説明

ロータリーマグネトロンマグネットバー、およびこれを含む高いターゲット利用のための装置

2つの直線部、および前記直線部を接続する、少なくとも1つの末端転回部を有するレーストラック型プラズマ源を含む、基材にコーティングする装置が提供される。コーティングの構成要素を形成する、ターゲット材料で形成されたチューブ状ターゲットは、終端部を有する。ターゲットは、ターゲット材料のスパッタリングのためにプラズマ源の近位にある。ターゲットはチューブ状の裏当てカソードに固定され、両者は中心軸を中心として回転可能である。ターゲットがコーティングを基材上に堆積するために利用されるのにともない、磁石の組が、カソードの内側に、ターゲットの終端部に向かう末端転回に整列された侵食ゾーンを移動するために配設される。ターゲットの初期重量の最高87重量%の、ターゲットの利用が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2009年10月26日出願の米国特許仮出願整理番号第61/254,983号の優先権を主張するものであり、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、シリンダー状マグネトロンとも呼ばれる、回転スパッターマグネトロンに関し、具体的には、この装置のターゲット有効化の改善に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ロータリーマグネトロンスパッタリングは、McKelveyの米国特許第4,446,877号からも明らかなように、当該技術分野では周知である。図1A、図1B、図2A、および図2Bは、ターゲットチューブシリンダー1の外側表面の近位にスパッターレーストラック2をともなう、従来の先行技術のロータリーマグネトロンを示す。ターゲットシリンダー1は、裏当てチューブ14上に支持される。スパッターレーストラック2は、ターゲット材料10の堆積基板上への除去を誘発するために、ターゲット材料10の近位にプラズマ領域を発生する。公知のように、スパッターターゲット材料10は、ターゲットシリンダー1の中へと形成され、図2Aに示すように、シリンダー2の中で内部マグネットバー20が静止して保持される一方で、シリンダー1は、スピンドル6上で回転される。その結果、図1Aの領域IBの拡大長手方向断面図である図1Aに最もよく見られるように、堆積プラズマのスパッターマグネトロンレーストラック2が、動作の間に回転するチューブの上に現れる。レーストラック2は、直線部4および転回部3を有する。概略のレジストリは、転回部3の内側縁部5と最大ターゲット摩耗点7との間に示され、これは、ターゲット材料がそこに暴露される、直線部4に対して転回部3の近位のプラズマ密度の差および磁気電子閉じ込めの結果である。後に詳述するように、マグネットバーによって発生される磁場は、最大侵食点7を確立するためにも重要である。ターゲットシリンダー1の対向する終端部が、レーストラック2のもう一方の終端部と関連して添付の図に示されるように、鏡面対称の侵食ゾーンを有することが理解される。この鏡面対称のゾーンは、視覚的な明瞭さでは示されないが、別法では描写されたものと形成および形状において同一である。
【0004】
公知のように、平板マグネトロンスパッタリングよりは大幅に良好であるが、一般的なロータリーマグネトロンに対しては、ターゲットの利用は、約60%にすぎない。この理由は、スパッターレーストラック2の転回部3付近における、シリンダー1の時期尚早なターゲットの摩耗である。これは、図1Bの断面図において、より高い明瞭度で示される。使用前のターゲットシリンダー1は、初期ターゲット厚さを画定する表面15を有する。ターゲットチューブ材料10がターゲットシリンダー1からスパッタリングされて除かれるのにともなって、レーストラック2の転回部3の近位のシリンダー区域13は、レーストラック2の直線部の近位のシリンダー区域12よりも速く摩耗する。ターゲットチューブシリンダー1の動作の耐用時間は、ターゲット材料がほぼ裏当てチューブ14まで磨耗すると、消耗する。裏当てチューブ14の基材上へのスパッタリングは、堆積された皮膜を汚染する。より速い摩耗により、シリンダー区域13で最初にこれが発生し、直線部4の下部の直線的に離れた区域12に沿った、相当なターゲット材料10を使用できないままにする。この有害な転回摩耗パターンに対する従来の解決方法は、終端部領域、および転回部3の下部の追加的な厚さをともなうターゲットの使用である。かかるターゲットは、一般に「ドッグボーン型(dog−boned)」と呼ばれる。より厚いドッグボーン型領域が、ターゲットの利用を改善する一方で、これはより複雑なターゲット形成およびより大きい全体的なターゲット直径のコストをターゲットにもたらす。コーティングのための、ターゲット表面と基材との間の分離距離の増大は、マグネトロンのエネルギー消費および全体的な効率を増大させる。
