説明

レーダ装置侵入物検知装置

【課題】 本発明はレーダ装置侵入物検知装置に関し、同一レーダ周波数帯域のレーダ装置間の干渉による誤検出を避けることができる高信頼度のレーダ装置侵入物検知装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 送受信スイッチ22,23を逆相で切り替え、目標と自レーダの相対速度、距離を検出するFMCWレーダと、該レーダにより固定距離に設置した少なくとも1つの基準反射断面積反射体32からのレーダ検知受信レベルを検知する手段40と、前記受信レベルがヌルとなる送受切替周波数にした時の信号レベルと閾値とを比較し、干渉障害を判別するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーダ装置侵入物検知装置に関し、更に詳しくはFMCW(周波数変調連続波)レーダ装置等が他レーダ装置から干渉を受けた場合の誤検知を防止するレーダによる手段検知を用いた踏切等の遮断侵入物検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、踏切等の特定場所に侵入する物体の光線の送受信、電波の送受信を用いた遮断検知を用いた警報装置が実用化されている。この種の装置としては、高周波信号を変調信号により周波数変調して送信し、目標物体からの反射信号を受信し、送信信号の一部を分岐させることによって、受信機の局部発信信号源として周波数変換するFMCWレーダ装置に関し、ミリ波帯用でありながら安価で温度安定性に優れ、しかも高性能のFMCW装置が知られている(例えば特許文献1参照)。また、送信アンテナと受信アンテナを分けずに1つのアンテナを用いて構成を簡単にしたレーダ装置が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
図13は技術文献2記載の先行技術の構成例を示すブロック図である。図において、電圧制御発振器(VCO)3には、周波数が数kHzの三角波のベースバンド信号(MOD)が印加され、電圧制御発振器3で周波数変調が行われる。即ち、入力電圧が大きいほど、電圧制御発振器3は高い周波数の信号を出力する。この被周波数変調信号は周波数foが数10GHzであり、送信側スイッチ(SW1)4に供給されると共に、その一部が分岐されて受信ミキサ(MIX1)7に供給される。
【0004】
送信側スイッチSW1は、スイッチ駆動信号源(LO)1の出力する駆動信号により開閉制御される。なお、駆動信号は周波数fSWが数10MHzでデューティ50%の矩形波である。そして、スイッチSW1の閉成時に周波数変調信号がアンテナ共用手段6を通してアンテナ5に供給され、送信される。
【0005】
また、スイッチ駆動信号源1の出力する駆動信号は、インバータ2で受信側スイッチ(SW2)7に供給されている。これにより、送信側スイッチSW1開成時に受信側スイッチSW2が閉成され、この受信側スイッチSW2の閉成時に、アンテナ5で受信した送信信号がアンテナ共用手段6、受信側スイッチSW2を通して受信ミキサ7に供給され、ここでIF信号とされて出力される。
【0006】
アンテナ5での受信信号の周波数はfo+fδで表され、受信側スイッチSW2でASK変調され、周波数変換されることにより、周波数fo+fδ−fSW、fo+fδ+fSWの信号となり、受信側ミキサ7で周波数fSW−fd、fSW+fdの周波数スペクトラムのIF信号となる。
【0007】
このIF信号は、FM回路でビート周波数fδが検出され、周波数変調信号の周波数増加期間と周波数減少期間それぞれのビート周波数fδから目標物体の相対速度及び距離が演算される。このような構成のシステムでは、単一のアンテナを送信及び受信で共用するため、レーダ装置の小型化及び低廉化が可能となる。
【0008】
図14は従来のレーダ遮断検知システムの構成例を示す図である。図では、通行路13を介してレーダ装置と反射体が設置されている。11はレーダ装置1、12は該レーダ装置11からの信号を受けて反射する反射体1である。14はレーダ装置2、15は該レーダ装置2からの信号を受けて反射する反射体2である。16はレーダ装置14と反射体12の間を遮断する車両である。17はレーダ搭載車両である。
【0009】
ここでは、レーダ装置2と反射体2の間での動作を例にとって説明する。車両16が存在しない場合には、レーダ装置2から出射された信号は、反射体2で反射され、レーダ装置2に戻る。該レーダ装置2は、この返信信号を解析してレーダ装置2と反射体5の間に何もないことを認識する。
