説明

レーダ装置

【課題】小型化しても放熱性に優れるレーダ装置を提供すること。
【解決手段】レーダ装置1は、前面1aを前方に向けて図示しない車両に配されるレーダ装置であって、前面1a側に向って漸次拡開して前面1aに開口したホーン部2がアレイ状に複数配されたアンテナ筐体部3、及びホーン部2と連通した導波管5が内部に配されてアンテナ筐体部3に接続された給電部6を有して、空間への電波放射及び放射した電波の空間からの反射波を受信するホーンアンテナ部7とを備え、給電部6へ供給する高周波信号を生成、又は反射した高周波信号を中間周波信号に変換する無線部8が、給電部6に密着して配され、高周波信号を制御、又は中間周波信号を処理する回路部10を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にレーダ装置は、空間への電波放射及び空間からの反射波を受けるアンテナ部と、アンテナ部へ供給する高周波信号を生成及び反射した高周波信号を中間周波信号に変換する無線部と、高周波信号を制御及び中間周波信号を処理する回路部と備えている。
このようなレーダ装置の場合、無線部の電力消費が大きく動作時に発熱を伴うために、無線部の排熱を行う必要がある。通常、無線部をアンテナや筐体、ヒートシンク等に接続して排熱させている。
【0003】
一方、上述したレーダ装置を自動車等の車両に搭載する場合には、自動車への搭載性を向上させるために装置全体を小型化する必要がある。そこで、アンテナ部として平面アンテナを使用するレーダ装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このようなレーダ装置の場合、平面アンテナ自体の厚みを薄くすることができ、その結果としてレーダ装置の小型化に際して奥行き寸法の低減化を図ることができる。
また、排熱に関しては、平面アンテナを金属部品からなるスロットアンテナとして、その導波路の側壁をフィンとして使用するとともに、平面アンテナと無線部及び回路部とを一体的に密着させている。従って、無線部及び回路部で発生した熱を平面アンテナに直接熱伝導により伝えることができ、ヒートシンク等がなくても多くのフィンから外部に放熱させて排熱している。
【特許文献1】特開2005−20525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のスロットアンテナは、各スロットでの放射量を制御するためにスロットの開口幅は極めて狭くなってしまう。そのため、通気性が悪く導波路壁面から効率よく排熱することができなくなり、無線部からの発熱量が大きい場合には、別途放熱部材を設ける必要が生じる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、小型化しても放熱性に優れるレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係るレーダ装置は、前面に向って漸次拡開して開口したホーン部がアレイ状に複数配されたアンテナ筐体部と、前記ホーン部と連通した導波管が内部に配されるとともに前記アンテナ筐体部に接続された給電部と、前記アンテナ筐体部及び前記給電部を有して空間への電波放射及び該電波の空間からの反射波を受信するホーンアンテナ部とを備えたレーダ装置であって、前記ホーンアンテナ部が、放熱部材からなり、前記給電部へ供給する高周波信号を生成、又は反射した前記高周波信号を中間周波信号に変換する無線部と、前記高周波信号を制御、又は前記中間周波信号を処理する回路部との少なくとも何れか一つが、前記給電部に接して配されていることを特徴とする。
【0008】
この発明は、無線部にて発生した熱を熱伝導によって直接ホーンアンテナ部に伝えることができ、ホーン部の表面を放熱面としてアンテナ筐体部から外部へ排熱することができる。この際、ホーン部と導波管とが連通して配され、これらの内部には空気があるので、導波管やホーン部内で空気の自然対流を生じさせることができる。そのため、ホーンアンテナ部の熱伝導だけでなく、空気の自然対流によっても熱をホーン部に伝えて放熱させることができる。
【0009】
また、本発明に係るレーダ装置は、前記レーダ装置であって、前記導波管が、前記回路部から前記ホーン部側に向かう水平路と、該水平路に対して垂直方向に延びる垂直路とに前記給電部内で分岐されるとともに、前記垂直路が前記水平路よりも長いことを特徴とする。
【0010】
