説明

ロボット制御装置

【課題】複数の教示データを並行に起動して複数の制御対象の同期を取る方法では、同期ズレが発生する場合がある。
【解決手段】複数の制御対象A、B、Pを同期させて駆動するロボット制御装置1である。教示対象設定部6は、複数の制御対象の中からティーチペンダントTPによって選択された1つまたは複数の制御対象を、教示対象として設定する。教示対象作成処理部7は、教示対象毎に教示データを作成する。教示データ合成処理部8は、選択された複数の教示データを合成して1つの再生データTdを生成する。解釈実行部11は、再生データTdに基づいて複数の制御対象を同時に駆動する。教示作業は所望の制御対象毎に行い、これらを合成した再生データTdに基づいて再生運転することにより、教示作業が行いやすく、且つ再生運転時に同期ズレが発生することがないロボット制御装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台の制御対象を同期させながら駆動制御して複数パスの加工作業を同時に行わせるロボット制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、1台のロボット制御装置でマニピュレータ、ポジショナ、スライダ等の複数の制御対象を教示点単位で同期させて駆動制御することが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、2台のマニピュレータおよび1台のポジショナを1台のロボット制御装置で動作制御することによって、ポジショナに設置したワークの複数の加工箇所に対し、2台のマニピュレータが同時に加工作業を行う、いわゆる2パスの軌跡制御を行うロボット制御装置が開示されている。以下、特許文献1および特許文献2に記載された従来技術について説明する。なお、以下では、特許文献1および特許文献2に記載された従来技術を、それぞれ従来技術1および従来技術2という。
【0004】
図5は、従来技術1について説明するための図である。同図(a)において、マニピュレータA、マニピュレータBおよびポジショナPは、図示しない1台のロボット制御装置で駆動される制御対象である。ポジショナPには、加工対象となるワークWが設置されている。ワークW上に描いた加工線SaおよびSbは、ポジショナPの回転角度を調整しながら、マニピュレータAおよびマニピュレータBの各ツール先端を移動させるべき加工線である。この加工線SaおよびSbは、後述する教示データと等価となる。
【0005】
さて、従来技術1では、複数の制御対象(マニピュレータA、マニピュレータBおよびポジショナP)に対する教示点を、1つの移動命令で記憶する方式を採用している。すなわち、同図(b)に示すような教示データ構造となっている。例えば、教示ステップ001のMOVE命令(移動命令)には、マニピュレータA、マニピュレータBおよびポジショナPの各位置データが記憶されている。この方式では、2つの加工線SaおよびSbが1つの教示データとして記憶されることになる。そして、教示データを再生運転すると複数の制御対象が各々の教示点に同時に出発して同時に到達する、いわゆる同期制御が行われる。
【0006】
図6は、従来技術2について説明するための図である。従来技術2においては、2台のマニピュレータA、Bおよび1台のポジショナPを1台のロボット制御装置で駆動する点は、上記した従来技術1と同じである。異なる点は、同図(a)に示すように、マニピュレータAおよびポジショナPを1つの教示対象U1、マニピュレータBおよびポジショナPを別の教示対象U2と設定し、同図(b)に示すように、教示対象U1の教示データT1と、教示対象U2の教示データT2とを、別々に作成しておく点である。そして、教示データT1および教示データT2を同時に再生運転し、教示点単位で同期を取ることにより、同期制御を実現している。
【0007】
従来技術2の利点は、教示データを制御対象の組合せ(マニピュレータAおよびポジショナPの組合せ、あるいはマニピュレータBおよびポジショナPの組合せ)に応じて、別々に教示することが可能な点である。この点、従来技術1では、全ての制御対象の教示点を1つの教示データとして作成する方式を採用しているため、教示点を教示する際に、全ての制御対象を手動操作で移動させる必要がある。また、作成後の教示データを動作確認する際に、両方のマニピュレータの動き(移動軌跡)を注視しておく必要がある。これに対し、従来技術2では、例えばマニピュレータAおよびポジショナPの組合せで教示を行う場合は、マニピュレータBは移動させなくても良いし、動作確認を行う場合もマニピュレータBの動き(移動軌跡)を注視しておく必要がないという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−75898号公報
【特許文献2】特許第3823324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術2においては、教示データT1およびT2を同時に起動すると共に、各教示点における移動開始タイミング、到達タイミング等を同期させている。実際は、補間動作を行いながらの補間点レベルでの同期制御となるために、教示データの解釈実行タイミング、演算の処理速度、扱うデータ量の大小等により、同期ズレが生じる場合がある。また、異常等の発生で再生動作が中断した場合は、その後の再開動作時に、教示データT1およびT2間で位置指令出力の同期ズレが発生してしまうことがある。