【0010】
ここで、通行路13に車両16が入ってくると、それまで反射体2で反射された信号レベルは、車両16で遮断されて低下する。レーダ装置2は、この反射信号を解析して、車両16が通行路13に入ってきたことを認識する。この場合、反射体2の反射信号が弱くなるので、レーダ装置2は車両16の存在を認識する。
【0011】
一方、別の場所からレーダ搭載車両17が入ってくると、このレーダ搭載車両17から出射された信号は、レーダ装置2に入射される。このレーダ搭載車両17からのレーダ信号を受信することで、レーダ装置2の受信信号が大きくなり、車両16が存在しないと判断してしまうおそれがある。
【特許文献1】特開平5−40169号公報(段落0038〜0053、図6)
【特許文献2】特開平9−243738号公報(段落0028〜0033、図1〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、レーダ装置と同一レーダ周波数帯域のレーダ装置間の干渉による誤検出を避けることができる高信頼度のレーダ装置侵入物検知装置を提供することを目的としている。基準反射体間の遮断をレーダにより検知する遮断侵入物検知システムのレーダ方式は、回路構成が比較的簡単で、静止目標も検知できるFMCW方式が有望である。屋外設置の前記システムでは、実用化している車載レーダ装置等からの他レーダ波の干渉による誤検知を防止することが求められている。ここで、誤検知とは、前述したように、基準反射体とレーダ間の遮断があるにもかかわらず、干渉波により遮断レベルよりも高い受信信号が出力され、遮断を検知できないという問題がある。
【0013】
通常、60GHz帯、76GHz帯の車載レーダでは、道路を走行する対向車間の干渉対策として、定められた45度偏波で送信し、アンテナの異偏波識別性能により軽減している。しかしながら、固定レーダ対移動レーダ間の同一周波数レーダ間の干渉は、必ずしも対向で干渉する場合に限定されず、周囲の反射物に反射して同偏波で干渉する問題がある。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、同一レーダ周波数帯域のレーダ装置間の干渉による誤検出を避けることができる高信頼度のレーダ装置侵入物検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)請求項1記載の発明は、送受信スイッチを逆相で切り替え、目標と自レーダの相対速度、距離を検出するFMCWレーダと、該レーダにより固定距離に設置した少なくとも1つの基準反射断面積反射体からのレーダ検知受信レベルを検知する手段と、前記受信レベルがヌルとなる送受切替周波数にした時の信号レベルと閾値とを比較し、干渉障害を判別することを特徴とする。
(2)請求項2記載の発明は、FMCWレーダの送信信号を送信スイッチによりパルス送信し、受信スイッチを反射目標からの受信パルスと重なる遅延で切り替え、目標と自レーダ装置の相対速度、距離を検出する手段と、前記レーダ装置により、基準反射断面積反射体からのレーダ装置検知レベルを検知する手段と、前記受信レベルがヌルとなる受信スイッチ遅延開閉時の受信レベルと、閾値と比較し、干渉障害を判別することを特徴とする。
(3)請求項3記載の発明は、レーダ装置の距離分解能以上離した少なくとも1つの基準反射体からの信号レベルと雑音レベルを検出し、前記反射体からの信号変化から信号干渉比の高い信号を選択することを特徴とする。
(4)請求項4記載の発明は、干渉波の偏波と同一の偏波で送信するアンテナと、前記送信アンテナの偏波と同一の偏波受信アンテナと前記送信アンテナの偏波と直交する偏波受信アンテナをスイッチにより時分割で切り替えるレーダ送受信手段と、レーダ距離分解能内に設置した入射波と反射波が同一のレーダ反射体と、入射波と反射波が直交するレーダ反射体からの信号の変化を検出してレーダ装置と前記反射体間の遮断を検出する手段を具備し、前記反射体からの信号変化から信号干渉比の高い信号を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
(1)請求項1記載の発明によれば、レーダ検知受信レベルを検知する手段を設け、この検知手段が検出したレベルがヌルとなる送受切替周波数にした時の信号レベルと所定の閾値とを比較することにより、干渉障害を判別することができる。ここで、ヌルとは被干渉レーダが一定の距離からの反射信号に対して信号受信部が不感状態となることをいう。
