説明

レーダ装置

【課題】電波の壁などからの反射により発生するゴーストを高精度に判定することができるレーダ装置を提供する。
【解決手段】レーダ装置において、反射特性判定手段は、側方の壁の反射特性を取得する。反射特性判定手段は、取得した壁の反射特性が所定の閾値以上であるか否かを判定する。仮想壁設定手段は、取得した壁の反射特性が所定の閾値以上である場合に、検出したターゲットの側方に仮想壁を設定する。対称位置判定手段は、仮想壁を側方に設定したターゲットに対して、仮想壁と対称な位置にターゲットがあるか否かを判定する。速度判定手段は、仮想壁と対称な位置にターゲットがあった場合に、仮想壁と対称な位置にあるターゲットの速度が、所定の範囲内にあるか否かを判定する。ゴースト判定手段は、仮想壁と対称な位置にあるターゲットの速度が所定の範囲内にある場合に、仮想壁と対称な位置にあるターゲットをゴーストと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるレーダ装置に関し、より特定的には、検出したターゲットから、電波の反射により発生するゴーストを高精度に判定することができるレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、先行車両などのターゲットを検知するためのレーダ装置を備えた車間距離センサが自動走行制御システム(ACC)などに利用されていた。この車間距離センサが備えるレーダ装置は、ミリ波の電波を車両の前方に向けて照射し、ターゲットによる反射電波を受信し、受信電波より生成した受信信号を送信信号と混合することにより、ターゲットとの相対距離、相対速度などを検出していた。しかしながら、従来のレーダ装置は、例えば、図9に示すように、電波の反射により発生するゴーストを実際のターゲットと誤認識することで、ターゲットを正しく認識できない可能性があった。
【0003】
図9においては、車両55に搭載された従来のレーダ装置は、先行車両51で反射した電波52が、トンネル壁、防音壁などの壁53に反射すると、壁53の中をゴースト54が走行しているように誤認識することがあった。この誤認識を防止するために、従来のレーダ装置においては、自分の車両55の前方を走行する車両だけを認識するようにすることで対応するものがあった。しかしながら、そのような対応をとった場合でも、カーブ路などでは、ゴースト54を自分の車両55の前方を走行する車両として誤認識する場合があった。
【0004】
また、ゴーストを実際のターゲットと誤認識することを防止するレーダ装置としては、例えば、特許文献1に開示されているものがあった。図10は、特許文献1に開示された従来のレーダ装置を備えた車間距離センサの概要を説明するための図である。図10において、車両55に搭載された従来のレーダ装置は、連続して検出される静止物などから、壁53に相当するライン56を求め、ライン56より外側にあるターゲットを全てゴーストと見なし消去していた。これによって、電波の反射によって発生するゴースト54を実際のターゲット51と誤認識することを防止していた。
【特許文献1】特開2001−116839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された従来のレーダ装置は、連続して検出される静止物などからライン56を求め、ライン56よりも外側にあるターゲットを全てゴーストと見なしていたために、標識などの静止物がライン56と判定されると、実際に隣接レーンを走行している車両をゴーストと誤判定する可能性があった。また、このような誤判定を防止するために、ライン56を学習によって更新するとの記載があったが、断片的に出現する静止物を除外してライン56を求めているだけであり、ライン56の精度が高いものではなかった。また、静止物や壁の反射レベルが低い場合にはゴーストを判定できない可能性があった。このように、従来のレーダ装置は、必ずしもゴーストの判定精度が高いものではなかった。
【0006】
それ故に、本発明の目的は、上記従来の課題を解決するものであり、検出したターゲットから、電波の反射により発生するゴーストを高精度に判定することができるレーダー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両に搭載されるレーダ装置に向けられている。そして、上記目的を達成するために、本発明のレーダ装置は、側方又は上下方向の壁の反射特性を取得する取得手段と、取得した壁の反射特性が所定の閾値以上であるか否かを判定する反射特性判定手段と、取得した壁の反射特性が所定の閾値以上である場合に、検出したターゲットの側方又は上下方向に仮想壁を設定する仮想壁設定手段と、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットに対して、仮想壁と対称な位置に他のターゲットがあるか否かを判定する対称位置判定手段と、仮想壁と対称な位置に他のターゲットがある場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、所定の範囲内にあるか否かを判定する速度判定手段と、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が所定の範囲内にある場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定するゴースト判定手段とを備える。
【0008】
また、レーダ装置において、仮想壁設定手段は、取得した壁の反射特性が所定の閾値以上であり、かつ基本ラインに関する情報が入手できる場合は、検出したターゲットの側方又は上下方向に基本ラインに沿った仮想壁を設定してもよい。
【0009】
また、レーダ装置において、仮想壁設定手段は、取得した壁の反射特性が所定の閾値以上である場合に、検出したターゲットの側方又は上下方向に、車両と側方又は上下方向の壁との間の距離だけ間隔を空けて、仮想壁を設定してもよい。
【0010】
