説明

ローラミル

【課題】研磨台駆動システムの故障に関する脆弱性を小さくしたローラミル、および、できるだけ場所をとらないようにした研磨台駆動装置の構成を提供すること。
【解決手段】少なくとも1つの研磨ローラ(1)と1つの研磨台(2)とから実質的に成るローラミルであって、研磨台は下向きに開口する研磨台内部空間(2b)と、研磨ローラを駆動する少なくとも1つの研磨ローラ駆動システム(3)と、研磨台を駆動する研磨台駆動システムとを備える。研磨台駆動システムはさらに、研磨台内部空間に配設されたギヤレス直接駆動装置(4)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨台と、該研磨台の上で転動する少なくとも1つの研磨ローラとを有するローラミルに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールミル粉砕機または竪型ミルとしても知られるローラミルは、特にセメント産業や発電所等において鉱物原料および燃料等を粉砕するために使用される。
【0003】
ローラミルは、研磨台の中央駆動装置によって駆動されるのが一般的であり、研磨ボールと呼ばれることも多い。ローラは、ほとんどの場合、非駆動式であり、力発生装置によって回転する研磨台に対して押圧され、研磨ローラと研磨台との間の空隙において原料の粉砕を行うように構成されている。大型ミルの場合、研磨ローラと研磨台の質量がどちらも大きいため、不規則な動作の場合に出力とトルクに相当の変動が生じることがある。やがては歯車の損傷を生じ、結果的に多額の修理費と大幅なダウンタイムとなる。これは工場またはシステム全体の生産に重大な悪影響を及ぼす問題である。
【0004】
特許文献1から既知となっているように、リングモータによって駆動される研磨台が原因で故障や損傷を受けるおそれのある歯車機構を無くしてしまう方法がある。研磨台の速度は従来構造の大きさで15〜35rpmであるため、主電源周波数を駆動速度まで低減するには、多数の極対が必要となり、ひいてはリングモータの径を大きくする必要が生じる。従って、研磨台の外縁の周りにあるノズルリングに下側からガスを供給するガス管、またノズルリングから落下した粉砕原料を排出するためのディスチャージリングや下流側の排出装置とリングモータが衝突しないようにするためには、リングモータを取り付けることができるのは研磨台の外側しかないため、広い空間を要する結果となる。リングモータの組み付けは高精度に行う必要がある。その大きさと組み付け位置の都合上、工場内で完全に事前組立てを行うことはできないため、組み付けが非常に複雑になり、設置現場でかかるコストが高くなる結果となる。さらに、このようなリングモータのパワーエレクトロニクスは投資コストとも関連する。
【0005】
特許文献2では、大型の研磨台駆動システムの代替として、研磨台と研磨ローラとを含む複合駆動装置を開示している。こうすることで、ローラミルの全駆動力を複数の駆動装置に割り振ることができる。特に、このように構成される駆動装置については、n台の駆動装置を有するローラミルをn−1台の駆動装置で動作させて、ローラミル全体を停止させることなく1台の駆動装置の修理を行えるようにすることも可能である。研磨台の駆動モータは、例えば研磨台の隣りに設置することができるが、このためには、かさ歯車段が必要となる。かさ歯車段は、現行のローラミル歯車機構では最も損傷が起こりやすい個所である。また、特許文献2では、モータを研磨台の下に設置することも提案している。工業的に従来の大きさでこの構成を採用した場合、ミル全体の高さが大きくなり、建物において付随するミル外の材料輸送作業、ガス管、必要な技術負荷の移動も増加することになる。
【0006】
特許文献3は、連続プレスの駆動装置として動作する起電力式直接駆動装置の使用について記載しているが、この駆動装置は、ローラミル用の駆動モータとしては適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE 19 57 580 A1
【特許文献2】DE 36 02 932 A1
【特許文献3】DE 10 2005 045 406 B4
【特許文献4】DE 197 02 854 A1
【特許文献5】DE 10 2008 036 784 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、研磨台駆動システムの故障に関する脆弱性を小さくしたローラミル、および、できるだけ場所をとらないようにした研磨台駆動装置の構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、この目的は、請求項1に記載の特長によって達成される。
