ローダミン標識されたオリゴヌクレオチドを合成するために有用な試薬
本開示は、合成オリゴヌクレオチドを、ローダミン染料、または、ローダミン染料を含む染料ネットワークによって標識するために用いることが可能な試薬を提供する。詳細には、本開示は、適切な波長の入射光によって照射されると蛍光を発するローダミン染料を含む標識によって、合成オリゴヌクレオチドを標識するのに有用な試薬を提供する。この標識は、単一のローダミン染料を含むことが可能であるが、あるいは、複数の染料の少なくとも一つがローダミン染料である、染料ネットワークを含むことが可能である。これらの試薬は、オリゴヌクレオチドの段階的合成の際、合成オリゴヌクレオチドを直接ローダミン含有標識によって標識するのに使用することが可能であり、このため、ローダミン染料によって標識されるオリゴヌクレオチドを得るために必要な操作工程が低減される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願への相互参照
この出願は、米国特許法§119(e)の下、2006年3月31日に出願された仮出願第60/787,777号(この開示は、その全体が参考として本明細書に援用される)に対する利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
2.背景
蛍光染料の、検出標識としての使用は、分子生物学、細胞生物学、および分子遺伝学において広く行われている。例えば、蛍光標識オリゴヌクレオチドの使用は、現在、種々の異なるアッセイにおいて広く使用されている。そのようなアッセイとして、例えば、ポリヌクレオチド配列決定、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、核酸アレイにおけるハイブリダイゼーションアッセイ、蛍光偏光実験、および核酸増幅アッセイ、例えば、蛍光プローブおよび/またはプライマーによって行われるポリメラーゼ連鎖増幅アッセイなどのアッセイが挙げられる。
【0003】
いくつかの蛍光標識は、蛍光ホスホロアミダイト試薬を用いインサイチュに合成される、新生または完成オリゴヌクレオチド鎖に対し付着させることが可能である。例えば、蛍光ホスホロアミダイト試薬は市販されている(例えば、Glen Research Corporation,Sterling,VAの2006年製品カタログを参照されたい)。この試薬では、フルオレセイン環の3’−、および6’−環外酸素原子が、副反応を阻止するために、ピバロイル基によって保護される。これらの基によるフルオレセイン環の修飾は、閉されたスピロラクトン形の3−位置にカルボン酸基を保持し、該カルボン酸塩からの、ホスホロアミダイト基に対するプロトン供与を阻止する。もしもプロトン供与が起こると、このホスホロアミダイト基は有力な脱離基に変換されることになり、この試薬の分解を招くことになる。このフルオレセイン環はさらに、いずれも核酸塩基の保護基を除去し、合成オリゴヌクレオチドを合成樹脂から切り離すための標準法である、新生オリゴヌクレオチドを酸化するために用いられる条件、およびアンモニア水による処理に対して安定である。
【0004】
残念ながら、多くのローダミン染料は、その蛍光特性に対し否定的な影響を及ぼす、合成オリゴヌクレオチドの酸化、および脱保護/切り離しのために一般的に使用される試薬で処理されると、化学的修飾に対して感受性を持つ。そのため、ローダミン染料は、一般に、合成、脱保護、および合成樹脂からの切り離し後にオリゴヌクレオチドに付着される。これは、追加の工程および手間を加えることになり、ローダミン標識オリゴヌクレオチドの全体合成においてより大きなコストおよび不便の原因となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記およびその他の限界のために、最近は、ホスホロアミダイト試薬として僅かに二つのローダミン染料しか市販されていない、すなわち、テトラメチルローダミン(”TAMRA”)、およびローダミンX(”ROX”)である。固相化学合成の際に、異なる膨大な数のローダミン染料によるオリゴヌクレオチドの標識化を可能とするさらに新たな試薬が得られるならば、それは望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
3.概要
一局面において、本開示は、適切な波長の入射光によって照射されると蛍光を発するローダミン染料を含む標識によって、合成オリゴヌクレオチドを標識するのに有用な試薬を提供する。この標識は、単一のローダミン染料を含むことが可能であるが、あるいは、複数の染料の少なくとも一つがローダミン染料である、染料ネットワークを含むことが可能である。これらの試薬は、オリゴヌクレオチドの段階的合成の際、合成オリゴヌクレオチドを直接ローダミン含有標識によって標識するのに使用することが可能であり、このため、ローダミン染料によって標識されるオリゴヌクレオチドを得るために必要な操作工程が低減される。さらに、標識が、段階合成の際、直接オリゴヌクレオチドに付着されるので、標識オリゴヌクレオチドからの、未結合標識の、HPLC分離−これは、現在行われている、ローダミンNHSエステルなどの、合成後ローダミン標識試薬を用いる場合には必要となる−が不要になる。
【0007】
これらの試薬は、オリゴヌクレオチドを、その3’末端、その5’末端、および/または、一つ以上の内部位置において標識するのに使用することが可能である。その標識は、オリゴヌクレオチドの末端ヒドロキシル(単数または複数)、オリゴヌクレオチドを含む一つ以上の核酸塩基に付着させることが可能であり、あるいは、オリゴヌクレオチド鎖を含む二つのヌクレオチドの間に配置することも可能である。したがって、この試薬は、非ヌクレオシド性合成試薬(例えば、図3および5を参照)、ヌクレオシド性合成試薬(例えば、図4および6を参照)、および/またはヌクレオシド性固相支持体(例えば、図8を参照)の形状を取ることが可能である。
【0008】
この合成試薬は、一般に、標識部分、リン酸エステル前駆体(”PEP”)基、および、リン酸エステル前駆体基を標識部分に連結する、任意のリンカーを含む。リン酸エステル前駆体基は、一般に、オリゴヌクレオチドの段階的合成に使用されると、任意の脱保護および/または酸化の後、ヌクレオチド間リン酸エステル結合を最終的に生成する官能基を含む。ヌクレオチド間リン酸エステル結合を合成するために好適な、いくつかの種類の化学および官能基が、従来技術において既知であり、例として挙げるので限定のためではないが、例えば、ホスホロアミダイトPEP基を利用する亜リン酸トリエステル(例えば、Letsingerら、1969,J.Am.Chem.Soc.91:3350−3355;Letsingerら、1975,J.Am.Chem.Soc.97:3278;Matteucci & Caruthers,1981,J.Am.Chem.Soc.103:3185;Beaucage & Caruthers,1981,Tetrahedron Lett.22:1859を参照)、2−クロロフェニル−、または2,5−ジクロロフェニル−リン酸PEP基(例えば、Sproat & Gait,“Solid Phase Synthesis of Oligonukleotides by the Phosphodiester Method”)」 In: Oligonucleotide Synthesis,A Practical Approach,Gait,Ed.,1984,IRL Press,pages 83−115を参照)、H−リン酸PEP基を利用するH−リン酸化学(例えば、Gareggら、1985,Chem.Scr.25:280−282;Gareggら、1986,Tet.Lett.27:4051−4054;Gareggら、1986,Tet.Lett.27:4055−4058;Gareggら、1986,Chem.Scr.26:59−62;Froehler & Matteucci,1986,Tet.Lett.27:469−472;Froehlerら、1986,Nucl.Acids Res.14:5399−5407を参照)が挙げられる。これら各種のPEP基の外、後に発見されたPEP基も、本明細書に記載される合成試薬の、リン酸エステル前駆体基を含むことが可能である。PEP基の特定名は、結果の成否を決める因子ではなく、標識オリゴヌクレオチドを合成するために望ましい化学に依存する。ある実施態様では、リン酸エステル前駆体基は、フォルスフォロアミダイト基を含む。
【0009】
標識部分とリン酸エステル前駆体基を連結する任意のリンカーは、この標識オリゴヌクレオチドの合成のために用いられる合成条件に対して安定なものである限り、原子または官能基同士の、事実上任意の組み合わせを含むことが可能である。リンカーは、指定の特性、例えば、所望の条件下で分断される能力を持つように設計することが可能である。
【0010】
合成試薬はさらに、ヌクレオシド、または他の基または成分がそれに対して付着することが可能な、一つ以上の合成ハンドルを任意に含んでもよい。この合成ハンドルは、標識オリゴヌクレオチドの段階的合成時に選択的に除去することが可能な保護基を含み、そのため、樹脂からの切り離し前に、成分の、合成オリゴヌクレオチドに対する付着を可能としてもよいし、あるいはそれとは別に、合成ハンドルは、脱保護、および/または、合成オリゴヌクレオチドの合成樹脂からの切り離しのために使用される条件に対して安定な保護基を含み、そのため、合成、脱保護、および合成樹脂からの切り離しの後、合成標識オリゴヌクレオチドに対する成分の付着を可能としてもよい。一つを超える合成ハンドルを含む、合成試薬を含む合成ハンドル同士は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0011】
ある実施態様では、合成試薬は、式−OReの保護されたヒドロキシルを含む、単一合成ハンドルを任意に含む。ここで、Reは酸に不安定な保護基を表す。
【0012】
この合成ハンドルは、標識部分に結合させることも可能であるし、あるいは、標識部分とリン酸エステル前駆体基を連結する任意のリンカーの中に含めることも可能である。式−OReの合成ハンドルが、任意のリンカーに含まれる実施態様は、その性質が、非ヌクレオシド性であってもよいし、あるいは、ヌクレオシド性であってもよい。後者の場合、リンカーはヌクレオシドを含み、合成ハンドルには、ヌクレオシドの糖成分のヒドロキシル基、通常、ヌクレオシド糖成分の5’−ヒドキシル基が与えられる。リンカーが合成ハンドルを含む、非ヌクレオシド性合成試薬の、特異的、非限定的実施態様が、図5に示される。リンカーが合成ハンドルを含む、ヌクレオシド性合成試薬の、特異的、非限定的実施態様が、図6に示される。
【0013】
固相支持試薬は、一般に、標識部分、Reは上に定義された通りである、式−OReの合成ハンドル、固相支持体、および、標識部分および合成ハンドルを、固相支持体に連結するリンカーを含む。合成ハンドルは、ヌクレオシドモノマー試薬がそれに対して結合することが可能な基を提供する。固相支持試薬は、同じであっても、異なってもよい、さらに別の、一つ以上の合成ハンドルを任意に含むことが可能である。
【0014】
それぞれが適切な官能基を含むか、または、適切な官能基を含むように誘導体形成することが可能なオリゴヌクレオチドの固相合成において固相支持体として使用するのに好適な材料については、広く各種のものが従来技術において知られ、例えば、ただしこれらに限定されないが、孔調節ガラス(CPG)、ポリスチレン、および各種グラフトコポリマーが挙げられる。これら各種材料は全て、本明細書に記載される固相支持試薬における固相支持体として使用するのに好適である。
【0015】
固相支持体の形状は、決定的重要性を持たない。ほぼ任意の形状の利用が可能である。例えば、固相支持体は、球形、不規則形状のビーズ、立方体、直方体、円筒形、円筒管、または場合によってはシート状であってもよい。固相支持体は、多孔性であってもよいし、非多孔性であってもよい。ある実施態様では、固相支持体は、CPG、またはポリスチレンビーズである。ある実施態様では、固相支持体は、CPG、またはポリスチレンビーズである。
【0016】
標識部分と合成ハンドルを、固相支持体に連結するリンカーは、オリゴヌクレオチドの固相合成のために通常用いられる合成条件に対して安定なものである限り、原子または官能基同士の、事実上任意の組み合わせを含むことが可能であって、その構造は、直線状、分枝状、または環状であってもよいし、あるいは、直線、分枝、および/または環状構造同士の任意の組み合わせを含むことが可能である。リンカーは、指定の特性、例えば、所望の条件下に切断可能とされる能力を持つように設計することが可能である。ある実施態様では、リンカーは、指定の条件下で切断されて、試薬の残余部分から、固相支持体の放出を可能とする結合を含む。例えば、リンカーは、オリゴヌクレオチド合成条件下では安定であるが、合成オリゴヌクレオチドを脱保護するために使用される条件(例えば、水酸化アンモニウムにおける55℃または室温でのインキュベーション)に対しては不安定となる結合を含むことが可能である。このような特異的に切断可能な結合は、従来技術において周知であり、例えば、ただしこれらに限定されないが、エステル類、炭酸エステル類、ジイソプロピルシロキシエーテル類、リン酸エステル修飾体などが挙げられる。
【0017】
合成試薬に関して前述したように、固相支持試薬のリンカーは、合成ハンドルを含むことが可能であり、その性質は、ヌクレオシド性、または非ヌクレオシド性であることが可能である。非ヌクレオシド性固相支持試薬の、特異的、非限定的実施態様が、図7に示される。ヌクレオシド性固相支持試薬の、特異的、非限定的実施態様が、図8に示される。
【0018】
本明細書に記載される合成および固相支持試薬の標識部分は、ローダミン染料を含む。ローダミン染料の3’−、および6’−位置における環外窒素原子は、一次または二次アミンに含まれるように未置換であるか、または一置換され、さらに保護基によって置換される(3’−および6’−位置において一次または二次アミン基を有する、未保護ローダミン染料を、本明細書では「NH−ローダミン」と呼び、3’−および6’−位置において保護基を有するローダミン染料を、本明細書では「N−保護NH−ローダミン」と呼ぶ)。
【0019】
保護基は、標識オリゴヌクレオチドを合成するために通常用いられる合成条件、例えば、オリゴヌクレオチドの固相合成に通常用いられるトリエステル化学条件に対して安定なものである限り、事実上任意の、特異的除去が可能な基であってもよい。アミド、例えば、カルボキサミド、スルフォナミド、フォスフォラミドなどを形成する基によって、NH−ローダミンの3’−および6’−二次または一次アミンを保護することによって、N−保護NH−ローダミンが、閉鎖されたラクトン形で存在することが可能とされ、そのため、ローダミンが、合成後操作または精製を要することなく、オリゴヌクレオチドの段階的合成において使用が可能とされることが発見された。実験実施例で証明されるように、N−保護NH−ローダミンを含むホスホロアミダイト試薬は、オリゴヌクレオチドの段階的合成に一般的に使用される溶媒に可溶であり、複数ラウンドのDMT脱保護、結合、酸化、およびキャップ形成に対してばかりでなく、濃縮水酸化アンモニウムによる処理、すなわち、任意の環外アミン保護基を脱保護し、合成樹脂から合成オリゴヌクレオチドを切り離すために一般的に使用される条件に対しても安定である。
【0020】
この保護基は、不安定で、合成された標識オリゴヌクレオチドの核酸塩基保護基を除去するために使用される条件下で除去可能であってもよいし、あるいはそれとは別に、この保護基は、これらの条件には安定であるが、他の条件に対しては不安定であってもよい。多くの場合、合成された標識オリゴヌクレオチドの核酸塩基保護基を除去するため、および/または、合成樹脂から標識された合成オリゴヌクレオチドを切り離すために使用される条件に対して不安定である保護基を利用することが望ましいようである。
【0021】
ある実施態様では、保護基は、式−C(O)R10のアシル基である。この式において、R10は、低級アルキル、メチル、X、−ORb、シアノ、またはニトロ基によって任意に一置換される、低級アルキル、メチル、−CX3、−CHX2、−CH2X、−CH2−ORb、およびフェニルから選ばれ、ここで、Rbは、低級アルキル、ピリジル、およびフェニルから選ばれ、各Xは、ハロ基、通常はフルオロ、クロロ、またはブロモである。ある特定の、非限定的実施態様では、R10は、t−ブチル、またはトリフルオロメチルである。
【0022】
標識部分はさらに、別の保護された蛍光担体を含み、そのため、N−保護NH−ローダミン染料が、より大きなエネルギー転移染料ネットワークの一員とされてもよい。このようなエネルギー転移染料ネットワークは、従来技術で周知であり、分光特性が適合されるか、または、相互の相対的距離が調整される複数の蛍光担体の組み合わせを含み、そのため、ネットワークの中の一蛍光担体が、適切な波長の入射光によって励起されると、ネットワークの別の蛍光担体にその励起エネルギーを転移し、これが、次に、その励起エネルギーを、ネットワークのさらに別の蛍光担体に転移し、この過程を繰り返し、ネットワークの最後の受容蛍光担体による蛍光がもたらされる。このようなネットワークは、長いStokesシフトを持つ標識を生ずる。このようなネットワークでは、ネットワークの別の蛍光担体に励起を転移する、または供与する蛍光担体を、「ドナー」と呼ぶ。別の蛍光担体、およびそれに対するフルオレセイン試薬から励起エネルギーを受容する、またはアクセプトする蛍光担体は、「アクセプター」と呼ばれる。二つの染料しか含まない染料ネットワークでは、通常、一方の染料は、ドナーとして活動し、他方は、アクセプターとして活動する。三つ以上の、異なる染料を含む染料ネットワークでは、少なくとも一つの染料は、ドナーおよびアクセプターの両方として活動する。
【0023】
二つ、三つ、四つ、場合によってはさらに多くの染料を含むエネルギー転移染料ネットワークが従来技術で周知である(例えば、US2006/057565を参照)。これらのネットワークで使用され、固相合成オリゴヌクレオチドにおける使用のために好適に保護することが可能な染料であれば、いずれのものでも本明細書に記載される標識部分に含めることが可能である。
【0024】
本明細書に記載される合成および固相支持試薬のある実施態様では、標識部分はさらに、N−保護NH−ローダミンに対し適切に保護されたドナーを含む。脱保護されると、これらのドナーは、その励起エネルギーを、このNH−ローダミンに転移し、そのため、NH−ローダミンは、ドナーの励起と同時に蛍光を発射する。
【0025】
本明細書に記載される合成および固相支持試薬のある実施態様では、標識部分はさらに、N−保護NH−ローダミンに対し適切に保護されたアクセプターを含む。脱保護されると、これらのアクセプターは、ドナーNH−ローダミンから、その励起エネルギーを受容し、そのため、このアクセプターは、ドナーNH−ローダミンの励起と同時に蛍光を発する。
【0026】
ドナーまたはアクセプターの性質は、該標識部分を含むNH−ローダミンの性質に依存する。広範囲のローダミン染料においてドナーとして活動することが可能な蛍光担体の例は、従来技術において周知である。このようなドナーの非限定的例としては、キサンテン染料(例えば、フルオレセイン、ローダミン、およびロドール)、ピレン染料、クマリン染料(例えば、ヒドロキシおよびアミノクマリン)、シアニン染料、フタロシアニン染料、およびランテニド複合体が挙げられる。ローダミン染料においてアクセプターとして活動することが可能な蛍光担体の例も従来技術で周知である。このようなアクセプターの非限定的例としては、ローダミン染料、およびシアニン染料が挙げられる。オリゴヌクレオチドを合成するために用いられる合成条件、例えば、オリゴヌクレオチドの固相合成に通常用いられる亜リン酸トリエステル化学条件下における使用のために適切に保護することが可能なものであれば、これららの染料のいずれのものも、本明細書に記載される合成および固相支持試薬においてドナーまたはアクセプターとして使用することが可能である。
【0027】
エネルギーが、ドナーからアクセプターに転移される機序は決定的に重要ではない。このようなドナー−アクセプターペアが動作可能となるために必要なのは、アクセプターが、ドナーの励起に反応して蛍光を発することだけである。
【0028】
標識部分はさらに、非蛍光的アクセプターを含んでもよい。このような非蛍光的アクセプターは、該標識部分を含むNH−ローダミン、またはその他の蛍光染料(単数または複数)の蛍光の全体または一部を消光させるために使用することが可能である。本明細書に記載されるNH−ローダミンなどのローダミン染料の消光剤として活動することが可能な、そのような非蛍光成分の例としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、WO01/86001に記載される各種非蛍光消光剤、および、US2005/0164225に記載される各種非蛍光消光剤が挙げられる。なお、これらの開示を、引用により本明細書に含める。
【0029】
ある実施態様では、標識部分はさらに、本明細書で記載される、N−保護NH−ローダミン染料を含むドナー染料、または、フルオレセイン染料であって、その環外3’−および6’−酸素原子が、オリゴヌクレオチド合成条件、例えば、オリゴヌクレオチドの固相合成に通常用いられる亜リン酸トリエステル化学条件に対しては安定であるが、合成オリゴヌクレオチドを脱保護するために用いられる条件に対して不安定な保護基によって保護されるフルオレセイン染料を含む。好適な保護基は、従来技術で周知であり、例えば、ただしこれらに限定されないが、アシル基カルボン酸塩およびカルバミン酸塩が挙げられる。3’−および6’−環外酸素原子において保護基を含むフルオレセイン染料を、本明細書では「O−保護フルオレセイン」と呼ぶ。ある特異的、非限定的実施態様では、O−保護フルオレセインにおける保護基は、アシル基である。
【0030】
N−保護NH−ローダミン、またはO−保護フルオレセインドナー染料、およびN−保護NH−ローダミンアクセプター染料は、互いに様々な方向性において、直接またはリンカーを介して結合することが可能である。ある実施態様では、ドナーは、N−保護NH−ローダミンアクセプターの2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置に対し、その2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置を通じて、任意にリンカーの助けを借りて結合される。ある実施態様では、ドナーおよびアクセプターは、後の節においてさらに詳細に記載されるように、頭部対頭部、頭部対尾部、尾部対尾部、または側部対側部の方向性において相互に結合される。
【0031】
染料同士を連結する任意のリンカーは、オリゴヌクレオチド合成条件、例えば、オリゴヌクレオチドの固相合成に通常用いられる亜リン酸トリエステル化学条件に対して安定である原子および/または官能基である限り、事実上全ての組み合わせを含んでもよい。原子および/または官能基の組み合わせは、リンカーの特性および/または長さが望み通りとなるように注文に合わせて選択することが可能である。エネルギー転移染料ネットワーク利用という観点において、フルオレセインおよびローダミン染料を相互に結合するのに有用なリンカーは種々のものがあり、それらは従来技術において既知である(例えば、US2006/057565、米国特許第7,015,000号、米国特許第6,627,748号、米国特許第6,544,744号、米国特許第6,177,247号、米国特許6,150,107号、米国特許第6,028,190号、米国特許5,958,180号、米国特許第5,869,255号、米国特許第5,853,992号、米国特許5,814,454号、米国特許第5,804,386号、米国特許第5,728,528号、米国特許第5,707,804号、および米国特許第5,688,648号を参照されたい、なおこれらの開示を、引用により本明細書に含める)。これらのリンカーは全て、本明細書に記載される試薬において、O−保護フルオレセインをN−保護NH−ローダミンに結合するために使用することが可能である。ある実施態様では、リンカーは、その性質が剛性であり、長さが約8から16Aである。
【0032】
標識部分、リン酸エステル前駆体基、および合成試薬の任意の合成ハンドル、および、標識部分、固相支持体、および固相支持試薬の合成ハンドルは、各種基および成分が、それぞれの機能を実行する能力を妨げない限り、どのような方式、方向性で相互に結合させることも可能である。標識部分は、通常、該標識部分を構成する複数の染料のうちの一つの官能基に結合されるリンカーを通じて、特定の試薬を含む、他の成分または基の一つに結合されるか、またはそれとは別に、染料ネットワークの二つ以上の染料を連結するリンカーに結合される。標識部分が、単一のN−保護NH−ローダミン蛍光担体しか含まない実施態様では、該標識部分は、NH−ローダミン環に対し、該NH−ローダミン環の、閉じた、スピロラクトン形で存在する能力を妨げない限り、該環の任意の位置を介して試薬と結合することが可能である。適切な位置としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、環外窒素原子に隣接する炭素原子、または、フェニル成分上の原子、例えばローダミン染料の2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置が挙げられる。ある実施態様では、標識部分は、N−保護NH−ローダミン染料の5−、または6−位置を介して試薬の基または成分に結合される。
【0033】
標識部分が染料ネットワークを含む実施態様では、標識部分は、試薬の所望の機能を妨げない、ネットワークを構成する染料の内の任意の一つの任意の位置を介して試薬の任意の基または成分に対し、または、ネットワークの二つ以上の染料を連結するリンカーに対し連結されてもよい。標識部分が、N−保護NH−ローダミンアクセプターの外に、O−保護フルオレセインまたはN−保護NH−ローダミンドナーを含む、ある特定実施態様では、ドナーまたはアクセプターにおける任意の利用可能な位置、例えば、ドナーまたはアクセプターの2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置において、標識部分を、試薬の基または成分に連結させることが可能である。ある実施態様では、標識部分は、ドナーまたはアクセプターの5−または6−位置を介して、試薬の基または成分に連結される。
【0034】
ある実施態様では、標識部分はドナーと、N−保護NH−ローダミンアクセプターを連結するリンカーを介して、試薬の基または成分に連結される。
【0035】
別の局面では、本開示は、本明細書に記載される試薬の合成に有用な中間分子、本明細書に記載される試薬の製造法、本明細書に記載される試薬によって標識される化合物、例えば、標識オリゴまたはポリヌクレオチド、および、様々な背景における標識化合物の使用法を提供する。本開示の種々の局面の全てが、下記にさらに詳細に記述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
5.詳細な説明
前述の一般的説明、および後述の詳細な説明は、共に、例示と説明のためのみのものであって、本明細書に記載される組成物および方法を限定することを意図するものではないことを理解しなければならない。本開示において、「または」の使用は、別様に言明しない限り、「および/または」を意味する。同様に、「複数対象を含む」、「単数対象を含む」、「含む」、「単数対象を包含する」、「複数対象を包含する」、および「包含する」という用言は、限定的であることを意図するものではない。
【0037】
5.1 定義
本明細書で用いる場合、下記の用語および語句は、下記の意味を持つことが意図される。
【0038】
「アルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親アルカン、アルケン、またはアルキンの単一炭素原子から1個の水素原子が除去されることによって得られる、表示の炭素原子数(すなわち、C1−C6は、1から6個の炭素原子を意味する)を有する、飽和または不飽和、分枝または直鎖または環状の、一価の炭化水素ラジカルを指す。典型的アルキル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、メチル;エチル類、例えば、エタニル、エテニル、エチニル;プロピル類、例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル、シクロプロパン−1−イル、プロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル、シクロプロプ−1−エン−1−イル;シクロプロプ−2−エン−1−イル、プロプ−1−イン−1−イル、プロプ−2−イン−1−イルなど;ブチル類、例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブト−1−エン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブト−1−エン−1−イル、シクロブト−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブト−1−イン−1−イル、ブト−1−イン−3−イル、ブト−3−イン−1−イルなどが挙げられる。特定の飽和レベルが意図される場合は、下に定義されるように、「アルカニル」、「アルケニル」、および/または「アルキニル」などの名称が用いられる。本明細書で用いる場合、「低級アルキル」とは、(C1−C8)アルキルを意味する。
【0039】
「アルカニル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親アルカンの単一炭素原子から1個の水素原子が除去されることによって得られる、飽和した、分枝、直鎖または環状のアルキルを指す。典型的アルカニル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、メタニル;エタニル;プロパニル類、例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル(イソプロピル)、シクロプロパン−1−イルなど;ブタニル類、例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル(sec−ブチル)、2−メチル−プロパン−1−イル(イソブチル)、2−メチル−プロパン−2−イル(t−ブチル)、シクロブタン−1−イルなどが挙げられる。本明細書で用いる場合、「低級アルカニル」とは、(C1−C8)アルカニルを意味する。
【0040】
「アルケニル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親アルケンの単一炭素原子から1個の水素原子が除去されることによって得られる、少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を有する、不飽和の、分枝、直鎖または環状のアルキルを指す。この基は、二重結合(単数または複数)の周囲に、cisまたはtrans立体配座として存在してもよい。典型的アルケニル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、エテニル;プロペニル類、例えば、プロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル、プロプ−2−エン−2−イル、シクロプロプ−1−エン−1−イル;シクロプロプ−2−エン−1−イル;ブテニル類、例えば、ブト−1−エン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブト−1−エン−1−イル、シクロブト−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イルなどが挙げられる。本明細書で用いる場合、「低級アルケニル」とは、(C1−C8)アルケニルを意味する。
【0041】
「アルキニル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親アルキンの単一炭素原子から1個の水素原子が除去されることによって得られる、少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有する、不飽和の、分枝、直鎖または環状のアルキルを指す。典型的アルキニル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、エチニル;プロピニル類、例えば、プロプ−1−イン−1−イル、プロプ−2−イン−1−イルなど;ブチニル類、例えば、ブト−1−イン−1−イル、ブト−1−イン−3−イル、ブト−3−イン−1−イルなどが挙げられる。本明細書で用いる場合、「低級アルキニル」とは、(C2−C8)アルキニルを意味する。
【0042】
「アルキルジイル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親アルカン、アルケン、またはアルキンの単一炭素原子から1個の水素原子が除去されることによって得られるか、または、親アルカン、アルケン、またはアルキンの単一炭素原子から2個の水素原子が除去されることによって得られる、表示の炭素原子数(すなわち、C1−C6は、1から6個の炭素原子を意味する)を有する、飽和または不飽和の、分枝、直鎖または環状の、二価の炭化水素基を指す。この二つの、一価のラジカル中心、または、この二価のラジカル中心の各結合手は、同じまたは異なる原子と結合腕を形成することが可能である。典型的アルキジル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、メタンジイル;エチルジイル類、例えば、エタン−1,1−ジイル、エタン−1,2−ジイル、エテン−1,1−ジイル、エテン−1,2−ジイル;プロピルジイル類、例えば、プロパン−1,1−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロプロパン−1,2−ジイル、プロプ−1−エン−1,1−ジイル、プロプ−1−エン−1,2−ジイル、プロプ−2−エン−1,2−ジイル、プロプ−1−エン−1,3−ジイル、シクロプロプ−1−エン−1,2−ジイル、シクロプロプ−2−エン−1,2−ジイル、シクロプロプ−2−エン−1,1−ジイル、プロプ−1−イン−1,3−ジイルなど;ブチルジイル類、例えば、ブタン−1,1−ジイル、ブタン−1,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、2−メチル−プロパン−1,1−ジイル、2−メチル−プロパン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル;シクロブタン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,3−ジイル、ブト−1−エン−1,1−ジイル、ブト−1−エン−1,2−ジイル、ブト−1−エン−1,3−ジイル、ブト−1−エン−1,4−ジイル、2−メチル−プロプ−1−エン−1,1−ジイル、2−メタニリデン−プロパン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,4−ジイル、シクロブト−1−エン−1,2−ジイル、シクロブト−1−エン−1,3−ジイル、シクロブト−2−エン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブト−1−イン−1,3−ジイル、ブト−1−イン−1,4−ジイル、ブタ−1,3−ジイン−1,4−ジイルなどが挙げられる。特定の飽和レベルが意図される場合、アルカニルジイル、アルケニルジイル、および/またはアルキニルジイルという名称が用いられる。ある実施態様では、アルキジル基は、(C1−C8)アルキジルである。特定の実施態様は、ラジカル中心が、末端炭素にある、飽和、非環状アルカニルジイル基、例えば、メタンジイル(メタノ);エタン−1,2−ジイル(エタノ);プロパン−1,3−ジイル(プロパノ);ブタン−1,4−ジイル(ブタノ)(これらは、下記に定義するように、アルキレノとも呼ばれる)などを含む。本明細書で用いる場合、「低級アルキル」とは、(C1−C8)アルキルジイルを意味する。
【0043】
「アルキレン」は、それ自体、または別の置換基の一部として、直鎖または分枝親アルカン、アルケン、またはアルキンの、2個の末端炭素原子のそれぞれから、1個の水素原子が除去されることによって得られるか、または、親シクロアルキルの、2個の異なる環原子のそれぞれから1個の水素原子が除去されることによって得られる、2個の末端一価ラジカル中心を有する、直鎖、飽和または不飽和のアルキルジイル基を指す。ある特定のアルキレンにおける二重結合または三重結合の位置は、もしもある場合は、角型括弧において示される。典型的アルキレン基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、メチレン(メタノ);エチレン類、例えば、エタノ、エテノ、エチノ;プロピレン類、例えば、プロパノ、プロプ[1]エノ、プロパ[1,2]ジエノ、プロプ[1]イノなど;ブチレン類、例えば、ブタノ、ブト[1]エノ、ブト[2]エノ、ブタ[1,3]ジエノ、ブト[1]イノ、ブト[2]イノ、ブタ[1,3]ジイノなどが挙げられる。特定の飽和レベルが意図される場合、アルカノ、アルケノ、および/またはアルキノという名称が用いられる。ある実施態様では、アルキレン基は、(C1−C8)または(C1−C3)アルキレンである。特定実施態様は、直鎖の、飽和アルカノ基、例えば、メタノ、エタノ、プロパノ、ブタノなどを含む。本明細書で用いる場合、「低級アルキル」とは、(C1−C8)アルキレンを意味する。
【0044】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルカニル」、「ヘテロアルケニル」、「ヘテロアルキニル」、「ヘテロアルキルジイル」、および「ヘテロアルキレン」は、それ自体、または別の置換基の一部として、炭素原子の一つ以上が、独立に、同じ、または異なるヘテロ原子、またはヘテロ原子基によって置換される、それぞれ、アルキル、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アルキルジイル、およびアルキレン基を指す。炭素原子を置換することが可能な、典型的ヘテロ原子および/またはヘテロ原子基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、−O−、−S−、−S−O−、−NR’−、−PH−、−S(O)−、−SO2−、−S(O)NR’−、−SO2NR’−など、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ここで、R’は、水素か、または置換基、例えば、(C1−C8)アルキル、(C6−C14)アリール、または(C7−C20)アリールアルキルである。
【0045】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、それぞれ、「アルキル」および「ヘテロアルキル」基の環状形を指す。ヘテロアルキル基では、ヘテロ原子は、分子の残余部分に付着する位置を占めることが可能である。典型的シクロアルキル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、シクロプロピル;シクロブチル類、例えば、シクロブタニル、およびシクロブテニル;シクロペンチル類、例えば、シクロペンタニル、およびシクロペンテニル;シクロヘキシル類、例えば、シクロヘキサニル、およびシクロヘキセニルなどが挙げられる。典型的ヘテロシクロアルキル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、テトラヒドロフラニル(例えば、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イルなど)、ピペリジニル(例えば、ピペリジン−1−イル、ピペリジン−2−イルなど)、モルフォリニル(例えば、モルフォリン−3−イル、モルフォリン−4−イルなど)、ピペラジニル(例えば、ピペラジン−1−イル、ピペラジン−2−イルなど)などが挙げられる。
【0046】
「親芳香族環系」とは、共役π電子システムを有する、不飽和の単環または多環システムを指す。「親芳香族環系」の定義の中に指定されて含まれるのは、環のうちの一つ以上が芳香族であり、かつ、環のうちの一つ以上が、飽和か不飽和である、融合環システムであって、例えば、フルオレン、インダン、インデン、フェナレン、テトラヒドロナフタレンなどである。典型的親芳香族環系としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、テトラヒドロナフタレン、トリフェニレン、トリナフタレンなどが挙げられる。
【0047】
「アリール」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親芳香族環系の単一炭素原子から1個の水素原子が除去されることによって得られる、表示の炭素原子数(すなわち、C6−C14は、6から14個の炭素原子を意味する)を有する、一価の芳香族炭化水素基を指す。典型的アリール基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオロアンテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどの外、その、種々のヒドロ異性形が挙げられる。指定の例示アリールとして、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0048】
「アリールアルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、炭素原子に、ある実施態様では、末端、またはsp3炭素原子に結合する水素原子のうちの一つが、アリール基によって置換される非環状アルキル基を指す。典型的アリールアルキル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエテン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエテン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イルなどが挙げられる。ある指定の飽和度を有するアルキル成分が望まれる場合、アリールアルカニル、アリールアルケニル、および/またはアリールアルキニルという名称が用いられる。ある定められた数の炭素原子、例えば、(C7−C20)が言及される場合、その数字は、該アリールアルキル基を構成する炭素原子の全数を指す。
【0049】
「親ヘテロ芳香族環系」は、一つ以上の炭素原子が、それぞれ独立に、同じか、または異なるヘテロ原子基によって置換される親芳香族環系を指す。炭素原子を置換する、典型的ヘテロ原子、またはヘテロ原子基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、N、NH、P、O、S、S(O)、SO2、Siなどが挙げられる。具体的に「親ヘテロ芳香族環系」の定義の中に含まれるものは、環のうちの一つ以上が芳香族であり、環のうちの一つ以上が飽和または不飽和である、融合環システム、例えば、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなどである。さらに、「親ヘテロ芳香族環系」の定義の中に含まれるものは、一般的置換基を含む、認知済みの環、例えば、ベンゾピロン、および1−メチル−1,2,3,4−テトラゾルである。典型的親ヘテロ原子環システムとしては、例えば、ただしこれらに限定されないが、アクリジン、ベンジミダゾール、ベンジソキサゾール、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール、ベンゾフラン、ベンゾピロン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾキサキン、ベンゾキサゾール、ベンゾキサゾリン、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどが挙げられる。
