説明

ローディング効果予測装置、ローディング効果予測方法およびローディング効果予測プログラム

【課題】ローディング効果により現像後にレジストに形成されるレジストパターンと設計上のパターンとのズレを軽減すること。
【解決手段】現像液により溶解される前記レジスト膜の反応表面に形成された複数の凹上のパターン形状における単位面積当たりの現像液の浸透流を示すフラックスを、前記パターン形状のサイズに応じて前記レジスト膜の反応表面の前記フラックスが変わることを示す関係式に従って、前記パターン形状の前記基板の面方向の長さ、および前記パターン形状の前記基板の厚さ方向の長さに基づき求め、前記フラックスに基づき、前記レジスト膜の反応表面の現像液の濃度を求め、前記複数のパターン形状が形成されている前記レジスト膜に対して前記マスクパターンが描画されて現像された場合、前記レジストに形成されるレジストパターンの形状を前記現像液の濃度に基づき求めることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像行程におけるパターンのローディング効果により生じる影響を考慮してマスクパターンを作成する際に、ローディング効果により生じる影響を計算するローディング効果予測装置、ローディング効果予測方法、およびローディング効果予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスなどの微細加工が要求されるパターンの形成には、光学的にパターンを転写する方法(フォトリソグラフィ)が用いられている。
フォトリソグラフィでは、ステッパー等の露光装置を用い、原版となるフォトマスクに光を照射することにより、フォトマスクのパターンを対象物(ウェハなど)上に転写する。これを描画行程という。フォトマスクはパターン転写の原版であるため、高い寸法精度が求められる。
フォトマスクのパターニングでは、その精度の高さと解像性の高さから、電子線描画機によるパターンニング(電子線リソグラフィ)が主となっている。
この電子線リソグラフィでは、形成するパターンの微細化だけでなく、EUVマスクを含むフォトマスク、ナノインプリント用のテンプレートやステンシルマスクなどのマスク用途の多様化に伴い、設計寸法に忠実なパターン形成が必要とされている。
【0003】
基板上に形成されたレジスト膜にマスクパターンを描画して、この描画されたレジスト膜を現像液により現像するフォトリソグラフィ行程に用いる基板として、その基板上のレジスト膜に既にパターン形状が形成されており、そのパターンが密な領域と疎な領域が混在する場合がある。
この場合、レジスト膜に形成されているパターンが密な領域において、現像液が局所的に不足することにより、現像で溶解されるレジスト部分においてパターン寸法に細りが生じる現象が起こることが知られている。この現象は、ローディング効果によるものであり、マスクパターンに応じてレジスト膜に形成される設計上のパターンが、レジスト膜において設計上のレジストパターンよりも小さく形成されてしまう。これは、パターン形状が小さければ小さいほど顕著で現れる現象である。
なお、現像後に形成されるレジストパターンが、マスクパターンによって形成されると設計上予定されているパターン寸法よりも小さくなることを「パターン寸法に細りが生じる」といい、逆に大きくなることを「パターン寸法に太りが生じる」という。
【0004】
このように、ローディング効果により、例えば、ポジ型レジストのSpaceパターンにおいて、微細なパターンがより小さく形成されてしまう。これにより、形成されたレジストパターンの寸法と設計寸法との差が一定とならず、設計寸法に依存して異なってしまう。
よって、フォトマスクにおいて小さいパターン形状では、これより大きいパターン形状と同じ描画・現像条件でリソグラフィを行うことにより、レジスト膜に現像されるパターン寸法が、設計寸法とずれる問題がある。
【0005】
この電子リソグラフィにおけるローディング効果には、前方散乱・現像ローディングの2つの原因が考えられる。
電子線リソグラフィでは、基板に成膜されたレジスト膜に電子線を照射すると、電子とレジスト分子の非弾性散乱によりレジスト膜中にエネルギーが蓄積され、そのエネルギーによってレジスト分子は励起され、分解反応(ポジ型レジスト)、あるいは架橋反応(ネガ型レジスト)が生じる。次に、レジスト膜を現像液に晒すと感光部分あるいは未感光部分が溶解し、レジストパターンが形成される。
【0006】
前方散乱が原因のローディング効果は、フォトマスクを介してレジスト膜に電子線を照射する描画工程において発生する。電子線はレジスト膜に入射すると、弾性散乱によってわずかに広がりながらレジスト膜を通過する。これが前方散乱である。その後、レジスト膜の下層にある金属膜や基板で反射し、レジスト膜に再入射する。これが後方散乱である。
前方散乱は、数nmの広がりを持つのに対して、後方散乱は10μmの広がりをもつという特徴がある。つまり、前方散乱に対して、後方散乱の広がりは大きい。
また、前方散乱によるエネルギーの方が、後方散乱によるエネルギーに対して数桁大きいという特徴がある。
【0007】
前方散乱は、あらかじめ設計パターンの密度に対して電子線照射量(ドーズ量)を調整することにより、影響を小さくできることが一般的に知られている。一方、前方散乱の広がりは後方散乱に比べて小さく、批正にしくいため、ローディング効果の原因となっている。
【0008】
