説明

ロボット制御システム

【課題】複数の可搬式操作装置を1台のロボット制御装置に同時接続した場合、教示機能が有効な可搬式操作装置を識別できない。
【解決手段】ロボット制御システム1は、ロボットRと、教示操作信号を送信する可搬式操作装置TPと、教示操作信号を受信してロボットRへの教示作業を行う教示機能を有する制御装置RCにより構成される。制御装置RCは、可搬式操作装置TPとの無線通信を確立する際に、可搬式操作装置TP毎に教示機能を有効化又は無効化する通信確立手段を備える。可搬式操作装置TPは、無線通信の確立状態を示す通信状態表示灯3と、教示機能の有効/無効を示す非常停止スイッチ4とを備える。通信確立の際に、現在の接続数が0の時に前記教示機能を有効化し、1以上の時は無効化したモニタモードを選択する。可搬式操作装置TPの接続形態が表示されるので教示に使用できる装置を容易に判別できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御装置と可搬式操作装置との間の通信にネットワーク通信技術を利用し、各種データを送受信するロボット制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットを動作制御するロボット制御装置と、ロボットを操作するための可搬式操作装置との間の通信を、IEEE802の規格に対応した有線LAN、無線LAN等のネットワーク通信技術により実現した産業用のロボット制御システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、可搬式操作装置とロボット制御装置の間の通信を、例えば無線により行うようにしたロボット制御システムの構成図である。同図に示すように、ロボット制御システム51は、アーク溶接、スポット溶接等の作業を行うロボットR、作業者HMが教示作業を行う際に用いる可搬式操作装置TP、そしてロボットRの動作制御を行うロボット制御装置RCから大略構成される。可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとは無線通信が可能になっており、1対1の対向通信が行われる。
【0004】
ロボットRは、手首部先端にアーク溶接トーチ、スポット溶接ガン等の作業ツールが取り付けられており、安全柵2の内側領域に設置されている。
【0005】
可搬式操作装置TPは、各種データを表示する表示部としてのディスプレイ5、ロボットRに教示操作を行うためのキーボード6、ロボットRを非常停止させるための非常停止スイッチ4を備えている。可搬式操作装置TPからの信号(以下では教示操作信号という)は、無線通信によりロボット制御装置RCに送信される。教示操作信号には、ロボットRを手動操作により移動させるためのジョグ送り信号、ロボットRの作業位置を記憶する教示信号、緊急時にロボットRを非常停止させる非常停止信号等が含まれる。これら教示操作信号が送信されることにより、ロボット制御装置RCは、ロボットRのジョグ送り操作、教示データの作成、非常停止等の各処理を行う。以下では、これらの各処理を総称して教示機能と呼ぶことにする。
【0006】
ロボット制御装置RCは、可搬式操作装置TPからの入力に従って教示データを作成し、内部の記憶部(図示せず)に記憶する。また、外部から起動信号が入力されることにより教示データを再生する。この結果、ロボットRが自動運転される。LANケーブルCは、ロボットRの自動運転の間、ロボット制御装置RCと可搬式操作装置TPとを接続して有線通信するためのケーブルであり、可搬式操作装置TPに対してコネクタ(図示せず)を介して着脱可能である。
【0007】
図9は、可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの間の送受信データについて説明するための図である。同図(a)は、送受信の様子を示すブロック図であり、同図(b)は、送信される通信パケットの一形態を示している。同図(a)に示すように、可搬式操作装置TPは作業者HMからの入力に基づいて操作データDs(教示操作信号)を生成し、送信部72を介してロボット制御装置RCに送信する。ロボット制御装置RCは、操作データDsを受信部62により受信して解釈し、教示処理を行う。また、ロボット制御装置RCは、表示データDhを生成して送信部61により送信し、可搬式操作装置TPは表示データDhを受信部71により受信し、図示しない表示制御部がディスプレイ5に表示させる。
【0008】
可搬式操作装置TPに備えられた非常停止スイッチ4が押下された場合には、送信部72にて、非常停止スイッチ4が押下された旨の操作データDsを生成し、ロボット制御装置RCに送信する。ロボット制御装置RCでは、受信した操作データDsに基づいてロボットRを非常停止させる処理を行う。すなわち、ロボットRの駆動モータへの電源供給を停止することにより、ロボットRを即座に停止させる。この一連の処理のことを、以下では、非常停止機能と呼ぶことがある。なお、非常停止スイッチ4が押されなくても、無線通信中にノイズ、電波強度不足等が原因で一時的に通信が遮断されたような場合は、ロボットRが非常停止するように構成されている。
【0009】
