説明

ローラの成形装置および成形方法

【課題】軸体を端部駒に挿入しやすくし、かつ成形されるローラの振れ精度を高くする、ローラの成形装置および成形方法を提供する。
【解決手段】ローラの成形装置が、内部に円筒状の空間を有する中空のパイプ金型2と、パイプ金型2の両端に組付けられ軸体4を保持可能な2つの端部駒1、3を有する成形金型7を有している。さらに一方の端部が端部駒3によって保持され中間部が円筒状の空間内に位置している軸体4の一部を把持して軸体4に交差する面内で移動することができるセンタリング部材5をも有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OA(Office Automation)機器などに使用される各種ローラを成形する成形装置および成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷機械やプリンタなどのOA機器には、ローラが使用されており、一般にはゴムローラが使用されている。ゴムローラは、成形金型内にゴムローラの軸となる軸体を挿入し、その状態で金型内にゴム材料を注入することでロールを成形することにより製造される。ゴムローラを成形する際に使用する成形金型は、内部に円筒状の空間を有する中空のパイプ金型と、パイプ金型の両端に組付けられ軸体の端部を保持可能な2つの端部駒の、少なくとも3部材から構成されている。端部駒には、軸体挿入穴が開いており、この軸体挿入穴に軸体を挿入することにより成形金型内において軸体を保持している。成形金型を型組みする際は、一般に一方の端部駒とパイプ金型を組付けた状態で軸体の一方の端部を挿入し、それから他方の端部駒をパイプ金型に組付けする。または、一方の端部駒に軸体の一部の端部を挿入した状態でパイプ金型を一方の端部駒に組付けし、それから他方の端部駒をパイプ金型に組付けることにより型組を行っている。
【0003】
一方の端部駒とパイプ金型が組付けられ、軸体の一方の端部が一方の端部駒に挿入された状態では、軸体は一方の端部駒のみに保持される片持ち状態となっている。パイプ金型を水平に寝かせた状態で成形金型に軸体を挿入した場合、軸体が、一方の端部駒が軸体の一方の端部を保持している位置から、端部駒で保持されていない側(他方の端部側)にいくほど軸体の自重により下向きに湾曲する。そのため、軸体の中心軸とパイプ金型の中心軸のずれが生じてしまい、他方の端部駒を軸体の他方の端部に挿入する際に、うまく挿入できない場合がある。
【0004】
また、最後にパイプ金型に組付ける他方の端部駒に軸体を挿入しやすくするために、他方の端部駒の軸体挿入穴の直径を大きくすると、他方の端部駒をパイプ金型に組付けしても軸体は端部駒内で固定されずにがたついてしまう。そのため、成形したローラに振れ不良が生じる。
【0005】
このことを防止するために、パイプ金型を垂直に立てた状態で型組みを行うことで、片持ちによる軸体とパイプ金型の中心軸のずれを小さくすることができる。さらに、パイプ金型の下側に位置する下側の端部駒の軸体挿入穴と軸体との隙間を小さくすることで、軸体の傾き、すなわち軸体とパイプ金型の中心軸のずれを小さくすることができる。このようにして、軸体とパイプ金型の中心軸のずれを極力小さくする一方で、軸体の端部の角の面取りを大きくしたり、パイプ金型の上側に位置する上側の端部駒の軸体挿入穴の直径や、軸体挿入穴の入り口部分の面取り量を大きくしたりする。また、これらを組み合わせて上側の端部駒に軸体を挿入しやすくする必要がある。
【0006】
しかしながら、軸体の傾きを小さくするために、下側の端部駒の軸体挿入穴と軸体の隙間を小さくするには、端部駒の軸体挿入穴と軸体の加工精度の向上が必要であり、コストアップにつながる。さらには、隙間を小さくすることで、端部駒の軸体挿入穴と軸体が接触して軸体に傷をつくる可能性がある。
【0007】
