説明

ローラコンベヤ、及びその滑り検出方法

【課題】駆動ベルトの交換時期を適切に判定できるローラコンベヤ、及びその滑り検出方法を提供する。
【解決手段】ローラコンベヤ1は、荷物3を受け止める複数のローラ5と、駆動源7により回転する駆動プーリー9と、前記駆動プーリー9に巻掛した駆動ベルト13と、駆動プーリー9の回転する加速度を検知する加速度検知手段15と、加速度検知手段15の検知した加速度の大きさを判定する判定手段17とを備える。判定手段17は、所定期間に加速度検知手段15により加速度の検知された回数に基づき警告を出力するコンピュータである。加速度検知手段15は、駆動プーリー9に取付けた加速度センサである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を支持する複数のローラに回転力を伝達するベルトと、このベルトを駆動する駆動プーリーとの滑りを検出するローラコンベヤ、及びその滑り検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに並列する複数のローラで荷物を受け止め、これらのローラの回転に従わせ荷物を搬送するローラコンベヤが、特許文献1に示されている。ローラコンベヤのローラを回転させる駆動装置は、駆動源により回転する駆動プーリーに駆動ベルトを巻掛し、この駆動ベルトで複数のローラを摩擦駆動させることにより、駆動プーリーの回転力をローラに伝達するものである。また、加速度トランスデューサを用いてベルトコンベヤの動作を監視することが、特許文献2に示されている。
【0003】
上記の駆動ベルトは、長期にわたり駆動プーリーの回転力を受けて摩耗し、駆動プーリーと駆動ベルトとの間で徐々に滑りが生じる。両者間の滑りが著しくなるとローラに伝達される回転力が減少するので、ローラコンベヤによる荷物の搬送が遅れ、或いは荷物の搬送ができなくなる。この事態を回避するには、駆動プーリーと駆動ベルトとの間の滑りの度合いがローラコンベヤの正常な機能を維持できる限度に達する前に、ローラコンベヤの保守を担うオペレータが駆動ベルトの交換時期を認識できることが望ましい。
【0004】
例えば、上記の滑りがないものとして、ローラコンベヤが荷物を搬送する速度を基準値として算定する。一方、ローラコンベヤにより実際に搬送される荷物が所定の区間を通過するのに要する時間に基づき、ローラコンベヤによる荷物の搬送速度を算出する。この搬送速度を上記の基準値に比較すれば、駆動ベルトの摩耗の度合いをある程度は推測できる。しかしながら、ローラコンベヤは荷物の搬送だけに供するものでなく、荷物を何らかの次工程へ送り出す前にローラの回転を停止させ、荷物を待機させることがある。このため、搬送速度の遅れが必ずしも駆動ベルトの摩耗によって起こるのではなく、駆動ベルトの摩耗の度合いを数量的に判定するのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−131356号公報
【特許文献2】特開2010−208850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、荷物がローラコンベヤにより搬送する過程で、駆動プーリーと駆動ベルトとの間に滑りが生じると、それにより駆動源の負荷が軽減される分、駆動プーリーの回転する速度が上昇することに着目して為されたものである。本発明の目的とするところは、駆動ベルトの交換時期を適切に判定できるローラコンベヤ、及びその滑り検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、荷物を受け止める複数のローラと、駆動源により回転する駆動プーリーと、前記駆動プーリーに巻掛した駆動ベルトとを備え、前記複数のローラを前記駆動ベルトで摩擦駆動させることにより、前記駆動プーリーの回転力を前記複数のローラに伝達するローラコンベヤであって、前記駆動プーリーの回転する加速度を検知する加速度検知手段と、前記加速度検知手段の検知した加速度の大きさを判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記判定手段が、所定期間に加速度検知手段により加速度の検知された回数に基づき警告を出力するコンピュータであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記加速度検知手段が、前記駆動プーリーに取付けた加速度センサであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、荷物を受け止める複数のローラと、駆動源により回転する駆動プーリーと、前記駆動プーリーに巻掛した駆動ベルトとを備えるローラコンベヤが、前記複数のローラを前記駆動ベルトで摩擦駆動させることにより、前記駆動プーリーの回転力を前記複数のローラに伝達する過程で、前記駆動プーリーと駆動ベルトとの間の滑りを検出するローラコンベヤの滑り検出方法であって、前記駆動プーリーを駆動源により等速回転させる工程と、前記駆動プーリーの加速度を検知する工程と、前記駆動プーリーの加速度の大きさに基づきコンピュータに警告を出力させる工程とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るローラコンベヤによれば、駆動プーリーの加速度を加速度検知手段によって検知し、この加速度の上昇が、駆動ベルトの摩耗による駆動プーリーと駆動ベルトとの間の滑りに起因することを判定手段によって判定することができる。判定手段としてコンピュータを適用した場合、所定期間に加速度検知手段により加速度の検知された回数に基づき、駆動ベルトの摩耗の度合いを判定手段によって数量的に判定することができる。
