説明

ロック機構付きカードコネクタ

【目的】 ICカードへの情報の書き込み、或いは読み取りに使用されるカードコネクタの厚み、横幅を低減する。ICカードを挿入位置へ固定するロック機構の厚み方向での変位、変形を防止する。
【構成】 ICカードが挿入されるホルダー30をケース10内に厚み方向へ移動可能に支持する。ホルダー30へのカードの挿入に伴い挿入方向へ移動するスライダー40をホルダー30と共にケース20内に設ける。スライダー40はスプリング46によりカード抜去方向へ付勢されると共にホルダー30を両側のカム機構33,44を介して支持する。カム機構33,44はスライダー40のカード挿入方向への移動の最終段階でその移動に伴いホルダー30をカードの接点部がコンタクト60A,60Bへ接近する厚み方向へ移動させる。スライダー40の表面に沿って回動可能に設けられた回動式のロック爪70によりスライダー40を挿入方向の移動限に固定する。イジェクト部材80によりロック爪70をスプリング74による付勢力に抗して固定位置から解放位置へ操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードへの情報の書き込み、或いは読み取りに使用されるカードコネクタに関し、より具体的には、 例えばETC用のICカードリーダーやライターに使用されるカードコネクターに関する。
【背景技術】
【0002】
ETC用のICカードリーダーやライターに使用されるようなカードコネクタでは、ICカードが挿入される薄型のケースが使用される。薄型のケース内にICカードを挿入すると、挿入の最終段階でICカードが傾斜ガイドなどに沿って厚み方向へ移動する。より具体的には、ICカードの先端部表面に形成された接点部が、これに対向するようにケースの先奥部に設けられたコンタクトに接近する方向へ、ICカードが厚み方向へ移動する。このICカードの厚み方向の移動により、挿入の最終段階でICカードの接点部がケース側のコンタクトに接触する。
【0003】
ケースからのICカードの抜去のために、ケース内にはケース内へのICカードの挿入に伴って挿入方向へ移動するスライダーが設けられている。このスライダーはケースからICカードが抜去される方向へスプリングにより付勢されており、ICカードの挿入時には、スライダーはこの付勢力に抗してケース内に挿入され、挿入が完了した位置にロック機構により固定される。ロック機構は固定方向に付勢されており、これを解除方向へ操作することにより、スライダーは元の位置へ自動復帰し、ICカードを抜去方向へ移動させる。
【0004】
このようなロック機構付きのカードコネクタでは、ICカードが挿入されながらコンタクトに接触するため、両者が摺接し、両者の磨耗が激しいという本質的な問題があった。そして、この問題に対しては、ICカードの挿入が完了した時点、或いは完了直前でICカード又はケース側のコンタクトをカード厚み方向へ移動させて、両者の摺動を極力抑制する対策が特許文献1により提示されている。また、特許文献1のカードコネクターでは、スライダーを挿入位置へ自動固定するスプリング利用のロック機構も装備されており、イジェクト操作により、ロック機構が固定状態が解放状態へ切り換えられ、スライダーが抜去方向へ自動復帰する。
【0005】
【特許文献1】特開平6−309513号公報
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたカードコネクタでは、ICカードの挿入完了時近傍でICカードをコンタクト側へ移動させるために、カードの移動面に沿って形成されたカムが使用される。また、ケース側のコンタクトをカード厚み方向へ移動させるために、カードの移動に伴って従動的に回転するローラが使用される。これらは共にカードに重なって配置されるため、コネクタの厚みが増大する問題がある。また、ロック機構に関しては、スライダーの側方に配置されるために、コネクタの横幅を増大させる原因になると共に、ケースの厚み方向で変位、変形しやすい問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みて創案されたものであり、厚みを容易に低減できるロック機構付きカードコネクタを提供することを第1の目的とする。
【0008】
本発明の第2の目的は、横幅を容易に低減できるロック機構付きカードコネクタを提供することにある。
【0009】
