説明

ロータリキルンによる廃棄物処理方法及び装置

【課題】
使用済みの農業用、工事現場用合成樹脂シートを断裁の前処理を行うことなく、セメントクリンカの焼成用の代替燃料として使用可能としたロータリキルンによる廃棄物処理方法及び装置を提供する。
【解決手段】
廃棄物となった合成樹脂シートを所要の大きさにロール状ベール化し、これをサスペンションプレヒータ4により予熱されたセメント原料粉を焼成してセメントクリンカを製造するロータリキルン1に供給するためのシュート6をロータリキルン1の窯尻部3に配置し、このシュート6内には前記ロール状ベール化した合成樹脂シートを一時停留する複数段の開閉可能なシャッタプレートを設け、シュート6の外周には冷却水を通水するウォータジャケットによる冷却手段を備え、前記ロール状ベール化した合成樹脂シートをロータリキルン1の代替燃料としてロータリキルン1に供給するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントクリンカを製造するためのロータリキルンにより廃棄物となった合成樹脂シートを焼却処理する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を可燃物と不燃物とを抑制燃焼により熱分解して処理する廃棄物処理専用のロータリキルンが、例えば、特開平05−033916公報、特開平09−280524公報、特開平10−019220公報で提供されている。
【0003】
このような廃棄物処理専用のロータリキルンを用いなくてもセメントクリンカを製造するためのロータリキルンにより焼却処理することが可能であり、例えば、使用済み農業用ポリシートを燃焼させてセメントクリンカの焼成用熱量として再利用することによりセメントクリンカ焼成の主燃料である微粉炭の使用料を節約することができる。
【特許文献1】特開平05−033916公報
【特許文献2】特開平09−280524公報
【特許文献3】特開平10−019220公報
【特許文献4】特開平11−246247公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記農業用ポリシート自体が長尺でありロータリキルンに代替燃料として供給するため連続的な輸送システム(ベルトコンベア等)に適さないことから細かく断裁し機械輸送に適した形状に前処理する必要がある。しかし、ポリシートの物性として、薄く、軟らかく、伸び、切りにくい特性に加え、使用済み農業用ポリシートには土砂が付着しており、また、金属鳩目を有しているものがあり、これを断裁機(破砕機)で断裁処理すると刃の摩耗や欠損などが生じ、また、伸展性の高い物性を断裁するためには鋭利な刃先が必要で断裁処理に多くのコストを必要とし、これを改善する課題があった。
【0005】
本発明の目的は、使用済みの農業用、工事現場用合成樹脂シートを断裁の前処理を行うことなく、セメントクリンカの焼成用の代替燃料として使用可能としたロータリキルンによる廃棄物処理方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明方法は、請求項1に記載の通り、廃棄物となった合成樹脂シートを所要の大きさにロール状ベール化し、これをサスペンションプレヒータにより予熱されたセメント原料粉を焼成してセメントクリンカを製造するロータリキルンに代替燃料として供給するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
上記の目的を達成するための本発明装置は、請求項2に記載の通り、廃棄物となった合成樹脂シートを所要の大きさにロール状ベール化し、これをサスペンションプレヒータにより予熱されたセメント原料粉を焼成してセメントクリンカを製造するロータリキルンに供給するためのシュートをロータリキルンの窯尻部に配置し、このシュート内には前記ロール状ベール化した合成樹脂シートを一時停留する複数段の開閉可能なシャッタプレートを設け、シュートの外周には冷却水を通水するウォータジャケットによる冷却手段を備え、前記ロール状ベール化した合成樹脂シートを代替燃料としてロータリキルンに供給するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、処理困難である長尺の合成樹脂シートをロール状ベール化することにより断裁前処理することなく水分や土砂類付着のままで低コストにて焼却処理することができ、使用済みの合成樹脂シートをセメントクリンカの焼成用熱量として再利用することによりセメントクリンカ焼成の主燃料である微粉炭の使用料を節約することができる効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明の方法は、廃棄物となった合成樹脂シートを所要の大きさにロール状ベール化し、このロール状ベール化(圧縮減容化)した合成樹脂シートをサスペンションプレヒータにより予熱されたセメント原料粉を焼成してセメントクリンカを製造するロータリキルンの代替燃料としてロータリキルンに供給焼却するようにしたものである。
