説明

ロータリージョイント

【課題】非回転管と回転管とを接続する部位での摩耗粉の発生をなくし得、通過する純水、洗浄液体、窒素ガス、純水と窒素ガスとの混合体又は洗浄液体と窒素ガスとの混合体等の流体への摩耗粉の混入をなくし得るロータリージョイントを提供すること。
【解決手段】ロータリージョイント1は、流体導入孔5を有した中空部材6と、中空部材6の中空部2に装着された中空回転軸部材12と、中空回転軸部材12をR方向に回転自在とする接触型の軸受13と、中空部材6の内周面14と中空回転軸部材12の外周面15との間の円筒状隙間16に高圧気体を供給する高圧気体供給手段17と、円筒状隙間16に供給された高圧気体を外部4に排出する高圧気体排出手段18とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシリコンウエハの表面を洗浄又は研磨する洗浄液又は研磨液を供給する非回転管と回転管とを接続するロータリージョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2004−84691号公報
【特許文献2】特許2918874号公報
【特許文献3】特許3072349号公報
【特許文献4】特許3098236号公報
【0003】
シリコンウエハの表面を洗浄又は研磨する洗浄装置又は表面研磨装置等において、洗浄液としての窒素ガスを含んだ純水又はスラリー流体、例えば研磨液を供給する配管における非回転管と回転管とを接続するロータリージョイントには、摩擦接触を伴うメカニカルシールが用いられている。
【0004】
斯かるメカニカルシールをもったロータリージョイントは、特許文献1乃至4の記載から明らかであるように種々提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロータリージョイントにおいて非回転管と回転管とを接続する部位に摩擦接触を伴うメカニカルシールを用いると、摩耗粉が生じてこれが純水又は研磨液に混入し、斯かる摩耗粉が混入した純水又は研磨液でもってシリコンウエハの表面を洗浄又は研磨すると、シリコンウエハの品質に悪影響を及ぼし、ロータリージョイントを用いて表面洗浄又は表面研磨されたシリコンウエハは、益々高密度化が要求される半導体デバイスに用いることができなくなる虞がある。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、非回転管と回転管とを接続する部位での摩耗粉の発生をなくし得、通過する純水、洗浄液体、窒素ガス、純水と窒素ガスとの混合体又は洗浄液体と窒素ガスとの混合体等の流体への摩耗粉の混入をなくし得、しかも、必要に応じて、流体中での金属イオンの発生をなくし得るロータリージョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるロータリージョイントは、内部に中空部を有すると共に軸方向の一端面側に当該中空部を外部に連通する流体導入孔を有した中空部材と、この中空部材の流体導入孔の中空部側の開口端に隙間をもって対面した軸方向の一方の開口端を有していると共に中空部材の軸方向の他端面から外部に突出した突出端部を有して中空部材の中空部に装着された中空回転軸部材と、中空部材の中空部で当該中空部材と中空回転軸部材との間に介在されていると共に中空回転軸部材を中空部材に対して軸心を中心として回転自在とする接触型の軸受と、軸方向における中空回転軸部材の一方の開口端と軸受との間に位置する中空部を規定する中空部材の円筒状の内周面と中空回転軸部材の円筒状の外周面との間の円筒状隙間に高圧気体を供給する高圧気体供給手段と、軸方向において高圧気体供給手段と軸受との間に配されていると共に円筒状隙間に供給された高圧気体を外部に排出する高圧気体排出手段とを具備している。
【0008】
本発明のロータリージョイントによれば、中空回転軸部材の一方の開口端と中空部材の導入孔の中空部側の一端とが隙間をもって対面しているために、ここでの摩擦粉の発生をなくし得、しかも、軸方向における中空回転軸部材の一方の開口端と軸受との間に位置する中空部を規定する中空部材の円筒状の内周面と中空回転軸部材の円筒状の外周面との間の円筒状隙間に高圧気体を供給する高圧気体供給手段と、軸方向において高圧気体供給手段と軸受との間に配されていると共に円筒状隙間に供給された高圧気体を外部に排出する高圧気体排出手段とを具備しているために、円筒状隙間に供給された高圧気体からなる高圧気体層でもって軸受と中空部材の導入孔及び中空回転軸部材の一方の開口端とを隔離でき、流体導入孔から中空部に導入されて更に一方の開口端を介して中空回転軸部材内に導入される流体への接触型の軸受で発生する摩擦粉の混入を防止できる上に、中空部材と高圧気体層とを静圧気体軸受として機能させることができるので、斯かる静圧気体軸受と接触型の軸受との協働で中空回転軸部材を良好に回転自在に支持し得る。
