判定する。そして、連続性履歴を格納したカウンタ変数の値を「1」インクリメントさせて「3」とし、方位角A_3、距離R_3、及び速度V_3をメモリに格納する(図8のS54)。
【0079】
そして、カウンタ変数の値が「3」に達したので、物標検出部34は、今回検出物標Ob_3の方位角A_3、距離R_3、及び速度V_3を車両ECUに出力する(図6の手順S16、S18)。
【0080】
このように、本実施形態では、CWモードのスキャンが実行されたときに、故障検出だけでなく物標の方位角と速度とを検出する。そして、物標の方位角を基準に連続性を判定し、検出した速度により今回検出物標を推定する(今回推定速度)。そして、今回推定物標から次のFM−CWモードのスキャンでの距離を予測する。
【0081】
そうすることにより、CWモードの間に物標の速度が急変した場合であっても、これをリアルタイムに予測距離に反映できる。よって、前回のFM−CWモードで検出した前回検出物標からのみ今回推定物標を推定し、これに基づき次のFM−CWモードでの距離を予測する場合より、精度よく次のFM−CWモードでの距離を予測することができる。よって、次のFM−CWモードで検出される物標が確度良く連続性を維持することができる。
【0082】
上記第1の実施例の好適な変形例では、CWモードのときに連続性を判定する場合に、検出された情報の信頼性を担保するために、反射波の受信レベルに応じて検出物標の距離に重み付けをする。図13は、かかる手順を説明する図である。
【0083】
図13(A)のフローチャート図は、図8のS56とS60の間に追加され、手順S56の結果が「YES」のとき、すなわち、前回検出物標と連続性を有する今回検出物標が検出されたときに実行される。
【0084】
物標検出部34は、今回スキャンでの反射波の受信レベルに対する重みa(S562)を、図13(B)に示す対応関係により求める。そして、前回スキャンでの反射波の受信レベルと今回スキャンでの反射波の受信レベルとの差に対応する重みbを「1」に設定する(S566)。そして、今回の反射波の受信レベルWmにaとbを乗算し、その結果Wを重みとして、今回検出物標の速度V_nを次の式により算出する(S568)。
【0085】
Vn=(1−W)V_n−1+W・V_n (ただし、V_n−1は前回検出物標の速度である)
そして、物標検出部34は、上記の速度V_nを、今回検出物標の速度として採用する(S569)。
【0086】
このように、今回の反射波の受信レベルが大きいほど、今回検出物標の速度の信頼性を高くして、今回推定物標に反映できる。よって、信頼性の高い今回検出物標の速度を車両ECUに出力でき、あるいは、次回の距離の予測に用いることができる。なお、この手順は、スキャンのモードがFM−CWモードであって今回検出物標が連続性を有するとき、及び、CWモードのときに、実行される。よって、CWモードのスキャンで、今回推定物標に反映される検出距離の精度に反射波の受信レベルを反映させることにより、より信頼性の高い検出距離を推定に用いることができ、推定の精度を向上させることができる。
【0087】
ところで、FM−CWモードのスキャンでは、同一の物標であっても、反射面の形状により複数の反射ピークが得られる場合がある。かかる場合に、その物標の方位角を一意に特定することが困難となる。よって、その次のCWモードのスキャンでは、前回検出物標と今回検出物標の連続性を方位角を基準にして判定する際に、方位角の信頼性が低くなる。
【0088】
その点、本実施形態における第2の実施例では、同一物標から複数のピークが形成される場合、各ピークに対応する速度は同じであることに着目し、FM−CWモードでの前回検出物標とCWモードでの今回検出物標との連続性判定の基準として、方位角のかわりに速度を用いる。そして、速度の差が許容範囲内の場合に、今回検出物標は前回検出物標と連続性を有すると判定する。かかる場合における手順が、図14〜図17に示される。
【0089】
[第2の実施例]
図14は、本実施形態の第2の実施例における、レーダ装置10によるメイン動作の手順を説明するフローチャート図である。図14のフローチャート図は、図6のフローチャート図に示された第1のメイン動作の手順に、同一速度の今回検出物標をグループ化する処理(手順S14)が追加されたフものである。なお、追加箇所は点線で囲んである。そして、図15のフローチャート図に、手順S14の詳細な手順が示される。
【0090】
まず、物標検出部34は、今回検出物標を方位角に対応するピークのレベル順にソートする(S142)。そして、物標検出部34は、ソートした順に全ての今回検出物標について(S144、S156)、次の手順を実行する(S146)。
【0091】
物標検出部34は、処理中の今回検出物標と、その他の全ての今回検出物標を比較し、同一の速度を有する今回検出物標同士をグループ化する(S146)。このグループ化処理は、グループ化の判定が行われていない今回検出物標が無くなるまで、実行される(S148、S150、S152、S154)。
【0092】
このようにして、同一物標から検出された複数の今回検出物標のうち、速度が等しい今回検出物標同士がグループ化される。なお、以下では、このグループ化された複数の今回検出物標を、今回検出グループという。また、次のスキャンでは、これを前回検出グループという。
【0093】
図16は、CWモードのスキャンでの連続性判定手順を示す図9のフローチャート図に、手順S73、S82、S84、S86、S88、S90が追加されたフローチャート図である。なお、追加箇所は点線で囲んである。
【0094】
物標検出部34は、手順S72で前回検出物標の距離、速度、及び経過時間から今回の物標の距離を予測した後、前述した同一速度グループ化処理が実行された場合は(S73のYES)、前回検出物標の全てについて、反射波のピークのレベルの差と速度の差とが最小となる今回検出物標を抽出する(S82、S84,S86)。
【0095】
そして、抽出した物標の速度と方位角、及び前回検出物標から予測した距離とを有する物標を今回検出物標として推定し、これを今回推定物標としてメモリに格納する(S88)。さらに、物標検出部34は、今回推定物標と前回検出グループとを対応付け、次のFM−CWモードのスキャンでも同一物標から複数のピークが検出されて同一速度の物標がグループ化される場合に、新たにグループ化された検出物標のグループと、今回推定物標との連続性が維持できるようにする(S90)。
【0096】
図17(A)は、CWモードのときに反射波の受信レベルに応じた重み付けをする図13の手順に、手順S564と手順S570を追加したものである。なお、追加箇所は点線で囲んである。物標検出部34は、同一速度の前回検出グループが判定された場合には(S564のYES)、前回スキャンでの反射波の受信レベルと今回スキャンでの反射波の受信レベルとの差に対応する重みbを、図17(B)の対応関係により求める(S570)。
【0097】
このとき、前回の反射波の受信レベルは、今回検出物標が連続性を有する前回検出グループの受信レベルの代表値が用いられる。ここで、前回検出グループの受信レベルと、今回検出物標の受信レベルとの差が大きい場合は、今回検出物標の距離の信頼性が低いことを意味する。よって、そのような場合には、今回検出物標の距離を今回推定物標に反映する割合を小さくすることにより、今回推定物標の推定精度を高くすることができる。
【0098】
なお、上述の説明においては、検出物標の距離はレーダ装置10と物標との直線距離を示している。しかし、自車両の前方方向と、これと直角方向とを座標軸とした座標平面を想定し、この座標平面上での先行車両の前方方向の座標を距離として用いてもよい。
【0099】
また、近年では、先行車両への追従走行制御に加え、追突の危険を察知したときに安全制御装置を作動させるような対衝突対応制御が求められている。そして、かかる対衝突対応制御では、レーダ装置の故障診断を定期的に実行するということと、先行車両と接近した状況でその距離を確実に検出することとが求められる。その点上記の実施形態によれば、CWモードのスキャンで故障診断を定期的に実行しつつ、CWモードのスキャンでの物標を精度よく推定できるので、その後のスキャンでの検出物標の連続性が維持できる。よって、先行車両の速度を、迅速に検出することができる。
