ローラリフタ構造
【課題】ローラリフタにおけるリフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立することが可能な構成を提供する。
【解決手段】リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心方向の位相位置では、リフタガイド52の内面に対する嵌合長さ寸法T1を短く設定する一方、リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心に直交する方向の位相位置では、リフタガイド52の内面に対する嵌合長さ寸法を長く設定する。これにより、ローラ53の軸心に直交する方向でのリフタガイド52に対するリフタ51の傾き許容量は制限されてリフタ51のコッキングは抑制される。また、ローラ53の軸心に沿う方向でのリフタガイド52に対するリフタ51の傾き許容量は拡大されてリフタ51の傾きをカム111の傾きに追従させることができ、カム111に対するローラ53の片当たりを抑制できる。
【解決手段】リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心方向の位相位置では、リフタガイド52の内面に対する嵌合長さ寸法T1を短く設定する一方、リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心に直交する方向の位相位置では、リフタガイド52の内面に対する嵌合長さ寸法を長く設定する。これにより、ローラ53の軸心に直交する方向でのリフタガイド52に対するリフタ51の傾き許容量は制限されてリフタ51のコッキングは抑制される。また、ローラ53の軸心に沿う方向でのリフタガイド52に対するリフタ51の傾き許容量は拡大されてリフタ51の傾きをカム111の傾きに追従させることができ、カム111に対するローラ53の片当たりを抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料ポンプ等に設けられたローラリフタの構造に係る。特に、本発明は、ローラリフタの円滑な動作を実現するための対策に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載される筒内直噴型エンジンにおいては、燃料圧力を燃焼室内の圧力よりも高くして燃料噴射を行う必要があるため、燃料タンクから送られてきた燃料を高圧燃料ポンプで加圧してインジェクタに向けて供給している。
【0003】
筒内直噴型エンジンの燃料供給系としては、例えば、下記の特許文献1や特許文献2に開示されているように、燃料タンクから燃料を送り出すフィードポンプと、このフィードポンプによって送り出された燃料を加圧する高圧燃料ポンプと、高圧燃料ポンプによって加圧された燃料を貯留するデリバリパイプと、エンジンの各気筒ごとに配置されたインジェクタとを備えるものが知られている。各インジェクタの開弁制御により、デリバリパイプ内に貯留されている高圧燃料は、インジェクタから燃焼室内に直接噴射される。
【0004】
そして、このような燃料供給系に用いられる高圧燃料ポンプとしては、例えば、シリンダ内に往復摺動可能に挿入されたプランジャと、これらシリンダとプランジャとによって区画形成された加圧室と、リフタガイド内に往復移動可能に配設されているとともに、プランジャに連結されたリフタと、このリフタをカムの外周面側に押圧する圧縮コイルばねとを備えるものがある。カムの回転にともなって、カムノーズがリフタから退避するときにプランジャが移動して加圧室の容積が拡大する行程(吸入行程)と、カムノーズによってリフタが押され、それにともなってプランジャが移動して加圧室の容積が縮小する行程(加圧行程)とを繰り返すことにより、燃料をデリバリパイプ等に加圧して供給する構造となっている。
【0005】
ところで、上述のような構造の高圧燃料ポンプにおいて、互いに接触するカムとリフタとの間での摺動抵抗を抑制するために、特許文献2に開示されているように、リフタをローラリフタとして構成したものが知られている。つまり、略筒型のリフタ本体に、上記カムの軸線に沿う方向に貫通する貫通孔を形成しておき、この貫通孔にローラ軸を挿入して固定すると共に、このローラ軸によってローラを回転自在に支持した構成となっている。これにより、ローラの外周面とカムの外周面とが当接することになり、ローラがカムの外周面に沿って回転しながらカムからの押圧力をリフタが受けることになって、各接触面同士の摺動抵抗を抑制できる。
【特許文献1】特開2000−145572号公報
【特許文献2】特開2008−38604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のローラリフタにあっては、リフタがリフタガイド内に往復移動可能に配設されていることに起因し、以下の2つの現象が発生していた。
(1)リフタのコッキング
先ず、リフタがカムからの押圧力を受ける際、ローラに対するカムの接触位置は、カムの回転位相に応じて変化する。このため、リフタには、その往復移動方向に対して略直交する方向の荷重(分力)を受け、この荷重によってリフタがリフタガイドの内部で傾くことになる。図12は、上記加圧行程時に、カムaからの押圧力を受けてリフタbがリフタガイドcの内部で傾いている状態を示している。この傾きは、リフタガイドcの内面とリフタbの外面との間の隙間(以下、ガイドクリアランスと呼ぶ)が存在していることで生じるものであり、このガイドクリアランスが大きいほど傾きも大きくなる。そして、このようにしてリフタbが傾くと、リフタbの外周面のうち、リフタガイドcの軸心に対して直交する方向(図中の左右方向)の一方側(図中の右側)の上端縁b1と他方側(図中の左側)の下端縁b2とがそれぞれリフタガイドcの内面に片当たりする状態となる。逆に、上記吸入行程時には、リフタbがカムaから受ける荷重(カムaからの反力)の方向が切り換わり、リフタbの外周面のうち、リフタガイドcの軸心に対して直交する方向の一方側(図中の右側)の下端縁b3と他方側(図中の左側)の上端縁b4とがそれぞれリフタガイドcの内面に片当たりする状態となる。このような状況は、コッキングと呼ばれ、各片当たり部分で異音が生じたり、各片当たり部分での摺動抵抗が極端に大きくなってリフタbの円滑な往復移動を阻害する原因となる。
(2)カムに対するローラの片当たり
上記カムの回転軸心とローラの回転軸心との平行度が良好に得られていない場合、例えば各部品の加工精度や組み付け精度が十分に得られていないために、これらの平行度が良好に得られていない場合には、カムの外周面に対してローラの外周面の一部分のみが接触する片当たりが生じることになる。図13は、カムaの回転軸心が傾斜している状態であって、ガイドクリアランスが存在する分だけリフタbも僅かに傾くものの、カムaの傾きには追従できておらず、カムaの回転軸心とローラdの回転軸心との平行度が得られていないために、ローラdの一端縁部(ローラdの軸線方向の一端縁部d1)のみがカムaの外周面に当接している状態を示している。このような状況では、カムaとローラdとの接触部分での面圧が大幅に上昇することになり、場合によってはカムaの外周面にピッチング等の損傷を招いてしまう可能性がある。
【0007】
以上のような各現象に対しては次のような対策を講じることが考えられる。
【0008】
先ず、上記リフタのコッキングを抑制するための手段として、上記ガイドクリアランスを縮小させることが挙げられる。つまり、このガイドクリアランスを縮小させることにより、リフタガイドの内面の規制を受けてリフタが殆ど傾かないようにし、これによりコッキングを抑制するものである。
【0009】
一方、上記カムに対するローラの片当たりを抑制するための手段として、上記ガイドクリアランスを拡大させることが挙げられる。つまり、このガイドクリアランスを拡大させることにより、リフタガイドに対するリフタの傾きを大きく許容して、カムの傾きに追従できるようにし、カムの回転軸心とローラの回転軸心との平行度が得られるようにするものである。
【0010】
このように、従来では、リフタのコッキングを抑制するためにはガイドクリアランスを縮小させ、カムに対するローラの片当たりを抑制するためにはガイドクリアランスを拡大させるといった技術的思想までしか至っていなかった。これらの対策は互いに相反する手段を講じるものであるため、併存させることはできない。つまり、従来の技術的思想では、リフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立することは不可能であった。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ローラリフタにおけるリフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立することが可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、リフタの周方向における位相に応じて、リフタガイドに対するリフタの傾きの許容量を異ならせる。つまり、上記コッキングの発生する方向の位相に対してはリフタの傾き許容量を制限し、カムの傾きに追従させる必要がある方向の位相に対してはリフタの傾き許容量を大きくすることで、リフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立できるようにしている。
【0013】
−解決手段−