【0009】
好ましい例では、中空部材は、流体導入孔、流体導入孔の中空部側の開口端が位置する軸方向の内側端面、この内側端面に連接した円筒状の内周面及びこの内周面に連接した軸方向の環状外側端面を有した非金属製の蓋部材と、この蓋部材の軸方向の環状外側端面に接触する環状端面、蓋部材の内周面よりも小径の円筒状の内周面及び蓋部材の内周面よりも大径の円筒状の外周面を有した合成樹脂製の円筒体とを具備しており、中空回転軸部材は、小径の外周面、この外周面よりも大径であって円筒体の内周面との間で径方向において狭幅の円環状隙間を形成する円筒状の外周面及び軸方向の一端面から軸方向の他端面まで伸びた貫通孔を有すると共に中空部材の軸方向の他端面から外部に突出した突出端部を有した中空回転軸部材本体と、中空回転軸部材本体の小径の外周面に接触して当該小径の外周面に嵌合された内周面、この内周面よりも大径であって円筒体の内周面との間で径方向において狭幅の円環状隙間を、蓋部材の内周面との間で径方向において広幅の円環状隙間を夫々形成する円筒状の外周面及び蓋部材の流体導入孔の中空部側の開口端に隙間をもって対面した軸方向の一方の開口端を有していると共にこの一方の開口端から中空回転軸部材本体の貫通孔に連通するように軸方向に伸びた貫通孔を有した非金属製の覆い部材と、この覆い部材及び中空回転軸部材本体の両貫通孔に挿入されていると共に両貫通孔を規定する覆い部材及び中空回転軸部材本体の円筒状の内周面に接触した外周面を有した合成樹脂製の被覆管とを具備しており、中空部を規定する中空部材の円筒状の内周面は、蓋部材の円筒状の内周面と円筒体の円筒状の内周面とを含んでおり、中空回転軸部材の円筒状の外周面は、中空回転軸部材本体の円筒状の外周面と覆い部材の円筒状の外周面とを含んでおり、円筒体の内周面と中空回転軸部材本体の外周面とで形成される狭幅の円環状隙間の軸方向の円環状の一端は、円筒体の内周面と覆い部材の外周面とで形成される狭幅の円環状隙間の軸方向の円環状の一端に隣接して連通しており、円筒体の内周面と覆い部材の外周面とで形成される狭幅の円環状隙間の軸方向の円環状の他端は、蓋部材の内周面と覆い部材の外周面とで形成される広幅の円環状隙間の軸方向の円環状の一端に隣接して連通しており、蓋部材の内周面と覆い部材の外周面とで形成される広幅の円環状隙間の軸方向の円環状の他端は、蓋部材の内側端面と覆い部材の貫通孔の一方の開口端が位置する覆い部材の軸方向の端面との間の空間に隣接して連通しており、高圧気体供給手段は、円筒体の内周面と中空回転軸部材本体の外周面とで形成される狭幅の円環状隙に高圧気体を供給するようになっており、円筒体の内周面と中空回転軸部材本体の外周面とで形成される狭幅の円環状隙間の軸方向の円環状の他端は、高圧気体排出手段に連通されており、蓋部材の内側端面と覆い部材の貫通孔の一方の開口端が位置する覆い部材の軸方向の端面との間の空間は、流体導入孔及び被覆管の内部に連通している。
【0010】
斯かる例によれば、仮に、中空回転軸部材本体が金属製であっても、流体導入孔を介して中空部材の中空部に導入される流体は、実質的には、非金属製の蓋部材の内側端面及び内周面並びに非金属製の覆い部材の軸方向の端面で規定される空間を介して中空回転軸部材の一方の開口端から合成樹脂製の被覆管の内部に導入される結果、斯かる導入において非金属製の面のみと接触して、金属接触に起因する金属イオンの発生をなくし得、金属イオンのない流体をシリコンウエハの表面に適用できる。
【0011】
非金属製の蓋部材及び非金属製の覆い部材には、塩化ビニル樹脂(PVC)、四ふっ化エチレン・パーフルオロアルコキビニルエーテル共重合樹脂(PFA)等の合成樹脂又は石英ガラスが使用されて好適であり、また合成樹脂製の円筒体には、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等が使用されて好適であり、さらに被覆管としては、四ふっ化エチレン樹脂(PTFE)、四ふっ化エチレン・パーフルオロアルコキビニルエーテル共重合樹脂(PFA)等のふっ素樹脂が使用されて好適である。