ここで、操作データDsは、同図(b)に示すように、予め定められた通信プロトコルによってパケット形式で生成されて、ロボット制御装置RCに送信される。操作データDsには、送信先であるロボット制御装置RCを特定する送信先アドレス80、送信元である自身を特定する送信元アドレス81、操作されたキーの種類、入力データ等を示すデータ82等が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−80475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ロボット制御装置と可搬式操作装置との間の通信に、ネットワーク通信技術を利用した従来のロボット制御システムにおいては、ロボット制御装置と可搬式操作装置とが1対1の対向通信となっている。ネットワーク通信技術を利用すれば、例えば、1台のロボット制御装置に複数の可搬式操作装置を同時に接続して運用することも可能である。しかしながら、産業用ロボットを用いた生産現場では、作業者の安全性を極限にまで高める必要がある。例えば、複数の可搬式操作装置を1台のロボット制御装置に接続し、各可搬式操作装置から自由自在にロボットのジョグ送り操作ができるようにしてしまうと、非常に危険であることは言うまでもない。このため、産業用ロボットでは、ロボット制御装置と可搬式操作装置とが必ず1対1の対向通信となるように構成しておき、ロボットのジョグ送り操作、非常停止操作等の教示機能が、可搬式操作装置を持った作業者の意志の元により確実に機能するようにする一方で、他の可搬式操作装置からは機能しないように配慮する必要がある。
【0012】
ところが、近年では複数の可搬式操作装置を1台のロボット制御装置に同時に接続したいというニーズがある。例えば、ロボット制御装置に可搬式操作装置Aを接続して教示作業を行う一方で、この教示作業の様子を、別の可搬式操作装置Bでモニタしながら操作教育を行いたいというニーズである。あるいは、遠隔地から可搬式操作装置を用いて現在稼働中(生産中)のロボット制御装置に接続し、内部情報をモニタしたい、というニーズである。しかしながら、上述したように、従来技術では複数の可搬式操作装置を1台のロボット制御装置に同時に接続することは考慮されていない。
【0013】
複数の可搬式操作装置を同時に接続することを考慮した場合、教示機能を有効とする(教示作業を許可する)可搬式操作装置は、上述したように、安全面を考慮して1台に限定する必要がある。このために、実際に複数の可搬式操作装置を1台のロボット制御装置に同時に接続した場合は、教示機能が有効な可搬式操作装置はどれなのか、あるいは単にモニタとして使用されている可搬式操作装置はどれなのか等を、容易に識別することができないという問題が生じる。
【0014】
そこで、本発明は、複数の可搬式操作装置と1台のロボット制御装置とを同時に通信可能とするとともに、可搬式操作装置の利用形態(教示機能の有効/無効、モニタ機能の有効/無効等)を容易に判別することができるロボット制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、
駆動機構を有するマニピュレータと、非常停止信号を含む教示操作信号を送信する1以上の可搬式操作装置と、この可搬式操作装置とネットワーク通信手段を介して接続され、前記教示操作信号を受信して前記マニピュレータへの教示作業を行う教示機能を有するロボット制御装置と、を備えたロボット制御システムにおいて、
前記可搬式操作装置と前記ロボット制御装置との間のネットワーク通信を確立するとともに前記教示機能を前記可搬式操作装置毎に有効化または無効化する通信確立手段と、
前記ネットワーク通信の確立状態を示す第1表示手段と、
前記教示機能が有効化されているか無効化されているかを示す第2表示手段と、
前記第1表示手段および前記第2表示手段を制御する表示制御手段と、を備えたことを特徴とするロボット制御システムである。
【0016】
請求項2の発明は、前記通信確立手段は、前記可搬式操作装置から前記ネットワーク通信の接続要求がなされたときに、現在の通信接続数に基づいて前記教示機能を有効化するか無効化するかを決定することを特徴とする請求項1記載のロボット制御システムである。
【0017】
請求項3の発明は、前記通信確立手段は、現在の通信接続数が0であるときに前記教示機能を有効化することを特徴とする請求項2記載のロボット制御システムである。
【0018】
請求項4の発明は、前記可搬式操作装置と前記ロボット制御装置との間ですでにネットワーク通信が確立しており且つ前記教示機能が有効化されている状態で、異なる別の可搬式操作装置からネットワーク通信の接続要求がなされたときは、前記通信確立手段は、異なる別の可搬式操作装置に対し、前記教示機能を無効化し且つ前記ロボット制御装置の状態のみを取得して表示するモニタモードでの通信を確立することを特徴とする請求項2記載のロボット制御システムである。
【0019】
請求項5の発明は、前記教示作業で作成した教示データを再生する再生モードにおいて前記可搬式操作装置からネットワーク通信の接続要求がなされたときは、前記通信確立手段は、前記教示機能を無効化し且つ前記ロボット制御装置の状態のみを取得して表示するモニタモードでの通信を確立することを特徴とする請求項1記載のロボット制御システムである。
【0020】
請求項6の発明は、前記第1表示手段および第2表示手段は、前記可搬式操作装置に設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のロボット制御システムである。
【0021】
請求項7の発明は、前記第1表示手段および第2表示手段は、前記可搬式操作装置に設けられた非常停止スイッチにより共用されることを特徴とする請求項6記載のロボット制御システムである。
【0022】
請求項8の発明は、前記第1表示手段は、前記可搬式操作装置の表示部であり、前記表示制御手段は前記表示部にネットワーク通信中の前記ロボット制御装置の識別情報を表示することを特徴とする請求項6記載のロボット制御システムである。
【0023】