【0010】
本発明によるローラミルは、少なくとも1つの研磨ローラと、下向きに開口した研磨台内部空間を有する研磨台と、前記研磨ローラを駆動するための少なくとも1つの研磨ローラ駆動システムと、前記研磨台を駆動するための研磨台駆動システムとを備える。前記研磨台駆動システムは、さらに、研磨台内部空間に配設されたギヤレス直接駆動装置を備える。
【0011】
本発明によりローラミルの故障の可能性が低減するのは、一方では全駆動力が研磨ローラで分割されること、また他方では研磨台の駆動が別個に行われることによるものである。さらに、ギヤレス直接駆動装置を用いることで、研磨台駆動装置の故障につながりやすい従来の歯車機構を排除することが可能となる。
【0012】
研磨台駆動システムに加えて研磨ローラ駆動システムも設けたことにより、個々の駆動装置をそれに応じて小さく構成することができるため、ギヤレス直接駆動装置を研磨台の内部空間に配設できるようになり、従ってきわめて場所をとらない構成が可能となる。
【0013】
また、特許文献4から公知となっているローラミルでは、各研磨ローラが個別の駆動装置によって駆動され、それぞれの駆動装置がいずれの場合にも独立している。さらに、このようなローラミルを得るために、研磨台に補助駆動装置が一体化されているが、この補助駆動装置の動力レベルはローラミルの全設置動力の約2〜5%にすぎない。このような補助駆動装置は連続運転に適さず、それに応じてギヤ減速が必要となるが、この場合のギヤ減速は内歯車の上を回転するピニオンまたは摩擦車によって達成される。
【0014】
これに対して本発明では、補助駆動装置を設けず、その代わりに研磨台駆動用として、連続運転に適する研磨台駆動システムが設けられる。
【0015】
従属請求項は、本発明の他の構成に関するものである。
【0016】
研磨台駆動システムのギヤレス直接駆動装置は、ローラミルの全設置駆動力の少なくとも10%〜40%、好ましくは15〜30%を有する。
【0017】
本発明の別の実施形態によると、ギヤレス直接駆動装置は、研磨台の研磨台支持部を介して支持される回転子を備える。このために、回転子は、研磨台に回り止め状態で(in a rotationally secure manner)確実に連結され、特に、研磨台に回り止め状態で確実にフランジ装着されている。研磨台支持部はローラミルのベースプレート上に配設するのが有利である。
【0018】
別の構成では、ギヤレス直接駆動装置は、ベースプレート上に支持された固定子を備える。
【0019】
ギヤレス直接駆動装置を収容するために、研磨台の下部を鐘状または筒状に構成し、この鐘状または筒状の研磨台下部の中に、ギヤレス直接駆動装置を配設するのが好ましい。
【0020】
ギヤレス直接駆動装置としては、内側固定子と外側回転子とを有する横方向磁束モータまたは高トルクモータが考えられる。高トルクモータの回転子は永久磁石を有するものとするのが有利である。
【0021】
ギヤレス直接駆動装置は、さらに、該直接駆動装置を所定の駆動トルクに調節するための調節装置に接続されている。直接駆動装置は、特に、ローラミルの全入力電力の所定の割合になるように調節することができる。
【0022】
本発明の別の構成によると、研磨ローラ駆動システムに例えば電力補償調節装置として形成される調節装置が設けられる。この調節装置はギヤレス直接駆動装置にも接続され、ギヤレス直接駆動装置をローラミルの全入力電力の所定の割合に調節する。直接駆動装置は、周波数変換器により制御するのが有利である。また、電力供給網に直接接続できるギヤレス直接駆動装置を使用するのが有利である。あるいは、速度制御直流モータを使用してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の基礎となった試験において、ギヤレス直接駆動装置をローラミルの全設置駆動力の少なくとも10%、好ましくは15〜30%となるように構成し、例えば特許文献5に記載されているような適宜の調節システムを用いることにより、極めて安定し調和のとれた研磨動作が得られるという知見を得た。
【0024】