【0012】
本発明では、蓋部材の環状外側端面と円筒体の環状端面との間に介在されたシールリングと、覆い部材の円筒状の内周面と被覆管の円筒状の外周面との間に介在されたシールリングとを更に具備していてもよく、斯かるシールリングを具備していると、金属イオンのない流体のシリコンウエハの表面への適用を更に確実に行うことができる。
【0013】
好ましい例では、軸受は、中空部材の内周面に固着された外輪と、中空回転軸部材の外周面に固着された内輪と、外輪と内輪との間に介在されていると共に各列が中空回転軸部材の回転方向に配列された二列の複数の鋼球とを具備した複列アンギュラ玉軸受を具備している。
【0014】
斯かる複列アンギュラ玉軸受を介して中空回転軸部材を中空部材に軸心を中心として回転自在に支持することにより、中空回転軸部材に生じる軸方向の力(スラスト力)を複列アンギュラ玉軸受で効果的に受容できる。
【0015】
高圧気体供給手段は、流体導入孔に導入される流体の圧力よりも大きな圧力、具体的には流体導入孔に導入される流体の圧力よりも0.05MPa以上、好ましくは0.1〜0.5MPaの大きな圧力をもった高圧気体を、中空部材の円筒状の内周面と中空回転軸部材の円筒状の外周面との間の円筒状隙間に供給するようになっているとよく、また、流体導入孔を介して中空部材の中空部に導入される流体として、純水、洗浄液体、窒素ガス、純水と窒素ガスとの混合体又は洗浄液体と窒素ガスとの混合体等からなる高圧流体を例示でき、高圧気体供給手段によって供給される気体として、空気、ヘリウムガス、窒素ガス、アルゴンガス等を例示し得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、非回転管と回転管とを接続する部位での摩耗粉の発生をなくし得、通過する不活性ガスを含む純水等の洗浄液、研磨液等のスラリー流体等の流体への摩耗粉の混入をなくし得、しかも、必要に応じて、流体中での金属イオンの発生をなくし得るロータリージョイントを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0018】
図1から図3において、本例のロータリージョイント1は、内部に中空部2を有すると共に軸方向Xの一端面3側に中空部2を外部4に連通する流体導入孔5を有した中空部材6と、中空部材6の流体導入孔5の中空部2側の開口端である一端7に軸方向Xの隙間8をもって対面した軸方向Xの一方の開口端9を有していると共に中空部材6の軸方向Xの他端面10から外部4に突出した突出端部11を有して中空部材6の中空部2に装着された中空回転軸部材12と、中空部材6の中空部2で中空部材6及び中空回転軸部材12の間に介在されていると共に中空回転軸部材12を中空部材6に対して軸心Oを中心としてR方向に回転自在とする接触型の軸受13と、軸方向Xにおける中空回転軸部材12の一方の開口端9と軸受13との間に位置する中空部2を規定する中空部材6の円筒状の内周面14と中空回転軸部材12の円筒状の外周面15との間の円筒状隙間16に高圧気体を供給する高圧気体供給手段17と、軸方向Xにおいて高圧気体供給手段17と軸受13との間に配されていると共に円筒状隙間16に供給された高圧気体を外部4に排出する高圧気体排出手段18と、軸受13の近傍を冷却する冷却手段19とを具備している。
【0019】
中空部材6は、流体導入孔5、流体導入孔5の中空部2側の開口端である一端7が位置する軸方向Xの内側端面21、内側端面21に連接した円筒状の内周面22及び内周面22に連接した軸方向Xの環状外側端面23を有した非金属製の蓋部材24と、蓋部材24の軸方向Xの環状外側端面23に接触する一方の環状端面26、蓋部材24の内周面22よりも小径の円筒状の内周面27及び蓋部材24の内周面22よりも大径の円筒状の外周面28を有した内側の合成樹脂製の円筒体29と、蓋部材24の軸方向Xの環状外側端面23に接触する軸方向Xの一方の環状端面30、円筒体29の外周面28に接触する円筒状の内周面31、内周面31よりも小径の円筒状の内周面32、一方の環状端面30に連接した円筒状の外周面33及び外周面33よりも小径の円筒状の外周面34を有した外側のアルミニウム製の円筒体35と、円筒体29の軸方向Xの他方の環状端面36に接触する軸方向Xの一方の環状端面37、円筒体29の内周面27よりも大径の円筒状の内周面38及び円筒体35の内周面31に接触する外周面39を有した円環状のスペーサ部材40と、円筒体35の他方の環状端面41に接触する軸方向Xの一方の環状端面42を有した円環状板43と、円筒体35の外周面34に接触する内周面44及び円筒体35の外周面33と面一の外周面45を有する円環状部材46とを具備している。