【0100】
さらに、上述の説明では、先行車両を検出する車載用レーダ装置を例に説明した。しかし、車両の後方や側方を監視するためのレーダ装置にも本実施形態は適用でき、上記同様の作用効果を奏する。また、本実施形態のレーダ装置は、車両以外の移動体にも搭載しても、同様の作用効果を奏する。
【0101】
以上説明したように、本実施形態によれば、CWモードのキャンの間に物標の速度が急変しても、これを推定処理に反映できる。よって、その推定結果に基づき、次回のスキャンで検出される距離と乖離しない距離を予測することが可能となる。よって、連続性の履歴が中断することによる物標の情報を出力する時期の遅れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本実施形態におけるレーダ装置が車両に搭載されたときの使用状況を説明する図である。
【図2】レーダ装置10が送信するレーダ波の、時間に対する周波数変化を示す図である。
【図3】各スキャンモードでの、物標の距離等を検出する原理を説明する図である。
【図4】各モードのスキャンで検出される物標について、レーダ装置10が検出する情報を説明する図である。
【図5】本実施形態におけるレーダ装置の構成を示す図である。
【図6】本実施形態の第1の実施例における、レーダ装置のメインの動作手順を説明するフローチャート図である。
【図7】レーダ波の周波数変調モードがCWモードのときの、ピーク検出処理の詳細な動作手順を説明するフローチャート図である。
【図8】物標検出部34による連続性判定処理の詳細な動作手順を説明するフローチャート図である。
【図9】CWモードで検出された物標の連続性判定手順を詳細に説明するフローチャート図である。
【図10】連続するFM−CWモードのスキャンで物標がロストせずに検出される場合を示す図である。
【図11】連続するFM−CWモードのスキャンにおいて、物標がロストされる場合を示す図である。
【図12】FM−CWモードのスキャンの間にCWモードのスキャンが実行される場合を示す図である。
【図13】反射波の受信レベルに応じて検出物標の距離に重み付けをする手順を説明するフローチャート図である。
【図14】本実施形態の第2の実施例における、レーダ装置のメインの動作手順を説明するフローチャート図である。
【図15】同一速度の今回検出物標をグループ化する処理を詳細に示すフローチャート図である。
【図16】第2の実施例における、CWモードで検出された物標の連続性判定手順を詳細に説明するフローチャート図である。
【図17】第2の実施例における、反射波の受信レベルに応じて検出物標の距離に重み付けをする手順を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
【0103】
10:レーダ装置、30:制御部、34:物標検出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数変調を施したレーダ波を送受信して所定領域をスキャンし、前記スキャンごとに物標の距離または速度を検出するレーダ装置及び物標検出方法に関し、特に、過去のスキャンで検出された物標の距離と速度とに基づき現在のスキャンでの当該物標の距離を予測する物標距離予測手段と、前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出されないときは、前記予測された距離と前記過去のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する物標推定処理を行う物標推定手段と、前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出された回数をカウントし、前記カウントの値が規定数に達したときに、前記検出された物標の距離を出力する連続性判定手段とを有するレーダ装置、及び物標検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両前方をスキャンして先行車両などの物標を検出する、車載用のレーダ装置が知られている。かかるレーダ装置は、送信したレーダ波の反射波を受信し、反射波のピークが形成される方位角において、レーダ波を反射した先行車両を検出する。また、かかるレーダ装置は、レーダ波を送信する際、これをFM−CW(Frequency Modulated-Continuous Wave)方式で周波数変調して送信し、送受信波の周波数差から、先行車両の距離、速度を検出する。そして、レーダ装置は、先行車両の方位角、距離、速度などの情報を、車両の動作を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)に出力する。すると、車両ECUが、これらの情報に基づき、車間距離を一定に保つように追従走行制御を行う。
【0003】
車載用のレーダ装置は、車両ECUへ出力する物標の情報の信頼性を担保するため、連続したスキャンにおいて継続して検出できた、つまり、連続性の履歴を有する物標の情報のみを出力する。具体的には、レーダ装置は、前回のスキャンで検出された物標(以下、「前回検出物標」という)の距離、速度から現在の物標の距離を予測し、予測された距離と一致または誤差の少ない距離に対応する物標が今回のスキャンで検出されたときに、今回のスキャンで検出された物標(以下、「今回検出物標」という)は連続性を有すると判定する。そして、レーダ装置は、連続性を有すると判定した回数が規定回数に達したときに、最新の物標の方位角、速度、距離等の情報を出力する。
【0004】
上記のような連続性の判定手順において、ある程度連続性の履歴を有する物標が、反射面の角度が変動するなどして反射波の受信レベルが低下することにより検出されない場合がある。すなわち、物標がロストされる場合がある。すると、その時点で連続性の履歴が中断するので、仮に将来のスキャンで同じ物標が再度検出されるときには、新規の物標として検出される。すると、レーダ装置がその物標の情報を出力するためには、再度、規定回数にいたるまで連続性の履歴を必要とするので、物標の情報が車両ECUに出力される時期が遅くなる。
【0005】
よって、かかる事態を防ぐため、前回検出物標から、ロストした物標を推定する方法が提案されている。具体的には、前回検出物標の方位角、速度、及び予測された距離に対応する物標が検出されたものと推定する。なお、このようして推定された今回スキャンでの物標を、以下では「今回推定物標」という。かかる方法によれば、物標をロストしたときには、推定された物標に基づいて次回のスキャンでの物標の距離を予測でき、次回のスキャンで物標が再度検出されたときに連続性の履歴を維持できる。よって、出力時期の遅れを防ぐことができる。その一例として、特許文献1には、前回検出物標の位置、速度から、今回のスキャンでのその物標の位置を推定するレーダ装置の例が記載されている。
【特許文献1】特開2004−226120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車載用のレーダ装置は、その動作の信頼性を担保するため、定期的に自らの故障診断を行う。具体的には、レーダ装置は、10〜20回のスキャンにつき1回の頻度で、レーダ波の周波数変調を行わないスキャンを実行する。そして、レーダ装置は、路面による反射波の受信レベルが予め設定した閾値を超えるか否かにより、自らの動作の正常・異常を診断する。すると、従来のレーダ装置は、かかる故障診断処理を行うスキャンでは物標の検出を休止するので、過去に検出された物標についてこれをロストした場合の推定処理を行うことにより、次回のスキャンで再度同じ物標を検出したときにその連続性の履歴が維持できるようにする。
【0007】