本発明のその他の利点および構成について、添付図面を参照しながら以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ローラミルを部分的に断面で示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図示のローラミルは、少なくとも1つの研磨ローラ1と、研磨台2と、研磨ローラ1を駆動する研磨ローラ駆動システム3と、研磨台2を駆動する研磨台駆動システムとを備え、研磨台駆動システムは、ギヤレス直接駆動装置4を有している。
【0027】
研磨台2の上側に研磨トラック2aが形成されており、粉砕対象の原料5がこの研磨トラック2aと研磨ローラ1との間の空隙内で粉砕される。動作中、研磨台2は、その中心、すなわち垂直軸6を中心として回転し、研磨ローラ1は、研磨トラック2の上、または研磨ローラ1と研磨トラック2との間に位置する粉砕対象の原料5の上で転動する。この時、研磨ローラ1は、押圧システム7により研磨台2に対して押圧されている。
【0028】
研磨台2は、研磨台内部空間2bを備える。この空間は、例えば鐘状または筒状に構成された研磨台2の下部により形成されており、ギヤレス直接駆動装置4を研磨台内部空間2bの中または研磨台2の鐘状または筒状の下部の中に配置できるように構成されている。
【0029】
研磨台2は、ベースプレート9上の研磨台支持部8を介して支持されており、研磨台支持部8には、適当な軸受8aおよび8bが設けられている。
【0030】
ギヤレス直接駆動装置4は、外側回転子4aと内側固定子4bとを有し、回転子4aは、研磨台2上にフランジ装着されている(位置10,11参照)。
【0031】
このようにして、直接駆動装置4を研磨台2内部に非常にコンパクトな形で配置することができる。回転子4aと固定子4bを特別な形で連結しているため、回転子4aは、それ自身の支持を必要とせず、いずれにせよ設けられる研磨台支持部8によって支持されている。このようにすることで、必ずしも必要のない機械要素(回転子軸受)を省略したり、既に設けられている機械要素(研磨台支持部8)を利用することによって、構造的空間を最適に利用することが可能となっている。これには固定子4bをベースプレートに直接連結することや連結器を省略したことも含まれる。利点としては、工場においてダイレクトモータ4をベースプレート9に予め装着しておくことにより、一方では高い精度を獲得できると共に、他方では最終的な現場での組立を容易かつ迅速に行うことができるようになることがあげられる。
【0032】
ギヤレス・ダイレクトモータ4は、例えば、横方向磁束モータや回転子に永久磁石が設けられた高トルクモータによって形成することができる。
【0033】
主電源周波数と比較すると、研磨台は比較的低速度にする必要があり、そのため多数の磁極を有する直接駆動装置が必要となる。結果的に得られる低速度の直接駆動装置は、非同期式装置に関しても、粉砕工程から来る負荷の変動により生じる速度変動がねじり振動システムにおいて過剰な形でフィードバックされない(反映されない)という利点がある。追加的な歯車機構を排除した点についても、歯車機構に生じる遊びが無くなり駆動装置の故障の可能性が明らかに低減するという利点がある。
【0034】
研磨ローラ駆動システム3と直接駆動装置4の調節は、調節装置12によって行われる。1つまたはそれ以上の研磨ローラ駆動システム3と研磨台用の直接駆動装置4とが設けられているため、ローラミルの全設置駆動力は複数の駆動装置に分割される。本発明の基礎となった試験において、直接駆動装置が全設置駆動力の少なくとも10〜40%、好ましくは15〜30%を有するように構成すると特に有利であるという知見を得ている。
【0035】
調節装置12は、ギヤレス直接駆動装置4を、ローラミルの全入力電力の所定の割合となるように調節するように構成されている。また、所定の駆動トルクとなるように調節してもよい。直接駆動装置4は、例えば、図では詳細に示していない周波数変換器により制御される。
【0036】
直接駆動装置を研磨台の内部に設置することによって、非常に場所を取らない構成が可能となり、歯車機構を排除することで故障の可能性が確実に減少する。上述のように直接駆動装置4に特殊な連結方法がとられているため、別途に構造的な空間やコストが必要になることがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの研磨ローラ(1)と、
下向きに開口した研磨台内部空間を有する研磨台(2)と、
前記研磨ローラ(1)を駆動するための少なくとも1つの研磨ローラ駆動システム(3)と、
前記研磨台を駆動するための研磨台駆動システムと、を備えるローラミルであって、
