説明

レール取付孔の閉塞構造

【課題】
レール取付孔に対して閉塞キャップが傾いた状態で圧入されるのを防止し、もってレール取付孔と閉塞キャップとの間に隙間が発生するのを確実に防止することが可能な軌道レール取付孔の閉塞構造を提供する。
【解決手段】
閉塞キャップ70は、前記レール取付孔11bの内径よりも大きな外径に形成されて該レール取付孔11bに圧入固定される嵌合部71と、この嵌合部71をレール取付孔11bに圧入する前に前記レール取付孔11bに挿入されて、前記閉塞キャップ70をレール取付孔11bに対して仮位置決めする先端部72とから構成され、前記先端部72の周囲には断面略三角形状に突出して先端エッジ部75を形成する位置決め突部74が設けられ、前記先端エッジ部75の外径はレール取付孔11bの内径と同一またはそれよりも僅かに大きく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械や各種産業用ロボットの直線案内部や曲線案内部に使用され、移動テーブルなどの可動体を往復運動自在に案内する案内装置に関するものである。これらの案内装置は、前記可動体を搭載するスライダと、このスライダを案内する軌道レールとから構成されるが、本発明は、前記軌道レールにレール取付孔が設けられている場合に、軌道レールの固定後にそのレール取付孔を閉塞するための構造を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2002−48138号公報
【0003】
従来より、工作機械や各種産業ロボットの直線案内部を構成する直線案内装置としては、長手方向に沿ってボール転走面が形成された直線状の軌道レールと、この軌道レールに対して多数のボールを介して組付けられたスライダとから構成されるものが知られている。前記スライダは軌道レールのボール転走面に対向する負荷転走面を具備すると共に、この負荷転走面と軌道レールの転走面との間で荷重を負荷しながら転走する多数のボールを無限循環させる循環路を具備しており、ボールを無限循環路内で循環させることにより、スライダが軌道レールの全長にわたって連続的に移動することが可能となっている。
【0004】
通常、前記軌道レールは工作機械等のベッドやコラムといったベース部に対して固定ボルトを締結することで固定されている。このため、軌道レールにはその長手方向に沿って所定の間隔で前記固定ボルトを挿通させるためのレール取付孔が貫通形成されている。固定ボルトの頭部が軌道レール上に突出すると、前記スライダが軌道レールに沿って移動する際の障害となることから、前記レール取付孔の内部は小径部と大径部の2段に形成されており、小径部はボルトの呼び径よりも僅かに大きな内径に、大径部は前記ボルト頭部よりも僅かに大きな内径に形成されている。すなわち前記大径部がボルト頭部の収容部となり、かかるボルト頭部が軌道レールの表面に突出するのを防止している。
【0005】
しかし、このようなレール取付孔は軌道レールに沿って移動するスライダの内部に工作機械におけるワークの削り屑やクーラント液等の異物が侵入する原因となる。前記スライダの内部ではボールが循環しており、かかるボールはスライダと軌道レールとの間で荷重を負荷しているが、スライダの内部にワークの削り屑や塵芥などの異物が侵入すると、軌道レールの転走面、スライダの負荷転走面ボールに傷が発生し、あるいはこれらの摩耗が促進され、直線案内装置におけるスライダの移動精度が早期に損なわれてしまう。また、工作機械でワーク冷却のために使用されるクーラント液がスライダの内部に侵入すると、ボールの表面に付着している潤滑油が洗い流されてしまい、やはり転走面やボールの早期摩耗の原因となってしまう。スライダ内部への異物の侵入を防止するため、かかるスライダの周囲には軌道レールと摺接するシール部材が設けられており、スライダの移動に伴って軌道レールの表面に付着した異物を排除するように構成されているが、軌道レールにレール取付孔が設けられていると、異物がレール取付孔を介してスライダの内部に侵入するので、シール部材の効果が減じられてしまう。また、前記シール部材はある程度の締め付け力を持って軌道レールの表面に接しているので、レール取付孔が存在すると、シール部材の先端部がレール取付孔の開口縁と擦れてしまい、シール部材が早期に劣化してしまうといった不都合もある。
【0006】
