説明

ロータリ圧縮機

【課題】モータの上方空間から下方空間へオイルを戻す機能の高いバイパス管を備えるロータリ圧縮機を得ること。
【解決手段】下部にオイルが貯留された密閉された縦置きの筐体10と、前記筐体10内下部に配置され前記オイルにより潤滑される冷媒圧縮部と、前記筐体10内上部に配置され前記冷媒圧縮部を駆動するモータと、を備えるロータリ圧縮機1において、前記筐体10内の前記モータの上方空間と下方空間とを連通するバイパス管33を前記筐体10外に設け、該バイパス33管を、鉛直方向10cに対して傾斜させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置や空気調和機等の冷凍サイクルに使用されるロータリ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、底部にオイル溜を有する密閉容器内にモータと圧縮機構部を備え、さらにモータによる回転力を圧縮機構部に伝える回転軸とが収納された密閉型圧縮機において、圧縮機構上部(モータ上部)と圧縮機構下部とをつなぐように密閉容器外にオイル用の鉛直のバイパス管を設け、圧縮機構上部(モータ上部)に滞留したオイルを底部オイル溜に戻すように意図した密閉型圧縮機が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−221908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術によれば、圧縮機構部で圧縮されモータ内を通って密閉容器の外部へ吐出される冷媒ガスのモータ内通過時の圧力損失により、モータの上方空間と下方空間とでは、モータの下方空間の方が冷媒ガスの圧力が僅かに高くなる。そのため、図6に示すように、バイパス管33の内部のオイルがバイパス管33を塞いでしまった場合、圧力差によってオイルに上昇方向の力が作用するので、オイルが流下するのを阻害し、バイパス管33の機能を発揮することができない、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、モータの上方空間から下方空間へオイルを戻すバイパス管の機能を高めたロータリ圧縮機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、下部にオイルが貯留された密閉された縦置きの筐体と、前記筐体内下部に配置され前記オイルにより潤滑される冷媒圧縮部と、前記筐体内上部に配置され前記冷媒圧縮部を駆動するモータと、を備えるロータリ圧縮機において、前記筐体内の前記モータの上方空間と下方空間とを連通するバイパス管を前記筐体外に設け、該バイパス管を、鉛直方向に対して傾斜させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかるロータリ圧縮機は、モータの上方空間から下方空間へオイルを流下させるとき、バイパス管内がオイルで塞がれ難い、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例を示す縦断面図である。
【図2】図2は、バイパス管を設けたロータリ圧縮機を模式的に示す側面図である。
【図3】図3は、バイパス管を設けたロータリ圧縮機を模式的に示す上面図である。
【図4】図4は、バイパス管の取付構造を示す図3の部分拡大図である。
【図5】図5は、バイパス管内のオイルの流れを示す断面図である。
【図6】図6は、比較例として示す従来のバイパス管内のオイルの流れを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例を示す縦断面図であり、図2は、バイパス管を設けたロータリ圧縮機を模式的に示す側面図であり、図3は、バイパス管を設けたロータリ圧縮機を模式的に示す上面図であり、図4は、バイパス管の取付構造を示す図3の部分拡大図であり、図5は、バイパス管内のオイルの流れを示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、ロータリ圧縮機1は、密閉された縦置き円筒状の筐体10の下部に配置された冷媒圧縮部12と、筐体10の上部に配置され、回転軸15を介して冷媒圧縮部12を駆動するモータ11と、を備えている。
【0012】
モータ11のステータ111は、筐体10の内周面に固定されている。モータ11のロータ112は、ステータ111の中央部に配置され、モータ11と冷媒圧縮部12とを機械的に接続する回転軸15に固定されている。ロータ112には、冷媒圧縮部12で圧縮されて筐体10の上部へ吐出される冷媒ガスを通すガス孔112aが設けられている。
【0013】
