説明

ロボット制御装置、ロボットの制御方法

【課題】ロボットの制御を可能にするロボット制御装置を提供する。
【解決手段】ロボット制御装置は、基体1に対して回転運動可能なリンク3と、リンク3を駆動するモーター4と、モーター4のトルクをリンク3に減速比Nで伝達する減速機5と、モーター4の回転角θM1を検出する角度センサー6と、基体1に対するリンク3の角速度ωL1を検出する角速度センサー12と、角速度ωL1の積分値のうち第1の周波数fH以上の高周波成分、及びθM1*Nのうち第2の周波数fL以下の低周波成分を用いリンク3の回転角を算出する演算部15と、を備え、第1の周波数fHと第2の周波数fLとが異なる。このことによって、角速度センサー12のバイアスドリフトの影響を排除し、特定の周波数を強調したり除去した角度の信号を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの制御装置、及びロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットを駆動する際に、エンコーダーでモーターの回転角を制御し、リンクの制御を行っている。しかし、モーターとリンクとの間のトルク伝達機構やリンクは剛体ではないため動作時に振動が発生し、正確なリンクの作動を制御できないという課題を有していた。
【0003】
そこで、リンク(例えば、アーム等)に慣性センサーを取り付け、この慣性センサーの出力信号を用いてリンクの動作制御を行うロボット制御装置が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
また、エンコーダーの低周波成分と慣性センサーの高周波成分とを合成し、リンクの回転角度を制御するロボット制御装置も提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−173116号公報
【特許文献2】特開平7−9734号公報
【特許文献3】特許第3883544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような特許文献1や特許文献2では、慣性センサーのバイアスドリフトに起因する定常の速度偏差や位置偏差をもつという課題を有している。
【0007】
この課題に対して、特許文献3では、エンコーダーの低周波成分と慣性センサーの高周波成分とを合成することで、慣性センサーのバイアスドリフトの影響を抑制することを可能としている。
【0008】
しかしながら、エンコーダーの低周波成分を取り出すためのローパスフィルターと、慣性センサーの高周波成分を取り出すためのハイパスフィルターの遮断周波数(カットオフ周波数)を一致させているために、低周波成分と高周波成分とを合成させた場合に周波数特性が平坦になる。つまり、ゲインが平坦になる。従って、合成感度が平坦になることから、強調したい周波数帯、または除去したい周波数帯がある場合には別に外付けのフィルターを設けなければならないという課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例に係るロボット制御装置は、基体に対して回転運動可能なリンクと、前記リンクを駆動するアクチュエーターと、前記アクチュエーターのトルクを前記リンクに減速比Nで伝達するトルク伝達機構と、前記アクチュエーターの回転角θM1を検出する角度センサーと、前記基体に対する前記リンクの角速度ωL1を検出する角速度センサーと、ωL1の積分値のうち第1の周波数fH以上の高周波成分とθM1*Nのうち第2の周波数fL以下の低周波成分とを用いて前記リンクの回転角を算出する演算部と、を備え、前記第1の周波数fHと前記第2の周波数fLとが異なることを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、リンクに角速度センサーを取り付け、この角速度センサーの出力信号を用いてリンクの動作制御を行うことにより、アクチュエーターとリンクとの間の弾性成分に起因する動作時の振動を抑制することができる。
【0012】
また、第1の周波数fHと第2の周波数fLとを一致させないことにより、角速度センサーのバイアスドリフトの影響を排除することができる。
なお、第1の周波数fH、第2の周波数fLはそれぞれ、低周波成分及び高周波成分を取り出すために用いるフィルターの遮断周波数(カットオフ周波数)に相当する。
【0013】
従って、特許文献3のように強調したい周波数帯、または除去したい周波数帯がある場合に設けられる外付けのフィルターを必要としないため、コストの低減や演算部の演算量を減らすことができる。
【0014】
[適用例2]上記適用例に係るロボット制御装置は、前記第1の周波数fHと前記第2の周波数fLとが、fH<fLであることが好ましい。
【0015】