しかしながら、この場合、例えば先行車両が急ブレーキをかけるなどしてその速度が急変すると、今回推定物標から予測される距離と、次回のスキャンで実際に検出される物標の距離とが大きく乖離し、連続性の履歴が中断されるおそれがある。すると、物標の情報を出力する時期が遅れてしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、レーダ波の周波数変調を行わないスキャンのときに物標の速度が急変したとしても、次回のスキャンで実際に検出される物標の距離が乖離しないような距離の予測を行うことが可能なレーダ装置と、その物標検出方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面におけるレーダ装置は、周波数変調を施した第1のレーダ波を送受信して所定領域をスキャンし、前記スキャンごとに物標の距離と速度を検出するレーダ装置であって、過去のスキャンで検出された物標の距離と速度とに基づき現在のスキャンでの当該物標の距離を予測する物標距離予測手段と、前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出された回数をカウントし、前記カウントの値が規定数に達したときに、前記検出された物標の距離を出力する連続性判定手段と、前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出されないときは、前記予測された距離と前記過去のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する第1の物標推定処理を行う物標推定手段とを有する。そして、前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、前記予測された距離と当該現在のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する第2の推定処理を行うことを特徴とする。
【0010】
上記側面の好ましい実施態様によれば、前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、検出された前記速度が規定速度のときに、前記第2の物標推定処理を行うことを特徴とする。
【0011】
上記側面の別の好ましい実施態様によれば、前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、過去のスキャンで検出された物標の方位角に一致する方位角を有する規定数の物標が検出されたときに、前記第2の物標推定処理を行うことを特徴とする。なお、過去のスキャンで検出された物標の方位角に一致する方位角は、過去のスキャンで検出された物標の方位角との誤差が所定の許容範囲に含まれる方位角を含む。
【0012】
上記側面のさらに好ましい実施態様によれば、前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、受信された前記第2のレーダ波のレベルに基づき、検出される前記速度に重み付けをして前記第2の物標推定処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記側面によれば、前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、前記予測された距離と当該現在のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定するので、前回のスキャンの後物標の速度が急変しても、これを今回のスキャンでの推定処理に反映できる。よって、当該推定結果に基づき、次回のスキャンで検出される距離と乖離しない距離を予測することが可能となる。よって、連続性の履歴が中断することによる物標の情報を出力する時期の遅れを防ぐことができる。
【0014】
上記の好ましい実施態様によれば、前記物標推定手段は、検出された前記速度が規定速度のとき、つまり、路面や静止物に対応する速度でないときに、前記物標推定処理を行うので、路面や静止物を物標として検出することを防ぐことができる。路面や静止物を誤って物標として推定すると、次回のスキャンで検出される物標の連続性の履歴が中断するおそれがあるが、本実施態様によれば、かかる事態を回避できる。
【0015】
上記の別の好ましい実施態様によれば、前記物標推定手段は、過去のスキャンで検出された物標の方位角に一致する方位角を有する規定数の物標が検出されたときに、前記第2の物標推定処理を行う。ここで、規定数を単数に設定しておけば、方位角が近似していても速度が異なる複数の物標を検出した場合には物標推定処理を中止できるので、過去に検出された物標に対応して異なる複数の物標を推定することにより、異なった物標間で連続性を判定し、誤った物標の情報を出力するといった事態を防ぐことができる。
【0016】
上記のさらに好ましい実施態様によれば、前記物標推定手段は、受信された前記第2のレーダ波のレベルに基づき、検出された前記速度に重み付けをして前記物標推定処理を行う。すなわち、受信波のレベルが低い場合は、他の物標からの反射波による干渉や種々のノイズの影響を受けやすく、検出される物標の速度の信頼性が低くなる。よって、かかる場合は、今回検出される速度を物標推定処理に反映させる割合を小さくすることにより、推定結果の信頼性が低下することを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0018】
図1は、本実施形態におけるレーダ装置が車両に搭載されたときの使用状況を説明する図である。本実施形態におけるレーダ装置10は、車両1の前部フロントグリル内に搭載され、車両1前面のバンパーやフロントグリル、ナンバープレート板脇などに設けられるレドームを透過してレーダ波の送受信を行い、車両1前方Fを中心とする角度範囲α(例えば、前方Fを中心として±8度)で定まる領域をスキャンする。
【0019】
なお、本実施形態では、レーダ装置10は、レーダ波を送受信するアンテナを揺動させることにより角度範囲αをスキャンする、メカニカルスキャン式のレーダ装置を例とするが、複数アンテナで送受信するレーダ波の位相差を利用してスキャンを行う電子スキャン式のレーダ装置であってもよい。
【0020】
図2は、レーダ装置10が送信するレーダ波の周波数変調モードについて説明する図である。本実施形態では、レーダ装置10が車両1前方の角度範囲αを1回走査する期間を1スキャンとする。そして、図2では、レーダ波の時間に対する周波数変化が示される。
【0021】
CWモードのスキャンは、故障検出を目的として、路面からの反射波のレベルを検出するために実行される。よって、故障検出の機会を確保するため、レーダ装置10は、これら2つのモードのスキャンを、定期的に切り替えて実行する。具体的には、CWモードのスキャンは、FM−CWモードのスキャンが例えば10〜20回実行されるごとに1回の頻度で実行される。
【0022】
図3は、各スキャンモードでの、物標の距離等を検出する原理を説明する図である。
FM−CWモードのスキャンでは、レーダ波を反射する物標の方位角、距離、速度が検出される。
【0023】
まず、レーダ波の周波数は、図3(A)の実線W1で示すように、周波数fm、振幅ΔFの三角波に従って、その上昇期間UPで漸増し、下降期間DNで漸減する。そして、このレーダ波が物標により反射されると、点線W2で示すように、物標の距離に応じた時間的遅れΔTと、物標の速度(相対速度)に応じたドップラ周波数ΔDとに対応する周波数偏移を受けて、レーダ装置10により受信される。
【0024】
ここで、物標の方位角は、次のようにして検出される。レーダ装置10が上記の角度範囲αをスキャンする際、単位方位角(例えば1度)ごとに一対の上昇期間UPと下降期間DNが対応するように上記のレーダ波を送受信する。そして、反射波が得られる隣接した方位角において、上昇期間UPに対応する反射波の受信レベルと、下降期間DNに対応する反射波の受信レベルとがそれぞれピークを形成する方位角の例えば平均の方位角が、物標の方位角として検出される。
【0025】
また、物標の距離、速度は、次のようにして検出される。上記のような送受信波をミキシングして得られるビート信号の周波数は、両者の周波数差に対応して、図3(B)の実線B1で示すように時間に対し変化する。すなわち、上昇期間UPでは周波数fu、下降期間DNでは周波数fdとなる。そして、これらの周波数から、物標の距離Rと速度Vfは、次の式により算出される(なお、Cは光速、f0は送信されるレーダ波の中心周波数である)。