【0010】
前記合成樹脂シートは、例えば、農耕地やビニルハウス等農業用での使用済み廃棄品、工事現場での使用済み廃棄品、その他テント等の廃棄品である。前記農耕地やビニルハウス等農業用での使用済み廃棄品(以下農業用シートと略称する)の場合は次のようなビジネスのメリットがある。
【0011】
すなわち、農家などから排出される農業用シートを各地域での農協組織活用での処理システムフローが組み立てやすい。また、農業用シートの発生量の季節変動(収穫期後に発生)があるが、各地域での発生量が安定しているため、数値的見込みが立てやすい。さらに、セメントクリンカを製造するロータリキルンの高温、焼却、原料化の特質を活用することで、水分、土砂類付着・断裁・破砕なしでの処理が可能である等である。
【0012】
廃棄物となった合成樹脂シートのロール状ベール化は、市販されている移動式小型減容梱包機にて迅速かつ小さくロール状に減容自動ひも掛けして梱包することができ、持ち運びや保管が容易で輸送効率も向上させる。
【0013】
そこで、本発明は廃棄物となった合成樹脂シートを前記移動式小型減容梱包機にてセメントクリンカを製造するロータリキルンに供給するのに適した所要の大きさ、例えば、図2で示すように、直径Rが400mm未満、高さHが600mm未満の円柱形あるいは角柱形のロール状ベール化したセメントクリンカを製造するロータリキルンの代替燃料7とすることにより、廃棄物となった合成樹脂シートを廃棄物処理専用のロータリキルンで焼却処理しなくてもセメントクリンカを製造するロータリキルン焼却処理すると同時にセメントクリンカの焼成用熱量として再利用することでセメントクリンカ焼成の主燃料である微粉炭の使用料を節約することができる。
【0014】
上記本発明方法を実現させる装置について図面に基づき説明する。図1において、1はサスペンションプレヒータ4により予熱されたセメント原料粉を焼成してセメントクリンカを製造するロータリキルン本体であり、窯前部には微粉炭を主燃料とするバーナ部2を備えており、このバーナ部2による1800℃のバーナ火炎でロータリキルン本体1の窯尻部3より前記サスペンションプレヒータ4から窯尻部3より供給されるセメント原料粉を1500℃で焼成し、窯尻部3から窯前部に向かって固相反応、液相反応、焼結反応してセメントクリンカを造粒し、これをクリンカクーラ5で急冷却する従来周知のセメントクリンカを製造装置である。
【0015】
本発明は上記従来周知のセメントクリンカを製造装置において、ロータリキルン本体1の窯尻部3に前記廃棄物となった合成樹脂シートをロール状ベール化した代替燃料7をロータリキルン本体1に供給するためのシュート6を配置したものである。
【0016】
このシュート6の具体的な構造は図3で示すように、代替燃料7の投入口8を備えた筒状体であり、前記投入口8に近い側のシュート6内には開閉可能な上側シャッタプレート9aと、この上側シャッタプレート9aと代替燃料7の高さ相当分の間隔をおいて下側シャッタプレート9bとが設けられている。
【0017】
また、前記下側シャッタプレート9bの下方から窯尻部3の間のシュート6の外周には冷却水を通水するウオータジャケット10が設けられており、高熱を受ける窯尻部3近傍のシュート6内を冷却する手段を備えた構造である。
【0018】
本発明装置は上記の通りの構造であるから、廃棄物となった合成樹脂シートをロール状ベール化した代替燃料7はシュート6の投入口8から投入し、窯尻部3よりロータリキルン本体1内に供給され燃焼してセメントクリンカの焼成用熱量として再利用する。
【0019】
上記代替燃料7をシュート6の投入口8に投入する際には上側シャッタプレート9a及びは下側シャッタプレート9bは閉止状態であり、代替燃料7は先ず、上側シャッタプレート9a上に投入される。そして、上側シャッタプレート9aを下方旋回して開くことにより上側シャッタプレート9a上に投入されていた代替燃料7は閉止状態である下側シャッタプレート9b上に落下して停留する。この代替燃料7が下側シャッタプレート9b上に落下した時点で上側シャッタプレート9aは上方旋回して閉止状態に戻される。
【0020】
上記上側シャッタプレート9aは上方旋回して閉止状態に戻されたところで下側シャッタプレート9bが下方旋回して開き代替燃料7はウオータジャケット10の冷却雰囲気部位を通過して窯尻部3よりロータリキルン本体1内に供給され、下側シャッタプレート9bは上方旋回して閉止状態に戻される。