[適用例3]上記適用例に係るロボット制御装置は、前記リンクと前記アクチュエーターと前記トルク伝達機構からなる系の固有振動数のうちの少なくとも一つの固有振動数fLNが、fH<fLN<fLであることが望ましい。
【0016】
このように、第1の周波数fH、第2の周波数fLとをfH<fLとすること、また、系の固有振動数fLNを、fH<fLN<fLとすることにより、系の固有振動のような測定したい部分において感度を高めることができ、振動を強調することが可能となる。従って、この測定した情報を基に制御を行うことで振動を抑制することができる。
【0017】
[適用例4]上記適用例に係るロボット制御装置は、前記第1の周波数fHと前記第2の周波数fLとが、fH>fLであることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、特定の周波数帯域において検出するリンクの角度の感度を小さくすることができ、検出したくない特定周波数のノイズを除去することができる。
【0019】
[適用例5]上記適用例に係るロボット制御装置は、電気的なノイズの周波数のうちの少なくと一つの周波数fnoが、fH>fno>fLであることが望ましい。
【0020】
[適用例6]上記適用例に係るロボット制御装置は、外部からの物理的な振動の周波数のうちの少なくとも一つの周波数fphが、fH>fph>fLであることが望ましい。
【0021】
[適用例7]上記適用例に係るロボット制御装置は、前記基体、または前記アクチュエーターと前記トルク伝達機構を保持する筐体の固有周波数のうち、少なくとも一つの固有周波数frbがfH>frb>fLであることが望ましい。
【0022】
前述したように、第1の周波数fHと第2の周波数fLとをfH>fLとした場合、特定の周波数帯域において角速度センサーの感度を小さくすることができることから、電気的なノイズの周波数fnoをfH>fno>fLとし、外部からの物理的な振動の周波数fphをfH>fph>fLとし、基体または筐体の固有周波数のどちらか一方の固有周波数frbをfH>frb>fLとすれば、リンクの角度として検出したくない外乱信号が入る場合に、その信号を除去するノッチフィルターの役割を兼ねることが可能になる。
【0023】
さらに、上述した外乱ノイズを除去して測定した情報を基に制御を行うことにより、より正確な制御を行うことができる。
【0024】
[適用例8]本適用例に係るロボットの制御方法は、基体に対して回転運動可能なリンクと、前記リンクを駆動するアクチュエーターと、前記アクチュエーターのトルクを前記リンクに減速比Nで伝達するトルク伝達機構と、前記アクチュエーターの回転角θM1を検出する角度センサーと、前記基体に対する前記リンクの角速度ωL1を検出する角速度センサーと、ωL1の積分値のうち第1の周波数fH以上の高周波成分とθM1*Nのうち第2の周波数fL以下の低周波成分と、を用いて前記リンクの回転角を算出する演算部と、を備え、前記第1の周波数fHと前記第2の周波数fLとが異なるロボットの制御方法であって、前記アクチュエーターが前記リンクを駆動するステップと、前記角度センサーが、前記アクチュエーターの回転角θM1を検出するステップと、前記角速度センサーが、前記基体に対する前記リンクの角速度ωL1を検出するステップと、前記演算部が、ωL1の積分値のうちの第1の周波数fH以上の高周波成分と、θM1*Nのうちの第2の周波数fL以下の低周波成分を用いて前記リンクの角度を算出するステップと、を含むことを特徴とする。
【0025】
このような制御方法によれば、角速度センサーの出力信号を用いてリンクの動作制御を行うことにより、アクチュエーターとリンクとの間の弾性成分に起因する動作時の振動を抑制することができ、角速度センサーのバイアスドリフトの影響を排除することができる。
【0026】
さらに、第1の周波数fH、第2の周波数fLはそれぞれ、低周波成分及び高周波成分を取り出すために用いるフィルターの遮断周波数(カットオフ周波数)に相当し、従来技術のように、強調したい周波数帯または除去したい周波数帯がある場合に設けられる外付けのフィルターを必要としないため、コストの低減や演算部の演算量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態1に係るロボットの概略構成を示す正面断面図。
【図2】リンクの角度を算出する過程を示すフロー図。
【図3】実施例1に係る周波数とゲインの関係を示すグラフ。
【図4】実施例2に係る周波数とゲインの関係を示すグラフ。
【図5】実施例2において2次のフィルターを用いた周波数とゲインの関係を示すグラフ。
【図6】モーター角度の応答とリンク角度の応答からみた周波数とゲインの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
【0029】
図1は、実施形態1に係るロボットの概略構成を示す正面断面図である。ロボット100は、基体1と、リンク3,8と、アクチュエーターとしてのモーター4,9と、トルク伝達機構としての減速機5,11と、角度センサー6,10と、角速度センサー12,13とから構成されている。