(2)請求項2記載の発明によれば、基準反射断面積反射体からのレーダ装置検知レベルを検知する検知手段を設け、この検知手段の受信レベルがヌルとなる受信スイッチ遅延開閉時の受信レベルと所定の閾値とを比較することにより、干渉障害を判別することができる。
(3)請求項3記載の発明によれば、少なくとも1つの基準反射体からの信号レベルと雑音レベルを検出し、反射体からの信号変化から信号干渉比の高い信号を選択することができる。また、干渉測定と遮断検出が粗同時に行なえ、遮断検出の高信頼性が向上する。
(4)請求項4記載の発明によれば、入射波偏波と反射波偏波が同一のレーダ反射体と入射波と反射波が直交するレーダ反射体からの信号の変化を検出してレーダ装置と反射体間の遮断を検出する検出手段を設けて、前記反射体からの信号変化から信号干渉比の高い信号を選択することができる。また、干渉測定と遮断検出が粗同時に行なえ、遮断検出の高信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を詳細に説明する。本発明では、図13に示す回路が前提となっている。
本発明は、基準反射体からの反射信号をレーダ装置で検知した正常な受信レベルと、反射信号を急峻な空間フィルタにより消去した時の受信レベルを定期的に切り替えて比較し、前記2種類のレベル変化から干渉を判定し、干渉ありと判定される時は、干渉信号の警告を出力するようにしている。具体的には、該空間フィルタの消去時におけるレーダ受信レベルを予め設定した閾値と比較することにより干渉波入力を判定するものである。
【0018】
正常受信時の空間フィルタの消去距離は、レーダ装置から基準反射体までの距離以外に設定しておく。前記空間フィルタの動作を図1,図2の波形で説明する。図1は、図12の回路構成における各部の動作波形を示す。送受スイッチ22,23をスイッチ駆動周波数fSWにより、互いに逆相で開閉すると、τだけ遅延した目標反射受信波と前記スイッチ周波数の周期と一致したとき受信スイッチが開となり、ヌルとなる。図2は送受スイッチを開閉時間幅で、受信スイッチを送信スイッチを基準に遅延させて開閉する場合の回路構成と各部波形を示す図である。図1,図2において、(a)は送信機動作波形、(b)は目標反射受信波、(c)は受信機動作波形である。
【0019】
図2において、20はスイッチ駆動発振回路、21は該スイッチ駆動発振回路20の出力を受ける駆動波形遅延スライド回路、22は前記スイッチ駆動発振回路20と接続される送信スイッチ、23は前記駆動波形遅延スライド回路21と接続される受信スイッチである。空間フィルタとしては、送受スイッチ逆相でスイッチの周波数を可変する方法と、一定周期で受信スイッチ波形を遅延器で遅延を可変する方法がある。
【0020】
周波数型の空間フィルタは、図1に示すように、伝播遅延時間とスイッチ周期とが一致すると、受信機は不感状態(null:ヌル)になるため、送受信スイッチのスイッチ周波数を切り替えることにより、距離Rの基準反射体からの信号を受信又は選択的に排除することができる。ここで、送受信号を0−πの位相差でスイッチすると、受信スイッチ23の出力は、スイッチ周波数fsw(Hz)と距離R(m)の関係で、スイッチ無しの連続波受信電力と送受スイッチありの電力電力との受信電力比Jは以下に示すような式となる。
【0021】
レーダの目標反射遅延時間τは、目標までの距離R(m)、光速C(m/s)とすると、
τ=2R/C (1)
J=(1/2)・(2/π)sin(kπ) (2)
kは、送受信スイッチ22,23の周期をTSW、τがTSWを越える場合、何周期分の遅れかを示すτ/TSWの整数部分をnとすると、
n・TSW≦τ<((2n+1)/2)・TSWの条件では、
k=(τ−(n・TSW))/TSW (3)
((2n+1)/2)・TSW≦τ<(n+1)・TSWの条件では、
k=((n+TSW)−τ)/TSW (4)
となる。
【0022】
ここで、近距離の受信感度nullとなる距離Rnullとスイッチ周波数fswは
τ=TSW (5)
fSW=C/2Rnull (6)
となる。因みに、目標距離R=10mでは、fsw=15MHzで感度が最低となる。
【0023】