この問題を解決するために、一方の端部駒とパイプ金型を組付けし、軸体の一方の端部を端部駒に挿入する際に、軸体の一方の端部に設けられた、面取りをした角部を端部駒で保持し、軸体を固定する。そして、軸体をセンタリング状態にし、他方の端部駒を軸体の他方の端部に挿入する方法がある(例えば特許文献1)。また、パイプ金型を水平に寝かせた状態で、一方の端部駒とパイプ金型を組付けし、軸体の一方の端部をその端部駒に挿入する。そして、軸体の端部駒によって保持されていない側の、他方の端部を、軸体の下側から押し上げることで軸体の中心軸を成形金型の中心軸に合わせ、他方の端部駒に挿入する方法がある(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−074429号公報
【特許文献2】特開2007−245531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の方法では、軸体の一方の端部のうちの角部だけを一方の端部駒で保持するため、軸体の一方の端部を一方の端部駒で固定した際のわずかな傾きが、軸体の他方の端部側で顕著に現れてしまう。そのため、成形されたローラの振れ精度は高いが、他方の端部駒に軸体を挿入することができない場合が増える。
【0010】
特許文献2の方法では、型組みした成形金型を水平に寝かせた状態でゴム材料を注入できる場合もあるが、ゴム材料に高粘度のゴム材料を使用する場合は、成形金型を水平に寝かせた状態で片方の端部駒からゴム材料を注入すると泡噛みが生じる可能性がある。そのため、両方の端部駒をパイプ金型に組付けた後で、成形金型を垂直に立てた状態で下側の端部駒より材料を注入する必要がある。また、成形されたローラの振れ精度を高くすることはできない。
【0011】
本発明の目的は、軸体を端部駒に挿入しやすくし、かつ成形されるローラの振れ精度を高くすることができる、ローラの成形装置と成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の、軸体と、軸体の周囲に設けられるロールとからなるローラの成形装置は、内部に円筒状の空間を有する中空のパイプ金型と、パイプ金型の両端に組付けられ軸体を保持可能な2つの端部駒を有する成形金型を有している。さらに、一方の端部が端部駒によって保持され、中空部が円筒状の空間内に位置している状態の軸体の一部を把持して軸体に交差する面内で移動することができるセンタリング部材をも有している。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、センタリング部材でパイプ金型の中心軸と軸体の中心軸とを位置合わせするので、軸体を端部駒に挿入しやすくし、かつ成形されるローラの振れ精度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の成形装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す成形装置の概略断面図である。
【図3】図1に示す成形装置で成形するローラの概略図である。
【図4】図1に示す成形装置において下側端部駒とパイプ金型と軸体を組付けしたときの断面図である。
【図5】図1に示す成形装置の上側端部駒の概略断面図である。
【図6】図1に示す成形装置のセンタリング部材の概略図であり、(a)はV字状の切り欠きを有する場合、(b)は半楕円状の切り欠きを有する場合である。
【図7】図1に示す成形装置を型組みした状態の概略断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態の成形装置の端部駒の概略断面図である。
【図9】図8に示す成形装置の軸体と端部駒の保持部との当接部を拡大した概略図である。
【図10】本発明のさらに他の実施形態の成形金型を型組みした状態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付の図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。なお、同一の機能を有する構成には添付図面中、同一の番号を付与し、その説明を省略する場合がある。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態の成形装置の概略構成図、そして、図2はその概略断面図を示したものである。