具体的に、本発明は、カムの外周面に接触してカムからの押圧力を受けるローラと、このローラを回転自在に支持すると共にリフタガイドの内部空間に往復移動自在に収容されたリフタとを備えたローラリフタ構造を前提とする。このローラリフタ構造に対し、上記ローラの軸心に沿う方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量を拡大すると共にローラの軸心に直交する方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量を制限するリフタ傾き許容量調整手段を備えさせている。つまり、ローラの軸心に沿う方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量を、ローラの軸心に直交する方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量よりも大きくする構成としている。逆に言えば、ローラの軸心に直交する方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量を、ローラの軸心に沿う方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量よりも小さくする構成としている。
【0014】
この特定事項により、ローラの軸心に直交する方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量は制限され、これにより、上記リフタのコッキングの発生が抑制されることになる。また、ローラの軸心に沿う方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量は拡大され、これにより、リフタの傾きをカムの傾きに追従させることができ、カムの回転軸心とローラの回転軸心との平行度が良好に得られることで、カムに対するローラの片当たりを抑制することができる。このように、本解決手段によれば、リフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立できる。
【0015】
上記リフタ傾き許容量調整手段の具体構成としては以下のものが挙げられる。先ず、上記リフタに、略筒状に形成されたリフタ本体を備えさせる。そして、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では、リフタガイドの内面に接触する部分の上記往復移動方向での嵌合長さ寸法を短く設定し、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では、リフタガイドの内面に接触する部分の上記往復移動方向での嵌合長さ寸法を長く設定することで上記リフタ傾き許容量調整手段を構成している。つまり、上記リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置の上記嵌合長さ寸法を、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置の上記嵌合長さ寸法よりも短く設定している。逆に言えば、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置の上記嵌合長さ寸法を、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置の上記嵌合長さ寸法よりも長く設定している。
【0016】
この場合に、上記嵌合長さを、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置からリフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置に向けて次第に長く設定する。
【0017】
より具体的には、リフタ本体の軸心方向の両端の外周縁部を面取り加工することにより上記リフタ傾き許容量調整手段を構成する。つまり、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では面取り寸法を大きく設定する一方、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では面取り寸法を小さく設定する。
【0018】
これら構成により、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では上記嵌合長さ寸法が長いために、リフタの傾きはリフタガイドの内面によって大きく規制され、ローラの軸心に直交する方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量は制限される。逆に、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では上記嵌合長さ寸法が短いために、リフタガイドの内面によるリフタの傾きの制限は小さく、ローラの軸心に沿う方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量は拡大される。このように各嵌合長さ寸法を異ならせるといった比較的簡単な構成でリフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立できる。
【0019】
上記リフタ傾き許容量調整手段の他の具体構成としては以下のものが挙げられる。先ず、上記リフタに、略筒状に形成されたリフタ本体を備えさせる。そして、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置ではリフタ本体の剛性を低く設定する一方、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置ではリフタ本体の剛性を高く設定することで上記リフタ傾き許容量調整手段を構成している。つまり、上記リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置の剛性を、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置の剛性よりも低く設定している。逆に言えば、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置の剛性を、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置の剛性よりも高く設定している。
【0020】
この場合に、リフタ本体の板厚寸法を周方向で異ならせることにより上記リフタ傾き許容量調整手段を構成する。つまり、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では板厚寸法を短く設定する一方、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では板厚寸法を長く設定する。
【0021】
また、上記リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置またはその近傍位置に切り欠き部を形成することにより、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置ではリフタ本体の剛性を低く設定するようにしてもよい。
【0022】
これら構成により、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では上記剛性が高いために、リフタ本体は殆ど変形せず、リフタの傾きはリフタガイドの内面によって大きく規制され、ローラの軸心に直交する方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量は制限される。逆に、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では上記剛性が低いために、リフタ本体が弾性変形することでリフタガイドに対する傾きが大きくなる。このように各部の剛性を異ならせるといった比較的簡単な構成でリフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、リフタの周方向における位相に応じて、リフタガイドに対するリフタの傾きの許容量を異ならせることで、上記コッキングの発生する方向の位相に対してはリフタの傾き許容量を制限し、カムの傾きに追従させる必要がある方向の位相に対してはリフタの傾き許容量を大きくしている。これにより、リフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立でき、異音の発生や、摺動抵抗の増大や、カムのピッチングの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0025】
以下では、自動車に搭載される筒内直噴型多気筒(例えば6気筒)ガソリンエンジンに用いられる高圧燃料ポンプのローラリフタに本発明を適用した場合について説明する。
【0026】
−燃料供給装置100−
高圧燃料ポンプのローラリフタ構成について説明する前に、この高圧ポンプが適用される燃料供給装置100の概略構成について、図1を参照して説明する。
【0027】
図1に例示する燃料供給装置100は、燃料タンク101から燃料を送り出すフィードポンプ102と、このフィードポンプ102によって送り出された燃料を加圧して各気筒(6気筒)のインジェクタ4,4,…に向けて吐出する高圧燃料ポンプ1とを備えている。
【0028】
高圧燃料ポンプ1は、その具体構成については後述するが、シリンダ21と、プランジャ23と、加圧室22と、電磁スピル弁30とを備えている。
【0029】