この発明は、水平路が車両の前後方向、垂直路が車両の上下方向になるように車両に搭載された際、導波管の垂直路が水平路よりも長いので、導波管内を流れる空気の多くを垂直路内の下方から上方に流すことができる。従って、導波管内で空気の自然対流をより容易に発生させることができ、導波管内の空気による熱伝達量をより大きくすることができる。また、導波管内で発生した自然対流によりホーン部内にも対流が発生し、ホーン部の内部壁面からの放熱効果を向上することができる。
【0011】
また、本発明に係るレーダ装置は、前記垂直路が略鉛直方向に延びた状態で車両に取り付けられることを特徴とする。
この発明は、垂直路が略鉛直方向に延びた状態でレーダ装置が車両に配されるので、車両が停止した状態であっても垂直路を通してより確実に自然対流を発生させることができ、放熱させることができる。
【0012】
また、本発明に係るレーダ装置は、前記レーダ装置であって、前記水平路及び前記垂直路に対して直交する方向における前記ホーン部間に、前記垂直路の方向に沿って延びる貫通孔が配されていることを特徴とする。
また、本発明に係るレーダ装置は、前記レーダ装置であって、前記ホーン部及び前記給電部間に、前記回路部から前記ホーン部側に向かう方向に対して垂直方向に沿って延びる貫通孔が配されていることを特徴とする。
【0013】
この発明は、貫通孔の表面をホーンアンテナ部の表面積に新たに加えることができ、ホーンアンテナ部の表面積を増大して放熱面をより多く増やすことができる。また、この貫通孔内にも空気の流れを形成して対流を発生させることができ、より多くの熱を放熱させることができる。さらに、貫通孔の分だけホーンアンテナ部を軽量化することができる。
【0014】
また、本発明に係るレーダ装置は、前記貫通孔が略鉛直方向に延びた状態で車両に取り付けられることを特徴とする。
この発明は、貫通孔が略鉛直方向に延びた状態でレーダ装置が車両に配されるので、車両が停止した状態であっても貫通孔を通してより確実に自然対流を発生させることができ、放熱させることができる。
【0015】
また、本発明に係るレーダ装置は、前記レーダ装置であって、前記放熱部材が、アルミニウム又はマグネシウムを含む金属であることを特徴とする。
この発明は、放熱部材の熱伝導率が大きいので、無線部や回路部からの発熱をより多く熱伝導によって排熱させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、小型化しても好適な放熱性を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る第1の実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
本実施形態に係るレーダ装置1は、図1及び図2に示すように、前面1aを前方に向けて図示しない車両に配されるレーダ装置であって、前面1a側に向って漸次拡開して開口したホーン部2がアレイ状に複数配されたアンテナ筐体部3と、ホーン部2と連通した導波管5が内部に配されるとともにアンテナ筐体部3に接続された給電部6を有して、空間への電波放射及び放射した電波の空間からの反射波を受信するホーンアンテナ部7とを備えている。このレーダ装置1には、給電部6へ供給する高周波信号を生成、又は反射した高周波信号を中間周波信号に変換する無線部8が、給電部6に接して配されている。また、高周波信号を制御、又は中間周波信号を処理する回路部10が、無線部8に接して配されている。レーダ装置1の全体は、カバー部11によって水密に覆われている。なお、回路部10も無線部8とともに給電部6に接して配されていても構わない。
【0018】
ホーンアンテナ部7は、アルミニウム合金の鋳物から形成されており、ホーン部2と給電部6とは一体に成型、或いは、複数部材の締結、接合により一体化されている。無線部8と回路部10とは、給電部6の後側に密着して配されている。
【0019】
ホーンアンテナ部7のホーン部2は、レーダの用途、或いは、必要とするビーム形状によって、ホーン部2のサイズや配置、組み合わせ、素子数が異なるように配される。本実施形態では、ホーン部2は四角錐状に形成されており、車両に搭載した際に縦方向となる方向に4つ、横方向に5つのホーン部2が隣接してアンテナ筐体部3に配されている。即ち、レーダ装置1は、縦方向に4素子及び横方向に5素子のホーンアンテナを備えている。
【0020】
導波管5は、断面が矩形状とされ、マイクロ波のTE10モードは伝送させる一方、高次モードは伝送不能とする大きさで均一断面に形成されている。この導波管5は、前面1aにて等位相になるように、回路部10側からホーン部2側に向う水平路5A(即ち、図1において、上下及び中間部の水平部)と、水平路5Aに対して垂直方向に延びる垂直路5Bとに分岐されている。即ち、回路部10側から前面1aに向って、等線路長にてトーナメント形状に分岐されている。この際、垂直路5Bが、水平路5Aよりも長くなるように分岐されている。