請求項9の発明は、前記ネットワーク通信は、前記可搬式操作装置をクライアントとし前記ロボット制御装置をサーバとしたリモートデスクトップ接続により確立されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のロボット制御システムである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ネットワーク通信により複数の可搬式操作装置を1台のロボット制御装置に同時に接続して使用する際に、教示機能の有効/無効やモニタ機能の有効/無効等、接続されている可搬式操作装置の利用形態を表示するようにしたことによって、作業者が教示作業に使用できる可搬式操作装置を容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るロボット制御システムの構成図である。
【図2】本発明に係るロボット制御システムのブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る通信確立処理のフローチャートである。
【図4】実施の形態2に係る可搬式操作装置の外観図である。
【図5】実施の形態2に係る通信確立処理のフローチャートである。
【図6】実施の形態3に係る通信確立処理のフローチャートである。
【図7】実施の形態4に係る可搬式操作装置に接続状態および識別情報を表示した様子を示す図である。
【図8】可搬式操作装置とロボット制御装置の間の通信を無線により行うようにしたロボット制御システムの構成図である。
【図9】可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの間の送受信データについて説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
【0027】
[実施の形態1]
図1は、本発明に係るロボット制御システムの構成図である。同図に示すように、ロボット制御システム1は、アーク溶接、スポット溶接等の作業を行うロボットR、複数台の可搬式操作装置TP、そしてロボットRの動作制御を行うロボット制御装置RCから大略構成される。以下、従来技術との相違部分を中心に説明する。なお、同図においては、複数の可搬式操作装置として、TP1〜TP3、TPnの各符号を表記しているが、以下の説明においてこれらを区別する必要がない場合、単に可搬式操作装置TPとして表記する。
【0028】
可搬式操作装置TPは、教示データ等の各種データが表示されるディスプレイ5、ロボットRに対するジョグ送り信号や教示信号を入力するためのキーボード6、ロボットRを非常停止させるための非常停止スイッチ4に加えて、ロボット制御装置RCとの通信が確立しているか否かを表示する通信状態表示灯3を備えている。通信状態表示灯3は、透明材質または半透明材質のカバーが施されており、例えば黄色LEDからなる発光体を内蔵している。通信状態表示灯3は、発光体により、ロボット制御装置RCと通信が確立している場合は黄色に点灯し、通信が確立していない場合は消灯する。通信状態表示灯3は、第1表示手段に相当する。
【0029】
また、非常停止スイッチ4は、透明材質または半透明材質からなる操作部(図示せず)内に、例えば赤色LEDからなる発光体を内蔵している。非常停止スイッチ4は、発光体により、教示機能が有効であるときは赤色に点灯し、教示機能が無効であるときは消灯する。非常停止スイッチ4は、第2表示手段に相当する。
【0030】
本発明においては、上記のように構成された可搬式操作装置TPを、例えばTP1〜TP3のように複数台用意し、これらを1台のロボット制御装置RCに同時に接続することが可能である。この場合、作業者HMが携帯する可搬式操作装置TPnは、TP1〜TP3のうち、教示機能が有効となった1台のみである。その他の可搬式操作装置はモニタ機能のみが有効となり、例えば教示作業中であれば、作業者HMが携帯した可搬式操作装置TPnと同一の画面が表示される。教示データの再生中(自動運転中)であれば、再生中の教示データやロボット制御装置RC内の内部情報が表示される。
【0031】
同図において、作業者HMに携帯される可搬式操作装置TPnからの教示操作信号は、無線通信によりロボット制御装置RCに送信される。教示操作信号には、ロボットRを手動操作により移動させるためのジョグ送り信号、ロボットRの教示データを入力する教示信号、緊急時にロボットRを非常停止させる非常停止信号等が含まれる。これら教示操作信号が送信されることにより、ロボット制御装置RCは、ロボットRのジョグ送り操作、教示データの作成、非常停止等の各処理を行う。
【0032】
なお、上記では、ロボット制御装置RCと複数の可搬式操作装置TPとの間で無線通信する場合を示したが、無線通信ではなく、有線通信としても良い。この場合、図示するようにロボット制御装置RCにハブHを接続し、このハブHの複数の接続ポートにLANケーブルCを接続することによりロボット制御装置RCと各可搬式操作装置TPとの有線通信を実現する。
【0033】
図2は、本発明に係るロボット制御システムのブロック図である。以下、可搬式操作装置TPおよびロボット制御装置RCについて、詳細に説明する。
【0034】
まず、可搬式操作装置TPについて説明する。可搬式操作装置TPは、上述した通信状態表示灯3、非常停止スイッチ4、ディスプレイ5およびキーボード6に加えて、中央演算処理装置であるCPU33、一時的な計算領域であるRAM34、ロボット制御装置RCと通信を行うための送受信機32、可搬式操作装置TPの駆動源としての二次電池36、各種データを記憶するためのハードディスク15、制御中枢である主制御部35の各部を備えている。なお、各部はバス39を介して接続されている。
【0035】
送受信機32は、無線LANインタフェース32Aおよび有線LANインタフェース32Bを有しており、ロボット制御装置RCと可搬式操作装置TPがハブHを経由してLANケーブルCで接続されている場合は有線通信となり、接続されていない場合は無線通信となるように構成されている。二次電池36は、図示しない充電装置に電気的に接続されることによって充電され、可搬式操作装置TPを作動させる。
【0036】