このことから、異物が軌道レールに付着し易い環境下で直線案内装置を使用する場合には、軌道レールを固定ボルトによってベース部に取り付けた後に、かかる軌道レールのレール取付孔に閉塞キャップを適合させて、このレール取付孔を閉塞する方策が採られている。この閉塞キャップはレール取付孔の大径部に収容された固定ボルトの頭部を覆うようにして該大径部に嵌合し、閉塞キャップが軌道レールの表面と同一面を形成するように構成されている。
【0007】
この閉塞キャップとしては、特開2002−48138号公報に金属製の閉塞キャップが開示されている。この閉塞キャップは、レール取付孔の大径部に圧入される嵌合部と、この嵌合部に先んじてレール取付孔に挿入される導入部とから構成されている。前記嵌合部は圧入代を有してレール取付孔の大径部の内径よりも僅かに大きな外径に形成されており、ハンマー等の工具を用いて上方から外力を及ぼすことにより、レール取付孔の大径部に圧入されるようになっている。また、かかる嵌合部には複数の逃げ溝が形成されており、圧入によって生じた応力を前記逃げ溝で緩和するようになっている。更に、前記導入部はレール取付孔の大径部の内径よりも僅かに小さな外径の円柱状に形成されており、この導入部を嵌合部の圧入に先立ってレール取付孔に挿入することで、閉塞キャップが傾いた状態でレール取付孔に圧入されてしまうことを防止している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記導入部の外周面はレール取付孔の内周面に対して隙間を具備していることから、前記導入部を嵌合部に先んじてレール取付孔に挿入したとしても、レール取付孔に挿入された導入部が該レール取付孔に対して偏心していると、嵌合部それ自体も取付孔に対して偏心してしまう。一方、圧入後の閉塞キャップがレール取付孔内に脱落するのを防止するため、かかる嵌合部における圧入の締め代はある程度以上に大きく設けなくてはならず、このことから嵌合部のレール取付孔への圧入は前述のように工具を用いて大きな力を及ぼすことが必要となる。このため、前記導入部がレール取付孔に対して偏心していると、工具を用いて嵌合部へ一度に外力を及ぼした際に、閉塞キャップが傾いて圧入されてしまう懸念がある。
【0009】
閉塞キャップが傾いてレール取付孔に圧入されると、かかる閉塞キャップとレール取付孔との間に隙間が発生してしまい、結果的に、この隙間を介してワークの削り屑等の異物がスライダの内部に侵入してしまうことになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、レール取付孔に対して閉塞キャップが傾いた状態で圧入されるのを防止し、もってレール取付孔と閉塞キャップとの間に隙間が発生するのを確実に防止することが可能な軌道レール取付孔の閉塞構造を提供することにある。
【0011】
すなわち、本発明は案内装置の軌道レールに設けられたレール取付孔を閉塞するための構造であり、かかる閉塞キャップは嵌合部と先端部とから構成されている。前記嵌合部は軌道レールに開設されたレール取付孔の内径よりも大きな外径で略円柱状に形成されており、レール取付孔に対して圧入固定される。一方、前記先端部は前記嵌合部に先立ってレール取付孔に挿入され、嵌合部の圧入以前に閉塞キャップをレール取付孔に対して仮位置決めする。
【0012】
閉塞キャップをレール取付孔に対して仮位置決めするために、前記先端部の周囲には位置決め突部が形成されている。この位置決め突部の先端には微小面積でレール取付孔の内周面と接する先端エッジ部が形成されており、この先端エッジ部の外径はレール取付孔の内径と同一又はそれよりも僅かに大きく設定されている。
【0013】
このため、閉塞キャップをレール取付孔に固定するにあたり、先ずは前記先端部をレール取付孔に挿入すると、前記先端エッジ部がレール取付孔の内周面と僅かに干渉することになる。先端エッジ部の外径がレール取付孔の内径と完全に同一の場合、閉塞キャップの先端部はレール取付孔に対して隙間なく嵌合することになり、先端部を軽くレール取付孔に押し込むことで、閉塞キャップをレール取付孔に対して仮位置決めすることができる。また、先端エッジ部の外径がレール取付孔の内径よりも僅かに大きい場合も、先端部をレール取付孔に対して軽く押し込むと、前記位置決め突部の突出端である先端エッジ部を押し潰すことができ、かかる先端部をレール取付孔に対して簡単に嵌合させることができる。
【0014】