【0005】
図2Aは、従来の、先行技術のロータリーマグネトロンレーストラック2の、転回部3の近位の、図1Aの線IIA−IIAに沿った、より詳細な長手方向断面図を示す。裏当てチューブ14は、視覚的な明瞭さのために、部分的に切断して示される。この断面図では、内部の静止マグネットバー20は、回転する裏当てチューブ14およびターゲット材料10の近位に位置して示される。対応する横方向の、図1Aの線IIB−IIBに沿って取られた断面斜視図が、図2Bに示される。内部マグネットバー20は、マグネットシャント26、ならびに磁石27および28を有する。矢印は、矢印の先がN極に向いて指す、一般的な方式に従って、磁気極性を描写する。磁石27および28、ならびにシャント26の構成は、弓状にかかり、ターゲット材料10を通る、磁力線30をもたらす。弓状にかかり、ターゲットを通る力線の頂点は、力線29のようにプロットされる。公知のように、電子は弓形の中心において集中した濃度を有する傾向があり、シリンダー区域13の主な浸食領域は、レーストラック2がプラズマを発生する場合、力線29に沿って一致する。このプラズマは、直線部4に対して、転回部3に集中する。この場合、力線29は、シリンダー1の表面におおよそ垂直である。その後シリンダー部13における浸食ゾーンは、継続的にターゲットチューブ上の点7における同一の直線位置に合焦され、シリンダー部13の摩耗したターゲットプロファイルによって示されるように、過度な摩耗が発生する。示されるように、シリンダー部13は、直線部4の下部の直線的な離れたシリンダー区域12に沿って、相当なターゲット材料が使用されないままである一方で、点7において裏当てチューブ14まで摩耗する。
【0006】
ターゲットの利用の改善のために行われた、先行技術の試行は、限られた成功を収めた。かかる先行技術の一構成を図3に示し、本発明から離れて教示する。図3で使用される同様の数字は、前掲の図に関するものに帰する意味を有する。図3は、米国特許第5,364,518号の断面図を示す。本特許では、ロータリーマグネトロンの不良なターゲットの利用の問題が認識され、ターゲットの利用の改善を試行する。図3は、米国特許第5,364,518号の図7Bに基づき、結果としてもたらされるターゲット浸食プロファイルが、この図に重ねて示される。ここで、磁気シャント120が磁石107の側面に追加され、シャント106は、ターゲットチューブシリンダー1の終端部125に向けて磁束を引っぱる。これは、米国特許第5,364,518号において教示され、転回部13においてターゲット浸食領域を広げ、ターゲット利用を改善する。提案された解決法の分析は、線9としてプロットされる、結果としてもたらされる磁力線130の頂点を示す。示されるように、線109は法線131から、110としても参照される角度Θだけ外れる。この幾何学形状は、ターゲットシリンダー1の終端部により近くで開始する浸食ゾーン114をもたらす。ターゲットシリンダー1が浸食されるに従い、浸食ゾーンは、線109をたどり、ターゲットシリンダー1の終端部125から離れるように移動する。残念ながら、これは、全体的なターゲットの利用に対してわずかな恩恵しか有しない。シリンダー1の直線的に離れる区域に徐々に向かって、レーストラック2の直線部4の下部で、ターゲット材料10を継続的に除去しながら、浸食ゾーン114を移動することにより、浸食ゾーンは、ターゲットの高浸食領域に向かって移動し、単に、図1Bおよび図2Aの侵食ゾーンに対して浸食ゾーンの幅を広げる。
【0007】
この幅が広がることは、裏当てチューブスパッタリングの危険なしでさらなるターゲットスパッタリングが発生できない場合に、末端ターゲット断面t(l)を近似する下記の等式を参照して理解される。
【数1】

式中、Dは、最終浸食深さであり、より幅広い浸食ゾーンに対応するより小さいDの値により浸食ゾーンの幅を大雑把にモデル化し、lは、横方向位置であり、lは前述の図中7で示される最大浸食点であり、kは適合定数である。
【0008】