【0017】
本発明では、図3で示す軸体4と軸体4の周囲に設けられるロール41とからなるローラを成形する。ローラを成形する成形金型7は内部に円筒状の空間を有する中空のパイプ金型2と、パイプ金型2の両端に組付けられ、ローラの軸となる軸体4の端部を保持可能な上側端部駒1と、下側端部駒3との3部材で構成されている。本発明では、パイプ金型2を垂直に立てた状態で2つの端部駒1、3とパイプ金型2とを組付けし、こうして組立てられた成形金型7に軸体4を挿入して、軸体4の周囲にロール41を成形することにより、ローラの成形を行う。
【0018】
図4に、上側端部駒1をパイプ金型2に組付ける前の成形金型の概略断面図を示し、図5に上側端部駒1の概略断面図を示す。上側端部駒1と下側端部駒3は同じ構造であり、後述する軸体4の端部が挿入される軸体挿入穴8と、軸体の端部を保持するために凹型の窪んでいる保持部14とを有している。
【0019】
本実施形態では、図4に示すように、一方の端部駒である下側端部駒3とパイプ金型2を組付けした後に、ローラ成形体の軸となる軸体4の一方の端部を下側端部駒3の軸体挿入穴8に挿入する。下側端部駒3の軸体挿入穴8に軸体4の一方の端部をはめ込んだ後に、パイプ金型2と下側端部駒3とを組付けしてもよい。
【0020】
軸体4は、下側端部駒3の軸体挿入穴8に挿入していない側(他方の端部側)の端部付近を後述するセンタリング部材5で挟み込まれる。そのため、軸体4はパイプ金型2の上部端部駒が組付けされる側の端面から露出していなければならず、露出長21が必要である。
【0021】
センタリング部材5は、軸体4を挟み込んだり、放したりするため、水平方向に開閉することができる。また、センタリング部材5は、軸体4をしっかり挟み込む必要があるため、図6(a)に示すようなV字状の切り欠きが設けられたセンタリング部材5aあるいは、図6(b)に示すような半楕円状の切り欠きを設けられたセンタリング部材5bとしている。半楕円状の切り欠き5bの形状は、軸体4の直径より大きい長軸を有することが好ましい。また、センタリング部材5は、センタリング部材用開閉シリンダ6による平行チャックや開閉チャックを適宜用いて、開閉することができる。このセンタリング部材5は、パイプ金型2と軸体4の中心軸を位置合わせするために、軸体4に交差する面内(例えば軸体4に垂直な面内)を移動することができる。
【0022】
センタリング部材5の材質は、センタリング部材5から軸体4への損傷を考慮する必要がある場合には、ナイロン、ポリアセタール、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の樹脂部材や、真鍮など軸体4より軟らかい金属部材を使用するのが好ましい。また、センタリング部材5の耐摩耗性を考慮する必要がある場合には、炭素鋼やステンレス鋼の焼入れ材を使用するのが好ましい。
【0023】
下側端部駒3とパイプ金型2が組付けられ、下側端部駒3の保持部14に軸体4の一方の端部が保持されて軸体4の中間部(両端部の間に位置する部分)がパイプ金型2のロール成形部13内(円筒状の空間内)に位置している状態にする(図4参照)。そして、他方の端部駒である上側端部駒1の軸体挿入穴8を軸体4の他方の端部に挿入する前に、軸体4の中心軸と、パイプ金型2の中心軸とが一致するように、センタリング部材5で軸体4の他方の端部付近を挟み込み把持し、位置合わせをする。
【0024】
図1、2に示すように、センタリング部材5で軸体4の他方の端部付近を把持し、センタリング部材5を移動させることにより、軸体4の中心軸とパイプ金型2の中心軸とを位置合わせした後に、軸体4の他方の端部を上側端部駒1の軸体挿入穴8に挿入する。その後、センタリング部材5を開いて、軸体4を解放する。そして、さらに軸体4に上側端部駒1を押し込み、成形金型7を完成させる。
【0025】