また、現像によるローディング効果(現像ローディング)は、パターンサイズに対する現像液の置換効率の違いに起因する。微小なパターン形状では、現像液が溶解対象であるパターン形状の底部のレジスト表面に浸透しにくいため現像されにくく、逆に大きいパターン形状では現像されやすい、という特徴がある。この特徴は、レジスト表面に形成されるパターン形状の深さが深くなると、より顕著に現れる。なお、この特徴は、ディップ式、スプレー式などの現像方法に関わらず現れる。このパターン形状の底部への現像液の浸透のしやすさは、浸透流(フラックス)で表わされる。フラックスが大きいとレジストの溶解速度(現像速度)が速く、フラックスが小さいとレジストの溶解速度(現像速度)が遅い。
【0009】
この前方散乱の補正としては、描画のショットサイズに重みをつけることでパターン形状に応じた現像速度の違いを調整することが知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、ショットサイズが小さければその分ドーズ量を大きくし、ショットサイズによるレジストの蓄積エネルギー量の大きさを均一にして、現像速度をコントロールする。
【0010】
また、現像ローディング効果を軽減するために、現像液に水溶性の樹脂を混合してレジストの拡散を抑え、現像成分をレジストに染み込ませてから現像させ、レジストパターンの大きさに関わらず現像速度を一定にする方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3355048号公報
【特許文献2】特開2007−310111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の前方散乱による影響をドーズ量の調整で軽減する方法では、パターン密度による後方散乱の影響が変化してしまう。このため、後方散乱の補正量も変化するため、ローディング効果への対策としては不十分であった。
また、特許文献2に記載の現像液に水溶性樹脂を混合する方法では、レジストに対するLERなどの他の特性が悪化されることが懸念される。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するものであり、ローディング効果により現像後にレジストに形成されるレジストパターンと設計上のパターンとのズレを軽減するローディング効果予測装置、ローディング効果予測方法およびローディング効果予測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を鑑み、本発明に係るローディング効果予測装置は、基板上に形成されたレジスト膜にマスクパターンを描画して、当該描画されたレジスト膜を現像液により現像するフォトリソグラフィ行程において、前記パターン形状の前記基板の面方向の長さを示す情報、および前記パターン形状の前記基板の厚さ方向の長さを示す情報を入力する入力部と、前記現像する際に生じる前記マスクパターンのローディング効果予測装置において、現像液により溶解される前記レジスト膜の反応表面に形成された複数の凹上のパターン形状における単位面積当たりの現像液の浸透流を示すフラックスを、前記パターン形状のサイズに応じて前記レジスト膜の反応表面の前記フラックスが変わることを示す関係式に従って、前記パターン形状の基板の面方向の長さ、および前記パターン形状の基板の厚さ方向の長さに基づき求めるフラックス取得部と、前記フラックスに基づき、前記レジスト膜の反応表面の現像液の濃度を求める現像液濃度取得部と、前記複数のパターン形状が形成されている前記レジスト膜に対して前記マスクパターンが描画されて現像された場合、前記レジストに形成されるレジストパターンの形状を前記現像液の濃度に基づき予測して求める現像後パターン予測部と、前記現像後パターン予測部が求めた現像後のレジストパターンの形状を示す情報を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上述のローディング効果予測装置において、前記フラックス取得部は、下記の式に従い、前記フラックスJを算出することを特徴とし、
【0016】
【数1】

kが浸水係数、ΔHがレジスト膜の上面における浸透圧ポテンシャル、lが前記パターン形状の前記基板の厚さ方向の長さ、Rが前記パターン形状の前記基板の面方向の長さ、xが前記レジスト形状の底部において底部の隅から底部の任意の位置までの距離を表わす。
【0017】
上述のローディング効果予測装置において、前記現像液濃度取得部は、下記の式に従い、前記レジスト膜の反応表面におけるレジスト濃度cを算出し、当該レジスト濃度に基づき前記現像液の濃度を算出することを特徴とし、
【0018】
【数2】

Aが定数、Dtがレジストの拡散係数、vが現像液の流れの速さ、tが現像行程回数を表わす。
【0019】
上述の課題を鑑み、本発明に係るローディング効果予測方法は、基板上に形成されたレジスト膜にマスクパターンを描画して、当該描画されたレジスト膜を現像液により現像するフォトリソグラフィ行程において、前記パターン形状の前記基板の面方向の長さを示す情報、および前記パターン形状の前記基板の厚さ方向の長さを示す情報を入力し、前記現像する際に生じる前記マスクパターンのローディング効果予測方法において、現像液により溶解される前記レジスト膜の反応表面に形成された複数の凹上のパターン形状における単位面積当たりの現像液の浸透流を示すフラックスを、前記パターン形状のサイズに応じて前記レジスト膜の反応表面の前記フラックスが変わることを示す関係式に従って、前記パターン形状の基板の面方向の長さ、および前記パターン形状の基板の厚さ方向の長さに基づき求め、前記フラックスに基づき、前記レジスト膜の反応表面の現像液の濃度を求め、前記複数のパターン形状が形成されている前記レジスト膜に対して前記マスクパターンが描画されて現像された場合、前記レジストに形成されるレジストパターンの形状を前記現像液の濃度に基づき予測して求め、予測される現像後のレジストパターンの形状を示す情報を出力することを特徴とする。
【0020】