図2Aの従来の浸食プロファイルへの式(I)の近似適合が、図2Cに破線で図表的に示される。正規化された浸食プロファイルについては、初期ターゲット厚さが1の無次元値であり、点7がl=1における場合、描かれた適合は、k=1のとき、D=0.48、およびI=0.88の2つのパラメータ適合に対応する。図3の浸食プロファイルが、k=1のとき、D=0.40およびlf=0.96に対する最良の2つのパラメータによりこの表現と同様に適合することが理解される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、ロータリーマグネトロンのための、マグネットバー、およびより効率的なターゲットの利用を提供するマグネットバーを含む装置に対する必要が存在する。さらに、ターゲットの利用を改善することができるように、近位のレーストラックの直線部から離れて浸食ゾーンを移動することの必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
2つの直線分、および前記直線部を接続する、少なくとも1つの末端転回部を有するレーストラック型プラズマ源を含む、基材にコーティングする装置が提供される。コーティングの構成要素を形成する、ターゲット材料で形成されたチューブ状ターゲットは、終端部を有する。ターゲットは、ターゲット材料のスパッタリングのためにプラズマ源の近位にある。ターゲットは、チューブ状の裏当てカソードに固定され、中心軸を中心として両者が回転可能になる。ターゲットがコーティングを基材上に堆積するように利用されるのにともない、一組の磁石が、カソードの内側に、ターゲットの終端部に向かう末端転回に整列された侵食ゾーンを動かすために配設される。ターゲットの初期重量の最高87重量%の、ターゲットの利用が達成される。
【0011】
基材をコーティングするプロセスは、基材に向かって延在するスパッタリングレーストラック型プラズマを発生するための条件の下で、チューブ状ターゲットにエネルギーを与えることを含む。ターゲットは、チューブ材料で形成され、チューブ終端部を有し、チューブ裏当てを形成するチューブ状カソードに取り付けられる。カソードの中の磁石は、ターゲットと整列された、レーストラック型プラズマ源と相互作用する磁場を生成する。プラズマ源は、2つの直線部を有し、少なくとも1つの末端転回部は、ターゲットが基材上にコーティングを堆積するために利用されるのに従って、チューブ状ターゲット上の浸食ゾーンを、ターゲットの終端部に向かって移動するように直線部を接続する。チューブ終端部は、プラズマ源の少なくとも1つの末端転回と整列される。消費されたロータリーマグネトロンターゲットは、これにより、終端部と前記浸食ゾーンにおいて70°と90°との間の角度βで交差する直線部を有して生成され、初期重量の70〜87重量%を失う。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】ロータリーマグネトロンの外側上の従来のスパッターレーストラックの先行技術の斜視図である。
【図1B】レーストラック転回ロータリーマグネトロンにおけるターゲットチューブ浸食プロファイルの、先行技術の、図1Aの線IIA−IIAに沿った領域IBの、長手方向断面拡大図である。
【図2A】レーストラック転回ロータリーマグネトロンにおけるターゲットチューブ浸食プロファイルの、より詳細な先行技術の、図1Aの線IIA−IIAに沿った領域IBの長手方向断面図の拡大図であり、マグネトロンマグネットバーを含み、結果としてもたらされるターゲットチューブの浸食プロファイルに重ねられた力線を描写する。
【図2B】図1Aの線IIB−IIBに沿った、先行技術の斜視横断断面図である。
【図2C】図1Bの浸食ゾーンプロファイルに対する、式(I)の曲線適合である。
【図3】先行技術の、前掲の図に示すように、局所的なターゲット薄化の制限を試行する米国特許第5,364,518号、図7Bに対するターゲットチューブ浸食プロファイルの長手方向断面図である。
【図4】ターゲットおよび本発明の静止内部バーマグネットの配設の、結果としてもたらされる時間の関数としてのターゲットプロファイルをともなう、レーストラック転回領域の長手方向断面図である。
【図5A】本発明のターゲット利用最終プロファイルに重ねたものとしての、先行技術のターゲット利用最終プロファイル(破線)長手方向断面図である。