図7に成形金型7内に軸体4を組み込んだ状態の断面図を示す。予備加熱を行った後に、樹脂材料は端部駒1、3に設けられた材料注入穴11から流し込まれ、同様に設けられた流路12を通過する。そして流路12からパイプ金型2と端部駒1、3とで囲まれた部分と軸体4との隙間であるロール成形部13内(円筒状の空間内)に、樹脂材料を流し込み、樹脂材料が規定量に達したら、加熱を行う。こうして軸体4と、軸体4の周囲に設けられたロール41とからなるローラを成形することができる。
【0026】
次に本実施形態の各部をより詳細に説明する。
【0027】
軸体4のパイプ金型2の端面からの露出長21(図4、7参照)の下限は、センタリング部材5の厚み、およびセンタリング部材5で軸体4を把持した状態で、軸体4の端部の一部を上側端部駒1の軸体挿入穴8に挿入する必要があることを考慮する必要がある。そうすると、露出長21は、2.5mm以上が好ましい。また、逆に露出長21の上限は、センタリング部材5で軸体4を把持した状態で軸体4の端部の一部に上側端部駒1の軸体挿入穴8に挿入できればよいので、センタリング部材5の厚みプラス1mm程度あればよい。具体的な長さとしては、成形するローラの軸体4の長さに依存してしまうが、一般的なOA用ローラを考慮すると、30mm以下が好ましい。
【0028】
端部駒1、3の軸体挿入穴8と軸体4との隙間は、軸体挿入穴8を軸体4の端部に挿入する込む際に、軸体挿入穴8と軸体4との接触による損傷防止の点から、5μm以上が好ましい。しかし、現在のローラの振れ精度を維持するためには、50μm以下にすることが好ましい。端部駒1、3の軸体挿入穴8および軸体4には、加工精度により一定の公差を持っている。そのため、高精度に加工したとしても、実際には端部駒1、3の軸体挿入穴8と軸体4の隙間は10〜40μm程度生じてしまう。
【0029】
電子写真用などの現像ローラにおいては、ローラの振れ精度が25〜30μm以下であることが望まれており、端部駒1、3の軸体挿入穴8と軸体4の隙間をより小さくする必要がある。しかし上述した加工精度の問題から、望まれているローラの振れ精度を満たすことができるほど隙間を小さくするのは容易ではない。
【0030】
そこで、図8に示すように、下側端部駒3aの軸体4aの端部を保持する保持部14と軸体4aの一方の端部の角とが当接する部分Aに、平面状の面取り(C面)または曲面状の面取り(R面)を施す。これは、軸体4aの一方の端部の角にも同様な面取りを施している場合には特に効果的である。下側端部駒3aの保持部14と軸体4aの一方の端部の角の面取りの関係は、軸体4aの一方の端部の角がR面の時は下側端部駒3aの保持部14をC面に、逆に軸体4aの一方の端部の角がC面の場合は下側端部駒3aの保持部14をR面にする必要がある。なお、図示はしないが、上側端部駒の保持部と、軸体4aの他方の端部の角も同様な面取りを施すことが好ましい。図9に軸体4aの一方の端部の角と下側端部駒3aの保持部14の当接部分の拡大図を示す。軸体4aの一方の端部の角と下側端部駒3aの保持部14の当接部をR面31とC面32の組み合わせにすることで、軸体4aをセンタリング状態にすることができるため、成形したローラの振れ精度は高くなる。しかし、下側端部駒3aの保持部14と軸体4aの一方の端部のうちの角部のみで軸体4aを保持するため、前述したように軸体4a下側端部駒で固定した際のわずかな傾きが、軸体4aの他方の端部側で顕著に現れてしまう。その結果、上側端部駒1aの軸体挿入穴8に軸体4aの他方の端部を挿入することができない場合があるが、軸体4aの他方の端部付近をセンタリング部材5で把持し、パイプ金型2と軸体4aをセンタリングする方法を併用すればよい。そうすることで、成形したローラの振れ精度を高くし、かつ軸体4aの他方の端部を上側端部駒1aの軸体挿入穴8に挿入しやすくすることができる。
【0031】