ハードディスク15の接続情報格納部47には、ロボット制御装置RCと通信を行うための接続情報が記憶されている。接続情報とは、例えばIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、MACアドレス等を指す。
【0037】
主制御部35は、上記各部を総括的に制御するものであり、図示しないオペレーティングシステム上で動作するソフトウェアプログラムとして、表示制御部45、キー入力監視部46および通信処理部41を備えている。表示制御部45は、ディスプレイ5に表示用データを表示する。キー入力監視部46は、キーボード6からのキー入力を監視する。通信処理部41は、ロボット制御装置RCとの通信確立・遮断処理および通信そのものを制御する処理を行う。また、接続したロボット制御装置RCの識別番号、IPアドレス等のネットワーク接続情報等をハードディスク15やRAM34に記憶する処理を行う。キーボード6によって入力された各種データは、通信処理部41および送受信機32を介してロボット制御装置RCにパケット形式のデータで送信される。
【0038】
次に、ロボット制御装置RCについて説明する。ロボット制御装置RCは、中央演算処理装置であるCPU13、一時的な計算領域であるRAM14、制御中枢となる主制御部16、教示データ等の各種データや定数等を記憶するためのハードディスク19、ロボットRの軌跡演算等を行って演算結果を駆動信号として駆動指令部18に出力する動作制御部17、ロボットRの各サーボモータを回転制御するためのサーボ制御信号を出力する駆動指令部18、可搬式操作装置TPと通信を行うための送受信機12の各部を備えている。なお、各部はバス9を介して接続されている。
【0039】
送受信機12は、無線LANインタフェース12Aおよび有線LANインタフェース12Bを有しており、ロボット制御装置RCと可搬式操作装置TPがハブHを介してLANケーブルCで接続されている場合は有線通信となり、接続されていない場合は無線通信となるように構成されている。
【0040】
ハードディスク19の教示データ格納部30には、可搬式操作装置TPからの入力に応じて作成された教示データが記憶されている。接続情報格納部27には、可搬式操作装置TPと通信を行うための接続情報が記憶されている。接続情報とは、例えばIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、MACアドレス等、ネットワーク通信に必要な情報に加えて、自身の識別番号等の情報である。
【0041】
主制御部16は、上記各部を総括的に制御するものであり、図示しないオペレーティングシステム上で動作するソフトウェアプログラムとして、通信処理部21、表示処理部25および解釈実行部26を備えている。通信処理部21は、可搬式操作装置TPとの通信処理を行う。表示処理部25は、可搬式操作装置TPのディスプレイ5に表示する表示用データを生成する。解釈実行部26は、教示データ格納部30に記憶された教示データを解釈して動作制御部17に動作制御信号を出力する。
【0042】
ここで、1台のロボット制御装置RCと複数の可搬式操作装置TPの通信を実現する方法について説明する。本実施形態では、オペレーティングシステム(以下、OS)にWindows(登録商標)を採用し、このOSで提供されるリモートデスクトップを利用した通信を行っている。具体的には、可搬式操作装置TPをクライアント、ロボット制御装置RCをサーバとして可搬式操作装置TPからロボット制御装置RCにリモート接続する方法により、有線または無線による通信を可能としている。この場合、可搬式操作装置TPは、ロボット制御装置RCが生成する仮想的なワークスペースの画面を表示するとともに、キーボード6による操作情報をロボット制御装置RCに送信する手段となる。そして、複数の可搬式操作装置TPの同時接続は、リモートデスクトップが有しているマルチセッション機能により実現することが可能である。ところが、複数の可搬式操作装置TPを同時接続する場合、安全面を考慮して、教示機能を有効化する可搬式操作装置TPは1台に限定する必要がある。そこで、本発明では、教示機能の有効/無効は、可搬式操作装置TPを接続する通信確立処理の段階で設定する。
【0043】
上記のように構成されたロボット制御システム1の作用について説明する。本実施形態においては、ロボット制御装置RCの通信処理部21が、可搬式操作装置TPとロボット制御装置RCとの間の通信を確立する際に、現在の通信接続数に応じて教示機能を有効化または無効化する。また、可搬式操作装置TPに備えた通信状態表示灯3が、通信確立状態を表示する。また、可搬式操作装置TPに備えた非常停止スイッチ4が、教示機能が有効化されているか無効化されているかを表示する。
【0044】
ここで、「教示機能を有効化する」とは、可搬式操作装置TPによる教示操作を許可することを意味する。図9(a)ですでに説明したように、作業者HMの教示操作に基づいて可搬式操作装置TPから教示操作信号(操作データDs)がロボット制御装置RCに送信されると、ロボット制御装置RCでは受信した操作データDsを解釈することにより、教示操作結果に応じた処理を行なう。すなわち「教示機能を有効化する」とは、可搬式操作装置TPからの教示操作に応じて、ロボット制御装置RCによる各種処理(ジョグ送り、非常停止等)が通常通りに行われることを意味する。
【0045】