R=C・(fu+fd)/(8・ΔF・fm)
Vf=C・(fd−fu)/(4.f0)
CWモードのスキャンでは、物標の方位角と速度が検出される。
【0026】
CWモードのスキャンでは一定の周波数で角度範囲αがスキャンされるので、物標の方位角は、反射波の到来方向から検出される。また、物標の速度は、次のようにして検出される。
【0027】
レーダ波の周波数は、図3(C)の実線C1に示すように、一定の周波数fcに固定される。そして、このレーダ波が物標により反射されると、受信波の周波数は点線C2に示すように、物標の速度に応じたドップラ周波数fpだけ変移する。
【0028】
すると、このときの送受信波をミキシングして得られるビート信号の周波数は、図3(D)の実線BS2で示すように、ドップラ周波数fpとなる。そして、このドップラ周波数fpから、物標の速度Vcは次の式により算出される。
Vc=C・fp/(2・fc)
また、レーダ装置10は、上記の原理を用いて、CWモードのスキャンのときに故障診断を実行する。その方法は、次のとおりである。
【0029】
車載用のレーダ装置においては、アンテナの感度低下や回路部品の接続不良といった不具合が、反射波の受信レベル低下として表れる。よって、同一の物標から得られる反射波のレベル変化を定期的に監視することにより、かかる不具合を検出できる。この点、車載用のレーダ装置においては、路面からの反射波のレベルが最も安定していることに着目し、そのレベルを監視する。
【0030】
CWモードのスキャンでは、上記のように、物標からの反射波に基づくビート信号を処理することで、その物標の速度に対応するドップラ周波数の成分が検出される。ここで、路面は静止しているので、その速度は自車両の速度から求められる。よって、自車両の速度をパラメータにして、これに対応するドップラ周波数をマップ演算などにより求めることにより、ビート信号からそのドップラ周波数に対応する成分のレベル、つまり路面による反射波の受信レベルが検出される。そして、レーダ装置10は、そのレベルが予め実験結果等に基づき設定した閾値を下回ったときに、故障と診断する。
【0031】
さらに、本実施形態においては、レーダ装置10は、CWモードのときに、先行車両などの物標の速度をさらに検出する。
【0032】
ここで、各モードのスキャンでレーダ装置10が検出する物標の情報の種類を、図4に示す。すなわち、レーダ装置10は、FM−CWモードのスキャンfS_n(n=1、2、3、…)で、方位角A_nにおける物標Ob_nを検出する。そして、レーダ装置10は、図3(A)、(B)で説明した方法により、その物標Ob_nの距離R_n、速度V_nを検出する。また、レーダ装置10は、CWモードのスキャンcS_nで、方位角A_nにおける物標Ob_nを検出する。そして、レーダ装置10は、図3(C)、(D)で説明した方法により、物標Ob_nの速度V_nを検出する。
【0033】
図5は、本実施形態におけるレーダ装置の構成を示す。レーダ装置10の動作は、制御部30により統合的に制御される。制御部30は、例えば特定目的用集積回路で構成され、送信制御部32、物標検出部34は、制御部30内部のメモリに格納された制御プログラムや処理プログラムに従って動作するプロセッサにより実現される。
【0034】
送信制御部32は、FM−CWモードのスキャンと、CWモードのスキャンの切替を三角波生成部12に指示する。すると、三角波生成部12は、指示に応答して、FM−CWモードのときは三角波状の電圧信号、CWモードのときは一定のバイアス電圧信号を生成して、電圧制御発信器14に入力する。すると、電圧制御発信器14は、入力信号に応じて周波数変調されたレーダ波を生成する。すると、生成されたレーダ波は、サーキュレータ16を介して、アンテナ駆動部18により揺動されるアンテナ20から送信される。また、レーダ波の一部は、ミキサ22にも入力される。
【0035】
このとき、送信制御部32は、車両1前方Fを中心に角度範囲αを往復してアンテナ20を揺動させるように、アンテナ駆動部18を制御する。また、このとき、単位方位角ごとに、一対の上昇期間UPと下降期間DNが対応するように、レーダ波の周波数変調周期に対しアンテナ20の動作速度が制御される。そして、物標により反射されたレーダ波は、アンテナ20により受信される。
【0036】
受信されたレーダ波は、サーキュレータ16によりミキサ22に入力される。そして、ミキサ22は、1スキャンごとに送受信波をミキシングして、両者の周波数差に対応する周波数のビート信号を生成する。そして、生成されたビート信号は、帯域通過フィルタ24により高周波ノイズが除去され、制御部30のAD変換部26に入力される。
【0037】
AD変換されたビート信号は、物標検出部34に入力される。また、物標検出部34には、車速センサから自車両の速度が入力される。そして、物標検出部34は、図6以降で示す一連の処理手順を実行する。そして、物標検出部34は、故障や動作異常を検出したときは、これを音声・表示出力装置に出力する。また、物標検出部34は、検出した物標の方位角、距離、速度などの情報を車両ECUに出力する。
【0038】
[第1の実施例]
図6は、本実施形態の第1の実施例における、レーダ装置10によるメイン動作の手順を説明するフローチャート図である。図6に示す手順は、1スキャンごとに、物標検出部34により実行される。まず、物標検出部34は、AD変換されたビート信号のディジタルデータ取得を完了すると(S2のYES)、今回のスキャンでの周波数変調モードの判定を行う(S4)。
【0039】
周波数変調モードがFM−CWモードのときは、手順S6から手順S10が実行される。物標検出部34は、まず、ビート信号を単位方位角ごとにFFT(高速フーリエ変換)処理し、送信波の周波数の上昇期間UPでの方位角方向におけるビート信号のピークと、下降期間DNでの方位角方向におけるビート信号のピークとを抽出する(S6)。
そして、物標検出部34は、上昇期間UPでのピークと下降期間DNでのピークとで、ピークが形成される方位角が近似したピーク同士を抽出し、これらの対応付け、つまりペアリングを行う。このように、同一物標から得られた蓋然性が大きいビート信号の上昇期間UPでの周波数と下降期間DNでの周波数とが対応づけされる。そうすることにより、それぞれのピークが形成された方位角の、例えば平均の方位角において、1つの物標が検出される(S8)。
【0040】
そして、物標検出部34は、対応づけた上昇期間UPと下降期間DNの周波数から、その物標の距離、速度を算出する(S10)。このようにして、ビート信号から物標の方位角、距離、速度が検出される。
【0041】
次に、物標検出部34は、後述する手順に従い、検出した物標の連続性判定処理(S12)を行う。そして、物標検出部34は、連続性有りと判定された回数が規定回数(例えば3回)に達したとき、その物標の方位角、速度、距離を含む情報のうち、予め設定された出力条件に適合する情報を選択し(S16)、その情報を車両ECUに出力する(S18)。ここで、出力条件は、例えば、車間距離が一定以下となり、追従走行制御あるいは衝突対応制御の対象となることを基準として、距離、速度などについて設定される。
【0042】
一方、手順S4での判定の結果、周波数変調モードがCWモードのときは、手順S20から手順S24が実行される。ここで、CWモードのスキャンは、上述したように、レーダ装置10の故障検出を目的として実行される。よって、物標検出部34は、ビート信号をFFT処理し、各物標からの受信波に含まれるドップラ周波数の成分を検出する。そして、物標検出部34は、車速センサから取得した自車両の速度に対応するドップラ周波数をマップ演算などにより求め、そのドップラ周波数の大きさに対応する、路面による反射波の成分のレベルを抽出する。そして、そのレベルを閾値と比較することにより、故障診断を行う(S20)。なお、故障や動作異常等の検出結果は、音声や表示出力によりユーザに報知される。
【0043】