【0030】
基体1の上部にリンク3の一端が取付けられており、リンク3の他端にはリンク8が取付けられている。リンク3は、軸2を回転軸として基体1に対して相対的に回転運動することができる。また、リンク8は、軸7を回転軸としてリンク3に対して相対的に回転運動することができる。
【0031】
モーター4は減速機5を介してリンク3を駆動し、モーター9は減速機11を介してリンク8を駆動する。減速機5及び減速機11の減速比をそれぞれN1、N2とする。角度センサー6はモーター4の頂部に設けられ、軸2回りのモーター回転角θM1を検出する。角度センサー10はモーター9の頂部に設けられ、軸7回りのモーター回転角θM2を検出する。
【0032】
角速度センサー12はリンク3に設けられ、角速度センサー13はリンク8に設けられている。角速度センサー12は基体1に対するリンク3の角速度ωL1を検出し、角速度センサー13はリンク3に対するリンク8の角速度ωL2を検出する。なお、リンク8の先端方向には回転装置30が設けられ、回転装置30には昇降装置31が軸止されている。そして、昇降装置31の先端部にはワークのチャック部32が設けられている。
【0033】
角速度センサー12,13は、それぞれリンク3,8の先端部に配置されている。なお、リンク3,8を剛体とみなすのに十分な剛性を有する場合、リンク3,8のそれぞれにおいて角速度は一定であるので、角速度センサー12,13はリンク3,8それぞれの任意の位置に配設することができる。リンク3,8が十分な剛性を有しない場合、角速度センサー12,13は、それぞれリンク3,8の先端部に配置する方が望ましい。なお、角速度ωL1、ωL2は、リンク3,8の回転面内の角速度成分である。
【0034】
なお、モーター4及び減速機5は筐体20によって保持されており、モーター9及び減速機11は筐体21によって保持されている。
続いて、本実施形態によるリンクの角度を算出する過程について説明する。
【0035】
図2は、本実施形態に係るリンクの角度を算出する過程を示すフロー図である。なお、基体1に対するリンク3の角度と、リンク3に対するリンク8の角度の算出はリンク3に対するリンク8の角速度をωL1−ωL2とすることと同じ考え方で可能なため、基体1に対するリンク3の角度θA1の算出方法を例示して説明する。図1も参照する。
【0036】
図2おいて、ステップS10及びステップS60以外の演算処理は演算部15(図1、参照)によって実行される。なお、演算部15は、ロボット100内の任意の位置に配置されるCPU(Central Processing Unit)、またはロボット100の外部に設けられるCPUによって実行してもよい。
【0037】
まず、角速度センサー12が角速度ω1を検出する(S10)。次に、リンク3の単独の角速度を算出する(S20)。リンク3の角速度はdθA1/dtで算出される。角速度ω1は基体1に対する角速度である。次に、dθA1/dtを積分する(S30)。
【0038】
さらに、この積分結果をハイパスフィルターHFに通過させる(S40)。これにより、角度θA1のうち第1の周波数fH以上の高周波成分が得られる。なお、第1の周波数fHは、ハイパスフィルターHFの遮断周波数(カットオフ周波数)のため、以降、遮断周波数fHまたはカットオフ周波数fHと表す。ここで、角度θA1の低周波成分を除去する理由は、リンク3の角速度dθA1/dtの積分ではバイアスドリフトの影響によりリンク3の角度θA1を正確に求められないので、このバイアスドリフトの影響を除去するためである。
【0039】
ロボット100が停止または極低周波帯域で動作している場合には、減速機5はほとんど捩れない。そこで、角度センサー6でモーター回転角θM1を検出する(S60)。次に、減速比N1をモーター回転角θM1に乗算し、θA1=θM1*N1を算出する(S70)。
【0040】
続いて、θM1*N1をローパスフィルターLFに通過させる(S80)。これにより、リンク3の角度θA1のうち第2の周波数fL以下の低周波成分が得られる。なお、第2の周波数fHは、ローパスフィルターLFの遮断周波数(カットオフ周波数)のため、以降、遮断周波数fLまたはカットオフ周波数fL表す。ここで、角度θA1の高周波成分を除去する理由は、高周波成分では減速機5が捩れるためθA1=θM1*N1が成立しなくなるからである。
【0041】
このように、ハイパスフィルターHFとローパスフィルターLFを用いることにより、ステップS10〜S40により得られた角度θA1の高周波成分と、ステップS60〜S80によって得られた角度θA1の低周波成分とを加算する(S100)。この演算によって、基体1に対するリンク3の角度θA1を算出することができる。
【0042】