なお、軸体4と成形金型7には寸法公差があるため、上側端部駒1を軸体4の他方の端部に押し込んでも、軸体4が短く、軸体4の端面と上側端部駒1の保持部14が当接せず、隙間ができる場合があった。また逆に、軸体4が長く、上側端部駒1とパイプ金型2との組付けが十分でない場合もあった。そのため、軸体4がしっかりと固定されないことがあり、このことも成形したローラの振れ精度に影響していた。そこで、図10に示すように、端部駒1b、3bのいずれか一方の保持部14の内部にスライド可能なブッシュ9および圧縮ばね10を設けた構造にする。この構造により、軸体4が上下に可動になるため、軸体4の端面と上側端部駒の保持部14との隙間をなくし、軸体4が長い場合に生じる上側端部駒1とパイプ金型2の不十分な組付けもなくすことができる。したがって、上側端部駒1bの保持部14で軸体4aをしっかりと固定することができる。
【実施例】
【0032】
本発明のローラの成形装置および成形方法を電子写真用現像ローラの成形に適用した実施例を説明する。成形する現像ローラの形状は、軸体4の直径がΦ6mm、長さ260mmで軸体4の周りに外径Φ12mm、長さ230mmのシリコンゴム製の弾性体を形成したものである。
【0033】
以下に示す実施例および比較例で用いた成形金型7は、内部に円筒状の空間を有する中空のパイプ金型2と、パイプ金型2の両端に組付けられ軸体4を保持可能な上側端部駒1と下側端部駒3との3部材から構成されている。金型の材質は日立金属株式会社製プリハードン鋼CENA1である。
【0034】
各実施例および各比較例において、現像ローラの成形に際しては、まずパイプ金型2を垂直に立てた状態でパイプ金型2の一方の端部と下側端部駒3とを組付けする。そして軸体4の一方の端部をパイプ金型2の他方の端部から下側端部駒3の軸体挿入穴8に挿入する。さらに下側端部駒の保持部14に一方の端部を保持されている軸体4の他方の端部に、上側端部駒1の軸体挿入穴8をはめ込んで、上側端部駒1とパイプ金型2とを組付けする。型組みされた成形金型7は、115℃の加熱盤にて5分間予熱した後、下側端部駒3に設けられた材料注入穴11から経路12を通じてローラ成形部13に液状シリコンゴム材料を注入し、3分間加熱硬化させた後、成形金型7より成形したゴムローラを取り出した。
【0035】
実施例1として、下側端部駒3とパイプ金型本体2を組付けし、下側端部駒3の軸体挿入穴8に軸体4の一方の端部を挿入する。下側端部駒3の保持部14で軸体4の一方の端部を保持したときに、軸体4の露出長21が2.5mmとなるようにパイプ金型2の長さを調整した。また、上側端部駒1および下側端部駒3の軸体挿入穴8の直径はΦ6.01mmとし、軸体4と軸体挿入穴8の寸法公差を考慮すると、軸体4と軸体挿入穴8の間に10〜40μmの隙間が生じるようにした。さらに軸体挿入穴8の入り口部分に0.5mmの面取りを施した。下側端部駒3の保持部14で軸体4の一方の端部を保持しただけの状態だと、軸体4の他方の端部での軸体4とパイプ金型2との中心軸のずれは最大で1.2mm程度である。
【0036】
本実施例では、軸体4の他方の端部を上側端部駒1の軸体挿入穴8に挿入する前に、V字状の切り欠きを有する厚さ1.5mmのセンタリング部材5a(材質はSK3の焼き入れ材)を使用した。このセンタリング部材5aで軸体4の他方の端部付近を把持し、軸体4に垂直な面内で移動させることによって、センタリングした。そして、軸体4の他方の端部に上側端部駒1の軸体挿入部8をはめ込んでから、センタリング部材5aを開いて軸体4の把持を解除し、それから上側端部駒1とパイプ金型2とを組付けした。
【0037】
実施例2として実施例1と同じ成形金型7を用い、センタリング部材として長軸8mm、深さ2.5mmの半楕円状の切り欠きを有する厚さ1.5mmのセンタリング部材5b(材質はSK3の焼き入れ材)を用いた。軸体4と成形金型7とを組付ける方法は実施例1と同様である。
【0038】