次に、物標検出部34は、方位角方向におけるビート信号のピークを検出する(S22)。なお、この手順は、この後の図7により詳述する。そして、物標検出部34は、それぞれのピークが形成される方位角における物標を検出し、そのピーク成分のドップラ周波数から速度を検出する(S24)。このように、CWモードのときに、物標の方位角と速度とが検出される。
【0044】
図7は、レーダ波の周波数変調モードがCWモードのときの、ピーク検出処理の詳細な動作手順を説明するフローチャート図である。図7に示す手順は、図6の手順S22に対応する。
【0045】
まず、物標検出部34は、FFT処理により、単位方位角ごとにビート信号の周波数成分を求めて(S32)、同一周波数の成分をレベルの強度順にソートする(S34)。そして、物標検出部34は、それぞれの方位角方向において、強度順にソートされた周波数成分をレベルの大きい順に抽出する。
【0046】
ここで、各ピークは、物標からの反射波が最大のレベルとなる方位角において形成される。よって、物標検出部34は、抽出した周波数成分がピークとして採用可能なレベルに該当するかを判断する。そして、該当しない場合(S38のNO)はこれを除外し、該当する場合(S38のYES)はその方位角と周波数成分のレベルを制御部30内のメモリに格納する(S40)。そして、この処理は、抽出したピークが規定数に達するまで処理が反復される(S36、S42)。このようにして抽出されたピークに対応する方位角が、物標の方位角として検出される。
【0047】
図8は、物標検出部34による連続性判定処理の詳細な動作手順を説明するフローチャート図である。図8の手順は、図6の手順S12に対応する。
【0048】
物標検出部34は、全ての前回検出物標について1物標ずつ、今回も検出されているかを判定するために、手順S52からS60の処理を実行する(S50、S62)。
【0049】
まず、物標検出部34は、今回のスキャンでの周波数変調モードを判定する(S52)。そして、FM−CWモードの場合、物標検出部34は、処理中の前回検出物標について、検出された距離と速度、及び1スキャン分の経過時間とを用いて、今回スキャンでのその物標の距離を予測する。ここにおいて、かかる手順を実行する物標検出部34は、「物標距離予測手段」に対応する。
【0050】
そして、今回検出物標のうち、前回検出物標と方位角が一致もしくは所定の誤差範囲内にある物標を抽出し、抽出した今回検出物標の距離と予測された距離との差が許容範囲内のときは、その今回検出物標は連続性を有すると判定する(S54)。そして、その今回検出物標の連続性の履歴を更新するとともに、今回検出物標の方位角、距離、速度などの情報を制御部30内のメモリに格納する。
【0051】
しかし、前回検出物標と方位角が一致もしくは所定の誤差範囲内にある物標のうち、予測された距離との差が許容範囲内の距離に対応する物標がない場合、あるいは、前回検出物標と方位角が一致もしくは所定の誤差範囲内にある物標がない場合は、今回検出物標は連続性を有しないと判定する。そして、その場合は前回検出物標からの連続性の履歴を更新せずに、今回検出物標の方位角、距離、速度などの情報を新規の今回検出物標として制御部30内のメモリに格納する。
【0052】
ここにおいて、かかる手順を実行する物標検出部34は、「連続性判定手段」に対応する。
【0053】
そして、物標検出部34は、処理中の前回検出物標が今回も検出された場合、つまり、今回検出物標のうち連続性を有すると判定されたものがあった場合(S56のYES)は処理を終了し、次の前回検出物標について同様の処理を行う。
【0054】
しかし、前回検出物標が今回検出されない場合、つまり、今回検出物標のうち連続性を有すると判定されたものが無く、前回検出物標がロストされた場合は(S56のNO)、前回検出物標から予測した距離と、前回検出物標の方位角及び速度とを有する物標が検出されたものとして、その物標を今回検出物標として推定する。ここにおいて、かかる手順を実行する物標検出部34は、「物標推定手段」に対応する。そして、物標検出部34は、このように推定された今回推定物標の情報をメモリに格納し(S66)、その今回推定物標について、前回検出物標からの連続性の履歴を更新する。
【0055】
また、手順S52において判定結果がCWモードの場合は、次のような手順に従って、前回検出物標が今回検出されたかについて、その物標の連続性を判定する(S64)。
図9は、CWモードで検出された物標の連続性判定手順を詳細に説明するフローチャート図である。図9の手順は、図8の手順S64に対応する。
【0056】
まず、物標検出部34は、複数の今回検出物標が同一速度のときは(S70のYES)、処理を終了する。CWモードのときは、同一物標からの反射波が複数のピークを形成し、これにより複数の方位角が同一の速度に対応する場合、ピークが形成される方位角に基づき物標を特定することが困難となる。よって、かかる場合に処理を中断することで、単一の物標を複数の物標として誤検出することを防ぐ。
【0057】
なお、手順S70では、さらに、検出された速度が規定速度に該当するか否かを判定する条件に加えても良い。ここで、規定速度は、自車両の速度に対応する路面あるいは路側の静止物の速度を基準とし、路面と混同されないような速度に設定される。そうすることにより、路面や静止物を誤って検出することを防ぐことができる。
【0058】
そして、物標検出部34は、「物標距離予測手段」として、今回検出物標ごとに速度が異なる場合(S70のNO)、前回検出物標の距離、速度、及び経過時間から、今回の物標の距離を予測する(S72)。
【0059】
次に、物標検出部34は、「物標推定手段」として、前回検出物標の全てについて、反射波のピークのレベルの差、方位角の差、及び速度の差が最小となる今回検出物標を抽出する(S74、S76,S78)。
【0060】
ここで、手順S76では、今回検出物標を抽出するときの速度差条件を設けないことも可能である。そうすることにより、速度が急変した場合であっても、方位角と反射波の受信レベルとに基づいて連続性を判定でき、かつ、今回推定物標に急変した速度を反映することができる。
【0061】
そして、その物標の速度と方位角、及び前回検出物標から予測した距離とを有する物標を今回検出物標として推定し、これを今回推定物標としてメモリに格納する(S80)。また、このとき、物標検出部34は「連続性判定手段」として、抽出した今回検出物標、つまり今回推定物標は前回検出物標からの連続性を有すると判定して、その連続性の履歴を更新する。
【0062】
ここで、図10〜図12を参照しながら、図6〜図9の手順を詳細に説明する。図10〜図12はいずれも、時間に対して各スキャンで検出される物標の距離、速度等の情報、これらから予測される次のスキャンでの距離、各スキャンでの連続性判定結果の関係を模式的に示す。
【0063】
図10は、連続する複数のFM−CWモードのスキャンで、物標がロストされることなく検出される場合を示す。レーダ装置10は、スキャンfS_1において、新規の物標Ob_1の方位角A_1、距離R_1、速度V_1を検出する(図6手順S4〜S10)。
【0064】
次にこの今回検出物標Ob_1の連続性を判定する(図6手順S12、図8手順S50〜S62)。このとき、前回のスキャンで同一物標は検出されていないので、この今回検出物標Ob_1は連続性を有さない。よって、物標検出部34は、方位角A_1、距離R_1と速度V_1を有する今回検出物標Ob_1を新規の検出物標として処理し、これにより連続性履歴を格納したカウンタ変数の値は「1」となる(図8の手順S50、S52、S54、S62)。
【0065】
次のスキャンfS_2では、物標検出部34は、方位角A_2にて物標Ob_2を検出すると、その距離R_2、速度V_2を検出する(図6手順S4〜S10)。そして、この今回検出物標の連続性を判定する(図6の手順S12、図8の手順S50〜S62)。
【0066】