また、レーダ装置において、反射特性判定手段は、取得した壁の反射特性が、第1の閾値以上かつ第2の閾値未満(ただし、第1の閾値<第2の閾値)であるか否かを判定し、仮想壁設定手段は、取得した壁の反射特性が第1の閾値以上かつ第2の閾値未満である場合に、検出したターゲットの側方又は上下方向に仮想壁を設定してもよい。
【0011】
また、レーダ装置において、速度判定手段は、仮想壁と対称な位置に他のターゲットがある場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットの速度と、所定の範囲内で一致するか否かを判定し、ゴースト判定手段は、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットの速度と、所定の範囲内で一致する場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定してもよい。
【0012】
また、レーダ装置において、速度判定手段は、仮想壁と対称な位置に他のターゲットがある場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度と、所定の範囲内で一致するか否かを判定し、ゴースト判定手段は、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度と、所定の範囲内で一致する場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定してもよい。
【0013】
また、レーダ装置において、速度判定手段は、仮想壁と対称な位置に他のターゲットがある場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度と、所定の範囲内で一致し、かつ仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度と所定速度だけ異なるか否かを判定し、ゴースト判定手段は、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度と、所定の範囲内で一致し、かつ仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度と所定速度だけ異なる場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定してもよい。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明のレーダ装置によれば、取得した壁の反射特性が所定の閾値以上である場合に、ターゲットの側方又は上下方向に仮想壁を設定することで、ターゲットの側方又は上下方向に仮想壁を正しく設定することができる。同様に、レーダ装置は、取得した壁の反射特性が第1の閾値以上かつ第2の閾値未満である場合に、ターゲットの側方又は上下方向に仮想壁を設定することでも、ターゲットの側方又は上下方向に仮想壁を正しく設定することができる。あるいは、レーダ装置は、ターゲットの側方又は上下方向に基本ラインに沿った仮想壁を設定することで、より正確に仮想壁を設定することができる。
【0015】
また、レーダ装置は、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットに対して、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストとして判定することで、ゴーストの判定精度を高めることができる。同様に、レーダ装置は、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、所定の範囲内にある場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定することで、ゴーストの判定精度を高めることができる。また、レーダ装置は、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットの速度と、所定の範囲内で一致する場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定することでも、ゴーストの判定精度を高めることができる。また、レーダ装置は、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度と、所定の範囲内で一致する場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定することでも、ゴーストの判定精度を高めることができる。
【0016】
これによって、レーダ装置は、電波の壁などからの反射により発生するゴーストを高精度に判定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るレーダ装置の概要構成の一例を示すブロック図である。図1において、レーダ装置は、送信機11、送信アンテナ12、受信アンテナ13、混合器14、フィルタ15、増幅器16、AGC(オートゲインコントローラ)17、A/D変換器18、及び信号処理部19を備える。送信機11は、ランプ波形に変調したミリ波信号を、送信アンテナ12から照射する。送信アンテナ12から所定のビーム角度で照射された電波は、先行車などのターゲットが存在する場合、ターゲットにより反射される。受信アンテナ13が、ターゲットにより反射された電波を受信する。受信した信号は、混合器14により送信機11からの局部発振信号と混合され、フィルタ15、増幅器16、AGC17、A/D変換器18を経由して、信号処理部19へ入力される。
【0018】
信号処理部19では、各ターゲットについての相対距離、相対速度、及び横方向位置等を計算する。なお、これらの構成及び作用は、従来のレーダ装置と変わるところはないので、詳細な説明は省略する。信号処理部19は、例えば、ACC(自動走行制御装置)20と接続され、信号処理部19の計算結果は、ACC装置20へ出力される。ACC装置20は、レーダ装置から取得した各ターゲット情報に基づいて、自動走行制御を行う。
【0019】