【図5B】式(1)を使用したこれに対する適合をともなう、図5Aの先行技術および本発明のターゲット利用の正規化したプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、これまで得ることが可能であったよりも高い重量割合のターゲットの利用をともなうロータリーマグネトロンとしての有用性を有する。これは、磁場頂点を、作動時間の関数として、ターゲットチューブが浸食されるに従い磁場頂点がターゲットシリンダーの終端部に向かってシフトするように、本来のターゲット表面上の位置から変化させ、これによってターゲット浸食ゾーンが外向きに、ターゲットチューブの終端部に向かって、より段があり、外向きにシフトした浸食ゾーンを形成するようにシフトすることにより達成される。本発明は、ターゲットシリンダーの終端部におけるターゲットチューブ材料が、先行技術と比較してより効率的にチューブ材料を使用することを実現することを前提としている。これに近接するマグネットバー組立体の遠位の磁石の極性とは異なる極性の仲介磁石を含むことを通して、浸食ゾーンをターゲットチューブシリンダーの終端部に向けてシフトすることにより、先行技術に対して改善された全体的なターゲットの利用を達成するために、最大浸食のチューブシリンダーゾーンは、ターゲットシリンダーの終端部に向かって動的に動く。先行技術と比較して、重量割合として、より高い割合のターゲット利用が達成される。ドッグボーン型ターゲットシリンダーに関連する費用と努力も排除される。
【0014】
本発明の長手方向の断面図が図4に示され、ターゲットシリンダー1、および概して200で示され、かつ作動中にプラズマを発生するロータリーマグネトロンレーストラック2の転回領域3の下部の、本発明の静止マグネットバーを描写する。この図における同様の数字は、前掲の図に関するものに帰する意味を有する。裏当てチューブ14の周りに形成されたターゲット材料をともなう、裏当てチューブ14を有する従来の回転チューブシリンダー1から開始する。ターゲット表面15は、スパッタリングの前に最大の程度のターゲット材料10をともなう、ターゲットチューブシリンダー1の開始外径を示す。概して290で示される静止マグネットバーは、シャント206、ならびに磁石208、207および磁石230を有する。マグネットバー290は、概して208´で示され、レーストラック2の直線部4の下部の複数の磁石より示されるように、右に延在する。マグネットバー290は、磁石の単一の列として描写されているが、本発明は、例えば米国特許第5,364,518号の図2に描写されているように、複数の列の磁石でも動作可能であることが理解される。
【0015】
本発明によると、浸食ゾーン214は、ターゲットチューブ1の終端部232に向かって、ターゲット材料10の除去をともなって、外向きにシフトされる。これは、結果として比較的により厚いターゲットチューブ終端区域232へと動的に移された浸食ゾーン214をもたらす。これは、先行技術の、図1および図2のシリンダー区域13の最大摩耗領域における継続的な摩耗と対照的である。浸食ゾーン214の側方、および角度を有する動的シフトを通して、全体的なターゲットの利用は、先行技術と比較して改善される。本発明によるターゲットの利用は、ターゲット材料10の初期重量の70%、75%、80%、85%を超え、および87%までも測定された。これは、米国特許第5,364,518号のシステムを含む、従来のシステムに対しては、ターゲット材料10の初期重量のほぼ60%が使用可能であることと比較される。アルミニウムおよびアルミニウム合金は、ターゲットシリンダー1を形成するターゲット材料10を代表するものにすぎない。
【0016】
浸食ゾーン214の動的なシフティングは、磁石、すなわち遠位磁石207、近位磁石208、および中間磁石230の構成により達成される。磁石207、208、208´、および230は、各々独立的に棒磁石、または電磁石である。中間磁石230の配置は、遠位磁石207から力線を引き出し、ターゲット材料10がプラズマスパッタリングにより取り除かれるのに従って、法線231から、数字210でも参照される、角度Θだけシフトして離れるように磁場頂点線209を生じさせる。磁石207または208と同義的に不連続的と称される、離間された中間磁石230の配置は、ターゲット材料を通して延在する磁力線を調整する上で、ある特定の利点をもたらすことが理解される。転回部3の内側縁5から遠位の中間磁石230の配置は、図4に示すように、浸食ゾーンをチューブ終端部に向かってシフトさせるのが好ましい。本発明によると、角度Θは、プロファイル202における浸食の最低点に垂直な方向から測定して、線231における0°から最高70°の角度Θまで動的に変化する。最終プロファイル202において、Θの値を達成することに関する因子としては、ターゲットシリンダー1の厚さおよび同一性、磁石207、230、208、および208´の磁気強度および相対的間隔、ターゲット材料10の透磁率、ならびにレーストラック2に対する相対的な寸法および動作条件が挙げられる。産業用の堆積条件の下で用いられる典型的な長さ1メートルのアルミニウムのターゲットシリンダーは、かかるターゲットに対する浸食ゾーンが典型的に終端部232に向かって0.5cm〜5cmシフトする間に、0°〜50°でシフトするΘの値を有する。