すなわち、作業者は工具を用いて大きな力を及ぼすことなく、閉塞キャップの先端部をレール取付孔に対して隙間なく嵌合させることができる。これにより、作業者は、工具を用いて嵌合部をレール取付孔に圧入する作業に先立ち、手作業で閉塞キャップをレール取付孔に対して正確に仮位置決めすることができ、工具を用いた嵌合部の圧入作業を正確に且つ円滑に行うことができ、閉塞キャップがレール取付孔に対して傾いた状態で圧入固定されてしまうのを可及的に防止することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に沿って本発明のレール取付孔の閉塞構造を詳細に説明する。
【0016】
図1及び図2は本発明が適用可能な軌道レールを備えた直線案内装置の一例を示すものである。この直線案内装置は、ベッド等のベース部上に配設される軌道レールと、この軌道レール1に沿って自在に移動可能なスライダとから構成されており、前記スライダ2が軌道レール上を自在に移動し得るようになっている。
【0017】
前記軌道レール1は断面略矩形状に形成されており、ボール3が転走するボール転走溝10a,10bが長手方向に沿って計4条形成されている。これらボール転走溝10a,10bは軌道レール1の両側面に夫々形成されており、上側に位置するボール転走溝10aは図3の紙面左右方向から45°上向きに形成される一方、下側のボール転走溝10bは45°下向きに形成されている。また、軌道レール1にはその長手方向に適宜間隔をおいてレール取付孔11が形成されており、軌道レール1はこのレール取付孔11に挿入される図示外の固定ボルトによって被取付面であるベース部上に固定される。
【0018】
一方、上記スライダ2は、テーブル等の可動体の取付面41及び当該可動体の固定ボルトが螺合するタップ孔42を有する移動ブロック4と、この移動ブロック4の前後両端面に対して固定される一対の蓋体5,5とから構成されており、かかる蓋体5を移動ブロック4に固定することで当該スライダ内にボール3の無限循環路が具備されるようになっている。また、上記蓋体5には軌道レール1に摺接するシール部材6が取り付けられており、軌道レール1に付着している塵芥等がスライダ2の移動に伴って当該スライダ2内に侵入するのを防止している。
【0019】
先ず、上記移動ブロック4は取付面41が形成された水平部4a及びこの水平部4aから垂れ下がる一対のスカート部4b,4bを備えて断面略サドル状に形成されており、これら水平部4aの下面側及び各スカート部4bの内面側には軌道レール1Aのボール転走溝10a,10bに対向する4条の負荷転走溝43a,43bが直線状に形成されている。また、上記水平部4a及び各スカート部4bには各負荷転走溝43a,43bに夫々対応したボール戻し孔44a,44bが形成されており、蓋体5に形成されたU字状の方向転換路によって各負荷転走溝43a,43bとこれに対応するボール戻し孔44a,44bとが連結され、ボールの無限循環路が形成されるようになっている。
【0020】
これにより、軌道レール1のボール転走溝10a,10bと移動ブロック4の負荷転走溝43a,43bとの間で荷重を負荷していたボール3は、スライダ2の移動に伴って上記負荷転走溝43a,43bを転走し終えると上記荷重から開放されて一方の蓋体5の方向転換路に入り込み、そのままの無負荷状態で負荷転走溝43a,43bにおける転走方向とは逆方向へ向かって移動ブロック4のボール戻し孔44a,44bを転走する。また、ボール戻し孔44a,44bを転走し終えたボール3は他方の蓋体5の方向転換路51を介して再度軌道レール1と移動ブロック4との間に入り込み、荷重を負荷しながら上記負荷転走溝43a,43bを転走する。
【0021】
また、上記移動ブロック4の各袖部4bの下端並びに水平部4aの下面には夫々ボール保持プレート45,46が取り付けられている。このボール保持プレート45,46は金属板のプレス成形や硬質合成樹脂の射出成形等により成形され、軌道レール1からスライダ3を取り外した際に各負荷転走溝43a,43bを転走するボール3がスライダ2から脱落するのを防止している。
【0022】