【0020】
非金属製の蓋部材24には、塩化ビニル樹脂(PVC)、四ふっ化エチレン・パーフルオロアルコキビニルエーテル共重合樹脂(PFA)等の合成樹脂又は石英ガラスが使用されて好適であり、また合成樹脂製の円筒体29には、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等が使用されて好適である。
【0021】
内側端面21及び環状端面42と協働して中空部2を規定する中空部材6の円筒状の内周面14は、蓋部材24の円筒状の内周面22と、円筒体29の円筒状の内周面27と、円筒体35の円筒状の内周面32と、スペーサ部材40の円筒状の内周面38とからなっており、蓋部材24は、R方向に配列された複数のねじ部材51を介して円筒体35に固着されており、円環状板43は、R方向に配列されたねじ部材52を介して円筒体35に固着されている。
【0022】
中空回転軸部材12は、軸方向Xの環状の一端面54、一端面54に連接された小径の円筒状の外周面55、外周面55よりも大径であって円筒体29の内周面27との間で径方向において狭幅の円環状隙間56を形成する円筒状の外周面57及び軸方向Xの一端面54から軸方向Xの環状の他端面58まで伸びた貫通孔59を有すると共に中空部材6の軸方向Xの他端面10となる円環状板43の軸方向Xの他方の環状端面60から外部4に突出した突出端部61、外周面57よりも小径であってスペーサ部材40の内周面38との間で環状の空間62を形成する外周面63及び外周面63よりも小径であってねじ部65が形成された円筒状の外周面66を有した中空回転軸部材本体67と、中空回転軸部材本体67の小径の外周面55に接触して当該小径の外周面55に嵌合された円筒状の内周面71、内周面71よりも大径であって円筒体29の内周面27との間で径方向において狭幅の円環状隙間72を、蓋部材24の内周面22との間で径方向において広幅の円環状隙間73を夫々形成する円筒状の外周面74、蓋部材24の流体導入孔5の中空部2側の一端7に隙間8をもって対面した軸方向Xの一方の開口端9を有していると共に一方の開口端9から中空回転軸部材本体67の貫通孔59に連通するように軸方向Xに伸びた貫通孔75及び内側端面21に対面していると共に開口端9が位置した外側の円環状の端面76を有した非金属製の覆い部材77と、覆い部材77及び中空回転軸部材本体67の両貫通孔59及び75に挿入されていると共に両貫通孔59及び75を規定する中空回転軸部材本体67及び覆い部材77の円筒状の内周面78に接触した外周面79を有した合成樹脂製の被覆管80とを具備している。
【0023】
非金属製の覆い部材77には、塩化ビニル樹脂(PVC)、四ふっ化エチレン・パーフルオロアルコキビニルエーテル共重合樹脂(PFA)等の合成樹脂又は石英ガラスが使用されて好適であり、合成樹脂製の被覆管80には、四ふっ化エチレン樹脂(PTFE)、四ふっ化エチレン・パーフルオロアルコキビニルエーテル共重合樹脂(PFA)等のふっ素樹脂が使用されて好適である。
【0024】
中空回転軸部材12の円筒状の外周面15は、中空回転軸部材本体67の円筒状の外周面57、63及び66と、覆い部材77の円筒状の外周面74とからなっている。
【0025】