筐体10の天部には、モータ11のステータ巻線の電源接続端子116を固定する電源端子台115が、天部の内側から外側に嵌入されて気密に固定されている。電源端子台115には、複数(3本)の電源接続端子116が貫通して固定されている。電源接続端子116と電源端子台115との間は、絶縁シール材(例えば、ガラス)により絶縁シールされている。
【0014】
モータ11が作動して回転軸15が回転すると、冷媒圧縮部12は、アキュムレータ25及び低圧連絡管31を介して、冷凍サイクルの低圧側から連続的に冷媒ガスを吸入して圧縮し、筐体10内及び吐出管107を通して外部(冷凍サイクルの高圧側)へ吐出する。
【0015】
次に、実施例のロータリ圧縮機1の特徴的な構成について説明する。図1に示すように、ロータリ圧縮機1は、筐体10内のモータ11の上方空間10aと下方空間10bとを連通するバイパス管33を、筐体10の外部に設けている。図2及び図3に示すように、ロータリ圧縮機1は、バイパス管33の下部接続部33bを、上部接続部33aに対して周方向に角度αずらして筐体10に取付け、バイパス管33を、鉛直線(鉛直方向)10cに対して角度θ傾斜させている。なお、図2及び図3に示すように、バイパス管33を、筐体10の外周に添うように湾曲させているが、バイパス管33が筐体10の外周から離れている場合は、湾曲させずに直線状としてもよい。
【0016】
バイパス管33の傾斜角度θが小さいと、オイルがバイパス管33の垂直断面下側に集まらず、図6に示したように、バイパス管33の内部のオイルがバイパス管33を塞ぎやすくなる。オイルがバイパス管33を塞いでしまった場合、モータ11の上方空間10aと下方空間10bの圧力差によってオイルに上昇方向の力が作用するので、オイルが流下するのを阻害し、バイパス管33の機能を発揮することができない。また、傾斜角θが大きいと、オイルがバイパス管33内を流下する力が弱くなり、オイルを速やかに戻すことができない。バイパス管33の機能を発揮させるために、傾斜角θを、30°≦θ≦60°の範囲とすることが望ましい。
【0017】
また、バイパス管33の下部接続部33bが、冷媒圧縮部12のオイル面高さよりも低い位置に接続されていると、下部接続部33bの開口部がオイルで塞がれ、モータ11の上方空間10aと下方空間10bの圧力差によってオイルに上昇方向の力が作用するので、バイパス管33内のオイルが流下するのを阻害する。それ故、バイパス管33の下部接続部33bは、オイル面の高さよりも高い位置に接続することが望ましい。
【0018】
通常、オイル面の高さは、冷媒圧縮部12の冷媒ガス吐出口12aよりも低い位置としている。これは、冷媒ガス吐出口12aがオイルで塞がれると、吐出抵抗が増大し、圧縮機効率が低下するためである。それ故、バイパス管33の下部接続部33bの接続位置は、冷媒圧縮部12の冷媒ガス吐出口12aの高さ以上の高さとするのが望ましい。
【0019】
図3に示すように、バイパス管33の下部接続部33bを、上部接続部33aに対して周方向に角度αずらして筐体10に取付けているので、バイパス管33を筐体10に組付けるとき、バイパス管33の上下で筐体10の取付孔への挿入方向が異なり、バイパス管33を挿入しにくい、という問題がある。
【0020】
この問題を解決するため、図4に示すように、筐体10とバイパス管33の上下の接合部には、夫々L形継手34が配置され、夫々のL形継手34のバイパス管挿入部34aが互いに平行になるように、夫々のL形継手34の曲げ角度が設定され、バイパス管33は、上部接続部33aと下部接続部33bとが平行となるようにコ字形に形成され、バイパス管33の上部接続部33a及び下部接続部33bが夫々のL形継手34のバイパス管挿入部34aに平行に挿入され接合される。
【0021】
次に、図1及び図5を参照して実施例のロータリ圧縮機1の動作について説明する。筐体10内には、およそ第2シリンダ121Tの高さまでオイルが封入されている。回転軸15には、中心部を貫通する給油縦孔(図示せず)が設けられるとともに、給油縦孔と連通する給油横孔(図示せず)が設けられている。給油横孔は、夫々下軸受部161S、第1、第2環状ピストン125S、125T及び上軸受部161Tに対応させて複数設けられている。また、下軸受部161S及び上軸受部161T、又は、これに対応する回転軸15の部位には、給油横孔に連通する油溝(図示せず)を設けている。
【0022】
給油縦穴内には、羽根(図示せず)を挿入し、回転軸15の回転とともに回転する羽根によりオイルに遠心力を与えて給油性能を向上させ、特に、オイル面より高い位置に位置する上軸受部161Tを確実に潤滑するようにしている。
【0023】