【0017】
頂点線209が、ターゲットチューブ10の終端部232の近くへ移動するのに従って、ターゲット材料10がスパッタリングによって取り除かれるので、この磁場構成の結果は、一連の動的な連続浸食プロファイル211、212、213、および202に示される。当初、磁場頂点209は、本来のターゲット表面15の上方に位置し、233における浸食ゾーンをもたらす。ターゲットチューブが浸食されるのに従い、頂点はターゲットシリンダー1の端部232に向かってシフトし、その結果として、ターゲット浸食ゾーン214も、ターゲットシリンダー1の終端部232に向かって移動する。示されているように、頂点線がシフトするのに従い、浸食ゾーンはターゲットチューブ232の側面上に移動する。これは、ターゲットの底部における浸食を遅くし、ターゲットの利用の割合を延ばし、従って動作耐用時間を延ばす。
【0018】
図5Aは、ロータリーターゲットの摩耗の、先行技術と本発明との間の比較を示す。先行技術の摩耗プロファイルは、図1Bの領域13に対応して、破線13で示される。最小点7は、磁気尚早なターゲットの耐用期間の終了を引き起こす、転回部3の下部の先行技術の摩耗点である。7における深い摩耗は、プラズマ発生器レーストラック2の直線部4の下部の使用されない材料12を、図5Aに描写するように右へと直線的に、かつ裏当てチューブ14の上方に平行に延在して残す。本発明では、優れた材料の利用摩耗プロファイルが達成される。ターゲット寿命の最後において、真っ直ぐに取り除かれた材料202が、ほぼ裏当てチューブ14まで摩滅される。終端部232は、ターゲットシリンダー1に対して作動可能な耐用時間の終了時において、隣接する浸食ゾーン202と、50°、55°、60°、65°、70°、75°、80°、85°、より大きい、そしてほぼ90°の角度βでフランジ交差部を形成する。角度βは、表面15に垂直な線との交差部を外挿すること、および、β+γ=90°となるように、浸食ゾーン202から終端部232と法線との間の角度γを引くことにより測定される。レーストラック転回部3の下部のターゲット領域、および十分なターゲット使用において、ターゲットチューブ側壁232は、本来のチューブ表面15にほぼ垂直に浸食される。
【0019】
より大きいチューブの利用が、いくつかの磁石設定により達成されることが理解される。中間磁石は、近位磁石208のN極の配向の10°以内(80°〜110°)、または遠位磁石207および近位磁石208の両方に垂直の10°以内(170°〜190°、または10°〜350°)のN極の配向を有する角度αで配置される。磁石207に基づくこれらの角度配向により、示されるように270°の角度を画定し、磁石208は、紙面の平面に垂直に突出する平面内で、90°を画定する。例えば、磁石230は、図4に描かれた位置に直角に、その側面上に極の矢印が紙面の中へ(0°)または紙面の外向きに(180°)になり、これにより図4においてαで画定された角度で、磁石207に垂直になるように据えることができる。これらの代替の配向は、それぞれ230Aおよび230Bとして移された位置に示される。磁石207および208の各々は、独立して、および任意選択で形成され、または積み重ねられることが理解される。成形された磁石は、直線的な直平行6面体から逸脱したものとして本明細書では定義される。チューブ裏当て14の近位に成型される磁石面は、磁場の形状および強度を制御する上で特に有益であることが理解される。積み重ねられた磁石は、モノリシックでなく、その代わりにいくつかの別個の磁気要素を追加する様式で組み合わせることによって形成される磁石として本明細書では定義される。
【0020】