本発明の第3の目的は、ロック機構の厚み方向で変位、変形を容易に防止できるロック機構付きカードコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るロック機構付きカードコネクタは、薄型のケース内に厚み方向へ移動可能に支持され、ICカードが挿入されてこれを保持するホルダーと、ホルダーと共に前記ケース内に設けられ、ホルダーへのカードの挿入に伴って挿入方向へ移動すると共に、挿入方向への移動の最終段階でその移動に伴ってカードの接点部がコンタクトへ接近する厚み方向へホルダーが移動するように両側のカム機構を介してホルダーを支持するスライダーと、スライダーをカードが抜去される方向へ付勢する第1スプリングと、スライダーに対向するケースの平面部とスライダーとの間に前記平面部に沿って回動可能に設けられ、カードが完全に挿入された状態でスライダーを係止する回動式のロック爪と、ロック爪を固定方向に付勢する第2スプリングと、第2スプリングによる付勢力に抗してロック爪を固定位置から解放位置へ操作するイジェクト部材とを備えている。
【0011】
本発明に係るロック機構付きカードコネクタにおいては、スライダーでホルダーが保持され、そのホルダーを厚み方向に移動させるカム機構がスライダー及びホルダーの両側部に設けられる。このため、カム機構をスライダーに重ねて設ける場合と比べてコネクタ厚を低減できる。
【0012】
また、ロック機構として、スライダーに対向するケースの平面部とスライダーとの間に、回動式のロック爪が前記平面部に沿って設けられる。このため、ロック機構をスライダーの側方に配置する場合と比べて、コネクタの横幅を低減できる。また、スライダーとケースとの間でロック爪が支持されることにより、厚み方向での爪の変位、変形が効果的に防止される。
【0013】
カム機構としては、スライダーの両側部に傾斜カム溝を形成し、両側の傾斜カム溝にスライド自在に挿入される突起をホルダーの両側部に設ける構成が好ましい。この構成によると、カム機構がホルダー支持機構を兼ね、コネクタが一層小型化される。
【0014】
ロック爪に関しては、スライダーの一部をケースの平面部側へL状に折り曲げて形成した係合部に弾性的に当接するように、前記ケースの平面部に取り付けられており、前記スライダーが固定位置へ移動したときに前記係合部を係止する構成が好ましい。この構成により、ロック爪がスライダーとケースの平面部との間でより確実に支持され、その変位、変形がより効果的に防止される。
【0015】
ロック爪は又、スライダーを係止する主突起部と、スライダーの表面に平行な面内で主突起部に沿って形成された副突起部とを有する2重突起構造が好ましい。この構造によると、ロック爪がより確実に支持され、その変位、変形がより効果的に防止される。
【0016】
ケースに関しては、コンタクトを装備するボディと、これに被さるカバーとからなる2ピース構造が好ましい。この構造によると、カバーの薄型化が容易になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るロック機構付きカードコネクタは、スライダーでホルダーを保持し、そのホルダーを厚み方向に移動させるカム機構をスライダー及びホルダーの両側部に設けることにより、コネクタ厚を低減できる。また、ロック機構としてのロック爪を、スライダーが対向するケースの平面部とスライダーとの間に、その平面部に沿って回動可能に設けることにより、コネクタの横幅を低減でき、合わせロック爪の厚み方向の変位、変形を効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を示すロック機構付きカードコネクタの斜視図、図2は同ロック機構付きカードコネクタの分解斜視図、図3は同ロック機構付きカードコネクタの平面図、図4は同ロック機構付きカードコネクタの底面図、図5は同ロック機構付きカードコネクタの内部構造をカード未挿入時について示す平面図、図6は図5中のA−A線矢示図、図7は同ロック機構付きカードコネクタの内部構造をカード挿入時について示す平面図、図8(a)は同ロック機構付きカードコネクタにおけるカード挿入時の動作を示す側面図、図8(b)は図8(a)中のC部拡大図である。
【0019】
本実施形態に係るロック機構付きカードコネクタは、図1〜図4に示すように、ICカード10が挿入される薄型のケース20、ケース20内に収容されたホルダー30、スライダー40及びロック爪70、並びにケース20の側面に沿って設けられたイジェクト部材80を備えている。ICカード10は挿入方向前部の下面側に接点部を有している。
【0020】
ケース20は、樹脂からなるボディ20Aと、ボディ20Aに装着されるカバー20Bとを組み合わせた2ピース構造になっている。ボディ20Aは、ケース10の前部の底板部を構成しており、後方からのICカード10の挿入を阻害しないように、前縁部及び両側の縁部にのみ低い壁を有している。