遅延型の空間フィルタは、図2に示す送受スイッチ波形のように、送受のスイッチ波形を遅延させ、反射体からの受信波形が受信断となる波形に一致させヌルにする方式である。
【0024】
ここで、送信パルス周期をTSWとすると、デューティ50%の送信パルスで送信される。送信された高周波送信パルスが目標から反射して受信機に到達する高周波送信パルスは伝播遅延時間τo遅れて受信機に到達する。受信スイッチ23は、送信パルスと同一のデューティ50%のパルス周期で開閉駆動する。
【0025】
送信スイッチ22が開の受信機オフの区間が目標からの反射受信パルスと一致すると、受信機は不感状態(ヌル)になる。ここで、送受信号を相対タイミング遅延時間でスイッチすると、受信スイッチ23の出力は、受信スイッチ遅延時間τs、距離をR(m)の関係で変化する。
【0026】
レーダ装置の目標反射遅延時間τoは、目標までの距離をR(m)、光速をC(m/s)とすると、
τo=2R/C (7)
となる。送信スイッチ駆動パルス波形と逆相の受信駆動パルス波形を遅延線で、遅延量を基準反射体からの受信レベルが最低となる遅延量に設定する。
【0027】
受信機がオフとなる遅延時間τoffと目標からの反射伝播遅延時間τoが等しくなるとき受信感度がヌルとなるので、距離Rnullは(7)式より、
Rnull=C・(τs−(TSW/2)/2 (8)
で与えられる。ここで、送受信スイッチ22,23の周期をTSW、τがTSWを越える場合、何周期分の遅れかを示すτ/TSWの整数部分をnとすると、
Rnull=(n・C・(τs−(TSW/2)))/2 (9)
となる。
【0028】
図3は空間フィルタの特性例を示す図である。横軸は距離(m)、縦軸は受信電力(dBm)である。この特性におけるヌルのτo=5.35ns,σ(レーダ反射断面積):10dBm,Pt(送信パワー):0dBm,G(アンテナのゲイン):30.9dBである。受信電力が7.9m〜8.2m近辺で鋭いフィルタ特性をもっていることが分かる。
【0029】
図4は本発明のレーダ装置の構成例を示すブロック図である。図2と同一のものは、同一の符号を付して示す。図に示す例は、本発明を簡易ヘテロダインレーダ装置に適用した場合を示している。図において、30は送信アンテナ、31は受信アンテナ、32は基準反射体である。22は送信アンテナ30と接続される送信スイッチ、23は受信アンテナ31と接続される受信スイッチである。
【0030】
20は送信スイッチ22と受信スイッチ23にスイッチ駆動信号を与えるスイッチ駆動発振回路としての送受スイッチ周波数発生器である。33は受信スイッチ23からの受信信号を受けて増幅する増幅器、34は該増幅器33の出力と結合回路38の出力を受ける第一ミキサ、35は該第一ミキサ34の出力と信号処理回路40の出力を受ける第二ミキサである。36は該二ミキサ35の出力を受けるバンドパスフィルタ(BPF:帯域通過フィルタ)である。
【0031】
40は帯域通過フィルタ36の出力を受ける信号処理回路である。該信号処理回路40は幾つかの機能を持っている。先ず、三角波変調信号を発生し、送受スイッチ周波数発生器20に与える。次に、送受スイッチ22,23のスイッチ制御を行なう。次に、基準反射体距離信号ヌル時、非ヌル時の距離ビート信号を検出記憶する。また、基準反射体と送受アンテナ30,31間の遮断検知判定を行なう。また、干渉波の判定処理を行なう。更に、干渉警報出力を行なう。該信号処理回路40からは、遮断信号出力と、干渉警報出力が出力される。該信号処理回路40としては、例えばCPUが用いられる。
【0032】
37は信号処理回路40からの変調信号を受けるFM発振器、38は該FM発振器37からの出力を受ける結合回路である。該結合回路38からは、前記第一ミキサ34に制御信号が出力される。39は該結合回路38の出力を増幅する増幅器でその出力は、前記送信スイッチ22に入っている。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下のとおりである。
【0033】
信号処理回路40のクロック源に同期した三角波発生回路(図示せず)からの三角波信号を変調信号としてFM発振器(電圧制御発振器)37に入力する。該FM発振器37は、高周波FM変調波を発生させる。この被変調高周波信号を結合回路38でその一部を分岐し、第一ミキサ34に入力する。
【0034】