図3は固定ボルト7を用いてベース部8上に前記軌道レール1を固定した状態を示す断面図であり、紙面の左右方向が軌道レール1の長手方向に対応している。同図に示すように、軌道レール1に固定ボルト7を挿通させるためのレール取付孔11は小径部11aと大径部11bの2段に形成されており、固定ボルト7をベース部8のタップ孔80に締結した状態では、かかる固定ボルト7の頭部がレール取付孔11の大径部11bに収容されるようになっている。このため、前記固定ボルト7としては六角孔付きボルトが用いられている。
【0023】
直線案内装置の使用中に前記レール取付孔11に塵芥が入り込むのを防止するため、固定ボルト7の締結が終了し軌道レール1をベース部8に固定した後には、前記レール取付孔11に閉塞キャップ70が圧入され、固定ボルト7の頭上でレール取付孔11の大径部11bが塞がれるようになっている。これにより、前記スライダ2の移動方向の前後両端に固定されたシール部材6の軌道レール1に対する密着性を高め、スライダ2内に外部から塵芥が侵入し、あるいはスライダ2内から外部へ潤滑剤が漏れだすのを可及的に防止することが可能となる。
【0024】
図4aは本発明を適用したレール取付孔11の閉塞キャップ70の第1実施例を示すものであり、図4bは図4aのA部拡大図である。この図4aに示す閉塞キャップ70は、軌道レール1のレール取付孔11に圧入固定される嵌合部71と、この嵌合部71を圧入する前にレール取付孔11に挿入される先端部72とから構成されている。更に、前記嵌合部71は夫々が円柱状に形成された第1嵌合部71a及び第2嵌合部71bから構成されており、これら第1嵌合部71aと第2嵌合部71bは円柱状のスペーサ部73によって連結されている。
【0025】
前記第1嵌合部71a及び第2嵌合部71bはその外径がレール取付孔11の内径よりも大きく形成されており、レール取付孔11に対して工具を用いて強制的に圧入され、それによって閉塞キャップ70がレール取付孔11の口元に固定されるようになっている。ここで、前記第1嵌合部71aは前記先端部72と第2嵌合部71bとの間に位置しており、その外径は第2嵌合部71bの外径よりも大きく設定されている。すなわち、第1嵌合部71aよりもレール取付孔11の口元側に位置する第2嵌合部71bの外径は、かかるレール取付孔11の内径よりも僅かに大きくは形成されているものの、第1嵌合部71aの外径よりは小さく設定されており、圧入における締め代は第1嵌合部71aの方が第2嵌合部71bよりも大きく設定されている。
【0026】
これは、レール取付孔11の口元側に位置する第2嵌合部71bの圧入締め代を小さめに設定することで、レール取付孔11に対する閉塞キャップ70の圧入の際に、軌道レール1の表面にバリが発生するのを可及的に防止するためである。その反面、嵌合部71の全体の圧入締め代を極端に小さく設定すると、閉塞キャップ70をレール取付孔11の口元に止めておく強度が不足し、スライダ2に装着されたシール部材6が軌道レール1の表面と摺接しながらレール取付孔11を通過した際に、閉塞キャップ70がレール取付孔11の内部に脱落してしまう懸念がある。このため、レール取付孔11に対する閉塞キャップ70の固定強度を高めるため、前記第1嵌合部71aの外径は第2嵌合部71bの外径よりも大きく設定され、第1嵌合部71aとレール取付孔11との間で十分な圧入締め代が確保されるようになっている。
【0027】
また、第1嵌合部71aとレール取付孔11との間に十分な圧入締め代を設けた場合であっても、第1嵌合部71aと第2嵌合部71bとの間にレール取付孔11の内径よりも小さな外径のスペーサ部73を設け、第1嵌合部71aと第2嵌合部71bとの間に隙間を設けることで、圧入による第1嵌合部71aの塑性変形の余地を確保し、かかる閉塞キャップ70のレール取付孔11に対する圧入を容易なものとしている。
【0028】
更に、通常、レール取付孔11の口元角部及び閉塞キャップ70の外周角部には、応力集中を避けると共に作業者の安全を考慮して面取りを施す必要があるが、かかる面取りに起因して閉塞キャップ70の圧入後のレール取付孔11の口元に環状溝が発生するのを防止するため、前記第2嵌合部71bの外周角部及び前記レール取付孔11の口元角部には面取りが施されていない。これにより、閉塞キャップ70とレール取付孔11との境界に環状溝が発生することがなく、かかる溝に塵芥等の異物が溜まるのを防止することができるものである。
【0029】