【0050】
「ヘテロアリール」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親ヘテロ芳香族環系の単一原子から1個の水素原子が除去されることによって得られる、表示の数の環原子(例えば、「5−14員」とは、5から14個の環原子を意味する)を有する、一価のヘテロ芳香基を指す。典型的ヘテロアリール基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、アクリジン、ベンジミダゾール、ベンズイソキサゾール、ベンゾジオキサン、ベンゾジアキソール、ベンゾフラン、ベンゾピロン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾキサジン、ベンゾキサゾール、ベンゾキサゾリン、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどの外、その、種々のヒドロ異性形が挙げられる。
【0051】
「ヘテロアリールアルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、炭素原子に、ある実施態様では、末端、またはsp3炭素原子に結合する水素原子のうちの一つが、ヘテロアリール基によって置換される非環状アルキル基を指す。ある指定の飽和度を有するアルキル成分が意図される場合、ヘテロアリールアルカニル、ヘテロアリールアルケニル、および/またはヘテロアリールアルキニルという名称が用いられる。ある定められた数の原子、例えば、6−20員のヘテロアリールアルキルが言及される場合、その数字は、該アリールアルキル基を構成する原子の全数を指す。
【0052】
「ハロアルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、水素原子のうちの一つ以上が、ハロゲンによって置換されるアルキル基を指す。したがって、「ハロアルキル」という用語は、モノハロアルキル類、ジハロアルキル類、トリハロアルキル類など、過ハロアルキル類までを含めることが意図される。例えば、「(C1−C2)ハロアルキル」という表現は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1−フルオロエチル、1,1−ジフルオロエチル、1,2−ジフルオロエチル、1,1,1−トリフルオロエチル、パーフルオロエチルなどを含む。
【0053】
上に定義した基は、さらに別の周知の置換基を創出するために一般に用いられる、接頭語および/または接尾語を含んでもよい。具体的、非限定的例として、「アルキルオキシ」および/または「アルコキシ」は、式−OR’’の基を指し、「アルキルアミン」は、式−NHR’’の基を指し、「ジアルキルアミン」は、式−NR’’R’’の基を指し、ここで、各R’’は、アルキルである。
【0054】
5.2 例示実施態様
本開示は、ローダミン染料を含む標識部分を担持するオリゴヌクレオチドを化学的に合成するために使用することが可能な試薬を提供する。従来、一部は、オリゴヌクレオチドの段階的化学合成において一般的に用いられる合成および/または脱保護条件に対して安定なローダミン含有合成試薬の入手の難しさのために、ローダミン標識オリゴヌクレオチドを化学的に合成することが困難であった。現在、アセチル基などの塩基不安定な保護基でNH−ローダミン染料の環外アミン基を保護することによって、オリゴヌクレオチドの固相合成に一般的に用いられる化学的合成および脱保護条件に対して安定なN−保護NH−ローダミン染料が得られることが発見された。その結果、ローダミン染料を含む標識部分で標識したオリゴヌクレオチドを合成するために使用される試薬の中に、N−保護NH−ローダミンを組み込むことが可能となり、そのため、標識を合成後に付着させる必要が回避される。標識は合成時に付着されるので、得られる標識オリゴヌクレオチドは、HPLCを使用することなく使用に備えて精製することが可能である。
【0055】
この試薬は、オリゴヌクレオチドの、段階的固相合成に関して周知の、試薬および化学の各種特性を利用し、オリゴヌクレオチド鎖の段階的固相合成時、ヒドロキシル基に付着することが可能な合成試薬の形を取ることも可能であるし、あるいは、ヌクレオシドホスホロアミダイト試薬、および/または、任意の他の試薬などのヌクレオシドモノマー試薬が、合成オリゴヌクレオチドを生成するために、段階的に結合される固相支持試薬の形をとることが可能である。
【0056】
合成および固相支持体試薬は、ヌクレオシド成分を含むことが可能であるという意味で、その性質がヌクレオシド性であってもよいし、あるいは、性質が非ヌクレオシド性であってもよい。
【0057】
本明細書に記載される試薬は全て、N−保護NH−ローダミン染料または成分を含む、標識部分を含む。このN−保護NH−ローダミン染料は、標識部分を構成する唯一の染料であってもよいし、あるいは、より大きな染料ネットワークを構成する二つ以上の染料のうちの一つであってもよい。固相支持試薬はさらに、固相支持体、および、追加の基がそれに結合することが可能な、一つ以上の合成ハンドルを含む。合成試薬はさらに、該試薬を、一次ヒドロキシル基に結合させるのに有用なリン酸エステル前駆体基を含み、かつ、任意に一つ以上の合成ハンドルを含んでもよい。これらの試薬を構成する、各種成分および基は、それぞれの機能を実行することを可能とする限り、いずれの方式、方向性で互いに結合させることも可能である。それらは、成分に含まれる結合基を介して相互に結合されてもよいし、あるいは、リンカーの助けを借りて相互に結合されてもよい。
【0058】
本明細書に記載される試薬を構成する、各種成分、基、およびリンカーは、より詳細に下記に記載される。
【0059】
5.3 リンカーおよび結合基
本明細書に記載される試薬を構成する、各種の基および成分は、通常、リンカーによって互いに接続される。いずれのものであれ、ある特定のリンカーとして何を選ぶかは、一部は、互いに連結される成分の内容に依存する。一般に、リンカーは、標識オリゴヌクレオチドの合成のために用いられる合成条件、例えば、亜リン酸トリエステル法によってオリゴヌクレオチドを合成するために一般的に用いられる条件に対して安定なものである限り、原子または官能基同士の、事実上任意の組み合わせを含むことが可能な、スペーサ成分を含み、その構造は直線状、分枝状、または環状であってもよく、あるいは、直線、分枝、および/または環状構造の組み合わせを含んでもよい。このスペーサー成分は、モノマー性であってもよいし、あるいは、ポリマー性の領域であっても、ポリマー性領域を含んでもよい。スペーサー成分は、特定の性質、例えば、特定条件下に分断される能力、または、特定の、剛性度、屈曲度、疎水度、および/または親水度を持つように設計されてもよい。
【0060】
下記にさらに詳細に記載されるように、本明細書に記載される試薬の多くの実施態様は、合成素子を指定の方式で縮合し所望の試薬を生成することによって合成される。各合成素子は、通常、所望の結合を形成するのに好適な、一つ以上の連結基を含む。一般に、連結基は、別の官能基Fzと反応することが可能であるか、または、活性化されると該別の官能基と反応することが可能となり共有結合Y−Zを生成する、官能基Fyを含む。ここで、Yは、Fyによって寄与される結合部分を表し、Zは、Fzによって寄与される結合部分を表す。このような基FyおよびFzは、本明細書では、「相補的官能基」と呼ばれる。
【0061】
互いに共有的結合を形成することが可能な相補的官能基ペアは、従来技術で周知される。ある実施態様では、FyまたはFzの一方が求核基を含み、FyまたはFzの他方が求電子基を含む。各種合成条件およびその他の条件に対して安定な結合(または、適切に活性化されると結合を形成するか、または形成することが可能な、その前駆体)を形成するために有用な、相補的求核基および求電子基は、従来技術で周知である。本明細書に記載される各種試薬において結合を実行するために使用することが可能な、適切な相補的求核および求電子基の例、および、それらによって形成される結合が、下記の表1に示される。
【0062】
【表1−1】
【0063】
【表1−2】
*従来技術で理解される活性化エステルは、一般に−C(O)Ωを有し、式中Ωは、優れた脱離基(例えば、オシキスクシニミジル、オキシスルフォスクシニミジル、1−オキシベンゾトリアゾリルなど)である。
**アジ化アシルは再編成されてイソシアネートとなることが可能である。
【0064】
したがって、リンカーは、一般に式LG−Sp−LGによって記述することが可能であり、式中、各LGは、他方に対して独立に、結合基を表し、Spは、スペーサー成分を表す。ある実施態様では、リンカー合成素子は、式FZ−Sp−FZによって記述することが可能であり、各FZは、他方に対して独立に、前述のような、相補的求核または求電子官能基ペアの一員を表す。特異的実施態様では、各FZは、他方に対して独立に、上の第1表に挙げた基から選ばれる。この種のリンカー合成素子は、式−Z−Sp−Z−のリンカー成分を形成する。式中、各Zは、他方に対して独立に、前述の結合の一部を表す。
【0065】
本明細書に記載される試薬において指定の基および成分を互いに連結するために好適な特異的リンカーは、該試薬の例示実施態様に関連してさらに詳細に後述される。本明細書の記載される試薬を含む様々な基および成分をお互いに連結するために使用され得るリンカーの非制限例示実施態様は図2において示される、Z1およびZ2はそれぞれ、互いに独立に、前述の官能基FZによって担当される結合の一部を表し、Kは、−CHおよび−N−から選ばれる。図2に描かれるリンカーのある特異的実施態様では、Z1またはZ2の一方は−NHであり、他方は、−O−、−C(O)−、および−S(O)2−から選ばれる。
【0066】
5.4 標識部分
本明細書に記載される試薬は全て、環外アミン基において、特異的性質を有する保護基によって保護されるNH−ローダミン染料を含む標識部分を含む。一般に、ローダミン染料は、四つの主要な特性によって特徴づけられる。すなわち、(1)親キサンテン環;(2)環外アミン置換基;(3)環外イミニウム置換基;および(4)オルト位置においてカルボキシル基によって置換されるフェニル基である。環外アミンおよび/またはイミニウム基は、通常、親キサンテン環のC3およびC6炭素原子に配置される。もっとも、親キサンテン環が、C3およびC4炭素、および/またはC5およびC6炭素に融合するベンゾ基を含む「拡張型」ローダミンも知られている。これらの拡張型ローダミンでは、特徴的環外アミンおよびイミニウム基は、拡張型キサンテン環の対応位置に配置される。
【0067】
カルボキシル置換フェニル基が、親キサンテン環のC9炭素に付着される。オルトカルボキシル置換基があるために、ローダミン染料は、二つの異なる形態として存在することが可能である。すなわち、(1)開放型、酸性形および(2)閉鎖型、ラクトン形である。いかなる動作理論によって拘束されることも意図するものではないが、本明細書に記載される例示のN−保護NH−ローダミン染料のNMRスペクトラムは、染料のスピロラクトン形と一致するので、本明細書に記載される試薬の標識部分を構成するN−保護NH−ローダミン染料は、閉鎖型スピロラクトン形を取ると考えられる。したがって、各種ローダミンは、その未保護形も含めて、本明細書では、閉鎖型スピロラクトン形として描かれる。しかしながら、これは、単に便利のためだけであり、本明細書に記載される試薬を、染料のラクトン形に限定することを意図するものではない。
【0068】
閉鎖型スピロラクトン形では、親キサンテン環のAおよびC環は、芳香族性であり、C3’およびC6’置換基は共にアミンである。本明細書に記載される標識部分に含まれるローダミン染料の環外アミン基は、これらのアミン基が一次または二次アミンとなるように、未置換であるか、一置換される。このようなローダミン染料は、本明細書では「NH−ローダミン」と呼ばれる。したがって、本明細書で用いる「NH−ローダミン」は、一般に、下記の親NH−ローダミン環構造のうちの一つを含む。
【0069】
【化20】
上に示した親NH−ローダミン環では、ローダミン染料の閉鎖型スピロラクトン形について通常使用される番号付け通則にならって採用した任意の番号付け通則を用いて、種々の炭素原子に番号を付してある。この番号付けシステムは、ただ便利のためだけに使用するのであって、いかなる意味でも限定的であることを意図しない。
【0070】
構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)の親NH−ローダミン環では、R3’およびR6’は、環外アミンを置換する水素または置換基を表す。このR3’および/またはR6’置換基は、同じであっても異なっていてもよく、置換または未置換の、アルキル、アリール、またはアリールアルキル基を含んでもよい。それとは別に、R3’および/またはR6’は、隣接炭素原子に架橋される置換基を含み、そのため、図示の窒素原子が、5−または6−環原子を含む環の中に含まれるようになってもよい。その環は、飽和していても、または未飽和であってもよく、環原子のうちの一つ以上が置換されていてもよい。環原子(単複)が置換される場合、置換基は、通常、互いに独立に、低級アルキル、C6−C10アリール、およびC7−C16アリールアルキル基から選ばれる。それとは別に、二つの隣接環原子は、アリール架橋、例えば、ベンゾまたはナフト基の中に含まれてもよい。R3’および/またはR6’基が水素または低級アルキルであるか、または、隣接炭素原子と共に任意に置換される環の中に含まれる、構造式(Ia)による、親NH−ローダミン環を含むローダミン染料の、非限定的例示実施態様が、図1Aに示される。R3’およびR6’基が水素または低級アルキルであるか、または、隣接炭素原子と共に任意に置換される環の中に含まれる、構造式(Ic)による、親NH−ローダミン環を含むローダミン染料の、非限定的例示実施態様が、図1Bに示される。
【0071】
構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)による親NH−ローダミン環の位置C1’、C2’、C2’’、C4’、C4’’、C5’、C5’’、C7’、C7’’、およびC8’は、互いに独立に、置換基によって置換されてもよい。これらの位置においてローダミン染料を置換するのに有用な基は、従来技術において周知であり、例えば、米国特許第4,622,400号、米国特許第5,750,409号、米国特許第5,847,162号、米国特許第6,017,712号、米国特許第6,080,852号、米国特許第6,184,379号、および米国特許第6,248,884号に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。これらの置換基は全て、本明細書に記載される親NH−ローダミン環を置換するために使用することが可能である。
【0072】
ある実施態様では、置換基は、互いに独立に、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、5−14員ヘテロアリール、6−20員ヘテロアリールアルキル、−Rb、および、−(CH2)x−Rbで、式中、xは1から10の範囲の整数で、Rbは、−X、−OH、−ORa、−SH、−SRa、−NH2、−NHRa、−NRcRc、−N+RcRcRc、ペルハロ低級アルキル、トリハロメチル、トリフルオロメチル、−B(OH)3、−B(ORa)3、−B(OH)O−、−B(ORa)2O−、−B(OH)(O−)2、−B(ORa)(O−)2、−P(OH)2、−P(OH)O−、−P(ORa)2、−P(ORa)O−、−P(O)(OH)2、−P(O)(OH)O−、−P(O)(O−)2、−P(O)(ORa)2、−P(O)(ORa)O−、−P(O)(OH)(ORa)、−OP(OH)2、−OP(OH)O−、−OP(ORa)2、−OP(ORa)O−、−OP(O)(OH)2、−OP(O)(OH)O−、−OP(O)(O−)2、−OP(O)(ORa)2、−OP(O)(ORa)O−、−OP(O)(ORa)(OH)、−S(O)2O−、−S(O)2OH、−S(O)2Ra、−C(O)H、−C(O)Ra、−C(S)X、−C(O)O−、−C(O)OH、−C(O)NH2、−C(O)NHRa、−C(O)NRcRc、−C(S)NH2、−C(O)NHRa、−C(O)NRcRc、−C(NH)NH2、−C(NH)NHRa、および−C(NH)NRcRcから選ばれ、ここで、Xはハロであり(好ましくは、フルオロ、またはクロロであり)、各Raは、他と独立に、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、5−14員ヘテロアリール、および6−20員ヘテロアリールアルキルから選ばれ、各Rcは、他と独立に、Raであるか、またはそれとは別に、同じ窒素原子に結合する二つのRcは、その窒素原子と一緒になって、5−8員の飽和または未飽和の環であって、通常、O、N、およびSから選ばれる、同じまたは異なる環ヘテロ原子のうちの一つ以上を任意に含んでよい環を形成してもよい。
【0073】
それとは別に、C1’およびC2’置換基、C7’およびC8’置換基、C5’およびC5’’置換基、および/またはC4’およびC4’’置換基は、C1’およびC2’置換基、およびC7’およびC8’置換基が、アリール架橋に同時に含まれない限り、一緒に合わされて、置換または未置換のアリール架橋、例えば、ベンゾ架橋を形成することが可能である。
【0074】
一般に、C1’、C2’、C2’’、C4’、C4’’、C5’、C5’’、C7’、C7’’、およびC8’を置換するために用いられる基は、ローダミン染料の反応停止を促進してはならない。ただし、ある実施態様では、反応停止性置換基が望ましい場合がある。ローダミン染料の反応を停止する傾向のある置換基としては、カルボニル、カルボキシレート、重金属、ニトロ、ブロモ、およびイオドが挙げられる。R3’および/またはR6’に配置されるフェニル基も、反応停止を招く傾向がある。
【0075】
さらに、構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)の、親NH−ローダミン環の位置C4、C5、C6、およびC7の炭素原子は、互いに独立に、任意の置換基を含んでもよい。これらの置換基は、前述の種々の置換基の中から選ぶことが可能である。ある実施態様では、位置C4およびC7の炭素原子がクロロ基によって置換され、そのため、親NH−ローダミン染料は、NH−4,7−ジクロロローダミン染料となる。
【0076】
本明細書に記載される試薬の標識部分の中に含めることが可能な、構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)による親NH−ローダミン環を含むローダミン染料は、莫大な数のものが従来技術で知られており、例えば、米国特許第6,248,884号、米国特許第6,111,116号、米国特許第6,080,852号、米国特許第6,051,719号、米国特許第6,025,505号、米国特許第6,017,712号、米国特許第5,936,087号、米国特許第5,847,162号、米国特許第5,840,999号、米国特許第5,750,409号、米国特許第5,366,860号、米国特許第5,231,191号、米国特許第5,227,487号、WO97/36960;WO99/27020;Lee et al.,1992,Nucl.Acids Res.20:2471−2483;Arden−Jacob,“Neue Lanwellige Xanthen−Farbstoffe fuer Fluoreszenzsonden und Farbstoff Lauer,Springer−Verlag,Germany,1993;Sauerら、1995,Fluorescence 5:247−261;Leeら、1997,Nucl.Acids Res.25:2816−2822;および Rosenblumら、1997,Nucl.Acids Res.25:4500−4504に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。これらの参考文献の中に記載されるもので、環外アミンが、本明細書に記載されるような一次または二次アミン、もしくは上記NH−ローダミン染料の4,7−ジクロロ類似体である染料は、いずれのものであっても、本明細書に記載される試薬の標識部分の中に含めることが可能である。
【0077】
標識部分の中に含まれる場合、親NH−ローダミン環の環外アミンは、指定の特性を有する保護基によって保護される。このように保護されたNH−ローダミンを、本明細書では、「N−保護NH−ローダミン」と呼ぶ。構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)の、親NH−ローダミン環に対応するN−保護NH−ローダミンは、下記に、構造式(IIa)、(IIb)、および(IIc)として示される。
【0078】
【化21】
構造式(IIa)、(IIb)、および(IIc)において、R’は水素またはR3’であり、R’’は水素またはR6’であり、R3’およびR6’は、上の構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)で定義した通りであり、R9は保護基を表す。このN−保護NH−ローダミンは、構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)による親NH−ローダミン環に関連して前述したように、位置C1’、C2’、C2’’、C4’、C4’’、C5’、C5’’、C7’、C7’’、C8’、C4、C5、C6、およびC7の一つ以上において置換基を含むことが可能である。
【0079】
本明細書に記載される試薬は、標識オリゴヌクレオチドを化学的に合成するために使用するのであるから、オリゴヌクレオチドを合成するために使用される有機合成条件に対して安定な保護基R9を使用しなければならない。前述したように、アミドとして、例えば、カルボキサミド、スルフォナミド、または、フォスフォルアミドとしてアミンを保護する保護基R9は、保護NH−ローダミンを、閉鎖型ラクトン形に「ロック」し、そうすることによって本明細書に記載される試薬の安定性を確保すると考えられる。必要とされるわけではないが、合成オリゴヌクレオチドの核酸塩基の環外アミンを保護する基を除去するために用いられる条件下では不安定になる保護基R9を利用すると便利である。その場合、全ての保護基を単一工程で除去することが可能となるからである。
【0080】
オリゴヌクレオチドを合成し、合成オリゴヌクレオチドを脱保護するために用いられる条件は、従来技術で周知であり、例えば、Nucleic Acid Chemistry,Vol.I,Beancageら、Eds.,John Wiley & Sons,2002の、Current Protocolsに記載される。なお、この開示を引用により本明細書に含める。簡単に言うと、ホスホロアミダイト試薬を用いる合成法は、複数回の:(i)遊離ヒドロキシルを開放するためのDMT脱保護、これは、ジクロロメタンに溶解した、2.5%または3%ジーまたはトリクロロ酢酸による処理によって実現が可能であり;(ii)この遊離ヒドロキシルに対する、ヌクレオシド、または他のホスホロアミダイト試薬の結合、これは、0.45Mまたは0.5Mのテトラゾールを含むアセトニトリル中で実行することが可能であり;(iii)酸化、これは、I2/2,6−ルチジン/H2Oによる処理によって実行することが可能であり;および、キャップ形成、これは、テトラヒドロフランに溶解した6.5%無水酢酸による処理、次いで、THFに溶解した、10% 1−メチルイミダゾール(NMI)による処理によって実行することが可能である。
【0081】
合成における種々の工程を実行するための、他の条件も既知であり、使用されている。例えば、ホスホロアミダイト結合は、0.25M 5−エチルチオ−1H−テトラゾール、0.25M 4,5−ジシアノイミダゾール(DCI)、または0.25M 5−ベンジルチオ−1H−テトラゾール(BTT)を含むアセトニトリル中で実行することが可能である。酸化は、THF/H2O/ピリジン(7:2:1)に溶解した、0.1M、0.05M、または0.02M I2において実行することが可能である。キャップ形成は、THF/ルチジン/無水酢酸により処理、次いでTHFに溶解した16% NMIによる処理;THFに溶解した6.5% DMAPによる処理、次いで、THFに溶解した10% Melmによる処理、または、THFに溶解した10% Melmによる処理、次いで、THFに溶解した16% Melmによる処理によって実行することが可能である。
【0082】
合成試薬からの保護基の除去および切断は、通常、濃縮水酸化アンモニウムによる60℃で1−12時間の処理によって与えられる。ただし、より穏やかな条件下で、例えば、濃縮水酸化アンモニウムによる室温で4−17時間の処理、またはメタノールに溶解した0.05M炭酸カリウムによる処理、または、H2O/EtOHに溶解した25% t−ブチルアミンによる処理で除去することが可能な基によって保護される、ヌクレオシドホスホロアミダイト試薬も既知であり、使用される。
【0083】
当業者であれば、特定の合成および脱保護および/または切断条件下で使用するのに好適な特性を持つ保護基を選択することは容易に可能であろう。多種多様なアミン保護基が、例えば、Green & Wuts,“Protective Groups In Organic Chemistry,” 3rd Edition,John Wiley & Sons,1999 (以後”Green & Wuts”と呼ぶ)の、例えば、309−405ページに教示される。当業者であれば、Green & Wutsにおいて教示されるものの中から適正な特性を有するR9を選択することは容易に可能である。
【0084】
ある実施態様では、保護基R9は、式−C(O)R10のアシル基である。この式において、R10は、水素、低級アルキル、メチル、−CX3、−CHX2、−CH2X、−CH2−ORd、および、低級アルキル、メチル、−X、−ORd、シアノ、またはニトロ基によって任意に一置換されるフェニルから選ばれ、ここで、Rdは、低級アルキル、フェニル、およびピリジルから選ばれ、各Xは、ハロ基、通常フルオロ、またはクロロである。ある実施態様では、R10は、メチルである。ある実施態様では、R10は、トリフルオロメチルである。
【0085】
−C(O)R10によって定義されるようなアシル保護基は、種々の塩基性条件下、例えば、従来技術で周知の、「塩基性不安定な」ホスホロアミダイト試薬によって合成されたオリゴから保護基を除去するために用いられる穏やかな条件を含む条件下に除去することが可能である。使用が可能な例示の条件は上に具体的に記述された。
【0086】
後の節により詳細に記載されるように、標識部分を含むN−保護NH−ローダミン部分は、他の基または成分に連結されてもよい。例えば、N−保護NH−ローダミンは、標識部分を含む別の染料、リン酸エステル前駆体基、リンカー、合成ハンドル、反応停止基、塩基ペア相互作用を安定化するように働く成分(例えば、介在染料、または小溝(minor groove)結合分子)に対して連結されてもよい。このような結合は、通常、試薬を合成するために使用されるN−保護NH−ローダミン合成素子に付着する連結基LG(リンカーと関連して上述した)を介して実行される。
【0087】
連結基LGは、利用可能ならば、N−保護NH−ローダミン合成素子のいずれの炭素原子に対しても、または、それら炭素原子のうちの一つに付着する置換基に対し付着することが可能である。連結基の位置は、一部は、そのN−保護NH−ローダミン合成素子が付着する基または成分に依存する。ある実施態様では、連結基は、N−保護NH−ローダミン合成素子のC2’、C2’’、C4’、C5’、C7’、C7’’、C5、またはC6位置に付着する。ある特定の実施態様では、連結基は、C4’、C5’、C5、またはC6位置において付着する。
【0088】
N−保護NH−ローダミン合成素子は、単一連結基LGを含んでもよいし、または、一つを超える連結基LGを含んでもよい。一つを超える連結基を用いる実施態様では、それらの連結基は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。互いに異なる複数の連結基LGを含む、N−保護NH−ローダミンシステムは、直交座標化学を用い、親NH−ローダミンの異なる位置に異なる基または成分を付着させてもよい。
【0089】
連結基を何にするかは、ある場合には、親NH−ローダミン環におけるその位置に依存する。連結基LGが、親NH−ローダミン環のC4’−またはC5’−位置に付着する、ある実施態様では、連結基LGは、式−(CH2)n−Fyの基である。この式において、nは、0から10の範囲の整数であり、Fyは前述の通りである。ある特定の実施態様では、nが1であり、Fyは−NH2である。
【0090】
連結基LGが、親NH−ローダミン環の5−または6−位置に付着する、ある実施態様では、連結基LGは、式−(CH2)n−C(O)ORfであり、式中、Rfは、水素および優れた脱離基から選ばれ、nは前に定義した通りである。ある特異的実施態様では、連結基LGは、NHSエステルを含む。ある特定実施態様では、nは0であり、RfはNHSである。
【0091】
ある実施態様では、本明細書に記載される各種試薬の標識部分を含む、N−保護NH−ローダミンは、下記の構造式(IIIa)、(IIIb)、または(IIIc)によって記述される。
【0092】
【化22】
ここで:
R’は、R3’および水素から選ばれ;
R’’は、R6’および水素から選ばれ;
R9は、任意に式−C(O)R10のアシル保護基であり、式中R10は上に定義した通りであり;
R1’、R2’、R2’’、R4’、R4’’、R5’、R5’’、R7’、R7’’、およびR8’は、単独で占める場合、それぞれ、互いに独立に、水素、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、5−14員ヘテロアリール、6−20員ヘテロアリールアルキル、−Rb、および−(CH2)x−Rbから選ばれ、ここでxおよびRbは上に定義した通りであり、または、それとは別に、R1’およびR2’、またはR7’およびR8’は、それらが結合する炭素原子と一緒に合わされて、ベンゾ基を形成するか、および/または、R4’およびR4’’、および/またはR5’およびR5’’は、それらが結合する炭素原子と一緒に合わされてベンゾ基を形成し;
R3’およびR6’は、単独で占める場合、それぞれ、互いに独立に、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、5−14員ヘテロアリール、および6−20員ヘテロアリールアルキルから選ばれ、または、それとは別に、構造式(IIIa)の化合物におけるR3’およびR2’、またはR4’および/またはR6’、およびR5’またはR7’、構造式(IIIb)の化合物におけるR3’およびR2’、またはR4’および/またはR6’、およびR5’またはR7’’、または、構造式(IIIc)の化合物におけるR3’およびR2’’、またはR4’および/またはR6’、およびR5’またはR7’’は、その結合する原子と一緒に合わされて、1から4個のヘテロ原子(通常、O、N、およびSから選ばれる)を任意に含んでもよく、かつ、同じか、または異なる低級アルキル、ベンゾ、またはピリド基のうちの一つ以上によって任意に置換される、5−または6−員の、飽和または不飽和環を形成し;および、
R4、R5、R6、およびR7は、それぞれ、互いに独立に、水素、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、6−14員ヘテロアリール、7−20員ヘテロアリールアルキル、−Rb、および−(CH2)x−Rbから選ばれ、ここでxおよびRbは上に定義した通りであり、
ただし、構造式(IIIa)の化合物におけるR2’、R4’、R5’、R7’、R5、またはR6のうちの少なくとも一つ、構造式(IIIb)の化合物におけるR2’、R4’、R5’、R7’’、R5、またはR6のうちの少なくとも一つ、構造式(IIIc)の化合物におけるR2’’、R4’、R5’、R7’’、R5、またはR6のうちの少なくとも一つが、式−Y−の基を含み、Yは、前述の官能基Fyを含む連結基によって与えられる結合の一部を表す。
【0093】
ある実施態様では、本明細書に記載される各種試薬の標識部分を含むN−保護NH−ローダミンは、4,7−ジクロロR6G(5−および/または6−異性形)、および/または、構造式(IIIa)によって記載されるローダミンであって、そこにおいて:
R’およびR’’がそれぞれエチルであり;
R1’、R4’、R5’、およびR6’がそれぞれ水素であり;
R2’、およびR7’がそれぞれメチルであり、
R4、およびR7がそれぞれクロロであり、
R5、またはR6の内の一方が水素で、他方が−C(O)−である
ローダミンを排除する。
【0094】
ある実施態様では、構造式(IIIa)、(IIIb)、および(IIIc)による、N−保護NH−ローダミン部分は、それぞれ、下記の構造式(IIIa.1)、(IIIa.2)、(IIIb.1)、(IIIb.2)、(IIIc.1)、および(IIIc.2)によって定義される成分から選ばれる:
【0095】
【化23】
ここで、R’、R’’、R1’、R2’、R2’’、R3’、R4’、R4’’、R5’、R5’’、R6’、R7’、R7’’、R8’、R4、R5、R6、R7、R9、およびYは、構造式(IIIa)、(IIIb)、および(IIIc)に関して以前に定義された通りである。
【0096】
構造式(IIIa)、(IIIa.1)、(IIIa.2)、(IIIb)、(IIIb.1)、(IIIb.2)、(IIIc)、(IIIc.1)、および(IIIc.2)によって定義される成分の、特異的例示の実施態様は、下記から選ばれる一つ以上の適用可能な特徴を有する構造を含む、すなわち:
(i)Yは、−C(O)−、−S(O)2−、−S−、および−NH−から選ばれ;
(ii) R4およびR7は、それぞれ、クロロであり;
(iii) R1’およびR8’は、それぞれ、水素であり;
(iv) R1’およびR2’、または、R7’およびR8’は、一緒に合わされてベンゾ基を形成し;
(v) R2’およびR7’は、それぞれ、水素または低級アルキルであり;
(vi) R’はR3’であり、かつ、R’’はR6’であり;
(vii) R’はR3’であり、R’’はR6’であり、かつ、R3’およびR6’は、隣接炭素原子における置換基と一緒に合わされて、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−C(CH3)2CH=C(CH3)−、−C(CH3)2CH=CH−、−CH2−C(CH3)2−、および
【0097】
【化24】
から選ばれる基を形成する。
【0098】
前述したように、標識部分は、さらに、一つ以上の染料を含み、そのため、N−保護NH−ローダミン染料が、一旦脱保護された場合、より大きなエネルギー転移染料ネットワークの一員となるようにされてもよい。このようなエネルギー転移染料ネットワークは、従来技術で周知であり、分光特性が適合されるか、または、相互の相対的距離が調整される複数の蛍光染料の組み合わせを含み、そのため、ネットワークの中の一蛍光染料が、適切な波長の入射光によって励起されると、ネットワークの別の蛍光染料にその励起エネルギーを転移し、これが、次に、その励起エネルギーを、ネットワークのさらに別の蛍光担体に転移し、この過程を繰り返し、ネットワークの最後の受容蛍光染料による蛍光がもたらされる。染料ネットワークは、長いStokesシフトを持つ標識部分を生ずる。このようなネットワークでは、ネットワークの別の蛍光担体に励起を転移する、または供与する蛍光担体を、「ドナー」と呼ぶ。別の蛍光担体から励起エネルギーを受容する、またはアクセプトする蛍光担体は、「アクセプター」と呼ばれる。二つの蛍光染料しか含まない染料ネットワークでは、通常、一方の染料は、ドナーとして活動し、他方は、アクセプターとして活動する。三つ以上の染料を含む染料ネットワークでは、少なくとも一つの染料は、ドナーおよびアクセプターの両方として活動する。染料ネットワークがどのように働くのかの原理、および、そのようなネットワークを創製するために適切な、個々の染料の選択および連結のための基準は、周知であり、例えば、Hungら、1997,Anal.Biochem.252:78−88に記載される。
【0099】
染料ネットワークを構成する、本明細書に記載される標識部分では、N−保護NH−ローダミン染料は、脱保護されると、ネットワークを構成する他の染料の機能、所望の事象、および蛍光波長に応じて、ドナーまたはアクセプターとして、またはドナーおよびアクセプターの両方として活動する。NH−ローダミン染料のためにドナーおよび/またはアクセプターとして使用するのに好適な染料は、膨大な数のものが既知であるが、例えば、ただし限定されないが、キサンテン染料(例えば、フルオレセイン、ローダミン、およびロードル染料)、ピレン染料、クマリン染料(例えば、ヒドロキシ−、およびアミノ−クマリン)、シアニン染料、フタロシアニン染料、およびランテニド複合体が挙げられる。エネルギー転移染料ネットワークにおいて利用が可能な染料の非限定的例が、Hungら、1996,Anal.Biochem.238:165−170;Medintzら、2004,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 101(26):9612−9617;米国特許第5,800,996号;Suchakerら、2003,Nucleosides,Nucleotides & Nucleic Acids 22:1443−1445;米国特許第6,358,684号;Majumdarら、2005,J.Mol.Biol.351:1123−1145;Dietrichら、2002,Reviews Mol.Biotechnology 82(3):211−231;Tsujiら、2001,Biophysical J.81(1):501−515;Dicksonら、1995,J.Photochemistry & Photobiology 27(1):3−19;および Kumarら、2004,Developments in Nucl.Acid Res.1:251−274に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。本明細書に記載される原理にしたがって適切に保護することが可能な染料は、いずれのものであっても、染料ネットワークを構成する標識部分のドナーおよびアクセプター染料として使用することが可能である。ある実施態様では、ネットワークを構成するドナーおよび/またはアクセプター染料のうちの一つ以上は、本明細書に記載されるN−保護NH−ローダミン染料であってもよい。染料ネットワークを形成するために、ドナーおよび/またはアクセプター染料をローダミン染料に付着させるための特定位置、および、そのような染料を付着させるために有用な特定結合およびリンカーは、従来技術において周知である。具体的例が、例えば、米国特許第6,811,979号、米国特許第6,008,379号、米国特許第5,945,526号、米国特許第5,863,727号、および米国特許第5,800,996号に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。
【0100】
ある実施態様では、ドナーおよびアクセプター染料を連結するリンカーは、米国特許第6,811,979号に記載されるような陰イオンリンカーである。なお、この開示を引用により本明細書に含める(例えば、コラム17、25行からコラム18、37行まで、および図1−17を参照)。
【0101】
本明細書に記載される試薬のある実施態様では、標識部分は、NH−ローダミン染料のためのドナー染料を含む。ある実施態様では、ドナー染料は、フルオレセインまたはローダミン染料、例えば、本明細書に記載されるNH−ローダミン染料のうちの一つである。ある特定実施態様では、ドナー染料は、フルオレセイン染料である。フルオレセイン染料は、親キサンテン環の3−および6−位置(構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)のNH−ローダミン環の3’−および6’−位置に対応する)がヒドロキシル基によって置換されることを除き、ローダミン染料と構造的に近似する。ローダミン同様、フルオレセインも、拡張型環構造であって、親のキサンテン環の位置C3およびC4および/またはC5およびC6の炭素原子が、ベンゾ基などのアリール架橋に含まれる構造を持つことも可能である。したがって、フルオレセインは、一般に、下記の構造式(IVa)、(IVb)、および(IVc)による化合物を含む:
【0102】
【化25】
NH−ローダミン同様、構造式(IVa)、(IVb)、および(IVc)のフルオレセイン環の位置C1’、C2’、C2’’、C4’、C4’’、C5’、C5’’、C7’、C7’’、C8’、C4、C5、C6、およびC7における炭素は、種々の異なる置換基、例えば、NH−ローダミンに関して前述したものによって置換されてもよい。
【0103】
本明細書に記載される標識部分に含まれる場合、C3’およびC6’位置におけるヒドロキシルは、前述のNH−ローダミンの環外アミンを保護する基と、一般的に同様の特性を持つ保護基によって保護しなければならない。したがって、特定実施態様では、保護基は、
オリゴヌクレオチドを合成するために用いられる条件、例えば、亜リン酸トリエステル法による、オリゴヌクレオチド合成および酸化に用いられる条件に対しては安定であるが、合成オリゴヌクレオチドの脱保護および/または、合成樹脂からの合成オリゴヌクレオチドの切り離しのために通常用いられる条件、例えば、室温または55℃での濃縮水酸化アンモニウムにおけるインキュベーションに対しては不安定である。
【0104】
適切な特性を持つ保護基は、莫大な数のものが従来技術では既知であるが、例えば、ただし限定されないが、N−保護NH−ローダミン染料に関連して前述したアシル基が挙げられる。ある特定実施態様では、保護基は、−C(O)−R10を有し、R10は前に定義した通りである。ある実施態様では、R10はt−ブチルである。C3’およびC6’の環外ヒドロキシルが保護基を含むフルオレセインを、本明細書では、「O−保護フルオレセイン」と呼ぶ。それぞれ、構造式(IVa)、(IVb)、および(IVc)のフルオレセインに対応する、O−保護フルオレセインを、下記の構造式(Va)、(Vb)、および(Vc)として示す:
【0105】
【化26】
ここで、R9は保護基を表す。
【0106】
適切に保護され、NH−ローダミン部分に対するドナーとして使用するために標識部分の中に組み込むことが可能なフルオレセイン染料については、莫大な数の種々のものが従来技術で知られる。具体的な例示の蛍光染料が、例えば、米国特許第6,221,604号、米国特許第6,008,379号、米国特許第5,840,999号、米国特許第5,750,409号、米国特許第5,654,441号、米国特許第5,188,934号、米国特許第5,066,580号、米国特許第4,481,136号、米国特許第4,439,356号、WO99/16832;およびEP 0 050 684に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。当業者であれば、特異的NH−ローダミンに対するドーナーとして使用するのに好適な分光特性を有するフルオレセインを選ぶことは可能であろう。本明細書に記載される試薬の標識部分の中に組み込んでもよい親フルオレセイン染料の特異的実施態様が図1Cに示される。
【0107】
ドナー、およびN−保護NH−ローダミンアクセプターは、様々な方向性において、直接に、またはリンカーを介して、互いに連結させることが可能である。ドナーが、O−保護フルオレセイン、またはN−保護NH−ローダミンである、ある実施態様では、ドナーは、2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置を介して、N−保護NH−ローダミンアクセプターの2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置に連結される。
【0108】