図2Aは、車両21に搭載されたレーダ装置による監視範囲を説明する図である。図2Aにおいて、本発明の一実施形態に係るレーダ装置は、前方センサによって前方エリア22を監視し、側方センサによって側方エリア23,24を監視する。すなわち、レーダ装置は、前方センサによって先行車両等のターゲットを主に監視し、側方センサによって側方のガードレール等の壁25を主に監視する。これによって、レーダ装置は、例えば、図2Bに示すような位置に存在する、ターゲット26、ゴースト27、及び壁25を検出することが可能であるものとする。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態に係るレーダ装置の動作の一例を示すフローチャートである。図3において、レーダ装置は、センサによって側方の壁を検出すると(ステップS101)、検出した壁の反射特性を取得する(ステップS102)。そして、レーダ装置は、取得した壁の反射特性が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS103)。取得した壁の反射特性が所定の閾値よりも小さい場合、ステップS101に処理を戻す。反射特性として、反射波の受信強度を用いた場合、受信強度が所定の閾値よりも小さい場合には、壁の反射係数が小さいため、ゴーストは発生しない。
【0021】
一方、レーダ装置は、取得した壁の反射特性が所定の閾値以上である場合、検出したターゲットの側方に仮想壁を設定する(ステップS104)。例えば、図4に示すように、車両21に搭載されたレーダ装置は、前方の道路が直線である場合は、ターゲット26aの側方に仮想壁28aを設定し、前方の道路が左にカーブしている場合は、ターゲット26bの側方に仮想壁28bを設定し、前方の道路が右にカーブしている場合は、ターゲット26cの側方に仮想壁28cを設定する。これによって、レーダ装置は、前方の道路の状態に関係なく、ターゲット26a〜cの側方に仮想壁28a〜cを正しく設定することができる。
【0022】
レーダ装置は、自車両21と側方の壁25との間の距離Dを測定し、仮想壁28a〜cを、ターゲット26a〜cの側方に、この距離Dだけ間隔を空けて設定することができる。なお、レーダ装置は、仮想壁28a〜cを、この距離Dに限らず、ターゲット26a〜cから予め決められた距離だけ間隔を空けて設定してもよいし、カメラ等で監視した実際の走行レーンの幅だけ間隔を空けて設定してもよいものとする。
【0023】
なお、レーダ装置は、ステップS103、104において、取得した壁の反射特性が第1の閾値以上かつ第2の閾値未満(ただし、第1の閾値<第2の閾値)である場合に、センサから取得したターゲット(目標物)の側方に仮想壁を設定するようにしてもよい。また、基本ラインに関する情報が取得できる場合は、レーダ装置は、取得した基本ラインに関する情報を仮想壁の設定に利用してもよい。例えば、レーダ装置は、取得した壁の反射特性が所定の閾値以上であった場合に、取得したターゲットの側方に基本ラインに沿った仮想壁を設定してもよい。また、レーダ装置は、基本ラインに関する情報等を用いることで、取得した壁の反射特性を閾値と比較しないでも、正確な仮想壁を設定することが可能である場合は、ステップS103の動作を省略してもよいものとする。
【0024】
また、レーダ装置は、ステップS104でターゲットの側方に設定した仮想壁を実際の道路の状況等に応じて変更可能であるものとする。例えば、レーダ装置は、前方センサ及び側方センサによる監視状況や、前方カメラが捉えた画像(映像)や、車両の操舵角等によって、仮想壁の設定位置を更新できるものとする。また、レーダ装置は、ヨーレートセンサ等の加速度センサの情報をCAN等の通信手段によって取得して、仮想壁のRの予測に役立てることもできる。
【0025】
次に、レーダ装置は、検出したターゲットに対して、仮想壁と対称な位置を計算によって求める(ステップS105)。そして、計算によって求めた仮想壁と対称な位置に、検出した他のターゲットがあるかどうかを判定する(ステップS106)。仮想壁と対称な位置に他のターゲットが無かった場合、ステップS101に処理を戻す。
【0026】
一方、レーダ装置は、計算によって求めた仮想壁と対称な位置に、他のターゲットがあった場合、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度と、仮想壁を側方に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度とを照合する(ステップS107)。そして、レーダ装置は、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度と、ゴーストとして計算される速度とが所定の範囲内で一致するか否かを判定する(ステップS108)。速度が一致しない場合、ステップS101に処理を戻す。速度が一致する場合、レーダ装置は、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定し、処理を終了する(ステップS109)。
【0027】
また、レーダ装置は、ステップS107、S108において、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度と、ゴーストとして計算される速度とが所定の範囲内で一致し、かつ仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度と、ゴーストとして計算される速度とが所定速度だけ異なる場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定してもよいものとする。この理由を以下に説明する。
【0028】