逆に「教示機能を無効化する」とは、可搬式操作装置TPによる教示操作を禁止することを意味する。具体的には、ロボット制御装置RCにおいて、可搬式操作装置TPからの操作データDsを無視する処理が行われる。より詳しくは、可搬式操作装置TP1〜TP3が同時に接続されたとき、可搬式操作装置TP1の教示機能が有効で、可搬式操作装置TP2およびTP3の教示機能は無効に設定されたことを想定する。ロボット制御装置RCでは、操作データDsの送信元アドレス81(図9(b)参照)を解釈することにより、可搬式操作装置TP2およびTP3からの教示操作信号であれば、無視する処理を行う。この処理によって、教示機能が無効化されている可搬式操作装置TPからの教示操作を禁止することができる。教示機能を無効化しても、表示用データDhは、ロボット制御装置RCから可搬式操作装置TPへそのまま送信されるので、ロボット制御装置RCの状態を取得して表示するモニタ機能のみを作動させることが可能となる。なお、可搬式操作装置TPからの操作データDsを送信元アドレス81に基づいて無視するかわりに、操作データDsそのものを生成しないようにするか、操作データDsをロボット制御装置RCに送信しないようにしてもよい。
【0046】
(1.1台目の可搬式操作装置の通信確立)
(1.1 通信確立処理)
図3は、実施の形態1に係る通信確立処理のフローチャートである。以下では、可搬式操作装置TPが1台も接続されていない状態から、図1で示した可搬式操作装置TP1を接続する場合を例にして、処理の流れを説明する。実施の形態1では、可搬式操作装置TPが1台も接続されていない状態であれば無条件に教示機能を有効化し、すでに接続されている状態であれば無条件に教示機能を無効化することにしている。なお、後述する通信接続数や各種フラグは、RAM14に記憶されるものとする。
【0047】
同図のステップS1において、接続要求を待機する。ここでは、可搬式操作装置TP1からの接続要求があったものとして、ステップS2に移行する。ステップS2において、後述する教示機能有効化フラグの初期化処理を行う。ステップS3において、現在の通信接続数をRAM14から読み出す。この段階では、全く接続されていないため「0」となっている。したがって、通信接続数は「0」であると認識してステップS4に移行する。ステップS4において、通信接続数が「0」であるか否かを判定する。ここでは通信接続数が「0」であるので、教示機能を有効化するべく、ステップS5に移行する。ステップS5において、教示機能を有効化するためのフラグ(以下、教示機能有効化フラグという)をオンしてRAM14に記憶する。ステップS6において、従来技術と同様に通信の確立処理を行う。また同時に、通信接続数を+1してRAM14に記憶する。ステップS7において、教示機能有効化フラグがオンであるか否かを判定する。ここではオンであるので、ステップS8に移行する。そして、ステップS8において、教示機能を有効化する。この後、ステップS10において、通信の確立状態(通信中/切断中)および教示機能の状態(有効/無効)を、可搬式操作装置TP1へ通知する。ここでは、「通信中」および「教示機能有効」を通知する。
【0048】
(1.2 発光体の点灯処理)
上記通知を受けた可搬式操作装置TP1では、表示制御部45が通信状態表示灯3および非常停止スイッチ4の各内部に設けた発光体を点灯させる。この結果、通信状態表示灯3は黄色に点灯し、非常停止スイッチ4は赤色に点灯する。
【0049】
以上の処理により、最初に接続した可搬式操作装置TP1は、教示機能が有効な状態で通信が確立される。また、この状態のとき、可搬式操作装置TP1の通信状態表示灯3および非常停止スイッチ4が発光することにより、通信が確立され且つ教示機能が有効化されていることを判別することができる。したがって、可搬式操作装置TP1を作業者HMが携帯し、安全柵2に侵入して教示作業を行うことができる。
【0050】
(2.2台目以降の可搬式操作装置の通信確立)
(2.1 通信確立処理)
次に、2台目の可搬式操作装置TP2から接続要求がなされた場合の通信確立処理を同フローチャートに従って説明する。ステップS3から説明する。
【0051】
ステップS3において、現在の通信接続数をRAM14から読み出す。この段階では、「1」となっているため、ステップS6に移行する。ステップS6において、通信の確立処理を行う。また、通信接続数を+1してRAM14に記憶する。ステップS7において、教示機能有効化フラグがオンであるか否かを判定する。ここではオフであるので、ステップS9に移行する。そして、ステップS9において教示機能を無効化し、モニタ機能のみを作動させる(この状態のことを、以下ではモニタモードと呼ぶことがある)。この後、ステップS10において、通信の確立状態(通信中/切断中)および教示機能の状態(有効/無効)を、可搬式操作装置TP2へ通知する。ここでは、「通信中」および「教示機能無効」を通知する。
【0052】
(2.2 発光体の点灯処理)
上記通知を受けた可搬式操作装置TP2では、表示制御部45が通信状態表示灯3のみを点灯させる。この結果、通信状態表示灯3のみ点灯し、非常停止スイッチ4は消灯したままとなる。
【0053】
以上の処理により、2台目に接続した可搬式操作装置TP2は、教示機能が無効となり、モニタ機能のみが作動された状態で通信が確立される(3台目以降も同様となる)。また、この状態のとき、可搬式操作装置TP2の通信状態表示灯3が発光し、非常停止スイッチ4は消灯したままであることから、通信は確立しているが教示機能は無効化されている(すなわちモニタモードである)ことを判別することができる。すなわち、教示機能が有効な可搬式操作装置TP1で教示作業を行う一方で、この教示作業の様子を可搬式操作装置TP2でモニタすることができる。可搬式操作装置TP2では、教示機能が無効になっているので、ロボットRのジョグ送り操作等が禁止される。したがって、作業者HMが安全柵2の内側領域で教示作業を行っていたとしても、可搬式操作装置TP2によるロボットRの操作は行えないため、作業者HMに危険を与えることはない。
【0054】
(3.可搬式操作装置の通信遮断)
可搬式操作装置TP1から通信遮断要求がなされた場合は、教示機能を無効化するとともに、通信接続数を−1して通信を遮断する。このとき、安全面を考慮して可搬式操作装置TP2の教示機能を有効化する処理は行わないようにすることが望ましい。可搬式操作装置TP2から通信遮断要求がなされた場合は、通信接続数を−1して通信を遮断する。