【0021】
ボディ20Aの底板部には、ICカード10の前部下面に形成された接点部と接触する複数のコンタクト50を保持するために、複数のコンタクト50A,50Bが嵌合する複数のスリット溝21A,21Bが設けられている。また、ICカード10の挿入を検知するスイッチ60A,60Bを保持するために、当該スイッチ60が嵌合するスリット溝22が設けられている。更に、ロック爪70を支持するためのボス部23が設けられている。
【0022】
カバー20Bは金属板からなり、ケース20の天板全体を構成している。ボディ20Aとの固定のために、カバー20Bの前縁部には、その前縁部をボディ20Bの側に折り曲げて形成された両側1組の係合部24a,24a及び係止部24b,24bが設けられている。係合部24a,24aは、ボディ20Aの前壁に形成された凹部25a,25aに嵌合し、係止部24b,24bは凹部25a,25aの両側に位置してボディ20Aの前壁に形成された爪部25b,25bに係合することにより、カバー20Bをボディ20Aに固定する。
【0023】
カバー20Bは又、両側の縁部に当該縁部をボディ20Aの側へ折り曲げて形成された側壁を有している。各側壁には、スライダー40を支持し且つ該スライダー40をICカード10の挿入方向に案内するために、その挿入方向に沿ったスリット26が設けられている。
【0024】
カバー20Bの裏面側に配置されるホルダー30は、ケース10内でICカード10を受け入れ収容する。このため、ホルダー30は、ICカード10を収容し得る大きさに設定されており、両側の縁部を内側へ折り曲げて形成した両側の断面コ字形状の支持部31,31によってICカード10の両側の縁部を支持するようになっている。これにより、ホルダー30の裏面はほぼ全面的に開放している。
【0025】
このホルダー30は、カバー20Bの裏面側に支持される後述のスライダー40とカバー20Bとの間において、スライダー40により支持される。この支持のために、両側の支持部31,31には、側方へ突出する一対の突起33,33が切り起こしにより、カード挿入方向に間隔をあけてそれぞれ設けられている。
【0026】
ホルダー30のカード挿入側の端部は開口しており、挿入方向前端部には、両側の縁部から両側へ開いた係合部32,32が設けられている。係合部32,32は、ボディ20Aの前縁部に形成された両側の溝部25c,25cに係合する。この係合により、ホルダー30はケース10に対してカード挿入方向で固定され、ケース10の厚み方向では移動可能とされる。
【0027】
スライダー40は、上側のホルダー30に下方から嵌合する。このため、スライダー40は上面が開放した平板で構成されており、その長さは、ホルダー30に対してスライドできるようにホルダー30より短く設計されている。スライダー40の両側の縁部には、当該縁部を立ち上げて形成した一対の側壁部41,41が設けられている。また、カード挿入方向の前端部には、挿入されたICカード10の前端が当接する係止部42が、その前端部を立ち上げることにより形成されている。
【0028】
スライダー40の各側壁部41には、側方へ突出する突起43が、長手方向の中間部に位置して設けられている。各側壁部41には又、スリット状のカム溝44,44が長手方向の両端部に位置して形成されている。各カム溝44は、カード挿入方向後部、すなわち抜去側の端部に下段の水平部を有すると共に、カード挿入方向前部に上段の水平部を有し、両者を傾斜部で繋いだ構成になっている(図8参照)。
【0029】
また、スライダー40の両側の側壁部41,41に挟まれた平板部には、一方の側壁部41に沿って直線状の係合部45が設けられている。係合部45は、前記平板部の一部を裏面側、すなわちボディ20Aの側へL字状に折り曲げることにより形成されている(図6参照)。
【0030】
スライダー40の両側の突起43,43は、カバー20Bの両側の側壁部に設けられた水平なスリット26,26にスライド自在に挿入される。これにより、スライダー40は、カバー20Bに対しカード挿入方向に沿った両方向へスライド自在に支持されると共に、カバー20Bにカード挿入方向で固定されたホルダー30に対しても、カード挿入方向に沿った両方向へスライド自在になる。
【0031】
一方、ホルダー30は、前述したとおり、両側の支持部31,31に、側方へ突出する一対の突起33,33をそれぞれ有している。一対の突起33,33は、スライダー40の各側壁部41に設けられたスリット状のカム溝44,44に内側から挿入されている。この挿入により、ホルダー30は厚み方向でスライダー40に支持されている。