このとき、スキャンfS_2がFM−CWモードであるので(図8のS52)、物標検出部34は、前回検出物標Ob_1の距離R_1と速度V_1、及び1スキャン分の経過時間とを用い、スキャンfS_2でのその物標の距離pR_2を予測する。そして、前回検出物標Ob_1の方位角A_1と、今回検出物標Ob_2の方位角A_2との差が許容範囲内であれば、検出した距離R_2と予測された距離pR_2とを比較する。そして、その誤差が予め定めた許容範囲内であれば、スキャンfS_2での今回検出物標Ob_2は連続性を有すると判定する。そして、連続性履歴を格納したカウンタ変数の値を「1」インクリメントさせて「2」とし、方位角A_2、距離R_2、及び速度V_2をメモリに格納する(図8のS54)。
【0067】
さらに、その次のスキャンfS_3では、物標検出部34は、方位角A_3にて物標Ob_3を検出すると、その距離R_3、速度V_3を検出する(図6手順S4〜S10)。そして、この今回検出物標Ob_3の連続性を判定する(図6手順S12、図8手順S50〜S62)。
【0068】
このとき、スキャンfS_3がFM−CWモードであるので(図8のS52)、物標検出部34は、前回検出物標Ob_2の距離R_2と速度V_2、及び1スキャン分の経過時間から距離pR_2を予測する。そして、前回検出物標Ob_2の方位角A_2と、今回検出物標Ob_3の方位角A_3との差が許容範囲内であれば、検出した距離R_3と予測された距離pR_3とを比較する。そして、その誤差が予め定めた許容範囲内であれば、スキャンfS_3での今回検出物標Ob_3は連続性を有すると判定する。そして、連続性履歴を格納したカウンタ変数の値を「1」インクリメントさせて「3」とし、方位角A_3、距離R_3、及び速度V_3をメモリに格納する(図8のS54)。
【0069】
そして、カウンタ変数の値が「3」に達したので、物標検出部34は、今回検出物標Ob_3の方位角A_3、距離R_3、及び速度V_3を車両ECUに出力する(図6の手順S16、S18)。
【0070】
図11は、連続する複数のFM−CWモードのスキャンのうちの1スキャンにおいて、物標がロストされる場合を示す。スキャンfS_1における動作は、図10(A)と同じであるので、説明を省略する。なお、スキャンfS_1で検出される物標が新規の物標でなく、既に連続性判定済みの物標である場合も、次の手順が適用される。
【0071】
次のスキャンfS_2では、前回検出物標Ob_1の方位角A_1との差が許容範囲内の今回検出物標が存在しないので(図8のS56のNO)、物標検出部34は、前回検出物標Ob_1の距離R_nと速度V_n、及び1スキャン分の経過時間とから求められるその物標の距離pR_n+1、及び、前回検出物標Ob_1の方位角A_1、速度V_1に対応する今回検出物標Ob_2が検出されたものと推定し(図8のS66)、これを今回推定物標として格納する。
【0072】
すると、その次のスキャンfS_3では、物標検出部34は、前回検出物標として推定されたOb_2の距離pR_2と速度V_1、及び1スキャン分の経過時間から距離pR_3を予測する。そして、前回検出物標として推定されたOb_2の方位角A_1と、今回検出物標Ob_3の方位角A_3との差が許容範囲内であれば、検出した距離R_3と予測された距離pR_3とを比較する。そして、その誤差が予め定めた許容範囲内であれば、スキャンfS_3での今回検出物標Ob_3は連続性を有すると判定する。そして、連続性履歴を格納したカウンタ変数の値を「1」インクリメントさせて「3」とし、方位角A_3、距離R_3、及び速度V_3をメモリに格納する(図8のS54)。
【0073】
そして、物標検出部34は、カウンタ変数の値が「3」に達したので、今回検出物標Ob_3の方位角A_3、距離R_3、及び速度V_3を車両ECUに出力する(図6の手順S16、S18)。
【0074】
このように、物標がロストされた場合は、前回検出物標から推定された今回検出物標を用いて次のスキャンでの距離を予測する。そして、次のスキャンでは、その予測距離を用いて連続性を判定する。そうすることにより、物標がロストされたことにより連続性が中断されることなく、次のスキャンでは連続性が維持される。
【0075】
次に、図12は、連続した複数のFM−CWモードのスキャンfS_nの間に、CWモードのスキャンcS_nが実行される場合を示す。スキャンfS_1における動作は、図10と同じであるので、説明を省略する。なお、スキャンfS_1で検出される物標が新規の物標でなく、既に連続性判定済みの物標である場合も、次の手順が適用される。
【0076】
レーダ装置10は、CWモードのスキャンcS_2において、まず方位角A_2における物標Ob_2を検出する。そして、レーダ装置10は、図3(C)、(D)で説明した方法により、この今回検出物標Ob_2の速度V_2を検出する(図6手順S4、S20、S22、S24)。そして、今回検出物標Ob_2の連続性を判定する(図6手順S12、図8手順S50、S52、S64)。
【0077】
ここで、スキャンcS_2では距離は検出されないので、レーダ装置10は、前回検出物標Ob_1の方位角A_1と、今回検出物標の方位角A_2とを比較し、その誤差が所定の範囲内であれば、物標Ob_2は連続性を有すると判定し、連続性履歴を格納したカウンタ変数の値を「1」インクリメントさせて「2」とする(図9の手順S70〜S78)。そして、物標Ob_2は方位角A_2、距離pR_2、速度V_2の今回検出物標として推定される(図9のS80)。
【0078】
そして、次のスキャンfS_3では、物標検出部34は、前回検出物標として推定されたOb_2の距離pR_2と速度V_2、及び1スキャン分の経過時間から距離pR_3を予測する。そして、前回検出物標として推定されたOb_2の方位角A_2と、今回検出物標Ob_3の方位角A_3との差が許容範囲内であれば、検出した距離R_3と予測された距離pR_3とを比較する。そして、その誤差が予め定めた許容範囲内であれば、スキャンfS_3での今回検出物標Ob_3は連続性を有すると判定する。そして、連続性履歴を格納したカウンタ変数の値を「1」インクリメントさせて「3」とし、方位角A_3、距離R_3、及び速度V_3をメモリに格納する(図8のS54)。
【0079】
そして、カウンタ変数の値が「3」に達したので、物標検出部34は、今回検出物標Ob_3の方位角A_3、距離R_3、及び速度V_3を車両ECUに出力する(図6の手順S16、S18)。
【0080】
このように、本実施形態では、CWモードのスキャンが実行されたときに、故障検出だけでなく物標の方位角と速度とを検出する。そして、物標の方位角を基準に連続性を判定し、検出した速度により今回検出物標を推定する(今回推定速度)。そして、今回推定物標から次のFM−CWモードのスキャンでの距離を予測する。
【0081】
そうすることにより、CWモードの間に物標の速度が急変した場合であっても、これをリアルタイムに予測距離に反映できる。よって、前回のFM−CWモードで検出した前回検出物標からのみ今回推定物標を推定し、これに基づき次のFM−CWモードでの距離を予測する場合より、精度よく次のFM−CWモードでの距離を予測することができる。よって、次のFM−CWモードで検出される物標が確度良く連続性を維持することができる。
【0082】
上記第1の実施例の好適な変形例では、CWモードのときに連続性を判定する場合に、検出された情報の信頼性を担保するために、反射波の受信レベルに応じて検出物標の距離に重み付けをする。図13は、かかる手順を説明する図である。
【0083】
図13(A)のフローチャート図は、図8のS56とS60の間に追加され、手順S56の結果が「YES」のとき、すなわち、前回検出物標と連続性を有する今回検出物標が検出されたときに実行される。
【0084】
物標検出部34は、今回スキャンでの反射波の受信レベルに対する重みa(S562)を、図13(B)に示す対応関係により求める。そして、前回スキャンでの反射波の受信レベルと今回スキャンでの反射波の受信レベルとの差に対応する重みbを「1」に設定する(S566)。そして、今回の反射波の受信レベルWmにaとbを乗算し、その結果Wを重みとして、今回検出物標の速度V_nを次の式により算出する(S568)。
【0085】
Vn=(1−W)V_n−1+W・V_n (ただし、V_n−1は前回検出物標の速度である)
そして、物標検出部34は、上記の速度V_nを、今回検出物標の速度として採用する(S569)。