【0055】
以上説明したように、実施の形態1によれば、ネットワーク通信により複数の可搬式操作装置TPを1台のロボット制御装置RCに同時に接続して使用する際に、教示機能の有効/無効やモニタ機能の有効/無効等、接続されている可搬式操作装置の利用形態を表示するようにしたことによって、作業者が教示作業に使用できる可搬式操作装置を容易に判別することができる。
【0056】
また、通信を確立した1台目の可搬式操作装置TPにのみ教示機能を有効にして2台目以降は無効化するようにした。すなわち、教示機能を有効にする/しないを作業者HMが意識することなく、複数の可搬式操作装置TPを1台のロボット制御装置RCに同時に接続して使用することができる。
【0057】
なお、上述した実施の形態1においては、第1表示手段として通信状態表示灯3を設け、第2表示手段として非常停止スイッチ4を設けたが、第1表示手段と第2表示手段とを非常停止スイッチ4で共用するように構成してもよい。この場合、教示機能が有効な状態では、非常停止スイッチ4を点灯させるようにし、教示機能が無効でモニタ機能のみが有効な状態では、非常停止スイッチ4を点滅させるようにする。あるいは、赤色とは異なる別のLEDを内蔵しておき、発光色を変えるようにしてもよい。
【0058】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態1では、通信接続数が0であれば無条件に教示機能を有効化し、通信接続数が1以上であれば無条件に教示機能を無効化した。これに対し、実施の形態2では、教示機能の有効/無効を選択させるスイッチを設け、すでに教示機能が有効な状態のときに異なる別の可搬式操作装置から接続要求がなされた場合は、教示機能を無効化して通信を確立するようにしている。
【0059】
図4は、実施の形態2に係る可搬式操作装置TPの外観図である。同図において、通信状態表示灯3、非常停止スイッチ4、ディスプレイ5およびキーボード6は、図1で同符号を付与した同一のものであるので説明を省略する。
【0060】
教示機能選択スイッチ7は、有効/無効の二者切り替えスイッチである。有効側が選択されていると、設定状態を示すデータが通信確立時にロボット制御装置RCに通知される。教示機能選択スイッチ7は、この形態に限定されるものではなく、トグル式のスイッチでも、いわゆるソフトウェアによるスイッチとしても良い。ソフトウェアによるスイッチとする場合は、可搬式操作装置TPから接続要求操作を行うときに、教示機能を有効化するか、無効化するかを選択させるようにする。
【0061】
図5は、実施の形態2に係る通信確立処理のフローチャートである。以下、同図に基づき、実施の形態2における処理を説明する。実施の形態1との相違を明確にするために、1台目の可搬式操作装置TP1は教示機能を無効化し、2台目の可搬式操作装置TP2は教示機能を有効化する場合を例に説明する。
【0062】
(3.1台目の可搬式操作装置の通信確立)
(3.1 通信確立処理)
同図のステップS11において、接続要求を待機する。ここでは、可搬式操作装置TP1からの接続要求があったものとして、ステップS12に移行する。ステップS12において、後述する教示機能有効化フラグの初期化処理を行う。ステップS13において、接続要求時に可搬式操作装置TP1から通知された教示機能選択スイッチ7の設定状態に従い、有効側に設定されているか無効側に設定されているかを判定する。ここでは、無効側に設定されているものとして、ステップS16に移行する。ステップS16において、従来技術と同様に通信の確立処理を行う。ステップS17において、教示機能有効化フラグがオンであるか否かを判定する。ここではオフである(有効化しない)ので、ステップS19に移行する。そして、ステップS19において教示機能を無効化し、モニタ機能のみを作動させる。この後、ステップS20において、通信の確立状態(通信中/切断中)および教示機能の状態(有効/無効)を、可搬式操作装置TP1へ通知する。ここでは、「通信中」および「教示機能無効」を通知する。
【0063】
(3.2 発光体の点灯処理)
上記通知を受けた可搬式操作装置TP1では、表示制御部45が通信状態表示灯3のみを点灯させる。この結果、通信状態表示灯3のみ点灯し、非常停止スイッチ4は消灯したままとなる。
【0064】
以上の処理により、1台目に接続した可搬式操作装置TP1は、教示機能が無効となり、モニタ機能のみが作動された状態で通信が確立される。
【0065】
(4.2台目の可搬式操作装置の通信確立)
(4.1 通信確立処理)
1台目の可搬式操作装置TP1に対しては教示機能を無効にして通信を確立した。同フローチャートを使用し、2台目の可搬式操作装置TP2に対して教示機能を有効にして通信を確立する処理を説明する。ステップS13から説明する。
【0066】
ステップS13において、接続要求時に可搬式操作装置から通知される教示機能選択スイッチ7の設定状態に従い、有効側に設定されているか無効側に設定されているかを判定する。ここでは、有効側に設定されているものとして、ステップS14に移行する。
【0067】
ステップS14において、教示機能が現在有効か否かを示すフラグ(以下、有効中フラグ)をRAM14から読み出す。1台目の可搬式操作装置TP1は教示機能が無効で接続されているため、上記有効中フラグはオフである。したがって、ステップS15に移行する。ステップS15において、可搬式操作装置TP2で教示機能を有効化するために、教示機能有効化フラグをオンにする。ステップS16において、通信の確立処理をおこなう。ステップS17において、教示機能有効化フラグがオンであるか否かを判定する。ここではオンであるので、ステップS18に移行する。そして、ステップS18において、教示機能を有効化するとともに、有効中フラグをオンにする。この後、ステップS20において、通信の確立状態(通信中/切断中)および教示機能の状態(有効/無効)を、可搬式操作装置TP2へ通知する。ここでは、「通信中」および「教示機能有効」を通知する。