【0010】
この点、従来技術1においては、教示データを1つ再生するだけのいわゆる多軸制御を行う構成となっており、教示データ間で同期制御を行っていないので、上述したような同期ズレが発生する恐れはない。すなわち、従来技術2は、従来技術1にはない利点を有している反面、同期ズレが発生する恐れがあるという課題を有している。
【0011】
そこで、本発明は、所望の制御対象毎の教示を可能としつつ、再生運転時に同期ズレが発生することがないロボット制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、
教示手段によって作成された教示データに基づいて複数の制御対象を教示点単位で同期させて駆動するロボット制御装置において、
前記複数の制御対象の中から前記教示手段により選択された1つまたは複数を、教示対象として設定する教示対象設定手段と、
前記教示手段からの入力に応じて前記教示対象毎に教示データを作成する作成手段と、
作成された複数の教示データを合成して1つの再生データを作成する教示データ合成手段と、
前記再生データに基づいて前記複数の制御対象を駆動する駆動制御手段と、
を備えたことを特徴とするロボット制御装置である。
【0013】
請求項2の発明は、前記教示データ合成手段は、選択された複数の教示データを教示ステップの番号順に読み出し、前記教示ステップに含まれる教示命令および前記制御対象の位置データを複写することによって、前記再生データを作成することを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置である。
【0014】
請求項3の発明は、前記教示データ合成手段は、複数の教示データを合成するときに前記教示ステップの数が一致しているか否かを確認し、教示教示ステップの数が一致する場合は前記再生データを作成し、一致しない場合は前記再生データを作成しないことを特徴とする請求項2記載のロボット制御装置である。
【0015】
請求項4の発明は、前記複数の制御対象が2台のマニピュレータおよび1台のポジショナであるときは、前記再生データは、一方のマニピュレータおよびポジショナの組合せを前記教示対象とした教示データと、他方のマニピュレータおよびポジショナの組合せを前記教示対象とした教示データとが合成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボット制御装置である。
【0016】
請求項5の発明は、前記教示データ合成手段は、選択された2つの教示データ間で前記ポジショナの回転角度が異なる場合は、どちらか一方の教示データに含まれる前記回転角度を前記再生データの回転角度とすることを特徴とする請求項4記載のロボット制御装置である。
【0017】
請求項6の発明は、前記複数の制御対象が複数台のマニピュレータであるときは、前記再生データは、前記マニピュレータの各々を前記教示対象とした2以上の教示データが合成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボット制御装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、所望の制御対象毎に作成された複数の教示データを合成した1つの再生データを生成し、この再生データに基づいて複数の制御対象を同期させて駆動するようにしている。このようにすることによって、所望の制御対象毎の教示を可能としつつ、再生運転時に同期ズレが発生することがないロボット制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のロボット制御装置によって2台のマニピュレータおよび1台のポジショナを同期制御するアーク溶接ロボットシステムのブロック図である。
【図2】ロボット制御装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
【図3】教示対象毎に作成した教示データの作成例である。
【図4】教示対象毎に作成した複数の教示データを合成した例である。
【図5】従来技術1について説明するための図である。
【図6】従来技術2について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明のロボット制御装置によって2台のマニピュレータおよび1台のポジショナを同期制御するアーク溶接ロボットシステムのブロック図である。
【0022】
同図において、マニピュレータAおよびBは、ワークWに対してアーク溶接を自動で行うものであり、ロボット制御装置1に接続されている。マニピュレータAおよびBは、複数のアーム部および手首部と、これらを回転駆動するための複数のサーボモータ(いずれも図示せず)とによって各々構成されている。また、各マニピュレータのアームの先端部分には、溶接トーチ(図示せず)が取り付けられている。溶接トーチは、直径1mm程度の溶接ワイヤを、ワークW上の教示された溶接箇所に導くためのものである。
【0023】