前記研磨台駆動システムが、研磨台内部空間(2b)に配設されたギヤレス直接駆動装置(4)を備えることを特徴とするローラミル。
【請求項2】
前記ギヤレス直接駆動装置(4)が、ローラミルの全設置駆動力の少なくとも10%〜40%を有することを特徴とする請求項1に記載のローラミル。
【請求項3】
前記ギヤレス直接駆動装置(4)が、ローラミルの全設置駆動力の15%〜30%を有することを特徴とする請求項1に記載のローラミル。
【請求項4】
前記研磨台(2)が、研磨台支持部(8)を備え、
前記ギヤレス直接駆動装置(4)が、前記研磨台支持部(8)を介して支持される回転子(4a)を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のローラミル。
【請求項5】
前記研磨台支持部(8)が、ローラミルのベースプレート(9)上に配置され、
前記ギヤレス直接駆動装置(4)は、ベースプレート(9)上に支持される固定子(4b)を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のローラミル。
【請求項6】
前記ギヤレス直接駆動装置(4)が、前記研磨台(2)に回り止め状態で連結された回転子(4a)を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のローラミル。
【請求項7】
前記研磨台(2)の下部が、鐘状または筒状に構成されており、
前記ギヤレス直接駆動装置(4)は、この研磨台下部の鐘状または筒状部分の内部に配設されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のローラミル。
【請求項8】
前記ギヤレス直接駆動装置(4)が、横方向磁束モータによって構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のローラミル。
【請求項9】
前記ギヤレス直接駆動装置(4)が、内側固定子と外側回転子とを有する高トルクモータによって構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のローラミル。
【請求項10】
前記高トルクモータが、永久磁石付きの回転子(4a)を有している請求項9に記載のローラミル。
【請求項11】
前記ギヤレス直接駆動装置(4)が、該直接駆動装置(4)を所定の駆動トルクに調節するための調節装置(12)に接続されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のローラミル。
【請求項12】
前記ギヤレス直接駆動装置(4)が、該直接駆動装置(4)を調節してローラミルの全入力電力の所定の割合となるようにする調節装置(12)に接続されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のローラミル。
【請求項13】
前記研磨ローラ駆動システム(3)に、調節装置(12)が設けられており、
前記調節装置(12)は、前記ギヤレス直接駆動装置(4)にも接続され、ローラミルの全入力電力の所定の割合となるように前記ギヤレス直接駆動装置(4)を調節することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のローラミル。
【請求項14】
前記ギヤレス直接駆動装置(4)が、その制御を行うための周波数変換器に接続されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のローラミル。
【請求項15】
前記ギヤレス直接駆動装置(4)が、電力供給網に直接接続されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のローラミル。

【図1】
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【公表番号】特表2012−519589(P2012−519589A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553399(P2011−553399)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052774
【国際公開番号】WO2010/102946
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(504043934)ポリシウス アクチェンゲゼルシャフト (21)
【Fターム(参考)】