一方、図4aに示す実施例において、前記先端部72は略円柱状に形成され、その外周面の一部に周方向に沿って連続する環状の位置決め突部74が設けられている。図4bに示すように、この位置決め突部74は先端部72の外周面から断面略三角形状に突出しており、二面が交わって先端エッジ部75を形成している。この先端エッジ部75の外径はレール取付孔11の内径と同一またはそれよりも僅かに大きく形成されている。また、前記位置決め突部74の基底円の直径、すなわち前記先端部72の外周面の外径はレール取付孔11の内径よりも小さく形成されており、閉塞キャップ70の先端部72をレール取付孔11に挿入すると、前記位置決め突部74の先端エッジ部75のみがレール取付孔11の内周面と干渉するように構成されている。
【0030】
また、この先端部72は軸部76によって第1嵌合部71aと同一円心上に連結されており、かかる軸部76の外径は先端部72の外周面の直径よりも小さく設定されている。具体的には前記軸部76は前記スペーサ部73と同一の外径に形成されている。この軸部76の存在により、先端部72と第1嵌合部71aとの間には隙間が形成され、閉塞キャップ70をレール取付孔11に適合する際には、前記第1嵌合部71aの圧入に先立って先端部72がレール取付孔11に挿入されるようになっている。
【0031】
このとき、前記先端部72に具備された位置決め突部74の外径、すなわち先端エッジ部75の外径はレール取付孔11の内径と同一またはそれよりも僅かに大きく形成されていることから、先端部72をレール取付孔11に挿入する際には先端エッジ部75とレール取付孔11とが僅かに干渉することになる。このため、先端部72をレール取付孔11に挿入するにあたっては僅かな抵抗が作用し、かかる抵抗に抗して先端部72をレール取付孔11に押し込むことで、先端部72と同一円心上に連結された第1嵌合部71aをレール取付孔11に対して正確に位置決めすることが可能となる。
【0032】
例えば先端エッジ部75の外径は、レール取付孔11の内径と同一の基準寸法であって、プラス公差に形成すれば良い。また、このような先端部72の形状は旋削によって容易に形成することが可能である。
【0033】
先端部72をレール取付孔11に押し込む際の抵抗は位置決め突部74の外径の大きさによって異なったものとなるが、かかる位置決め突部74は断面略三角形状に形成されていることから、作業者が閉塞キャップ70をレール取付孔11に向けて軽く押圧するだけで、先端エッジ部75が押し潰され、閉塞キャップ70の先端部72をレール取付孔11に対して簡単に嵌合させることができる。これにより、作業者は工具を用いた第1嵌合部71a及び第2嵌合部71bの圧入に先立ち、工具を用いることなく手作業で閉塞キャップ70を各レール取付孔11に対して仮位置決めすることができ、引き続いて行われる第1嵌合部71a及び第2嵌合部71bの圧入を円滑に且つ正確に行うことが可能となる。その結果、閉塞キャップ70がレール取付孔11に対して傾いた状態で圧入固定されてしまうトラブルを未然に防止することが可能となる。
【0034】
この閉塞キャップ70は工具を用いてレール取付孔11に圧入され、その際、第2嵌合部71bの軸方向端面が軌道レール1の表面と完全に合致するまで、かかる閉塞キャップ70をレール取付孔11に対して押し込み、軌道レール1表面の段差発生を防止するのが好ましい。もっとも、かかる段差を完全に排除することは困難であるから、閉塞キャップ70をレール取付孔11に圧入した後に、軌道レール1の表面から突出している第2嵌合部71bの微小部位を削り取るのが好ましい。これにより、軌道レール1の表面を段差なく滑らかに仕上げることができ、スライダ2に装着されたシール部材6の損傷を防止することが可能となる。
【0035】
図5aは本発明を適用したレール取付孔11の閉塞キャップの第2実施例を示すものであり、図5bは図5aのB部拡大図である。この図5aに示す閉塞キャップ70aにおいて第1嵌合部71a及び第2嵌合部71bの構成は図4aに示した第1実施例に係る閉塞キャップ70と同じであり、先端部72の構成のみが第1実施例のものと異なっている。
【0036】
この第2実施例の閉塞キャップ70aにおいて、先端部72はその外周面77がテーパ状に形成されており、先端部72の外径は第1嵌合部71aに近接するに従って徐々に大きくなっている。すなわち、この第2実施例では先端部72の外周面77をテーパ状に形成することによって、断面略三角形状の位置決め突部が該先端部72に具備されており、第1嵌合部71aに隣接した外周角部が先端エッジ部75となっている。そして、この先端エッジ部75の外径はレール取付孔11の内径と同一またはそれよりも僅かに大きく形成されている。