円筒体29の内周面27と中空回転軸部材本体67の外周面57とで形成される狭幅の円環状隙間56の軸方向Xの円環状の一端85は、円筒体29の内周面27と覆い部材77の外周面74とで形成される狭幅の円環状隙間72の軸方向Xの円環状の一端86に隣接して連通しており、円筒体29の内周面27と覆い部材77の外周面74とで形成される狭幅の円環状隙間72の軸方向Xの円環状の他端87は、蓋部材24の内周面22と覆い部材77の外周面74とで形成される広幅の円環状隙間73の軸方向Xの円環状の一端88に隣接して連通しており、蓋部材24の内周面22と覆い部材77の外周面74とで形成される広幅の円環状隙間73の軸方向Xの円環状の他端89は、蓋部材24の内側端面21と覆い部材77の貫通孔75の一方の開口端9が位置する覆い部材77の軸方向Xの端面76との間の空間90に隣接して連通しており、蓋部材24の内側端面21と覆い部材77の貫通孔75の一方の開口端9が位置する覆い部材77の軸方向Xの端面76との間の空間90は流体導入孔5及び被覆管80の内部に連通しており、円筒体29の内周面27と中空回転軸部材本体67の外周面57とで形成される狭幅の円環状隙間56の軸方向Xの円環状の他端91は空間62に隣接して連通されている。
【0026】
流体導入孔5には加圧された流体、例えば、純水と窒素ガスとの混合体からなる加圧流体が配管を介して供給されるようになっており、流体導入孔5に供給された流体は、当該流体導入孔5を介して中空部2の空間90に導入され、空間90に導入された加圧流体は、開口端9側で被覆管80の内部に導入されて、他端面58側で被覆管80の内部から導出される。
【0027】
円筒状隙間16に高圧気体を供給する高圧気体供給手段17は、円筒体35を径方向に貫通して円筒体35に形成されていると共に軸方向Xに配列された一対の貫通孔101及び102と、外周面33側の径方向の一端で外部4に開口する貫通孔101及び102の夫々の径方向の他端が夫々開口していると共に円筒体29の内周面27に形成された円環状の溝103及び104と、径方向の一端で円環状の溝103及び104の夫々に開口して当該溝103及び104の夫々に連通すると共に円筒体29を径方向に貫通し、しかも、軸心Oを中心としてR方向に90度の等角度間隔で円筒体29に形成された夫々四個からなる貫通孔105及び106とを有しており、貫通孔105及び106の夫々は、径方向の一端では対応の溝103及び104に開口した大径の円孔107と、径方向の一端では対応の円孔107に連通していると共に径方向の他端では内周面27で円環状隙間56に開口した微小径の絞り円孔108とを具備している。
【0028】
高圧気体供給手段17は、配管を介して貫通孔101及び102に供給された高圧気体であって、流体導入孔5に導入される流体の圧力よりも大きな圧力、具体的には0.05MPa以上、好ましくは0.1〜0.5MPaの大きな圧力をもった高圧気体を溝103及び104に導き、溝103及び104に導いた高圧気体を各円孔107を介して各絞り円孔108に導き、各絞り円孔108の他端から円環状隙間56に噴出させて当該円環状隙間56に供給するようになっている。
【0029】
高圧気体排出手段18は、円環状隙間56の他端91に連通した空間62と、スペーサ部材40を径方向に貫通して軸心Oを中心としてR方向に180度の等角度間隔で当該スペーサ部材40に形成されていると共に径方向の一端で空間62に開口して当該空間62に連通した二個の貫通孔111及び112と、貫通孔111及び112の夫々の径方向の他端が開口して当該貫通孔111及び112の夫々に連通していると共にスペーサ部材40の外周面39に形成された円環状の溝114と、径方向の一端で円環状の溝114に開口して当該溝114に連通すると共に円筒体35を径方向に貫通し、外周面33側の径方向の他端で外部4に開口して円筒体35に形成された貫通孔115とを具備している。
【0030】
高圧気体排出手段18は、高圧気体供給手段17からの高圧気体であって円環状隙間56の他端91からの高圧気体を空間62、貫通孔111、112、溝114及び貫通孔115を介して外部4に排出するようになっている。
【0031】
軸受13は、軸方向Xにおいてスペーサ部材40及び円環状板43に挟まれて中空部材6の内周面14において内周面32に固着された外輪121と、中空回転軸部材12の外周面15において外周面66に固着された内輪122と、外輪121と内輪122との間に介在されていると共に各列が中空回転軸部材12の回転方向であるR方向に配列された二列の複数の鋼球123とを具備した複列アンギュラ玉軸受124を具備しており、内輪122は、ワッシャ125及びねじ部65に螺合したナット126により中空回転軸部材本体67から脱落しないように外周面66に固着されている。
【0032】
被覆管80を有した中空回転軸部材12は、ラジアル兼スラスト軸受である複列アンギュラ玉軸受124からなる軸受13を介して中空部材6にR方向に回転自在に支持されている。