【0068】
(4.2 発光体の点灯処理)
上記通知を受けた可搬式操作装置TP2では、表示制御部45が通信状態表示灯3および非常停止スイッチ4の各内部に設けた発光体を点灯させる。この結果、通信状態表示灯3は黄色に点灯し、非常停止スイッチ4は赤色に点灯する。
【0069】
以上の処理により、可搬式操作装置TP2は、教示機能が有効な状態で通信が確立される。また、この状態のとき、可搬式操作装置TP2の通信状態表示灯3および非常停止スイッチ4が発光することにより、通信が確立され且つ教示機能が有効化されていることを判別することができる。
(5.3台目の可搬式操作装置の通信確立)
【0070】
すでに教示機能が有効な状態にも関わらず、教示機能選択スイッチ7が有効側に設定されて接続要求がなされる場合が想定される。例えば、可搬式操作装置TP2で教示機能が有効になっているにも関わらず、3台目の可搬式操作装置TP3を接続する際に、教示機能選択スイッチ7が有効側に設定されている場合である。この場合は、ステップS14においてYesが選択されることになるが、この後の処理としては、エラーメッセージ等を出力してからステップS11に戻すようにするとよい。
【0071】
以上説明したように、実施の形態2においても、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。また、1台目は教示機能を無効にし、2台目は教示機能を有効にするなど、より柔軟な運用を行うことができる。
【0072】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態1および2では、教示データを作成する教示モードにおいて行うと好ましい通信確立処理について説明した。これに対し、実施の形態3では、教示データを再生してロボットRに連続運転を行わせる再生モードでの通信確立処理について説明する。
【0073】
ロボットRに連続運転を行わせる再生モードにおいて上述した教示機能(特に非常停止機能)を有効にした場合、ノイズ等による通信障害が発生するとロボットRが停止してしまうために、生産工程に重大な影響を及ぼす。主に教示作業に用いる可搬式操作装置TPは、再生モードでは必要としないことが多いため、通信自体を遮断しておくことが望ましい。とはいえ、再生モードでの連続運転中にロボット制御装置RCの内部情報をモニタしたいケースも多い。そこで、再生モードにおいて可搬式操作装置TPからの接続要求がなされたときは、無条件に教示機能を無効化したモニタモードを選択するようにするのが、実施の形態3である。
【0074】
図6は、実施の形態3に係る通信確立処理のフローチャートである。
【0075】
同図のステップS21において、接続要求を待機する。ここでは、可搬式操作装置TP1からの接続要求があったものとして、ステップS22に移行する。ステップS22において、再生モードであるか否かを判定する。再生モードでない(教示モードである)場合は、実施の形態1または2で説明した処理をおこなう。再生モードである場合は、ステップS23に移行する。ステップS23において、通信の確立処理を行う。ステップS24において、教示機能を無効化し、モニタ機能のみを作動させる。この後、ステップS25において、通信の確立状態(通信中/切断中)および教示機能の状態(有効/無効)を、可搬式操作装置TPへ通知する。ここでは、「通信中」および「教示機能無効」を通知する。
【0076】
上記通知を受けた可搬式操作装置TPでは、表示制御部45が通信状態表示灯3のみを点灯させる。すなわち、通信状態表示灯3のみ点灯し、非常停止スイッチ4は消灯したままとなる。
【0077】
以上説明したように、実施の形態3においては、教示データを再生する再生モードにおいて可搬式操作装置TPから接続要求がなされたときは、教示機能を無効化し、ロボット制御装置RCの状態のみを取得して表示するモニタモードでの通信を確立するようにした。こうすることによって、再生運転中における通信障害によってロボットRが停止することがない。
【0078】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態1〜3では、可搬式操作装置TPに第1表示手段である通信状態表示灯3を備えた。実施の形態4では、通信状態表示灯3に替えて、可搬式操作装置TPの表示部であるディスプレイ5を第1表示手段とし、このディスプレイ5に通信状態を表示させる。また、1台のロボット制御装置RCに複数の可搬式操作装置TPを接続すると、どの可搬式操作装置TPが、どのロボット制御装置RCに接続されているのか、容易に判断できなく恐れがある。特に、ロボット制御装置RCが複数台存在し、それぞれに可搬式操作装置TPを複数台接続すると、全く判断できなくなる恐れがある。したがって、さらに好ましくは、現在通信が確立しているロボット制御装置RCの識別情報をディスプレイ5に表示させるとよい。
【0079】
図7は、実施の形態4に係る可搬式操作装置に接続状態および識別情報を表示した様子を示す図である。同図(a)は、教示機能が有効化された状態で通信が確立している可搬式操作装置TP1を示している。同図(b)は、教示機能が無効化されたモニタモードで通信が確立している可搬式操作装置TP2を示している。
【0080】
同図(a)では、教示機能が有効化されているので非常停止スイッチ4が点灯している。また、ディスプレイ5には、「ロボット01に接続中(教示操作有効)」と表示されており、ロボット01に教示機能が有効化された状態で通信が確立されていることを示している。ロボット01とは、接続情報格納部27に予め記憶されたロボット制御装置RCの識別番号である。
【0081】