プランジャ23は、エンジンの吸気カムシャフト110に取り付けられたカム111の回転によって駆動され、シリンダ21内を往復移動する。このプランジャ23の往復移動により加圧室22の容積が拡大または縮小する。この実施形態では、吸気カムシャフト110の回転軸線回りに120°の角度間隔をもって3つのカム山(カムノーズ)112,112,112がカム111に形成されている。そして、これら3つのカムノーズ112,112,112によってプランジャ23が押し上げられて、このプランジャ23がシリンダ21内で移動するようになっている。
【0030】
この実施形態では、エンジンは6気筒型であるため、エンジンの1サイクル中、つまり、クランクシャフトが2回転する間に、各気筒ごとに設けられたインジェクタ4から各1回ずつ、合計6回の燃料噴射が行われることになる。また、エンジンの1サイクルごとに、吸気カムシャフト110が1回転し、高圧燃料ポンプ1からの吐出動作が3回ずつ行われる。
【0031】
加圧室22は、プランジャ23およびシリンダ21によって区画されている。この加圧室22は、低圧燃料配管104を介してフィードポンプ102に連通している。また、加圧室22は、高圧燃料配管105を介してデリバリパイプ(蓄圧容器)106内に連通している。
【0032】
デリバリパイプ106には、6つのインジェクタ4,4,…が接続されている。デリバリパイプ106には、パイプ内部の燃料圧力(実燃圧)を検出する燃圧センサ161が配設されている。また、デリバリパイプ106には、リリーフバルブ171を介してリターン配管172が接続されている。
【0033】
リリーフバルブ171は、デリバリパイプ106内の燃料圧力が所定圧(例えば13MPa)を超えたときに開弁する。このリリーフバルブ171の開弁により、デリバリパイプ106に蓄えられた燃料の一部がリターン配管172を介して燃料タンク101に戻されるようになっている。これにより、デリバリパイプ106内の燃料圧力の過上昇が防止される。
【0034】
また、リターン配管172と高圧燃料ポンプ1とは、燃料排出配管108(図1では破線で示す)によって接続されており、高圧燃料ポンプ1のプランジャ23とシリンダ21との間隙から漏出した燃料がシールユニット5の上部の燃料収容室6に蓄積され、その後、この燃料収容室6に接続された燃料排出配管108から燃料タンク101に向けて戻されるようになっている。
【0035】
低圧燃料配管104には、フィルタ141とプレッシャレギュレータ142とが設けられている。プレッシャレギュレータ142は、低圧燃料配管104内の燃料圧力が所定圧(例えば0.4MPa)を超えたときに低圧燃料配管104内の燃料を燃料タンク101に戻すことによって、この低圧燃料配管104内の燃料圧力を所定圧以下に維持するようになっている。
【0036】
また、低圧燃料配管104には、パルセーションダンパ107が設けられており、このパルセーションダンパ107によって高圧燃料ポンプ1の作動時における低圧燃料配管104内の燃圧脈動が抑制されるようになっている。さらに、高圧燃料配管105には、高圧燃料ポンプ1から吐出された燃料が逆流することを阻止するための逆止弁151が設けられている。
【0037】
高圧燃料ポンプ1には、低圧燃料配管104と加圧室22との間を連通または遮断するための電磁スピル弁30が設けられている。この電磁スピル弁30は、電磁ソレノイド31を備えており、この電磁ソレノイド31への通電を制御することにより開閉動作する。
【0038】
次に、この電磁スピル弁30の開閉動作について、図2を参照しながら説明する。
【0039】
まず、電磁ソレノイド31に対する通電が停止された状態のときには、電磁スピル弁30が圧縮コイルばね37の弾性力によって開弁し、低圧燃料配管104と加圧室22とが連通した状態になる。この状態において、カム111が吸気カムシャフト110とともに回転して、プランジャ23が加圧室22の容積が増大する方向(図1ではプランジャ23が下降する方向)に移動するとき(吸入行程)には、フィードポンプ102から送り出された燃料が低圧燃料配管104を経て加圧室22内に吸入される。
【0040】
一方、カム111が吸気カムシャフト110とともに回転して、プランジャ23が、加圧室22の容積が収縮する方向(図1ではプランジャ23が上昇する方向)に移動するとき(加圧行程)において、電磁ソレノイド31への通電により電磁スピル弁30が圧縮コイルばね37の弾性力に抗して閉弁すると、低圧燃料配管104と加圧室22との間が遮断され、加圧室22内の燃料圧力が所定値に達した時点で逆止弁40が開放して、高圧の燃料が高圧燃料配管105を通じてデリバリパイプ106に向けて吐出される。
【0041】
そして、高圧燃料ポンプ1における燃料吐出量の調整は、加圧行程での電磁スピル弁30の閉弁期間を制御することによって行われる。すなわち、電磁スピル弁30の閉弁開始時期を早めて閉弁期間を長くすると燃料吐出量が増加し、電磁スピル弁30の閉弁開始時期を遅らせて閉弁期間を短くすると燃料吐出量が減少するようになる。このように、高圧燃料ポンプ1の燃料吐出量を調整することにより、デリバリパイプ106内の燃料圧力が制御される。
【0042】
ここで、高圧燃料ポンプ1の燃料吐出量(電磁スピル弁30の閉弁開始時期)を制御するための制御量であるポンプデューティDTについて説明する。このポンプデューティDTは、0〜100%という値の間で変化するものであって、電磁スピル弁30の閉弁期間に対応する吸気カムシャフト110のカム111のカム角度に関係した値である。
【0043】
具体的には、カム111のカム角度に関して、図2に示すように、電磁スピル弁30の最大閉弁期間に対応したカム角度(最大カム角度)をθ0とし、その最大閉弁期間の目標燃圧に対応するカム角度(目標カム角度)をθとすると、ポンプデューティDTは、最大カム角度θ0に対する目標カム角度θの割合(DT=θ/θ0)で表される。従ってポンプデューティDTは、目標とする電磁スピル弁30の閉弁期間(閉弁開始時期)が最大閉弁期間に近づくほど100%に近い値となり、目標とする閉弁期間が「0」に近づくほど0%に近い値となる。
【0044】
そして、ポンプデューティDTが100%に近づくほど、ポンプデューティDTに基づいて調整される電磁スピル弁30の閉弁開始時期は早められ、電磁スピル弁30の閉弁期間は長くなる。その結果、高圧燃料ポンプ1の燃料吐出量が増加して実燃圧が上昇するようになる。また、ポンプデューティDTが0%に近づくほど、ポンプデューティDTに基づいて調整される電磁スピル弁30の閉弁開始時期は遅らされ、電磁スピル弁30の閉弁期間は短くなる。その結果、高圧燃料ポンプ1の燃料吐出量が減少して実燃圧が低下するようになる。なお、上記ポンプデューティDTの算出手順の詳細についてはここでは説明を省略する。
【0045】
−高圧燃料ポンプ1の具体構成−
次に、高圧燃料ポンプ1の具体構成について、図3を参照して説明する。
【0046】
図3に例示する高圧燃料ポンプ1は、プランジャタイプのポンプであって、ハウジング10内に設けられたポンプ部20と、電磁スピル弁30と、逆止弁40とを備えている。
【0047】
ポンプ部20は、シリンダ21と、加圧室22と、プランジャ23と、リフタ51とを備えている。シリンダ21は、ハウジング10の中央部に形成され、その先端側(図3における上端側)に加圧室22が形成される。プランジャ23は、ほぼ円柱形状の部材であって、シリンダ21内にその軸線方向(ここでは上下方向)の摺動が可能に挿入されている。
【0048】
上記リフタ51は、図4にも示すように、略円筒形状のリフタ本体51aと、このリフタ本体51aの下端から下方に延びるローラ支持部51bとを備えている。このローラ支持部51bは、上記リフタ本体51aの下面における外周縁よりも内側に形成されて互いに対向する支持プレート51e,51eを備えている。
【0049】
上記リフタ本体51aの軸心方向(図3における上下方向)の中間部には隔壁部51cが一体形成されており、この隔壁部51cの上側の空間に、プランジャ23の基端部(下端部)、リテーナ26、圧縮コイルばね27等が収納されている。また、このリフタ本体51aの下部(上記隔壁部51cよりも下側の部分)の内側空間およびローラ支持部51bの内側空間はローラ53を収容するための空間として構成されており、このローラ支持部51bには、吸気カムシャフト110の軸心に対して平行に延びる軸心回りに回転自在な上記ローラ53が支持されている。そして、このローラ53の下端がカム111の外周面に当接可能となっている。このように、上記リフタ51及びローラ53によってローラリフタが構成されている。
【0050】
上記ローラ53は、例えば、多数のころを有するころ軸受けを介して、ローラ支持部51bに固定されたローラ軸53aによって回転自在に支持されている。そして、この実施形態では、カム111の外周面とローラ53の外周面との接触部(カム・ローラ接触部)P1に潤滑油を供給して、このカム・ローラ接触部P1における潤滑性を向上させるようになっている。尚、上記ローラ支持部51bに対するローラ軸53aの固定構造としては、例えば、上記ローラ支持部51bの支持プレート51e,51eに形成されているローラ軸支持孔51dにローラ軸53aが挿通され、このローラ軸53aの両端面がカシメ加工されて外周側に塑性変形されて、ローラ軸支持孔51dに対して抜け止めおよび回り止めされた状態で組み付けられている。
【0051】
上記リフタ51はリフタガイド52によって軸線に沿って(図3における上下方向に)摺動自在に支持されている。つまり、このリフタガイド52は、略円柱形状の空間を有し、この空間内にリフタ51が軸線方向へ摺動可能に収納されている。このリフタガイド52は、例えば、円筒形状に形成され、吸気カムシャフト110を支持している図示しないカムキャリアの上部に一体的に取り付けられている。