ポジショナPには、溶接箇所である加工線SaおよびSbを有するワークWが設置されている。ワークWは、ポジショナPが回転制御されることによってマニピュレータAおよびBに対して最適な溶接姿勢を取ることが可能となっている。作業者は、マニピュレータAおよびBのそれぞれが加工線SaおよびSbに沿って移動するように複数の教示点を教示する。
【0024】
教示手段としてのティーチペンダントTPは、可搬式の教示操作盤であり、ロボット制御装置1に接続されている。ティーチペンダントTPには、手動操作する制御対象を選択する制御対象選択スイッチ、各制御対象を実際に手動操作で動かすための軸操作キー等(いずれも図示せず)が備わっている。これらのスイッチ、キー等を操作することによって制御対象を各々所望の位置に動かすことが可能となっているとともに、加工線SaおよびSbを形成するための各教示点を教示データとしてロボット制御装置1に記憶することができる。
【0025】
起動ボックスSBは、教示データの再生運転を行うための起動信号をロボット制御装置1に入力するためのものである。溶接電源WP1およびWP2は、ロボット制御装置1からの溶接制御信号を入力として、マニピュレーAおよびBに取り付けられた各溶接トーチとワークWとの間の電力供給を行う。
【0026】
ロボット制御装置1は、ティーチペンダントTPから入力された教示データを解釈し、解釈結果に基づいた所定のタイミングで、動作制御信号をマニピュレータA、BおよびポジショナPに出力する。同様に、溶接制御信号を溶接電源WP1およびWP2に出力する。
【0027】
図2は、ロボット制御装置1の内部構成を示す機能ブロック図である。ロボット制御装置1は、図示しないCPU、ROM、RAM、各種メモリ等を含むマイクロコンピュータによって構成されている。TPインターフェース2は、上述したティーチペンダントTPを接続するためのものであり、入出力インターフェース3は、上述した起動ボックスSBを接続するためのものである。
【0028】
また、図示しないROMには、各種処理を行うための制御ソフトウェアが記憶されている。本実施形態においては、同図に示すように、教示対象設定部6、教示データ作成処理部7、教示データ合成処理部8、解釈実行部11、駆動指令部12および溶接制御部13の各処理部を備えている。これらの各処理は、CPUに読み込まれて実行されるものであり、CPUは、教示対象設定手段、作成手段、教示データ合成手段および駆動制御手段に相当する。
【0029】
教示対象設定部6は、ティーチペンダントTPから選択された1つまたは複数の制御対象を、教示対象として設定するための処理を行う。教示データ作成処理部7は、ティーチペンダントTPからの入力に応じ、選択された教示対象毎に教示点および各種命令を後述するハードディスク5に記憶する処理を行う。教示データ合成処理部8は、教示対象毎に作成された教示データMa、Mb等の中から、選択された複数の教示データを合成し、1つの再生データTdとして作成する処理を行う。
【0030】
解釈実行部11は、ハードディスク5に格納されている再生データTdを教示ステップごとに読み出してその内容を解析し、駆動指令部12および溶接制御部13に各種制御信号を出力する。この結果、マニピュレータA、BおよびポジショナPが駆動制御されると共に、溶接制御信号を溶接電源WP1およびWP2に出力され、所定のタイミングで溶接電力の供給、シールドガスの出力等の処理が行われる。
【0031】
ハードディスク5は不揮発性メモリであり、教示対象毎に教示データを記憶する。例えば、マニピュレータAおよびポジショナPの組合せが教示対象であれば、この教示対象に対して教示した教示データMaが記憶される。同様に、マニピュレータBおよびポジショナPの組合せが教示対象であれば、この教示対象に対して教示した教示データMbが記憶される。また、教示データMaおよび教示データMbを合成した再生データTdも、このハードディスクに記憶される。教示データの合成処理については、後述する。なお、説明の都合上、教示データMa、教示データMb、再生データTdとして、1データずつ図示しているが、当然のことながら、ハードディスク5の容量が許す範囲内で、複数の教示データおよび再生データを記憶することが可能となっている。
【0032】
次に、教示対象の選択から教示データの合成までの一連の処理について説明する。1台のロボット制御装置1で駆動する複数の制御対象(本実施形態の場合は、マニピュレータA、マニピュレータBおよびポジショナP)を、どのような組合せにして教示するのかは、予め定めているものとする。例えば、本実施形態の制御対象であれば、以下の組合せが考えられる。
・マニピュレータAの単独動作(教示対象G1)
・マニピュレータBの単独動作(教示対象G2)
・ポジショナPの単独動作(教示対象G3)
・マニピュレータAとポジショナPの協調動作(教示対象G4)
・マニピュレータBとポジショナPの協調動作(教示対象G5)
以下では、マニピュレータAとポジショナPの協調動作(教示対象G4)と、マニピュレータBとポジショナPの協調動作(教示対象G5)とを教示対象として選択し、合成するまでの流れを説明する。
【0033】
(1.教示対象G4の選択)