一方、同図(b)では、教示機能が無効化されているので非常停止スイッチ4が消灯している。また、ディスプレイ5には、「ロボット01に接続中(モニタモード)」と表示されており、ロボット01と、教示機能が無効化されたモニタモードで通信が確立されていることを表示している。
【0082】
なお、ディスプレイ5での上記表示は、文字ではなく、図形や色等で代用して表現しても良い。また、同図では、説明の便宜上、比較的大きな文字で表示しているが、作業者HMが視認できる程度にサイズは調整されるべきものである。
【0083】
上述したように、実施の形態4においては、可搬式操作装置TPの表示部であるディスプレイ5に通信の確立状態を表示するようにし、さらには、通信中のロボット制御装置の識別情報を表示するようにした。こうすることによって、どの可搬式操作装置がどのロボット制御装置に接続されているのかを作業者HMが容易に判断することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 ロボット制御システム
2 安全柵
3 通信状態表示灯
4 非常停止スイッチ
5 ディスプレイ
6 キーボード
7 教示機能選択スイッチ
9 バス
12 送受信機
12A 無線インタフェース
12B 有線インタフェース
13 CPU
14 RAM
15 ハードディスク
16 主制御部
17 動作制御部
18 駆動指令部
19 ハードディスク
21 通信処理部
25 表示処理部
26 解釈実行部
27 接続情報格納部
30 教示データ格納部
32 送受信機
32A 無線インタフェース
32B 有線インタフェース
33 CPU
34 RAM
35 主制御部
36 二次電池
39 バス
41 通信処理部
45 表示制御部
46 キー入力監視部
47 接続情報格納部
51 ロボット制御システム
61 送信部
62 受信部
71 受信部
72 送信部
80 送信先アドレス
81 送信元アドレス
82 データ
C LANケーブル
Ds 操作データ
Dh 表示データ
H ハブ
HM 作業者
R ロボット
RC ロボット制御装置
TP 可搬式操作装置
TP1 可搬式操作装置
TP2 可搬式操作装置
TP3 可搬式操作装置
TPn 可搬式操作装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構を有するマニピュレータと、非常停止信号を含む教示操作信号を送信する1以上の可搬式操作装置と、この可搬式操作装置とネットワーク通信手段を介して接続され、前記教示操作信号を受信して前記マニピュレータへの教示作業を行う教示機能を有するロボット制御装置と、を備えたロボット制御システムにおいて、
前記可搬式操作装置と前記ロボット制御装置との間のネットワーク通信を確立するとともに前記教示機能を前記可搬式操作装置毎に有効化または無効化する通信確立手段と、
前記ネットワーク通信の確立状態を示す第1表示手段と、
前記教示機能が有効化されているか無効化されているかを示す第2表示手段と、
前記第1表示手段および前記第2表示手段を制御する表示制御手段と、を備えたことを特徴とするロボット制御システム。
【請求項2】
前記通信確立手段は、前記可搬式操作装置から前記ネットワーク通信の接続要求がなされたときに、現在の通信接続数に基づいて前記教示機能を有効化するか無効化するかを決定することを特徴とする請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項3】
前記通信確立手段は、現在の通信接続数が0であるときに前記教示機能を有効化することを特徴とする請求項2記載のロボット制御システム。
【請求項4】
前記可搬式操作装置と前記ロボット制御装置との間ですでにネットワーク通信が確立しており且つ前記教示機能が有効化されている状態で、異なる別の可搬式操作装置からネットワーク通信の接続要求がなされたときは、前記通信確立手段は、異なる別の可搬式操作装置に対し、前記教示機能を無効化し且つ前記ロボット制御装置の状態のみを取得して表示するモニタモードでの通信を確立することを特徴とする請求項2記載のロボット制御システム。
【請求項5】
前記教示作業で作成した教示データを再生する再生モードにおいて前記可搬式操作装置からネットワーク通信の接続要求がなされたときは、前記通信確立手段は、前記教示機能を無効化し且つ前記ロボット制御装置の状態のみを取得して表示するモニタモードでの通信を確立することを特徴とする請求項1記載のロボット制御システム。
【請求項6】
前記第1表示手段および第2表示手段は、前記可搬式操作装置に設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のロボット制御システム。
【請求項7】
前記第1表示手段および第2表示手段は、前記可搬式操作装置に設けられた非常停止スイッチにより共用されることを特徴とする請求項6記載のロボット制御システム。
【請求項8】
前記第1表示手段は、前記可搬式操作装置の表示部であり、前記表示制御手段は前記表示部にネットワーク通信中の前記ロボット制御装置の識別情報を表示することを特徴とする請求項6記載のロボット制御システム。
【請求項9】
前記ネットワーク通信は、前記可搬式操作装置をクライアントとし前記ロボット制御装置をサーバとしたリモートデスクトップ接続により確立されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のロボット制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−148350(P2012−148350A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6558(P2011−6558)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】