上述の課題を鑑み、本発明に係るローディング効果予測プログラムは、基板上に形成されたレジスト膜にマスクパターンを描画して、当該描画されたレジスト膜を現像液により現像するフォトリソグラフィ行程において、前記現像する際に生じる前記マスクパターンのローディング効果予測プログラムにおいて、コンピュータを、前記パターン形状の前記基板の面方向の長さを示す情報、および前記パターン形状の前記基板の厚さ方向の長さを示す情報を入力する入力手段、現像液により溶解される前記レジスト膜の反応表面に形成された複数の凹上のパターン形状における単位面積当たりの現像液の浸透流を示すフラックスを、前記パターン形状のサイズに応じて前記レジスト膜の反応表面の前記フラックスが変わることを示す関係式に従って、前記パターン形状の基板の面方向の長さ、および前記パターン形状の基板の厚さ方向の長さに基づき求めるフラックス取得手段、前記フラックスに基づき、前記レジスト膜の反応表面の現像液の濃度を求める現像液濃度取得手段、前記複数のパターン形状が形成されている前記レジスト膜に対して前記マスクパターンが描画されて現像された場合、前記レジストに形成されるレジストパターンの形状を前記現像液の濃度に基づき予測して求める現像後パターン予測手段、前記現像後パターン予測部が求めた現像後のレジストパターンの形状を示す情報を出力する出力手段、として機能させるためのプログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、レジスト膜に形成されているパターン形状の大きさや深さに応じて、レジストの現像速度の変化を考慮したローディング効果を数値計算することで、現像後に形成されるレジストパターンの形状を予測することができる。これをもとに、マスクパターンを作成することで、ローディング効果により現像後にレジストに形成されるレジストパターンと設計上のパターンとのズレを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るローディング効果予測装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に用いられるレジストに形成されるレジスト形状について説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態に用いられるレジストに形成されるレジスト形状について計算に用いる変数の関係を表わす図である。
【図4】本発明の実施形態に係るリソグラフィ行程におけるパターン寸法とフラックスの関係を表わす図である。
【図5】本発明の実施形態に係るリソグラフィ行程におけるパターン深さとフラックスの関係を表わす図である。
【図6】本発明の実施形態に係るリソグラフィ行程におけるフラックスとレジスト濃度の関係を表わす図である。
【図7】本発明の実施形態に係る現像後パターン予測部により予測されるパターン形状のパターン寸法とパターン深さの関係を表わす図である。
【図8】本発明の実施形態に係るパターン形状補正部が参照する補正値の一例についてための図である。
【図9】本発明の実施形態に係るパターン形状補正部が参照する補正値の他の例についてための図である。
【図10】本発明の実施形態に係るローディング効果予測方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態による形状推定システム1について図1を参照して説明する。図1は、本実施形態による形状推定システム1の構成を示す概略ブロック図である。
図1に示す通り、ローディング効果予測装置100は、入力部101と、記憶部102と、フラックス取得部103と、現像液濃度取得部104と、現像後パターン予測部105と、パターン形状補正部106と、出力部107とを備える。
【0024】
ローディング効果予測装置100は、予め求められたレジストの特性を表わす定数を用いて、数値計算により設計寸法に対して現像後のレジスト形状を予測し、その結果から最適な描画条件を決定する。
本実施形態に係るローディング効果予測装置100は、レジスト膜に既に形成されているレジストパターンの構造に対する現像液のフラックスの違いを反映して、最適な描画条件を決定することができる。つまり、ローディング効果の測定対象であって、これからマスクパターンに応じたパターンを形成するレジスト膜には、既にパターンが形成されており、表面が凸凹している。このレジスト膜に既に形成されているパターンの凹部をパターン形状という。このように、パターン形状が形成されていることによって、表面が凸凹しているレジスト膜に対して、パターンを描画して現像液で現像すると、上述の通り、パターン形状の大きさの違いによる現像速度の差が生じる問題がある。よって、レジスト膜の面方向において、その現像速度が一様とならない。本発明に係るローディング効果予測装置100は、レジスト膜に形成されている凹状のパターン形状に応じた現像後のパターンを予測する。
【0025】
なお、本実施の形態において、ローディング効果予測装置100は、設計寸法に対する現像後のレジスト形状を予測する際、フラックスや現像液濃度を数値計算により求める例について説明するが、本発明はこれに限られない。例えば、以下に説明するフラックスや現像液濃度を予め数値計算しておき、対応関係を示すテーブルを作成して記憶部に記憶しておき、その都度、数値計算をするかわりにテーブルを参照して、フラックスや現像液濃度を取得するものであってもよい。また、本実施形態において、数値計算に利用する数値やパラメータは最低限必要な要素の一例であり、これ以外の要素を用いてフラックスや現像液濃度を取得するのであってもよい。
【0026】