【0012】
しかも、判定手段は、駆動ベルトが使用できる限度に達する前に警告を出力することにより、オペレータに適切な駆動ベルトの交換時期を認識させることができる。また、加速度検知手段として、駆動プーリーに取付ける加速度センサを適用する場合、既存のプーリーに加速度検知手段を容易に取付けることができ、本発明に係るローラコンベヤの製造コストを低減することができる。以上に述べた本発明による効果はローラコンベヤの滑り検出方法によっても達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るローラコンベヤの概略を示す側面図。
【図2】本発明の実施形態に係るローラコンベヤの要部の構成を示すブロック。
【図3】(a)は本発明の実施形態に係るローラコンベヤのプーリーに加速度検知手段を取り付けた一例を示す斜視図、(b)はその他例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1,2に示すように、本発明の実施形態に係るローラコンベヤ1は、荷物3を受け止める複数のローラ5と、電動機である駆動源7により回転する駆動プーリー9と、駆動源7に電流を供給するインバータ回路の動作を制御するドライバ11と、駆動プーリー9に巻掛した駆動ベルト13と、駆動プーリー9の回転する加速度を検知する加速度検知手段15と、コンピュータを主体とする判定手段17とを備える。
【0015】
複数のローラ5は互いに水平方向に並列し、コンベヤフレーム等の筐体19に軸受けされている。駆動源7は、その出力軸21に駆動プーリー9を取り付けている。駆動プーリー9と出力軸21との間に減速機を介在させても良い。ドライバ11は、駆動源7を起動するとき、又は停止するときを除き、駆動プーリー9が一定の角速度で等速回転するように、駆動源7の出力軸21の回転数を制御するものである。
【0016】
駆動ベルト13は、無端状の平ベルトであり、駆動ベルト13を水平方向に案内する複数のガイドローラ23が筐体19に軸受けされている。駆動ベルト13が水平方向に走行する行程で、複数のローラ5は駆動ベルト13によって摩擦駆動される。これにより、駆動プーリー9の回転力が個々のローラ5にそれぞれ伝達され、ローラコンベヤ1は複数のローラ5で受け止めた荷物3を搬送することができる。符号25はテンションローラを指している。
【0017】
加速度検知手段15は、図3(a)に示すように駆動プーリー9の側面に取り付けられ、駆動プーリー9の角加速度を計測できる仕様であることが好ましい。或いは、駆動プーリー9の側面に一軸型加速度センサを取り付け、駆動プーリー9の周方向に発生する加速度を一軸型加速度センサにより計測しても良い。加速度検知手段15に給電する電線、又は加速度検知手段15から電気信号を導出する信号線27は、ロータリコネクタ29を介して加速度検知手段15に接続される。
【0018】
以上に述べた加速度センサは、その型式を特に限定されることはなく、広く市販されているサーボ型、圧電型、静電容量型、又はピエゾ抵抗型の中から選択できるものが好ましい。また、既存のプーリーに加速度検知手段15を容易に取付けでき、しかもローラコンベヤ1の製造コストを低減できるように、加速度センサは安価で軽量であることが好ましい。
【0019】
図1に示すローラコンベヤ1が荷物3を搬送する過程で、駆動プーリー9と駆動ベルト13との間に滑りがなければ、駆動プーリー9は等速回転を続けるが、両者間に滑りが生じると、駆動プーリー9が駆動ベルト13に対して小刻みに、又は連続して空転する。その分、駆動源7の負荷が軽減され、駆動プーリー9の回転する速度が上昇することになる。言い換えれば駆動プーリー9が加速されるので、加速度検知手段15が駆動プーリー9の加速度を検知する。この加速度の値は、駆動ベルト13の摩耗が進行するにつれて上昇する。
【0020】
判定手段17は、駆動ベルト13が使用できる限度に近づいたことを、加速度検知手段15が検知した駆動プーリー9の加速度の大きさに照らして判定する。更に、判定手段17は、駆動ベルト13が使用できる限度に達する前に警告を出力し、オペレータに適切な駆動ベルト13の交換時期を認識させることができる。ここで出力とは、ディスプレイ、警告灯、スピーカ、及びブザー等を含意する出力手段18を判定手段17に接続し、文字、記号、図形、又はこれらを組み合わせた情報を表示することである。或いは、警告灯を点灯させても良く、ブザーから警告音を出力し、スピーカから音声を出力し、又はこれらを組み合わせた出力をしても良い。
【0021】
また、判定手段17は、加速度検知手段15が駆動プーリー9の加速度を1回検知する毎に警告を出力しても良いが、所定期間に加速度の検知された回数に基づき、警告を出力することが好ましい。即ち、ローラコンベヤ1により順次に搬送される複数の荷物3のそれぞれの重さが相違していると、駆動源7の負荷が増減し、駆動プーリー9と駆動ベルト13との間の滑りが助長され、又は抑止されることがある。この場合、判定手段17は、数分〜数時間に区切られた所定の期間内に、加速度検知手段15により加速度の検知された回数を計数し、これが例えば5回と定めた上限を超えた時点で、警告を出力しても良い。加速度検知手段15により加速度の検知される回数は、駆動ベルト13の摩耗が進行するにつれ増える傾向があるので、この回数に基づき判定手段17は駆動ベルト13の摩耗の度合いを数量的に判定することができる。