ティーチペンダントTPから所望の組合せが選択されると、教示対象設定部6は、選択された組合せを教示対象として設定する。例えば、マニピュレータAとポジショナPの協調動作(G4)が選択された場合は、まず、手動操作が可能な制御対象としてマニピュレータAとポジショナPを選択し、動かす必要のないマニピュレータBに対しては、駆動電源を遮断するなどして手動操作を禁止する。
【0034】
(2.教示対象G4に対する教示)
ティーチペンダントTPから教示点、条件等の入力操作が行われると、教示データ作成処理部7は、入力に応じて教示データMaを作成する。このことによって、例えば、図3(a)に示す教示データMaが作成される。
【0035】
(3.教示対象G5の選択)
ティーチペンダントTPから、マニピュレータBとポジショナPの協調動作(G5)が選択される。この場合、手動操作が可能な制御対象としてマニピュレータBとポジショナPを選択し、動かす必要のないマニピュレータAに対しては、駆動電源を遮断するなどして手動操作を禁止する。
【0036】
(4.教示対象G5に対する教示)
ティーチペンダントTPから教示点、条件等の入力操作が行われると、教示データ作成処理部7は、入力に応じて教示データMbを作成する。このことによって、例えば、図3(b)に示す教示データMbが作成される。
【0037】
(5.教示データMaおよび教示データMbの合成)
ティーチペンダントTPから合成されるべき複数の教示データが選択される。ここでは、教示データMaおよび教示データMbが選択されたものとする。教示データ合成処理部8は、両教示データの教示点数が一致しているか否かを確認する。教示点の数が一致する場合は、後述するように、教示データMaと教示データMbを教示点単位で順番に合成する。教示点の数が一致しない場合は教示データを合成せずに、エラーを出力して処理を停止するようにしておく。このようにすることによって、本来合成されるべきでない教示データが誤って合成されることを防止することができる。
【0038】
合成処理は、以下のように行えばよい。まず、教示データMaを参照し、教示ステップnとして教示されている命令Cm、マニピュレータAの位置データPaおよびポジショナPの位置データPpをコピーし、再生データに書き込む。次いで、教示データMbを参照し、教示ステップnとして教示されているマニピュレータBの位置データPbを上記再生データに書き込む。この処理を、教示されている教示ステップnの数だけ繰り返せばよい。この処理によって、例えば、図4に示すように、教示データMaおよびMbが合成された再生データTdが作成される。
【0039】
ここで、ポジショナPは、両方の教示データMaおよびMbに記憶されているため、位置データPpが完全に一致している場合は上記したコピー処理で問題がない。しかしながら、現実的には両方の教示データMaおよびMbにおいてポジショナPの位置データPpが完全に一致していることはまずありえない。そこで、ポジショナPの位置データPpとして、どちらの教示データに記憶されている値を使用する(コピーする)のかを、予め定めておくようにすることが望ましい。そして、選択された2つの教示データMaおよびMb間でポジショナPの位置データPpが異なる場合は、予め定められた一方の教示データに含まれるポジショナPの位置データPpを、再生データTdの位置データPpとするように構成しておく。
【0040】
以降は、再生データTdの再生運転を行うための起動信号が入力されることにより、解釈実行部11が再生データTdを解釈し、解釈結果に基づいた所定のタイミングで、動作制御信号がマニピュレータA、BおよびポジショナPに出力されることにより、複数の制御対象が同期を取りながら駆動される。
【0041】
以上説明したように、所望の制御対象毎に作成された教示データMaおよびMbを合成した1つの再生データTdを生成し、この再生データTdに基づいて複数の制御対象を同期させて駆動するようにした。このことによって、所望の制御対象毎の教示を可能としつつ、再生運転時に同期ズレが発生することがないロボット制御装置を提供することができる。
【0042】
また、選択された複数の教示データを教示ステップの番号順に読み出し、教示ステップに含まれる命令および制御対象の位置データを複写することによって、再生データを作成するようにしたことによって、上記効果に加えて、比較的簡単な手法により、教示データを合成することができる。
【0043】
また、教示データを合成する際に教示ステップの数が一致しているか否かを確認し、教示ステップの数が一致する場合は教示データを合成し、一致しない場合は教示データを合成しないようにしている。このことによって、上記効果に加えて、誤った教示データ同士が合成されるのを防止することができる。
【0044】
また、複数の制御対象が2台のマニピュレータおよび1台のポジショナであるときは、一方のマニピュレータAおよびポジショナPの組合せを教示対象とした教示データMaと、他方のマニピュレータBおよびポジショナPの組合せを教示対象とした教示データMbとを合成したものを、再生データTdとしている。このことによって、ポジショナPに設置したワークWの複数の加工箇所に対して2台のマニピュレータAおよびBが同時に加工作業を行うようなロボット制御システムにおいて、上述した効果を発揮することができる。
【0045】