【0052】
プランジャ23の基端部にはリテーナ26が一体に装着されている。また、リフタガイド52の上部にはスプリングシート部材52aが嵌め込まれている。これらスプリングシート部材52aの下面とリテーナ26との間に圧縮コイルばね27が挟み込まれている。この圧縮コイルばね27の弾性力によって、プランジャ23を押し下げる方向(加圧室22の容積を拡大させる方向)の付勢力が付与されているとともに、ローラ支持部51bにローラ軸53aを介して支持されたローラ53がカム111に向けて押圧されている。
【0053】
ここで、カム111が吸気カムシャフト110とともに回転すると、そのカム111のカムノーズ112がローラ53およびリフタ51に対して上向きの押圧力を作用させることによって、リフタ51およびプランジャ23が上昇しながら圧縮コイルばね27を圧縮して加圧室22の容積を縮小する。一方、カムノーズ112がローラ53から外れる位置までカム111が回転すると、圧縮コイルばね27の付勢力によりリフタ51およびプランジャ23が下降させられて加圧室22の容積を拡大する。
【0054】
電磁スピル弁30は、加圧室22に対向して配置されている。この電磁スピル弁30は、電磁ソレノイド31と、ボビン32と、コア33と、アーマチャ34と、ポペット弁35と、シート体36とを備えている。電磁ソレノイド31は、ボビン32にリング状に巻装されたコイルからなり、このボビン32の中心貫通孔にコア33が嵌合固定されている。アーマチャ34は、ポペット弁35の一端に固定された状態で、その一部がコア33と同軸上でボビン32の中心貫通孔に進入可能に配置されている。コア33およびアーマチャ34の各対向面にはそれぞれ凹部が形成されており、それら凹部間には圧縮コイルばね37が圧縮状態で収納されている。そして、この圧縮コイルばね37の弾性力により、アーマチャ34が加圧室22側に向けて付勢されている。ポペット弁35は、シート体36内の貫通孔に摺動可能に挿入されている。ポペット弁35の下端部には円板状の弁体35aが形成されている。
【0055】
以上の構成において、電磁ソレノイド31の非通電時には、圧縮コイルばね37の弾性力により、弁体35aがシート体36のシート部36aから離間されて、電磁スピル弁30が開弁状態となる。一方、端子38への電力供給により電磁ソレノイド31が通電状態になると、コア33、アーマチャ34および電磁スピル弁30全体を支持する支持部材39により磁気回路が形成され、圧縮コイルばね37の弾性力に抗して、アーマチャ34がコア33側に移動する。これにより、ポペット弁35が加圧室22と反対側に移動し、その弁体35aがシート体36のシート部36aに当接して、電磁スピル弁30は閉弁状態となる(図3に示す状態)。
【0056】
一方、電磁スピル弁30が開弁状態にあるときには、シート体36に形成された複数の供給通路36bと加圧室22との間で燃料が流通可能となっている。
【0057】
供給通路36bと連通するように、ハウジング10には低圧燃料通路11が形成されている。そして、電磁スピル弁30の開弁状態で、プランジャ23が下降するとき、フィードポンプ102の作動により燃料タンク101から汲み上げられた低圧燃料が、フィルタ141、プレッシャレギュレータ142、低圧燃料通路11、および、供給通路36bを経て加圧室22に吸入されるようになっている。
【0058】
シリンダ21の先端側に形成された加圧室22は、シリンダ21の内周面よりも大径に形成されている。そして、プランジャ23は、電磁スピル弁30の閉タイミング前に加圧室22に進入し、電磁スピル弁30が閉弁した後にプランジャ23が上死点に到達するようになっている。また、プランジャ23の先端部が加圧室22内に進入した状態で、加圧室22の内周面とプランジャ23の外周面との間に隙間が形成されるようになっている。ハウジング10には高圧燃料通路12が形成されており、加圧室22がこの高圧燃料通路12を介して逆止弁40に連通するようになっている。
【0059】
逆止弁40は、高圧燃料通路12に接続されたケーシング41と、そのケーシング41内に配置されたシート体42およびスプリングベース体45と、シート体42に接離可能に対向するバルブ体(弁体)43と、このバルブ体43をシート体42に対する当接位置に向けて付勢する圧縮コイルばね44とを備えている。また、逆止弁40は高圧燃料配管105に接続されている。そして、加圧室22内から高圧燃料通路12を介して圧送される燃料の圧力が所定値を超えたとき、バルブ体43が圧縮コイルばね44の付勢力に抗してシート体42から離間する位置に移動される。これにより、逆止弁40が開弁状態になって、高圧燃料通路12から圧送される高圧燃料が高圧燃料配管105を経てデリバリパイプ106に供給されるようになっている。
【0060】
−ローラリフタの構造−
次に、本実施形態の特徴部分であるローラリフタ構造についての複数の実施形態を説明する。
【0061】
上記リフタ51は、上述した如く、上記ローラ支持部51bの支持プレート51e,51eにそれぞれ形成されたローラ軸支持孔51d,51dにローラ軸53aが挿通された状態で、このローラ軸53aの両端面部分がカシメ加工されることにより、このローラ軸53aとローラ支持部51bとが一体的に組み付けられている。また、上述した如く、ローラ軸53aは、ころ軸受け(ニードルベアリング)を介してローラ53を回転自在に支持している。
【0062】
そして、本実施形態の特徴とするところは、リフタ本体51aの構成として、上記ローラ53の軸心に沿う方向でのリフタ51の振れ許容量(リフタガイド52内での傾きの許容量)を拡大すると共にローラ53の軸心に直交する方向でのリフタ51の振れ許容量を制限するリフタ傾き許容量調整手段を備えていることにある。以下、このリフタ傾き許容量調整手段についての複数の実施形態について説明する。
【0063】
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態について説明する。図4は、本実施形態におけるリフタ51を示す斜視図である。また、図5および図6は、上記加圧行程時に、カム111からの押圧力を受けてリフタ51がリフタガイド52の内部で傾いている状態を示しており、図5はローラ53の軸心に沿った方向から見た図であり、図6はローラ53の軸心に直交する方向から見た断面図である。
【0064】
これらの図に示すように、略円筒形状に形成されているリフタ本体51aは、その上端縁部分および下端縁部分のそれぞれに面取り加工によって傾斜面54,55が形成されている。この傾斜面54,55の形状としては、上記ローラ53の軸心に沿う方向の位置(リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置)では傾斜面54,55の面積が最大とされ(面取り寸法が最大とされ)、ローラ53の軸心に直交する方向の位置(リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置)に向かうに従って傾斜面54,55の面積が次第に小さくなっている(面取り寸法が次第に小さくなっている)。そして、リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では傾斜面54,55は形成されておらず、この部分ではリフタ本体51aの上端面および下端面は水平方向に延びる平坦面56,57として形成されている。このような傾斜面54,55の形状は、リフタ本体51aの周方向の位相に応じて面取り加工の角度(傾斜面54,55の傾斜角度)を変化させることにより得られている。
【0065】
言い換えると、リフタ本体51aの外周面(円筒形状となっている部分の外周面)の高さ寸法は、上記リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では最小(図4における寸法T1)とされると共に、リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では最大(図4における寸法T2)とされ、その間は、徐々に高さ寸法が変化していく(ローラ軸心延長方向での位相位置からローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置に向かって次第に長くなっていく)ように形成されている。つまり、リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心方向の位相位置ではリフタガイド52の内周面に対する接触面の高さ寸法(嵌合長さ寸法)が最小とされると共に、リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心に直交する方向の位相位置ではリフタガイド52の内周面に対する接触面の高さ寸法(嵌合長さ寸法)が最大とされ、その間は、徐々に接触面の高さ寸法が変化していくように形成されている。これにより、本発明でいうリフタ傾き許容量調整手段が構成されている。
【0066】
このため、図5に示すように、リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心に直交する方向の位相位置(図5における左右方向の両側位置)ではリフタガイド52の内周面に対するリフタ本体51aの接触面の高さ寸法が最大(寸法T2)とされていることに起因して、リフタ51の傾きはリフタガイド52の内周面によって大きく制約されることになる。
【0067】