図5Bは、図2Cの先行技術、および図5Aの本発明の、正規化された最終浸食ゾーン断面の上に適合関数を重ねたものを示す。本発明の浸食ゾーンプロファイルに対する式Iの最良の2つのパラメータ適合は、図5Bに示すように、D=0.075、k=1、およびl=1.51により生じた。この浸食プロファイルは、磁力線シミュレーションに基づいて容易にモデル化されるステップの位置により、例えば、図4に示されるように、ターゲットシリンダーの下部の本発明のマグネットバーに対して、ステップ関数により容易にモデル化された。10ユニットの長さにわたり延在する2つのパラメータの最良の適合、1、および本発明の浸食プロファイルに対する正規化された1の厚さは、0.01〜0.3のDf、および1より大きく、特に1.1〜2.0のlfに対する値を有する。
【0021】
この明細書内で言及した任意の特許または出版物は、本発明が関係する当業者のレベルを示すものである。これらの特許および出版物は、あたかも各々の個々の出版物が具体的に、かつ個別に参照により組み込まれているように示されるのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
本発明が、対象物を実行し、記述された終端部および利点を取得するため、ならびにこれらに固有のものに十分適合していることを、当業者は、容易に理解するであろう。本明細書に記載された、本方法、手順、処置、分子、および具体的な化合物は、好ましい実施形態の現在の代表であり、例示であり、かつ本発明の範囲の制限として意図しない。その中の変更、および他の使用が、当業者に対して生じることがあり、これらは、特許請求の範囲の範囲により定義される本発明の趣旨の中に包含される。
【符号の説明】
【0023】
1 ターゲットチューブシリンダー
2 レーストラック
3 転回部
5 内側縁(部)
6 スピンドル
7 最大侵食点
10 ターゲット材料
15 ターゲット表面
20 マグネットバー
26 マグネットシャント
27、28 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材をコーティングするための装置であって、
2つの直線部および前記直線部を接続する少なくとも1つの末端転回部を有するレーストラック型プラズマ源と、
終端部を有し、前記プラズマ源の近位にあるチューブ状のターゲットと、
前記ターゲットがそこに固定される、チューブ状の裏当てカソードであって、前記カソードおよび前記チューブ状のターゲットが中心軸を中心として回転可能である、裏当てカソードと、
前記カソードの内側に配設される複数の磁石であって、前記ターゲットが前記コーティングを前記基材上に堆積するように利用されるのにともない、前記ターゲットの前記終端部に向かう前記少なくとも1つの末端転回に整列された侵食ゾーンを移動するために配設される複数の磁石と、
を備える装置。
【請求項2】
前記複数の磁石が、前記ターゲットに隣接する第1の極性の配向をともなって配置された遠位磁石と、前記ターゲットに隣接する反対の極性の配向の少なくとも1つの近位磁石と、前記遠位磁石と前記少なくとも1つの近位磁石との間の中間磁石とを備え、前記中間磁石は前記遠位磁石の極性の配向と異なる極性の配向を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記中間磁石は、近位磁石のN極の配向の10°以内のN極の配向、または前記遠位磁石および前記近位磁石の両方への垂直の10°以内のN極の配向を有する、角度αを確定する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記角度αは、前記遠位磁石と前記少なくとも1つの近位磁石の両方への垂直の10°以内の前記中間磁石のN極の配向を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記ターゲットは、アルミニウム、またはアルミニウムを含む合金である、前記請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記中間磁石は、前記遠位磁石および少なくとも1つの近位磁石から離間された、前記請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記複数の磁石のうちの少なくとも1つが、複数の積み重ねた磁石要素である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記複数の磁石のうちの少なくとも1つが、直線的な直平行6面体以外の形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記チューブ状のターゲットが、均一な直径を有し、ドッグボーン型の終端部と無関係である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