さらに、複数の制御対象が2台のマニピュレータおよび1台のポジショナであるときは、選択された2つの教示データ間でポジショナの回転角度が異なる場合は、どちらか一方の教示データに含まれるポジショナの回転角度を再生データの回転角度とするようにしている。このことによって、2つの教示データ間でポジショナの回転角度を厳密に一致させておく必要がない。すなわち、上記効果に加えて、教示工数を低減することができる。
【0046】
なお、上記した実施形態では、複数の制御対象が2台のマニピュレータおよび1台のポジショナである場合を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。特に、マニピュレータ複数台で協調作業を行う場合にも、本発明は効果を発揮する。例えば、マニピュレータ3台(A、B、C)を1台のロボット制御装置で駆動するロボット制御システムである場合であれば、以下に示す教示対象の組合せが考えられる。
・マニピュレータAの単独動作(教示対象G1)
・マニピュレータBの単独動作(教示対象G2)
・マニピュレータCの単独動作(教示対象G3)
このように、複数の制御対象が複数台のマニピュレータであるときは、マニピュレータの各々を教示対象とした2以上の教示データを合成したものを、再生データTdとするように合成すればよい。このことによって、複数台のマニピュレータが同時に協調作業を行うようなロボット制御システムにおいても、所望の制御対象毎の教示を可能としつつ、再生運転時に同期ズレが発生することがないロボット制御装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0047】
A マニピュレータ
B マニピュレータ
Cm 命令
Ma 教示データ
Mb 教示データ
P ポジショナ
Pa 位置データ(マニピュレータA)
Pb 位置データ(マニピュレータA)
Pp 位置データ(ポジショナP)
Sa 加工線
Sb 加工線
SB 起動ボックス
T1 教示データ
T2 教示データ
Td 再生データ
TP ティーチペンダント
U1 教示対象
U2 教示対象
W ワーク
WP1 溶接電源
WP2 溶接電源
1 ロボット制御装置
2 TPインターフェース
3 入出力インターフェース
5 ハードディスク
6 教示対象設定部
7 教示データ作成処理部
8 教示データ合成処理部
11 解釈実行部
12 駆動指令部
13 溶接制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
教示手段によって作成された教示データに基づいて複数の制御対象を同期させて駆動するロボット制御装置において、
前記複数の制御対象の中から前記教示手段により選択された1つまたは複数を、教示対象として設定する教示対象設定手段と、
前記教示手段からの入力に応じて前記教示対象毎に教示データを作成する作成手段と、
作成された複数の教示データを合成して1つの再生データを作成する教示データ合成手段と、
前記再生データに基づいて前記複数の制御対象を駆動する駆動制御手段と、
を備えたことを特徴とするロボット制御装置。
【請求項2】
前記教示データ合成手段は、選択された複数の教示データを教示ステップの番号順に読み出し、前記教示ステップに含まれる教示命令および前記制御対象の位置データを複写することによって、前記再生データを作成することを特徴とする請求項1記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記教示データ合成手段は、複数の教示データを合成するときに前記教示ステップの数が一致しているか否かを確認し、前記教示ステップの数が一致する場合は教示データを合成し、一致しない場合は教示データを合成しないことを特徴とする請求項2記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記複数の制御対象が2台のマニピュレータおよび1台のポジショナであるときは、前記再生データは、一方のマニピュレータおよびポジショナの組合せを前記教示対象とした教示データと、他方のマニピュレータおよびポジショナの組合せを前記教示対象とした教示データとが合成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボット制御装置。
【請求項5】
前記教示データ合成手段は、選択された2つの教示データ間で前記ポジショナの回転角度が異なる場合は、どちらか一方の教示データに含まれる前記回転角度を前記再生データの回転角度とすることを特徴とする請求項4記載のロボット制御装置。
【請求項6】
前記複数の制御対象が複数台のマニピュレータであるときは、前記再生データは、前記マニピュレータの各々を前記教示対象とした2以上の教示データが合成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボット制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−11476(P2012−11476A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148441(P2010−148441)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】