一方、被変調高周波信号は、増幅器39で増幅された後、送受スイッチ周波数発生器20のスイッチ制御信号により、送信スイッチ22を開閉し、送信アンテナ30から送信される。この送信波は、基準反射体32で反射され、受信アンテナ31で受信される。ここで、送受スイッチ位相反転のスイッチ周波数で、受信スイッチ23を開閉する。受信スイッチ23で受信された受信信号は、増幅器33で増幅された後、第一ミキサ34に入る。ミキシングによりビート信号を発生する。
【0035】
該第一ミキサ34は、結合回路38からの制御信号を受けて受信信号とのミキシング動作を行なう。第一ミキサ34の出力(ビート信号)は、第二ミキサ35に入り、信号処理回路40からの送受スイッチ周波数と同一の制御信号との間でミキシングされる。第二ミキサ35の出力は、帯域通過フィルタ36を経て信号処理回路40に距離ビート信号として入る。信号処理回路40は、前述したような各種の信号処理を行ない、遮断信号出力と、干渉警報出力を行なう。このようにして、FMCWレーダ方式と同一の検出方法のビート周波数とその信号レベルを前記スイッチ周波数に対応させ、信号処理回路40のメモリに記憶する。
【0036】
図5は本発明の干渉判定のフローを示す図である。本発明のレーダ装置と、固定距離に設置した基準反射体32の反射信号がヌルになる送受スイッチ周波数に設定し(S1)、前記固定距離に相当するビート信号を帯域通過フィルタ36に通し、選択通過させた出力レベルの所定時間平均を測定し、記憶させる(S2)。そして、この所定時間平均を予め設定した閾値1と比較する(S3)。
【0037】
そして、受信レベルの時間平均が閾値1以上であるかどうかをチェックする。受信レベルの時間平均が閾値1以上ある場合には、他レーダ装置からの干渉があると認定し、信号処理回路39から干渉警報出力を出力する(S4)。この場合、遮断判定は行わない。そして、受信レベルの時間平均が閾値1以下になるまで干渉判定を繰り返す。
【0038】
受信レベルの時間平均が閾値1以下になった場合には、他レーダ装置からの干渉がないと見なし、前記固定距離の反射体の反射を十分受信できる送受スイッチ周波数に設定し(S5)、ビート信号を帯域通過フィルタ36に通し、選択通過させた出力レベルの所定時間平均をとる(S6)。そして、出力レベルの所定時間平均を予め設定した閾値2と比較する(S7)。受信レベルの時間平均が閾値2以下である場合には、遮断ありと判定し、遮断検知出力を出力する(S8)。閾値2以上の出力レベルであれば、ステップS1の干渉判定動作に戻る。
【0039】
このように、本発明によれば、レーダ検知受信レベルを検知する手段を設け、この検知手段が検出したレベルがヌルとなる送受切替周波数にした時の信号レベルと所定の閾値とを比較することにより、干渉障害を判別することができる。
【0040】
図6はFMCWレーダ装置同士の干渉例を示す図である。この図は、被干渉レーダと与干渉レーダの変調周波数、送信周波数偏移が同一の場合を示している。(a)はRF周波数、(b)はビート周波数である。横軸は何れも時間tである。(a)において、f1は送信周波数、f2は自局受信周波数、f3は干渉周波数である。(b)において、f4は自レーダビート信号、f5は干渉レーダビート信号である。前記レーダ間の距離に関係なく、干渉波によるビートがBPF通過帯域を通過し、出力される。
【0041】
図7はFMCWレーダのCWレーダからの干渉例を示す図である。この図は、被干渉FMCWレーダの送信周波数偏移内にCW周波数の干渉波が受信された場合を示している。(a)はRF周波数、(b)はビート周波数である。横軸は何れも時間tである。前記レーダ間の距離に関係なく、干渉波によるビートがBPF通過帯域を通過し、出力される。
【0042】
図8は送受スイッチ周波数によるレーダ感度を示す図である。縦軸はレーダ感度、横軸は距離である。この図の例は、2個の基準反射体を交互に検出する遮断検知における送受スイッチ周波数毎の感度特性を示している。f1はR1でヌルになる送受スイッチ周波数、f2はR2でヌルになる送受スイッチ周波数である。複数の基準反射体を検出し、複数のヌル時における2個の距離における干渉雑音と信号受信レベルのS/N変化を監視することにより、干渉の判定ができる。障害物がない時は、どちらか一方の基準反射体からの反射レベルと干渉の有無の判定に必要なデータが常時取得できる。
【0043】