図5に示すように、レーザ装置を備えた車両21から前方の車両(ターゲット)26を見た場合と、前方のゴースト27を見た場合とでは、角度の違いによって、ターゲット26とゴースト27との間の相対的な速度に若干の違いが生じることになる。そのため、レーダ装置は、この速度の違いを利用することで、ゴースト27の判定精度をさらに高めることができる。具体的には、レーザ装置は、この速度の差を計算し、この速度の差だけ、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、ターゲットの速度と異なっていた場合にだけ、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定してもよい。また、レーダ装置は、壁の反射特性によって、観測されるゴースト27の速度が変わる場合は、壁の反射特性をゴースト27の速度の計算に反映させてもよい。また、レーダ装置は、他のターゲットの反射波の受信強度が、ターゲットの受信強度×壁の反射係数−α<他のターゲットの受信強度<ターゲットの受信強度×壁の反射係数+αの関係にある場合に、他のターゲットをゴーストと判定するようにしてもよい。なお、壁の反射係数は予めマップ等から算出することが可能である。
【0029】
なお、レーダ装置は、ステップS107,S108の代わりに、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度と、仮想壁を側方に設定したターゲットの速度とが所定の範囲内にある場合に、速度が一致すると判定してもよい。あるいは、ターゲット26とゴースト27との位置関係によって、ターゲット26とゴースト27との間に速度の差があまり生じない場合等には、ステップS107、S108の動作を省略してもよいものとする。
【0030】
また、車両21へのセンサの搭載位置としては、図6に示すように、車両21の前方に限らず、側方や後方、又は上部や下部に搭載されてもよい。具体的には、バンパー、フロントライト、リアランプ、ピラー、ミラー、ドア等どのようなパーツに内蔵されたものであってもよい。また、レーダによる検知角度を広げるために、複数のセンサを用いてもよいものとする。また、図7に示すように、センサの検知角の中心軸はセンサの中心軸と一致している必要はない。また、検知範囲において、狭いビームを比較的広くスキャンする方式であってもよい。
【0031】
また、本発明は、車両21の側方の壁に対して適用されるだけでなく、例えば、トンネル等において、車両21の上下方向の壁に対しても適用可能である。具体的には、図8に示すように、車両21の上下方向の壁に対して、ターゲット26に対するゴースト27を判定するのに適用可能である。
【0032】
また、自車両21と側方の壁までの距離が、所定の距離よりも離れている場合には、本制御を実施しなくてもよい。壁までの距離が離れることによって、ゴーストの影響を受けにくくなるためである。
【0033】
以上のように、本発明の一実施形態に係るレーダ装置によれば、取得した壁の反射特性が所定の閾値以上である場合に、ターゲットの側方又は上下方向に仮想壁を設定することで、ターゲットの側方又は上下方向に仮想壁を正しく設定することができる。同様に、レーダ装置は、取得した壁の反射特性が第1の閾値以上かつ第2の閾値未満である場合に、ターゲットの側方又は上下方向に仮想壁を設定することでも、ターゲットの側方又は上下方向に仮想壁を正しく設定することができる。あるいは、レーダ装置は、ターゲットの側方又は上下方向に基本ラインに沿った仮想壁を設定することで、より正確に仮想壁を設定することができる。
【0034】
また、レーダ装置は、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットに対して、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストとして判定することで、ゴーストの判定精度を高めることができる。同様に、レーダ装置は、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、所定の範囲内にある場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定することで、ゴーストの判定精度を高めることができる。また、レーダ装置は、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットの速度と、所定の範囲内で一致する場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定することでも、ゴーストの判定精度を高めることができる。また、レーダ装置は、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度と、所定の範囲内で一致する場合に、仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定することでも、ゴーストの判定精度を高めることができる。
【0035】
これによって、レーダ装置は、電波の壁などからの反射により発生するゴーストを高精度に判定することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係るレーダ装置は、車両等に搭載される車間距離センサ等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーダ装置の概要構成の一例を示すブロック図
【図2A】車両21に搭載されたレーダ装置による監視範囲を説明する図
【図2B】車両21に搭載されたレーダ装置が取得するターゲット26と、ゴースト27とを説明する図
【図3】本発明の一実施形態に係るレーダ装置の動作の一例を示すフローチャート
【図4】本発明の一実施形態に係るレーダ装置による仮想壁の設定方法の一例を説明する図
【図5】仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度と、ゴーストとして計算される速度とを照合する理由について説明する図
【図6】車両21へのセンサの搭載位置を説明する図
【図7】センサの検知角について説明する図
【図8】レーダ装置の車両の上下方向への適用について説明する図
【図9】従来のレーダ装置の動作を説明する図
【図10】従来のレーダ装置の動作を説明する図
【符号の説明】
【0038】
11 送信機
12 送信アンテナ
13 受信アンテナ
14 混合器
15 フィルタ
16 増幅器
17 AGC(オートゲインコントローラ)
18 A/D変換器