【0037】
この第2実施例の閉塞キャップ70aも第1実施例のものと同様に、作業者が手作業で先端部72をレール取付孔11に押し込むことができ、それによって閉塞キャップ70の中心をレール取付孔11の中心に合致させて仮位置決めすることが可能となっている。それにより、閉塞キャップ70がレール取付孔11に対して傾いた状態で圧入固定されてしまうトラブルを未然に防止することが可能となる。また、この第2実施例の閉塞キャップ70では先端部72の外周面77が先細りのテーパ状に形成されているので、かかる先端部72をレール取付孔11に対して簡単に挿入可能となっている。
【0038】
図6aは本発明を適用したレール取付孔11の閉塞キャップの第3実施例を示すものであり、図6bは図6aのC部拡大図である。この図6aに示す閉塞キャップ70bは第1嵌合部71a及び第2嵌合部71bの構成は図4aに示した第1実施例に係る閉塞キャップ70と同じであり、先端部72の構成のみが第1実施例のものと異なっている。
【0039】
図6bに示すように、この第3実施例の閉塞キャップ70bにおいて、先端部72の外周面には軸方向へ互いに間隔をおいて2カ所の位置決め突部74a,74bが形成されており、これら位置決め突部74a,74bの間はV字状に切り欠かれている。すなわち、この第3実施例の閉塞キャップ70bでは、円柱状に形成された先端部72の外周面に対して断面V字状の環状溝を形成することにより、断面略三角形状の位置決め突部74a,74bを2条形成している。そして、これらの位置決め突部74a,74bの先端エッジ部75の外径はレール取付孔11の内径と同一またはそれよりも僅かに大きく形成されている。
【0040】
この第3実施例の閉塞キャップ70bも第1実施例のものと同様に、作業者が手作業で先端部72をレール取付孔11に押し込むことができ、それによって閉塞キャップ70bの中心をレール取付孔11の中心に合致させて仮位置決めすることが可能となっている。それにより、閉塞キャップ70bがレール取付孔11に対して傾いた状態で圧入固定されてしまうトラブルを未然に防止することが可能となる。
【0041】
また、この第3実施例の閉塞キャップ70bでは先端部72に対して一対の位置決め突部74a,74bが軸方向へ互いに間隔をおいて形成されているので、かかる先端部72をレール取付孔11に手作業で嵌合させた後に、閉塞キャップ70bの姿勢が安定しやすく、その分だけ工具を用いた第1嵌合部71a及び第2嵌合部71bの圧入作業を円滑に行うことができ、閉塞キャップ70bがレール取付孔11に対して傾いた状態で圧入固定されてしまうトラブルを一層確実に防止することが可能となっている。
【0042】
図7aは本発明を適用したレール取付孔11の閉塞キャップの第4実施例を示すものであり、図7bは図7aのD部拡大図である。この図7aに示す閉塞キャップ70cは図6aに示した第3実施例に係る閉塞キャップ70bと略同一であるが、先端部72に形成された一対の位置決め突部74a,74bの間隔が第3実施例のものよりも大きく設定されている。
【0043】
すなわち、図7bに示すように、この第4実施例の閉塞キャップ70cにおいては、先端部72の外周面に対して断面台形状の切欠き溝を形成することにより、軸方向へ互いに間隔をおいた2カ所の位置決め突部74a,74bが形成されている。これらの位置決め突部74a,74bの先端エッジ部75の外径は、第3実施例と同様、レール取付孔11の内径と同一またはそれよりも僅かに大きく形成されている。
【0044】
これにより、この第4実施例の閉塞キャップ70cでは、先端部72をレール取付孔11に手作業で嵌合させた後に、閉塞キャップ70cの姿勢が第3実施例の閉塞キャップ70bと比較しても一層安定しやすく、その分だけ工具を用いた第1嵌合部71a及び第2嵌合部71bの圧入作業を円滑に行うことが可能となっている。
【0045】