また、ステップS20において得られた角速度ω1(dθA1/dt)を1回近似微分することによって、リンク3の角加速度d2θA1/dt2を算出することができる(S50)。また、ステップS60において得られたモーター回転角θM1を1回近似微分することによって、モーター4のモーター角速度dθM1/dtを算出する(S90)。
【0043】
従って、このようにすれば、角速度センサー12のバイアスドリフトのリンク角度θA1に対する影響を抑制することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、ハイパスフィルターHF、ローパスフィルターLFそれぞれの遮断周波数fH,fLをfH≠fLとしている。
次に、遮断周波数fH,fLが、fH≠fLとする場合について実施例1〜実施例3で詳しく説明する。
(実施例1)
【0045】
実施例1では、遮断周波数fH,fLが、fH<fL、1次のフィルターの場合について図面を参照して説明する。
図3は、実施例1に係る周波数とゲインの関係を示すグラフである。図3は、遮断周波数が、fL=15Hz、fH=5Hzの場合の周波数f(Hz)とゲイン(db)の関係を示している。図3において、周波数fが、fH<f<fLの条件では、ハイパスフィルターHFのゲインとローパスフィルターLFのゲインとを合成(加算)して表した場合、合成ゲインは、ハイパスフィルターHFのゲイン曲線とローパスフィルターLFのゲイン曲線との交差域において高くなる。これは、特定の周波数帯域において角度センサー6と角速度センサー12の出力を基に演算されたリンクの角度の感度を高くしていることを意味している。
【0046】
従って、モーター4、減速機5、リンク3からなる系の固有振動のような測定したい部分において感度を高めることができる。つまり、これらの系の少なくとも一つの固有振動数fLNをfH<fLN<fLとすれば、測定したい部分において感度を高めることで振動を強調して角度θA1の測定を行うことができる。従って、この測定結果に基づき制御を行うことで効果的にリンク3の振動を抑制することができる。
【0047】
また、測定したい部分において感度を高めることで振動を強調するための外付けのフィルターを必要としないため、コストの低減、及び演算部15の演算量を減らすことができる。
(実施例2)
【0048】
続いて、遮断周波数fH,fLが、fH>fL、1次のフィルターの場合について図面を参照して説明する。
図4は、実施例2に係る周波数とゲインの関係を示すグラフである。図4は、遮断周波数が、fL=5Hz、fH=15Hzの場合の周波数f(Hz)とゲイン(db)の関係を示している。
【0049】
図4において、周波数fが、fH>f>fLの条件では、ハイパスフィルターHFのゲインとローパスフィルターLFのゲインとを合成(加算)した場合、合成ゲインは、ハイパスフィルターHFのゲイン曲線とローパスフィルターLFのゲイン曲線との交差域においてゲインが低くなる。これは、特定の周波数帯域において角度センサー6と角速度センサー12の出力を基に演算されたリンクの角度の感度を低くしていることを意味している。
【0050】
そのことから、遮断周波数fH,fLを、fH>fLとしたとき、特定の周波数をもった電気的なノイズが外部から入る場合に電気的なノイズの周波数fnoをfH>fno>fLとし、周囲の装置等の外部からの特定の周波数をもった物理的な振動が発生している場合に、この物理的な振動の周波数fphをfH>fph>fLとし、基体1または筐体20自体が特定の周波数で振動する場合、この固有周波数のどちらか一方の固有周波数frbをfH>frb>fLとしても、角速度センサー12で検出したくない外乱信号が入る場合に、その外乱信号を除去することができる。このことから外乱信号を除去するための外付けのノッチフィルターとしての役割を兼ねることが可能になる。
【0051】
従って、外乱ノイズを除去して測定したリンク3の角度θA1の情報を基に制御を行うことにより、ロボットをより正確に制御することができる。
【0052】
さらに、外乱信号を除去するための外付けのフィルターを必要としないことから、コストの低減や演算部15の演算量を減らすことができる。
なお、前述した実施例1、実施例2では、1次のフィルターを例示したが、2次以上のフィルターであっても同様な効果が得られる。
【0053】
図5は、実施例2において2次のフィルターを用いた周波数とゲインの関係を示すグラフである。図5は、遮断周波数が、fL=5Hz、fH=15Hzの場合の周波数f(Hz)とゲイン(db)の関係を示すグラフである。図5に示すように、2次のフィルターを用いた場合、1次の場合と同様な効果が得られる。つまり、次数が高くなるに従い特定の周波数帯域において角度センサー6と角速度センサー12の出力を基に演算されたリンクの角度の感度をより低くしている。
【0054】
この場合、fL>fHとした場合には、測定したい部分において感度を高めることで振動をより強調して角度θA1の測定を行うことができる。従って、この測定結果に基づき制御を行うことでより効果的にリンク3の振動を抑制することができる。