【0032】
ここで、スライダー40は、スプリング46によりカード挿入方向後方、すなわちカード抜去側へ付勢されている。スプリング46は、カバー20Bの側面に設けられた第1突起27aとスライダー40の側面に設けられた突起43との間に引っ張り状態で掛け設けられている。これにより、スライダー40は、カード抜去側の移動限に弾性的に保持される。
【0033】
カード抜去側の移動限では、ICカード10は抜去側の端部がホルダー30のカード挿入口から挿入方向へやや入った位置に保持され、スライダー40のカード挿入方向前端から、ホルダー30及びカバー10の前端部までの間には、十分な離間距離が確保される。また、ホルダー30の側面に形成さた突起33,33は、スライダー40の側面に形成されたカム溝44,44の上段の水平部、すなわちカム溝44,44のカード挿入方向前部に形成された上段の水平部に嵌合する。これにより、ホルダー30はスライダー40によりケース10内の上段に支持されることになる。
【0034】
ロック爪70は、金属板からなり、ボディ20Aの底板部とその上のスライダー40との間に平行に配置されている。そして前記底板部に突設されたボス部23により回動自在に支持されている。このロック爪70は、ボス部23に嵌合する回動中心部から半径方向へ延出する主突起部71と、主突起部71に沿って形成された副突起部72と、これらにぼぼ直角なイジェクト操作部73とを有しており、主突起部71の先端が内側へ移動する方向へスプリング74により付勢されている。
【0035】
そして、スライダー40がカード抜去側の移動限にあるとき、スプリング74によるロック爪70の付勢により、主突起部71の先端に形成された鉤部が、スライダー40の底板部に形成されたL曲げ部状の係合部45の外側の側面に弾性的に当接する(図6参照)。このとき、副突起部72は、係合部45を挟んで主突起部71の反対側に位置しており、イジェクト操作部73は、ケース10の一側面側へ突出している。
【0036】
スライダー40がカード抜去側の移動限からカード挿入方向前方の移動限へ向けて前進するとき、ロック爪70の主突起部71は、係合部45の外側の側面に摺接する。そして、スライダー40がカード挿入方向前方の移動限まで移動したとき、ロック爪70の主突起部71は係合部45の端部に係合し、スライダー40をカード挿入方向前方の移動限に固定する。このとき、ホルダー30の側面に形成された突起33,33は、スライダー40の側面に形成されたカム溝44,44の下段の水平部に嵌合する。これにより、ホルダー30はスライダー40によりケース10内の下段に支持されることになる。
【0037】
スライダー40の移動を阻害しないために、係合部45が嵌合するスリット28が、ボディ20Aの底板部に設けられている。なおスプリング74は、ロック爪70とボディ20Aとの間に引っ張り状態で掛け設けられている。
【0038】
イジェクト部材80は、ケース20の側面に沿って設けられた短冊状の金属板からなる。このイジェクト部材80は、ボディ20Aの一側部に形成された鉤状の保持部29により、長手方向、すなわちカード挿入方向に沿って移動自在に支持されており、スプリング81によりカード挿入方向後方、すなわちカード抜去側へ付勢されている。スプリング81は、カバー20Bの側面に設けられた第2突起27bと、イジェクト部材80の一部を内側へ切り起こして形成した突起85との間に引っ張り状態で掛け設けられている。
【0039】
イジェクト部材80の先端部には、ボディ20Aの保持部29が嵌合する下に凸の凹部82が形成されている。その先端部には又、ロック爪70のイジェクト操作部73が嵌合する上に凸の凹部83が、凹部82の先端側に位置して形成されている。一方、イジェクト部材80の後端部、すなわちカード抜去側の端部には、イジェクト部材80をカード挿入方向へ押圧操作するために樹脂キャップ84が装着されている。
【0040】
ロック爪70の主突起部71がスライダー40の係合部45に係合し、スライダー40をカード挿入方向前方の移動限に固定したとき、イジェクト部材80はロック爪70の回動に伴ってカード抜去方向へ僅かに移動する。この状態からイジェクト部材80をスプリング81による付勢力に抗して反対側、すなわちカード挿入方向前方へ押し込むと、ロック爪70はスプリング74による付勢力に抗して反対側へ回動し、スライダー40の係合部45から離脱する。その結果、スライダー40はスプリング46による付勢力で元の位置、すなわちカード抜去側の移動限に戻る。