尚、前述した各実施例において、前記位置決め突部74は断面略三角形状に形成され、2面の公差辺が先端エッジ部75として構成されていたが、かかる位置決め突部74は必ずしも断面略三角形状に形成される必要はなく、例えば先端部72の外周面から断面半円状に突出し、その円弧の頂点が先端エッジ部75として構成されるものであっても良い。要は、閉塞キャップ70の先端部72をレール取付孔11に押し込んだ際に、位置決め突部74が微小面積でレール取付孔11の内周面と接するように、前記位置決め突部74の形状を決定すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明を適用可能な直線案内装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した直線案内装置の縦断面図である。
【図3】軌道レールに対する固定ボルト及び閉塞キャップの装着状態を示す断面図である。
【図4a】本発明に用いる閉塞キャップの第1実施例を示す正面図である。
【図4b】図4aのA部拡大図である。
【図5a】本発明に用いる閉塞キャップの第2実施例を示す正面図である。
【図5b】図5aのB部拡大図である。
【図6a】本発明に用いる閉塞キャップの第3実施例を示す正面図である。
【図6b】図6aのC部拡大図である。
【図7a】本発明に用いる閉塞キャップの第4実施例を示す正面図である。
【図7b】図7aのD部拡大図である。
【符号の説明】
【0047】
1…軌道レール、2…スライダ、8…ベース部、11…レール取付孔、70…閉塞キャップ、71a…第1嵌合部、71b…第2嵌合部、72…先端部、73…スペーサ部、74…位置決め突部、75…先端エッジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内装置の軌道レールに設けられたレール取付孔に閉塞キャップを圧入し、かかるレール取付孔を閉塞するための構造であって、
前記閉塞キャップは、前記レール取付孔の内径よりも大きな外径に形成されて該レール取付孔に圧入固定される嵌合部と、この嵌合部をレール取付孔に圧入する前に前記レール取付孔に挿入されて、前記閉塞キャップをレール取付孔に対して仮位置決めする先端部とから構成され、
前記先端部の周囲には先端エッジ部を具備した位置決め突部が突設され、前記先端エッジ部の外径はレール取付孔の内径と同一またはそれよりも僅かに大きいことを特徴とするレール取付孔の閉塞構造。
【請求項2】
前記位置決め突部は断面略三角形状に形成されて、前記先端エッジ部を具備していることを特徴とする請求項1記載のレール取付孔の閉塞構造。
【請求項3】
前記位置決め突部の基底円はレール取付孔の内径よりも小さいことを特徴とする請求項1記載のレール取付孔の閉塞構造。
【請求項4】
前記先端部の周囲には前記先端エッジ部が軸方向へ互いに間隔をおいて2カ所に形成されていることを特徴とする請求項1記載のレール取付孔の閉塞構造。
【請求項5】
前記先端部と嵌合部は前記位置決め突部の基底円よりも小さな外径の軸部によって連結されていることを特徴とする請求項3記載のレール取付孔の閉塞構造。
【請求項6】
前記嵌合部は夫々が円盤状に形成された第1嵌合部と第2嵌合部から構成され、これら第1嵌合部と第2嵌合部はレール取付孔の内径よりも小さな外径の円柱状スペーサ部で結合されていることを特徴とする請求項1記載のレール取付孔の閉塞構造。
【請求項7】
前記第1嵌合部は前記先端部と第2嵌合部との間に位置し、かかる第1嵌合部の外径はレール取付孔の内径よりも大きく形成される一方、前記第2嵌合部の外径は第1嵌合部の外径よりも小さく且つレール取付孔の内径よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項6記載のレール取付孔の閉塞構造。
【請求項8】
前記第2嵌合部の外周角部及び前記レール取付孔の口元角部は、夫々、面取りを施されることなく直角に形成されていることを特徴とする請求項6記載のレール取付孔の閉塞構造。
【請求項9】
前記先端部の外周面をテーパ面に形成して、かかる先端部に位置決め突部を具備させたことを特徴とする請求項1記載のレール取付孔の閉塞構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図7a】
image rotate

【図7b】
image rotate


【公開番号】特開2007−321769(P2007−321769A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25290(P2005−25290)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】