【0033】
冷却手段19は、円筒体35の外周面34に形成された円環状の溝131と、外周面45側の径方向の一端で外部4に開口している一方、内周面44側の径方向の他端で溝131に開口して円環状部材46に形成された冷却水導入用の貫通孔132と、外周面45側の径方向の一端で外部4に開口している一方、内周面44側の径方向の他端で溝131に開口して円環状部材46に貫通孔132に対して軸心Oを中心としてR方向に180度の角度間隔をもって形成された冷却水排出用の貫通孔133とを具備している。
【0034】
冷却手段19は、貫通孔132を介して溝131に供給されて貫通孔133を介して溝132から排出される冷却水でもって円筒体35を介して複列アンギュラ玉軸受124からなる軸受13を冷却するようになっている。
【0035】
ロータリージョイント1は、流体導入孔5からの流体及び貫通孔101及び102からの高圧気体の漏出に対して、蓋部材24の環状外側端面23と円筒体29の環状端面26との間に介在されたシールリング141と、覆い部材77の円筒状の内周面78と被覆管80の円筒状の外周面79との間に介在されたシールリング142と、円筒体29の外周面28と円筒体35の内周面31との間に介在されていると共に軸方向Xにおいて貫通孔101及び102を挟んで配された二個のシールリング143と、円筒体29の環状端面36とスペーサ部材40の環状端面37との間に介在されたシールリング144とを具備しており、貫通孔132からの冷却水の漏出に対して、円筒体35の外周面34と円環状部材46の内周面44との間に介在されていると共に軸方向Xにおいて溝131並びに貫通孔132及び133を挟んで配された二個のシールリング145とを更に具備している。
【0036】
以上のロータリージョイント1において、流体導入孔5は、例えばシリコンウエハの表面を洗浄する表面洗浄装置等において加圧された流体としての例えば洗浄液を供給する供給源に配管を介して、貫通孔101及び102は、清浄化された高圧気体を発生する高圧気体発生源に配管を介して、貫通孔132は、冷却水を供給する冷却水供給源に配管を介して、そして、軸心Oを中心としてR方向に回転されるようになっている中空回転軸部材12は、他端面58側で回転管に夫々接続されるようになっており、流体導入孔5に供給された流体は、一端7、隙間8及び開口端9を介して被覆管80の内部に導入され、被覆管80の内部に導入された流体は、他端面58側から回転管に供給されてシリコンウエハの表面を洗浄する洗浄液として利用され、貫通孔101及び102に供給された高圧気体は、溝103及び104、円孔107を介して絞り円孔108から円環状隙間56に噴出されて円環状隙間56に高圧気体層を形成し、軸受13でR方向に回転自在に支持された中空回転軸部材12を斯かる高圧気体層でもってもR方向に非接触的に回転自在に支持し、円環状隙間56に高圧気体層を形成した高圧気体は、空間62、貫通孔111、112、溝114及び貫通孔115を介して外部4に排出されるようになっている。
【0037】
円環状隙間56に噴出された高圧気体は、当該高圧気体と流体導入孔5から供給された流体との圧力差により、部分的に円環状隙間73及び空間90を介して被覆管80の内部に導入される場合もあるが、それが十分に洗浄されているために、斯かる一部の高圧気体は、流体導入孔5から供給された流体を汚染することなしに、当該流体導入孔5から供給された流体と共にシリコンウエハの表面に供給されることになる。
【0038】
ところで、ロータリージョイント1によれば、中空回転軸部材12の一方の開口端9と中空部材6の流体導入孔5の中空部2側の一端7とが隙間8をもって対面しているために、ここでの摩擦接触に基づく摩擦粉の発生をなくし得、しかも、中空回転軸部材12の一方の開口端9と軸受13との間において、高圧気体供給手段17からの高圧気体が円環状隙間56に供給されて、円環状隙間56に供給された高圧気体が高圧気体排出手段18を介して外部4に排出されるために、円環状隙間56に供給された高圧気体でもって軸受13と中空回転軸部材12の一方の開口端9とを隔離でき、流体導入孔5から隙間8に、そして隙間8から被覆管80の内部に導入される流体への接触型の軸受13で発生する摩擦粉の混入を防止できる。
【0039】