【0021】
次に、本実施形態に係るレーダ装置1の本発明に係る作用・効果について説明する。
まず、前面1aが図示しない車両の前方となるように、レーダ装置1を車両に装着する。このとき、導波管5の水平路5Aはレーダ装置1の前後方向に、垂直路5Bはレーダ装置1の上下方向に延びるようにして配される。
【0022】
このレーダ装置1を駆動した場合、無線部8が電力消費とともに発熱する。ここで、無線部8は、ホーンアンテナ部7の給電部6に密着して配されている。従って、無線部8で発生した熱は、熱伝導によって給電部6に伝えられ、アンテナ筐体部3内を移動して、アンテナ筐体部3の表面から外部へ放熱される。
【0023】
一方、無線部8から給電部6に伝えられた熱は、導波管5内の空気にも伝えられる。このとき、導波管5内では、水平路5Aよりも垂直路5B内の空気量のほうが多いので、加熱された空気は、図3中の実線矢印に示すように、導波管5の垂直路5Bを上方に移動して導波管5を通して自然対流が発生する。こうして、熱せられた空気が自然対流によりホーン部2から放出されることにより排熱される。
【0024】
このレーダ装置1によれば、無線部8にて発生した熱を熱伝導によって直接ホーンアンテナ部7に伝えることができ、ホーン部2の表面を放熱面としてアンテナ筐体部3から外部へ排熱することができる。この際、ホーン部2と導波管5とが連通して配されているので、導波管5やホーン部2内で空気の自然対流を生じさせることができる。そのため、ホーンアンテナ部7の熱伝導だけでなく、空気の自然対流によっても熱をホーン部2から放熱させることができるとともに、ホーン部2内部の空気にも対流を生じさせることができ、ホーン部2の内壁からの放熱効率を高めることができる。従って、装置の小型化を図っても放熱性を向上させることができる。
【0025】
また、車両に搭載された際、導波管5の垂直路5Bが水平路5Aよりも長いので、導波管5内を流れる空気の多くを垂直路5B内の下方から上方に流すことができる。従って、導波管5内で空気の自然対流をより容易に発生させることができ、導波管5内の空気による熱伝達量をより大きくすることができる。
さらに、ホーンアンテナ部7が、金属の中でも熱伝導率が比較的大きいアルミニウム合金からなるので、無線部8からの熱をより多く熱伝導によって排熱させることができる。
【0026】
次に、第2の実施形態について図4及び図5を参照しながら説明する。
なお、上述した第1の実施形態と同様の構成要素には同一符号を付すとともに説明を省略する。
第2の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、本実施形態に係るレーダ装置20のホーンアンテナ部21には、導波管5の水平路5A及び垂直路5Bに対して直交する方向、即ち横方向のホーン部2間に、垂直路5Bの方向に沿って延びる貫通孔22が配されているとした点である。
【0027】
ホーン部2が前面20aに開口してテーパ状となっているので、アンテナ筐体部23における横方向のホーン部2間を仕切る隔壁25は、前面20aから給電部6の方向に向ってホーン部2と逆方向に漸次厚くなって形成されている。そこで、ホーンアンテナ部21を上面矢視した際の貫通孔22の断面は、上述した隔壁25の形状に沿うように、前面20a側の幅が狭くなるように形成されている。
この貫通孔22は、金型によって一度に鋳物成型されて形成されている。
【0028】
このレーダ装置20の本発明に係る作用・効果について説明する。
まず、第1の実施形態と同様に、レーダ装置20を図示しない車両に搭載して駆動する。この際、無線部8から発生した熱は、第1の実施形態と同様に、熱伝導によって給電部6に伝えられる。そして、アンテナ筐体部23内を移動して、外部へ放熱される。
【0029】
一方、給電部6に伝えられた熱は、導波管5内の空気と貫通孔22内の空気にもそれぞれ伝えられる。このとき、加熱された空気は、導波管5の垂直路5B及び貫通孔22を上方に移動して自然対流が発生する。こうして、無線部8で発生した熱は、自然対流による熱伝達によってアンテナ筐体部23の内壁面から排熱される。
【0030】
このレーダ装置20によれば、第1の実施形態と同様の作用・効果を奏することができる。
特に、ホーンアンテナ部21の上下方向に貫通孔22が配されているので、貫通孔22の表面をホーンアンテナ部21の表面積に新たに加えることができ、ホーンアンテナ部21の表面積を増大して放熱面をより多く増やすことができる。また、この貫通孔22内にも空気の流れを形成して対流を発生させることができ、より多くの熱を放熱させることができる。さらに、貫通孔22の分だけホーンアンテナ部21を軽量化することができる。