一方、リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心方向の位相位置(図6における左右方向の両側位置)ではリフタガイド52の内周面に対する接触面の高さ寸法が最小(寸法T1)とされていることに起因して、リフタガイド52の内周面によるリフタ51の傾きの制約は小さく、この方向では、リフタ51の傾きが大きく許容されることになる。
【0068】
このため、リフタ51が、その往復移動方向に対して略直交する方向の荷重(分力)をカム111から受けて、この荷重によってリフタ51がリフタガイド52の内部で傾く状況となった場合、図5における左右方向(リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心に直交する方向の位相位置)ではリフタ51の傾きはリフタガイド52の内周面によって大きく制約されているため、リフタ51の上端縁や下端縁がリフタガイド52の内面に片当たりする場合のその接触部分での摺動抵抗を抑制することができ、上述したリフタ51のコッキングを抑制することができる。
【0069】
一方、上記カム111の回転軸心とローラ53の回転軸心との平行度が良好に得られていない場合であっても、図6における左右方向(リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心方向の位相位置)ではリフタ51の傾きが大きく許容されているために、リフタ51はカム111の傾きに追従して傾くことができ、上述したカム111に対するローラ53の片当たりを抑制することができる。言い換えると、上記ローラリフタを構成する各部品の加工精度や組み付け精度、また、カム111の加工精度や組み付け精度に高い精度を要求することなしにカム111に対するローラ53の片当たりを抑制することが可能になり、各精度の管理を緩和することができる。
【0070】
以上のように、本実施形態によれば、リフタ51のコッキングの抑制と、カム111に対するローラ53の片当たりの抑制とを併存させることができ、リフタ51とリフタガイド52との間での異音の発生を防止でき、また、この両者間の摺動抵抗が低減できて、リフタ51の円滑な往復移動を実現することができる。また、カム111の外周面にピッチング等の損傷を招いてしまうことも回避できる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、リフタ傾き許容量調整手段の構成が上述した第1実施形態のものと異なっている。その他の構成は第1実施形態のものと同様であるので、ここではリフタ傾き許容量調整手段の構成およびその機能について主に説明する。
【0072】
図7は、本実施形態におけるリフタ51の平面図である。この図7の上下方向がローラ53の軸心に沿う方向であり、左右方向がローラ53の軸心に直交する方向である。また、図8および図9は、上記加圧行程時に、カム111からの押圧力を受けてリフタ51がリフタガイド52の内部で傾いている状態を示しており、図8はローラ53の軸心に沿った方向から見た図であり、図9はローラ53の軸心に直交する方向から見た断面図である。
【0073】
これらの図に示すように、本実施形態に係るリフタ本体51aでは、その上端部分の板厚寸法が周方向で変化していることによって、本発明でいうリフタ傾き許容量調整手段を構成している。
【0074】
具体的には、ローラ53の軸心に直交する方向位置(リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置)では、その全体に亘って均一で且つ比較的板厚が大きく設定されている(図7における寸法T3)。これに対し、上記ローラ53の軸心に沿う方向の位置(リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置)では、上端側に向かうに従って次第に板厚が小さく設定されている(上端位置での板厚寸法を図7および図9において寸法T4で示す)。また、このリフタ本体51aの上端部の板厚寸法の変化としては、ローラ53の軸心方向位置(リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置)に向かうに従って、板厚寸法が次第に小さくなり、このリフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心方向の位相位置では、板厚が最小となっている。
【0075】
これにより、リフタ本体51aの周方向におけるローラ軸心方向の位相位置ではリフタ本体51aの剛性が最小に設定されている一方、リフタ本体51aの周方向におけるローラ軸心に直交する方向の位相位置ではリフタ本体51aの剛性が最大に設定され、その間は徐々に剛性が変化していく(ローラ軸心方向の位相位置からローラ軸心に直交する方向の位相位置に向かって剛性が次第に高くなっていく)ように形成されている。
【0076】
このため、図8に示すように、リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心に直交する方向の位相位置(図8における左右方向の両側位置)では、上記剛性が高いために、リフタ本体51aは殆ど変形せず、リフタ51の傾きはリフタガイド52の内面によって大きく規制され、ローラ53の軸心に直交する方向でのリフタガイド52に対するリフタ51の傾き許容量は制限されることになる。
【0077】
一方、リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心方向の位相位置(図9における左右方向の両側位置)では、上記剛性が低いために、リフタ本体51aが弾性変形することでリフタガイド52に対する傾きが大きくなる。
【0078】
このため、リフタ51が、その往復移動方向に対して略直交する方向の荷重(分力)をカム111から受けて、この荷重によってリフタ51がリフタガイド52の内部で傾く状況となった場合、図8における左右方向(リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心に直交する方向の位相位置)ではリフタ51の傾きはリフタガイド52の内周面によって大きく制約されているため、リフタ51の上端縁や下端縁がリフタガイド52の内面に片当たりする場合のその接触部分での摺動抵抗を抑制することができ、上述したリフタ51のコッキングを抑制することができる。
【0079】
一方、上記カム111の回転軸心とローラ53の回転軸心との平行度が良好に得られていない場合であっても、図9における左右方向(リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心方向の位相位置)では上記リフタ本体51aの弾性変形によってリフタ51の傾きが大きくなるために、リフタ51はカム111の傾きに追従して傾くことができ、上述したカム111に対するローラ53の片当たりを抑制することができる。
【0080】
以上のように、本実施形態によっても、リフタ51のコッキングの抑制と、カム111に対するローラ53の片当たりの抑制とを併存させることができ、リフタ51とリフタガイド52との間での異音の発生を防止でき、また、この両者間の摺動抵抗が低減できて、リフタ51の円滑な往復移動を実現することができる。また、カム111の外周面にピッチング等の損傷を招いてしまうことも回避できる。
【0081】
尚、本実施形態では、図7に示すように、リフタ本体51aの内面を傾斜面とすることで板厚を変化させるようにしていたが、図10(リフタ51の平面図)に示すように、リフタ本体51aの外面を傾斜面とすることで板厚を変化させるようにしてもよい。
【0082】
また、剛性を低く設定するための他の手段として、図11に示すように、リフタ本体51aに、スリット(切り欠き部)58を設けるようにしてもよい。具体的には、リフタ本体51aの周方向におけるローラ軸心方向の位相位置の近傍にスリット58を形成し、このリフタ本体51aの周方向におけるローラ軸心方向の位相位置での剛性を低く設定するものである。このようにして剛性を低く設定したことによる作用効果は上述したものと同様にして得られる。
【0083】
−他の実施形態−
以上、本発明の実施形態について説明したが、ここに示した実施形態は一例であり、さまざまに変形することが可能である。
【0084】
上記各実施形態では、吸気カムシャフト110に取り付けられたカム111の回転によってリフタ51が往復動される構成としたが、排気カムシャフトに取り付けられたカムの回転によってリフタ51を往復動させる構成としてもよい。
【0085】
また、上記各実施形態では、3つのカムノーズ112,112,112を有するカム111によりリフタ51が往復動される構成としたが、その他の個数のカムノーズ(例えば、2つのカムノーズ)を有するカムによってリフタ51を往復動させる構成としてもよい。
【0086】
更に、上記各実施形態では、自動車に搭載される筒内直噴型6気筒ガソリンエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限られることなく、例えば、筒内直噴型4気筒ガソリンエンジンなどの他の任意の気筒数のガソリンエンジンに適用可能である。また、ガソリンエンジンに限らず、ディーゼルエンジン等の他の内燃機関にも本発明は適用可能である。さらに、本発明が適用可能なエンジンは、自動車用のエンジンに限るものでもない。
【0087】