特異的例示の結合方向性を下記の表2に示す。
【0109】
【表2】
表2のドナー−アクセプター染料ネットワークのような、染料ネットワークを含む標識部分は、利用可能な任意の位置において試薬の残余部に連結させることが可能である。ある実施態様では、頭部対頭部連結アクセプター/ドナーペアを含む標識部分は、ドナーまたはアクセプター部分の5−または6−位置を介して試薬の残余部に付着される。ある実施態様では、頭部対尾部連結アクセプター/ドナーペアを含む標識部分は、ドナーまたはアクセプター部分の、利用可能な4’−、5’−、5−、または6−位置を介して試薬の残余部に付着される。ある実施態様では、尾部対尾部連結アクセプター/ドナーペアを含む標識部分は、ドナーまたはアクセプターの、利用可能な4’−、または5’−位置を介して試薬の残余部に付着される。ある実施態様では、側部対側部連結アクセプター/ドナーペアを含む標識部分は、ドナーまたはアクセプターの、4’−、5’−、5−、または6−位置を介して試薬の残余部に付着される。ある実施態様では、側部対頭部連結アクセプター/ドナーペアを含む標識部分は、ドナーまたはアクセプターの、4’−、5’−、5−、または6−位置を介して試薬の残余部に付着される。ある実施態様では、側部対尾部連結アクセプター/ドナーペアを含む標識部分は、ドナーまたはアクセプターの、利用可能な4’−、5’−、5−、または6−位置を介して試薬の残余部に付着される。
【0110】
その方向性によらず、O−保護フルオレセイン、またはN−保護NH−ローダミンドナー、およびN−保護NH−ローダミンアクセプターは、通常、リンカーを介して互いに連結される。このようなドナーおよびアクセプター染料は、性質が剛性で、比較的長い、例えば、長さが約12−20Aの範囲(本明細書で用いる、リンカーの「長さ」とは、連結される成分間の、最短の連続経路を定義する化学結合の長さの合計を計算することによって定量される、連結される成分間の距離を指す)のリンカーを介して連結するのが有利であることが以前に見出されている。いずれの動作理論によっても、それに拘束されることを意図するものではないが、ドナーとアクセプターを、その発色団を互いに接触させることなく互いにごく近傍に保持する傾向を持つリンカーは、優れて効率的なエネルギー転移を実現すると考えられる。この点で、リンカーの剛性および長さは結合パラメータである。一般に、短いリンカーほど(例えば、約5から12Aの長さを持つリンカー)、程度の高い剛性を含まなければならない。長いリンカーほど(例えば、約15から30Aの範囲の長さを持つリンカー)、程度の低い剛性を含むことが可能であり、場合によっては剛性を含まないことも可能である。短い、無剛性(柔軟性)リンカーは避けなければならない。
【0111】
剛性は、結合手の周囲の回転角が制限される基を使用することによって、例えば、二重および/または三重結合を含む、アリーレンまたはヘテロアリーレン成分、および/またはアルキレン成分を使用することによって実現することが可能である。エネルギー転移染料利用という観点においてローダミンおよびフルオレセイン染料を連結するのに有用な、各種リンカーは、従来技術で既知であり、例えば、米国特許第5,800,996号に記載される。この開示を引用により本明細書に含める。本明細書に記載される標識部分において、O−保護フルオレセイン、またはN−保護NH−ローダミンドナーを、N−保護NH−ローダミンアクセプターに連結させるのに有用なリンカーの特異的例として、例えば、ただし限定されないが、下式の基が挙げられる:
(L.1) −Z−(CH2)a−[(Ar)b−(CH2)a]c−Z−;
(L.2) −Z−(CH2)a−[C≡C−(CH2)a]c−Z−;
(L.3) −Z−(CH2)a−[C≡C−(Ar)b]c−(CH2)a−Z−;
(L.4) −Z−(CH2)a−NH−C(O)−[(CH2)a−(Ar)−(CH2)a−C(O)−NH]c−(CH2)a−Z−;および、
(L.5)−Z−[CH2(CH2)eO]−CH2(CH2)eO−。
【0112】
ここで、Zは、前述のように、他とは独立して、連結基Fzの担当する結合部分を表し;各aは、他とは独立して、0から4の範囲の整数を表し;各bは、他とは独立して、1から2の範囲の整数を表し;各cは、他とは独立して、1から5の範囲の整数を表し;各dは、他とは独立して、1から10の範囲の整数を表し;各eは、他とは独立して、1から4の範囲の整数を表し;各fは、他とは独立して、1から10の範囲の整数を表し;かつ、各Arは、他とは独立して、任意に置換される単環または多環のシクロアルキレン、シクロヘテロアルキネン、アリーレン、またはヘテロアリーレン基を表す。Arの非限定的例示の実施態様としては、前述したような、低級シクロアルカン、低級シクロヘテロアルカン、親芳香族環系、および親ヘテロ芳香族環系由来の基が挙げられる。Arの、特異的、非限定的例示実施態様としては、シクロヘキサン、ピペラジン、ベンゼン、ナフタレン、フェノール、フラン、ピリジン、ピペリジン、イミダゾール、ピロリジン、およびオキサジゾールが挙げられる。リンカーの、特異的、非限定的例示実施態様が、図2に示される。図2において、Z1およびZ2は、前述のように、互いに独立に、連結基Fzの担当する結合部分を表し、Kは、−CHおよび−N−から選ばれる。図2に示すリンカーのある特定実施態様では、Z1またはZ2の一方は−NH−であり、他方は、−O−、−C(O)−、および−S(O)2−から選ばれる。
【0113】
ある実施態様では、ドナーおよびアクセプター染料を連結するリンカーは、米国特許第6,811,979号に記載されるように、陰イオンリンカーである。なお、この開示を引用により本明細書に含める(例えば、コラム17、25行からコラム18、37行まで、および図1−17を参照)。好適な陰イオンリンカーの、特異的、非限定的、例示の実施態様は、上の式(L.1)から(L.4)のリンカーを含む。この式において、一つ以上のAr基が、例えば、約pH7から約pH9の範囲のpHにおいて使用される条件下で、陰性電荷を有する、一つ以上の置換基によって置換される。好適な置換基の、特異的、非限定的例として、リン酸エステル、硫酸エステル、スルフォン酸エステル、およびカルボン酸エステルが挙げられる。
【0114】
ある実施態様では、標識部分は、式(VI):
(VI) A−Z1−Sp−Z2−D
ここで、Aは、N−保護NH−ローダミンアクセプターを表し、Dは、ドナー、例えば、N−保護NH−ローダミン、またはO−保護フルオレセインドナーを表し、Z1およびZ2は、前述したように、官能基Fzを含む連結部分によって提供される結合部分を表し、Spは、前述したようにスペーサー成分を表す。ある特定実施態様では、Aは、下記に示す、構造式A.1、A.2、A.3、A.4、A.5、およびA.6から選ばれ、Dは、構造式D.1、D.2、D.3、D.4、D.5、およびD.6から選ばれる。ある特定実施態様では、Aは、下記に示す、構造式A.7、A.8、A.9、A.10、A.11、およびA.12から選ばれ、Dは、構造式D.7、D.8、D.9、D.10、D.11、およびD.12から選ばれる。
【0115】
【化27】
【0116】
【化28】
【0117】
【化29】
【0118】
【化30】
構造式A.1−A.12およびD.1−D.12において:
E1は、−NHR9、−NR3’R9、および−OR9bから選ばれ;
E2は、−NHR9、−NR6’R9、および−OR9bから選ばれ;
R9bは、R9であり;
Y1a、Y1b、Y2a、Y2b、Y3a、およびY3bは、それぞれ互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−C(O)−、および−S(O)2−から選ばれ;および、
R’、R’’、R1’、R2’、R2’’、R3’、R4’、R4’’、R5’、R5’’、R6’、R7’、R7’’、R8’、R4、R5、R6、およびR7は、構造式(IIIa)、(IIIb)、および(IIIc)に関して以前に定義した通りであり、ただし、E1およびE2が−OR9bである場合、R1’およびR2’、およびR7’およびR8’は、同時にベンゾおよび/またはピリド基を含む。
【0119】
構造式(VI)による標識部分の、ある特定の実施態様では、Y1a、Y2a、およびY3aは−NH−であり;Y1b、Y2b、およびY3bは、−C(O)−および−S(O)2−から選ばれ;Z1は−C(O)−および−S(O)2−から選ばれ;Z2は−NH−であり、かつ、Spは、下記:
(Sp.1) −(CH2)a−[(Ar)b−(CH2)a]c−;
(Sp.2) −(CH2)a−[C≡C−(CH2)a]c−;
(Sp.3) −(CH2)a−[C≡C−(Ar)b]c−(CH2)a−;
(Sp.4) −(CH2)a−NH−C(O)−[(CH2)a−(Ar)−(CH2)a−C(O)−NH]c−(CH2)a−;および、
(Sp.5) −[CH2(CH2)eO]f−CH2(CH2)−、ここで、a、b、c、d、e、f、およびArは、以前に定義した通りである。
【0120】
構造式(VI)による標識部分のある特定実施態様では、R9は、−C(O)CH3、およびC(O)CF3から選ばれ、R9aは、−C(O)C(CH3)3である。
【0121】
5.5 リン酸エステル前駆体基
本明細書に記載される試薬の、多くの実施態様が、リン酸エステル前駆体基(“PEP”)を含む。標識オリゴヌクレオチドを合成するために段階的合成を用いる場合、PEPは、新生の合成オリゴヌクレオチドの5’−ヒドロキシル基であってもよい、利用可能な任意のヒドロキシル基に結合され、最終的に、任意の必要な酸化および/または脱保護工程の後、合成オリゴヌクレオチドに標識部分を連結する結合に貢献する。形成される結合は、従来技術で知られるように、リン酸エステル結合か、または、修飾されたリン酸エステル結合である。
【0122】
一次ヒドロキシル基に試薬を結合させ、リン酸エステル結合、または修飾されたリン酸エステル結合を生成するのに好適な基は、様々のものが従来技術において周知である。特異的実施例としては、例えば、ただし限定するものではないが、ホスホロアミダイト基(例えば、Letsingerら、1969,J.Am.Chem.Soc.91:3350−3355;Letsingerら、1975 J.Am.Chem.Soc.97:3278;Matteucci & Caruthers,1981,J.Am.Chem.Soc.103:3185;Beaucage & Caruthers,1981,Tetrahedron Lett.22: 1859を参照されたい、なお、これらの開示を引用により本明細書に含める)、2−クロロフェニル−、または2,5−ジクロロフェニル−フォスフェート基(例えば、Sproat & Gait,“Solid Phase Synthesis of Oligonucleotides by the Phosphodiester Method,” In: Oligonucleotide Synthesis,A Practical Approach,Gait,Ed.,1984,IRL Press,pages 83−115を参照)(なお、これらの開示を引用により本明細書に含める)、およびH−ホスホネート基(例えば、Gareggら、1985,Chem.Scr.25:280−282;Gareggら、1986,Tet.Lett.27:4051−4054;Gareggら、1986,Tet.Lett.27:4055−4058;Gareggら、1986,Chem.Scr.26:59−62;Froehler & Mateucci,1986,Tet.Lett.27:469−472;Froehlerら、1986,Nucl.Acid Res.14:5399−5407を参照されたい、なお、これらの開示を引用により本明細書に含める)が挙げられる。ある特定実施態様では、PEPは、下式(P.1)のホスホロアミダイト基である:
【0123】
【化31】
ここで、
R20は、1から10個の炭素原子を含む、直鎖、分枝、または環状の、飽和または不飽和のアルキル、2−シアノエチル、6から10個の環炭素原子を含むアリール、および、6から10個の環炭素原子、および1から10個のアルキレン炭素原子を含むアリールアルキルから選ばれ;および、
R21およびR22は、それぞれ互いに独立に、1から10個の炭素原子を含む、直鎖、分枝、または環状の、飽和または不飽和のアルキル、6から10個の環炭素原子を含むアリール、および、6から10個の環炭素原子、および1から10個のアルキレン炭素原子を含むアリールアルキルから選ばれるか、またはそれとは別に、R21およびR22は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、5から6個の環原子を含む、飽和または不飽和環を形成する。該環原子のうちの一つまたは二つは、図示された窒素原子に加えて、O、N、およびSから選ばれるヘテロ原子であってもよい。
【0124】
ある特定実施態様では、R20は2−シアノエチルであり、R21およびR22は、それぞれ、イソプロピルである。
【0125】
5.6 合成ハンドル
本明細書に記載される試薬の多くの実施態様は、適切な脱保護後、要すれば、合成標識オリゴヌクレオチドに対し追加の基または成分を付着させるために使用することが可能な部位を提供する、一つ以上の合成ハンドルを含む。これらの基は、標識オリゴヌクレオチド合成の進行時に合成ハンドルに付着させることが可能であるし、あるいはそれとは別に、合成ハンドルが、合成後、脱保護されて、追加の基または成分の付着が可能とされる官能基を顕すようにすることが可能である。例えば、合成ハンドルは、標識オリゴヌクレオチドの合成を実行するのに用いられる条件に対しては安定な保護基によって保護される、一次アミン基を含むことも可能である。合成後、合成オリゴヌクレオチド上の、他の各種保護基の除去と同時に、またはそれとは別に、この保護基を除去することによって、それに対して追加の基および/または成分を付着させることが可能な一次アミノ基が得られる。
【0126】
オリゴヌクレオチド合成に使用するのに好適な保護基によって保護される反応基については、様々の異なるものが従来技術で既知であり、例えば、ただし限定されないが、アミノ基(例えば、トリフルオロアセチル、または4−モノメトキシトリチル基によって保護される)、ヒドロキシル基(例えば、4,4’−ジメトキシトリチル基によって保護される)、チオール基(例えば、トリチルまたはアルキルチオール基によって保護される)、およびアルデヒド基(例えば、アセタール保護基によって保護される)が挙げられる。これらの保護される反応基は全て、本明細書に記載される試薬の合成ハンドルを含むことが可能である。
【0127】
ある実施態様では、合成ハンドルは、式−OReの保護された一次ヒドロキシルを含む。ここで、Reは、オリゴヌクレオチド合成時に選択的に除去することが可能な、酸に不安定な保護基を表す。オリゴヌクレオチド合成の観点から一次ヒドロキシル基を保護するために好適な、酸不安定な保護基は従来技術で既知であり、例えば、ただし限定されないが、トリフェニルメチル(トリチル)、4−モノメトキシトリチル、4,4’−ジメトキシトリチル、4,4’,4’’−トリメトキシトリチル、ビス(p−アニシル)フェニルメチル、ナフチルジフェニルメチル、p−(p’−ブロモフェナシクロキシ)フェニルジフェニルメチル、9−アントリル、9−(9−フェニル)キサンフェニル、および9−(9−フェニル−10−オキソ)アントリルが挙げられる。これらの基は全て、弱酸による処理、例えば、ジクロロメタンに溶解した2.5%または3%のジまたはトリクロロ酸による処理によって除去することが可能である。前述の酸不安定保護基によって一次ヒドロキシル基を保護する方法は、周知である。
【0128】
5.7 固相支持体
本明細書に記載される試薬の多くの実施態様は、他の成分および/または基が付着する固相支持体を含む。この固相支持体は、通常、他の成分の付着のために好適な連結基を担うリンカーが付着する、アミノまたはヒドロキシル基などの官能基によって活性化される。
【0129】
各種成分およびリンカーの付着のために好適な官能基によって活性化させることが可能な種々の材料は、官能基を含めるために該材料を活性化するための方法同様、従来技術で既知であり、例えば、調節孔ガラス、ポリスチレン、およびグラフトコポリマーが挙げられる。これらの材料のいずれも、本明細書に記載される試薬において固相支持体として使用することが可能である。
【0130】
5.8 末端ヒドロキシル標識のために有用な合成試薬
本明細書に記載される合成試薬のある実施態様は、下記の構造式(VII)によって記述される:
(VII) LM−L−PEP
ここで、LMは、本明細書に記載される標識部分を表し、Lは、本明細書に記載される任意のリンカーを表し、PEPは、本明細書に記載されるリン酸エステル前駆体基を表す。この試薬は、さらに別の基または成分、例えば、合成ハンドルを含むことが可能である。ある実施態様では、合成試薬は、標識部分およびPEP基を含み、別の成分または基を含まない。このような合成試薬は、オリゴヌクレオチドの段階的合成時、ヒドロキシル基に結合させることが可能であり、何よりも、合成オリゴヌクレオチドの末端ヒドロキシル基、通常は5’−ヒドロキシルであるが、に、標識部分を付着させるのに有用である。
【0131】
PEP基は、直接標識部分に付着させることが可能であるが、リンカーを介して標識部分に付着させてもよい。PEP基が直接標識部分に付着される実施態様では、PEP基は、一般に、一次ヒドロキシル基に対して好適な結合試薬によって分子に対して連結されるので、標識部分は、一次ヒドロキシル基を含む置換基を含んでいなければならない。PEP基が、リンカーを介して標識部分に連結される実施態様では、リンカー合成素子は、標識部分合成素子の連結基と連結を形成するのに好適な連結基、および、PEP基に対する付着に好適な一次ヒドロキシル基を含まなければならない。好適なリンカー合成素子としては、例えば、ただし限定されないが、式Fz−Sp−OHの合成素子が挙げられる。式中、Fzは、標識部分合成素子の官能基に対して相補的な官能基であり、Spは、スペーサー成分である。このスペーサー成分は、標識オリゴヌクレオチドの合成および脱保護に使用される条件に対して安定な原子および/または官能基である限り、それらの任意の組み合わせを含むことが可能である。非限定的例示リンカーが、図2に示される。図においてZ2はOである。ある実施態様では、Spは、1から10個の鎖原子を含む、任意に置換されるアルキレン鎖である。ある特定実施態様では、Spは、1から9個の炭素鎖原子を含む、未置換のアルキレン鎖である。
【0132】
ある実施態様では、合成試薬は、構造式(VII)による化合物であり、式中:
LMは、上に特異的に明らかにした標識部分実施態様のうちの一つであり;
Lは、−Z−(CH2)3−6−O−、−Z−(CH2)a−[(Ar)b−(CH2)a]c−O−、−Z−(CH2)a−[C≡C−(CH2)a]c−O−、−Z−(CH2)a−[C≡C−(Ar)b]c−(CH2)a−O−、−Z−(CH2)d−NH−C(O)−[(CH2)a−(Ar)−(CH2)a−C(O)−NH]c−(CH2)d−O−、−Z−[CH2(CH2)eO]f−CH2(CH2)eO−、および、Z2がOである、図2に示すリンカーの一つから選ばれ;および、
PEPは、ホスホロアミダイト基、例えば、前述の構造式P.1のホスホロアミダイト基である。ある実施態様では、リンカーLにおけるZは−NH−である。
【0133】
ある実施態様では、構造式(VII)による合成試薬におけるリンカーは、該合成試薬がヌクレオシド性となるように、ヌクレオシドを含む。ある実施態様では、ヌクレオシド性合成試薬は、構造式(VII.1)による化合物である:
【0134】
【化32】
ここで、PEPは、リン酸エステル前駆体基を表し、Bは核酸塩基を表し、LMは、標識部分を表し、かつ、L2は、リンカーLMに核酸塩基Bを連結するリンカーを表す。核酸塩基BおよびリンカーLの特性および性質は、下記にさらに詳細に記載される。構造式(VII.1)による、非限定的、例示のヌクレオシド性合成試薬が、図4に示される。
【0135】
PEP基が、任意のリンカーを介して標識部分に連結される合成試薬実施態様を合成するための例示スキームが、下記のスキーム(I)に示される。このスキームにおいて、各種基R、Fy、Fz、Y、Z、およびSpは、以前に定義した通りである。
【0136】
【化33】
スキーム(I)において、官能基Fyを含む連結基を含む、親NH−ローダミン合成素子100は、無水物101によってアセチル化されて、N−アセチル保護NH−ローダミン合成素子102を生成する。次に、合成素子102は、リンカー合成素子103に結合して、化合物104を生成する。Fyの内容に応じて、合成素子102は、結合の前に活性化を要求する場合がある。例えば、Fyがカルボキシル基である場合、結合前に、NHSエステルなどのエステルとして活性化することが可能である。化合物104では、−Y−Zは、相補的官能基FyおよびFzによって形成される連結を表す。この式において、前述のように、Yは、Fyの担当する部分、Zは、Fzの担当する部分を表す。次に、化合物104は、図示の特定実施態様ではフォスフィンである、PEP合成素子105と反応させられ、ホスホロアミダイト合成試薬106を生成する。
【0137】
5.9 内部または3’−末端標識に有用な合成試薬
本明細書に記載される合成試薬は、追加の基および/または成分の付着のために有用な、一つ以上の合成ハンドルを任意に含んでもよい。前述のように、Reが酸不安定な保護基を表す、式−OReの合成ハンドルを含む合成試薬は、追加のヌクレオチドが付着することが可能な、一次ヒドロキシル基を与える。その結果、この合成ハンドルを含む合成試薬は、5’−ヒドロキシル、3’−ヒドロキシル、または、一つ以上の内部位置において、合成オリゴヌクレオチドを標識するために使用することが可能である。これら合成試薬はさらに、互いに結合することも、または、他のホスホロアミダイト標識試薬に結合することも可能であり、そのため複数の標識部分を含むオリゴヌクレオチドの合成が可能となる。
【0138】
合成試薬を構成する、標識部分、PEP基、および合成ハンドル−OReは、それぞれの機能の実行を可能とするものであれば、いずれの方式および/または方向性で一緒に連結することも可能である。特定実施例として、PEP基および合成ハンドルは、それぞれ、任意にリンカーを介して標識部分に連結させることが可能である。ある実施態様では、このような合成試薬は、構造式(VIII)による化合物である:
(VIII) ReO−L−LM−L−PEP
ここで、Lは、他方に対して独立に、任意のリンカーを表し、LMは、標識部分を表し、かつ、PEPは、リン酸エステル前駆体基を表す。好適な保護基Re、リンカーL、標識部分LM、およびリン酸エステル前駆体基の非限定的例としては、上に具体的に例示したものが挙げられる。
【0139】
別の特定実施例として、PEP基および合成ハンドル−OReは、標識部分に付着する、分枝鎖リンカーに付着されてもよい。ある実施態様では、このような合成試薬は、構造式(IX)による化合物である:
【0140】
【化34】
ここで、Lはリンカーを表し、LMは標識部分を表し、かつ、PEPは、リン酸エステル前駆体基を表す。
【0141】
ある特定実施態様では、構造式(IX)による合成試薬は、構造式(IX.1)による化合物である:
【0142】
【化35】
ここで、LMは標識部分を表し、−Z−は、リンカーの官能基Fzによって与えられる連結の一部を表し、同じであっても、異なっていてもよい、Sp1、Sp2、およびSp3は、それぞれ、スペーサー成分を表し、Gは、CH、N、または、アリーレン、フェニレン、ヘテロアリーレン、低級シクロアルキレン、シクロヘキシレン、および/または低級シクロヘテロアルキレンを含む基を表し、かつ、PEPは、リン酸エステル前駆体基を表す。ある実施態様では、LMは、上に具体的に例示した標識部分のうちの一つであり、Sp1、Sp2、およびSp3は、それぞれ互いに独立に、1から9個の炭素原子を含むアルキレン鎖、Sp.1、Sp.2、Sp.3、Sp.4、およびSp.5(上に定義)から選ばれ、および/または、PEPは、上述の構造式P.1によるホスホロアミダイト基である。構造式(IX.1)による例示合成試薬の、非限定的特定実施態様が、図3および4に示される。
【0143】
ある実施態様では、合成ハンドル−OReはヌクレオシドによって供給され、そのため、合成試薬はヌクレオシド性となる。このようなヌクレオシド性合成試薬では、標識部分は、通常、リンカーを介してヌクレオシドの核酸塩基に連結され、標識オリゴヌクレオチド合成のために使用される条件下に反応性を帯びる環外官能基、例えば、環外アミンがある場合、それは、いずれのものであれ、保護される。
【0144】
このヌクレオシドは、オリゴヌクレオチド合成における使用のために適切に保護することが可能であれば、いずれのヌクレオシドであってもよく、2’−デオキシリボース糖成分、3’−デオキシリボース糖成分(2’−5’ヌクレオチド間連結を含む標識オリゴヌクレオチドの合成に有用である)、適切に保護されたリボース成分、これらリボース成分の内の任意の成分の置換体、または、場合によっては非リボース糖成分を含んでもよい。
【0145】
ある実施態様では、このヌクレオシド性合成試薬は、構造式(IX.2)、(IX.3)、(IX.4)、および(IX.5)による化合物である:
【0146】
【化36】
ここで、LMは標識部分を表し、Bは適切に保護された核酸塩基を表し、L2は、核酸塩基に標識部分を連結するリンカーを表し、Reは、酸不安定な保護基を表し、PEPは、リン酸エステル前駆体基を表し、Oは酸素原子であり、かつ、構造式(IX.4)では、R11は、2’−ヒドロキシル保護基を表す。
【0147】
構造式(VII.1)、(IX.2)、(IX.3)、(IX.4)、および(IX.5)による合成試薬では、核酸塩基Bは、オリゴヌクレオチドの中に組み込むのに有用である限り、事実上いずれのヘテロ環であってもよい。例えば、核酸塩基は、遺伝学的コード担持プリン(アデニンまたはグアニン)のうちの一つ、遺伝学的コード担持ピリミジン(シトシン、ウラシル、またはチミン)のうちの一つ、遺伝学的コード担持プリンおよび/またはピリミジンの類縁体および/または誘導体(例えば、7−デアザアデニン、7−デアザグアニン、5−メチルシトシン)、非遺伝学的コード担持プリンおよび/またはピリミジン(例えば、イノシン、キサンテン、およびヒポキサンテン)、または他のタイプのヘテロ環のうちの一つであってもよい。オリゴヌクレオチドの中に組み込むのに有用なヘテロサイクルは多様なものが従来技術で既知であり、例えば、Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology,Fasman,Ed.,1989,CRC Press (例えば、385−393ページ、および、その中に引用される文献を参照)に記載される。なお、この開示を、引用により本明細書に含める。これら各種ヘテロ環の全ての外、後に発見されるものも、本明細書に記載されるヌクレオシド性合成試薬の中に含めることが可能である。
【0148】
構造式(VII.1)、(IX.2)、(IX.3)、(IX.4)、および(IX.5)による合成試薬において、Bがプリンである場合、図示の糖成分は、通常、該プリンのN9位置に付着し、Bがピリミジンの場合、図示の糖成分は、通常、該ピリミジンのN1位置に付着する。他の核酸塩基の付着部位は、当業者には明白であろう。
【0149】
核酸塩基上の環外アミン、または他の反応基(単複)は、標識オリゴヌクレオチド合成に使用される合成条件に対して安定な保護基によって保護される。オリゴヌクレオチド合成の観点からヌクレオシド核酸塩基の環外アミン基の保護に好適な基は、これら保護されるヌクレオシドの調製法同様、様々のものが従来技術で既知である。
【0150】
例えば、アデニンの環外アミンを保護するために使用される基としては、ベンジオール(Bz)、フェノキシアセチル(Pac)、およびイソブチル(iBu)が挙げられる。シトシンの環外アミンを保護するために使用される基としては、アセチル(Ac)およびBzが挙げられる。グアニンの環外アミンを保護するために使用される基としては、iBu、ジメチルフォルムアミド(Dmf)、および4−イソプロピル−フェノキシアセチル(iPr−Pac)が挙げられる。これらの保護基は全て、水酸化アンモニウムによる55−65℃、2−3時間の処理によって除去することが可能である。しかしながら、これらの保護基のあるものは、より穏やかな条件下に除去される。例えば、AiBu、APac、CAc、およびGiPr−Pacからの保護基の切り離しは、水酸化アンモニウムによる室温で4−17時間の処理、またはメタノールに溶解した0.05M炭酸カリウムによる処理、またはH2O/EtOHに溶解した25% t−ブチルアミンによる処理によって実行することが可能である。本明細書に記載される試薬を構成するNH−ローダミンのあるもの、および/または他の染料は、他の保護基によって必要とされる、より過激な脱保護条件に対して安定でない可能性があるので、これらの比較的おだやかな脱保護条件下に除去することが可能な保護基を利用するヌクレオシド性試薬が好ましい。
【0151】
核酸塩基Bに標識部分LMを連結するリンカーL2は、核酸塩基の任意の位置に付着してよい。ある実施態様では、Bがプリンである場合、リンカーは、該プリンの8−位置に付着し、Bが7−デアザプリンである場合、リンカーは、該7−デアザプリンの7−位置に付着し、Bがピリミジンである場合、リンカーは、該ピリミジンの5−位置に付着する。
【0152】
ある実施態様では、核酸塩基にLMを付着させるために有用なリンカーL2は、アセチレン性、またはアルケン性アミノ連結、例えば、−C≡C−CH2−NH−、−C≡C−C(O)−、−CH=CH−NH−、−CH=CH−C(O)−、−C≡C−CH2−NH−C(O)−(CH2)1−6−NH−、および−CH=CH−C(O)−NH−(CH2)1−6−NH−C(O)−から選ばれる連結、プロパルジル−1−エトキシアミノ連結、例えば、式−C≡CH−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−を有する連結、または、剛性連結、例えば、−C≡C−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、および−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−から選ばれる連結を含む。ここで、Arは上に定義した通りである。
【0153】
ある実施態様では、プリン核酸塩基にLMを付着させるために有用なリンカーL2は、アルキルアミン、例えば、式−NH−(CH2)1−6−NH−の連結である。
【0154】
ある実施態様では、プリンまたはピリミジン核酸塩基にLMを付着させるために有用なリンカーL2は、米国特許第6,811,979号に記載の陰イオンリンカーである。なお、この開示を引用により本明細書に含める(例えば、コラム17、25行からコラム18、37行の開示、および図1−17を参照)。
【0155】
本明細書に記載される試薬に組み込むのに好適な、前述のものと同様の、リンカーと共に誘導体形成されるヌクレオシドを合成する方法は、例えば、Hobbsら、1989,J.Org.Chem.54:3420;Hobbsらに付与された米国特許第5,151,507号;Khanらに付与された米国特許第5,984,648号;およびKhanらに付与された米国特許第5,821,356号に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。誘導体形成ヌクレオシドは、下記にさらに詳細に説明するように、ヌクレオシド合成試薬を合成するための合成素子として使用することが可能である。
【0156】
本明細書に記載されるヌクレオシド性試薬を含んでもよい、リンカー誘導体形成核酸塩基の特定例示実施態様を下記に図示する:
【0157】
【化37】
ヌクレオシド性合成試薬は、下記のスキーム(II)に示すように、リンカー誘導体形成ヌクレオシド合成素子から調製することが可能である:
【0158】
【化38】
スキーム(II)において、リンカー誘導体形成ヌクレオシド合成素子110は、スキームでは例示の塩化物試薬ReClと共に示される、5’−ヒドロキシル基において酸不安定基によって保護される。Reは上に定義した通りである。塩基で処理してトリフルオロアセチル保護基を除去すると、合成素子112が得られる。合成素子112の、標識部分合成素子102との反応によって(上のスキーム(I)では、PEP合成素子105による処理後、図示の、この特定実施態様では、フォスフィン(上のスキーム(I)参照)である)、ヌクレオシド性合成試薬114が得られる。上に示した各種合成工程を実行するための特異的条件は、周知である。合成ハンドル、例えば、式−OReの合成ハンドルを含む、非ヌクレオシド性合成試薬は、スキーム(II)の常識的な応用によって調製することが可能である。
【0159】
5.10 固相支持試薬
本明細書に記載される試薬の多くの実施態様は、固相支持体を含む。このような試薬は、一般に、固相支持体、本明細書に記載の標識部分、および合成ハンドルを含むが、さらに追加の基または成分、例えば、追加の標識部分、クエンチャー(quencher)部分、特に、オリゴヌクレオチド二重体を安定化するために有用な合成ハンドルおよび/または基、例えば、塩基ペア間に介在する仲介因子(介在因子)、および、二重小溝に結合する因子(小溝結合、またはMGB介在因子)を含んでもよい。固相支持体、標識部分、合成ハンドル、および任意に追加される成分は、それぞれの機能を実行する能力を妨げない限り、どのような方式、方向性で相互に連結させてもよい。
【0160】
ある実施態様では、固相支持体は、リンカーを介して試薬の残余部に付着される。固相支持体を、試薬の残余部に付着させるリンカーは、通常、指定の条件下で選択的に切断することが可能な連結を含み、そのため、合成後、この合成された標識オリゴヌクレオチドは、固相支持体から解放させることが可能である。ある実施態様では、連結は、合成標識オリゴヌクレオチドを脱保護するために使用される条件に対して不安定であり、そのため、該ヌクレオチドは、単一工程において、脱保護され、かつ、固相支持体から切り離される。このようなリンカーは、通常、エステル結合を含むが、他の結合、例えば、炭酸エステル、ジイソプロピルシロキシエーテル、修飾されたリン酸エステルなどを含んでもよい。
【0161】
オリゴヌクレオチド合成の観点から有用な、選択的切断が可能なリンカーは、固相支持体をこのようなリンカーと共に誘導体形成する方法と同様、莫大なものがあり、それらは従来技術で既知である。これらの様々なリンカーのすべては本発明に記載の固相支持試薬に使用するために適用される。合成オリゴヌクレオチドを脱保護するために用いられる塩基性条件下で切断が可能な例示のリンカーを含む、固相支持試薬の非限定的例が、図7に示される。
【0162】
合成試薬同様、固相支持試薬も、非ヌクレオシド性、またはヌクレオシド性であってもよい。非ヌクレオシド性固相試薬の例示実施態様は、構造式(X)による試薬を含む:
【0163】
【化39】
ここで、LMは標識部分を表し、Lは、任意に選択的に切断可能なリンカーを表し、−OReは、合成ハンドルを表す。Reは、前述した通り、酸不安定な保護基である。
【0164】
ある実施態様では、構造式(X)の固相支持試薬は、構造式(X.1)による非ヌクレオシド試薬である:
【0165】
【化40】
ここで、Z、LM、G、Sp1、Sp2、およびReは、構造式(IX.1)に関連して上に定義した通りであり、Sp4は、選択的に切断可能なスペーサー成分を表す。ある実施態様では、選択的に切断可能なスペーサー成分Sp4は、エステル結合を含む。
【0166】
ある実施態様では、構造式(X)の固相支持合成試薬は、構造式(X.2)、(X.3)、(X.4)、または(X.5)によるヌクレオシド試薬である:
【0167】
【化41】
ここで、LM、Re、B、L2は、構造式(X.2)、(X.3)、(X.4)、および/または(X.5)について以前に定義した通りであり、R11は、構造式(IX.4)について以前に定義した通りであり、かつ、Sp4は、前述の通り、選択的に切断が可能なスペーサー成分を表し、これは、ある実施態様では、エステル結合である。
【0168】
5.11 追加の例示実施態様
本開示を通じて記載される、各種成分、基、およびリンカーの特定実施態様は、本明細書に記載される試薬の全てに含めることが可能であることを理解しなければならない。さらに、各種の特異的実施態様は、互いに、任意の組み合わせで、あたかもその特異的組み合わせが具体的に明示されるかのように組み合わせることが可能である。特異的例として、本明細書に記載される標識部分LMの特異的実施態様の内の任意の一つを、本明細書に記載される、非ヌクレオシド性およびヌクレオシド性固相支持体および合成試薬の、特異的に例示される実施態様のいずれかの中に含めることが可能である。もう一つの特異的例として、リン酸エステル前駆体基PEPの特異的実施態様の内の任意の一つ、例えば、上記の構造式(P.1)のホスホロアミダイト基を、本明細書に記載される合成試薬の内の任意の一つの中に含めることが可能である。
【0169】
5.12 試薬の使用
本明細書に記載される各種試薬は、直接合成樹脂の上で、ローダミン染料によって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、オリゴヌクレオチドの段階的合成において使用することが可能である。したがって、これら各種試薬は、合成後の手間のかかる修飾を要することなく、無数の異なるローダミンによってオリゴヌクレオチドを合成的に標識する能力を利用可能とする。NHローダミン染料によって標識されたオリゴヌクレオチドを合成するための、例示の合成試薬の使用が、図9に示される。
【0170】
熟練した当業者には理解されるように、ドナー、アクセプター、または場合によっては、NH−ローダミン染料の反応停止因子として活動することが可能なホスホロアミダイトの利用が可能であるために、本明細書に記載される試薬は、エネルギー転移染料および/またはNH−ローダミン反応停止染料ペアによって標識されるオリゴヌクレオチドの、インサイチュ合成を可能とする。本明細書に記載される試薬によって実現される万能性を示す、NH−ローダミン−フルオレセインエネルギー転移染料ペアによって標識されるオリゴヌクレオチドの例示合成が、図10および11に例示される。本明細書に記載される試薬は、事実上全てのNH−ローダミン染料の、固相支持試薬および/または合成試薬における包含を可能にするので、特異的応用のために調整される分光特性を有する、エネルギー転移染料ペアによって標識されるオリゴヌクレオチドを、合成後の修飾を要することなく、好都合にもインサイチュ合成することが可能である。さらに、無数の異なるエネルギー転移染料ペアによって標識されるオリゴヌクレオチドを、特異的染料ペアを含む合成試薬の製造を要することなく、個々のモノマー試薬から合成することが可能である。介在性リンカー成分の添加の下に、または添加を要することなく、染料ペアの各メンバーを、段階的に新生オリゴヌクレオチドに付着させることが可能である。
【0171】
図9を参照すると、支持体結合合成ヌクレオチド200は、その5’−ヒドロキシルを保護するDMT基を除去するために酸で処理され、5’−脱保護、支持体結合オリゴヌクレオチド202を生成する。N−保護NH−ローダミンホスホロアミダイト試薬204の結合、次いで酸化によって、支持体結合、NH−ローダミン標識オリゴヌクレオチド206が生成される。全ての保護基を除去し、かつ、固相支持体(樹脂)からこの合成オリゴヌクレオチドを切り離すために、濃縮水酸化アンモニウムによって処理すると、NH−ローダミン染料によって標識されるオリゴヌクレオチド208が生成される。
【0172】
図10を参照すると、標識部分として、保護されたNH−ローダミン−フルオレセインエネルギー転移染料ペアを含む、固相支持試薬210は、3合成サイクルを経過して、標識支持体結合オリゴヌクレオチド212を生成することが可能である。固相支持体から切り離されると、脱保護された、標識オリゴヌクレオチド214が得られる。
【0173】
図11Aを参照すると、新生の、支持体結合オリゴヌクレオチド220は、該オリゴヌクレオチド220の5’−ヒドロキシルに対し、N−保護NH−ローダミンホスホロアミダイト合成試薬222を結合することによって、インサイチュ合成されたNH−ローダミン−フルオレセインによって標識することが可能であり、この産物は、酸化後、NH−ローダミン標識オリゴヌクレオチド224を生成する。DMT基の除去後、O−保護ホスホロアミダイト(図示の特定実施例では、FAM−ホスホロアミダイトである)を結合させると、標識された、支持体結合オリゴヌクレオチド226が生成される。切り離しおよび脱保護によって、NH−ローダミン−FAMエネルギー転移染料ペアによって標識される、オリゴヌクレオチド228が生成される。
【0174】
このドナーおよびアクセプター染料を連結する結合手の長さおよび特徴も、ホスホロアミダイトリンカー試薬を用いることによって操作することが可能である。この局面は、図11Bに示される。この図では、リンカーホスホロアミダイト230は、ローダミン標識オリゴヌクレオチド225に結合され、試薬232を生成する。FAM−ホスホロアミダイトによる結合、次いで、酸化、脱保護、および切り離しによって、オリゴヌクレオチド234が得られる。これは、NH−ローダミン−FAMエネルギー転移染料ペアによって標識される。リンカーホスホロアミダイト230において、”Sp”は、以前に定義した通りのスペーサである。例えば、”Sp”は、以前に定義した、(Sp.1)、(Sp.2)、(Sp.3)、(Sp.4)、または(Sp.5)を表してもよい。
【0175】
図11Bに示すスキームでは、NH−ローダミンとFAM染料を連結するリンカーの長さおよび特性は、FAM−ホスホロアミダイトによる結合の前に、試薬232に対し、さらに別のリンカーホスホロアミダイトを結合することによって調整することが可能である。これらのリンカーホスホロアミダイトは、同じであってもよく、または、異なっていてもよい。このようにして、ドナーおよびアクセプターの外に、該ドナーおよびアクセプターを連結するリンカーも存在する、エネルギー転移染料ペアによって標識されるオリゴヌクレオチドは、特定の目的に合せ、簡単にインサイチュ合成することが可能である。
【0176】
図11Aおよび11Bは、特異的な、N−保護NH−ローダミン試薬の使用を例示するが、当業者であれば、FAMに対するアクセプターとして活動するものであれば、いずれのN−保護NH−ローダミン試薬であっても使用が可能であることを理解するであろう。さらに、他の種類のホスホロアミダイト染料の使用が可能であるように、他のO−保護フルオレセインの使用も可能である。染料はモノマーとして添加されるので、エネルギー転移染料標識の数は、それらを合成するのに必要なホスホロアミダイト試薬の数よりも大きい。例えば、9種の異なるエネルギー転移染料ペアによって標識されるオリゴヌクレオチドは、三つの異なるN−保護NH−ローダミンホスホロアミダイト試薬(試薬A、B、およびC)、および、三つの異なるO−保護フルオレセインホスホロアミダイト試薬(試薬1、2、および3)によって合成することが可能である:オリゴ−A1、オリゴ−A2、オリゴ−A3、オリゴ−B1、オリゴ−B2、オリゴ−B3、オリゴ−C1、オリゴ−C2、およびオリゴ−C3。
【実施例】
【0177】
(実施例1)
N−保護NH−ローダミンホスホロアミダイト合成試薬の合成
C5−、またはC6−位置にカルボキシル置換基を含む、親NH−ローダミン染料を、米国特許第4,622,400号、米国特許第5,750,409号、米国特許第5,847,162号、米国特許第6,017,712号、米国特許第6,080,852号、米国特許第6,184,379号、または米国特許第6,248,884号に記載されるように合成した。次に、この親NH−ローダミン染料を、環外アミンにおいて、アセチル、またはトリフルオロアセチ保護基によって保護し、得られたN−保護NH−ローダミン染料を、対応するNHSエステル誘導体を介してヒドロキシル−アミド誘導体に変換し、このヒドロキシル官能基を、標準手順を用いて、ホスホロアミダイトに変換した。全体的スキームを下記に示す。
【0178】
【化42】