更に、蓋部材24及び覆い部材77の夫々が非金属製であり、円筒体29及び被覆管80の夫々が合成樹脂製であるために、これらに接触する流体及び高圧気体での金属イオンの発生をなくし得、而して、金属イオンの発生のない流体及び場合により高圧気体をシリコンウエハの表面に供給することができる。
【0040】
また、ロータリージョイント1によれば、複列アンギュラ玉軸受124を介して中空回転軸部材12を中空部材6でR方向に回転自在に支持しているために、中空回転軸部材12に生じる軸方向Xの力(スラスト力)を複列アンギュラ玉軸受124で効果的に受容できる。
【0041】
従来のロータリージョイントと、蓋部材24及び覆い部材77を夫々塩化ビニル樹脂(PVC)で形成し、円筒体29をポリフェニレンサルファイド樹脂(PPC)で形成し、そして被覆管80を四ふっ化エチレン樹脂(PTFE)で形成した本例のロータリージョイント1とを特開2001−148414号公報の図5に記載のウェハー回転保持装置の流量調節器に夫々用い、斯かるウェハー回転保持装置で支持したシリコンウエハの表面を洗浄して金属イオンと摩擦粉(パーティクル)とを測定し、その測定結果を表1乃至表3に示す。
【0042】
金属イオンの測定条件
金属イオン分析器:VP−ICP−MS分析 型式:ELAN 6100 DRC No.2
中空回転軸部材12の回転数:900rpm
バックブローとバックリンスとを使用した時の金属イオンを分析
【0043】
【表1】

【0044】
摩耗粉(パーティクル)の測定条件
パーティクル(ウエハ表面検査) 型式:WIS-CR81
バックブローだけの時とバックブロー及びバックリンスを使用した時のパーティクル数を測定した。














【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
以上の従来のロータリージョイントと本例のロータリージョイント1との比較からも明らかであるように、本発明によれば、上記の目的を達成できるロータリージョイントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の好ましい一例の正面図である。
【図2】図1に示す例のII−II線及び(II)−(II)線矢視断面説明図である。
【図3】図1に示すIII−III線矢視断面説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ロータリージョイント
2 中空部
3 一端面
4 外部
5 流体導入孔
6 中空部材
7 一端
8 隙間
10 他端面
11 突出端部
12 中空回転軸部材
13 軸受
14 内周面
15 外周面
16 円筒状隙間
17 高圧気体供給手段
18 高圧気体排出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に中空部を有すると共に軸方向の一端面側に当該中空部を外部に連通する流体導入孔を有した中空部材と、この中空部材の流体導入孔の中空部側の開口端に隙間をもって対面した軸方向の一方の開口端を有していると共に中空部材の軸方向の他端面から外部に突出した突出端部を有して中空部材の中空部に装着された中空回転軸部材と、中空部材の中空部で当該中空部材と中空回転軸部材との間に介在されていると共に中空回転軸部材を中空部材に対して軸心を中心として回転自在とする接触型の軸受と、軸方向における中空回転軸部材の一方の開口端と軸受との間に位置する中空部を規定する中空部材の円筒状の内周面と中空回転軸部材の円筒状の外周面との間の円筒状隙間に高圧気体を供給する高圧気体供給手段と、軸方向において高圧気体供給手段と軸受との間に配されていると共に円筒状隙間に供給された高圧気体を外部に排出する高圧気体排出手段とを具備しているロータリージョイント。
【請求項2】