また、上記各実施形態では、リフタ本体51aにリフタ傾き許容量調整手段を備えさせるようにしていた。本発明はこれに限らず、リフタガイド52にリフタ傾き許容量調整手段を備えさせるようにしてもよい。例えば、リフタ本体51aを円筒形状としておく一方、リフタガイド52の内部空間を平面視楕円形状または平面視長円形状に形成するものである。具体的には、ローラ軸心に沿う方向の長さ寸法がローラ軸心に直交する方向の長さ寸法よりも僅かに長く設定された楕円形状や長円形状とする。これによれば、リフタ本体51aの周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では、リフタガイド52の内面との間のガイドクリアランスが大きく得られ、ローラ53の軸心に沿う方向でのリフタガイド52に対するリフタ51の傾き許容量を拡大することができる。
【0088】
また、上記各実施形態では、高圧燃料ポンプのローラリフタに本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、その他の機器(例えばエンジンの動弁系等)に適用されるローラリフタにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】実施形態に係る燃料供給装置を模式的に示す図である。
【図2】電磁スピル弁の開閉動作を説明するための図である。
【図3】高圧燃料ポンプを示す縦断面図である。
【図4】第1実施形態におけるリフタを示す斜視図である。
【図5】第1実施形態においてリフタがリフタガイドの内部で傾いている状態をローラの軸心に沿った方向から見た図である。
【図6】第1実施形態においてリフタがリフタガイドの内部で傾いている状態をローラの軸心に直交する方向から見た断面図である。
【図7】第2実施形態におけるリフタの平面図である。
【図8】第2実施形態においてリフタがリフタガイドの内部で傾いている状態をローラの軸心に沿った方向から見た図である。
【図9】第2実施形態においてリフタがリフタガイドの内部で傾いている状態をローラの軸心に直交する方向から見た断面図である。
【図10】第2実施形態の第1の変形例におけるリフタの平面図である。
【図11】第2実施形態の第2の変形例におけるリフタの平面図である。
【図12】従来例においてリフタがリフタガイドの内部で傾いている状態をローラの軸心に沿った方向から見た図である。
【図13】従来例においてリフタがリフタガイドの内部で傾いている状態をローラの軸心に直交する方向から見た断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 高圧燃料ポンプ
51 リフタ
51a リフタ本体
52 リフタガイド
53 ローラ
54,55 傾斜面
58 スリット
111 カム
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料ポンプ等に設けられたローラリフタの構造に係る。特に、本発明は、ローラリフタの円滑な動作を実現するための対策に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載される筒内直噴型エンジンにおいては、燃料圧力を燃焼室内の圧力よりも高くして燃料噴射を行う必要があるため、燃料タンクから送られてきた燃料を高圧燃料ポンプで加圧してインジェクタに向けて供給している。
【0003】
筒内直噴型エンジンの燃料供給系としては、例えば、下記の特許文献1や特許文献2に開示されているように、燃料タンクから燃料を送り出すフィードポンプと、このフィードポンプによって送り出された燃料を加圧する高圧燃料ポンプと、高圧燃料ポンプによって加圧された燃料を貯留するデリバリパイプと、エンジンの各気筒ごとに配置されたインジェクタとを備えるものが知られている。各インジェクタの開弁制御により、デリバリパイプ内に貯留されている高圧燃料は、インジェクタから燃焼室内に直接噴射される。
【0004】
そして、このような燃料供給系に用いられる高圧燃料ポンプとしては、例えば、シリンダ内に往復摺動可能に挿入されたプランジャと、これらシリンダとプランジャとによって区画形成された加圧室と、リフタガイド内に往復移動可能に配設されているとともに、プランジャに連結されたリフタと、このリフタをカムの外周面側に押圧する圧縮コイルばねとを備えるものがある。カムの回転にともなって、カムノーズがリフタから退避するときにプランジャが移動して加圧室の容積が拡大する行程(吸入行程)と、カムノーズによってリフタが押され、それにともなってプランジャが移動して加圧室の容積が縮小する行程(加圧行程)とを繰り返すことにより、燃料をデリバリパイプ等に加圧して供給する構造となっている。
【0005】
ところで、上述のような構造の高圧燃料ポンプにおいて、互いに接触するカムとリフタとの間での摺動抵抗を抑制するために、特許文献2に開示されているように、リフタをローラリフタとして構成したものが知られている。つまり、略筒型のリフタ本体に、上記カムの軸線に沿う方向に貫通する貫通孔を形成しておき、この貫通孔にローラ軸を挿入して固定すると共に、このローラ軸によってローラを回転自在に支持した構成となっている。これにより、ローラの外周面とカムの外周面とが当接することになり、ローラがカムの外周面に沿って回転しながらカムからの押圧力をリフタが受けることになって、各接触面同士の摺動抵抗を抑制できる。
【特許文献1】特開2000−145572号公報
【特許文献2】特開2008−38604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のローラリフタにあっては、リフタがリフタガイド内に往復移動可能に配設されていることに起因し、以下の2つの現象が発生していた。
(1)リフタのコッキング
先ず、リフタがカムからの押圧力を受ける際、ローラに対するカムの接触位置は、カムの回転位相に応じて変化する。このため、リフタには、その往復移動方向に対して略直交する方向の荷重(分力)を受け、この荷重によってリフタがリフタガイドの内部で傾くことになる。図12は、上記加圧行程時に、カムaからの押圧力を受けてリフタbがリフタガイドcの内部で傾いている状態を示している。この傾きは、リフタガイドcの内面とリフタbの外面との間の隙間(以下、ガイドクリアランスと呼ぶ)が存在していることで生じるものであり、このガイドクリアランスが大きいほど傾きも大きくなる。そして、このようにしてリフタbが傾くと、リフタbの外周面のうち、リフタガイドcの軸心に対して直交する方向(図中の左右方向)の一方側(図中の右側)の上端縁b1と他方側(図中の左側)の下端縁b2とがそれぞれリフタガイドcの内面に片当たりする状態となる。逆に、上記吸入行程時には、リフタbがカムaから受ける荷重(カムaからの反力)の方向が切り換わり、リフタbの外周面のうち、リフタガイドcの軸心に対して直交する方向の一方側(図中の右側)の下端縁b3と他方側(図中の左側)の上端縁b4とがそれぞれリフタガイドcの内面に片当たりする状態となる。このような状況は、コッキングと呼ばれ、各片当たり部分で異音が生じたり、各片当たり部分での摺動抵抗が極端に大きくなってリフタbの円滑な往復移動を阻害する原因となる。
(2)カムに対するローラの片当たり
上記カムの回転軸心とローラの回転軸心との平行度が良好に得られていない場合、例えば各部品の加工精度や組み付け精度が十分に得られていないために、これらの平行度が良好に得られていない場合には、カムの外周面に対してローラの外周面の一部分のみが接触する片当たりが生じることになる。図13は、カムaの回転軸心が傾斜している状態であって、ガイドクリアランスが存在する分だけリフタbも僅かに傾くものの、カムaの傾きには追従できておらず、カムaの回転軸心とローラdの回転軸心との平行度が得られていないために、ローラdの一端縁部(ローラdの軸線方向の一端縁部d1)のみがカムaの外周面に当接している状態を示している。このような状況では、カムaとローラdとの接触部分での面圧が大幅に上昇することになり、場合によってはカムaの外周面にピッチング等の損傷を招いてしまう可能性がある。
【0007】
以上のような各現象に対しては次のような対策を講じることが考えられる。
【0008】
先ず、上記リフタのコッキングを抑制するための手段として、上記ガイドクリアランスを縮小させることが挙げられる。つまり、このガイドクリアランスを縮小させることにより、リフタガイドの内面の規制を受けてリフタが殆ど傾かないようにし、これによりコッキングを抑制するものである。
【0009】
一方、上記カムに対するローラの片当たりを抑制するための手段として、上記ガイドクリアランスを拡大させることが挙げられる。つまり、このガイドクリアランスを拡大させることにより、リフタガイドに対するリフタの傾きを大きく許容して、カムの傾きに追従できるようにし、カムの回転軸心とローラの回転軸心との平行度が得られるようにするものである。
【0010】
このように、従来では、リフタのコッキングを抑制するためにはガイドクリアランスを縮小させ、カムに対するローラの片当たりを抑制するためにはガイドクリアランスを拡大させるといった技術的思想までしか至っていなかった。これらの対策は互いに相反する手段を講じるものであるため、併存させることはできない。つまり、従来の技術的思想では、リフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立することは不可能であった。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ローラリフタにおけるリフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立することが可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、リフタの周方向における位相に応じて、リフタガイドに対するリフタの傾きの許容量を異ならせる。つまり、上記コッキングの発生する方向の位相に対してはリフタの傾き許容量を制限し、カムの傾きに追従させる必要がある方向の位相に対してはリフタの傾き許容量を大きくすることで、リフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立できるようにしている。