【0086】
このように、今回の反射波の受信レベルが大きいほど、今回検出物標の速度の信頼性を高くして、今回推定物標に反映できる。よって、信頼性の高い今回検出物標の速度を車両ECUに出力でき、あるいは、次回の距離の予測に用いることができる。なお、この手順は、スキャンのモードがFM−CWモードであって今回検出物標が連続性を有するとき、及び、CWモードのときに、実行される。よって、CWモードのスキャンで、今回推定物標に反映される検出距離の精度に反射波の受信レベルを反映させることにより、より信頼性の高い検出距離を推定に用いることができ、推定の精度を向上させることができる。
【0087】
ところで、FM−CWモードのスキャンでは、同一の物標であっても、反射面の形状により複数の反射ピークが得られる場合がある。かかる場合に、その物標の方位角を一意に特定することが困難となる。よって、その次のCWモードのスキャンでは、前回検出物標と今回検出物標の連続性を方位角を基準にして判定する際に、方位角の信頼性が低くなる。
【0088】
その点、本実施形態における第2の実施例では、同一物標から複数のピークが形成される場合、各ピークに対応する速度は同じであることに着目し、FM−CWモードでの前回検出物標とCWモードでの今回検出物標との連続性判定の基準として、方位角のかわりに速度を用いる。そして、速度の差が許容範囲内の場合に、今回検出物標は前回検出物標と連続性を有すると判定する。かかる場合における手順が、図14〜図17に示される。
【0089】
[第2の実施例]
図14は、本実施形態の第2の実施例における、レーダ装置10によるメイン動作の手順を説明するフローチャート図である。図14のフローチャート図は、図6のフローチャート図に示された第1のメイン動作の手順に、同一速度の今回検出物標をグループ化する処理(手順S14)が追加されたフものである。なお、追加箇所は点線で囲んである。そして、図15のフローチャート図に、手順S14の詳細な手順が示される。
【0090】
まず、物標検出部34は、今回検出物標を方位角に対応するピークのレベル順にソートする(S142)。そして、物標検出部34は、ソートした順に全ての今回検出物標について(S144、S156)、次の手順を実行する(S146)。
【0091】
物標検出部34は、処理中の今回検出物標と、その他の全ての今回検出物標を比較し、同一の速度を有する今回検出物標同士をグループ化する(S146)。このグループ化処理は、グループ化の判定が行われていない今回検出物標が無くなるまで、実行される(S148、S150、S152、S154)。
【0092】
このようにして、同一物標から検出された複数の今回検出物標のうち、速度が等しい今回検出物標同士がグループ化される。なお、以下では、このグループ化された複数の今回検出物標を、今回検出グループという。また、次のスキャンでは、これを前回検出グループという。
【0093】
図16は、CWモードのスキャンでの連続性判定手順を示す図9のフローチャート図に、手順S73、S82、S84、S86、S88、S90が追加されたフローチャート図である。なお、追加箇所は点線で囲んである。
【0094】
物標検出部34は、手順S72で前回検出物標の距離、速度、及び経過時間から今回の物標の距離を予測した後、前述した同一速度グループ化処理が実行された場合は(S73のYES)、前回検出物標の全てについて、反射波のピークのレベルの差と速度の差とが最小となる今回検出物標を抽出する(S82、S84,S86)。
【0095】
そして、抽出した物標の速度と方位角、及び前回検出物標から予測した距離とを有する物標を今回検出物標として推定し、これを今回推定物標としてメモリに格納する(S88)。さらに、物標検出部34は、今回推定物標と前回検出グループとを対応付け、次のFM−CWモードのスキャンでも同一物標から複数のピークが検出されて同一速度の物標がグループ化される場合に、新たにグループ化された検出物標のグループと、今回推定物標との連続性が維持できるようにする(S90)。
【0096】
図17(A)は、CWモードのときに反射波の受信レベルに応じた重み付けをする図13の手順に、手順S564と手順S570を追加したものである。なお、追加箇所は点線で囲んである。物標検出部34は、同一速度の前回検出グループが判定された場合には(S564のYES)、前回スキャンでの反射波の受信レベルと今回スキャンでの反射波の受信レベルとの差に対応する重みbを、図17(B)の対応関係により求める(S570)。
【0097】
このとき、前回の反射波の受信レベルは、今回検出物標が連続性を有する前回検出グループの受信レベルの代表値が用いられる。ここで、前回検出グループの受信レベルと、今回検出物標の受信レベルとの差が大きい場合は、今回検出物標の距離の信頼性が低いことを意味する。よって、そのような場合には、今回検出物標の距離を今回推定物標に反映する割合を小さくすることにより、今回推定物標の推定精度を高くすることができる。
【0098】
なお、上述の説明においては、検出物標の距離はレーダ装置10と物標との直線距離を示している。しかし、自車両の前方方向と、これと直角方向とを座標軸とした座標平面を想定し、この座標平面上での先行車両の前方方向の座標を距離として用いてもよい。
【0099】
また、近年では、先行車両への追従走行制御に加え、追突の危険を察知したときに安全制御装置を作動させるような対衝突対応制御が求められている。そして、かかる対衝突対応制御では、レーダ装置の故障診断を定期的に実行するということと、先行車両と接近した状況でその距離を確実に検出することとが求められる。その点上記の実施形態によれば、CWモードのスキャンで故障診断を定期的に実行しつつ、CWモードのスキャンでの物標を精度よく推定できるので、その後のスキャンでの検出物標の連続性が維持できる。よって、先行車両の速度を、迅速に検出することができる。
【0100】
さらに、上述の説明では、先行車両を検出する車載用レーダ装置を例に説明した。しかし、車両の後方や側方を監視するためのレーダ装置にも本実施形態は適用でき、上記同様の作用効果を奏する。また、本実施形態のレーダ装置は、車両以外の移動体にも搭載しても、同様の作用効果を奏する。
【0101】
以上説明したように、本実施形態によれば、CWモードのキャンの間に物標の速度が急変しても、これを推定処理に反映できる。よって、その推定結果に基づき、次回のスキャンで検出される距離と乖離しない距離を予測することが可能となる。よって、連続性の履歴が中断することによる物標の情報を出力する時期の遅れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本実施形態におけるレーダ装置が車両に搭載されたときの使用状況を説明する図である。
【図2】レーダ装置10が送信するレーダ波の、時間に対する周波数変化を示す図である。
【図3】各スキャンモードでの、物標の距離等を検出する原理を説明する図である。
【図4】各モードのスキャンで検出される物標について、レーダ装置10が検出する情報を説明する図である。
【図5】本実施形態におけるレーダ装置の構成を示す図である。
【図6】本実施形態の第1の実施例における、レーダ装置のメインの動作手順を説明するフローチャート図である。
【図7】レーダ波の周波数変調モードがCWモードのときの、ピーク検出処理の詳細な動作手順を説明するフローチャート図である。
【図8】物標検出部34による連続性判定処理の詳細な動作手順を説明するフローチャート図である。
【図9】CWモードで検出された物標の連続性判定手順を詳細に説明するフローチャート図である。
【図10】連続するFM−CWモードのスキャンで物標がロストせずに検出される場合を示す図である。
【図11】連続するFM−CWモードのスキャンにおいて、物標がロストされる場合を示す図である。
【図12】FM−CWモードのスキャンの間にCWモードのスキャンが実行される場合を示す図である。
【図13】反射波の受信レベルに応じて検出物標の距離に重み付けをする手順を説明するフローチャート図である。
【図14】本実施形態の第2の実施例における、レーダ装置のメインの動作手順を説明するフローチャート図である。