以上説明した給油機構155Aにより、筐体10の下部に貯留されたオイルは、回転軸15の下端から汲み上げられ、下軸受部161S、第1、第2ピストン125S、125T及び上軸受部161Tを潤滑する。各部を潤滑した後のオイルは、第1、第2の圧縮部12S、12Tを区画する部品同士の微小隙間から第1、第2シリンダ121S、121T内に入って摺動部分の潤滑と微小隙間の圧力シールを行うが、オイルの大半は、上軸受部161Tの油溝上端と下軸受部161Sの油溝下端から排出される。
【0024】
ロータ112には、冷媒圧縮部12の冷媒ガス吐出口12aから吐出されたモータ11の下方の冷媒ガスをモータ11の上方の吐出管107側へ通す断面が長孔状のガス孔112aが設けられている。また、円板の中央部に円筒部を有するオイル分離板119が、ロータ112上に固定されている。
【0025】
モータ11の下部に位置する冷媒圧縮部12で圧縮された冷媒ガスは、ロータ112のガス孔112a、ステータ111とロータ112の隙間及びステータ111の巻線の隙間を上昇して、吐出管107からロータリ圧縮機1外に吐出される。冷媒圧縮部12を潤滑するオイルの一部は、冷媒ガスとともにガス孔112a及び前記の隙間を上昇し、オイル分離板119に衝突し、ロータ112の回転によって遠心分離され、筐体10の内壁に付着し、重力によってステータ111の上部に溜まる。
【0026】
ステータ111の上部に溜まったオイルは、ステータ111の外周部の切欠き部(図示せず)及びバイパス管33を流下し、モータ11の下方空間10bに落下し、筐体10の下部に戻る。このとき、図5に示すように、バイパス管33を傾斜させているので、オイルに働く重力により、バイパス管33内の断面下部にオイルが集まり、バイパス管33内のオイルがバイパス管を塞ぎ難く、モータ11の上方空間10aと下方空間10bの圧力差によってオイルに上昇方向の力が作用しないので、バイパス管33を通してモータ11の上方空間10aから下方空間10bへオイルを確実に且つ速やかに流下させることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 ロータリ圧縮機
10 筐体
10a モータの上方空間
10b モータの下方空間
10c 鉛直線(鉛直方向)
11 モータ
12 冷媒圧縮部
12a 冷媒ガス吐出口
12S 第1の圧縮部
12T 第2の圧縮部
15 回転軸
25 アキュムレータ
31 低圧連絡管
33 バイパス管
33a 上部接続部
33b 下部接続部
34 L形継手
34a バイパス管挿入部
107 吐出管
111 ステータ
112 ロータ
112a ガス孔
115 電源端子台
116 電源接続端子
119 オイル分離板
121S 第1シリンダ
121T 第2シリンダ
125S 第1環状ピストン
125T 第2環状ピストン
155A 給油機構
161S 下軸受部
161T 上軸受部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部にオイルが貯留された密閉された縦置きの筐体と、前記筐体内下部に配置され前記オイルにより潤滑される冷媒圧縮部と、前記筐体内上部に配置され前記冷媒圧縮部を駆動するモータと、を備えるロータリ圧縮機において、
前記筐体内の前記モータの上方空間と下方空間とを連通するバイパス管を前記筐体外に設け、該バイパス管を、鉛直方向に対して傾斜させたことを特徴とするロータリ圧縮機。
【請求項2】
前記鉛直方向に対するバイパス管の傾斜角θが、30°≦θ≦60°であることを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】
前記モータの下方空間に連通する前記バイパス管の下部接続部の高さ位置が、前記冷媒圧縮部の冷媒ガス吐出口の高さ位置以上となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のロータリ圧縮機。
【請求項4】
前記筐体とバイパス管の上下の接合部には、夫々L形継手が配置され、夫々のL形継手のバイパス管挿入部が互いに平行になるように、夫々のL形継手の曲げ角度が設定され、前記バイパス管は、上部接続部と下部接続部とが平行となるようにコ字形に形成され、前記バイパス管の上部接続部及び下部接続部が夫々のL形継手のバイパス管挿入部に挿入され接合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のロータリ圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−68167(P2013−68167A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207549(P2011−207549)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】