入力部101は、ローディング効果予測装置100によって利用される情報を入力する。この入力部101は、例えば、設計上のマスクパターンに関するパターン形状情報を入力する。本実施形態に係る設計上のマスクパターンは、例えば、ネガ型のフォトレジストに描画するためのマスクパターンであって、露光部分に対応する複数のパターン形状を含む。このマスクパターンは、例えば、面方向に平行なX軸方向に、それぞれ、0.1μm、0.3μm、0.5μm、1.0μmのパターン寸法Rを有するパターン形状W1、W2、W3、W4を含む。これらパターン形状W1、W2、W3、W4は、全て、レジスト膜の厚さ方向に平行なZ方向に0.2μmのパターン深さlを有する。
【0027】
ここで、パターン形状について、図2を参照して詳細に説明する。図2は、ウエハに形成される設計上のレジストパターンの一例を説明するための図である。なお設計上のレジストパターンとは、設計上のマスクパターンを用いて描画行程を実行し、その後、現像行程を経ることでレジストに形成しようとするパターンであって、ローディング効果によりパターン寸法に細りが生じることは考慮されていないパターンである。本紙において、設計上のレジストパターンは、マスクパターンという場合がある。これは、マスクパターンは設計上のレジストパターンに比べて縮小されている場合はあるものの、そのパターンは同一だからである。
【0028】
図2に示す通り、ウエハの上面には、レジスト膜が形成されている。このレジスト膜の面方向に平行な直線をX軸およびY軸と、レジスト膜の厚さ方向に平行な直線をZ軸とする。また、設計上のレジストパターンのうち、任意のパターン形状をX軸方向に切断した拡大図を示す。
このパターン形状のサイズは、レジストの面方向(X軸)の長さであるパターン寸法Rと、レジストの厚さ方向(Z軸)の長さであるパターン深さlにより表わすことができる。なお、パターン形状のY軸方向の長さは、本実施形態においては考慮しないものとする。
【0029】
図1に戻って、入力部101は、フラックス取得部103による計算において必要な情報として、浸透圧ポテンシャルΔH、浸水係数K、レジストの拡散係数Dt(t=現像回数)、定数A、定数a、補正値を入力する。なお、詳細については後述する。
記憶部102は、入力部101が入力した情報を記憶する。この記憶部102は、パターン形状情報(パターン寸法R、パターン深さl)、浸透圧ポテンシャルΔH、浸水係数k、レジストの拡散係数Dt(t=現像回数)、定数A、定数a、補正値を記憶する。
【0030】
フラックス取得部103は、記憶部102からパターン形状情報(パターン寸法R、パターン深さl)、浸透圧ポテンシャルΔH、浸水係数kを読み出し、以下の式(2)に従って、現像行程におけるレジスト膜のフラックスJを計算する。このフラックスJとは、各パターン形状についてパターン深さzの底面における単位面積当たりの現像液の浸透流である。この浸透流とは、レジスト膜に対する現像液の浸透のしやすさを示す。フラックス(浸透流)が大きい場合、浸透しやすいことを表わす。
ここで、フラックスJと現像後のレジストに形成されるレジストパターンとの関係について説明する。
【0031】
はじめに、マスクパターンのパターン形状(パターン寸法Rおよびパターン深さl)に応じてレジストの現像速度が変化することについて説明する。
現像速度を表わす式は、以下(A)(B)の合成によって表わされる。
(A)現像液のレジスト表面に到達する速さ
(B)レジスト分子と現像液の化学反応速度
なお、(A)と(B)は連続して起こると考えられる。本実施形態においては、(B)化学反応速度は、十分に大きいため、現像速度への影響は無視できるとする。
【0032】
(A)レジスト表面に到達する速さは、レジスト表面の現像液の濃度勾配に比例する。現像液の濃度勾配が大きければ速く、小さければ遅い。また、現像液の濃度勾配は、レジスト表面付近の現像液の濃度が高ければ大きく、低ければ小さい。よって、現像速度はレジスト表面付近の現像液の濃度が関係する。
【0033】
実際、パターン形状が形成されているレジスト上では、現像液の濃度は均一ではなく、例えば、Iso−Spaceなどのパターン形状の窪みの端部分では現像液の置換効率は低いため、現像液の濃度は低くなっている。よって、既に形成されているパターン形状を更に現像して深く掘る場合、レジスト形状の中心部分であって、描画したパターンの中心部分は溶解しやすい。一方、レジスト形状の中心部分であって、描画したパターンの端部分では溶解しにくい。そのため、レジスト形状や描画するパターンが小さいと溶解しにくく、大きいと溶解し易い。また、レジスト形状や描画するパターンが深くなると、溶解するレジスト形状の底部での現像液濃度は低くなり、より溶解しにくくなる。
【0034】
これらの置換効率は、現像液の浸透流(フラックスJ)として表わすことができる。現像液が浸透しやすい凹状のレジスト形状中心や描画するパターン中心では浸透流が大きく、置換効率が向上するため、現像速度は速くなる。
【0035】
ここで、図3を参照して、レジスト膜上に形成されたパターン形状に応じた現像速度の変化について詳細に説明する。図3には、任意のパターン形状のX軸方向に切断した断面図を示す
図3(a)に示すように、レジスト膜上に、パターン寸法R、パターン深さlであるパターン形状が形成されている。このパターン形状を、複数のステップに分けて、深さl+mまで削るとする。ここで、深さlからn(n<m)まで削る第1ステップ(現像回数t=0)におけるレジストの表面の最上面(z=0)では、浸透圧ポテンシャルがΔHであるとする。
この場合、パターン深さl(z=l)における単位面積あたりの現像液の浸透流(フラックスJ)は、次の式(1)で表される。なお、kは浸水係数である。
【0036】
【数3】

【0037】