【0021】
このように、シュート6は代替燃料7の供給において上側シャッタプレート9aと側シャッタプレート9bは交互に開閉するため、高温負圧となっているロータリキルン本体1内へ低温の大気がシュート6より漏入することがなくロータリキルン本体1内の温度下降を防止し、所定の温度状態を保持するのでセメントクリンカの焼成造粒に悪影響を及ぼすことがない。
【0022】
また、シュート6に投入された代替燃料7はウオータジャケット10の冷却雰囲気部位を通過して窯尻部3よりロータリキルン本体1内に供給されるので、高熱により代替燃料7が軟化溶融してシュート6壁に付着する不具合が防止され、代替燃料7はロール状ベール化した形態でロータリキルン本体1内に円滑に供給される。
【0023】
このように本発明では、廃棄物となった合成樹脂シートを所要の大きさにロール状ベール化してセメントクリンカを製造するロータリキルンによ燃焼処理するものであるから、使用済みの合成樹脂シートの焼却処理に当たって廃棄物処理専用のロータリキルンを用いる必要がなく、その上セメントクリンカの焼成用熱量として再利用することによりセメントクリンカ焼成の主燃料である微粉炭の使用料を節約することができる経済的な利点を有しているものである。特に処理が困難である水分、土砂類が付着している農業用シートにおいては、水分、土砂類を分解したり細かく裁断する前処理を不要とするため、農業用シート処理ビジネスのメリットが大である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明装置を備えたセメントクリンカを製造するロータリキルンの断面図
【図2】廃棄物となった合成樹脂シートをロール状ベール化した斜視図
【図3】シュートの詳細を示す断面図
【符号の説明】
【0025】
1 ロータリキルン本体
2 バーナ部
3 窯尻部
4 セメントクリンカ
5 クリンカクーラ
6 シュート
7 合成樹脂シートをロール状ベール化した代替燃料
8 投入口
9a 上側シャッタプレート
9b 下側シャッタプレート
10 ウオータジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物となった合成樹脂シートを所要の大きさにロール状ベール化し、これをサスペンションプレヒータにより余熱されたセメント原料粉を焼成してセメントクリンカを製造するロータリキルンに代替燃料として供給するようにしたことを特徴とするロータリキルンによる廃棄物処理方法。
【請求項2】
廃棄物となった合成樹脂シートを所要の大きさにロール状ベール化し、これをサスペンションプレヒータにより余熱されたセメント原料粉を焼成してセメントクリンカを製造するロータリキルンに供給するためのシュートをロータリキルンの窯尻部に配置し、このシュート内には前記ロール状ベール化した合成樹脂シートを一時停留する複数段の開閉可能なシャッタプレートを設け、シュートの外周には冷却水を通水するウォータジャケットによる冷却手段を備え、前記ロール状ベール化した合成樹脂シートを代替燃料としてロータリキルンに供給するようにしたことを特徴とするロータリキルンによる廃棄物処理装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物となった合成樹脂シートを所要の大きさにロール状ベール化し、これをサスペンションプレヒータにより予熱されたセメント原料粉を焼成してセメントクリンカを製造するロータリキルンに代替燃料として供給するようにしたことを特徴とするロータリキルンによる廃棄物処理方法。
【請求項2】
廃棄物となった合成樹脂シートを所要の大きさにロール状ベール化し、これをサスペンションプレヒータにより予熱されたセメント原料粉を焼成してセメントクリンカを製造するロータリキルンに供給するためのシュートをロータリキルンの窯尻部に配置し、このシュート内には前記ロール状ベール化した合成樹脂シートを一時停留する複数段の開閉可能なシャッタプレートを設け、シュートの外周には冷却水を通水するウォータジャケットによる冷却手段を備え、前記ロール状ベール化した合成樹脂シートを代替燃料としてロータリキルンに供給するようにしたことを特徴とするロータリキルンによる廃棄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−130364(P2006−130364A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319017(P2004−319017)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(592037907)株式会社デイ・シイ (36)
【Fターム(参考)】