19 信号処理部
20 ACC(自動走行制御装置)
21 車両
22 前方エリア
23,24 側方エリア
25 壁
26 ターゲット(前方車両)
27 ゴースト
28 仮想壁
51 車両(ターゲット)
52 電波
53 壁
54 ゴースト
55 車両
56 ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるレーダ装置において、
側方又は上下方向の壁の反射特性を取得する取得手段と、
取得した壁の反射特性が所定の閾値以上であるか否かを判定する反射特性判定手段と、
取得した壁の反射特性が所定の閾値以上である場合に、検出したターゲットの側方又は上下方向に仮想壁を設定する仮想壁設定手段と、
前記仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットに対して、前記仮想壁と対称な位置に他のターゲットがあるか否かを判定する対称位置判定手段と、
前記仮想壁と対称な位置に他のターゲットがある場合に、前記仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、所定の範囲内にあるか否かを判定する速度判定手段と、
前記仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が所定の範囲内にある場合に、前記仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定するゴースト判定手段とを備える、レーダ装置。
【請求項2】
前記仮想壁設定手段は、取得した壁の反射特性が所定の閾値以上であり、かつ基本ラインに関する情報が入手できる場合は、検出したターゲットの側方又は上下方向に基本ラインに沿った仮想壁を設定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記仮想壁設定手段は、取得した壁の反射特性が所定の閾値以上である場合に、検出したターゲットの側方又は上下方向に、前記車両と前記側方又は上下方向の壁との間の距離だけ間隔を空けて、前記仮想壁を設定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記反射特性判定手段は、前記取得した壁の反射特性が第1の閾値以上かつ第2の閾値未満(ただし、第1の閾値<第2の閾値)であるか否かを判定し、
前記仮想壁設定手段は、前記取得した壁の反射特性が第1の閾値以上かつ第2の閾値未満である場合に、検出したターゲットの側方又は上下方向に仮想壁を設定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記速度判定手段は、前記仮想壁と対称な位置に他のターゲットがある場合に、前記仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、前記仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットの速度と、所定の範囲内で一致するか否かを判定し、
前記ゴースト判定手段は、前記仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、前記仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットの速度と、所定の範囲内で一致する場合に、前記仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記速度判定手段は、前記仮想壁と対称な位置に他のターゲットがある場合に、前記仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、前記仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度と、所定の範囲内で一致するか否かを判定し、
前記ゴースト判定手段は、前記仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、前記仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度と、所定の範囲内で一致する場合に、前記仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記速度判定手段は、前記仮想壁と対称な位置に他のターゲットがある場合に、前記仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、前記仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度と、所定の範囲内で一致し、かつ前記仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、前記仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度と所定速度だけ異なるか否かを判定し、
前記ゴースト判定手段は、前記仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、前記仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度と、所定の範囲内で一致し、かつ前記仮想壁と対称な位置にある他のターゲットの速度が、前記仮想壁を側方又は上下方向に設定したターゲットがゴーストとして計算される速度と所定速度だけ異なる場合に、前記仮想壁と対称な位置にある他のターゲットをゴーストと判定することを特徴とする、請求項1に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−133761(P2009−133761A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310983(P2007−310983)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】