また、図3(b)に示すように、レジスト膜に形成されるパターン形状の底部に対して、レジストの最上面(z=0)における浸透圧ポテンシャルΔHの現像液が一様に浸透すると仮定する。すると、全てのフラックスJは、浸透圧ポテンシャルΔHの面積分で表される。これを、式(2)に示す。
【0038】
【数4】

【0039】
なお、xは、図3(b)に示す通り、レジスト形状の底部において、この底部のX方向の一端(隅)から任意の位置Pまでの距離を示す。なお、この位置Pは、底部の中心であることが好ましく、xは、底部のX方向の長さの半分(つまり、パターン寸法Rの半分)のであることが好ましい。
【0040】
このように、式(2)に示す通り、パターン寸法Rやパターン深さlに対する現像液のフラックスJの違いを表すことができる。つまり、このようにフラックスJは、パターン寸法Rに応じて変化する。
このように、式(2)は、パターン形状のサイズに応じてレジスト膜の反応表面のフラックスJが変わることを示す関係式である。フラックス取得部103は、この式(2)に従って、パターン形状の基板の面方向の長さであるパターン寸法R、およびパターン形状の基板の厚さ方向の長さであるパターン深さlに基づき、現像液により溶解されるレジスト膜の反応表面における単位面積当たりの現像液の浸透流を示すフラックスJを求める。
【0041】
フラックス取得部103は、この式(2)に従って、記憶部102から読み出したパターン形状情報(パターン寸法R、パターン深さl)と浸透圧ポテンシャルΔH、浸水係数k、
に基づき、パターン寸法Rとレジスト膜の深さlに対応する現像液のフラックスJをパターン形状毎に算出する。
【0042】
ここで、式(2)によって計算されるフラックスJとパターン寸法Rの関係について、図4を参照して説明する。
図4は、横軸にパターン寸法R(μm)を、縦軸にフラックスJをとり、パターン寸法RごとにフラックスJとの関係を示すグラフである。横軸のパターン寸法Rは、パターン形状におけるX軸方向の中心点からの距離を示し、中心点をR=0とする。
ここでは、パターン寸法R=0.1、0.3、0.5、1.0μmの4つのパターン形状W1、W2、W3、W4が作成されているレジスト表面におけるフラックスJを示す。
図4に示す通り、パターン寸法Rが小さくなるにつれて、フラックスJも小さくなる傾向がある。例えば、パターン寸法R=1.0におけるフラックスJの最大値は、約9.3である。これに比べて、パターン寸法R=0.5におけるフラックスJの最大値は、約7.8である。
【0043】
また、パターン寸法Rが小さくなるにつれて、フラックスJが小さくなり、X軸方向におけるフラックスJの変化量も少なく一様になる傾向がある。一方、パターン寸法Rが大きくなるにつれて、フラックスJが大きくなり、X軸方向におけるフラックスJの変化量も大きくなる。パターン形状の中央部分(R=0)のフラックスJが最大となり、パターン形状の隅部分に近づくにつれて、フラックスJが低下する傾向がある。
【0044】
次に、式(2)によって計算されるフラックスJとパターン深さlの関係について、図5を参照して説明する。
図5は、横軸にパターン寸法R(μm)を、縦軸にフラックスJをとり、パターン深さlごとにフラックスJとの関係を示すグラフである。ここで、パターン寸法Rは、0.3μmとする。横軸のパターン寸法Rは、パターン形状におけるX軸方向の位置を示す。横軸のパターン寸法R=0、R=0.3は、パターン形状のX軸方向の端部を、横軸のパターン寸法R=0.15は、パターン形状のX軸方向の中心点を示す。
ここでは、パターン寸法R=0.3μmであって、パターン深さl=0.1、0.3、0.5、1.0μmが異なるパターン形状W11、W12、W13、W14が作成されているレジスト表面におけるフラックスJを示す。
図5に示す通り、パターン深さlが大きく(深く)なるにつれて、フラックスJが小さくなり、X軸方向におけるフラックスJの変化量も少なく一様になる傾向がある。一方、パターン寸法Rが小さくなるにつれて、フラックスJの変化量が大きくなり、パターン形状の中央部分(R=0.15)のフラックスJが最大となり、パターン形状の隅部分に近づくにつれて、フラックスJが低下する傾向がある。
【0045】
図1に戻って、現像液濃度取得部104は、フラックス取得部103によって算出されたフラックスJに基づき、レジストの反応表面の現像液濃度を算出し、算出した現像液濃度を現像後パターン予測部105に出力する。
フラックスJに対してレジストは拡散するので、現像液濃度取得部104は、フラックスJを含む移動拡散方程式を解くことにより、レジスト膜の反応表面のレジスト濃度を計算し、この反応表面におけるレジスト濃度分布を求める。
この移流拡散方程式は、以下の式(3)で示される。
なお、cはレジスト濃度、Dはレジストの拡散係数、vは現像液の流れの速さを表す。
【0046】
【数5】

【0047】
また、現像液の流れの速さvとフラックスJについては、以下の式(4)が成立つ。なお、aは定数である。
【0048】
【数6】

【0049】
よって、フラックスJを含むレジスト濃度の解は、式(5)となる。
【0050】
【数7】

【0051】
現像液濃度取得部104は、記憶部102から読み出したレジストの拡散係数Dt(t=現像回数)、定数A、定数a、およびフラックス取得部103からのフラックスJに基づき、式(4)および(5)に従って、レジスト濃度cを算出する。また、現像液濃度取得部104は、このレジスト濃度cに基づき、レジストの反応表面におけるレジスト濃度分布を求める。
【0052】
この現像液濃度取得部104は、レジスト濃度cに基づき、現像液の濃度を算出する。この現像液濃度取得部104は、例えば、レジスト濃度cと現像液の濃度について、予め実験によって求められている関係を示す関係式に基づき、現像液の濃度を算出する。