図9は偏波切替レーダの干渉検知構成例を示す図である。基準反射体に同一偏波反射体41と直交偏波反射体42を設け、同一偏波と直交偏波を受信するアンテナを設けたレーダ装置により、干渉を検知するシステム構成例を示している。図において、43はレーダ送受信器、44はスイッチ、45は+45偏波アンテナ、46は+45偏波アンテナ、47は−45偏波アンテナである。
【0044】
アンテナ45からの送信信号は、同一偏波反射体41と直交偏波反射体42に向けて送出される。この時、同一偏波反射体41と直交偏波反射体42からの反射信号がそれぞれアンテナ46,47で検出され、スイッチ44を介してレーダ送受信器43に与えられる。このように構成することにより、与干渉レーダの偏波が+45偏波、−45偏波のいずれであっても、偏波識別により、干渉の少ない信号を選択することができる。即ち、ヌルになる送受スイッチング周波数で干渉レベルNを検出し、ヌルの発生しないスイッチング周波数、前記各偏波アンテナと偏波反射体の反射信号Sを検出し、同一偏波反射体と直交偏波反射体からの受信波を受信偏波アンテナ切替毎のS/Nを比較する。
【0045】
図10はアンテナ切り替え動作例を示す図である。(a)は直交偏波の送信V信号、(b)は垂直偏波の受信V信号、(c)は水平偏波の受信H信号、(d)は切り替え制御信号である。(a)に示すように、送信信号は常時出力されており、受信信号はVとHが切り替え制御信号(d)により交互にオンになるようにしている。
【0046】
図11は干渉有り無しのレーダ受信信号例を示す図である。(a)は干渉無しの受信レベルを、(b)はV偏波干渉有りの受信レベルを示している。何れも縦方向はレーダ受信レベルを、横方向は時間tを示す。干渉無しの場合には、距離R1と距離R2の何れもS/Nが十分に高いレベルにある。これに対して、V偏波干渉有りの場合には、図に示すように、干渉レベルがアンテナの偏波識別効果で干渉閾値VHに比較して高いレベルと低いレベルが存在する。即ち、R1の場合には、受信信号の干渉波レベルが閾値VHよりも高いので、V偏波の干渉波が存在すると判定することができる。
【0047】
図12は本発明のレーダ装置の他の構成例を示すブロック図である。図4と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、40´は信号処理回路であり、遮断信号と干渉警報出力を出力する。該信号処理回路40´は、以下の機能を有している。
a1:クロック信号発生
a2:送受スイッチパルス信号作成(受信スイッチパルス遅延機能を含む)
a3:ビート信号A/D変換
a4:ビート信号高速フーリエ変換
a5:ビート信号メモリ
a6:ビート信号振幅ヌル検出
a7:干渉判定
30は送信アンテナ、31は受信アンテナ、32は基準反射体(目標)、22は送信信号を駆動する送信スイッチ、23は受信アンテナ31からの受信信号をスイッチングする受信スイッチである。50は受信スイッチ23の出力信号と、電圧制御発振器(VCO)54とのミキシングを行なうミキサ1である。51はミキサ1の出力を受ける帯域通過フィルタ、52は該帯域通過フィルタ51の出力と、信号処理回路40´の出力とをミキシングするミキサ2である。該ミキサ2の出力は、信号処理回路40´に入っている。
【0048】
53は信号処理回路40´からのタイミング信号を受けて三角波を出力する三角波発生回路、54は該三角波発生回路53の出力を受けて入力電圧に対応した周波数信号を変調信号として出力する電圧制御発振器(VCO)である。該VCOの出力は、前記したミキサ1に入る他、送信スイッチ22に入っている。54は信号処理回路40´の出力を受けて送信スイッチ22のタイミングを制御するドライバ1、55は同じく信号処理回路40´の出力を受けて受信スイッチ23のタイミングを制御するドライバ2である。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0049】
信号処理回路40´のクロック源に同期した三角波発生回路53からの三角波信号を続くVCO(電圧制御発振器)54に入力する。該VCOは、高周波FM変調波を発生させる。被変調高周波信号の一部を分岐し、ミキサ1に入力する。一方、被変調高周波信号は、ドライバ1のスイッチ制御信号により、送信スイッチ22を開閉され、送信アンテナ30から送信される。送信信号は、基準反射体32で反射され、受信アンテナ31で受信される。ここで、信号処理回路からの遅延制御信号で駆動されるドライバ2からの送信スイッチパルス幅が同一で、前記送信スイッチパルス波形より所定の遅延量で遅延させて受信スイッチ23を開閉する。受信スイッチ23で受信された受信信号は、ミキサ1に入る。