【0031】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、上下方向に並んだ貫通孔22によってホーンアンテナ部21の表面積を増大させているが、これらの貫通孔22を横方向につなげる抜き孔をさらに設けても構わない。また、貫通孔22内にリブを設けて表面積を増大させても構わない。
さらに、貫通孔22が横方向のホーン部2間に配されるとしているが、これに限らず、ホーン部2から給電部6まで延びる大きさの貫通孔として、ホーン部2及び給電部6間に配されるようにしても構わない。
また、貫通孔の形状もホーン部2の形状に合わせたものに限定されるものではなく、円形等であっても構わない。さらに、複数の貫通孔に分かれていても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るレーダ装置を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るレーダ装置の要部の全体概要を示す斜視図である。
【図3】図2の断面図であって、排熱時の状態を示す説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るレーダ装置の要部の全体概要を示す斜視図である。
【図5】図4の断面図であって、貫通孔の形状を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1,20 レーダ装置
1a,20a 前面
2 ホーン部
3,23 アンテナ筐体部
5 導波管
5A 水平路
5B 垂直路
6 給電部
7,21 ホーンアンテナ部
8 無線部
10 回路部
22 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に向って漸次拡開して開口したホーン部がアレイ状に複数配されたアンテナ筐体部と、
前記ホーン部と連通した導波管が内部に配されるとともに前記アンテナ筐体部に接続された給電部と、
前記アンテナ筐体部及び前記給電部を有して空間への電波放射及び該電波の空間からの反射波を受信するホーンアンテナ部と、を備えたレーダ装置であって、
前記ホーンアンテナ部が、放熱部材からなり、
前記給電部へ供給する高周波信号を生成、又は反射した前記高周波信号を中間周波信号に変換する無線部と、前記高周波信号を制御、又は前記中間周波信号を処理する回路部との少なくとも何れか一つが、前記給電部に接して配されていることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記導波管が、前記回路部から前記ホーン部側に向かう水平路と、該水平路に対して垂直方向に延びる垂直路とに前記給電部内で分岐されるとともに、
前記垂直路が前記水平路よりも長いことを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記レーダ装置は、前記垂直路が略鉛直方向に延びた状態で車両に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記水平路及び前記垂直路に対して直交する方向における前記ホーン部間に、前記垂直路の方向に沿って延びる貫通孔が配されていることを特徴とする請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記ホーン部及び前記給電部間に、前記回路部から前記ホーン部側に向かう方向に対して垂直方向に沿って延びる貫通孔が配されていることを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記レーダ装置は、前記貫通孔が略鉛直方向に延びた状態で車両に取り付けられることを特徴とする請求項4又は5に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記放熱部材が、アルミニウム又はマグネシウムを含む金属であることを特徴とする請求項1から6の何れか一つに記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−192804(P2007−192804A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316977(P2006−316977)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(300052246)株式会社ホンダエレシス (105)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】