このレジスト濃度cと現像液の濃度の関係について図6を用いて説明する。図6は、横軸にフラックスJを、縦軸にレジスト濃度cをとり、レジスト濃度cと現像液の濃度の関係にを示すグラフである。
ここでは、フラックスJ=0の場合、レジスト濃度c=1として規格化した。現像液の納所は、レジスト濃度cに対して線形に減少するという性質を有する。例えば、フラックスJが大きくなると、レジスト分子が現像液中に溶け出すためレジスト膜中のレジスト分子のレジスト濃度cは小さくなり、現像液の中のレジスト分子の濃度(現像液濃度)が高くなる。一方、フラックスJが小さくなると、レジスト濃度cは大きくなり、現像液の濃度が低くなる。
なお、現像液濃度取得部104は、この現像液濃度に基づき、レジストの反応表面における現像液濃度分布を求め、この現像液濃度分布を示す情報を現像後パターン予測部105に出力する。
【0053】
なお、本実施形態において、現像液濃度取得部104は、初期設定として、式(5)において、レジストの拡散係数Dt=1として、レジスト深さl=0.2μmから単位時間あたりに現像の進んだレジスト形状における、単位面積当たりのレジスト濃度cを計算した。
なお、現像液の濃度に対する現像速度の割合は、描画の電圧、電流密度、レジスト特性に依存する。ここでは、単位時間あたりに現像する最大現像速度を0.01μmとした。
【0054】
現像後パターン予測部105は、現像液濃度取得部104によって算出された現像液濃度分布を示す情報に基づき、予測される現像後のレジスト形状を求める。この現像後パターン予測部105は、この予測される現像後のレジスト形状を示すデータをパターン形状補正部106あるいは出力部107に出力する。
【0055】
図7は、現像後パターン予測部105によって予測される現像後のレジスト形状を示す図である。図7には、横軸にパターン寸法R(μm)を、縦軸にレジスト深さlをとり、現像後パターン予測部105によって予測される現像後のレジスト形状を示すグラフである。横軸のパターン寸法Rは、パターン形状におけるX軸方向の中心点からの距離を示し、中心点をR=0とする。
ここでは、設計上のパターン寸法R=0.3、0.5、1.0μmの4つのパターン形状W2、W3、W4が現像された場合における現像後のレジスト形状を示す。なお、この場合のリソグラフィ行程における条件は同一である。本実施形態においては、加速電圧50kevの電子線を用いてリソグラフィを行い、レジスト膜の厚さ5nmであって、描画の電圧、電流密度、レジスト特性等の条件が同一である。
【0056】
図7に示す通り、パターン寸法R=1.0の場合、レジスト深さl方向の長さにして約0.00002(l=0.19000〜0.19002)μmの部分のレジストが、パターン形状W4の隅が現像されずに残っている。また、パターン寸法R=0.5の場合、レジスト深さl方向の長さにして約0.00005(l=0.19000〜0.19005μmの部分のレジストが、パターン形状W3の隅が現像されずに残っている。しかし、パターン形状W3、4における隅のレジスト残りは、いずれもパターン寸法R方向の長さで0.05μm程度である。この程度のレジスト残りであれば、ほとんど現像されているといえる。
【0057】
一方、パターン寸法R=0.3の場合、レジスト深さl方向の長さとして約0.00011(l=0.19000〜0.19011)μmの部分のレジストが、パターン寸法R方向の長さで0.05μm程度、パターン形状W2の隅において現像されずに残っている。
この場合、パターン形状の窪みの隅にレジストが残っていることで、設計上のマスクパターンと、レジスト膜に形成されるレジストパターンとがずれてしまい、設計上のパターンよりも細いパターンとなってしまう。
【0058】
現像後パターン形状補正部106は、図7に示すパターン寸法R=0.3の場合のように、現像されずに残ってしまう部分が、予め決められた閾値を超える場合、このパターン寸法R=について、記憶部102から読み出した予め決められた補正値に基づき、このパターン寸法Rを補正する。このパターン形状補正部106は、この補正したパターン寸法Rに基づき、補正したマスクパターンを作成して、このマスクパターンを示すデータを出力部107に出力する。
【0059】
ここで、パターン形状補正部106が参照する補正値について、図8、9を参照して説明する。
図8、9は、現像後パターン予測部105によって求められた数値計算により算出される予測のパターン寸法Rを横軸に、補正値としての最適値として予め決められている補正後のパターン寸法Rを縦軸にとるグラフを示す。このグラフは、予測のパターン寸法Rに対して、予め決められている補正後のパターン寸法Rを示す。なお、このグラフが示す関係式は、予想のパターン寸法Rのパターン形状についてのパターン深さlごとに予め決められている。
図8は、予想のレジスト寸法R=0.2μmの場合における補正値との関係を示すグラフである。図9は、予想のレジスト寸法R=0.3μmの場合における補正値との関係を示すグラフである。
パターン形状補正部106は、図8、9に示すような補正値に基づき、マスクパターンを補正する。つまり、予測のレジスト寸法R=0.2である場合、パターン形状補正部106は、図8に示す補正値を参照して、補正後のレジスト寸法R=0.25μmを算出する。また、予測のレジスト寸法R=0.3である場合、パターン形状補正部106は、図9に示す補正値を参照して、補正後のレジスト寸法R=0.314μmを算出する。
【0060】
また、パターン形状補正部106は、記憶部102からマスクパターンのデータを読み出し、現像後パターン予測部105が求めたレジスト形状と、マスクパターンに含まれるレジスト形状のズレを求める。このパターン形状補正部106は、求めたズレに基づき、マスクパターンを補正し、補正されたマスクパターンを出力部107に出力するものであってもよい。