【0050】
該ミキサ1は、前記VCOからの制御信号を受けてミキシング動作を行なう。ミキサ1の出力は、帯域通過フィルタ51を介してミキサ2に入り、信号処理回路40´からの制御信号によりミキシングされる。ミキサ2の出力は、信号処理回路40´に距離ビート信号として入る。信号処理回路40´は、前述したような各種の信号処理を行ない、遮断信号出力と、干渉警報出力を行なう。このようにして、FMCWレーダ方式と同一の検出方法のビート周波数とその信号レベルを前記スイッチ周波数に対応させ、信号処理回路40のメモリに記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】送受スイッチレーダの各部動作波形を示す図である。
【図2】送受スイッチ回路構成と各部動作波形を示す図である。
【図3】空間フィルタの特性例を示す図である。
【図4】本発明のレーダ装置の構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の干渉波判定のフローを示す図である。
【図6】FMCWレーダ装置同士の干渉例を示す図である。
【図7】FMCWレーダのCWレーダ干渉例を示す図である。
【図8】送受スイッチ周波数によるレーダ感度を示す図である。
【図9】偏波切替レーダの干渉検知構成例を示す図である。
【図10】アンテナ切り替え動作例を示す図である。
【図11】干渉有り無しのレーダ受信信号例を示す図である。
【図12】本発明のレーダ装置の他の構成例を示すブロック図である。
【図13】先行技術の構成例を示すブロック図である。
【図14】従来のレーダ遮断検知システムの構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
20 送受スイッチ周波数発生器
22 送信スイッチ
23 受信スイッチ
30 送信アンテナ
31 受信スイッチ
32 基準反射体
33 増幅器
34 第一ミキサ
35 第二ミキサ
36 帯域通過フィルタ(BPF)
37 FM発振器
38 結合回路
39 増幅器
40 信号処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受信スイッチを逆相で切り替え、目標と自レーダの相対速度、距離を検出するFMCWレーダと、該レーダにより固定距離に設置した少なくとも1つの基準反射断面積反射体からのレーダ検知受信レベルを検知する手段と、前記受信レベルがヌルとなる送受切替周波数にした時の信号レベルと閾値とを比較し、干渉障害を判別することを特徴とするレーダ侵入物検知装置。
【請求項2】
FMCWレーダの送信信号を送信スイッチによりパルス送信し、受信スイッチを反射目標からの受信パルスと重なる遅延で切り替え、目標と自レーダ装置の相対速度、距離を検出する手段と、前記レーダ装置により、基準反射断面積反射体からのレーダ装置検知レベルを検知する手段と、前記受信レベルがヌルとなる受信スイッチ遅延開閉時の受信レベルと、閾値と比較し、干渉障害を判別することを特徴とするレーダ侵入物検知装置。
【請求項3】
レーダ装置の距離分解能以上離した少なくとも1つの基準反射体からの信号レベルと雑音レベルを検出し、前記反射体からの信号変化から信号干渉比の高い信号を選択することを特徴とする請求項1又は2記載のレーダ装置侵入物検知装置。
【請求項4】
干渉波の偏波と同一の偏波で送信するアンテナと、前記送信アンテナの偏波と同一の偏波受信アンテナと前記送信アンテナの偏波と直交する偏波受信アンテナをスイッチにより時分割で切り替えるレーダ送受信手段と、レーダ距離分解能内に設置した入射波偏波と反射波偏波が同一のレーダ反射体と、入射波偏波と反射波偏波が直交するレーダ反射体からの信号の変化を検出してレーダ装置と前記反射体間の遮断を検出する手段を具備し、前記反射体からの信号変化から信号干渉比の高い信号を選択することを特徴とする請求項1又は2記載のレーダ装置侵入物検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−86009(P2007−86009A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277989(P2005−277989)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】