アセチル基による保護 NH−ローダミン酸6(モノTEA塩、1.676 mmol)を、DCM(40 mL)およびTEA(3.67 mL)に縣濁した。無水酢酸(3.13 mL)を加え、この反応混合物を室温で3日間攪拌した。H2O(10 mL)を加え、攪拌を30分続けた。この混合物をDCM(200 mL)で希釈し、NaHCO3液(200 mL × 2)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、蒸発した。残渣をシリカ(溶出液として、MeOH/EtOAc/DCMの、5:20:75から20:20:60の勾配を使用)によるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。適切な分画を分留したところ、881 mg(87%)の、無色の、ラクトン化ビスアセチルN−保護NH−ローダミン染料8が得られた。
【0179】
トリフルオロアセチル基による保護 NH−ローダミン酸6(モノTEA塩、1.5 g,2.402 mmol)を、DCM(30 mL)およびTEA(6.696 mL)に縣濁した。この縣濁液を0℃に冷却し、無水酢酸(2.0 mL)をシリンジを用いて滴下した。添加完了後、この反応混合物を室温で10分攪拌した(かつ、染料粒子を粉砕するために超音波処理した)。得られた褐色液を留去し、DCM(50 mL)に再度溶解し、5% HCl(40 mL)と共に室温で1時間攪拌した。この反応混合物を分離漏斗に移し、二つの層を分離した。DCM層を塩水(40 mL)にて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、蒸発した。残渣を、MeCN(2x)と共に蒸発させたところ、1.79 gの、未精製の、N−保護NH−ローダミン染料7が得られた。
【0180】
N−保護NH−ローダミンNHSエステルの合成 DCM(20 mL)に溶解した、ビス−アセチル染料8(588 mg,0.968 mmol)およびNHS (334 mg,2.904 mmol)の溶液に、DCC (599 mg,2.904 mmol)を加えた。この反応混合物を室温で2時間攪拌し、次いで、反応混合物をろ過した。ろ液を、DCM(80 mL)で希釈し、H2O(50 mL x 2)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、蒸発した。残渣をシリカ(溶出液として、AcOH/MeOH/EtOAc/DCMの、1:1:20:78から1:5:20:74の勾配を使用)によるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。適切な分画を分留したところ、680 mg(100%)の、ビスアセチルN−保護NH−ローダミンNHSエステル10が得られた。
【0181】
ビスアセチルN−保護NH−ローダミンNHSエステル10、ビス−TFA N−保護NH−ローダミン染料7(0.322 mmol)に関する前述の手順にしたがって、ビス−TFA N−保護NH−ローダミンNHSエステル9を、80−90%収率で得た。
【0182】
N−保護NH−ローダミンホスホロアミダイトの合成 NHSエステル9(0.4 mmol)をDCM(8 mL)に溶解した。攪拌下、この液に、6−アミノ−1−ヘキサノール/DIPEA/DCM(56 mg/0.07 mL/2 mL)を加えた。この反応物を室温で30分攪拌した。固体副産物をろ過除去し、ろ液を、シリカ(溶出液として、EtOAc/DCMの、30%から60%の勾配を使用)によるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。適切な分画を分留したところ、0.344 mmol(86%)の、ビスTFA−ヘキサノールアミドローダミン染料11が得られた。
【0183】
NHSエステル10は、同様手順を用いてビス−アセチル−ヘキサノールアミドNH−ローダミン染料12に変換した。
【0184】
DCM(10 mL)に溶解した、ビスTFA−ヘキサノールアミドローダミン染料11(0.338 mmol)および2−シアノエチルN,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.214 mL,0.674 mmol,2当量)の溶液に、テトラゾールアミン(4 mg)を一度に加えた。この混合物を室温で20時間攪拌した。揮発物質を蒸発させて除去し、残渣を、DCM/ヘキサンによる3回の沈殿によって精製した。固体産物を減圧乾燥したところ、0.256 mmol(76%)のビス−TFA−N−保護NH−ローダミン染料ホスホロアミダイト13が得られた。
【0185】
同様にして、ビス−アセチル染料12をホスホロアミダイト14に変換した。
【0186】
(実施例2)
ヘテロダイマー染料ネットワークの合成
N−保護NH−ローダミンに連結したO−保護フルオレセインを含む染料ネットワークを、下記に示すようにして合成した:
【0187】
【化43】
ビス−アセチルN−保護NH−ローダミンNHSエステル16(324 mg,0.460 mmol)を、DMF(8 mL)およびDIPEA(0.3 mL)の溶液に溶解した。フルオレセイン誘導体17(239 mg,0.32 mmol、米国特許第5,800,996号に記載される通りに合成)を加え、反応混合物を、室温で1時間攪拌した。この混合液を蒸発させ、次いで、MeOH(2 x)と共に蒸発させた。残渣を10% MeOH/DCM(100 mL)に溶解し、塩水(100 mL)で洗浄した。水層を、10% MeOH/DCM(50 mL x 3)で抽出し、合わせた有機層を乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、蒸発した。残渣をシリカ(溶出液として、MeOH/DCMの、10%から30%の勾配を使用)によるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。適切な分画を分留したところ、270 mg(63%)の、ヘテロダイマー染料ネットワーク19(DIPEA塩として)が得られた。
【0188】
対応する、ビス−TFA保護染料ネットワーク18が、同様の手順によって合成された。
【0189】
(実施例3)
ヘテロダイマー染料ネットワークホスホロアミダイトの合成
標識部分としてヘテロダイマー染料ネットワークを含むホスホロアミダイト合成試薬は、下記に示すように合成された:
【0190】
【化44】
DCM(10 mL)に溶解した、ヘテロダイマー染料ネットワーク19(0.173 mmol)、DIPEA(1.028 mL)、および無水ピバル酸(0.702 mL)の混合物を、室温で1日攪拌した。H2O(40 mL)を加え、攪拌を1時間続けた。この反応混合物をDCM(50 mL)で希釈し、H2Oで洗浄した。水層をDCM(40 mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、蒸発した。残渣をシリカ(溶出液として、MeOH /DCMの、3%から15%の勾配を使用)によるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。適切な分画を分留したところ、0.145 mmol(84%)の、ビス−アセチルビス−ピバロイルヘテロダイマー染料誘導体21(DIPEA塩として)が得られた。
【0191】
染料誘導体21(0.146 mmol)を、DIPEA(0.2 mL)とDCM(8 mL)の溶液に縣濁した。固体のN−ヒドロキシスクシニミドテトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(88 mg)を加え、この反応物を室温で1時間攪拌した。6−アミノ−1−ヘキサノール(51 mg)を加え、攪拌を1時間続けた。この反応混合物をろ過し、ろ液をDCM(50 mL)で希釈した。このDCM液を塩水(40 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、蒸発した。残渣をシリカゲル(溶出液として、MeOH:EtOAc:DCMの、5:20:75から15:20:65の勾配を使用)によるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。適切な分画を分留したところ、0.124 mmol(85%)の、染料ヘキサノールアミド誘導体23(DIPEA塩として)が得られた。
【0192】
染料誘導体23(91 mg,0.057 mmol)、およびテトラゾールアミン(2 mg)を、DCM(5 mL)に溶解した。2−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロアミダイト(CEジアミダイト)(0.04 mL)を加え、この反応物を室温で16時間攪拌した。反応混合物を、TEA:EtOAc:DCM (3:20:77,3 mL)の溶液で希釈し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液として、TEA:MeOH:EtOAc:DCMの、3:0:20:77から3:5:20:72の勾配を使用)によって精製した。適切な分画を分留し、DCM/ヘキサンによって沈殿させたところ、75 mg(74%)のヘテロダイマー染料ホスホロアミダイト25が得られた。
【0193】
(実施例4)
任意の合成ハンドルを含む、非ヌクレオシド性ホスホロアミダイト合成試薬の合成
式−OReの、任意の合成ハンドルを含む、非ヌクレオシド性ホスホロアミダイト合成試薬を、下記に示すように合成した:
【0194】
【化45】
ビス−TFA誘導体9(1.354 mmol)を、DCM(30 mL)に溶解したDIPEA(0.236 mL)の溶液に溶解した。攪拌下、この溶液に、リンカー合成素子29およびDCM(0.0609 g,1.355 mmol、Nelsonら、1992,Nucl.Acids Res.20:6253−6259の記載の通りに合成した)を加え、攪拌を、室温で2時間続けた。EtOAcを加え、混合物をシリカカラムに負荷した。EtOAc:DCMの5:95から1:5勾配使用の溶出によって純粋産物を単離した。適切な分画を分留したところ、1.25 g(80%)のビス−TFA−ローダミン−ヒドロキシアミン30が得られた。
【0195】
ビス−TFA−ローダミン−ヒドロキシアミド30(1.081 mmol)およびテトラゾールアミン(18.5 mg)をDCM(35 mL)に溶解して溶液とした。CEジアミダイトを加え(0.685 mL)、この反応物を、室温で18時間攪拌した。溶媒を、減圧留去し、残渣をDCM/ヘキサン(3 x)で沈殿させたところ、1.081 mmol(100%)の純粋ビス−TFA−ローダミンDMTホスホロアミダイト31が得られた。
【0196】
(実施例5)
標識オリゴヌクレオチドの固相合成
N−保護NH−ローダミンホスホロアミダイト合成試薬によって標識されたオリゴヌクレオチドを、AB3900自動式DNA合成機において標準動作条件を用いポリスチレン固相支持体の上で合成した。N−保護NH−ローダミンホスホロアミダイトは、結合反応用のアセトニトリル溶媒に対して可溶であり、N−保護NH−ローダミン染料アダクトは、繰り返しの合成サイクルに対して安定であった。合成サイクルは、ヌクレオチド間リン酸結合を生成するために、ジクロロ酢酸によるDMTの除去、ヌクレオシドホスホロアミダイトモノマーの添加、無水酢酸によるキャップ形成、および、ヨウ素による酸化を用いた。さらに、このクラスのNH−ローダミンは、合成された標識オリゴヌクレオチドを脱保護し、それを固相支持体から切り離すために用いられる条件(水酸化アンモニウムによる60℃、12時間の処理)にたいしても安定であることが判明した。この標識オリゴヌクレオチドを合成するために用いられた全体スキームを下記に示す:
【0197】
【化46】
このプロセスによって、TFA−ローダミンDMTホスホロアミダイト31は、支持体結合オリゴヌクレオチドの5’−ヒドロキシルに結合して、亜リン酸中間体32を生成する。フルオレセインホスホロアミダイト(Glenn Research)を、中間体32の遊離ヒドロキシルに結合させた。得られた標識オリゴを酸化し、濃縮水酸化アンモニウム、60℃、1−2時間によって支持体から切り離し、アセトニトリル/水で洗浄し、減圧乾燥したところ、標識オリゴヌクレオチド33が得られた。オリゴ33を、標準的酢酸ナトリウム/EtOH沈殿プロトコールを用いて再沈殿させた。標識オリゴ33は、90%を超える純度、85%を超える収率で得られ(0.2 uMの支持体から170,000 pM)、それ以上精製することなく用いた。
【0198】
(実施例6)
この合成試薬によって合成された標識オリゴヌクレオチドは、優れた分光特性を示す
NH−ローダミン、またはNH−ローダミン−フルオレセイン染料ペアによって標識されたポリ(dT)10オリゴヌクレオチドを、上に示すようにして合成した。切り離し後、蛍光スペクトラムを記録した。合成した標識オリゴは全て、優れた蛍光特性を示した。
【0199】
理解を助けるために、発明内容をやや詳細に記述したが、付属の特許請求の範囲内においていくつかの変更および改変の実行が可能であることは明白であろう。したがって、記述の実施態様は、例示と見なすべきであって、限定的と考えてはならず、本明細書に記載される発明の各種局面は、本明細書で示した詳細のみに限定されてはならない。
【0200】
本開示を通じて引用された文献および特許の参照は皆、全ての目的のために引用により本出願に含められる。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1A】図1Aは、本明細書に記載される試薬の中に組み込むことが可能な、親NH−ローダミン染料の例示の実施態様を示す。
【図1B】図1Bは、本明細書に記載される試薬の中に組み込むことが可能な、親NH−ローダミン染料の例示の実施態様を示す。
【図1C】図1Cは、NH−ローダミンに対するドナーとして活動することが可能であり、かつ、標識部分が染料ネットワークを構成する実施態様において本明細書に記載される試薬の中に組み込むことが可能な、親フルオレセイン染料の例示実施態様を示す。
【図2】図2は、本明細書に記載される試薬を構成する異なる種々の成分を相互に連結するために使用することが可能な例示のリンカーを示す。
【図3A】図3Aは、合成ハンドルを含まない、ヌクレオシド性合成試薬の例示実施態様を示す。
【図3B】図3Bは、合成ハンドルを含まない、ヌクレオシド性合成試薬の例示実施態様を示す。
【図4】図4は、合成ハンドルを含まない、非ヌクレオシド性合成試薬の例示実施態様を示す。
【図5】図5は、合成ハンドルを含む、非ヌクレオシド性合成試薬の例示実施態様を示す。
【図6】図6は、合成ハンドルを含む、ヌクレオシド性合成試薬の例示実施態様を示す。
【図7】図7は、非ヌクレオシド性固相支持試薬の例示実施態様を示す。
【図8A】図8Aは、ヌクレオシド性固相支持試薬の例示実施態様を示す。
【図8B】図8Bは、ヌクレオシド性固相支持試薬の例示実施態様を示す。
【図9A】図9Aは、5’−ヒドロキシルにおいてNH−ローダミンによって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図9B】図9Bは、5’−ヒドロキシルにおいてNH−ローダミンによって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図9C】図9Cは、5’−ヒドロキシルにおいてNH−ローダミンによって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図9D】図9Dは、5’−ヒドロキシルにおいてNH−ローダミンによって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図10A】図10Aは、その3−ヒドロキシルにおいてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図10B】図10Bは、その3−ヒドロキシルにおいてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図10C】図10Cは、その3−ヒドロキシルにおいてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図11A】図11Aは、その5’−ヒドロキシルにおいてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドをインサイチュ合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図11B】図11Bは、その5’−ヒドロキシルにおいてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドをインサイチュ合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図11C】図11Cは、その5’−ヒドロキシルにおいてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドをインサイチュ合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図11D】図11Dは、その5’−ヒドロキシルにおいてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドをインサイチュ合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図12A】図12Aは、その5’−末端においてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドをインサイチュ合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図12B】図12Bは、その5’−末端においてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドをインサイチュ合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図12C】図12Cは、その5’−末端においてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドをインサイチュ合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【技術分野】
【0001】
1.関連出願への相互参照
この出願は、米国特許法§119(e)の下、2006年3月31日に出願された仮出願第60/787,777号(この開示は、その全体が参考として本明細書に援用される)に対する利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
2.背景
蛍光染料の、検出標識としての使用は、分子生物学、細胞生物学、および分子遺伝学において広く行われている。例えば、蛍光標識オリゴヌクレオチドの使用は、現在、種々の異なるアッセイにおいて広く使用されている。そのようなアッセイとして、例えば、ポリヌクレオチド配列決定、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、核酸アレイにおけるハイブリダイゼーションアッセイ、蛍光偏光実験、および核酸増幅アッセイ、例えば、蛍光プローブおよび/またはプライマーによって行われるポリメラーゼ連鎖増幅アッセイなどのアッセイが挙げられる。
【0003】
いくつかの蛍光標識は、蛍光ホスホロアミダイト試薬を用いインサイチュに合成される、新生または完成オリゴヌクレオチド鎖に対し付着させることが可能である。例えば、蛍光ホスホロアミダイト試薬は市販されている(例えば、Glen Research Corporation,Sterling,VAの2006年製品カタログを参照されたい)。この試薬では、フルオレセイン環の3’−、および6’−環外酸素原子が、副反応を阻止するために、ピバロイル基によって保護される。これらの基によるフルオレセイン環の修飾は、閉されたスピロラクトン形の3−位置にカルボン酸基を保持し、該カルボン酸塩からの、ホスホロアミダイト基に対するプロトン供与を阻止する。もしもプロトン供与が起こると、このホスホロアミダイト基は有力な脱離基に変換されることになり、この試薬の分解を招くことになる。このフルオレセイン環はさらに、いずれも核酸塩基の保護基を除去し、合成オリゴヌクレオチドを合成樹脂から切り離すための標準法である、新生オリゴヌクレオチドを酸化するために用いられる条件、およびアンモニア水による処理に対して安定である。
【0004】
残念ながら、多くのローダミン染料は、その蛍光特性に対し否定的な影響を及ぼす、合成オリゴヌクレオチドの酸化、および脱保護/切り離しのために一般的に使用される試薬で処理されると、化学的修飾に対して感受性を持つ。そのため、ローダミン染料は、一般に、合成、脱保護、および合成樹脂からの切り離し後にオリゴヌクレオチドに付着される。これは、追加の工程および手間を加えることになり、ローダミン標識オリゴヌクレオチドの全体合成においてより大きなコストおよび不便の原因となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記およびその他の限界のために、最近は、ホスホロアミダイト試薬として僅かに二つのローダミン染料しか市販されていない、すなわち、テトラメチルローダミン(”TAMRA”)、およびローダミンX(”ROX”)である。固相化学合成の際に、異なる膨大な数のローダミン染料によるオリゴヌクレオチドの標識化を可能とするさらに新たな試薬が得られるならば、それは望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
3.概要
一局面において、本開示は、適切な波長の入射光によって照射されると蛍光を発するローダミン染料を含む標識によって、合成オリゴヌクレオチドを標識するのに有用な試薬を提供する。この標識は、単一のローダミン染料を含むことが可能であるが、あるいは、複数の染料の少なくとも一つがローダミン染料である、染料ネットワークを含むことが可能である。これらの試薬は、オリゴヌクレオチドの段階的合成の際、合成オリゴヌクレオチドを直接ローダミン含有標識によって標識するのに使用することが可能であり、このため、ローダミン染料によって標識されるオリゴヌクレオチドを得るために必要な操作工程が低減される。さらに、標識が、段階合成の際、直接オリゴヌクレオチドに付着されるので、標識オリゴヌクレオチドからの、未結合標識の、HPLC分離−これは、現在行われている、ローダミンNHSエステルなどの、合成後ローダミン標識試薬を用いる場合には必要となる−が不要になる。
【0007】
これらの試薬は、オリゴヌクレオチドを、その3’末端、その5’末端、および/または、一つ以上の内部位置において標識するのに使用することが可能である。その標識は、オリゴヌクレオチドの末端ヒドロキシル(単数または複数)、オリゴヌクレオチドを含む一つ以上の核酸塩基に付着させることが可能であり、あるいは、オリゴヌクレオチド鎖を含む二つのヌクレオチドの間に配置することも可能である。したがって、この試薬は、非ヌクレオシド性合成試薬(例えば、図3および5を参照)、ヌクレオシド性合成試薬(例えば、図4および6を参照)、および/またはヌクレオシド性固相支持体(例えば、図8を参照)の形状を取ることが可能である。
【0008】
この合成試薬は、一般に、標識部分、リン酸エステル前駆体(”PEP”)基、および、リン酸エステル前駆体基を標識部分に連結する、任意のリンカーを含む。リン酸エステル前駆体基は、一般に、オリゴヌクレオチドの段階的合成に使用されると、任意の脱保護および/または酸化の後、ヌクレオチド間リン酸エステル結合を最終的に生成する官能基を含む。ヌクレオチド間リン酸エステル結合を合成するために好適な、いくつかの種類の化学および官能基が、従来技術において既知であり、例として挙げるので限定のためではないが、例えば、ホスホロアミダイトPEP基を利用する亜リン酸トリエステル(例えば、Letsingerら、1969,J.Am.Chem.Soc.91:3350−3355;Letsingerら、1975,J.Am.Chem.Soc.97:3278;Matteucci & Caruthers,1981,J.Am.Chem.Soc.103:3185;Beaucage & Caruthers,1981,Tetrahedron Lett.22:1859を参照)、2−クロロフェニル−、または2,5−ジクロロフェニル−リン酸PEP基(例えば、Sproat & Gait,“Solid Phase Synthesis of Oligonukleotides by the Phosphodiester Method”)」 In: Oligonucleotide Synthesis,A Practical Approach,Gait,Ed.,1984,IRL Press,pages 83−115を参照)、H−リン酸PEP基を利用するH−リン酸化学(例えば、Gareggら、1985,Chem.Scr.25:280−282;Gareggら、1986,Tet.Lett.27:4051−4054;Gareggら、1986,Tet.Lett.27:4055−4058;Gareggら、1986,Chem.Scr.26:59−62;Froehler & Matteucci,1986,Tet.Lett.27:469−472;Froehlerら、1986,Nucl.Acids Res.14:5399−5407を参照)が挙げられる。これら各種のPEP基の外、後に発見されたPEP基も、本明細書に記載される合成試薬の、リン酸エステル前駆体基を含むことが可能である。PEP基の特定名は、結果の成否を決める因子ではなく、標識オリゴヌクレオチドを合成するために望ましい化学に依存する。ある実施態様では、リン酸エステル前駆体基は、フォルスフォロアミダイト基を含む。
【0009】
標識部分とリン酸エステル前駆体基を連結する任意のリンカーは、この標識オリゴヌクレオチドの合成のために用いられる合成条件に対して安定なものである限り、原子または官能基同士の、事実上任意の組み合わせを含むことが可能である。リンカーは、指定の特性、例えば、所望の条件下で分断される能力を持つように設計することが可能である。
【0010】
合成試薬はさらに、ヌクレオシド、または他の基または成分がそれに対して付着することが可能な、一つ以上の合成ハンドルを任意に含んでもよい。この合成ハンドルは、標識オリゴヌクレオチドの段階的合成時に選択的に除去することが可能な保護基を含み、そのため、樹脂からの切り離し前に、成分の、合成オリゴヌクレオチドに対する付着を可能としてもよいし、あるいはそれとは別に、合成ハンドルは、脱保護、および/または、合成オリゴヌクレオチドの合成樹脂からの切り離しのために使用される条件に対して安定な保護基を含み、そのため、合成、脱保護、および合成樹脂からの切り離しの後、合成標識オリゴヌクレオチドに対する成分の付着を可能としてもよい。一つを超える合成ハンドルを含む、合成試薬を含む合成ハンドル同士は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0011】
ある実施態様では、合成試薬は、式−OReの保護されたヒドロキシルを含む、単一合成ハンドルを任意に含む。ここで、Reは酸に不安定な保護基を表す。
【0012】
この合成ハンドルは、標識部分に結合させることも可能であるし、あるいは、標識部分とリン酸エステル前駆体基を連結する任意のリンカーの中に含めることも可能である。式−OReの合成ハンドルが、任意のリンカーに含まれる実施態様は、その性質が、非ヌクレオシド性であってもよいし、あるいは、ヌクレオシド性であってもよい。後者の場合、リンカーはヌクレオシドを含み、合成ハンドルには、ヌクレオシドの糖成分のヒドロキシル基、通常、ヌクレオシド糖成分の5’−ヒドキシル基が与えられる。リンカーが合成ハンドルを含む、非ヌクレオシド性合成試薬の、特異的、非限定的実施態様が、図5に示される。リンカーが合成ハンドルを含む、ヌクレオシド性合成試薬の、特異的、非限定的実施態様が、図6に示される。
【0013】
固相支持試薬は、一般に、標識部分、Reは上に定義された通りである、式−OReの合成ハンドル、固相支持体、および、標識部分および合成ハンドルを、固相支持体に連結するリンカーを含む。合成ハンドルは、ヌクレオシドモノマー試薬がそれに対して結合することが可能な基を提供する。固相支持試薬は、同じであっても、異なってもよい、さらに別の、一つ以上の合成ハンドルを任意に含むことが可能である。
【0014】
それぞれが適切な官能基を含むか、または、適切な官能基を含むように誘導体形成することが可能なオリゴヌクレオチドの固相合成において固相支持体として使用するのに好適な材料については、広く各種のものが従来技術において知られ、例えば、ただしこれらに限定されないが、孔調節ガラス(CPG)、ポリスチレン、および各種グラフトコポリマーが挙げられる。これら各種材料は全て、本明細書に記載される固相支持試薬における固相支持体として使用するのに好適である。
【0015】
固相支持体の形状は、決定的重要性を持たない。ほぼ任意の形状の利用が可能である。例えば、固相支持体は、球形、不規則形状のビーズ、立方体、直方体、円筒形、円筒管、または場合によってはシート状であってもよい。固相支持体は、多孔性であってもよいし、非多孔性であってもよい。ある実施態様では、固相支持体は、CPG、またはポリスチレンビーズである。ある実施態様では、固相支持体は、CPG、またはポリスチレンビーズである。
【0016】
標識部分と合成ハンドルを、固相支持体に連結するリンカーは、オリゴヌクレオチドの固相合成のために通常用いられる合成条件に対して安定なものである限り、原子または官能基同士の、事実上任意の組み合わせを含むことが可能であって、その構造は、直線状、分枝状、または環状であってもよいし、あるいは、直線、分枝、および/または環状構造同士の任意の組み合わせを含むことが可能である。リンカーは、指定の特性、例えば、所望の条件下に切断可能とされる能力を持つように設計することが可能である。ある実施態様では、リンカーは、指定の条件下で切断されて、試薬の残余部分から、固相支持体の放出を可能とする結合を含む。例えば、リンカーは、オリゴヌクレオチド合成条件下では安定であるが、合成オリゴヌクレオチドを脱保護するために使用される条件(例えば、水酸化アンモニウムにおける55℃または室温でのインキュベーション)に対しては不安定となる結合を含むことが可能である。このような特異的に切断可能な結合は、従来技術において周知であり、例えば、ただしこれらに限定されないが、エステル類、炭酸エステル類、ジイソプロピルシロキシエーテル類、リン酸エステル修飾体などが挙げられる。
【0017】
合成試薬に関して前述したように、固相支持試薬のリンカーは、合成ハンドルを含むことが可能であり、その性質は、ヌクレオシド性、または非ヌクレオシド性であることが可能である。非ヌクレオシド性固相支持試薬の、特異的、非限定的実施態様が、図7に示される。ヌクレオシド性固相支持試薬の、特異的、非限定的実施態様が、図8に示される。
【0018】
本明細書に記載される合成および固相支持試薬の標識部分は、ローダミン染料を含む。ローダミン染料の3’−、および6’−位置における環外窒素原子は、一次または二次アミンに含まれるように未置換であるか、または一置換され、さらに保護基によって置換される(3’−および6’−位置において一次または二次アミン基を有する、未保護ローダミン染料を、本明細書では「NH−ローダミン」と呼び、3’−および6’−位置において保護基を有するローダミン染料を、本明細書では「N−保護NH−ローダミン」と呼ぶ)。
【0019】
保護基は、標識オリゴヌクレオチドを合成するために通常用いられる合成条件、例えば、オリゴヌクレオチドの固相合成に通常用いられるトリエステル化学条件に対して安定なものである限り、事実上任意の、特異的除去が可能な基であってもよい。アミド、例えば、カルボキサミド、スルフォナミド、フォスフォラミドなどを形成する基によって、NH−ローダミンの3’−および6’−二次または一次アミンを保護することによって、N−保護NH−ローダミンが、閉鎖されたラクトン形で存在することが可能とされ、そのため、ローダミンが、合成後操作または精製を要することなく、オリゴヌクレオチドの段階的合成において使用が可能とされることが発見された。実験実施例で証明されるように、N−保護NH−ローダミンを含むホスホロアミダイト試薬は、オリゴヌクレオチドの段階的合成に一般的に使用される溶媒に可溶であり、複数ラウンドのDMT脱保護、結合、酸化、およびキャップ形成に対してばかりでなく、濃縮水酸化アンモニウムによる処理、すなわち、任意の環外アミン保護基を脱保護し、合成樹脂から合成オリゴヌクレオチドを切り離すために一般的に使用される条件に対しても安定である。
【0020】
この保護基は、不安定で、合成された標識オリゴヌクレオチドの核酸塩基保護基を除去するために使用される条件下で除去可能であってもよいし、あるいはそれとは別に、この保護基は、これらの条件には安定であるが、他の条件に対しては不安定であってもよい。多くの場合、合成された標識オリゴヌクレオチドの核酸塩基保護基を除去するため、および/または、合成樹脂から標識された合成オリゴヌクレオチドを切り離すために使用される条件に対して不安定である保護基を利用することが望ましいようである。
【0021】
ある実施態様では、保護基は、式−C(O)R10のアシル基である。この式において、R10は、低級アルキル、メチル、X、−ORb、シアノ、またはニトロ基によって任意に一置換される、低級アルキル、メチル、−CX3、−CHX2、−CH2X、−CH2−ORb、およびフェニルから選ばれ、ここで、Rbは、低級アルキル、ピリジル、およびフェニルから選ばれ、各Xは、ハロ基、通常はフルオロ、クロロ、またはブロモである。ある特定の、非限定的実施態様では、R10は、t−ブチル、またはトリフルオロメチルである。
【0022】
標識部分はさらに、別の保護された蛍光担体を含み、そのため、N−保護NH−ローダミン染料が、より大きなエネルギー転移染料ネットワークの一員とされてもよい。このようなエネルギー転移染料ネットワークは、従来技術で周知であり、分光特性が適合されるか、または、相互の相対的距離が調整される複数の蛍光担体の組み合わせを含み、そのため、ネットワークの中の一蛍光担体が、適切な波長の入射光によって励起されると、ネットワークの別の蛍光担体にその励起エネルギーを転移し、これが、次に、その励起エネルギーを、ネットワークのさらに別の蛍光担体に転移し、この過程を繰り返し、ネットワークの最後の受容蛍光担体による蛍光がもたらされる。このようなネットワークは、長いStokesシフトを持つ標識を生ずる。このようなネットワークでは、ネットワークの別の蛍光担体に励起を転移する、または供与する蛍光担体を、「ドナー」と呼ぶ。別の蛍光担体、およびそれに対するフルオレセイン試薬から励起エネルギーを受容する、またはアクセプトする蛍光担体は、「アクセプター」と呼ばれる。二つの染料しか含まない染料ネットワークでは、通常、一方の染料は、ドナーとして活動し、他方は、アクセプターとして活動する。三つ以上の、異なる染料を含む染料ネットワークでは、少なくとも一つの染料は、ドナーおよびアクセプターの両方として活動する。
【0023】
二つ、三つ、四つ、場合によってはさらに多くの染料を含むエネルギー転移染料ネットワークが従来技術で周知である(例えば、US2006/057565を参照)。これらのネットワークで使用され、固相合成オリゴヌクレオチドにおける使用のために好適に保護することが可能な染料であれば、いずれのものでも本明細書に記載される標識部分に含めることが可能である。
【0024】
本明細書に記載される合成および固相支持試薬のある実施態様では、標識部分はさらに、N−保護NH−ローダミンに対し適切に保護されたドナーを含む。脱保護されると、これらのドナーは、その励起エネルギーを、このNH−ローダミンに転移し、そのため、NH−ローダミンは、ドナーの励起と同時に蛍光を発射する。
【0025】
本明細書に記載される合成および固相支持試薬のある実施態様では、標識部分はさらに、N−保護NH−ローダミンに対し適切に保護されたアクセプターを含む。脱保護されると、これらのアクセプターは、ドナーNH−ローダミンから、その励起エネルギーを受容し、そのため、このアクセプターは、ドナーNH−ローダミンの励起と同時に蛍光を発する。
【0026】
ドナーまたはアクセプターの性質は、該標識部分を含むNH−ローダミンの性質に依存する。広範囲のローダミン染料においてドナーとして活動することが可能な蛍光担体の例は、従来技術において周知である。このようなドナーの非限定的例としては、キサンテン染料(例えば、フルオレセイン、ローダミン、およびロドール)、ピレン染料、クマリン染料(例えば、ヒドロキシおよびアミノクマリン)、シアニン染料、フタロシアニン染料、およびランテニド複合体が挙げられる。ローダミン染料においてアクセプターとして活動することが可能な蛍光担体の例も従来技術で周知である。このようなアクセプターの非限定的例としては、ローダミン染料、およびシアニン染料が挙げられる。オリゴヌクレオチドを合成するために用いられる合成条件、例えば、オリゴヌクレオチドの固相合成に通常用いられる亜リン酸トリエステル化学条件下における使用のために適切に保護することが可能なものであれば、これららの染料のいずれのものも、本明細書に記載される合成および固相支持試薬においてドナーまたはアクセプターとして使用することが可能である。
【0027】
エネルギーが、ドナーからアクセプターに転移される機序は決定的に重要ではない。このようなドナー−アクセプターペアが動作可能となるために必要なのは、アクセプターが、ドナーの励起に反応して蛍光を発することだけである。
【0028】
標識部分はさらに、非蛍光的アクセプターを含んでもよい。このような非蛍光的アクセプターは、該標識部分を含むNH−ローダミン、またはその他の蛍光染料(単数または複数)の蛍光の全体または一部を消光させるために使用することが可能である。本明細書に記載されるNH−ローダミンなどのローダミン染料の消光剤として活動することが可能な、そのような非蛍光成分の例としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、WO01/86001に記載される各種非蛍光消光剤、および、US2005/0164225に記載される各種非蛍光消光剤が挙げられる。なお、これらの開示を、引用により本明細書に含める。
【0029】
ある実施態様では、標識部分はさらに、本明細書で記載される、N−保護NH−ローダミン染料を含むドナー染料、または、フルオレセイン染料であって、その環外3’−および6’−酸素原子が、オリゴヌクレオチド合成条件、例えば、オリゴヌクレオチドの固相合成に通常用いられる亜リン酸トリエステル化学条件に対しては安定であるが、合成オリゴヌクレオチドを脱保護するために用いられる条件に対して不安定な保護基によって保護されるフルオレセイン染料を含む。好適な保護基は、従来技術で周知であり、例えば、ただしこれらに限定されないが、アシル基カルボン酸塩およびカルバミン酸塩が挙げられる。3’−および6’−環外酸素原子において保護基を含むフルオレセイン染料を、本明細書では「O−保護フルオレセイン」と呼ぶ。ある特異的、非限定的実施態様では、O−保護フルオレセインにおける保護基は、アシル基である。
【0030】
N−保護NH−ローダミン、またはO−保護フルオレセインドナー染料、およびN−保護NH−ローダミンアクセプター染料は、互いに様々な方向性において、直接またはリンカーを介して結合することが可能である。ある実施態様では、ドナーは、N−保護NH−ローダミンアクセプターの2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置に対し、その2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置を通じて、任意にリンカーの助けを借りて結合される。ある実施態様では、ドナーおよびアクセプターは、後の節においてさらに詳細に記載されるように、頭部対頭部、頭部対尾部、尾部対尾部、または側部対側部の方向性において相互に結合される。
【0031】
染料同士を連結する任意のリンカーは、オリゴヌクレオチド合成条件、例えば、オリゴヌクレオチドの固相合成に通常用いられる亜リン酸トリエステル化学条件に対して安定である原子および/または官能基である限り、事実上全ての組み合わせを含んでもよい。原子および/または官能基の組み合わせは、リンカーの特性および/または長さが望み通りとなるように注文に合わせて選択することが可能である。エネルギー転移染料ネットワーク利用という観点において、フルオレセインおよびローダミン染料を相互に結合するのに有用なリンカーは種々のものがあり、それらは従来技術において既知である(例えば、US2006/057565、米国特許第7,015,000号、米国特許第6,627,748号、米国特許第6,544,744号、米国特許第6,177,247号、米国特許6,150,107号、米国特許第6,028,190号、米国特許5,958,180号、米国特許第5,869,255号、米国特許第5,853,992号、米国特許5,814,454号、米国特許第5,804,386号、米国特許第5,728,528号、米国特許第5,707,804号、および米国特許第5,688,648号を参照されたい、なおこれらの開示を、引用により本明細書に含める)。これらのリンカーは全て、本明細書に記載される試薬において、O−保護フルオレセインをN−保護NH−ローダミンに結合するために使用することが可能である。ある実施態様では、リンカーは、その性質が剛性であり、長さが約8から16Aである。
【0032】
標識部分、リン酸エステル前駆体基、および合成試薬の任意の合成ハンドル、および、標識部分、固相支持体、および固相支持試薬の合成ハンドルは、各種基および成分が、それぞれの機能を実行する能力を妨げない限り、どのような方式、方向性で相互に結合させることも可能である。標識部分は、通常、該標識部分を構成する複数の染料のうちの一つの官能基に結合されるリンカーを通じて、特定の試薬を含む、他の成分または基の一つに結合されるか、またはそれとは別に、染料ネットワークの二つ以上の染料を連結するリンカーに結合される。標識部分が、単一のN−保護NH−ローダミン蛍光担体しか含まない実施態様では、該標識部分は、NH−ローダミン環に対し、該NH−ローダミン環の、閉じた、スピロラクトン形で存在する能力を妨げない限り、該環の任意の位置を介して試薬と結合することが可能である。適切な位置としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、環外窒素原子に隣接する炭素原子、または、フェニル成分上の原子、例えばローダミン染料の2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置が挙げられる。ある実施態様では、標識部分は、N−保護NH−ローダミン染料の5−、または6−位置を介して試薬の基または成分に結合される。
【0033】
標識部分が染料ネットワークを含む実施態様では、標識部分は、試薬の所望の機能を妨げない、ネットワークを構成する染料の内の任意の一つの任意の位置を介して試薬の任意の基または成分に対し、または、ネットワークの二つ以上の染料を連結するリンカーに対し連結されてもよい。標識部分が、N−保護NH−ローダミンアクセプターの外に、O−保護フルオレセインまたはN−保護NH−ローダミンドナーを含む、ある特定実施態様では、ドナーまたはアクセプターにおける任意の利用可能な位置、例えば、ドナーまたはアクセプターの2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置において、標識部分を、試薬の基または成分に連結させることが可能である。ある実施態様では、標識部分は、ドナーまたはアクセプターの5−または6−位置を介して、試薬の基または成分に連結される。
【0034】
ある実施態様では、標識部分はドナーと、N−保護NH−ローダミンアクセプターを連結するリンカーを介して、試薬の基または成分に連結される。
【0035】