出力部107は、外部のコンピュータやメモリ等と接続されており、フラックス取得部103からのフラックスJを示すデータ、現像液濃度取得部104からの現像液濃度を示すデータ、現像後パターン予測部105からの予測される現像後のレジスト形状を示すデータ、パターン形状補正部106からの補正されたマスクパターン、を出力する。
【0061】
次に、図10を参照して、本実施形態に係るローディング効果予測方法の一例について説明する。図10は、本実施形態に係るローディング効果予測方法の一例を示すフローチャートである。
図10に示す通り、予めマスクパターンにもとづき、ローディング効果予測対象に関する情報として、パターン形状情報(パターン寸法R、パターン深さl)を、入力部101が入力し、記憶部102に記憶する(ステップST1)。
また、入力部101は、実験等によって求められる情報として、浸透圧ポテンシャルΔH、浸水係数k、レジストの拡散係数Dt(t=現像回数)、定数A、定数a、補正値など、ローディング効果予測装置100による数値計算に必要な情報を入力し、記憶部102に記憶する(ステップST2)。なお、ステップST1とステップST2は、この順番に限られず、逆順であってもよく、平行して行われてもよい。
【0062】
次いで、フラックス取得部103は、この式(2)に従って、記憶部102から読み出したパターン形状情報(パターン寸法R、パターン深さl)と浸透圧ポテンシャルΔH、浸水係数kに基づき、パターン寸法Rとレジスト膜の深さlに対応する現像液のフラックスJをパターン形状毎に算出する。このフラックス取得部103は、算出したフラックスJを示す情報を現像液濃度取得部104に出力する。
そして、現像液濃度取得部104は、記憶部102から読み出したレジストの拡散係数Dt(t=現像回数)、定数A、定数a、およびフラックス取得部103からのフラックスJに基づき、式(4)および(5)に従って、レジスト濃度cを算出する。次いで、現像液濃度取得部104は、レジスト濃度cに基づき、現像液濃度を算出する。そして、現像液濃度取得部104は、この現像液濃度に基づき、レジストの反応表面における現像液濃度分布を求め、この現像液濃度分布を示す情報を現像後パターン予測部105に出力する。
【0063】
現像後パターン予測部105は、現像液濃度取得部104によって算出された現像液濃度分布を示す情報に基づき、予測される現像後のレジスト形状を求める。この現像後パターン予測部105は、この予測される現像後のレジスト形状を示すデータをパターン形状補正部106に出力する(ステップST3)。
【0064】
そして、パターン形状補正部106は、現像されずに残ってしまう部分が予め決められた閾値を超える場合、このパターン寸法R=について、記憶部102から読み出した予め決められた補正値に基づき、このパターン寸法Rを補正する。パターン形状補正部106は、この補正したパターン寸法Rに基づき、補正したマスクパターンを作成して、このマスクパターンを示すデータを出力部107に出力する(ステップST4)。つまり、パターン形状補正部106は、補正により、最適な描画パターン(マスクパターン)を決定する。
【0065】
上述の通り、本実施形態に係るローディング効果予測装置100は、レジスト膜に形成されている凹状のパターン形状に応じた現像後のパターン形状を予測し、予測されたパターン形状に基づき、マスクパターンを補正することができる。これにより、現像ムラが原因で発生するローディング効果を考慮したマスクパターンを作成することができる。
【0066】
なお、本実施形態において、ローディング効果予測装置100は、フラックス取得部103、現像液濃度取得部104、現像後パターン予測部105、パターン形状補正部106を有するとして説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、これらのうち、フラックス取得部103のみを有するローディング効果予測装置であってもよく、この場合、算出したフラックスJを示す情報を出力部107を介して外部のコンピュータ等に出力する。ユーザは、このフラックスJを用いて現像液濃度の算出や現像後のパターンの予測、および補正後のマスクパターンを自身で行っても良い。また、これらのうち、フラックス取得部103および現像液濃度取得部104のみを有するローディング効果予測装置であってもよく、現像液濃度取得部104によって算出された現像液濃度を示す情報を出力部107から出力するものであってもよい。この場合も、ユーザのパターン予想等に利用することができる。
【0067】
なお、上述のローディング効果予測装置100の動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでいう「コンピュータシステム」とは、CPU及び各種メモリやOS、周辺機器等のハードウェアを含むものである。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0068】
また、図10に示す各ステップを実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、また、図1に示すローディング効果予測装置100の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、検出対象物の形状情報の推定値を算出する処理を行ってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0069】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic RanDom Access MemoRy))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0070】