【0055】
同様に、2次のフィルターを用いたときの周波数とゲインの関係をモーター角度の応答とリンク角度の応答から説明する。
図6は、実施例2において2次のフィルターを用いたときのモーター角度の応答とリンク角度の応答からみた周波数とゲインの関係を示すグラフである。なお、フィルターのカットオフ周波数は、ローパスフィルターが5Hz、ハイパスフィルターが15Hzとした。
【0056】
図6に示すように、モーター角度の応答信号と、リンク角度の応答信号を合成した合成角度は、5Hz〜15Hzの周波数帯でゲイン(振幅)が下がっている。従って、リンクの角度として検出したくない外乱信号が入る場合に、その信号を除去するノッチフィルターの役割を兼ねることが可能になる。
【符号の説明】
【0057】
1…基体、3…リンク、4…アクチュエーターとしてのモーター、5…トルク伝達機構としての減速機、6…角度センサー、12…角速度センサー、15…演算部、100…ロボット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に対して回転運動可能なリンクと、
前記リンクを駆動するアクチュエーターと、
前記アクチュエーターのトルクを前記リンクに減速比Nで伝達するトルク伝達機構と、
前記アクチュエーターの回転角θM1を検出する角度センサーと、
前記基体に対する前記リンクの角速度ωL1を検出する角速度センサーと、
ωL1の積分値のうち第1の周波数fH以上の高周波成分とθM1*Nのうち第2の周波数fL以下の低周波成分と、を用いて前記リンクの回転角を算出する演算部と、を備え、
前記第1の周波数fHと前記第2の周波数fLとが異なることを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット制御装置において、
前記第1の周波数fHと前記第2の周波数fLとが、fH<fLであることを特徴とするロボット制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のロボット制御装置において、
前記リンクと前記アクチュエーターと前記トルク伝達機構からなる系の固有振動数のうちの少なくとも一つの固有振動数fLNが、fH<fLN<fLであることを特徴とするロボット制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のロボット制御装置において、
前記第1の周波数fHと前記第2の周波数fLとが、fH>fLであることを特徴とするロボット制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のロボット制御装置において、
電気的なノイズの周波数のうちの少なくと一つの周波数fnoが、fH>fno>fLであることを特徴とするロボット制御装置。
【請求項6】
請求項4に記載のロボット制御装置において、
外部からの物理的な振動の周波数のうちの少なくとも一つの周波数fphが、fH>fph>fLであることを特徴とするロボット制御装置。
【請求項7】
請求項4に記載のロボット制御装置において、
前記基体、または前記アクチュエーターと前記トルク伝達機構を保持する筐体の固有周波数のうち、少なくとも一つの固有周波数frbが、fH>frb>fLであることを特徴とするロボット制御装置。
【請求項8】
基体に対して回転運動可能なリンクと、前記リンクを駆動するアクチュエーターと、前記アクチュエーターのトルクを前記リンクに減速比Nで伝達するトルク伝達機構と、前記アクチュエーターの回転角θM1を検出する角度センサーと、前記基体に対する前記リンクの角速度ωL1を検出する角速度センサーと、ωL1の積分値のうち第1の周波数fH以上の高周波成分と、θM1*Nのうち第2の周波数fL以下の低周波成分と、を用いて前記リンクの回転角を算出する演算部と、を備え、前記第1の周波数fHと前記第2の周波数fLとが異なるロボットの制御方法であって、
前記アクチュエーターが前記リンクを駆動するステップと、
前記角度センサーが、前記アクチュエーターの回転角θM1を検出するステップと、
前記角速度センサーが、前記基体に対する前記リンクの角速度ωL1を検出するステップと、
前記演算部が、ωL1の積分値のうちの第1の周波数fH以上の高周波成分と、θM1*Nのうちの第2の周波数fL以下の低周波成分と、を用いて前記リンクの角度を算出するステップと、を含むことを特徴とするロボットの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−5571(P2011−5571A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149482(P2009−149482)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】