中空部材は、流体導入孔、流体導入孔の中空部側の開口端が位置する軸方向の内側端面、この内側端面に連接した円筒状の内周面及びこの内周面に連接した軸方向の環状外側端面を有した非金属製の蓋部材と、この蓋部材の軸方向の環状外側端面に接触する環状端面、蓋部材の内周面よりも小径の円筒状の内周面及び蓋部材の内周面よりも大径の円筒状の外周面を有した合成樹脂製の円筒体とを具備しており、中空回転軸部材は、小径の外周面、この外周面よりも大径であって円筒体の内周面との間で径方向において狭幅の円環状隙間を形成する円筒状の外周面及び軸方向の一端面から軸方向の他端面まで伸びた貫通孔を有すると共に中空部材の軸方向の他端面から外部に突出した突出端部を有した中空回転軸部材本体と、中空回転軸部材本体の小径の外周面に接触して当該小径の外周面に嵌合された内周面、この内周面よりも大径であって円筒体の内周面との間で径方向において狭幅の円環状隙間を、蓋部材の内周面との間で径方向において広幅の円環状隙間を夫々形成する円筒状の外周面及び蓋部材の流体導入孔の中空部側の開口端に隙間をもって対面した軸方向の一方の開口端を有していると共にこの一方の開口端から中空回転軸部材本体の貫通孔に連通するように軸方向に伸びた貫通孔を有した非金属製の覆い部材と、この覆い部材及び中空回転軸部材本体の両貫通孔に挿入されていると共に両貫通孔を規定する覆い部材及び中空回転軸部材本体の円筒状の内周面に接触した外周面を有した合成樹脂製の被覆管とを具備しており、中空部を規定する中空部材の円筒状の内周面は、蓋部材の円筒状の内周面と円筒体の円筒状の内周面とを含んでおり、中空回転軸部材の円筒状の外周面は、中空回転軸部材本体の円筒状の外周面と覆い部材の円筒状の外周面とを含んでおり、円筒体の内周面と中空回転軸部材本体の外周面とで形成される狭幅の円環状隙間の軸方向の円環状の一端は、円筒体の内周面と覆い部材の外周面とで形成される狭幅の円環状隙間の軸方向の円環状の一端に隣接して連通しており、円筒体の内周面と覆い部材の外周面とで形成される狭幅の円環状隙間の軸方向の円環状の他端は、蓋部材の内周面と覆い部材の外周面とで形成される広幅の円環状隙間の軸方向の円環状の一端に隣接して連通しており、蓋部材の内周面と覆い部材の外周面とで形成される広幅の円環状隙間の軸方向の円環状の他端は、蓋部材の内側端面と覆い部材の貫通孔の一方の開口端が位置する覆い部材の軸方向の端面との間の空間に隣接して連通しており、高圧気体供給手段は、円筒体の内周面と中空回転軸部材本体の外周面とで形成される狭幅の円環状隙に高圧気体を供給するようになっており、円筒体の内周面と中空回転軸部材本体の外周面とで形成される狭幅の円環状隙間の軸方向の円環状の他端は、高圧気体排出手段に連通されており、蓋部材の内側端面と覆い部材の貫通孔の一方の開口端が位置する覆い部材の軸方向の端面との間の空間は、流体導入孔及び被覆管の内部に連通している請求項1に記載のロータリージョイント。
【請求項3】
蓋部材の環状外側端面と円筒体の環状端面との間に介在されたシールリングと、覆い部材の円筒状の内周面と被覆管の円筒状の外周面との間に介在されたシールリングとを更に具備している請求項2に記載のロータリージョイント。
【請求項4】
軸受は、中空部材の内周面に固着された外輪と、中空回転軸部材の外周面に固着された内輪と、外輪と内輪との間に介在されていると共に各列が中空回転軸部材の回転方向に配列された二列の複数の鋼球とを具備した複列アンギュラ玉軸受を具備している請求項1から3のいずれか一項に記載のロータリージョイント。
【請求項5】
高圧気体供給手段は、流体導入孔に導入される流体の圧力よりも大きな圧力をもった高圧気体を、中空部材の円筒状の内周面と中空回転軸部材の円筒状の外周面との間の円筒状隙間に供給するようになっている請求項1から4のいずれか一項に記載のロータリージョイント。
【請求項6】
高圧気体供給手段は、流体導入孔に導入される流体の圧力よりも0.05MPa以上大きな圧力をもった高圧気体を、中空部材の円筒状の内周面と中空回転軸部材の円筒状の外周面との間の円筒状隙間に供給するようになっている請求項1から4のいずれか一項に記載のロータリージョイント。
【請求項7】
流体導入孔を介して中空部材の中空部に導入される加圧流体は、純水、洗浄液体、窒素ガス、純水と窒素ガスとの混合体又は洗浄液体と窒素ガスとの混合体からなる請求項1から6のいずれか一項に記載のロータリージョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−168068(P2009−168068A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4555(P2008−4555)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(390004581)三益半導体工業株式会社 (19)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】