別の局面では、本開示は、本明細書に記載される試薬の合成に有用な中間分子、本明細書に記載される試薬の製造法、本明細書に記載される試薬によって標識される化合物、例えば、標識オリゴまたはポリヌクレオチド、および、様々な背景における標識化合物の使用法を提供する。本開示の種々の局面の全てが、下記にさらに詳細に記述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
5.詳細な説明
前述の一般的説明、および後述の詳細な説明は、共に、例示と説明のためのみのものであって、本明細書に記載される組成物および方法を限定することを意図するものではないことを理解しなければならない。本開示において、「または」の使用は、別様に言明しない限り、「および/または」を意味する。同様に、「複数対象を含む」、「単数対象を含む」、「含む」、「単数対象を包含する」、「複数対象を包含する」、および「包含する」という用言は、限定的であることを意図するものではない。
【0037】
5.1 定義
本明細書で用いる場合、下記の用語および語句は、下記の意味を持つことが意図される。
【0038】
「アルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親アルカン、アルケン、またはアルキンの単一炭素原子から1個の水素原子が除去されることによって得られる、表示の炭素原子数(すなわち、C1−C6は、1から6個の炭素原子を意味する)を有する、飽和または不飽和、分枝または直鎖または環状の、一価の炭化水素ラジカルを指す。典型的アルキル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、メチル;エチル類、例えば、エタニル、エテニル、エチニル;プロピル類、例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル、シクロプロパン−1−イル、プロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル、シクロプロプ−1−エン−1−イル;シクロプロプ−2−エン−1−イル、プロプ−1−イン−1−イル、プロプ−2−イン−1−イルなど;ブチル類、例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブト−1−エン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブト−1−エン−1−イル、シクロブト−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブト−1−イン−1−イル、ブト−1−イン−3−イル、ブト−3−イン−1−イルなどが挙げられる。特定の飽和レベルが意図される場合は、下に定義されるように、「アルカニル」、「アルケニル」、および/または「アルキニル」などの名称が用いられる。本明細書で用いる場合、「低級アルキル」とは、(C1−C8)アルキルを意味する。
【0039】
「アルカニル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親アルカンの単一炭素原子から1個の水素原子が除去されることによって得られる、飽和した、分枝、直鎖または環状のアルキルを指す。典型的アルカニル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、メタニル;エタニル;プロパニル類、例えば、プロパン−1−イル、プロパン−2−イル(イソプロピル)、シクロプロパン−1−イルなど;ブタニル類、例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル(sec−ブチル)、2−メチル−プロパン−1−イル(イソブチル)、2−メチル−プロパン−2−イル(t−ブチル)、シクロブタン−1−イルなどが挙げられる。本明細書で用いる場合、「低級アルカニル」とは、(C1−C8)アルカニルを意味する。
【0040】
「アルケニル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親アルケンの単一炭素原子から1個の水素原子が除去されることによって得られる、少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を有する、不飽和の、分枝、直鎖または環状のアルキルを指す。この基は、二重結合(単数または複数)の周囲に、cisまたはtrans立体配座として存在してもよい。典型的アルケニル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、エテニル;プロペニル類、例えば、プロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル、プロプ−2−エン−2−イル、シクロプロプ−1−エン−1−イル;シクロプロプ−2−エン−1−イル;ブテニル類、例えば、ブト−1−エン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブト−1−エン−1−イル、シクロブト−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イルなどが挙げられる。本明細書で用いる場合、「低級アルケニル」とは、(C1−C8)アルケニルを意味する。
【0041】
「アルキニル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親アルキンの単一炭素原子から1個の水素原子が除去されることによって得られる、少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有する、不飽和の、分枝、直鎖または環状のアルキルを指す。典型的アルキニル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、エチニル;プロピニル類、例えば、プロプ−1−イン−1−イル、プロプ−2−イン−1−イルなど;ブチニル類、例えば、ブト−1−イン−1−イル、ブト−1−イン−3−イル、ブト−3−イン−1−イルなどが挙げられる。本明細書で用いる場合、「低級アルキニル」とは、(C2−C8)アルキニルを意味する。
【0042】
「アルキルジイル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親アルカン、アルケン、またはアルキンの単一炭素原子から1個の水素原子が除去されることによって得られるか、または、親アルカン、アルケン、またはアルキンの単一炭素原子から2個の水素原子が除去されることによって得られる、表示の炭素原子数(すなわち、C1−C6は、1から6個の炭素原子を意味する)を有する、飽和または不飽和の、分枝、直鎖または環状の、二価の炭化水素基を指す。この二つの、一価のラジカル中心、または、この二価のラジカル中心の各結合手は、同じまたは異なる原子と結合腕を形成することが可能である。典型的アルキジル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、メタンジイル;エチルジイル類、例えば、エタン−1,1−ジイル、エタン−1,2−ジイル、エテン−1,1−ジイル、エテン−1,2−ジイル;プロピルジイル類、例えば、プロパン−1,1−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロプロパン−1,2−ジイル、プロプ−1−エン−1,1−ジイル、プロプ−1−エン−1,2−ジイル、プロプ−2−エン−1,2−ジイル、プロプ−1−エン−1,3−ジイル、シクロプロプ−1−エン−1,2−ジイル、シクロプロプ−2−エン−1,2−ジイル、シクロプロプ−2−エン−1,1−ジイル、プロプ−1−イン−1,3−ジイルなど;ブチルジイル類、例えば、ブタン−1,1−ジイル、ブタン−1,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、2−メチル−プロパン−1,1−ジイル、2−メチル−プロパン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル;シクロブタン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,3−ジイル、ブト−1−エン−1,1−ジイル、ブト−1−エン−1,2−ジイル、ブト−1−エン−1,3−ジイル、ブト−1−エン−1,4−ジイル、2−メチル−プロプ−1−エン−1,1−ジイル、2−メタニリデン−プロパン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,4−ジイル、シクロブト−1−エン−1,2−ジイル、シクロブト−1−エン−1,3−ジイル、シクロブト−2−エン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブト−1−イン−1,3−ジイル、ブト−1−イン−1,4−ジイル、ブタ−1,3−ジイン−1,4−ジイルなどが挙げられる。特定の飽和レベルが意図される場合、アルカニルジイル、アルケニルジイル、および/またはアルキニルジイルという名称が用いられる。ある実施態様では、アルキジル基は、(C1−C8)アルキジルである。特定の実施態様は、ラジカル中心が、末端炭素にある、飽和、非環状アルカニルジイル基、例えば、メタンジイル(メタノ);エタン−1,2−ジイル(エタノ);プロパン−1,3−ジイル(プロパノ);ブタン−1,4−ジイル(ブタノ)(これらは、下記に定義するように、アルキレノとも呼ばれる)などを含む。本明細書で用いる場合、「低級アルキル」とは、(C1−C8)アルキルジイルを意味する。
【0043】
「アルキレン」は、それ自体、または別の置換基の一部として、直鎖または分枝親アルカン、アルケン、またはアルキンの、2個の末端炭素原子のそれぞれから、1個の水素原子が除去されることによって得られるか、または、親シクロアルキルの、2個の異なる環原子のそれぞれから1個の水素原子が除去されることによって得られる、2個の末端一価ラジカル中心を有する、直鎖、飽和または不飽和のアルキルジイル基を指す。ある特定のアルキレンにおける二重結合または三重結合の位置は、もしもある場合は、角型括弧において示される。典型的アルキレン基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、メチレン(メタノ);エチレン類、例えば、エタノ、エテノ、エチノ;プロピレン類、例えば、プロパノ、プロプ[1]エノ、プロパ[1,2]ジエノ、プロプ[1]イノなど;ブチレン類、例えば、ブタノ、ブト[1]エノ、ブト[2]エノ、ブタ[1,3]ジエノ、ブト[1]イノ、ブト[2]イノ、ブタ[1,3]ジイノなどが挙げられる。特定の飽和レベルが意図される場合、アルカノ、アルケノ、および/またはアルキノという名称が用いられる。ある実施態様では、アルキレン基は、(C1−C8)または(C1−C3)アルキレンである。特定実施態様は、直鎖の、飽和アルカノ基、例えば、メタノ、エタノ、プロパノ、ブタノなどを含む。本明細書で用いる場合、「低級アルキル」とは、(C1−C8)アルキレンを意味する。
【0044】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルカニル」、「ヘテロアルケニル」、「ヘテロアルキニル」、「ヘテロアルキルジイル」、および「ヘテロアルキレン」は、それ自体、または別の置換基の一部として、炭素原子の一つ以上が、独立に、同じ、または異なるヘテロ原子、またはヘテロ原子基によって置換される、それぞれ、アルキル、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アルキルジイル、およびアルキレン基を指す。炭素原子を置換することが可能な、典型的ヘテロ原子および/またはヘテロ原子基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、−O−、−S−、−S−O−、−NR’−、−PH−、−S(O)−、−SO2−、−S(O)NR’−、−SO2NR’−など、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ここで、R’は、水素か、または置換基、例えば、(C1−C8)アルキル、(C6−C14)アリール、または(C7−C20)アリールアルキルである。
【0045】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、それぞれ、「アルキル」および「ヘテロアルキル」基の環状形を指す。ヘテロアルキル基では、ヘテロ原子は、分子の残余部分に付着する位置を占めることが可能である。典型的シクロアルキル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、シクロプロピル;シクロブチル類、例えば、シクロブタニル、およびシクロブテニル;シクロペンチル類、例えば、シクロペンタニル、およびシクロペンテニル;シクロヘキシル類、例えば、シクロヘキサニル、およびシクロヘキセニルなどが挙げられる。典型的ヘテロシクロアルキル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、テトラヒドロフラニル(例えば、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イルなど)、ピペリジニル(例えば、ピペリジン−1−イル、ピペリジン−2−イルなど)、モルフォリニル(例えば、モルフォリン−3−イル、モルフォリン−4−イルなど)、ピペラジニル(例えば、ピペラジン−1−イル、ピペラジン−2−イルなど)などが挙げられる。
【0046】
「親芳香族環系」とは、共役π電子システムを有する、不飽和の単環または多環システムを指す。「親芳香族環系」の定義の中に指定されて含まれるのは、環のうちの一つ以上が芳香族であり、かつ、環のうちの一つ以上が、飽和か不飽和である、融合環システムであって、例えば、フルオレン、インダン、インデン、フェナレン、テトラヒドロナフタレンなどである。典型的親芳香族環系としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、テトラヒドロナフタレン、トリフェニレン、トリナフタレンなどが挙げられる。
【0047】
「アリール」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親芳香族環系の単一炭素原子から1個の水素原子が除去されることによって得られる、表示の炭素原子数(すなわち、C6−C14は、6から14個の炭素原子を意味する)を有する、一価の芳香族炭化水素基を指す。典型的アリール基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオロアンテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどの外、その、種々のヒドロ異性形が挙げられる。指定の例示アリールとして、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0048】
「アリールアルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、炭素原子に、ある実施態様では、末端、またはsp3炭素原子に結合する水素原子のうちの一つが、アリール基によって置換される非環状アルキル基を指す。典型的アリールアルキル基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエテン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエテン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イルなどが挙げられる。ある指定の飽和度を有するアルキル成分が望まれる場合、アリールアルカニル、アリールアルケニル、および/またはアリールアルキニルという名称が用いられる。ある定められた数の炭素原子、例えば、(C7−C20)が言及される場合、その数字は、該アリールアルキル基を構成する炭素原子の全数を指す。
【0049】
「親ヘテロ芳香族環系」は、一つ以上の炭素原子が、それぞれ独立に、同じか、または異なるヘテロ原子基によって置換される親芳香族環系を指す。炭素原子を置換する、典型的ヘテロ原子、またはヘテロ原子基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、N、NH、P、O、S、S(O)、SO2、Siなどが挙げられる。具体的に「親ヘテロ芳香族環系」の定義の中に含まれるものは、環のうちの一つ以上が芳香族であり、環のうちの一つ以上が飽和または不飽和である、融合環システム、例えば、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなどである。さらに、「親ヘテロ芳香族環系」の定義の中に含まれるものは、一般的置換基を含む、認知済みの環、例えば、ベンゾピロン、および1−メチル−1,2,3,4−テトラゾルである。典型的親ヘテロ原子環システムとしては、例えば、ただしこれらに限定されないが、アクリジン、ベンジミダゾール、ベンジソキサゾール、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール、ベンゾフラン、ベンゾピロン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾキサキン、ベンゾキサゾール、ベンゾキサゾリン、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどが挙げられる。
【0050】
「ヘテロアリール」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親ヘテロ芳香族環系の単一原子から1個の水素原子が除去されることによって得られる、表示の数の環原子(例えば、「5−14員」とは、5から14個の環原子を意味する)を有する、一価のヘテロ芳香基を指す。典型的ヘテロアリール基としては、例えば、ただしこれらに限定されないが、アクリジン、ベンジミダゾール、ベンズイソキサゾール、ベンゾジオキサン、ベンゾジアキソール、ベンゾフラン、ベンゾピロン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾキサジン、ベンゾキサゾール、ベンゾキサゾリン、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどの外、その、種々のヒドロ異性形が挙げられる。
【0051】
「ヘテロアリールアルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、炭素原子に、ある実施態様では、末端、またはsp3炭素原子に結合する水素原子のうちの一つが、ヘテロアリール基によって置換される非環状アルキル基を指す。ある指定の飽和度を有するアルキル成分が意図される場合、ヘテロアリールアルカニル、ヘテロアリールアルケニル、および/またはヘテロアリールアルキニルという名称が用いられる。ある定められた数の原子、例えば、6−20員のヘテロアリールアルキルが言及される場合、その数字は、該アリールアルキル基を構成する原子の全数を指す。
【0052】
「ハロアルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、水素原子のうちの一つ以上が、ハロゲンによって置換されるアルキル基を指す。したがって、「ハロアルキル」という用語は、モノハロアルキル類、ジハロアルキル類、トリハロアルキル類など、過ハロアルキル類までを含めることが意図される。例えば、「(C1−C2)ハロアルキル」という表現は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1−フルオロエチル、1,1−ジフルオロエチル、1,2−ジフルオロエチル、1,1,1−トリフルオロエチル、パーフルオロエチルなどを含む。
【0053】
上に定義した基は、さらに別の周知の置換基を創出するために一般に用いられる、接頭語および/または接尾語を含んでもよい。具体的、非限定的例として、「アルキルオキシ」および/または「アルコキシ」は、式−OR’’の基を指し、「アルキルアミン」は、式−NHR’’の基を指し、「ジアルキルアミン」は、式−NR’’R’’の基を指し、ここで、各R’’は、アルキルである。
【0054】
5.2 例示実施態様
本開示は、ローダミン染料を含む標識部分を担持するオリゴヌクレオチドを化学的に合成するために使用することが可能な試薬を提供する。従来、一部は、オリゴヌクレオチドの段階的化学合成において一般的に用いられる合成および/または脱保護条件に対して安定なローダミン含有合成試薬の入手の難しさのために、ローダミン標識オリゴヌクレオチドを化学的に合成することが困難であった。現在、アセチル基などの塩基不安定な保護基でNH−ローダミン染料の環外アミン基を保護することによって、オリゴヌクレオチドの固相合成に一般的に用いられる化学的合成および脱保護条件に対して安定なN−保護NH−ローダミン染料が得られることが発見された。その結果、ローダミン染料を含む標識部分で標識したオリゴヌクレオチドを合成するために使用される試薬の中に、N−保護NH−ローダミンを組み込むことが可能となり、そのため、標識を合成後に付着させる必要が回避される。標識は合成時に付着されるので、得られる標識オリゴヌクレオチドは、HPLCを使用することなく使用に備えて精製することが可能である。
【0055】
この試薬は、オリゴヌクレオチドの、段階的固相合成に関して周知の、試薬および化学の各種特性を利用し、オリゴヌクレオチド鎖の段階的固相合成時、ヒドロキシル基に付着することが可能な合成試薬の形を取ることも可能であるし、あるいは、ヌクレオシドホスホロアミダイト試薬、および/または、任意の他の試薬などのヌクレオシドモノマー試薬が、合成オリゴヌクレオチドを生成するために、段階的に結合される固相支持試薬の形をとることが可能である。
【0056】
合成および固相支持体試薬は、ヌクレオシド成分を含むことが可能であるという意味で、その性質がヌクレオシド性であってもよいし、あるいは、性質が非ヌクレオシド性であってもよい。
【0057】
本明細書に記載される試薬は全て、N−保護NH−ローダミン染料または成分を含む、標識部分を含む。このN−保護NH−ローダミン染料は、標識部分を構成する唯一の染料であってもよいし、あるいは、より大きな染料ネットワークを構成する二つ以上の染料のうちの一つであってもよい。固相支持試薬はさらに、固相支持体、および、追加の基がそれに結合することが可能な、一つ以上の合成ハンドルを含む。合成試薬はさらに、該試薬を、一次ヒドロキシル基に結合させるのに有用なリン酸エステル前駆体基を含み、かつ、任意に一つ以上の合成ハンドルを含んでもよい。これらの試薬を構成する、各種成分および基は、それぞれの機能を実行することを可能とする限り、いずれの方式、方向性で互いに結合させることも可能である。それらは、成分に含まれる結合基を介して相互に結合されてもよいし、あるいは、リンカーの助けを借りて相互に結合されてもよい。
【0058】
本明細書に記載される試薬を構成する、各種成分、基、およびリンカーは、より詳細に下記に記載される。
【0059】
5.3 リンカーおよび結合基
本明細書に記載される試薬を構成する、各種の基および成分は、通常、リンカーによって互いに接続される。いずれのものであれ、ある特定のリンカーとして何を選ぶかは、一部は、互いに連結される成分の内容に依存する。一般に、リンカーは、標識オリゴヌクレオチドの合成のために用いられる合成条件、例えば、亜リン酸トリエステル法によってオリゴヌクレオチドを合成するために一般的に用いられる条件に対して安定なものである限り、原子または官能基同士の、事実上任意の組み合わせを含むことが可能な、スペーサ成分を含み、その構造は直線状、分枝状、または環状であってもよく、あるいは、直線、分枝、および/または環状構造の組み合わせを含んでもよい。このスペーサー成分は、モノマー性であってもよいし、あるいは、ポリマー性の領域であっても、ポリマー性領域を含んでもよい。スペーサー成分は、特定の性質、例えば、特定条件下に分断される能力、または、特定の、剛性度、屈曲度、疎水度、および/または親水度を持つように設計されてもよい。
【0060】
下記にさらに詳細に記載されるように、本明細書に記載される試薬の多くの実施態様は、合成素子を指定の方式で縮合し所望の試薬を生成することによって合成される。各合成素子は、通常、所望の結合を形成するのに好適な、一つ以上の連結基を含む。一般に、連結基は、別の官能基Fzと反応することが可能であるか、または、活性化されると該別の官能基と反応することが可能となり共有結合Y−Zを生成する、官能基Fyを含む。ここで、Yは、Fyによって寄与される結合部分を表し、Zは、Fzによって寄与される結合部分を表す。このような基FyおよびFzは、本明細書では、「相補的官能基」と呼ばれる。
【0061】
互いに共有的結合を形成することが可能な相補的官能基ペアは、従来技術で周知される。ある実施態様では、FyまたはFzの一方が求核基を含み、FyまたはFzの他方が求電子基を含む。各種合成条件およびその他の条件に対して安定な結合(または、適切に活性化されると結合を形成するか、または形成することが可能な、その前駆体)を形成するために有用な、相補的求核基および求電子基は、従来技術で周知である。本明細書に記載される各種試薬において結合を実行するために使用することが可能な、適切な相補的求核および求電子基の例、および、それらによって形成される結合が、下記の表1に示される。
【0062】
【表1−1】
【0063】
【表1−2】
*従来技術で理解される活性化エステルは、一般に−C(O)Ωを有し、式中Ωは、優れた脱離基(例えば、オシキスクシニミジル、オキシスルフォスクシニミジル、1−オキシベンゾトリアゾリルなど)である。
**アジ化アシルは再編成されてイソシアネートとなることが可能である。
【0064】
したがって、リンカーは、一般に式LG−Sp−LGによって記述することが可能であり、式中、各LGは、他方に対して独立に、結合基を表し、Spは、スペーサー成分を表す。ある実施態様では、リンカー合成素子は、式FZ−Sp−FZによって記述することが可能であり、各FZは、他方に対して独立に、前述のような、相補的求核または求電子官能基ペアの一員を表す。特異的実施態様では、各FZは、他方に対して独立に、上の第1表に挙げた基から選ばれる。この種のリンカー合成素子は、式−Z−Sp−Z−のリンカー成分を形成する。式中、各Zは、他方に対して独立に、前述の結合の一部を表す。
【0065】
本明細書に記載される試薬において指定の基および成分を互いに連結するために好適な特異的リンカーは、該試薬の例示実施態様に関連してさらに詳細に後述される。本明細書の記載される試薬を含む様々な基および成分をお互いに連結するために使用され得るリンカーの非制限例示実施態様は図2において示される、Z1およびZ2はそれぞれ、互いに独立に、前述の官能基FZによって担当される結合の一部を表し、Kは、−CHおよび−N−から選ばれる。図2に描かれるリンカーのある特異的実施態様では、Z1またはZ2の一方は−NHであり、他方は、−O−、−C(O)−、および−S(O)2−から選ばれる。
【0066】
5.4 標識部分
本明細書に記載される試薬は全て、環外アミン基において、特異的性質を有する保護基によって保護されるNH−ローダミン染料を含む標識部分を含む。一般に、ローダミン染料は、四つの主要な特性によって特徴づけられる。すなわち、(1)親キサンテン環;(2)環外アミン置換基;(3)環外イミニウム置換基;および(4)オルト位置においてカルボキシル基によって置換されるフェニル基である。環外アミンおよび/またはイミニウム基は、通常、親キサンテン環のC3およびC6炭素原子に配置される。もっとも、親キサンテン環が、C3およびC4炭素、および/またはC5およびC6炭素に融合するベンゾ基を含む「拡張型」ローダミンも知られている。これらの拡張型ローダミンでは、特徴的環外アミンおよびイミニウム基は、拡張型キサンテン環の対応位置に配置される。
【0067】
カルボキシル置換フェニル基が、親キサンテン環のC9炭素に付着される。オルトカルボキシル置換基があるために、ローダミン染料は、二つの異なる形態として存在することが可能である。すなわち、(1)開放型、酸性形および(2)閉鎖型、ラクトン形である。いかなる動作理論によって拘束されることも意図するものではないが、本明細書に記載される例示のN−保護NH−ローダミン染料のNMRスペクトラムは、染料のスピロラクトン形と一致するので、本明細書に記載される試薬の標識部分を構成するN−保護NH−ローダミン染料は、閉鎖型スピロラクトン形を取ると考えられる。したがって、各種ローダミンは、その未保護形も含めて、本明細書では、閉鎖型スピロラクトン形として描かれる。しかしながら、これは、単に便利のためだけであり、本明細書に記載される試薬を、染料のラクトン形に限定することを意図するものではない。
【0068】
閉鎖型スピロラクトン形では、親キサンテン環のAおよびC環は、芳香族性であり、C3’およびC6’置換基は共にアミンである。本明細書に記載される標識部分に含まれるローダミン染料の環外アミン基は、これらのアミン基が一次または二次アミンとなるように、未置換であるか、一置換される。このようなローダミン染料は、本明細書では「NH−ローダミン」と呼ばれる。したがって、本明細書で用いる「NH−ローダミン」は、一般に、下記の親NH−ローダミン環構造のうちの一つを含む。
【0069】
【化20】
上に示した親NH−ローダミン環では、ローダミン染料の閉鎖型スピロラクトン形について通常使用される番号付け通則にならって採用した任意の番号付け通則を用いて、種々の炭素原子に番号を付してある。この番号付けシステムは、ただ便利のためだけに使用するのであって、いかなる意味でも限定的であることを意図しない。
【0070】
構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)の親NH−ローダミン環では、R3’およびR6’は、環外アミンを置換する水素または置換基を表す。このR3’および/またはR6’置換基は、同じであっても異なっていてもよく、置換または未置換の、アルキル、アリール、またはアリールアルキル基を含んでもよい。それとは別に、R3’および/またはR6’は、隣接炭素原子に架橋される置換基を含み、そのため、図示の窒素原子が、5−または6−環原子を含む環の中に含まれるようになってもよい。その環は、飽和していても、または未飽和であってもよく、環原子のうちの一つ以上が置換されていてもよい。環原子(単複)が置換される場合、置換基は、通常、互いに独立に、低級アルキル、C6−C10アリール、およびC7−C16アリールアルキル基から選ばれる。それとは別に、二つの隣接環原子は、アリール架橋、例えば、ベンゾまたはナフト基の中に含まれてもよい。R3’および/またはR6’基が水素または低級アルキルであるか、または、隣接炭素原子と共に任意に置換される環の中に含まれる、構造式(Ia)による、親NH−ローダミン環を含むローダミン染料の、非限定的例示実施態様が、図1Aに示される。R3’およびR6’基が水素または低級アルキルであるか、または、隣接炭素原子と共に任意に置換される環の中に含まれる、構造式(Ic)による、親NH−ローダミン環を含むローダミン染料の、非限定的例示実施態様が、図1Bに示される。
【0071】
構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)による親NH−ローダミン環の位置C1’、C2’、C2’’、C4’、C4’’、C5’、C5’’、C7’、C7’’、およびC8’は、互いに独立に、置換基によって置換されてもよい。これらの位置においてローダミン染料を置換するのに有用な基は、従来技術において周知であり、例えば、米国特許第4,622,400号、米国特許第5,750,409号、米国特許第5,847,162号、米国特許第6,017,712号、米国特許第6,080,852号、米国特許第6,184,379号、および米国特許第6,248,884号に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。これらの置換基は全て、本明細書に記載される親NH−ローダミン環を置換するために使用することが可能である。
【0072】
ある実施態様では、置換基は、互いに独立に、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、5−14員ヘテロアリール、6−20員ヘテロアリールアルキル、−Rb、および、−(CH2)x−Rbで、式中、xは1から10の範囲の整数で、Rbは、−X、−OH、−ORa、−SH、−SRa、−NH2、−NHRa、−NRcRc、−N+RcRcRc、ペルハロ低級アルキル、トリハロメチル、トリフルオロメチル、−B(OH)3、−B(ORa)3、−B(OH)O−、−B(ORa)2O−、−B(OH)(O−)2、−B(ORa)(O−)2、−P(OH)2、−P(OH)O−、−P(ORa)2、−P(ORa)O−、−P(O)(OH)2、−P(O)(OH)O−、−P(O)(O−)2、−P(O)(ORa)2、−P(O)(ORa)O−、−P(O)(OH)(ORa)、−OP(OH)2、−OP(OH)O−、−OP(ORa)2、−OP(ORa)O−、−OP(O)(OH)2、−OP(O)(OH)O−、−OP(O)(O−)2、−OP(O)(ORa)2、−OP(O)(ORa)O−、−OP(O)(ORa)(OH)、−S(O)2O−、−S(O)2OH、−S(O)2Ra、−C(O)H、−C(O)Ra、−C(S)X、−C(O)O−、−C(O)OH、−C(O)NH2、−C(O)NHRa、−C(O)NRcRc、−C(S)NH2、−C(O)NHRa、−C(O)NRcRc、−C(NH)NH2、−C(NH)NHRa、および−C(NH)NRcRcから選ばれ、ここで、Xはハロであり(好ましくは、フルオロ、またはクロロであり)、各Raは、他と独立に、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、5−14員ヘテロアリール、および6−20員ヘテロアリールアルキルから選ばれ、各Rcは、他と独立に、Raであるか、またはそれとは別に、同じ窒素原子に結合する二つのRcは、その窒素原子と一緒になって、5−8員の飽和または未飽和の環であって、通常、O、N、およびSから選ばれる、同じまたは異なる環ヘテロ原子のうちの一つ以上を任意に含んでよい環を形成してもよい。
【0073】
それとは別に、C1’およびC2’置換基、C7’およびC8’置換基、C5’およびC5’’置換基、および/またはC4’およびC4’’置換基は、C1’およびC2’置換基、およびC7’およびC8’置換基が、アリール架橋に同時に含まれない限り、一緒に合わされて、置換または未置換のアリール架橋、例えば、ベンゾ架橋を形成することが可能である。
【0074】
一般に、C1’、C2’、C2’’、C4’、C4’’、C5’、C5’’、C7’、C7’’、およびC8’を置換するために用いられる基は、ローダミン染料の反応停止を促進してはならない。ただし、ある実施態様では、反応停止性置換基が望ましい場合がある。ローダミン染料の反応を停止する傾向のある置換基としては、カルボニル、カルボキシレート、重金属、ニトロ、ブロモ、およびイオドが挙げられる。R3’および/またはR6’に配置されるフェニル基も、反応停止を招く傾向がある。
【0075】
さらに、構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)の、親NH−ローダミン環の位置C4、C5、C6、およびC7の炭素原子は、互いに独立に、任意の置換基を含んでもよい。これらの置換基は、前述の種々の置換基の中から選ぶことが可能である。ある実施態様では、位置C4およびC7の炭素原子がクロロ基によって置換され、そのため、親NH−ローダミン染料は、NH−4,7−ジクロロローダミン染料となる。
【0076】
本明細書に記載される試薬の標識部分の中に含めることが可能な、構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)による親NH−ローダミン環を含むローダミン染料は、莫大な数のものが従来技術で知られており、例えば、米国特許第6,248,884号、米国特許第6,111,116号、米国特許第6,080,852号、米国特許第6,051,719号、米国特許第6,025,505号、米国特許第6,017,712号、米国特許第5,936,087号、米国特許第5,847,162号、米国特許第5,840,999号、米国特許第5,750,409号、米国特許第5,366,860号、米国特許第5,231,191号、米国特許第5,227,487号、WO97/36960;WO99/27020;Lee et al.,1992,Nucl.Acids Res.20:2471−2483;Arden−Jacob,“Neue Lanwellige Xanthen−Farbstoffe fuer Fluoreszenzsonden und Farbstoff Lauer,Springer−Verlag,Germany,1993;Sauerら、1995,Fluorescence 5:247−261;Leeら、1997,Nucl.Acids Res.25:2816−2822;および Rosenblumら、1997,Nucl.Acids Res.25:4500−4504に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。これらの参考文献の中に記載されるもので、環外アミンが、本明細書に記載されるような一次または二次アミン、もしくは上記NH−ローダミン染料の4,7−ジクロロ類似体である染料は、いずれのものであっても、本明細書に記載される試薬の標識部分の中に含めることが可能である。
【0077】
標識部分の中に含まれる場合、親NH−ローダミン環の環外アミンは、指定の特性を有する保護基によって保護される。このように保護されたNH−ローダミンを、本明細書では、「N−保護NH−ローダミン」と呼ぶ。構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)の、親NH−ローダミン環に対応するN−保護NH−ローダミンは、下記に、構造式(IIa)、(IIb)、および(IIc)として示される。
【0078】
【化21】
構造式(IIa)、(IIb)、および(IIc)において、R’は水素またはR3’であり、R’’は水素またはR6’であり、R3’およびR6’は、上の構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)で定義した通りであり、R9は保護基を表す。このN−保護NH−ローダミンは、構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)による親NH−ローダミン環に関連して前述したように、位置C1’、C2’、C2’’、C4’、C4’’、C5’、C5’’、C7’、C7’’、C8’、C4、C5、C6、およびC7の一つ以上において置換基を含むことが可能である。
【0079】
本明細書に記載される試薬は、標識オリゴヌクレオチドを化学的に合成するために使用するのであるから、オリゴヌクレオチドを合成するために使用される有機合成条件に対して安定な保護基R9を使用しなければならない。前述したように、アミドとして、例えば、カルボキサミド、スルフォナミド、または、フォスフォルアミドとしてアミンを保護する保護基R9は、保護NH−ローダミンを、閉鎖型ラクトン形に「ロック」し、そうすることによって本明細書に記載される試薬の安定性を確保すると考えられる。必要とされるわけではないが、合成オリゴヌクレオチドの核酸塩基の環外アミンを保護する基を除去するために用いられる条件下では不安定になる保護基R9を利用すると便利である。その場合、全ての保護基を単一工程で除去することが可能となるからである。
【0080】
オリゴヌクレオチドを合成し、合成オリゴヌクレオチドを脱保護するために用いられる条件は、従来技術で周知であり、例えば、Nucleic Acid Chemistry,Vol.I,Beancageら、Eds.,John Wiley & Sons,2002の、Current Protocolsに記載される。なお、この開示を引用により本明細書に含める。簡単に言うと、ホスホロアミダイト試薬を用いる合成法は、複数回の:(i)遊離ヒドロキシルを開放するためのDMT脱保護、これは、ジクロロメタンに溶解した、2.5%または3%ジーまたはトリクロロ酢酸による処理によって実現が可能であり;(ii)この遊離ヒドロキシルに対する、ヌクレオシド、または他のホスホロアミダイト試薬の結合、これは、0.45Mまたは0.5Mのテトラゾールを含むアセトニトリル中で実行することが可能であり;(iii)酸化、これは、I2/2,6−ルチジン/H2Oによる処理によって実行することが可能であり;および、キャップ形成、これは、テトラヒドロフランに溶解した6.5%無水酢酸による処理、次いで、THFに溶解した、10% 1−メチルイミダゾール(NMI)による処理によって実行することが可能である。
【0081】
合成における種々の工程を実行するための、他の条件も既知であり、使用されている。例えば、ホスホロアミダイト結合は、0.25M 5−エチルチオ−1H−テトラゾール、0.25M 4,5−ジシアノイミダゾール(DCI)、または0.25M 5−ベンジルチオ−1H−テトラゾール(BTT)を含むアセトニトリル中で実行することが可能である。酸化は、THF/H2O/ピリジン(7:2:1)に溶解した、0.1M、0.05M、または0.02M I2において実行することが可能である。キャップ形成は、THF/ルチジン/無水酢酸により処理、次いでTHFに溶解した16% NMIによる処理;THFに溶解した6.5% DMAPによる処理、次いで、THFに溶解した10% Melmによる処理、または、THFに溶解した10% Melmによる処理、次いで、THFに溶解した16% Melmによる処理によって実行することが可能である。
【0082】
合成試薬からの保護基の除去および切断は、通常、濃縮水酸化アンモニウムによる60℃で1−12時間の処理によって与えられる。ただし、より穏やかな条件下で、例えば、濃縮水酸化アンモニウムによる室温で4−17時間の処理、またはメタノールに溶解した0.05M炭酸カリウムによる処理、または、H2O/EtOHに溶解した25% t−ブチルアミンによる処理で除去することが可能な基によって保護される、ヌクレオシドホスホロアミダイト試薬も既知であり、使用される。
【0083】
当業者であれば、特定の合成および脱保護および/または切断条件下で使用するのに好適な特性を持つ保護基を選択することは容易に可能であろう。多種多様なアミン保護基が、例えば、Green & Wuts,“Protective Groups In Organic Chemistry,” 3rd Edition,John Wiley & Sons,1999 (以後”Green & Wuts”と呼ぶ)の、例えば、309−405ページに教示される。当業者であれば、Green & Wutsにおいて教示されるものの中から適正な特性を有するR9を選択することは容易に可能である。
【0084】
ある実施態様では、保護基R9は、式−C(O)R10のアシル基である。この式において、R10は、水素、低級アルキル、メチル、−CX3、−CHX2、−CH2X、−CH2−ORd、および、低級アルキル、メチル、−X、−ORd、シアノ、またはニトロ基によって任意に一置換されるフェニルから選ばれ、ここで、Rdは、低級アルキル、フェニル、およびピリジルから選ばれ、各Xは、ハロ基、通常フルオロ、またはクロロである。ある実施態様では、R10は、メチルである。ある実施態様では、R10は、トリフルオロメチルである。
【0085】
−C(O)R10によって定義されるようなアシル保護基は、種々の塩基性条件下、例えば、従来技術で周知の、「塩基性不安定な」ホスホロアミダイト試薬によって合成されたオリゴから保護基を除去するために用いられる穏やかな条件を含む条件下に除去することが可能である。使用が可能な例示の条件は上に具体的に記述された。
【0086】