【図15】同一速度の今回検出物標をグループ化する処理を詳細に示すフローチャート図である。
【図16】第2の実施例における、CWモードで検出された物標の連続性判定手順を詳細に説明するフローチャート図である。
【図17】第2の実施例における、反射波の受信レベルに応じて検出物標の距離に重み付けをする手順を説明するフローチャート図である。
【符号の説明】
【0103】
10:レーダ装置、30:制御部、34:物標検出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調を施した第1のレーダ波を送受信して所定領域をスキャンし、前記スキャンごとに物標の距離と速度を検出するレーダ装置において、
過去のスキャンで検出された物標の距離と速度とに基づき現在のスキャンでの当該物標の距離を予測する物標距離予測手段と、
前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出された回数をカウントし、前記カウントの値が規定数に達したときに、前記検出された物標の距離を出力する連続性判定手段と、
前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出されないときは、前記予測された距離と前記過去のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する第1の物標推定処理を行う物標推定手段とを有し、
前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、前記予測された距離と当該現在のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する第2の推定処理を行うことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、検出された前記速度が規定速度のときに、前記第2の物標推定処理を行うことを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記スキャンごとに物標の方位角をさらに検出し、
前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、過去のスキャンで検出された物標の方位角に一致する方位角を有する規定数の物標が検出されたときに、前記第2の物標推定処理を行うことを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、受信された前記第2のレーダ波のレベルに基づき、検出される前記速度に重み付けをして前記第2の物標推定処理を行うことを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
周波数変調を施した第1のレーダ波を送受信して所定領域をスキャンし、前記スキャンごとに物標の距離または速度を検出するレーダ装置の物標検出方法において、
過去のスキャンで検出された物標の距離と速度とに基づき現在のスキャンでの当該物標の距離を予測する物標距離予測工程と、
前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出されないときは、前記予測された距離と前記過去のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する第1の物標推定処理を行う物標推定工程と、
前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出された回数をカウントし、前記カウントの値が規定数に達したときに、前記検出された物標の距離を出力する連続性判定工程とを有し、
前記物標推定工程では、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、前記予測された距離と当該現在のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する第2の推定処理を行うことを特徴とする物標検出方法。
【請求項1】
周波数変調を施した第1のレーダ波を送受信して所定領域をスキャンし、前記スキャンごとに物標の距離と速度を検出するレーダ装置において、
過去のスキャンで検出された物標の距離と速度とに基づき現在のスキャンでの当該物標の距離を予測する物標距離予測手段と、
前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出された回数をカウントし、前記カウントの値が規定数に達したときに、前記検出された物標の距離を出力する連続性判定手段と、
前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出されないときは、前記予測された距離と前記過去のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する第1の物標推定処理を行う物標推定手段とを有し、
前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、前記予測された距離と当該現在のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する第2の推定処理を行うことを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、検出された前記速度が規定速度のときに、前記第2の物標推定処理を行うことを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記スキャンごとに物標の方位角をさらに検出し、
前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、過去のスキャンで検出された物標の方位角に一致する方位角を有する規定数の物標が検出されたときに、前記第2の物標推定処理を行うことを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記物標推定手段は、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、受信された前記第2のレーダ波のレベルに基づき、検出される前記速度に重み付けをして前記第2の物標推定処理を行うことを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
周波数変調を施した第1のレーダ波を送受信して所定領域をスキャンし、前記スキャンごとに物標の距離または速度を検出するレーダ装置の物標検出方法において、
過去のスキャンで検出された物標の距離と速度とに基づき現在のスキャンでの当該物標の距離を予測する物標距離予測工程と、
前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出されないときは、前記予測された距離と前記過去のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する第1の物標推定処理を行う物標推定工程と、
前記現在のスキャンで前記予測された距離に対応する物標が検出された回数をカウントし、前記カウントの値が規定数に達したときに、前記検出された物標の距離を出力する連続性判定工程とを有し、
前記物標推定工程では、前記現在のスキャンで前記周波数変調を施さない第2のレーダ波を送受信して物標の速度を検出した場合には、前記予測された距離と当該現在のスキャンで検出された速度とに対応する物標が検出されたものと推定する第2の推定処理を行うことを特徴とする物標検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−92410(P2009−92410A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260864(P2007−260864)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]