100・・・ローディング効果予測装置、101・・・入力部、102・・・記憶部、103・・・フラックス計算部、104・・・現像液濃度計算部、105・・・現像後パターン予測部、106・・・パターン形状補正部、107・・・出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたレジスト膜にマスクパターンを描画して、当該描画されたレジスト膜を現像液により現像するフォトリソグラフィ行程において、前記現像する際に生じる前記マスクパターンのローディング効果予測装置において、
前記パターン形状の前記基板の面方向の長さを示す情報、および前記パターン形状の前記基板の厚さ方向の長さを示す情報を入力する入力部と、
現像液により溶解される前記レジスト膜の反応表面に形成された複数の凹上のパターン形状における単位面積当たりの現像液の浸透流を示すフラックスを、前記パターン形状のサイズに応じて前記レジスト膜の反応表面の前記フラックスが変わることを示す関係式に従って、前記パターン形状の基板の面方向の長さ、および前記パターン形状の基板の厚さ方向の長さに基づき求めるフラックス取得部と、
前記フラックスに基づき、前記レジスト膜の反応表面の現像液の濃度を求める現像液濃度取得部と、
前記複数のパターン形状が形成されている前記レジスト膜に対して前記マスクパターンが描画されて現像された場合、前記レジストに形成されるレジストパターンの形状を前記現像液の濃度に基づき予測して求める現像後パターン予測部と、
前記現像後パターン予測部が求めた現像後のレジストパターンの形状を示す情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とするローディング効果予測装置。
【請求項2】
前記フラックス取得部は、
下記の式に従い、前記フラックスJを算出することを特徴とし、
【数1】

kが浸水係数、ΔHがレジスト膜の上面における浸透圧ポテンシャル、lが前記パターン形状の前記基板の厚さ方向の長さ、Rが前記パターン形状の前記基板の面方向の長さ、xが前記レジスト形状の底部において底部の隅から底部の任意の位置までの距離を表わす請求項1に記載のローディング効果予測装置。
【請求項3】
前記現像液濃度取得部は、
下記の式に従い、前記レジスト膜の反応表面におけるレジスト濃度cを算出し、
当該レジスト濃度に基づき前記現像液の濃度を算出することを特徴とし、
【数2】

Aが定数、Dtがレジストの拡散係数、vが現像液の流れの速さ、tが現像行程回数を表わす請求項1に記載のローディング効果予測装置。
【請求項4】
基板上に形成されたレジスト膜にマスクパターンを描画して、当該描画されたレジスト膜を現像液により現像するフォトリソグラフィ行程において、前記現像する際に生じる前記マスクパターンのローディング効果予測方法において、
前記パターン形状の前記基板の面方向の長さを示す情報、および前記パターン形状の前記基板の厚さ方向の長さを示す情報を入力し、
現像液により溶解される前記レジスト膜の反応表面に形成された複数の凹上のパターン形状における単位面積当たりの現像液の浸透流を示すフラックスを、前記パターン形状のサイズに応じて前記レジスト膜の反応表面の前記フラックスが変わることを示す関係式に従って、前記パターン形状の前記基板の面方向の長さ、および前記パターン形状の前記基板の厚さ方向の長さに基づき求め、
前記フラックスに基づき、前記レジスト膜の反応表面の現像液の濃度を求め、
前記複数のパターン形状が形成されている前記レジスト膜に対して前記マスクパターンが描画されて現像された場合、前記レジストに形成されるレジストパターンの形状を前記現像液の濃度に基づき予測して求め、
予測される現像後のレジストパターンの形状を示す情報を出力することを特徴とするローディング効果予測方法。
【請求項5】
基板上に形成されたレジスト膜にマスクパターンを描画して、当該描画されたレジスト膜を現像液により現像するフォトリソグラフィ行程において、前記現像する際に生じる前記マスクパターンのローディング効果予測プログラムにおいて、
コンピュータを、
前記パターン形状の前記基板の面方向の長さを示す情報、および前記パターン形状の前記基板の厚さ方向の長さを示す情報を入力する入力手段、
現像液により溶解される前記レジスト膜の反応表面に形成された複数の凹上のパターン形状における単位面積当たりの現像液の浸透流を示すフラックスを、前記パターン形状のサイズに応じて前記レジスト膜の反応表面の前記フラックスが変わることを示す関係式に従って、前記パターン形状の前記基板の面方向の長さ、および前記パターン形状の前記基板の厚さ方向の長さに基づき求めるフラックス取得手段、
前記フラックスに基づき、前記レジスト膜の反応表面の現像液の濃度を求める現像液濃度取得手段、
前記複数のパターン形状が形成されている前記レジスト膜に対して前記マスクパターンが描画されて現像された場合、前記レジストに形成されるレジストパターンの形状を前記現像液の濃度に基づき予測して求める現像後パターン予測手段、
前記現像後パターン予測部が求めた現像後のレジストパターンの形状を示す情報を出力する出力手段、
として機能させるためのプログラムであることを特徴とするローディング効果予測プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−114111(P2012−114111A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259185(P2010−259185)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】