【0013】
−解決手段−
具体的に、本発明は、カムの外周面に接触してカムからの押圧力を受けるローラと、このローラを回転自在に支持すると共にリフタガイドの内部空間に往復移動自在に収容されたリフタとを備えたローラリフタ構造を前提とする。このローラリフタ構造に対し、上記ローラの軸心に沿う方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量を拡大すると共にローラの軸心に直交する方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量を制限するリフタ傾き許容量調整手段を備えさせている。つまり、ローラの軸心に沿う方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量を、ローラの軸心に直交する方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量よりも大きくする構成としている。逆に言えば、ローラの軸心に直交する方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量を、ローラの軸心に沿う方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量よりも小さくする構成としている。
【0014】
この特定事項により、ローラの軸心に直交する方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量は制限され、これにより、上記リフタのコッキングの発生が抑制されることになる。また、ローラの軸心に沿う方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量は拡大され、これにより、リフタの傾きをカムの傾きに追従させることができ、カムの回転軸心とローラの回転軸心との平行度が良好に得られることで、カムに対するローラの片当たりを抑制することができる。このように、本解決手段によれば、リフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立できる。
【0015】
上記リフタ傾き許容量調整手段の具体構成としては以下のものが挙げられる。先ず、上記リフタに、略筒状に形成されたリフタ本体を備えさせる。そして、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では、リフタガイドの内面に接触する部分の上記往復移動方向での嵌合長さ寸法を短く設定し、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では、リフタガイドの内面に接触する部分の上記往復移動方向での嵌合長さ寸法を長く設定することで上記リフタ傾き許容量調整手段を構成している。つまり、上記リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置の上記嵌合長さ寸法を、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置の上記嵌合長さ寸法よりも短く設定している。逆に言えば、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置の上記嵌合長さ寸法を、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置の上記嵌合長さ寸法よりも長く設定している。
【0016】
この場合に、上記嵌合長さを、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置からリフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置に向けて次第に長く設定する。
【0017】
より具体的には、リフタ本体の軸心方向の両端の外周縁部を面取り加工することにより上記リフタ傾き許容量調整手段を構成する。つまり、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では面取り寸法を大きく設定する一方、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では面取り寸法を小さく設定する。
【0018】
これら構成により、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では上記嵌合長さ寸法が長いために、リフタの傾きはリフタガイドの内面によって大きく規制され、ローラの軸心に直交する方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量は制限される。逆に、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では上記嵌合長さ寸法が短いために、リフタガイドの内面によるリフタの傾きの制限は小さく、ローラの軸心に沿う方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量は拡大される。このように各嵌合長さ寸法を異ならせるといった比較的簡単な構成でリフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立できる。
【0019】
上記リフタ傾き許容量調整手段の他の具体構成としては以下のものが挙げられる。先ず、上記リフタに、略筒状に形成されたリフタ本体を備えさせる。そして、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置ではリフタ本体の剛性を低く設定する一方、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置ではリフタ本体の剛性を高く設定することで上記リフタ傾き許容量調整手段を構成している。つまり、上記リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置の剛性を、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置の剛性よりも低く設定している。逆に言えば、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置の剛性を、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置の剛性よりも高く設定している。
【0020】
この場合に、リフタ本体の板厚寸法を周方向で異ならせることにより上記リフタ傾き許容量調整手段を構成する。つまり、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では板厚寸法を短く設定する一方、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では板厚寸法を長く設定する。
【0021】
また、上記リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置またはその近傍位置に切り欠き部を形成することにより、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置ではリフタ本体の剛性を低く設定するようにしてもよい。
【0022】
これら構成により、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では上記剛性が高いために、リフタ本体は殆ど変形せず、リフタの傾きはリフタガイドの内面によって大きく規制され、ローラの軸心に直交する方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量は制限される。逆に、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では上記剛性が低いために、リフタ本体が弾性変形することでリフタガイドに対する傾きが大きくなる。このように各部の剛性を異ならせるといった比較的簡単な構成でリフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、リフタの周方向における位相に応じて、リフタガイドに対するリフタの傾きの許容量を異ならせることで、上記コッキングの発生する方向の位相に対してはリフタの傾き許容量を制限し、カムの傾きに追従させる必要がある方向の位相に対してはリフタの傾き許容量を大きくしている。これにより、リフタのコッキングの抑制とカムに対するローラの片当たりの抑制とを両立でき、異音の発生や、摺動抵抗の増大や、カムのピッチングの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0025】
以下では、自動車に搭載される筒内直噴型多気筒(例えば6気筒)ガソリンエンジンに用いられる高圧燃料ポンプのローラリフタに本発明を適用した場合について説明する。
【0026】
−燃料供給装置100−