【0041】
次に、本実施形態に係るロック機構付きカードコネクタの動作及び機能について説明する。
【0042】
ケース20内のホルダー30にICカード10を挿入しないときは、図3〜図5に示すように、スライダー40は、スプリング46による付勢により、カード挿入方向後方の移動限、すなわちカード抜去側の移動限に弾性的に保持される。このとき、ホルダー30の側面に形成さた突起33,33は、図8に示すように、スライダー40の側面に形成されたカム溝44,44の上段の水平部、カム溝44,44のカード挿入方向前部に形成された上段の水平部に嵌合する。従って、ホルダー30はケース10内の上段、すなわちボディ20Aに取り付けられたコンタクト50A,50Bから離れた位置に支持される。
【0043】
また、ロック爪70は、図6に示すように、ボディ20Aの底板部とその上のスライダー40との間に平行に配置されており、スプリング74によるロック爪70の付勢により、主突起部71の先端に形成された鉤部が、係合部45の外側の側面に外側から弾性的に当接する状態にある。
【0044】
ケース20内のホルダー30にICカード10を挿入口から挿入する。そうすると、ICカード10の大部分が挿入された段階で、ICカード10の挿入方向先端がスライダー40の先端部に形成された係止部42に当接する(図3参照)。ICカード10の挿入方向先端がスライダー40の係止部42に当接したあとも、なおICカード10の押し込みを続けると、スライダー40がスプリング46による付勢力に抗してカード挿入方向へ移動する。
【0045】
すなわち、ICカード10の挿入の最終段階で、スライダー40がスプリング46による付勢力に抗してカード挿入方向へ移動し始める。このとき、ロック爪70の主突起部71は、スライダー40の係合部45の外側面に摺接する。また、スライダー40の移動に伴って、ホルダー30の突起33,33がスライダー40のカム溝44,44を逆方向、すなわちカード挿入方向前方から後方へ相対移動する。ここで、カム溝44,44はカード挿入方向前方から後方へ下降傾斜している。このため、スライダー40の移動に伴ってホルダー30は下降する。すなわち、ホルダー30内のICカード10は、ボディ20Aの側(コンタクト側)へ移動する。
【0046】
そして、最終的には、スライダー40がカード挿入方向前方の移動限へ到達するまで、ICカード10がホルダー30内に押し込まれる。これにより、ロック爪70の主突起部71が係合部45の端部に係合し、スライダー40がカード挿入方向前方の移動限に固定される。同時に、ホルダー30の突起33,33がスライダー40のカム溝44,44の下段の水平部に嵌合し、ホルダー30がケース10内の下段位置に支持される。これにより、ホルダー30内のICカード10の挿入方向前部裏面に形成された接点部が、ボディ10Aに保持されたコンタクト50A,50Bに接触する。
【0047】
すなわち、ケース20へのICカード10の挿入の最終段階で、ICカード10がコンタクト側へ移動し、その接点部がケース20A内のコンタクト50A,50Bに接触する。両者の接触はスイッチ60A,60Bにより検知される。ICカード10の接点部にコンタクト50A,50Bを接触させるために、ホルダー30の裏面はほぼ全面開放し、その裏面側のスライダー40は、コンタクト50A,50Bに対応する部分に、切欠きにより形成された開口部47を有している。
【0048】
この状態で、イジェクト部材80をカード挿入方向へ押圧操作する。すなわち、スプリング81,74による付勢力に抗して、イジェクト部材80をカード挿入方向へ押圧操作する。そうすると、ロック爪70の主突起部71が係合部45の端部から離脱する方向へロック爪70が回動する。これにより、スライダー40はスプリング46により元の位置、すなわちカード抜去側の移動限へ自動復帰する。
【0049】
その結果、ICカード10の一部がホルダー30から露出し、ICカード10をホルダー30から容易に抜去することが可能となる。
【0050】
このように、本実施形態に係るロック機構付きカードコネクタでは、ケース20へのカード挿入の最終段階で、ICカード10の接点部がケース20A内のコンタクト50A,50Bに接触する。このため、両者の摺接が可及的に抑制され、両者の磨耗が軽減される。
【0051】
しかも、ICカード10の挿入の最終段階でICカード10を厚み方向へ移動させる手段として、ホルダー30の両側部に設けた突起33,33と、スライダー40の両側部に設けたカム溝44,44との組み合わせを用いている。すなわち、その手段をケース120の両側部に設けている。このため、ケース20の厚みを軽減できる。