実施例3として、図8、9に示す構成と同様に、下側端部駒3bおよび上側端部駒1のそれぞれの保持部14の軸体4の端部の角との当接部をR面にした成形金型7を使用した。なお、軸体4の両端部の角はC面となるように面取りを施した。上側端部駒1と下側端部駒3の軸体挿入穴8の直径をΦ6.04mmとし、軸体4と軸体挿入穴8との寸法公差を考慮すると、軸体4と軸体挿入穴8との隙間は40〜70μm程度となる。さらに軸体挿入穴8の入り口部分に0.5mmの面取りを施した。また、下側端部駒3の保持部14の内部には、軸体4の長さの公差を吸収するためのブッシュ9および圧縮ばね10が組み込まれている。パイプ金型2は、実施例1と同様のものを用いた。下側端部駒3とパイプ金型2を組付けし、軸体4を下側端部駒3の保持部14で保持した状態での軸体4のパイプ金型2の端面からの露出長は、ばねの縮代を考慮して4mmとしている。この時、軸体4の中心軸とパイプ金型2の中心軸とのずれは最大で2mm程度である。実施例1と同様に、V字状の切り欠きを有する厚さ1.5mmのセンタリング部材5a(材質はSK3の焼き入れ材)で軸体4をセンタリングした後、軸体4aを上側端部駒1の軸体挿入穴8に挿入する。そして、センタリング部材5aを開き、上側端部駒1とパイプ金型2とを組付けした。
【0039】
比較例1として、実施例1と同じ成形金型7を用いてほぼ同じ成形方法を行うが、センタリング部材5による軸体4のセンタリングを行わず、上側端部駒1とパイプ金型2とを組付けした。
【0040】
比較例2として、上側端部駒1の軸体挿入穴8の直径をΦ6.05mmとし、軸体4と軸体挿入穴8の寸法公差を考慮すると、軸体4と軸体挿入穴8との間に50〜90μmの隙間が生じるようにし、さらに口元に1mmの面取りを施した成形金型7を用いた。その他の下側端部駒3およびパイプ金型2は、実施例1と同じものを用い、比較例1と同様、センタリング部材5による軸体4のセンタリングを行わず、上側端部駒1とパイプ金型2とを組付けした。
【0041】
比較例3として、実施例3と同じ成形金型7を用いてほぼ同じ成形方法を行うが、センタリング部材5による軸体4のセンタリングを行わず、上側端部駒1とパイプ金型2との組付けをした。
【0042】
実施例1、2、3および比較例1、2、3の方法で、それぞれ自動の金型組付け機で上側端部駒1を軸体4への挿入実験を100回行い、その時の失敗回数をカウントした。また、成形した現像ローラの振れ精度も測定した。表1に試験結果を示す。
【0043】
挿入実験については、比較例1では3割程度、比較例2では1割程度、比較例3では7割程度の挿入ミスが発生したものの、実施例1、2、3においては挿入ミスが発生せず、本発明により大幅な生産性向上が図れることが確認できた。比較例1よりも比較例2のほうが挿入ミスが少ないのは、2例とも軸体4の直径は変わらないが、比較例2のほうが上側端部駒1の軸体挿入穴8の直径が大きいからである。
【0044】
振れ精度の測定結果は、実施例1、2及び比較例1で成形した現像ローラの振れ精度は、同一金型のため15〜35μmとなった。また、比較例2は、上側端部駒1の軸体挿入穴が大きいため振れ精度は25〜50μmとなり、実施例1、2および比較例1と比較して振れ精度が低くなった。また、実施例3および比較例3においては、振れ精度は10〜30μmとなり、もっとも良い結果が得られた。
【0045】
以上のことより、本発明の実施形態を利用した実施例1〜3において、いずれも大幅な挿入精度向上が得られ、また、実施例3の方法では、成形したローラの振れ精度も高くすることができた。
【0046】
【表1】

【符号の説明】
【0047】
1 上側端部駒
1b上側端部駒
2 パイプ金型
3 下側端部駒
3a下側端部駒
3b下側端部駒
4 軸体
4a軸体
5 センタリング部材
7 成形金型
41ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と前記軸体の周囲に設けられるロールとからなるローラを成形するための成形装置において、内部に円筒状の空間を有する中空のパイプ金型と、前記パイプ金型の両端に組付けられ前記軸体を保持可能な2つの端部駒とを有する成形金型と、
一方の端部が前記端部駒によって保持され中間部が前記円筒状の空間内に位置している状態の前記軸体の一部を把持して前記軸体に交差する面内で移動することができるセンタリング部材と
を有する、ローラの成形装置。
【請求項2】
前記センタリング部材は、前記パイプ金型の中心軸と、前記軸体の中心軸を位置合わせする、請求項1に記載のローラの成形装置。
【請求項3】
前記センタリング部材は、前記軸体を把持する部分にV字状の切り欠きを有する、請求項1または2に記載のローラの成形装置。