後の節により詳細に記載されるように、標識部分を含むN−保護NH−ローダミン部分は、他の基または成分に連結されてもよい。例えば、N−保護NH−ローダミンは、標識部分を含む別の染料、リン酸エステル前駆体基、リンカー、合成ハンドル、反応停止基、塩基ペア相互作用を安定化するように働く成分(例えば、介在染料、または小溝(minor groove)結合分子)に対して連結されてもよい。このような結合は、通常、試薬を合成するために使用されるN−保護NH−ローダミン合成素子に付着する連結基LG(リンカーと関連して上述した)を介して実行される。
【0087】
連結基LGは、利用可能ならば、N−保護NH−ローダミン合成素子のいずれの炭素原子に対しても、または、それら炭素原子のうちの一つに付着する置換基に対し付着することが可能である。連結基の位置は、一部は、そのN−保護NH−ローダミン合成素子が付着する基または成分に依存する。ある実施態様では、連結基は、N−保護NH−ローダミン合成素子のC2’、C2’’、C4’、C5’、C7’、C7’’、C5、またはC6位置に付着する。ある特定の実施態様では、連結基は、C4’、C5’、C5、またはC6位置において付着する。
【0088】
N−保護NH−ローダミン合成素子は、単一連結基LGを含んでもよいし、または、一つを超える連結基LGを含んでもよい。一つを超える連結基を用いる実施態様では、それらの連結基は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。互いに異なる複数の連結基LGを含む、N−保護NH−ローダミンシステムは、直交座標化学を用い、親NH−ローダミンの異なる位置に異なる基または成分を付着させてもよい。
【0089】
連結基を何にするかは、ある場合には、親NH−ローダミン環におけるその位置に依存する。連結基LGが、親NH−ローダミン環のC4’−またはC5’−位置に付着する、ある実施態様では、連結基LGは、式−(CH2)n−Fyの基である。この式において、nは、0から10の範囲の整数であり、Fyは前述の通りである。ある特定の実施態様では、nが1であり、Fyは−NH2である。
【0090】
連結基LGが、親NH−ローダミン環の5−または6−位置に付着する、ある実施態様では、連結基LGは、式−(CH2)n−C(O)ORfであり、式中、Rfは、水素および優れた脱離基から選ばれ、nは前に定義した通りである。ある特異的実施態様では、連結基LGは、NHSエステルを含む。ある特定実施態様では、nは0であり、RfはNHSである。
【0091】
ある実施態様では、本明細書に記載される各種試薬の標識部分を含む、N−保護NH−ローダミンは、下記の構造式(IIIa)、(IIIb)、または(IIIc)によって記述される。
【0092】
【化22】
ここで:
R’は、R3’および水素から選ばれ;
R’’は、R6’および水素から選ばれ;
R9は、任意に式−C(O)R10のアシル保護基であり、式中R10は上に定義した通りであり;
R1’、R2’、R2’’、R4’、R4’’、R5’、R5’’、R7’、R7’’、およびR8’は、単独で占める場合、それぞれ、互いに独立に、水素、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、5−14員ヘテロアリール、6−20員ヘテロアリールアルキル、−Rb、および−(CH2)x−Rbから選ばれ、ここでxおよびRbは上に定義した通りであり、または、それとは別に、R1’およびR2’、またはR7’およびR8’は、それらが結合する炭素原子と一緒に合わされて、ベンゾ基を形成するか、および/または、R4’およびR4’’、および/またはR5’およびR5’’は、それらが結合する炭素原子と一緒に合わされてベンゾ基を形成し;
R3’およびR6’は、単独で占める場合、それぞれ、互いに独立に、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、5−14員ヘテロアリール、および6−20員ヘテロアリールアルキルから選ばれ、または、それとは別に、構造式(IIIa)の化合物におけるR3’およびR2’、またはR4’および/またはR6’、およびR5’またはR7’、構造式(IIIb)の化合物におけるR3’およびR2’、またはR4’および/またはR6’、およびR5’またはR7’’、または、構造式(IIIc)の化合物におけるR3’およびR2’’、またはR4’および/またはR6’、およびR5’またはR7’’は、その結合する原子と一緒に合わされて、1から4個のヘテロ原子(通常、O、N、およびSから選ばれる)を任意に含んでもよく、かつ、同じか、または異なる低級アルキル、ベンゾ、またはピリド基のうちの一つ以上によって任意に置換される、5−または6−員の、飽和または不飽和環を形成し;および、
R4、R5、R6、およびR7は、それぞれ、互いに独立に、水素、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、6−14員ヘテロアリール、7−20員ヘテロアリールアルキル、−Rb、および−(CH2)x−Rbから選ばれ、ここでxおよびRbは上に定義した通りであり、
ただし、構造式(IIIa)の化合物におけるR2’、R4’、R5’、R7’、R5、またはR6のうちの少なくとも一つ、構造式(IIIb)の化合物におけるR2’、R4’、R5’、R7’’、R5、またはR6のうちの少なくとも一つ、構造式(IIIc)の化合物におけるR2’’、R4’、R5’、R7’’、R5、またはR6のうちの少なくとも一つが、式−Y−の基を含み、Yは、前述の官能基Fyを含む連結基によって与えられる結合の一部を表す。
【0093】
ある実施態様では、本明細書に記載される各種試薬の標識部分を含むN−保護NH−ローダミンは、4,7−ジクロロR6G(5−および/または6−異性形)、および/または、構造式(IIIa)によって記載されるローダミンであって、そこにおいて:
R’およびR’’がそれぞれエチルであり;
R1’、R4’、R5’、およびR6’がそれぞれ水素であり;
R2’、およびR7’がそれぞれメチルであり、
R4、およびR7がそれぞれクロロであり、
R5、またはR6の内の一方が水素で、他方が−C(O)−である
ローダミンを排除する。
【0094】
ある実施態様では、構造式(IIIa)、(IIIb)、および(IIIc)による、N−保護NH−ローダミン部分は、それぞれ、下記の構造式(IIIa.1)、(IIIa.2)、(IIIb.1)、(IIIb.2)、(IIIc.1)、および(IIIc.2)によって定義される成分から選ばれる:
【0095】
【化23】
ここで、R’、R’’、R1’、R2’、R2’’、R3’、R4’、R4’’、R5’、R5’’、R6’、R7’、R7’’、R8’、R4、R5、R6、R7、R9、およびYは、構造式(IIIa)、(IIIb)、および(IIIc)に関して以前に定義された通りである。
【0096】
構造式(IIIa)、(IIIa.1)、(IIIa.2)、(IIIb)、(IIIb.1)、(IIIb.2)、(IIIc)、(IIIc.1)、および(IIIc.2)によって定義される成分の、特異的例示の実施態様は、下記から選ばれる一つ以上の適用可能な特徴を有する構造を含む、すなわち:
(i)Yは、−C(O)−、−S(O)2−、−S−、および−NH−から選ばれ;
(ii) R4およびR7は、それぞれ、クロロであり;
(iii) R1’およびR8’は、それぞれ、水素であり;
(iv) R1’およびR2’、または、R7’およびR8’は、一緒に合わされてベンゾ基を形成し;
(v) R2’およびR7’は、それぞれ、水素または低級アルキルであり;
(vi) R’はR3’であり、かつ、R’’はR6’であり;
(vii) R’はR3’であり、R’’はR6’であり、かつ、R3’およびR6’は、隣接炭素原子における置換基と一緒に合わされて、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−C(CH3)2CH=C(CH3)−、−C(CH3)2CH=CH−、−CH2−C(CH3)2−、および
【0097】
【化24】
から選ばれる基を形成する。
【0098】
前述したように、標識部分は、さらに、一つ以上の染料を含み、そのため、N−保護NH−ローダミン染料が、一旦脱保護された場合、より大きなエネルギー転移染料ネットワークの一員となるようにされてもよい。このようなエネルギー転移染料ネットワークは、従来技術で周知であり、分光特性が適合されるか、または、相互の相対的距離が調整される複数の蛍光染料の組み合わせを含み、そのため、ネットワークの中の一蛍光染料が、適切な波長の入射光によって励起されると、ネットワークの別の蛍光染料にその励起エネルギーを転移し、これが、次に、その励起エネルギーを、ネットワークのさらに別の蛍光担体に転移し、この過程を繰り返し、ネットワークの最後の受容蛍光染料による蛍光がもたらされる。染料ネットワークは、長いStokesシフトを持つ標識部分を生ずる。このようなネットワークでは、ネットワークの別の蛍光担体に励起を転移する、または供与する蛍光担体を、「ドナー」と呼ぶ。別の蛍光担体から励起エネルギーを受容する、またはアクセプトする蛍光担体は、「アクセプター」と呼ばれる。二つの蛍光染料しか含まない染料ネットワークでは、通常、一方の染料は、ドナーとして活動し、他方は、アクセプターとして活動する。三つ以上の染料を含む染料ネットワークでは、少なくとも一つの染料は、ドナーおよびアクセプターの両方として活動する。染料ネットワークがどのように働くのかの原理、および、そのようなネットワークを創製するために適切な、個々の染料の選択および連結のための基準は、周知であり、例えば、Hungら、1997,Anal.Biochem.252:78−88に記載される。
【0099】
染料ネットワークを構成する、本明細書に記載される標識部分では、N−保護NH−ローダミン染料は、脱保護されると、ネットワークを構成する他の染料の機能、所望の事象、および蛍光波長に応じて、ドナーまたはアクセプターとして、またはドナーおよびアクセプターの両方として活動する。NH−ローダミン染料のためにドナーおよび/またはアクセプターとして使用するのに好適な染料は、膨大な数のものが既知であるが、例えば、ただし限定されないが、キサンテン染料(例えば、フルオレセイン、ローダミン、およびロードル染料)、ピレン染料、クマリン染料(例えば、ヒドロキシ−、およびアミノ−クマリン)、シアニン染料、フタロシアニン染料、およびランテニド複合体が挙げられる。エネルギー転移染料ネットワークにおいて利用が可能な染料の非限定的例が、Hungら、1996,Anal.Biochem.238:165−170;Medintzら、2004,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 101(26):9612−9617;米国特許第5,800,996号;Suchakerら、2003,Nucleosides,Nucleotides & Nucleic Acids 22:1443−1445;米国特許第6,358,684号;Majumdarら、2005,J.Mol.Biol.351:1123−1145;Dietrichら、2002,Reviews Mol.Biotechnology 82(3):211−231;Tsujiら、2001,Biophysical J.81(1):501−515;Dicksonら、1995,J.Photochemistry & Photobiology 27(1):3−19;および Kumarら、2004,Developments in Nucl.Acid Res.1:251−274に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。本明細書に記載される原理にしたがって適切に保護することが可能な染料は、いずれのものであっても、染料ネットワークを構成する標識部分のドナーおよびアクセプター染料として使用することが可能である。ある実施態様では、ネットワークを構成するドナーおよび/またはアクセプター染料のうちの一つ以上は、本明細書に記載されるN−保護NH−ローダミン染料であってもよい。染料ネットワークを形成するために、ドナーおよび/またはアクセプター染料をローダミン染料に付着させるための特定位置、および、そのような染料を付着させるために有用な特定結合およびリンカーは、従来技術において周知である。具体的例が、例えば、米国特許第6,811,979号、米国特許第6,008,379号、米国特許第5,945,526号、米国特許第5,863,727号、および米国特許第5,800,996号に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。
【0100】
ある実施態様では、ドナーおよびアクセプター染料を連結するリンカーは、米国特許第6,811,979号に記載されるような陰イオンリンカーである。なお、この開示を引用により本明細書に含める(例えば、コラム17、25行からコラム18、37行まで、および図1−17を参照)。
【0101】
本明細書に記載される試薬のある実施態様では、標識部分は、NH−ローダミン染料のためのドナー染料を含む。ある実施態様では、ドナー染料は、フルオレセインまたはローダミン染料、例えば、本明細書に記載されるNH−ローダミン染料のうちの一つである。ある特定実施態様では、ドナー染料は、フルオレセイン染料である。フルオレセイン染料は、親キサンテン環の3−および6−位置(構造式(Ia)、(Ib)、および(Ic)のNH−ローダミン環の3’−および6’−位置に対応する)がヒドロキシル基によって置換されることを除き、ローダミン染料と構造的に近似する。ローダミン同様、フルオレセインも、拡張型環構造であって、親のキサンテン環の位置C3およびC4および/またはC5およびC6の炭素原子が、ベンゾ基などのアリール架橋に含まれる構造を持つことも可能である。したがって、フルオレセインは、一般に、下記の構造式(IVa)、(IVb)、および(IVc)による化合物を含む:
【0102】
【化25】
NH−ローダミン同様、構造式(IVa)、(IVb)、および(IVc)のフルオレセイン環の位置C1’、C2’、C2’’、C4’、C4’’、C5’、C5’’、C7’、C7’’、C8’、C4、C5、C6、およびC7における炭素は、種々の異なる置換基、例えば、NH−ローダミンに関して前述したものによって置換されてもよい。
【0103】
本明細書に記載される標識部分に含まれる場合、C3’およびC6’位置におけるヒドロキシルは、前述のNH−ローダミンの環外アミンを保護する基と、一般的に同様の特性を持つ保護基によって保護しなければならない。したがって、特定実施態様では、保護基は、
オリゴヌクレオチドを合成するために用いられる条件、例えば、亜リン酸トリエステル法による、オリゴヌクレオチド合成および酸化に用いられる条件に対しては安定であるが、合成オリゴヌクレオチドの脱保護および/または、合成樹脂からの合成オリゴヌクレオチドの切り離しのために通常用いられる条件、例えば、室温または55℃での濃縮水酸化アンモニウムにおけるインキュベーションに対しては不安定である。
【0104】
適切な特性を持つ保護基は、莫大な数のものが従来技術では既知であるが、例えば、ただし限定されないが、N−保護NH−ローダミン染料に関連して前述したアシル基が挙げられる。ある特定実施態様では、保護基は、−C(O)−R10を有し、R10は前に定義した通りである。ある実施態様では、R10はt−ブチルである。C3’およびC6’の環外ヒドロキシルが保護基を含むフルオレセインを、本明細書では、「O−保護フルオレセイン」と呼ぶ。それぞれ、構造式(IVa)、(IVb)、および(IVc)のフルオレセインに対応する、O−保護フルオレセインを、下記の構造式(Va)、(Vb)、および(Vc)として示す:
【0105】
【化26】
ここで、R9は保護基を表す。
【0106】
適切に保護され、NH−ローダミン部分に対するドナーとして使用するために標識部分の中に組み込むことが可能なフルオレセイン染料については、莫大な数の種々のものが従来技術で知られる。具体的な例示の蛍光染料が、例えば、米国特許第6,221,604号、米国特許第6,008,379号、米国特許第5,840,999号、米国特許第5,750,409号、米国特許第5,654,441号、米国特許第5,188,934号、米国特許第5,066,580号、米国特許第4,481,136号、米国特許第4,439,356号、WO99/16832;およびEP 0 050 684に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。当業者であれば、特異的NH−ローダミンに対するドーナーとして使用するのに好適な分光特性を有するフルオレセインを選ぶことは可能であろう。本明細書に記載される試薬の標識部分の中に組み込んでもよい親フルオレセイン染料の特異的実施態様が図1Cに示される。
【0107】
ドナー、およびN−保護NH−ローダミンアクセプターは、様々な方向性において、直接に、またはリンカーを介して、互いに連結させることが可能である。ドナーが、O−保護フルオレセイン、またはN−保護NH−ローダミンである、ある実施態様では、ドナーは、2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置を介して、N−保護NH−ローダミンアクセプターの2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置に連結される。
【0108】
特異的例示の結合方向性を下記の表2に示す。
【0109】
【表2】
表2のドナー−アクセプター染料ネットワークのような、染料ネットワークを含む標識部分は、利用可能な任意の位置において試薬の残余部に連結させることが可能である。ある実施態様では、頭部対頭部連結アクセプター/ドナーペアを含む標識部分は、ドナーまたはアクセプター部分の5−または6−位置を介して試薬の残余部に付着される。ある実施態様では、頭部対尾部連結アクセプター/ドナーペアを含む標識部分は、ドナーまたはアクセプター部分の、利用可能な4’−、5’−、5−、または6−位置を介して試薬の残余部に付着される。ある実施態様では、尾部対尾部連結アクセプター/ドナーペアを含む標識部分は、ドナーまたはアクセプターの、利用可能な4’−、または5’−位置を介して試薬の残余部に付着される。ある実施態様では、側部対側部連結アクセプター/ドナーペアを含む標識部分は、ドナーまたはアクセプターの、4’−、5’−、5−、または6−位置を介して試薬の残余部に付着される。ある実施態様では、側部対頭部連結アクセプター/ドナーペアを含む標識部分は、ドナーまたはアクセプターの、4’−、5’−、5−、または6−位置を介して試薬の残余部に付着される。ある実施態様では、側部対尾部連結アクセプター/ドナーペアを含む標識部分は、ドナーまたはアクセプターの、利用可能な4’−、5’−、5−、または6−位置を介して試薬の残余部に付着される。
【0110】
その方向性によらず、O−保護フルオレセイン、またはN−保護NH−ローダミンドナー、およびN−保護NH−ローダミンアクセプターは、通常、リンカーを介して互いに連結される。このようなドナーおよびアクセプター染料は、性質が剛性で、比較的長い、例えば、長さが約12−20Aの範囲(本明細書で用いる、リンカーの「長さ」とは、連結される成分間の、最短の連続経路を定義する化学結合の長さの合計を計算することによって定量される、連結される成分間の距離を指す)のリンカーを介して連結するのが有利であることが以前に見出されている。いずれの動作理論によっても、それに拘束されることを意図するものではないが、ドナーとアクセプターを、その発色団を互いに接触させることなく互いにごく近傍に保持する傾向を持つリンカーは、優れて効率的なエネルギー転移を実現すると考えられる。この点で、リンカーの剛性および長さは結合パラメータである。一般に、短いリンカーほど(例えば、約5から12Aの長さを持つリンカー)、程度の高い剛性を含まなければならない。長いリンカーほど(例えば、約15から30Aの範囲の長さを持つリンカー)、程度の低い剛性を含むことが可能であり、場合によっては剛性を含まないことも可能である。短い、無剛性(柔軟性)リンカーは避けなければならない。
【0111】
剛性は、結合手の周囲の回転角が制限される基を使用することによって、例えば、二重および/または三重結合を含む、アリーレンまたはヘテロアリーレン成分、および/またはアルキレン成分を使用することによって実現することが可能である。エネルギー転移染料利用という観点においてローダミンおよびフルオレセイン染料を連結するのに有用な、各種リンカーは、従来技術で既知であり、例えば、米国特許第5,800,996号に記載される。この開示を引用により本明細書に含める。本明細書に記載される標識部分において、O−保護フルオレセイン、またはN−保護NH−ローダミンドナーを、N−保護NH−ローダミンアクセプターに連結させるのに有用なリンカーの特異的例として、例えば、ただし限定されないが、下式の基が挙げられる:
(L.1) −Z−(CH2)a−[(Ar)b−(CH2)a]c−Z−;
(L.2) −Z−(CH2)a−[C≡C−(CH2)a]c−Z−;
(L.3) −Z−(CH2)a−[C≡C−(Ar)b]c−(CH2)a−Z−;
(L.4) −Z−(CH2)a−NH−C(O)−[(CH2)a−(Ar)−(CH2)a−C(O)−NH]c−(CH2)a−Z−;および、
(L.5)−Z−[CH2(CH2)eO]−CH2(CH2)eO−。
【0112】
ここで、Zは、前述のように、他とは独立して、連結基Fzの担当する結合部分を表し;各aは、他とは独立して、0から4の範囲の整数を表し;各bは、他とは独立して、1から2の範囲の整数を表し;各cは、他とは独立して、1から5の範囲の整数を表し;各dは、他とは独立して、1から10の範囲の整数を表し;各eは、他とは独立して、1から4の範囲の整数を表し;各fは、他とは独立して、1から10の範囲の整数を表し;かつ、各Arは、他とは独立して、任意に置換される単環または多環のシクロアルキレン、シクロヘテロアルキネン、アリーレン、またはヘテロアリーレン基を表す。Arの非限定的例示の実施態様としては、前述したような、低級シクロアルカン、低級シクロヘテロアルカン、親芳香族環系、および親ヘテロ芳香族環系由来の基が挙げられる。Arの、特異的、非限定的例示実施態様としては、シクロヘキサン、ピペラジン、ベンゼン、ナフタレン、フェノール、フラン、ピリジン、ピペリジン、イミダゾール、ピロリジン、およびオキサジゾールが挙げられる。リンカーの、特異的、非限定的例示実施態様が、図2に示される。図2において、Z1およびZ2は、前述のように、互いに独立に、連結基Fzの担当する結合部分を表し、Kは、−CHおよび−N−から選ばれる。図2に示すリンカーのある特定実施態様では、Z1またはZ2の一方は−NH−であり、他方は、−O−、−C(O)−、および−S(O)2−から選ばれる。
【0113】
ある実施態様では、ドナーおよびアクセプター染料を連結するリンカーは、米国特許第6,811,979号に記載されるように、陰イオンリンカーである。なお、この開示を引用により本明細書に含める(例えば、コラム17、25行からコラム18、37行まで、および図1−17を参照)。好適な陰イオンリンカーの、特異的、非限定的、例示の実施態様は、上の式(L.1)から(L.4)のリンカーを含む。この式において、一つ以上のAr基が、例えば、約pH7から約pH9の範囲のpHにおいて使用される条件下で、陰性電荷を有する、一つ以上の置換基によって置換される。好適な置換基の、特異的、非限定的例として、リン酸エステル、硫酸エステル、スルフォン酸エステル、およびカルボン酸エステルが挙げられる。
【0114】
ある実施態様では、標識部分は、式(VI):
(VI) A−Z1−Sp−Z2−D
ここで、Aは、N−保護NH−ローダミンアクセプターを表し、Dは、ドナー、例えば、N−保護NH−ローダミン、またはO−保護フルオレセインドナーを表し、Z1およびZ2は、前述したように、官能基Fzを含む連結部分によって提供される結合部分を表し、Spは、前述したようにスペーサー成分を表す。ある特定実施態様では、Aは、下記に示す、構造式A.1、A.2、A.3、A.4、A.5、およびA.6から選ばれ、Dは、構造式D.1、D.2、D.3、D.4、D.5、およびD.6から選ばれる。ある特定実施態様では、Aは、下記に示す、構造式A.7、A.8、A.9、A.10、A.11、およびA.12から選ばれ、Dは、構造式D.7、D.8、D.9、D.10、D.11、およびD.12から選ばれる。
【0115】
【化27】
【0116】
【化28】
【0117】
【化29】
【0118】
【化30】
構造式A.1−A.12およびD.1−D.12において:
E1は、−NHR9、−NR3’R9、および−OR9bから選ばれ;
E2は、−NHR9、−NR6’R9、および−OR9bから選ばれ;
R9bは、R9であり;
Y1a、Y1b、Y2a、Y2b、Y3a、およびY3bは、それぞれ互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−C(O)−、および−S(O)2−から選ばれ;および、
R’、R’’、R1’、R2’、R2’’、R3’、R4’、R4’’、R5’、R5’’、R6’、R7’、R7’’、R8’、R4、R5、R6、およびR7は、構造式(IIIa)、(IIIb)、および(IIIc)に関して以前に定義した通りであり、ただし、E1およびE2が−OR9bである場合、R1’およびR2’、およびR7’およびR8’は、同時にベンゾおよび/またはピリド基を含む。
【0119】
構造式(VI)による標識部分の、ある特定の実施態様では、Y1a、Y2a、およびY3aは−NH−であり;Y1b、Y2b、およびY3bは、−C(O)−および−S(O)2−から選ばれ;Z1は−C(O)−および−S(O)2−から選ばれ;Z2は−NH−であり、かつ、Spは、下記:
(Sp.1) −(CH2)a−[(Ar)b−(CH2)a]c−;
(Sp.2) −(CH2)a−[C≡C−(CH2)a]c−;
(Sp.3) −(CH2)a−[C≡C−(Ar)b]c−(CH2)a−;
(Sp.4) −(CH2)a−NH−C(O)−[(CH2)a−(Ar)−(CH2)a−C(O)−NH]c−(CH2)a−;および、
(Sp.5) −[CH2(CH2)eO]f−CH2(CH2)−、ここで、a、b、c、d、e、f、およびArは、以前に定義した通りである。
【0120】
構造式(VI)による標識部分のある特定実施態様では、R9は、−C(O)CH3、およびC(O)CF3から選ばれ、R9aは、−C(O)C(CH3)3である。
【0121】
5.5 リン酸エステル前駆体基
本明細書に記載される試薬の、多くの実施態様が、リン酸エステル前駆体基(“PEP”)を含む。標識オリゴヌクレオチドを合成するために段階的合成を用いる場合、PEPは、新生の合成オリゴヌクレオチドの5’−ヒドロキシル基であってもよい、利用可能な任意のヒドロキシル基に結合され、最終的に、任意の必要な酸化および/または脱保護工程の後、合成オリゴヌクレオチドに標識部分を連結する結合に貢献する。形成される結合は、従来技術で知られるように、リン酸エステル結合か、または、修飾されたリン酸エステル結合である。
【0122】
一次ヒドロキシル基に試薬を結合させ、リン酸エステル結合、または修飾されたリン酸エステル結合を生成するのに好適な基は、様々のものが従来技術において周知である。特異的実施例としては、例えば、ただし限定するものではないが、ホスホロアミダイト基(例えば、Letsingerら、1969,J.Am.Chem.Soc.91:3350−3355;Letsingerら、1975 J.Am.Chem.Soc.97:3278;Matteucci & Caruthers,1981,J.Am.Chem.Soc.103:3185;Beaucage & Caruthers,1981,Tetrahedron Lett.22: 1859を参照されたい、なお、これらの開示を引用により本明細書に含める)、2−クロロフェニル−、または2,5−ジクロロフェニル−フォスフェート基(例えば、Sproat & Gait,“Solid Phase Synthesis of Oligonucleotides by the Phosphodiester Method,” In: Oligonucleotide Synthesis,A Practical Approach,Gait,Ed.,1984,IRL Press,pages 83−115を参照)(なお、これらの開示を引用により本明細書に含める)、およびH−ホスホネート基(例えば、Gareggら、1985,Chem.Scr.25:280−282;Gareggら、1986,Tet.Lett.27:4051−4054;Gareggら、1986,Tet.Lett.27:4055−4058;Gareggら、1986,Chem.Scr.26:59−62;Froehler & Mateucci,1986,Tet.Lett.27:469−472;Froehlerら、1986,Nucl.Acid Res.14:5399−5407を参照されたい、なお、これらの開示を引用により本明細書に含める)が挙げられる。ある特定実施態様では、PEPは、下式(P.1)のホスホロアミダイト基である:
【0123】
【化31】
ここで、
R20は、1から10個の炭素原子を含む、直鎖、分枝、または環状の、飽和または不飽和のアルキル、2−シアノエチル、6から10個の環炭素原子を含むアリール、および、6から10個の環炭素原子、および1から10個のアルキレン炭素原子を含むアリールアルキルから選ばれ;および、
R21およびR22は、それぞれ互いに独立に、1から10個の炭素原子を含む、直鎖、分枝、または環状の、飽和または不飽和のアルキル、6から10個の環炭素原子を含むアリール、および、6から10個の環炭素原子、および1から10個のアルキレン炭素原子を含むアリールアルキルから選ばれるか、またはそれとは別に、R21およびR22は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、5から6個の環原子を含む、飽和または不飽和環を形成する。該環原子のうちの一つまたは二つは、図示された窒素原子に加えて、O、N、およびSから選ばれるヘテロ原子であってもよい。
【0124】
ある特定実施態様では、R20は2−シアノエチルであり、R21およびR22は、それぞれ、イソプロピルである。
【0125】
5.6 合成ハンドル
本明細書に記載される試薬の多くの実施態様は、適切な脱保護後、要すれば、合成標識オリゴヌクレオチドに対し追加の基または成分を付着させるために使用することが可能な部位を提供する、一つ以上の合成ハンドルを含む。これらの基は、標識オリゴヌクレオチド合成の進行時に合成ハンドルに付着させることが可能であるし、あるいはそれとは別に、合成ハンドルが、合成後、脱保護されて、追加の基または成分の付着が可能とされる官能基を顕すようにすることが可能である。例えば、合成ハンドルは、標識オリゴヌクレオチドの合成を実行するのに用いられる条件に対しては安定な保護基によって保護される、一次アミン基を含むことも可能である。合成後、合成オリゴヌクレオチド上の、他の各種保護基の除去と同時に、またはそれとは別に、この保護基を除去することによって、それに対して追加の基および/または成分を付着させることが可能な一次アミノ基が得られる。
【0126】
オリゴヌクレオチド合成に使用するのに好適な保護基によって保護される反応基については、様々の異なるものが従来技術で既知であり、例えば、ただし限定されないが、アミノ基(例えば、トリフルオロアセチル、または4−モノメトキシトリチル基によって保護される)、ヒドロキシル基(例えば、4,4’−ジメトキシトリチル基によって保護される)、チオール基(例えば、トリチルまたはアルキルチオール基によって保護される)、およびアルデヒド基(例えば、アセタール保護基によって保護される)が挙げられる。これらの保護される反応基は全て、本明細書に記載される試薬の合成ハンドルを含むことが可能である。
【0127】
ある実施態様では、合成ハンドルは、式−OReの保護された一次ヒドロキシルを含む。ここで、Reは、オリゴヌクレオチド合成時に選択的に除去することが可能な、酸に不安定な保護基を表す。オリゴヌクレオチド合成の観点から一次ヒドロキシル基を保護するために好適な、酸不安定な保護基は従来技術で既知であり、例えば、ただし限定されないが、トリフェニルメチル(トリチル)、4−モノメトキシトリチル、4,4’−ジメトキシトリチル、4,4’,4’’−トリメトキシトリチル、ビス(p−アニシル)フェニルメチル、ナフチルジフェニルメチル、p−(p’−ブロモフェナシクロキシ)フェニルジフェニルメチル、9−アントリル、9−(9−フェニル)キサンフェニル、および9−(9−フェニル−10−オキソ)アントリルが挙げられる。これらの基は全て、弱酸による処理、例えば、ジクロロメタンに溶解した2.5%または3%のジまたはトリクロロ酸による処理によって除去することが可能である。前述の酸不安定保護基によって一次ヒドロキシル基を保護する方法は、周知である。
【0128】
5.7 固相支持体
本明細書に記載される試薬の多くの実施態様は、他の成分および/または基が付着する固相支持体を含む。この固相支持体は、通常、他の成分の付着のために好適な連結基を担うリンカーが付着する、アミノまたはヒドロキシル基などの官能基によって活性化される。
【0129】
各種成分およびリンカーの付着のために好適な官能基によって活性化させることが可能な種々の材料は、官能基を含めるために該材料を活性化するための方法同様、従来技術で既知であり、例えば、調節孔ガラス、ポリスチレン、およびグラフトコポリマーが挙げられる。これらの材料のいずれも、本明細書に記載される試薬において固相支持体として使用することが可能である。
【0130】
5.8 末端ヒドロキシル標識のために有用な合成試薬
本明細書に記載される合成試薬のある実施態様は、下記の構造式(VII)によって記述される:
(VII) LM−L−PEP
ここで、LMは、本明細書に記載される標識部分を表し、Lは、本明細書に記載される任意のリンカーを表し、PEPは、本明細書に記載されるリン酸エステル前駆体基を表す。この試薬は、さらに別の基または成分、例えば、合成ハンドルを含むことが可能である。ある実施態様では、合成試薬は、標識部分およびPEP基を含み、別の成分または基を含まない。このような合成試薬は、オリゴヌクレオチドの段階的合成時、ヒドロキシル基に結合させることが可能であり、何よりも、合成オリゴヌクレオチドの末端ヒドロキシル基、通常は5’−ヒドロキシルであるが、に、標識部分を付着させるのに有用である。
【0131】
PEP基は、直接標識部分に付着させることが可能であるが、リンカーを介して標識部分に付着させてもよい。PEP基が直接標識部分に付着される実施態様では、PEP基は、一般に、一次ヒドロキシル基に対して好適な結合試薬によって分子に対して連結されるので、標識部分は、一次ヒドロキシル基を含む置換基を含んでいなければならない。PEP基が、リンカーを介して標識部分に連結される実施態様では、リンカー合成素子は、標識部分合成素子の連結基と連結を形成するのに好適な連結基、および、PEP基に対する付着に好適な一次ヒドロキシル基を含まなければならない。好適なリンカー合成素子としては、例えば、ただし限定されないが、式Fz−Sp−OHの合成素子が挙げられる。式中、Fzは、標識部分合成素子の官能基に対して相補的な官能基であり、Spは、スペーサー成分である。このスペーサー成分は、標識オリゴヌクレオチドの合成および脱保護に使用される条件に対して安定な原子および/または官能基である限り、それらの任意の組み合わせを含むことが可能である。非限定的例示リンカーが、図2に示される。図においてZ2はOである。ある実施態様では、Spは、1から10個の鎖原子を含む、任意に置換されるアルキレン鎖である。ある特定実施態様では、Spは、1から9個の炭素鎖原子を含む、未置換のアルキレン鎖である。
【0132】
ある実施態様では、合成試薬は、構造式(VII)による化合物であり、式中:
LMは、上に特異的に明らかにした標識部分実施態様のうちの一つであり;
Lは、−Z−(CH2)3−6−O−、−Z−(CH2)a−[(Ar)b−(CH2)a]c−O−、−Z−(CH2)a−[C≡C−(CH2)a]c−O−、−Z−(CH2)a−[C≡C−(Ar)b]c−(CH2)a−O−、−Z−(CH2)d−NH−C(O)−[(CH2)a−(Ar)−(CH2)a−C(O)−NH]c−(CH2)d−O−、−Z−[CH2(CH2)eO]f−CH2(CH2)eO−、および、Z2がOである、図2に示すリンカーの一つから選ばれ;および、
PEPは、ホスホロアミダイト基、例えば、前述の構造式P.1のホスホロアミダイト基である。ある実施態様では、リンカーLにおけるZは−NH−である。
【0133】
ある実施態様では、構造式(VII)による合成試薬におけるリンカーは、該合成試薬がヌクレオシド性となるように、ヌクレオシドを含む。ある実施態様では、ヌクレオシド性合成試薬は、構造式(VII.1)による化合物である:
【0134】
【化32】
ここで、PEPは、リン酸エステル前駆体基を表し、Bは核酸塩基を表し、LMは、標識部分を表し、かつ、L2は、リンカーLMに核酸塩基Bを連結するリンカーを表す。核酸塩基BおよびリンカーLの特性および性質は、下記にさらに詳細に記載される。構造式(VII.1)による、非限定的、例示のヌクレオシド性合成試薬が、図4に示される。
【0135】
PEP基が、任意のリンカーを介して標識部分に連結される合成試薬実施態様を合成するための例示スキームが、下記のスキーム(I)に示される。このスキームにおいて、各種基R、Fy、Fz、Y、Z、およびSpは、以前に定義した通りである。
【0136】
【化33】
スキーム(I)において、官能基Fyを含む連結基を含む、親NH−ローダミン合成素子100は、無水物101によってアセチル化されて、N−アセチル保護NH−ローダミン合成素子102を生成する。次に、合成素子102は、リンカー合成素子103に結合して、化合物104を生成する。Fyの内容に応じて、合成素子102は、結合の前に活性化を要求する場合がある。例えば、Fyがカルボキシル基である場合、結合前に、NHSエステルなどのエステルとして活性化することが可能である。化合物104では、−Y−Zは、相補的官能基FyおよびFzによって形成される連結を表す。この式において、前述のように、Yは、Fyの担当する部分、Zは、Fzの担当する部分を表す。次に、化合物104は、図示の特定実施態様ではフォスフィンである、PEP合成素子105と反応させられ、ホスホロアミダイト合成試薬106を生成する。
【0137】
5.9 内部または3’−末端標識に有用な合成試薬
本明細書に記載される合成試薬は、追加の基および/または成分の付着のために有用な、一つ以上の合成ハンドルを任意に含んでもよい。前述のように、Reが酸不安定な保護基を表す、式−OReの合成ハンドルを含む合成試薬は、追加のヌクレオチドが付着することが可能な、一次ヒドロキシル基を与える。その結果、この合成ハンドルを含む合成試薬は、5’−ヒドロキシル、3’−ヒドロキシル、または、一つ以上の内部位置において、合成オリゴヌクレオチドを標識するために使用することが可能である。これら合成試薬はさらに、互いに結合することも、または、他のホスホロアミダイト標識試薬に結合することも可能であり、そのため複数の標識部分を含むオリゴヌクレオチドの合成が可能となる。
【0138】
合成試薬を構成する、標識部分、PEP基、および合成ハンドル−OReは、それぞれの機能の実行を可能とするものであれば、いずれの方式および/または方向性で一緒に連結することも可能である。特定実施例として、PEP基および合成ハンドルは、それぞれ、任意にリンカーを介して標識部分に連結させることが可能である。ある実施態様では、このような合成試薬は、構造式(VIII)による化合物である:
(VIII) ReO−L−LM−L−PEP
ここで、Lは、他方に対して独立に、任意のリンカーを表し、LMは、標識部分を表し、かつ、PEPは、リン酸エステル前駆体基を表す。好適な保護基Re、リンカーL、標識部分LM、およびリン酸エステル前駆体基の非限定的例としては、上に具体的に例示したものが挙げられる。
【0139】
別の特定実施例として、PEP基および合成ハンドル−OReは、標識部分に付着する、分枝鎖リンカーに付着されてもよい。ある実施態様では、このような合成試薬は、構造式(IX)による化合物である:
【0140】
【化34】
ここで、Lはリンカーを表し、LMは標識部分を表し、かつ、PEPは、リン酸エステル前駆体基を表す。
【0141】
ある特定実施態様では、構造式(IX)による合成試薬は、構造式(IX.1)による化合物である:
【0142】
【化35】
ここで、LMは標識部分を表し、−Z−は、リンカーの官能基Fzによって与えられる連結の一部を表し、同じであっても、異なっていてもよい、Sp1、Sp2、およびSp3は、それぞれ、スペーサー成分を表し、Gは、CH、N、または、アリーレン、フェニレン、ヘテロアリーレン、低級シクロアルキレン、シクロヘキシレン、および/または低級シクロヘテロアルキレンを含む基を表し、かつ、PEPは、リン酸エステル前駆体基を表す。ある実施態様では、LMは、上に具体的に例示した標識部分のうちの一つであり、Sp1、Sp2、およびSp3は、それぞれ互いに独立に、1から9個の炭素原子を含むアルキレン鎖、Sp.1、Sp.2、Sp.3、Sp.4、およびSp.5(上に定義)から選ばれ、および/または、PEPは、上述の構造式P.1によるホスホロアミダイト基である。構造式(IX.1)による例示合成試薬の、非限定的特定実施態様が、図3および4に示される。
【0143】
ある実施態様では、合成ハンドル−OReはヌクレオシドによって供給され、そのため、合成試薬はヌクレオシド性となる。このようなヌクレオシド性合成試薬では、標識部分は、通常、リンカーを介してヌクレオシドの核酸塩基に連結され、標識オリゴヌクレオチド合成のために使用される条件下に反応性を帯びる環外官能基、例えば、環外アミンがある場合、それは、いずれのものであれ、保護される。
【0144】
このヌクレオシドは、オリゴヌクレオチド合成における使用のために適切に保護することが可能であれば、いずれのヌクレオシドであってもよく、2’−デオキシリボース糖成分、3’−デオキシリボース糖成分(2’−5’ヌクレオチド間連結を含む標識オリゴヌクレオチドの合成に有用である)、適切に保護されたリボース成分、これらリボース成分の内の任意の成分の置換体、または、場合によっては非リボース糖成分を含んでもよい。
【0145】
ある実施態様では、このヌクレオシド性合成試薬は、構造式(IX.2)、(IX.3)、(IX.4)、および(IX.5)による化合物である:
【0146】
【化36】
ここで、LMは標識部分を表し、Bは適切に保護された核酸塩基を表し、L2は、核酸塩基に標識部分を連結するリンカーを表し、Reは、酸不安定な保護基を表し、PEPは、リン酸エステル前駆体基を表し、Oは酸素原子であり、かつ、構造式(IX.4)では、R11は、2’−ヒドロキシル保護基を表す。
【0147】
構造式(VII.1)、(IX.2)、(IX.3)、(IX.4)、および(IX.5)による合成試薬では、核酸塩基Bは、オリゴヌクレオチドの中に組み込むのに有用である限り、事実上いずれのヘテロ環であってもよい。例えば、核酸塩基は、遺伝学的コード担持プリン(アデニンまたはグアニン)のうちの一つ、遺伝学的コード担持ピリミジン(シトシン、ウラシル、またはチミン)のうちの一つ、遺伝学的コード担持プリンおよび/またはピリミジンの類縁体および/または誘導体(例えば、7−デアザアデニン、7−デアザグアニン、5−メチルシトシン)、非遺伝学的コード担持プリンおよび/またはピリミジン(例えば、イノシン、キサンテン、およびヒポキサンテン)、または他のタイプのヘテロ環のうちの一つであってもよい。オリゴヌクレオチドの中に組み込むのに有用なヘテロサイクルは多様なものが従来技術で既知であり、例えば、Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology,Fasman,Ed.,1989,CRC Press (例えば、385−393ページ、および、その中に引用される文献を参照)に記載される。なお、この開示を、引用により本明細書に含める。これら各種ヘテロ環の全ての外、後に発見されるものも、本明細書に記載されるヌクレオシド性合成試薬の中に含めることが可能である。
【0148】