【0052】
また、スライダー40を挿入方向の移動限に固定する手段として、スライダー40とその下のボディ20Aとの間に配置した回動式で板状のロック爪70を用いている。つまり、その手段はスライダー40の下面側にこれに沿って配置されている。このため、ロック機構によるケース20の横幅増大が回避される。また、ロック爪70が板状であるため、ケース20の厚みを増大させる要因にならない。
【0053】
更に、ロック爪70はスライダー40とその下のボディ20Aとの間にははさまれているために、厚み方向で変位、変形しにくく、その上、スライダー40を係止する主突起部71と、スライダー40の表面に平行な面内で主突起部71に沿って形成された副突起部72とを組み合わせた2重突起構造が採用されているので、ロック爪70の変位、変形がより一層抑制されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態を示すロック機構付きカードコネクタの斜視図である。
【図2】同ロック機構付きカードコネクタの分解斜視図である。
【図3】同ロック機構付きカードコネクタの平面図である。
【図4】同ロック機構付きカードコネクタの底面図である。
【図5】同ロック機構付きカードコネクタの内部構造をカード未挿入時について示す平面図である。
【図6】図5中のA−A線矢示図である。
【図7】同ロック機構付きカードコネクタの内部構造をカード挿入時について示す平面図である。
【図8】(a)は同ロック機構付きカードコネクタにおけるカード挿入時の動作を示す側面図、(b)は(a)図中のC部拡大図である。
【符号の説明】
【0055】
10 ICカード
20 ケース
20A ボディ
20B カバー
26 スリット
30 ホルダー
33 突起
40 スライダー
43 突起
44 ガイド溝
45 係合部
46 スプリング(第1スプリング)
50A,50B コンタクト
60A,60B スイッチ
70 ロック爪
71 主突起部
72 副突起部
74 スプリング(第2スプリング)
80 イジェクト部材
81 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄型のケース内に厚み方向へ移動可能に支持され、ICカードが挿入されてこれを保持するホルダーと、ホルダーと共に前記ケース内に設けられ、ホルダーへのカードの挿入に伴って挿入方向へ移動すると共に、挿入方向への移動の最終段階でその移動に伴ってカードの接点部がコンタクトへ接近する厚み方向へホルダーが移動するように両側のカム機構を介してホルダーを支持するスライダーと、スライダーをカードが抜去される方向へ付勢する第1スプリングと、スライダーに対向するケースの平面部とスライダーとの間に前記平面部に沿って回動可能に設けられ、カードが完全に挿入された状態でスライダーを係止する回動式のロック爪と、ロック爪を固定方向に付勢する第2スプリングと、第2スプリングによる付勢力に抗してロック爪を固定位置から解放位置へ操作するイジェクト部材とを具備することを特徴とするロック機構付きカードコネクタ。
【請求項2】
前記カム機構は、前記スライダーの両側部に傾斜カム溝を形成し、両側の傾斜カム溝にスライド自在に挿入される突起をホルダーの両側部に設けた構成である請求項1に記載のロック機構付きカードコネクタ。
【請求項3】
前記ロック爪は、前記スライダーの一部を前記ケースの平面部側へL状に折り曲げて形成した係合部に弾性的に当接するように、前記ケースの平面部に取り付けられており、前記スライダーが固定位置へ移動したときに前記係合部を係止する構成である請求項1に記載のロック機構付きカードコネクタ。
【請求項4】
前記ロック爪は、前記スライダーを係止する主突起部と、スライダーの表面に平行な面内で主突起部に沿って形成された副突起部とを有する2重突起構造である請求項1に記載のロック機構付きカードコネクタ。
【請求項5】
前記ケースは、コンタクトを装備するボディと、これに被さるカバーとからなる2ピース構造である請求項1に記載のロック機構付きカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−12452(P2006−12452A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183749(P2004−183749)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】