基材をコーティングするための方法であって、
チューブ材料から形成され、チューブ状カソードに取り付けられたチューブ終端部を有するチューブ状のターゲットに、前記基材に対して延在するスパッタリングレーストラック型プラズマを発生する条件の下で、エネルギーを与えるステップと、
前記カソードの内側に、前記ターゲットと整列されたレーストラック型プラズマ減と相互作用する磁場を形成するために、複数の磁石を配設するステップであって、前記ターゲットが前記コーティングを前記基板上に堆積するために利用されるのに従って、前記ターゲットの前記終端部に向かう少なくとも1つの末端転回と整列された前記チューブ状のターゲット上の浸食ゾーンを移動するために、前記プラズマ源は2つの直線部および前記直線部分を接続する少なくとも1つの末端転回部を有する、配設するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記ターゲットがスパッタリングされ、前記直線部から離れるのに従い、前記浸食ゾーンが前記終端部に向かってシフトする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記浸食ゾーンが、ターゲットの初期の表面に対する法線から、最高70°の角度Θだけ離れるようにシフトする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ターゲット材料の70重量%〜87重量%まで前記ターゲットが利用される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ターゲットの部分が、前記ターゲットに対する動作可能な耐用時間の終了時に、前記浸食ゾーンにおいて70°〜90°の間の角度βで交差するフランジを形成する前記終端部を定義する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記条件が、酸化ガスを含む不完全真空、および前記カソードと遠位アノードとの間に存在する電位を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
消耗されたロータリーマグネトロンターゲットであって、
初期重量のターゲット材料から形成され、前記終端部と前記浸食ゾーンにおいて70°〜90°の角度βで交差する直線部を有し、初期重量の70重量%〜87重量%を失う、チューブ裏当てカソードを包囲するように適合されるターゲット材料シリンダーを備える、請求項10〜15のうちのいずれかの方法により作成される、消耗されたロータリーマグネトロンターゲット。
【請求項17】
前記ターゲットに対して動作可能な耐用時間の終了時において、前記ターゲットが、
【数1】

によりモデル化された最終ターゲット断面t(l)を有し、式中、Dは、正規化された最終浸食深さであり、lは、前記ターゲットの前記終端部から離れた横方向位置であり、lは最大浸食点であり、kは適合定数であり、Dは0.01〜3であり、lは1.1〜2であり、k=1である、請求項16に記載の消耗されたロータリーマグネトロンターゲット。
【請求項18】
チューブ状ターゲットとして形成された前記ターゲット材料の70総重量%〜87総重量%の利用による、コーティングを基板上にプラズマ堆積するためのロータリーマグネトロンの使用。
【請求項19】
前記チューブ状のターゲットが、均一な直径を有し、ドッグボーン型の終端部と無関係である、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
添付の図に関して、実質的に詳述されたマグネットバー。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate


【公表番号】特表2013−508565(P2013−508565A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536955(P2012−536955)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/054111
【国際公開番号】WO2011/056581
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(508371024)ジェネラル・プラズマ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】