【0022】
また、駆動ベルト13の使用できる限度に達する前の警告にディスプレイ、及び警告灯を使用しても良い。そして、加速度検知手段15が検知した駆動プーリー9の加速度の大きさ、又は所定の期間内に加速度検知手段15により加速度の検知された回数に照らして、駆動ベルト13が使用できる限度に達したことを判定手段17が判定した段階で、或いは、駆動ベルト13の使用できる限度に達する前の警告の出力された回数が予め設定された回数に達することで駆動ベルト13が使用できる限度に達したと判定手段17が判断した段階で、ディスプレイ、及び警告灯に加え、ブザー、又はスピーカが警告音を発するようにしても良い。これにより、駆動ベルト13の使用できる限度に達した段階での警告の度合いを高くし、オペレータに切迫した状況を明確に認識させることができる。
【0023】
上記のように駆動源7の負荷が増減すると、駆動プーリー9と駆動ベルト13との間の滑りの有無に関わらず、加速度検知手段15が正負の加速度を検知することがある。この場合、判定手段17は、加速度検知手段15が検知した加速度の大きさを、駆動ベルト13が使用できる限度に近づいたときに加速度検知手段15が検知する加速度に比較し、前者が後者を下回るときは上記の回数を計数しないようにしても良い。
【0024】
また、加速度検知手段15として光学式、又は磁気式ロータリエンコーダを適用しても良い。図3(b)に示すロータリエンコーダ31は、等間隔で周縁33に着磁された磁気ディスク35を出力軸21に固定し、磁気ディスク35が出力軸21と共に回転するときに、磁気ヘッド37が検出する磁束の数を判定手段17に計数させるものである。判定手段17に計数される磁束の数は出力軸21の回転した角度に相当し、判定手段17は、磁束の数をその計数に要した時間で除することにより、駆動プーリー9の加速度を演算することができる。
【0025】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。加速度検知手段15を減速機の出力軸に取り付けても良い。また、判定手段17は、ドライバ11のインバータ回路から駆動源7に供給される電流の変化を計測し、この変化量から駆動プーリー9の加速度を演算できるので、ドライバ11を加速度検知手段として利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、あらゆる荷物を搬送するローラコンベヤに有益な技術である。
【符号の説明】
【0027】
1...ローラコンベヤ、3...荷物、5...ローラ、7...駆動源、9...駆動プーリー、11...ドライバ、13...駆動ベルト、15...加速度検知手段、17...判定手段、18...出力手段、19...筐体、21...出力軸、23...ガイドローラ、25...テンションローラ、27...信号線、29...ロータリコネクタ、31...ロータリエンコーダ、33...周縁、35...磁気ディスク、37...磁気ヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を受け止める複数のローラと、駆動源により回転する駆動プーリーと、前記駆動プーリーに巻掛した駆動ベルトとを備え、前記複数のローラを前記駆動ベルトで摩擦駆動させることにより、前記駆動プーリーの回転力を前記複数のローラに伝達するローラコンベヤであって、
前記駆動プーリーの回転する加速度を検知する加速度検知手段と、前記加速度検知手段の検知した加速度の大きさを判定する判定手段とを備えることを特徴とするローラコンベヤ。
【請求項2】
前記判定手段は、所定期間に加速度検知手段により加速度の検知された回数に基づき警告を出力するコンピュータであることを特徴とする請求項1に記載のローラコンベヤ。
【請求項3】
前記加速度検知手段は、前記駆動プーリーに取付けた加速度センサであることを特徴とする請求項1又は2に記載のローラコンベヤ。
【請求項4】
荷物を受け止める複数のローラと、駆動源により回転する駆動プーリーと、前記駆動プーリーに巻掛した駆動ベルトとを備えるローラコンベヤが、前記複数のローラを前記駆動ベルトで摩擦駆動させることにより、前記駆動プーリーの回転力を前記複数のローラに伝達する過程で、前記駆動プーリーと駆動ベルトとの間の滑りを検出するローラコンベヤの滑り検出方法であって、
前記駆動プーリーを駆動源により等速回転させる工程と、前記駆動プーリーの加速度を検知する工程と、前記駆動プーリーの加速度の大きさに基づきコンピュータに警告を出力させる工程とからなることを特徴とするローラコンベヤの滑り検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−236692(P2012−236692A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107019(P2011−107019)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】