構造式(VII.1)、(IX.2)、(IX.3)、(IX.4)、および(IX.5)による合成試薬において、Bがプリンである場合、図示の糖成分は、通常、該プリンのN9位置に付着し、Bがピリミジンの場合、図示の糖成分は、通常、該ピリミジンのN1位置に付着する。他の核酸塩基の付着部位は、当業者には明白であろう。
【0149】
核酸塩基上の環外アミン、または他の反応基(単複)は、標識オリゴヌクレオチド合成に使用される合成条件に対して安定な保護基によって保護される。オリゴヌクレオチド合成の観点からヌクレオシド核酸塩基の環外アミン基の保護に好適な基は、これら保護されるヌクレオシドの調製法同様、様々のものが従来技術で既知である。
【0150】
例えば、アデニンの環外アミンを保護するために使用される基としては、ベンジオール(Bz)、フェノキシアセチル(Pac)、およびイソブチル(iBu)が挙げられる。シトシンの環外アミンを保護するために使用される基としては、アセチル(Ac)およびBzが挙げられる。グアニンの環外アミンを保護するために使用される基としては、iBu、ジメチルフォルムアミド(Dmf)、および4−イソプロピル−フェノキシアセチル(iPr−Pac)が挙げられる。これらの保護基は全て、水酸化アンモニウムによる55−65℃、2−3時間の処理によって除去することが可能である。しかしながら、これらの保護基のあるものは、より穏やかな条件下に除去される。例えば、AiBu、APac、CAc、およびGiPr−Pacからの保護基の切り離しは、水酸化アンモニウムによる室温で4−17時間の処理、またはメタノールに溶解した0.05M炭酸カリウムによる処理、またはH2O/EtOHに溶解した25% t−ブチルアミンによる処理によって実行することが可能である。本明細書に記載される試薬を構成するNH−ローダミンのあるもの、および/または他の染料は、他の保護基によって必要とされる、より過激な脱保護条件に対して安定でない可能性があるので、これらの比較的おだやかな脱保護条件下に除去することが可能な保護基を利用するヌクレオシド性試薬が好ましい。
【0151】
核酸塩基Bに標識部分LMを連結するリンカーL2は、核酸塩基の任意の位置に付着してよい。ある実施態様では、Bがプリンである場合、リンカーは、該プリンの8−位置に付着し、Bが7−デアザプリンである場合、リンカーは、該7−デアザプリンの7−位置に付着し、Bがピリミジンである場合、リンカーは、該ピリミジンの5−位置に付着する。
【0152】
ある実施態様では、核酸塩基にLMを付着させるために有用なリンカーL2は、アセチレン性、またはアルケン性アミノ連結、例えば、−C≡C−CH2−NH−、−C≡C−C(O)−、−CH=CH−NH−、−CH=CH−C(O)−、−C≡C−CH2−NH−C(O)−(CH2)1−6−NH−、および−CH=CH−C(O)−NH−(CH2)1−6−NH−C(O)−から選ばれる連結、プロパルジル−1−エトキシアミノ連結、例えば、式−C≡CH−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−を有する連結、または、剛性連結、例えば、−C≡C−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、および−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−から選ばれる連結を含む。ここで、Arは上に定義した通りである。
【0153】
ある実施態様では、プリン核酸塩基にLMを付着させるために有用なリンカーL2は、アルキルアミン、例えば、式−NH−(CH2)1−6−NH−の連結である。
【0154】
ある実施態様では、プリンまたはピリミジン核酸塩基にLMを付着させるために有用なリンカーL2は、米国特許第6,811,979号に記載の陰イオンリンカーである。なお、この開示を引用により本明細書に含める(例えば、コラム17、25行からコラム18、37行の開示、および図1−17を参照)。
【0155】
本明細書に記載される試薬に組み込むのに好適な、前述のものと同様の、リンカーと共に誘導体形成されるヌクレオシドを合成する方法は、例えば、Hobbsら、1989,J.Org.Chem.54:3420;Hobbsらに付与された米国特許第5,151,507号;Khanらに付与された米国特許第5,984,648号;およびKhanらに付与された米国特許第5,821,356号に記載される。なお、これらの開示を引用により本明細書に含める。誘導体形成ヌクレオシドは、下記にさらに詳細に説明するように、ヌクレオシド合成試薬を合成するための合成素子として使用することが可能である。
【0156】
本明細書に記載されるヌクレオシド性試薬を含んでもよい、リンカー誘導体形成核酸塩基の特定例示実施態様を下記に図示する:
【0157】
【化37】
ヌクレオシド性合成試薬は、下記のスキーム(II)に示すように、リンカー誘導体形成ヌクレオシド合成素子から調製することが可能である:
【0158】
【化38】
スキーム(II)において、リンカー誘導体形成ヌクレオシド合成素子110は、スキームでは例示の塩化物試薬ReClと共に示される、5’−ヒドロキシル基において酸不安定基によって保護される。Reは上に定義した通りである。塩基で処理してトリフルオロアセチル保護基を除去すると、合成素子112が得られる。合成素子112の、標識部分合成素子102との反応によって(上のスキーム(I)では、PEP合成素子105による処理後、図示の、この特定実施態様では、フォスフィン(上のスキーム(I)参照)である)、ヌクレオシド性合成試薬114が得られる。上に示した各種合成工程を実行するための特異的条件は、周知である。合成ハンドル、例えば、式−OReの合成ハンドルを含む、非ヌクレオシド性合成試薬は、スキーム(II)の常識的な応用によって調製することが可能である。
【0159】
5.10 固相支持試薬
本明細書に記載される試薬の多くの実施態様は、固相支持体を含む。このような試薬は、一般に、固相支持体、本明細書に記載の標識部分、および合成ハンドルを含むが、さらに追加の基または成分、例えば、追加の標識部分、クエンチャー(quencher)部分、特に、オリゴヌクレオチド二重体を安定化するために有用な合成ハンドルおよび/または基、例えば、塩基ペア間に介在する仲介因子(介在因子)、および、二重小溝に結合する因子(小溝結合、またはMGB介在因子)を含んでもよい。固相支持体、標識部分、合成ハンドル、および任意に追加される成分は、それぞれの機能を実行する能力を妨げない限り、どのような方式、方向性で相互に連結させてもよい。
【0160】
ある実施態様では、固相支持体は、リンカーを介して試薬の残余部に付着される。固相支持体を、試薬の残余部に付着させるリンカーは、通常、指定の条件下で選択的に切断することが可能な連結を含み、そのため、合成後、この合成された標識オリゴヌクレオチドは、固相支持体から解放させることが可能である。ある実施態様では、連結は、合成標識オリゴヌクレオチドを脱保護するために使用される条件に対して不安定であり、そのため、該ヌクレオチドは、単一工程において、脱保護され、かつ、固相支持体から切り離される。このようなリンカーは、通常、エステル結合を含むが、他の結合、例えば、炭酸エステル、ジイソプロピルシロキシエーテル、修飾されたリン酸エステルなどを含んでもよい。
【0161】
オリゴヌクレオチド合成の観点から有用な、選択的切断が可能なリンカーは、固相支持体をこのようなリンカーと共に誘導体形成する方法と同様、莫大なものがあり、それらは従来技術で既知である。これらの様々なリンカーのすべては本発明に記載の固相支持試薬に使用するために適用される。合成オリゴヌクレオチドを脱保護するために用いられる塩基性条件下で切断が可能な例示のリンカーを含む、固相支持試薬の非限定的例が、図7に示される。
【0162】
合成試薬同様、固相支持試薬も、非ヌクレオシド性、またはヌクレオシド性であってもよい。非ヌクレオシド性固相試薬の例示実施態様は、構造式(X)による試薬を含む:
【0163】
【化39】
ここで、LMは標識部分を表し、Lは、任意に選択的に切断可能なリンカーを表し、−OReは、合成ハンドルを表す。Reは、前述した通り、酸不安定な保護基である。
【0164】
ある実施態様では、構造式(X)の固相支持試薬は、構造式(X.1)による非ヌクレオシド試薬である:
【0165】
【化40】
ここで、Z、LM、G、Sp1、Sp2、およびReは、構造式(IX.1)に関連して上に定義した通りであり、Sp4は、選択的に切断可能なスペーサー成分を表す。ある実施態様では、選択的に切断可能なスペーサー成分Sp4は、エステル結合を含む。
【0166】
ある実施態様では、構造式(X)の固相支持合成試薬は、構造式(X.2)、(X.3)、(X.4)、または(X.5)によるヌクレオシド試薬である:
【0167】
【化41】
ここで、LM、Re、B、L2は、構造式(X.2)、(X.3)、(X.4)、および/または(X.5)について以前に定義した通りであり、R11は、構造式(IX.4)について以前に定義した通りであり、かつ、Sp4は、前述の通り、選択的に切断が可能なスペーサー成分を表し、これは、ある実施態様では、エステル結合である。
【0168】
5.11 追加の例示実施態様
本開示を通じて記載される、各種成分、基、およびリンカーの特定実施態様は、本明細書に記載される試薬の全てに含めることが可能であることを理解しなければならない。さらに、各種の特異的実施態様は、互いに、任意の組み合わせで、あたかもその特異的組み合わせが具体的に明示されるかのように組み合わせることが可能である。特異的例として、本明細書に記載される標識部分LMの特異的実施態様の内の任意の一つを、本明細書に記載される、非ヌクレオシド性およびヌクレオシド性固相支持体および合成試薬の、特異的に例示される実施態様のいずれかの中に含めることが可能である。もう一つの特異的例として、リン酸エステル前駆体基PEPの特異的実施態様の内の任意の一つ、例えば、上記の構造式(P.1)のホスホロアミダイト基を、本明細書に記載される合成試薬の内の任意の一つの中に含めることが可能である。
【0169】
5.12 試薬の使用
本明細書に記載される各種試薬は、直接合成樹脂の上で、ローダミン染料によって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、オリゴヌクレオチドの段階的合成において使用することが可能である。したがって、これら各種試薬は、合成後の手間のかかる修飾を要することなく、無数の異なるローダミンによってオリゴヌクレオチドを合成的に標識する能力を利用可能とする。NHローダミン染料によって標識されたオリゴヌクレオチドを合成するための、例示の合成試薬の使用が、図9に示される。
【0170】
熟練した当業者には理解されるように、ドナー、アクセプター、または場合によっては、NH−ローダミン染料の反応停止因子として活動することが可能なホスホロアミダイトの利用が可能であるために、本明細書に記載される試薬は、エネルギー転移染料および/またはNH−ローダミン反応停止染料ペアによって標識されるオリゴヌクレオチドの、インサイチュ合成を可能とする。本明細書に記載される試薬によって実現される万能性を示す、NH−ローダミン−フルオレセインエネルギー転移染料ペアによって標識されるオリゴヌクレオチドの例示合成が、図10および11に例示される。本明細書に記載される試薬は、事実上全てのNH−ローダミン染料の、固相支持試薬および/または合成試薬における包含を可能にするので、特異的応用のために調整される分光特性を有する、エネルギー転移染料ペアによって標識されるオリゴヌクレオチドを、合成後の修飾を要することなく、好都合にもインサイチュ合成することが可能である。さらに、無数の異なるエネルギー転移染料ペアによって標識されるオリゴヌクレオチドを、特異的染料ペアを含む合成試薬の製造を要することなく、個々のモノマー試薬から合成することが可能である。介在性リンカー成分の添加の下に、または添加を要することなく、染料ペアの各メンバーを、段階的に新生オリゴヌクレオチドに付着させることが可能である。
【0171】
図9を参照すると、支持体結合合成ヌクレオチド200は、その5’−ヒドロキシルを保護するDMT基を除去するために酸で処理され、5’−脱保護、支持体結合オリゴヌクレオチド202を生成する。N−保護NH−ローダミンホスホロアミダイト試薬204の結合、次いで酸化によって、支持体結合、NH−ローダミン標識オリゴヌクレオチド206が生成される。全ての保護基を除去し、かつ、固相支持体(樹脂)からこの合成オリゴヌクレオチドを切り離すために、濃縮水酸化アンモニウムによって処理すると、NH−ローダミン染料によって標識されるオリゴヌクレオチド208が生成される。
【0172】
図10を参照すると、標識部分として、保護されたNH−ローダミン−フルオレセインエネルギー転移染料ペアを含む、固相支持試薬210は、3合成サイクルを経過して、標識支持体結合オリゴヌクレオチド212を生成することが可能である。固相支持体から切り離されると、脱保護された、標識オリゴヌクレオチド214が得られる。
【0173】
図11Aを参照すると、新生の、支持体結合オリゴヌクレオチド220は、該オリゴヌクレオチド220の5’−ヒドロキシルに対し、N−保護NH−ローダミンホスホロアミダイト合成試薬222を結合することによって、インサイチュ合成されたNH−ローダミン−フルオレセインによって標識することが可能であり、この産物は、酸化後、NH−ローダミン標識オリゴヌクレオチド224を生成する。DMT基の除去後、O−保護ホスホロアミダイト(図示の特定実施例では、FAM−ホスホロアミダイトである)を結合させると、標識された、支持体結合オリゴヌクレオチド226が生成される。切り離しおよび脱保護によって、NH−ローダミン−FAMエネルギー転移染料ペアによって標識される、オリゴヌクレオチド228が生成される。
【0174】
このドナーおよびアクセプター染料を連結する結合手の長さおよび特徴も、ホスホロアミダイトリンカー試薬を用いることによって操作することが可能である。この局面は、図11Bに示される。この図では、リンカーホスホロアミダイト230は、ローダミン標識オリゴヌクレオチド225に結合され、試薬232を生成する。FAM−ホスホロアミダイトによる結合、次いで、酸化、脱保護、および切り離しによって、オリゴヌクレオチド234が得られる。これは、NH−ローダミン−FAMエネルギー転移染料ペアによって標識される。リンカーホスホロアミダイト230において、”Sp”は、以前に定義した通りのスペーサである。例えば、”Sp”は、以前に定義した、(Sp.1)、(Sp.2)、(Sp.3)、(Sp.4)、または(Sp.5)を表してもよい。
【0175】
図11Bに示すスキームでは、NH−ローダミンとFAM染料を連結するリンカーの長さおよび特性は、FAM−ホスホロアミダイトによる結合の前に、試薬232に対し、さらに別のリンカーホスホロアミダイトを結合することによって調整することが可能である。これらのリンカーホスホロアミダイトは、同じであってもよく、または、異なっていてもよい。このようにして、ドナーおよびアクセプターの外に、該ドナーおよびアクセプターを連結するリンカーも存在する、エネルギー転移染料ペアによって標識されるオリゴヌクレオチドは、特定の目的に合せ、簡単にインサイチュ合成することが可能である。
【0176】
図11Aおよび11Bは、特異的な、N−保護NH−ローダミン試薬の使用を例示するが、当業者であれば、FAMに対するアクセプターとして活動するものであれば、いずれのN−保護NH−ローダミン試薬であっても使用が可能であることを理解するであろう。さらに、他の種類のホスホロアミダイト染料の使用が可能であるように、他のO−保護フルオレセインの使用も可能である。染料はモノマーとして添加されるので、エネルギー転移染料標識の数は、それらを合成するのに必要なホスホロアミダイト試薬の数よりも大きい。例えば、9種の異なるエネルギー転移染料ペアによって標識されるオリゴヌクレオチドは、三つの異なるN−保護NH−ローダミンホスホロアミダイト試薬(試薬A、B、およびC)、および、三つの異なるO−保護フルオレセインホスホロアミダイト試薬(試薬1、2、および3)によって合成することが可能である:オリゴ−A1、オリゴ−A2、オリゴ−A3、オリゴ−B1、オリゴ−B2、オリゴ−B3、オリゴ−C1、オリゴ−C2、およびオリゴ−C3。
【実施例】
【0177】
(実施例1)
N−保護NH−ローダミンホスホロアミダイト合成試薬の合成
C5−、またはC6−位置にカルボキシル置換基を含む、親NH−ローダミン染料を、米国特許第4,622,400号、米国特許第5,750,409号、米国特許第5,847,162号、米国特許第6,017,712号、米国特許第6,080,852号、米国特許第6,184,379号、または米国特許第6,248,884号に記載されるように合成した。次に、この親NH−ローダミン染料を、環外アミンにおいて、アセチル、またはトリフルオロアセチ保護基によって保護し、得られたN−保護NH−ローダミン染料を、対応するNHSエステル誘導体を介してヒドロキシル−アミド誘導体に変換し、このヒドロキシル官能基を、標準手順を用いて、ホスホロアミダイトに変換した。全体的スキームを下記に示す。
【0178】
【化42】
アセチル基による保護 NH−ローダミン酸6(モノTEA塩、1.676 mmol)を、DCM(40 mL)およびTEA(3.67 mL)に縣濁した。無水酢酸(3.13 mL)を加え、この反応混合物を室温で3日間攪拌した。H2O(10 mL)を加え、攪拌を30分続けた。この混合物をDCM(200 mL)で希釈し、NaHCO3液(200 mL × 2)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、蒸発した。残渣をシリカ(溶出液として、MeOH/EtOAc/DCMの、5:20:75から20:20:60の勾配を使用)によるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。適切な分画を分留したところ、881 mg(87%)の、無色の、ラクトン化ビスアセチルN−保護NH−ローダミン染料8が得られた。
【0179】
トリフルオロアセチル基による保護 NH−ローダミン酸6(モノTEA塩、1.5 g,2.402 mmol)を、DCM(30 mL)およびTEA(6.696 mL)に縣濁した。この縣濁液を0℃に冷却し、無水酢酸(2.0 mL)をシリンジを用いて滴下した。添加完了後、この反応混合物を室温で10分攪拌した(かつ、染料粒子を粉砕するために超音波処理した)。得られた褐色液を留去し、DCM(50 mL)に再度溶解し、5% HCl(40 mL)と共に室温で1時間攪拌した。この反応混合物を分離漏斗に移し、二つの層を分離した。DCM層を塩水(40 mL)にて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、蒸発した。残渣を、MeCN(2x)と共に蒸発させたところ、1.79 gの、未精製の、N−保護NH−ローダミン染料7が得られた。
【0180】
N−保護NH−ローダミンNHSエステルの合成 DCM(20 mL)に溶解した、ビス−アセチル染料8(588 mg,0.968 mmol)およびNHS (334 mg,2.904 mmol)の溶液に、DCC (599 mg,2.904 mmol)を加えた。この反応混合物を室温で2時間攪拌し、次いで、反応混合物をろ過した。ろ液を、DCM(80 mL)で希釈し、H2O(50 mL x 2)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、蒸発した。残渣をシリカ(溶出液として、AcOH/MeOH/EtOAc/DCMの、1:1:20:78から1:5:20:74の勾配を使用)によるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。適切な分画を分留したところ、680 mg(100%)の、ビスアセチルN−保護NH−ローダミンNHSエステル10が得られた。
【0181】
ビスアセチルN−保護NH−ローダミンNHSエステル10、ビス−TFA N−保護NH−ローダミン染料7(0.322 mmol)に関する前述の手順にしたがって、ビス−TFA N−保護NH−ローダミンNHSエステル9を、80−90%収率で得た。
【0182】
N−保護NH−ローダミンホスホロアミダイトの合成 NHSエステル9(0.4 mmol)をDCM(8 mL)に溶解した。攪拌下、この液に、6−アミノ−1−ヘキサノール/DIPEA/DCM(56 mg/0.07 mL/2 mL)を加えた。この反応物を室温で30分攪拌した。固体副産物をろ過除去し、ろ液を、シリカ(溶出液として、EtOAc/DCMの、30%から60%の勾配を使用)によるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。適切な分画を分留したところ、0.344 mmol(86%)の、ビスTFA−ヘキサノールアミドローダミン染料11が得られた。
【0183】
NHSエステル10は、同様手順を用いてビス−アセチル−ヘキサノールアミドNH−ローダミン染料12に変換した。
【0184】
DCM(10 mL)に溶解した、ビスTFA−ヘキサノールアミドローダミン染料11(0.338 mmol)および2−シアノエチルN,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.214 mL,0.674 mmol,2当量)の溶液に、テトラゾールアミン(4 mg)を一度に加えた。この混合物を室温で20時間攪拌した。揮発物質を蒸発させて除去し、残渣を、DCM/ヘキサンによる3回の沈殿によって精製した。固体産物を減圧乾燥したところ、0.256 mmol(76%)のビス−TFA−N−保護NH−ローダミン染料ホスホロアミダイト13が得られた。
【0185】
同様にして、ビス−アセチル染料12をホスホロアミダイト14に変換した。
【0186】
(実施例2)
ヘテロダイマー染料ネットワークの合成
N−保護NH−ローダミンに連結したO−保護フルオレセインを含む染料ネットワークを、下記に示すようにして合成した:
【0187】
【化43】
ビス−アセチルN−保護NH−ローダミンNHSエステル16(324 mg,0.460 mmol)を、DMF(8 mL)およびDIPEA(0.3 mL)の溶液に溶解した。フルオレセイン誘導体17(239 mg,0.32 mmol、米国特許第5,800,996号に記載される通りに合成)を加え、反応混合物を、室温で1時間攪拌した。この混合液を蒸発させ、次いで、MeOH(2 x)と共に蒸発させた。残渣を10% MeOH/DCM(100 mL)に溶解し、塩水(100 mL)で洗浄した。水層を、10% MeOH/DCM(50 mL x 3)で抽出し、合わせた有機層を乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、蒸発した。残渣をシリカ(溶出液として、MeOH/DCMの、10%から30%の勾配を使用)によるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。適切な分画を分留したところ、270 mg(63%)の、ヘテロダイマー染料ネットワーク19(DIPEA塩として)が得られた。
【0188】
対応する、ビス−TFA保護染料ネットワーク18が、同様の手順によって合成された。
【0189】
(実施例3)
ヘテロダイマー染料ネットワークホスホロアミダイトの合成
標識部分としてヘテロダイマー染料ネットワークを含むホスホロアミダイト合成試薬は、下記に示すように合成された:
【0190】
【化44】
DCM(10 mL)に溶解した、ヘテロダイマー染料ネットワーク19(0.173 mmol)、DIPEA(1.028 mL)、および無水ピバル酸(0.702 mL)の混合物を、室温で1日攪拌した。H2O(40 mL)を加え、攪拌を1時間続けた。この反応混合物をDCM(50 mL)で希釈し、H2Oで洗浄した。水層をDCM(40 mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、蒸発した。残渣をシリカ(溶出液として、MeOH /DCMの、3%から15%の勾配を使用)によるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。適切な分画を分留したところ、0.145 mmol(84%)の、ビス−アセチルビス−ピバロイルヘテロダイマー染料誘導体21(DIPEA塩として)が得られた。
【0191】
染料誘導体21(0.146 mmol)を、DIPEA(0.2 mL)とDCM(8 mL)の溶液に縣濁した。固体のN−ヒドロキシスクシニミドテトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(88 mg)を加え、この反応物を室温で1時間攪拌した。6−アミノ−1−ヘキサノール(51 mg)を加え、攪拌を1時間続けた。この反応混合物をろ過し、ろ液をDCM(50 mL)で希釈した。このDCM液を塩水(40 mL)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、蒸発した。残渣をシリカゲル(溶出液として、MeOH:EtOAc:DCMの、5:20:75から15:20:65の勾配を使用)によるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。適切な分画を分留したところ、0.124 mmol(85%)の、染料ヘキサノールアミド誘導体23(DIPEA塩として)が得られた。
【0192】
染料誘導体23(91 mg,0.057 mmol)、およびテトラゾールアミン(2 mg)を、DCM(5 mL)に溶解した。2−シアノエチル−N,N,N’,N’−テトライソプロピルホスホロアミダイト(CEジアミダイト)(0.04 mL)を加え、この反応物を室温で16時間攪拌した。反応混合物を、TEA:EtOAc:DCM (3:20:77,3 mL)の溶液で希釈し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液として、TEA:MeOH:EtOAc:DCMの、3:0:20:77から3:5:20:72の勾配を使用)によって精製した。適切な分画を分留し、DCM/ヘキサンによって沈殿させたところ、75 mg(74%)のヘテロダイマー染料ホスホロアミダイト25が得られた。
【0193】
(実施例4)
任意の合成ハンドルを含む、非ヌクレオシド性ホスホロアミダイト合成試薬の合成
式−OReの、任意の合成ハンドルを含む、非ヌクレオシド性ホスホロアミダイト合成試薬を、下記に示すように合成した:
【0194】
【化45】
ビス−TFA誘導体9(1.354 mmol)を、DCM(30 mL)に溶解したDIPEA(0.236 mL)の溶液に溶解した。攪拌下、この溶液に、リンカー合成素子29およびDCM(0.0609 g,1.355 mmol、Nelsonら、1992,Nucl.Acids Res.20:6253−6259の記載の通りに合成した)を加え、攪拌を、室温で2時間続けた。EtOAcを加え、混合物をシリカカラムに負荷した。EtOAc:DCMの5:95から1:5勾配使用の溶出によって純粋産物を単離した。適切な分画を分留したところ、1.25 g(80%)のビス−TFA−ローダミン−ヒドロキシアミン30が得られた。
【0195】
ビス−TFA−ローダミン−ヒドロキシアミド30(1.081 mmol)およびテトラゾールアミン(18.5 mg)をDCM(35 mL)に溶解して溶液とした。CEジアミダイトを加え(0.685 mL)、この反応物を、室温で18時間攪拌した。溶媒を、減圧留去し、残渣をDCM/ヘキサン(3 x)で沈殿させたところ、1.081 mmol(100%)の純粋ビス−TFA−ローダミンDMTホスホロアミダイト31が得られた。
【0196】
(実施例5)
標識オリゴヌクレオチドの固相合成
N−保護NH−ローダミンホスホロアミダイト合成試薬によって標識されたオリゴヌクレオチドを、AB3900自動式DNA合成機において標準動作条件を用いポリスチレン固相支持体の上で合成した。N−保護NH−ローダミンホスホロアミダイトは、結合反応用のアセトニトリル溶媒に対して可溶であり、N−保護NH−ローダミン染料アダクトは、繰り返しの合成サイクルに対して安定であった。合成サイクルは、ヌクレオチド間リン酸結合を生成するために、ジクロロ酢酸によるDMTの除去、ヌクレオシドホスホロアミダイトモノマーの添加、無水酢酸によるキャップ形成、および、ヨウ素による酸化を用いた。さらに、このクラスのNH−ローダミンは、合成された標識オリゴヌクレオチドを脱保護し、それを固相支持体から切り離すために用いられる条件(水酸化アンモニウムによる60℃、12時間の処理)にたいしても安定であることが判明した。この標識オリゴヌクレオチドを合成するために用いられた全体スキームを下記に示す:
【0197】
【化46】
このプロセスによって、TFA−ローダミンDMTホスホロアミダイト31は、支持体結合オリゴヌクレオチドの5’−ヒドロキシルに結合して、亜リン酸中間体32を生成する。フルオレセインホスホロアミダイト(Glenn Research)を、中間体32の遊離ヒドロキシルに結合させた。得られた標識オリゴを酸化し、濃縮水酸化アンモニウム、60℃、1−2時間によって支持体から切り離し、アセトニトリル/水で洗浄し、減圧乾燥したところ、標識オリゴヌクレオチド33が得られた。オリゴ33を、標準的酢酸ナトリウム/EtOH沈殿プロトコールを用いて再沈殿させた。標識オリゴ33は、90%を超える純度、85%を超える収率で得られ(0.2 uMの支持体から170,000 pM)、それ以上精製することなく用いた。
【0198】
(実施例6)
この合成試薬によって合成された標識オリゴヌクレオチドは、優れた分光特性を示す
NH−ローダミン、またはNH−ローダミン−フルオレセイン染料ペアによって標識されたポリ(dT)10オリゴヌクレオチドを、上に示すようにして合成した。切り離し後、蛍光スペクトラムを記録した。合成した標識オリゴは全て、優れた蛍光特性を示した。
【0199】
理解を助けるために、発明内容をやや詳細に記述したが、付属の特許請求の範囲内においていくつかの変更および改変の実行が可能であることは明白であろう。したがって、記述の実施態様は、例示と見なすべきであって、限定的と考えてはならず、本明細書に記載される発明の各種局面は、本明細書で示した詳細のみに限定されてはならない。
【0200】
本開示を通じて引用された文献および特許の参照は皆、全ての目的のために引用により本出願に含められる。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1A】図1Aは、本明細書に記載される試薬の中に組み込むことが可能な、親NH−ローダミン染料の例示の実施態様を示す。
【図1B】図1Bは、本明細書に記載される試薬の中に組み込むことが可能な、親NH−ローダミン染料の例示の実施態様を示す。
【図1C】図1Cは、NH−ローダミンに対するドナーとして活動することが可能であり、かつ、標識部分が染料ネットワークを構成する実施態様において本明細書に記載される試薬の中に組み込むことが可能な、親フルオレセイン染料の例示実施態様を示す。
【図2】図2は、本明細書に記載される試薬を構成する異なる種々の成分を相互に連結するために使用することが可能な例示のリンカーを示す。
【図3A】図3Aは、合成ハンドルを含まない、ヌクレオシド性合成試薬の例示実施態様を示す。
【図3B】図3Bは、合成ハンドルを含まない、ヌクレオシド性合成試薬の例示実施態様を示す。
【図4】図4は、合成ハンドルを含まない、非ヌクレオシド性合成試薬の例示実施態様を示す。
【図5】図5は、合成ハンドルを含む、非ヌクレオシド性合成試薬の例示実施態様を示す。
【図6】図6は、合成ハンドルを含む、ヌクレオシド性合成試薬の例示実施態様を示す。
【図7】図7は、非ヌクレオシド性固相支持試薬の例示実施態様を示す。
【図8A】図8Aは、ヌクレオシド性固相支持試薬の例示実施態様を示す。
【図8B】図8Bは、ヌクレオシド性固相支持試薬の例示実施態様を示す。
【図9A】図9Aは、5’−ヒドロキシルにおいてNH−ローダミンによって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図9B】図9Bは、5’−ヒドロキシルにおいてNH−ローダミンによって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図9C】図9Cは、5’−ヒドロキシルにおいてNH−ローダミンによって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図9D】図9Dは、5’−ヒドロキシルにおいてNH−ローダミンによって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図10A】図10Aは、その3−ヒドロキシルにおいてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図10B】図10Bは、その3−ヒドロキシルにおいてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図10C】図10Cは、その3−ヒドロキシルにおいてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドを合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図11A】図11Aは、その5’−ヒドロキシルにおいてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドをインサイチュ合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図11B】図11Bは、その5’−ヒドロキシルにおいてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドをインサイチュ合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図11C】図11Cは、その5’−ヒドロキシルにおいてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドをインサイチュ合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図11D】図11Dは、その5’−ヒドロキシルにおいてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドをインサイチュ合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図12A】図12Aは、その5’−末端においてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドをインサイチュ合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図12B】図12Bは、その5’−末端においてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドをインサイチュ合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【図12C】図12Cは、その5’−末端においてエネルギー転移染料によって標識されるオリゴヌクレオチドをインサイチュ合成するための、合成試薬の特異的実施態様の使用を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴヌクレオチドを標識するのに有用な試薬であって、N−保護NH−ローダミン部分を含む標識部分を含む、試薬。
【請求項2】
リン酸エステル前駆体基をさらに含む、請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
構造式(VII):
(VII) LM−L−PEP
による化合物であって、ここで、LMは、前記標識部分を表し、PEPは、前記リン酸エステル前駆体基を表し、Lは、該リン酸エステル前駆体基に該標識部分を連結する、任意のリンカーを表す化合物である、請求項2に記載の試薬。
【請求項4】
Lが、−Z−(CH2)3−6−O−、−Z−(CH2)a−[(Ar)b−(CH2)a]c−O−、−Z−(CH2)a−[C≡C−(CH2)a]c−O−、−Z−(CH2)a−[C≡C−(Ar)b]c−(CH2)a−O−、−Z−(CH2)d−NH−C(O)−[(CH2)a−(Ar)−(CH2)a−C(O)−NH]c−(CH2)d−O−、および−Z−[CH2(CH2)eO]f−CH2(CH2)eO−から選ばれ、
ここで、
Zは、他とは独立して、官能基Fzによって与えられる連結を表し;
各aは、他とは独立して、0から4の範囲の整数を表し;
各bは、他とは独立して、1から2の範囲の整数を表し;
各cは、他とは独立して、1から5の範囲の整数を表し;
各dは、他とは独立して、1から10の範囲の整数を表し;
各eは、他とは独立して、1から4の範囲の整数を表し;
各fは、他とは独立して、1から10の範囲の整数を表し;かつ、
各Arは、他とは独立して、任意に置換される単環または多環のシクロアルキレン、シクロヘテロアルキネン、アリーレン、またはヘテロアリーレン基を表す、
、請求項3に記載の試薬。
【請求項5】
各Arが、他とは独立して、シクロヘキサン、ピペラジン、ベンゼン、ナフタレン、フェノール、フラン、ピリジン、ピペリジン、イミダゾール、ピロリジン、またはオキサジゾールから得られる基である、請求項4に記載の試薬。
【請求項6】
構造式(VII.1):
【化1】
による化合物であって、
ここで、Bは、適切に保護される核酸塩基を表し、L2は、標識部分LMに核酸塩基Bを連結するリンカーを表す化合物である、請求項3に記載の試薬。
【請求項7】
前記核酸塩基が、アデニン、7−デアザグアニン、グアニン、7−デアザグアニン、シトシン、ウラシル、チミン、イノシン、キサンテン、およびヒポキサンテンから選ばれる、請求項6に記載の試薬。
【請求項8】
Bが、AiBu、APac、CAc、GiPr−Pac、T、およびUから選ばれる、請求項7に記載の試薬。
【請求項9】
L2が、−C≡C−CH2−NH−、−C≡C−C(O)−、−CH=CH−NH−、−CH=CH−C(O)−、−C≡C−CH2−NH−C(O)−(CH2)1−6−NH−、−CH=CH−C(O)−NH−(CH2)1−6−NH−C(O)−、−C≡CH−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、および−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−から選ばれ、ここで、Arは請求項4に定義した通りである、、請求項6に記載の試薬。
【請求項10】
−B−L2−が、下記:
【化2】
から選ばれる、請求項6に記載の試薬。
【請求項11】
適切に保護される合成ハンドルをさらに含む、請求項2に記載の試薬。
【請求項12】
構造式(VIII):
(VIII) ReO−L−LM−L−PEP
による化合物であって、ここで、Reは、酸不安定保護基を表し、各Lは、他とは独立して、任意のリンカーを表し、LMは、前記標識部分を表し、かつ、PEPは、前記リン酸エステル前駆体基を表す化合物である、請求項11に記載の試薬。
【請求項13】
構造式(IX):
【化3】
による化合物であって、ここで、LMは、前記標識部分を表し、Lはリンカーを表し、Reは、酸不安定保護基を表し、かつ、PEPは、前記リン酸エステル前駆体基を表す化合物である、請求項11に記載の試薬。
【請求項14】
構造式(IX.1):
【化4】
による化合物であって、ここで、−Z−は、官能基Fzによって与えられる連結の一部を表し、同じであっても、異なっていてもよい、Sp1、Sp2、およびSp3は、それぞれ、スペーサー成分を表し、かつ、Gは、CH、N、または、アリーレン、フェニレン、ヘテロアリーレン、低級シクロアルキレン、シクロヘキシレン、および/または低級シクロヘテロアルキレンを含む基を表す化合物である、請求項13に記載の試薬。
【請求項15】
Sp1、Sp2、およびSp3が、それぞれ互いに独立に、1から10個の炭素原子を含むアルキレン鎖、−(CH2)a−[(Ar)b−(CH2)a]c−、−(CH2)a−[C≡C−(CH2)a]c−、−(CH2)a−[C≡C−(Ar)b]c−(CH2)a−、−(CH2)d−NH−C(O)−[(CH2)a−(Ar)−(CH2)a−C(O)−NH]c−(CH2)d−、および、−[CH2(CH2)eO]f−CH2(CH2)−から選ばれ、ここで、a、b、c、d、e、f、およびArは、請求項4に定義した通りである、請求項14に記載の試薬。
【請求項16】
構造式(IX.2)、(IX.3)、(IX.4)、または(IX.5):
【化5】
による化合物であって、ここで、Bは適切に保護される核酸塩基を表し、L2は、核酸塩基Bに標識部分LMを連結するリンカーを表し、構造(IX.4)において、R11は、保護基を表す化合物である、請求項13に記載の試薬。
【請求項17】
前記核酸塩基が、アデニン、7−デアザグアニン、グアニン、7−デアザグアニン、シトシン、ウラシル、チミン、イノシン、キサンテン、およびヒポキサンテンから選ばれる、請求項16に記載の試薬。
【請求項18】
Bが、AiBu、APac、CAc、GiPr−Pac、T、およびUから選ばれる、請求項17に記載の試薬。
【請求項19】
L2が、−C≡C−CH2−NH−、−C≡C−C(O)−、−CH=CH−NH−、−CH=CH−C(O)−、−C≡C−CH2−NH−C(O)−(CH2)1−6−NH−、−CH=CH−C(O)−NH−(CH2)1−6−NH−C(O)−、−C≡CH−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、および−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−から選ばれ、ここで、Arは請求項4に定義した通りである、請求項16に記載の試薬。
【請求項20】
−B−L2−が、下記:
【化6】
から選ばれる、請求項16に記載の試薬。
【請求項21】
前記リン酸エステル前駆体基が、ホスホロアミダイト基およびH−ホスホネート基を含む、請求項2−20のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項22】
前記リン酸エステル前駆体基が、式(P.1):
【化7】
のホスホロアミダイトを含み、ここで、
R20は、1から10個の炭素原子を含む、直鎖、分枝、または環状の、飽和または不飽和のアルキル、2−シアノエチル、6から10個の環炭素原子を含むアリール、および、6から10個の環炭素原子、および1から10個のアルキレン炭素原子を含むアリールアルキルから選ばれ;および、
R21およびR22は、それぞれ互いに独立に、1から10個の炭素原子を含む、直鎖、分枝、または環状の、飽和または不飽和のアルキル、6から10個の環炭素原子を含むアリール、および、6から10個の環炭素原子、および1から10個のアルキレン炭素原子を含むアリールアルキルから選ばれるか、またはそれとは別に、R21およびR22は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、5から6個の環原子を含む、飽和または不飽和環を形成し、該環原子のうちの一つまたは二つは、図示された窒素原子に加えて、O、N、およびSから選ばれるヘテロ原子であってもよい、
請求項21に記載の試薬。
【請求項23】
R20が、ベータ−シアノエチルであり、R21およびR22が、それぞれ、イソプロピルである、請求項22に記載の試薬。
【請求項24】
固相支持体、および、適切に保護される合成ハンドルをさらに含む、請求項1に記載の試薬。
【請求項25】
構造式(X):
【化8】
による化合物であって、ここで、LMは前記標識部分を表し、Lは、任意に選択的に切断可能なリンカーを表し、Reは、酸不安定な保護基を表す化合物である、請求項21に記載の試薬。
【請求項26】
構造式(XI.1):
【化9】
による化合物であって、ここで、Z、G、Sp1、Sp2、およびReは、先に請求項14に定義した通りであり、Sp4は、選択的に切断可能なスペーサー成分を表す化合物である、請求項25に記載の試薬。
【請求項27】