【請求項4】
前記センタリング部材は、前記軸体を把持する部分に半楕円状の切り欠きを有する、請求項1または2に記載のローラの成形装置。
【請求項5】
前記端部駒が前記軸体の端部を保持するための保持部を有し、前記保持部と前記軸体の端部の角が当接する部分において、前記端部の角が曲面状に面取りを施されている前記軸体を保持するために前記保持部が平面状に面取りを施されており、または、前記軸体の端部の角が平面状に面取りを施されている前記軸体を保持するために前記保持部が曲面状に面取りを施されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のローラの成形装置。
【請求項6】
前記端部駒が前記軸体の端部を保持するための保持部を有し、前記軸体が前記保持部に挿入されるときに前記軸体の端部の角と当接するブッシュと、前記ブッシュと前記端部駒の間に位置する圧縮ばねとを前記保持部の内部に有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のローラの成形装置。
【請求項7】
前記ブッシュと前記軸体の端部の角が当接する部分において、前記端部の角が曲面状に面取りを施されている前記軸体を保持するために前記ブッシュが平面状に面取りを施されており、または、前記端部の角が平面状に面取りを施されている前記軸体を保持するために前記ブッシュが曲面状に面取りを施されている、請求項6に記載のローラの成形装置。
【請求項8】
軸体と、前記軸体の周囲に設けられるロールとからなるローラを成形する方法において、
内部に円筒状の空間を有する中空のパイプ金型と、前記パイプ金型の両端に組付けられ前記軸体を保持可能な2つの端部駒と、センタリング部材とを有する成形装置を用いて、
前記パイプ金型を垂直に立てて、前記パイプ金型の下側に一方の前記端部駒を組付けするとともに、前記軸体の一方の端部を前記一方の端部駒に挿入した後に、前記センタリング部材で前記軸体の一部を把持して前記軸体に交差する方向に移動させることにより前記軸体をセンタリングし、その後に他方の前記端部駒を前記軸体の他方の端部に挿入させてから前記センタリング部材を前記軸体から放し、他方の前記端部駒と前記パイプ金型とを組付けして、前記ロールの材料を前記円筒状の空間内に注入する、ローラの成形方法。
【請求項9】
前記パイプ金型の下側に前記端部駒を組付けし、一方の前記端部駒に前記軸体の一方の端部を挿入したときに、前記パイプ金型の上側の端面から前記軸体の他方の端部を露出させる、請求項8に記載のローラの成形方法。
【請求項10】
前記端部駒が前記軸体を保持する保持部を有し、前記保持部と前記軸体の端部の角が当接する部分において、前記端部の角が曲面状に面取りを施されている前記軸体を保持するために前記保持部に平面状に面取りを施し、または、前記端部の角が平面状の面取りを施されている前記軸体を保持するために前記保持部に曲面状の面取りを施す、請求項8または9に記載のローラの成形方法。
【請求項11】
前記端部駒が前記軸体を保持する保持部を有し、前記保持部に前記軸体が挿入されるときに前記軸体の端部の角と当接するブッシュと、ブッシュと前記端部駒の間に位置する圧縮ばねとを前記保持部の内部に設ける、請求項8または9に記載のローラの成形方法。
【請求項12】
前記ブッシュと前記軸体の角が当接する部分において、前記端部の角が曲面状の面取りを施されている前記軸体を保持するために前記ブッシュに平面状の面取りを施し、または、前記端部の角が平面状の面取りを施されている前記軸体を保持するために前記ブッシュに曲面状の面取りを施す、請求項11に記載のローラの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−194940(P2010−194940A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44052(P2009−44052)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】