Sp1およびSp2が、それぞれ互いに独立に、1から10個の炭素原子を含むアルキレン鎖、−(CH2)a−[(Ar)b−(CH2)a]c−、−(CH2)a−[C≡C−(CH2)a]c−、−(CH2)a−[C≡C−(Ar)b]c−(CH2)a−、−(CH2)d−NH−C(O)−[(CH2)a−(Ar)−(CH2)a−C(O)−NH]c−(CH2)d−、および、−[CH2(CH2)eO]f−CH2(CH2)−から選ばれ、ここで、a、b、c、d、e、f、およびArは、請求項4に定義した通りであり、かつSp4がエステル結合を含む、請求項26に記載の試薬。
【請求項28】
構造式(X.2)、(X.3)、(X.4)、または(X.5):
【化10】
による化合物であって、ここで、B、L2、およびR11が、先に請求項16において定義した通りである化合物である、請求項25に記載の試薬。
【請求項29】
前記核酸塩基が、アデニン、7−デアザグアニン、グアニン、7−デアザグアニン、シトシン、ウラシル、チミン、イノシン、キサンテン、およびヒポキサンテンから選ばれる、請求項28に記載の試薬。
【請求項30】
Bが、AiBu、APac、CAc、GiPr−Pac、T、およびUから選ばれる、請求項28に記載の試薬。
【請求項31】
L2が、−C≡C−CH2−NH−、−C≡C−C(O)−、−CH=CH−NH−、−CH=CH−C(O)−、−C≡C−CH2−NH−C(O)−(CH2)1−6−NH−、−CH=CH−C(O)−NH−(CH2)1−6−NH−C(O)−、−C≡CH−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、および−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−から選ばれ、ここで、Arは請求項4に定義した通りである、請求項28に記載の試薬。
【請求項32】
−B−L2−が、下記:
【化11】
から選ばれる、請求項28に記載の試薬。
【請求項33】
Reが4’,4’’−ジメトキシトリチルである、請求項11−32のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項34】
前記N−保護NH−ローダミン部分が、構造式(IIIa)、(IIIb)、または(IIIc):
【化12】
から選ばれる構造を含み、ここで:
R’は、R3’および水素から選ばれ;
R’’は、R6’および水素から選ばれ;
R9は、アシル保護基であり;
R1’、R2’、R2’’、R4’、R4’’、R5’、R5’’、R7’、R7’’、R8’、R4、R5、R6、およびR7は、単独で占める場合、それぞれ、互いに独立に、水素、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、5−14員ヘテロアリール、6−20員ヘテロアリールアルキル、−Rb、および−(CH2)x−Rbから選ばれ、ここでxは、1から10の範囲の整数であり、Rbは、−X、−OH、−ORa、−SH、−SRa、−NH2、−NHRa、−NRcRc、−N+RcRcRc、ペルハロ低級アルキル、トリハロメチル、トリフルオロメチル、−B(OH)3、−B(ORa)3、−B(OH)O−、−B(ORa)2O−、−B(OH)(O−)2、−B(ORa)(O−)2、−P(OH)2、−P(OH)O−、−P(ORa)2、−P(ORa)O−、−P(O)(OH)2、−P(O)(OH)O−、−P(O)(O−)2、−P(O)(ORa)2、−P(O)(ORa)O−、−P(O)(OH)(ORa)、−OP(OH)2、−OP(OH)O−、−OP(ORa)2、−OP(ORa)O−、−OP(O)(OH)2、−OP(O)(OH)O−、−OP(O)(O−)2、−OP(O)(ORa)2、−OP(O)(ORa)O−、−OP(O)(ORa)(OH)、−S(O)2O−、−S(O)2OH、−S(O)2Ra、−C(O)H、−C(O)Ra、−C(S)X、−C(O)O−、−C(O)OH、−C(O)NH2、−C(O)NHRa、−C(O)NRcRc、−C(S)NH2、−C(O)NHRa、−C(O)NRcRc、−C(NH)NH2、−C(NH)NHRa、および−C(NH)NRcRcから選ばれ、ここで、Xはハロであり、各Raは、他と独立に、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、5−14員ヘテロアリール、および6−20員ヘテロアリールアルキルから選ばれ、各Rcは、他と独立に、Raであるか、またはそれとは別に、同じ窒素原子に結合する二つのRcは、その窒素原子と一緒になって、5−8員の飽和または未飽和の環であって、通常、O、N、およびSから選ばれる、同じまたは異なる環ヘテロ原子のうちの一つ以上を任意に含んでよい環を形成し、
または、それとは別に、R1’およびR2’、またはR7’およびR8’は、それらが結合する炭素原子と一緒に合わされて、任意に置換される(C6−C14)アリール架橋を形成するか、および/または、R4’およびR4’’、および/またはR5’およびR5’’は、それらが結合する炭素原子と一緒に合わされてベンゾ基を形成し;
R3’およびR6’は、単独で占める場合、それぞれ、互いに独立に、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、5−14員ヘテロアリール、および6−20員ヘテロアリールアルキルから選ばれ、または、それとは別に、構造式(IIIa)の化合物におけるR3’およびR2’、またはR4’および/またはR6’、およびR5’またはR7’、構造式(IIIb)の化合物におけるR3’およびR2’、またはR4’および/またはR6’、およびR5’またはR7’’、または、構造式(IIIc)の化合物におけるR3’およびR2’、またはR4’および/またはR6’、およびR5’またはR7’’は、その結合する原子と一緒に合わされて、同じか、または異なる低級アルキル、ベンゾ、またはピリド基のうちの一つ以上によって任意に置換される、5−または6−員の、飽和または不飽和環を形成し、
ただし、構造式(IIIa)の化合物におけるR2’、R4’、R5’、R7’、R5、またはR6のうちの少なくとも一つ、構造式(IIIb)の化合物におけるR2’、R4’、R5’、R7’’、R5、またはR6のうちの少なくとも一つ、構造式(IIIc)の化合物におけるR2’’、R4’、R5’、R7’’、R5、またはR6のうちの少なくとも一つが、式−Y−の基を含み、Yは、官能基Fyによって与えられる連結の一部を表す、
、請求項1−33のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項35】
前記N−保護NH−ローダミン部分が、構造式(IIIa.1)、(IIIa.2)、(IIIb.1)、(IIIb.2)、(IIIc.1)、および(IIIc.2):
【化13】
から選ばれる構造を含み、
ここで、R’、R’’、R1’、R2’、R2’’、R3’、R4’、R4’’、R5’、R5’’、R6’、R7’、R7’’、R8’、R4、R5、R6、R7、R9、およびYは、先に請求項34において定義された通りである、請求項34に記載の試薬。
【請求項36】
前記N−保護NH−ローダミン部分が、下記:
(i)Yは、−C(O)−、−S(O)2−、−S−、および−NH−から選ばれ;
(ii) R4およびR7は、それぞれ、クロロであり;
(iii) R1’およびR8’は、それぞれ、水素であり;
(iv) R1’およびR2’、または、R7’およびR8’は、一緒に合わされてベンゾ基を形成し;
(v) R2’およびR7’は、それぞれ、水素または低級アルキルであり;
(vi) R’はR3’であり、かつ、R’’はR6’であり;
(vii) R’はR3’であり、R’’はR6’であり、かつ、R3’およびR6’は、隣接炭素原子における置換基と一緒に合わされて、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−C(CH3)2CH=C(CH3)−、−C(CH3)2CH=CH−、−CH2−C(CH3)2−、および
【化14】
から選ばれる基を形成する、
から選ばれる一つ以上の適用可能な特徴を有する、請求項34または35に記載の試薬。
【請求項37】
R9が、式−C(O)R10のアリール基であり、ここで、R10は、水素、低級アルキル、メチル、−CX3、−CHX2、−CH2X、−CH2−ORd、および、低級アルキル、メチル、−X、−ORd、シアノ、またはニトロ基によって任意に一置換されるフェニルから選ばれ、ここで、Rdは、低級アルキル、フェニル、およびピリジルから選ばれ、各Xは、ハロ基、通常はフルオロ、またはクロロである、請求項31−34に記載の試薬。
【請求項38】
R10が、メチルおよびトリフルオロメチルから選ばれる、請求項37に記載の試薬。
【請求項39】
前記標識部分が、前記N−保護NH−ローダミン部分に対するドナーおよび/またはアクセプター部分をさらに含む、請求項1−38のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項40】
前記標識部分が、前記N−保護NH−ローダミン部分に対するドナー部分をさらに含む、請求項1−38のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項41】
前記ドナー部分が、N−保護NH−ローダミン部分またはO−保護フルオレセイン部分を含む、請求項40に記載の試薬。
【請求項42】
前記ドナー部分の2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置が、前記N−保護NH−ローダミン部分の2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置に連結される、請求項41に記載の試薬。
【請求項43】
前記ドナー部分と前記N−保護NH−ローダミン部分が、頭部対頭部方向において連結される、請求項42に記載の試薬。
【請求項44】
前記ドナー部分と前記N−保護NH−ローダミン部分が、頭部対尾部方向において連結される、請求項42に記載の試薬。
【請求項45】
前記ドナー部分と前記N−保護NH−ローダミン部分が、尾部対尾部方向において連結される、請求項42に記載の試薬。
【請求項46】
前記ドナー部分と前記N−保護NH−ローダミン部分が、側部対側部方向において連結される、請求項42に記載の試薬。
【請求項47】
前記ドナー部分と前記N−保護NH−ローダミン部分が、側部対頭部方向において連結される、請求項42に記載の試薬。
【請求項48】
前記ドナー部分と前記N−保護NH−ローダミン部分が、側部対尾部方向において連結される、請求項42に記載の試薬。
【請求項49】
前記標識部分が、構造式(VI):
(VI) A−Z1−Sp−Z2−D
を含み、ここで、Aは、前記N−保護NH−ローダミン部分を表し、Dは、前記ドナー部分を表し、同じであっても、異なっていてもよいZ1およびZ2は、官能基Fzを含む連結部分によって提供される連結の一部を表し、かつ、Spは、スペーサー成分を表す、請求項42に記載の試薬。
【請求項50】
Aが、以下の構造式A.1、A.2、A.3、A.4、A.5、およびA.6から選ばれ、Dが、以下の構造式D.1、D.2、D.3、D.4、D.5、およびD.6から選ばれるか、または、Aが、以下の構造式A.7、A.8、A.9、A.10、A.11、およびA.12から選ばれ、Dが、以下の構造式D.7、D.8、D.9、D.10、D.11、およびD.12から選ばれ:
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
ここで:
E1は、−NHR9、−NR3’R9、および−OR9bから選ばれ;
E2は、−NHR9、−NR6’R9、および−OR9bから選ばれ;
R9bは、R9であり;
Y1a、Y1b、Y2a、Y2b、Y3a、およびY3bは、それぞれ互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−C(O)−、および−S(O)2−から選ばれ;および、
R’、R’’、R1’、R2’、R2’’、R3’、R4’、R4’’、R5’、R5’’、R6’、R7’、R7’’、R8’、R4、R5、R6、R7、およびR9は、先に請求項34において定義した通りであり、ただし、E1およびE2が−OR9bである場合、R1’およびR2’、および/またはR7’およびR8’は、それらが結合する炭素原子のみと一緒に合わされて、任意に置換される(C6−C14)アリール架橋を形成する、
、請求項49に記載の試薬。
【請求項51】
構造式A.1−A.12および/またはD.1−D.12が、下記の特徴:
(i)Y1a、Y2a、およびY3aは、それぞれ互いに独立に、−C(O)−および−S(O)2−から選ばれ;
(ii)Y1b、Y2b、およびY3bは、−NHであり;
(iii)R4およびR7は、それぞれクロロであり;
(iv) R1’およびR8’は、それぞれ水素であり;
(v) R1’およびR2’、またはR7’およびR8’は、一緒に合わされてベンゾ基を形成し;
(vi)R2’およびR7’は、それぞれ、水素または低級アルキルであり;
(vii)R’はR3’であり、R’’はR6’であり;および、
(viii)R’はR3’であり、R’’はR6’であり、かつ、R3’およびR6’は、隣接炭素原子における置換基と一緒に合わされて、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−C(CH3)2CH=C(CH3)−、−C(CH3)2CH=CH−、−CH2−C(CH3)2−、および
【化19】
から選ばれる基を形成する、
から選ばれる、一つ以上の適用可能な特徴を有する、請求項50に記載の試薬。
【請求項52】
Y1a、Y2a、およびY3aは−NHであり;Y1b、Y2b、およびY3bは、−C(O)−および−S(O)2−から選ばれ;Z1は−C(O)−および−S(O)2−から選ばれ;Z2は−NH−であり、かつ、Spは、−(CH2)a−[(Ar)b−(CH2)a]c−、−(CH2)a−[C≡C−(CH2)a]c−、−(CH2)a−[C≡C−(Ar)b]c−(CH2)a−、−(CH2)d−NH−C(O)−[(CH2)a−(Ar)−(CH2)a−C(O)−NH]c−(CH2)d−、および−[CH2(CH2)eO]f−CH2(CH2)−から選ばれ、ここで、a、b、c、d、e、f、およびArは、先に請求項4に定義した通りである、請求項50に記載の試薬。
【請求項53】
構造式D.1−D.12において、R1’およびR2’および/またはR7’およびR8’が、それらの結合する炭素原子と一緒に合わされてベンゾ基を形成する、請求項50−52に記載の試薬。
【請求項54】
E1およびE2が、それぞれ、−OR9bである、請求項50−53に記載の試薬。
【請求項55】
R9bは、R10bが低級アルキルである、式−C(O)R10bのアリール基である、請求項54に記載の試薬。
【請求項56】
R10bがt−ブチルである、請求項55に記載の試薬。
【請求項57】
R9が、式−C(O)R10のアリール基であり、ここで、R10は、水素、低級アルキル、メチル、−CX3、−CHX2、−CH2X、−CH2−ORd、および、低級アルキル、メチル、−X、−ORd、シアノ、またはニトロ基によって任意に一置換されるフェニルから選ばれ、ここで、Rdは、低級アルキル、フェニル、およびピリジルから選ばれ、各Xは、ハロ基、通常はフルオロ、またはクロロである、請求項50−56に記載の試薬。
【請求項58】
R10が、メチルおよびトリフルオロメチルから選ばれる、請求項57に記載の試薬。
【請求項59】
N−保護NH−ローダミン部分を含む標識部分を含むオリゴヌクレオチド。
【請求項60】
前記N−保護NH−ローダミン部分が、請求項31−58のいずれか1項に記載の構造を含む、請求項59に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項61】
前記標識部分が、前記オリゴヌクレオチドの3’−、または5’−ヒドロキシルに連結される、請求項59に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項62】
前記標識部分が、前記オリゴヌクレオチドの核酸塩基に連結される、請求項59に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項63】
前記オリゴヌクレオチドが、固相支持体に結合される、請求項59に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項64】
前記オリゴヌクレオチドが、前記N−保護NH−ローダミン部分のドナーおよび/またはアクセプター部分によってさらに標識される、請求項59に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項65】
前記オリゴヌクレオチドが、クエンチャー部分によってさらに標識される、請求項59に記載のヌクレオチド。
【請求項66】
前記オリゴヌクレオチドが、小溝結合部分によってさらに標識される、請求項59に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項1】
オリゴヌクレオチドを標識するのに有用な試薬であって、N−保護NH−ローダミン部分を含む標識部分を含む、試薬。
【請求項2】
リン酸エステル前駆体基をさらに含む、請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
構造式(VII):
(VII) LM−L−PEP
による化合物であって、ここで、LMは、前記標識部分を表し、PEPは、前記リン酸エステル前駆体基を表し、Lは、該リン酸エステル前駆体基に該標識部分を連結する、任意のリンカーを表す化合物である、請求項2に記載の試薬。
【請求項4】
Lが、−Z−(CH2)3−6−O−、−Z−(CH2)a−[(Ar)b−(CH2)a]c−O−、−Z−(CH2)a−[C≡C−(CH2)a]c−O−、−Z−(CH2)a−[C≡C−(Ar)b]c−(CH2)a−O−、−Z−(CH2)d−NH−C(O)−[(CH2)a−(Ar)−(CH2)a−C(O)−NH]c−(CH2)d−O−、および−Z−[CH2(CH2)eO]f−CH2(CH2)eO−から選ばれ、
ここで、
Zは、他とは独立して、官能基Fzによって与えられる連結を表し;
各aは、他とは独立して、0から4の範囲の整数を表し;
各bは、他とは独立して、1から2の範囲の整数を表し;
各cは、他とは独立して、1から5の範囲の整数を表し;
各dは、他とは独立して、1から10の範囲の整数を表し;
各eは、他とは独立して、1から4の範囲の整数を表し;
各fは、他とは独立して、1から10の範囲の整数を表し;かつ、
各Arは、他とは独立して、任意に置換される単環または多環のシクロアルキレン、シクロヘテロアルキネン、アリーレン、またはヘテロアリーレン基を表す、
、請求項3に記載の試薬。
【請求項5】
各Arが、他とは独立して、シクロヘキサン、ピペラジン、ベンゼン、ナフタレン、フェノール、フラン、ピリジン、ピペリジン、イミダゾール、ピロリジン、またはオキサジゾールから得られる基である、請求項4に記載の試薬。
【請求項6】
構造式(VII.1):
【化1】
による化合物であって、
ここで、Bは、適切に保護される核酸塩基を表し、L2は、標識部分LMに核酸塩基Bを連結するリンカーを表す化合物である、請求項3に記載の試薬。
【請求項7】
前記核酸塩基が、アデニン、7−デアザグアニン、グアニン、7−デアザグアニン、シトシン、ウラシル、チミン、イノシン、キサンテン、およびヒポキサンテンから選ばれる、請求項6に記載の試薬。
【請求項8】
Bが、AiBu、APac、CAc、GiPr−Pac、T、およびUから選ばれる、請求項7に記載の試薬。
【請求項9】
L2が、−C≡C−CH2−NH−、−C≡C−C(O)−、−CH=CH−NH−、−CH=CH−C(O)−、−C≡C−CH2−NH−C(O)−(CH2)1−6−NH−、−CH=CH−C(O)−NH−(CH2)1−6−NH−C(O)−、−C≡CH−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、および−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−から選ばれ、ここで、Arは請求項4に定義した通りである、、請求項6に記載の試薬。
【請求項10】
−B−L2−が、下記:
【化2】
から選ばれる、請求項6に記載の試薬。
【請求項11】
適切に保護される合成ハンドルをさらに含む、請求項2に記載の試薬。
【請求項12】
構造式(VIII):
(VIII) ReO−L−LM−L−PEP
による化合物であって、ここで、Reは、酸不安定保護基を表し、各Lは、他とは独立して、任意のリンカーを表し、LMは、前記標識部分を表し、かつ、PEPは、前記リン酸エステル前駆体基を表す化合物である、請求項11に記載の試薬。
【請求項13】
構造式(IX):
【化3】
による化合物であって、ここで、LMは、前記標識部分を表し、Lはリンカーを表し、Reは、酸不安定保護基を表し、かつ、PEPは、前記リン酸エステル前駆体基を表す化合物である、請求項11に記載の試薬。
【請求項14】
構造式(IX.1):
【化4】
による化合物であって、ここで、−Z−は、官能基Fzによって与えられる連結の一部を表し、同じであっても、異なっていてもよい、Sp1、Sp2、およびSp3は、それぞれ、スペーサー成分を表し、かつ、Gは、CH、N、または、アリーレン、フェニレン、ヘテロアリーレン、低級シクロアルキレン、シクロヘキシレン、および/または低級シクロヘテロアルキレンを含む基を表す化合物である、請求項13に記載の試薬。
【請求項15】
Sp1、Sp2、およびSp3が、それぞれ互いに独立に、1から10個の炭素原子を含むアルキレン鎖、−(CH2)a−[(Ar)b−(CH2)a]c−、−(CH2)a−[C≡C−(CH2)a]c−、−(CH2)a−[C≡C−(Ar)b]c−(CH2)a−、−(CH2)d−NH−C(O)−[(CH2)a−(Ar)−(CH2)a−C(O)−NH]c−(CH2)d−、および、−[CH2(CH2)eO]f−CH2(CH2)−から選ばれ、ここで、a、b、c、d、e、f、およびArは、請求項4に定義した通りである、請求項14に記載の試薬。
【請求項16】
構造式(IX.2)、(IX.3)、(IX.4)、または(IX.5):
【化5】
による化合物であって、ここで、Bは適切に保護される核酸塩基を表し、L2は、核酸塩基Bに標識部分LMを連結するリンカーを表し、構造(IX.4)において、R11は、保護基を表す化合物である、請求項13に記載の試薬。
【請求項17】
前記核酸塩基が、アデニン、7−デアザグアニン、グアニン、7−デアザグアニン、シトシン、ウラシル、チミン、イノシン、キサンテン、およびヒポキサンテンから選ばれる、請求項16に記載の試薬。
【請求項18】
Bが、AiBu、APac、CAc、GiPr−Pac、T、およびUから選ばれる、請求項17に記載の試薬。
【請求項19】
L2が、−C≡C−CH2−NH−、−C≡C−C(O)−、−CH=CH−NH−、−CH=CH−C(O)−、−C≡C−CH2−NH−C(O)−(CH2)1−6−NH−、−CH=CH−C(O)−NH−(CH2)1−6−NH−C(O)−、−C≡CH−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、および−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−から選ばれ、ここで、Arは請求項4に定義した通りである、請求項16に記載の試薬。
【請求項20】
−B−L2−が、下記:
【化6】
から選ばれる、請求項16に記載の試薬。
【請求項21】
前記リン酸エステル前駆体基が、ホスホロアミダイト基およびH−ホスホネート基を含む、請求項2−20のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項22】
前記リン酸エステル前駆体基が、式(P.1):
【化7】
のホスホロアミダイトを含み、ここで、
R20は、1から10個の炭素原子を含む、直鎖、分枝、または環状の、飽和または不飽和のアルキル、2−シアノエチル、6から10個の環炭素原子を含むアリール、および、6から10個の環炭素原子、および1から10個のアルキレン炭素原子を含むアリールアルキルから選ばれ;および、
R21およびR22は、それぞれ互いに独立に、1から10個の炭素原子を含む、直鎖、分枝、または環状の、飽和または不飽和のアルキル、6から10個の環炭素原子を含むアリール、および、6から10個の環炭素原子、および1から10個のアルキレン炭素原子を含むアリールアルキルから選ばれるか、またはそれとは別に、R21およびR22は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、5から6個の環原子を含む、飽和または不飽和環を形成し、該環原子のうちの一つまたは二つは、図示された窒素原子に加えて、O、N、およびSから選ばれるヘテロ原子であってもよい、
請求項21に記載の試薬。
【請求項23】
R20が、ベータ−シアノエチルであり、R21およびR22が、それぞれ、イソプロピルである、請求項22に記載の試薬。
【請求項24】
固相支持体、および、適切に保護される合成ハンドルをさらに含む、請求項1に記載の試薬。
【請求項25】
構造式(X):
【化8】
による化合物であって、ここで、LMは前記標識部分を表し、Lは、任意に選択的に切断可能なリンカーを表し、Reは、酸不安定な保護基を表す化合物である、請求項21に記載の試薬。
【請求項26】
構造式(XI.1):
【化9】
による化合物であって、ここで、Z、G、Sp1、Sp2、およびReは、先に請求項14に定義した通りであり、Sp4は、選択的に切断可能なスペーサー成分を表す化合物である、請求項25に記載の試薬。
【請求項27】
Sp1およびSp2が、それぞれ互いに独立に、1から10個の炭素原子を含むアルキレン鎖、−(CH2)a−[(Ar)b−(CH2)a]c−、−(CH2)a−[C≡C−(CH2)a]c−、−(CH2)a−[C≡C−(Ar)b]c−(CH2)a−、−(CH2)d−NH−C(O)−[(CH2)a−(Ar)−(CH2)a−C(O)−NH]c−(CH2)d−、および、−[CH2(CH2)eO]f−CH2(CH2)−から選ばれ、ここで、a、b、c、d、e、f、およびArは、請求項4に定義した通りであり、かつSp4がエステル結合を含む、請求項26に記載の試薬。
【請求項28】
構造式(X.2)、(X.3)、(X.4)、または(X.5):
【化10】
による化合物であって、ここで、B、L2、およびR11が、先に請求項16において定義した通りである化合物である、請求項25に記載の試薬。
【請求項29】
前記核酸塩基が、アデニン、7−デアザグアニン、グアニン、7−デアザグアニン、シトシン、ウラシル、チミン、イノシン、キサンテン、およびヒポキサンテンから選ばれる、請求項28に記載の試薬。
【請求項30】
Bが、AiBu、APac、CAc、GiPr−Pac、T、およびUから選ばれる、請求項28に記載の試薬。
【請求項31】
L2が、−C≡C−CH2−NH−、−C≡C−C(O)−、−CH=CH−NH−、−CH=CH−C(O)−、−C≡C−CH2−NH−C(O)−(CH2)1−6−NH−、−CH=CH−C(O)−NH−(CH2)1−6−NH−C(O)−、−C≡CH−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−C≡C−CH2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−、および−C≡C−(Ar)1−2−O−CH2CH2−[O−CH2CH2]0−6−NH−から選ばれ、ここで、Arは請求項4に定義した通りである、請求項28に記載の試薬。
【請求項32】
−B−L2−が、下記:
【化11】
から選ばれる、請求項28に記載の試薬。
【請求項33】
Reが4’,4’’−ジメトキシトリチルである、請求項11−32のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項34】
前記N−保護NH−ローダミン部分が、構造式(IIIa)、(IIIb)、または(IIIc):
【化12】
から選ばれる構造を含み、ここで:
R’は、R3’および水素から選ばれ;
R’’は、R6’および水素から選ばれ;
R9は、アシル保護基であり;
R1’、R2’、R2’’、R4’、R4’’、R5’、R5’’、R7’、R7’’、R8’、R4、R5、R6、およびR7は、単独で占める場合、それぞれ、互いに独立に、水素、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、5−14員ヘテロアリール、6−20員ヘテロアリールアルキル、−Rb、および−(CH2)x−Rbから選ばれ、ここでxは、1から10の範囲の整数であり、Rbは、−X、−OH、−ORa、−SH、−SRa、−NH2、−NHRa、−NRcRc、−N+RcRcRc、ペルハロ低級アルキル、トリハロメチル、トリフルオロメチル、−B(OH)3、−B(ORa)3、−B(OH)O−、−B(ORa)2O−、−B(OH)(O−)2、−B(ORa)(O−)2、−P(OH)2、−P(OH)O−、−P(ORa)2、−P(ORa)O−、−P(O)(OH)2、−P(O)(OH)O−、−P(O)(O−)2、−P(O)(ORa)2、−P(O)(ORa)O−、−P(O)(OH)(ORa)、−OP(OH)2、−OP(OH)O−、−OP(ORa)2、−OP(ORa)O−、−OP(O)(OH)2、−OP(O)(OH)O−、−OP(O)(O−)2、−OP(O)(ORa)2、−OP(O)(ORa)O−、−OP(O)(ORa)(OH)、−S(O)2O−、−S(O)2OH、−S(O)2Ra、−C(O)H、−C(O)Ra、−C(S)X、−C(O)O−、−C(O)OH、−C(O)NH2、−C(O)NHRa、−C(O)NRcRc、−C(S)NH2、−C(O)NHRa、−C(O)NRcRc、−C(NH)NH2、−C(NH)NHRa、および−C(NH)NRcRcから選ばれ、ここで、Xはハロであり、各Raは、他と独立に、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、5−14員ヘテロアリール、および6−20員ヘテロアリールアルキルから選ばれ、各Rcは、他と独立に、Raであるか、またはそれとは別に、同じ窒素原子に結合する二つのRcは、その窒素原子と一緒になって、5−8員の飽和または未飽和の環であって、通常、O、N、およびSから選ばれる、同じまたは異なる環ヘテロ原子のうちの一つ以上を任意に含んでよい環を形成し、
または、それとは別に、R1’およびR2’、またはR7’およびR8’は、それらが結合する炭素原子と一緒に合わされて、任意に置換される(C6−C14)アリール架橋を形成するか、および/または、R4’およびR4’’、および/またはR5’およびR5’’は、それらが結合する炭素原子と一緒に合わされてベンゾ基を形成し;
R3’およびR6’は、単独で占める場合、それぞれ、互いに独立に、低級アルキル、(C6−C14)アリール、(C7−C20)アリールアルキル、5−14員ヘテロアリール、および6−20員ヘテロアリールアルキルから選ばれ、または、それとは別に、構造式(IIIa)の化合物におけるR3’およびR2’、またはR4’および/またはR6’、およびR5’またはR7’、構造式(IIIb)の化合物におけるR3’およびR2’、またはR4’および/またはR6’、およびR5’またはR7’’、または、構造式(IIIc)の化合物におけるR3’およびR2’、またはR4’および/またはR6’、およびR5’またはR7’’は、その結合する原子と一緒に合わされて、同じか、または異なる低級アルキル、ベンゾ、またはピリド基のうちの一つ以上によって任意に置換される、5−または6−員の、飽和または不飽和環を形成し、
ただし、構造式(IIIa)の化合物におけるR2’、R4’、R5’、R7’、R5、またはR6のうちの少なくとも一つ、構造式(IIIb)の化合物におけるR2’、R4’、R5’、R7’’、R5、またはR6のうちの少なくとも一つ、構造式(IIIc)の化合物におけるR2’’、R4’、R5’、R7’’、R5、またはR6のうちの少なくとも一つが、式−Y−の基を含み、Yは、官能基Fyによって与えられる連結の一部を表す、
、請求項1−33のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項35】
前記N−保護NH−ローダミン部分が、構造式(IIIa.1)、(IIIa.2)、(IIIb.1)、(IIIb.2)、(IIIc.1)、および(IIIc.2):
【化13】
から選ばれる構造を含み、
ここで、R’、R’’、R1’、R2’、R2’’、R3’、R4’、R4’’、R5’、R5’’、R6’、R7’、R7’’、R8’、R4、R5、R6、R7、R9、およびYは、先に請求項34において定義された通りである、請求項34に記載の試薬。
【請求項36】
前記N−保護NH−ローダミン部分が、下記:
(i)Yは、−C(O)−、−S(O)2−、−S−、および−NH−から選ばれ;
(ii) R4およびR7は、それぞれ、クロロであり;
(iii) R1’およびR8’は、それぞれ、水素であり;
(iv) R1’およびR2’、または、R7’およびR8’は、一緒に合わされてベンゾ基を形成し;
(v) R2’およびR7’は、それぞれ、水素または低級アルキルであり;
(vi) R’はR3’であり、かつ、R’’はR6’であり;
(vii) R’はR3’であり、R’’はR6’であり、かつ、R3’およびR6’は、隣接炭素原子における置換基と一緒に合わされて、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−C(CH3)2CH=C(CH3)−、−C(CH3)2CH=CH−、−CH2−C(CH3)2−、および
【化14】
から選ばれる基を形成する、
から選ばれる一つ以上の適用可能な特徴を有する、請求項34または35に記載の試薬。
【請求項37】
R9が、式−C(O)R10のアリール基であり、ここで、R10は、水素、低級アルキル、メチル、−CX3、−CHX2、−CH2X、−CH2−ORd、および、低級アルキル、メチル、−X、−ORd、シアノ、またはニトロ基によって任意に一置換されるフェニルから選ばれ、ここで、Rdは、低級アルキル、フェニル、およびピリジルから選ばれ、各Xは、ハロ基、通常はフルオロ、またはクロロである、請求項31−34に記載の試薬。
【請求項38】
R10が、メチルおよびトリフルオロメチルから選ばれる、請求項37に記載の試薬。
【請求項39】
前記標識部分が、前記N−保護NH−ローダミン部分に対するドナーおよび/またはアクセプター部分をさらに含む、請求項1−38のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項40】
前記標識部分が、前記N−保護NH−ローダミン部分に対するドナー部分をさらに含む、請求項1−38のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項41】
前記ドナー部分が、N−保護NH−ローダミン部分またはO−保護フルオレセイン部分を含む、請求項40に記載の試薬。
【請求項42】
前記ドナー部分の2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置が、前記N−保護NH−ローダミン部分の2’−、2’’−、4’−、5’−、7’−、7’’−、5−、または6−位置に連結される、請求項41に記載の試薬。
【請求項43】
前記ドナー部分と前記N−保護NH−ローダミン部分が、頭部対頭部方向において連結される、請求項42に記載の試薬。
【請求項44】
前記ドナー部分と前記N−保護NH−ローダミン部分が、頭部対尾部方向において連結される、請求項42に記載の試薬。
【請求項45】
前記ドナー部分と前記N−保護NH−ローダミン部分が、尾部対尾部方向において連結される、請求項42に記載の試薬。
【請求項46】
前記ドナー部分と前記N−保護NH−ローダミン部分が、側部対側部方向において連結される、請求項42に記載の試薬。
【請求項47】
前記ドナー部分と前記N−保護NH−ローダミン部分が、側部対頭部方向において連結される、請求項42に記載の試薬。
【請求項48】
前記ドナー部分と前記N−保護NH−ローダミン部分が、側部対尾部方向において連結される、請求項42に記載の試薬。
【請求項49】
前記標識部分が、構造式(VI):
(VI) A−Z1−Sp−Z2−D
を含み、ここで、Aは、前記N−保護NH−ローダミン部分を表し、Dは、前記ドナー部分を表し、同じであっても、異なっていてもよいZ1およびZ2は、官能基Fzを含む連結部分によって提供される連結の一部を表し、かつ、Spは、スペーサー成分を表す、請求項42に記載の試薬。
【請求項50】
Aが、以下の構造式A.1、A.2、A.3、A.4、A.5、およびA.6から選ばれ、Dが、以下の構造式D.1、D.2、D.3、D.4、D.5、およびD.6から選ばれるか、または、Aが、以下の構造式A.7、A.8、A.9、A.10、A.11、およびA.12から選ばれ、Dが、以下の構造式D.7、D.8、D.9、D.10、D.11、およびD.12から選ばれ:
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
ここで:
E1は、−NHR9、−NR3’R9、および−OR9bから選ばれ;
E2は、−NHR9、−NR6’R9、および−OR9bから選ばれ;
R9bは、R9であり;
Y1a、Y1b、Y2a、Y2b、Y3a、およびY3bは、それぞれ互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−C(O)−、および−S(O)2−から選ばれ;および、
R’、R’’、R1’、R2’、R2’’、R3’、R4’、R4’’、R5’、R5’’、R6’、R7’、R7’’、R8’、R4、R5、R6、R7、およびR9は、先に請求項34において定義した通りであり、ただし、E1およびE2が−OR9bである場合、R1’およびR2’、および/またはR7’およびR8’は、それらが結合する炭素原子のみと一緒に合わされて、任意に置換される(C6−C14)アリール架橋を形成する、
、請求項49に記載の試薬。
【請求項51】
構造式A.1−A.12および/またはD.1−D.12が、下記の特徴:
(i)Y1a、Y2a、およびY3aは、それぞれ互いに独立に、−C(O)−および−S(O)2−から選ばれ;
(ii)Y1b、Y2b、およびY3bは、−NHであり;
(iii)R4およびR7は、それぞれクロロであり;
(iv) R1’およびR8’は、それぞれ水素であり;
(v) R1’およびR2’、またはR7’およびR8’は、一緒に合わされてベンゾ基を形成し;
(vi)R2’およびR7’は、それぞれ、水素または低級アルキルであり;
(vii)R’はR3’であり、R’’はR6’であり;および、
(viii)R’はR3’であり、R’’はR6’であり、かつ、R3’およびR6’は、隣接炭素原子における置換基と一緒に合わされて、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−C(CH3)2CH=C(CH3)−、−C(CH3)2CH=CH−、−CH2−C(CH3)2−、および
【化19】
から選ばれる基を形成する、
から選ばれる、一つ以上の適用可能な特徴を有する、請求項50に記載の試薬。
【請求項52】
Y1a、Y2a、およびY3aは−NHであり;Y1b、Y2b、およびY3bは、−C(O)−および−S(O)2−から選ばれ;Z1は−C(O)−および−S(O)2−から選ばれ;Z2は−NH−であり、かつ、Spは、−(CH2)a−[(Ar)b−(CH2)a]c−、−(CH2)a−[C≡C−(CH2)a]c−、−(CH2)a−[C≡C−(Ar)b]c−(CH2)a−、−(CH2)d−NH−C(O)−[(CH2)a−(Ar)−(CH2)a−C(O)−NH]c−(CH2)d−、および−[CH2(CH2)eO]f−CH2(CH2)−から選ばれ、ここで、a、b、c、d、e、f、およびArは、先に請求項4に定義した通りである、請求項50に記載の試薬。
【請求項53】
構造式D.1−D.12において、R1’およびR2’および/またはR7’およびR8’が、それらの結合する炭素原子と一緒に合わされてベンゾ基を形成する、請求項50−52に記載の試薬。
【請求項54】
E1およびE2が、それぞれ、−OR9bである、請求項50−53に記載の試薬。
【請求項55】
R9bは、R10bが低級アルキルである、式−C(O)R10bのアリール基である、請求項54に記載の試薬。
【請求項56】
R10bがt−ブチルである、請求項55に記載の試薬。
【請求項57】
R9が、式−C(O)R10のアリール基であり、ここで、R10は、水素、低級アルキル、メチル、−CX3、−CHX2、−CH2X、−CH2−ORd、および、低級アルキル、メチル、−X、−ORd、シアノ、またはニトロ基によって任意に一置換されるフェニルから選ばれ、ここで、Rdは、低級アルキル、フェニル、およびピリジルから選ばれ、各Xは、ハロ基、通常はフルオロ、またはクロロである、請求項50−56に記載の試薬。
【請求項58】
R10が、メチルおよびトリフルオロメチルから選ばれる、請求項57に記載の試薬。
【請求項59】
N−保護NH−ローダミン部分を含む標識部分を含むオリゴヌクレオチド。
【請求項60】
前記N−保護NH−ローダミン部分が、請求項31−58のいずれか1項に記載の構造を含む、請求項59に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項61】
前記標識部分が、前記オリゴヌクレオチドの3’−、または5’−ヒドロキシルに連結される、請求項59に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項62】
前記標識部分が、前記オリゴヌクレオチドの核酸塩基に連結される、請求項59に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項63】
前記オリゴヌクレオチドが、固相支持体に結合される、請求項59に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項64】
前記オリゴヌクレオチドが、前記N−保護NH−ローダミン部分のドナーおよび/またはアクセプター部分によってさらに標識される、請求項59に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項65】
前記オリゴヌクレオチドが、クエンチャー部分によってさらに標識される、請求項59に記載のヌクレオチド。
【請求項66】
前記オリゴヌクレオチドが、小溝結合部分によってさらに標識される、請求項59に記載のオリゴヌクレオチド。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【公表番号】特表2009−533022(P2009−533022A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503336(P2009−503336)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/065798
【国際公開番号】WO2007/115265
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(509130413)アプライド バイオシステムズ, エルエルシー (48)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/065798
【国際公開番号】WO2007/115265
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(509130413)アプライド バイオシステムズ, エルエルシー (48)
【Fターム(参考)】
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