高圧燃料ポンプのローラリフタ構成について説明する前に、この高圧ポンプが適用される燃料供給装置100の概略構成について、図1を参照して説明する。
【0027】
図1に例示する燃料供給装置100は、燃料タンク101から燃料を送り出すフィードポンプ102と、このフィードポンプ102によって送り出された燃料を加圧して各気筒(6気筒)のインジェクタ4,4,…に向けて吐出する高圧燃料ポンプ1とを備えている。
【0028】
高圧燃料ポンプ1は、その具体構成については後述するが、シリンダ21と、プランジャ23と、加圧室22と、電磁スピル弁30とを備えている。
【0029】
プランジャ23は、エンジンの吸気カムシャフト110に取り付けられたカム111の回転によって駆動され、シリンダ21内を往復移動する。このプランジャ23の往復移動により加圧室22の容積が拡大または縮小する。この実施形態では、吸気カムシャフト110の回転軸線回りに120°の角度間隔をもって3つのカム山(カムノーズ)112,112,112がカム111に形成されている。そして、これら3つのカムノーズ112,112,112によってプランジャ23が押し上げられて、このプランジャ23がシリンダ21内で移動するようになっている。
【0030】
この実施形態では、エンジンは6気筒型であるため、エンジンの1サイクル中、つまり、クランクシャフトが2回転する間に、各気筒ごとに設けられたインジェクタ4から各1回ずつ、合計6回の燃料噴射が行われることになる。また、エンジンの1サイクルごとに、吸気カムシャフト110が1回転し、高圧燃料ポンプ1からの吐出動作が3回ずつ行われる。
【0031】
加圧室22は、プランジャ23およびシリンダ21によって区画されている。この加圧室22は、低圧燃料配管104を介してフィードポンプ102に連通している。また、加圧室22は、高圧燃料配管105を介してデリバリパイプ(蓄圧容器)106内に連通している。
【0032】
デリバリパイプ106には、6つのインジェクタ4,4,…が接続されている。デリバリパイプ106には、パイプ内部の燃料圧力(実燃圧)を検出する燃圧センサ161が配設されている。また、デリバリパイプ106には、リリーフバルブ171を介してリターン配管172が接続されている。
【0033】
リリーフバルブ171は、デリバリパイプ106内の燃料圧力が所定圧(例えば13MPa)を超えたときに開弁する。このリリーフバルブ171の開弁により、デリバリパイプ106に蓄えられた燃料の一部がリターン配管172を介して燃料タンク101に戻されるようになっている。これにより、デリバリパイプ106内の燃料圧力の過上昇が防止される。
【0034】
また、リターン配管172と高圧燃料ポンプ1とは、燃料排出配管108(図1では破線で示す)によって接続されており、高圧燃料ポンプ1のプランジャ23とシリンダ21との間隙から漏出した燃料がシールユニット5の上部の燃料収容室6に蓄積され、その後、この燃料収容室6に接続された燃料排出配管108から燃料タンク101に向けて戻されるようになっている。
【0035】
低圧燃料配管104には、フィルタ141とプレッシャレギュレータ142とが設けられている。プレッシャレギュレータ142は、低圧燃料配管104内の燃料圧力が所定圧(例えば0.4MPa)を超えたときに低圧燃料配管104内の燃料を燃料タンク101に戻すことによって、この低圧燃料配管104内の燃料圧力を所定圧以下に維持するようになっている。
【0036】
また、低圧燃料配管104には、パルセーションダンパ107が設けられており、このパルセーションダンパ107によって高圧燃料ポンプ1の作動時における低圧燃料配管104内の燃圧脈動が抑制されるようになっている。さらに、高圧燃料配管105には、高圧燃料ポンプ1から吐出された燃料が逆流することを阻止するための逆止弁151が設けられている。
【0037】
高圧燃料ポンプ1には、低圧燃料配管104と加圧室22との間を連通または遮断するための電磁スピル弁30が設けられている。この電磁スピル弁30は、電磁ソレノイド31を備えており、この電磁ソレノイド31への通電を制御することにより開閉動作する。
【0038】
次に、この電磁スピル弁30の開閉動作について、図2を参照しながら説明する。
【0039】
まず、電磁ソレノイド31に対する通電が停止された状態のときには、電磁スピル弁30が圧縮コイルばね37の弾性力によって開弁し、低圧燃料配管104と加圧室22とが連通した状態になる。この状態において、カム111が吸気カムシャフト110とともに回転して、プランジャ23が加圧室22の容積が増大する方向(図1ではプランジャ23が下降する方向)に移動するとき(吸入行程)には、フィードポンプ102から送り出された燃料が低圧燃料配管104を経て加圧室22内に吸入される。
【0040】
一方、カム111が吸気カムシャフト110とともに回転して、プランジャ23が、加圧室22の容積が収縮する方向(図1ではプランジャ23が上昇する方向)に移動するとき(加圧行程)において、電磁ソレノイド31への通電により電磁スピル弁30が圧縮コイルばね37の弾性力に抗して閉弁すると、低圧燃料配管104と加圧室22との間が遮断され、加圧室22内の燃料圧力が所定値に達した時点で逆止弁40が開放して、高圧の燃料が高圧燃料配管105を通じてデリバリパイプ106に向けて吐出される。
【0041】
そして、高圧燃料ポンプ1における燃料吐出量の調整は、加圧行程での電磁スピル弁30の閉弁期間を制御することによって行われる。すなわち、電磁スピル弁30の閉弁開始時期を早めて閉弁期間を長くすると燃料吐出量が増加し、電磁スピル弁30の閉弁開始時期を遅らせて閉弁期間を短くすると燃料吐出量が減少するようになる。このように、高圧燃料ポンプ1の燃料吐出量を調整することにより、デリバリパイプ106内の燃料圧力が制御される。
【0042】
ここで、高圧燃料ポンプ1の燃料吐出量(電磁スピル弁30の閉弁開始時期)を制御するための制御量であるポンプデューティDTについて説明する。このポンプデューティDTは、0〜100%という値の間で変化するものであって、電磁スピル弁30の閉弁期間に対応する吸気カムシャフト110のカム111のカム角度に関係した値である。
【0043】
具体的には、カム111のカム角度に関して、図2に示すように、電磁スピル弁30の最大閉弁期間に対応したカム角度(最大カム角度)をθ0とし、その最大閉弁期間の目標燃圧に対応するカム角度(目標カム角度)をθとすると、ポンプデューティDTは、最大カム角度θ0に対する目標カム角度θの割合(DT=θ/θ0)で表される。従ってポンプデューティDTは、目標とする電磁スピル弁30の閉弁期間(閉弁開始時期)が最大閉弁期間に近づくほど100%に近い値となり、目標とする閉弁期間が「0」に近づくほど0%に近い値となる。
【0044】
そして、ポンプデューティDTが100%に近づくほど、ポンプデューティDTに基づいて調整される電磁スピル弁30の閉弁開始時期は早められ、電磁スピル弁30の閉弁期間は長くなる。その結果、高圧燃料ポンプ1の燃料吐出量が増加して実燃圧が上昇するようになる。また、ポンプデューティDTが0%に近づくほど、ポンプデューティDTに基づいて調整される電磁スピル弁30の閉弁開始時期は遅らされ、電磁スピル弁30の閉弁期間は短くなる。その結果、高圧燃料ポンプ1の燃料吐出量が減少して実燃圧が低下するようになる。なお、上記ポンプデューティDTの算出手順の詳細についてはここでは説明を省略する。
【0045】
−高圧燃料ポンプ1の具体構成−
次に、高圧燃料ポンプ1の具体構成について、図3を参照して説明する。
【0046】
図3に例示する高圧燃料ポンプ1は、プランジャタイプのポンプであって、ハウジング10内に設けられたポンプ部20と、電磁スピル弁30と、逆止弁40とを備えている。
【0047】
ポンプ部20は、シリンダ21と、加圧室22と、プランジャ23と、リフタ51とを備えている。シリンダ21は、ハウジング10の中央部に形成され、その先端側(図3における上端側)に加圧室22が形成される。プランジャ23は、ほぼ円柱形状の部材であって、シリンダ21内にその軸線方向(ここでは上下方向)の摺動が可能に挿入されている。
【0048】
上記リフタ51は、図4にも示すように、略円筒形状のリフタ本体51aと、このリフタ本体51aの下端から下方に延びるローラ支持部51bとを備えている。このローラ支持部51bは、上記リフタ本体51aの下面における外周縁よりも内側に形成されて互いに対向する支持プレート51e,51eを備えている。
【0049】
上記リフタ本体51aの軸心方向(図3における上下方向)の中間部には隔壁部51cが一体形成されており、この隔壁部51cの上側の空間に、プランジャ23の基端部(下端部)、リテーナ26、圧縮コイルばね27等が収納されている。また、このリフタ本体51aの下部(上記隔壁部51cよりも下側の部分)の内側空間およびローラ支持部51bの内側空間はローラ53を収容するための空間として構成されており、このローラ支持部51bには、吸気カムシャフト110の軸心に対して平行に延びる軸心回りに回転自在な上記ローラ53が支持されている。そして、このローラ53の下端がカム111の外周面に当接可能となっている。このように、上記リフタ51及びローラ53によってローラリフタが構成されている。
【0050】
上記ローラ53は、例えば、多数のころを有するころ軸受けを介して、ローラ支持部51bに固定されたローラ軸53aによって回転自在に支持されている。そして、この実施形態では、カム111の外周面とローラ53の外周面との接触部(カム・ローラ接触部)P1に潤滑油を供給して、このカム・ローラ接触部P1における潤滑性を向上させるようになっている。尚、上記ローラ支持部51bに対するローラ軸53aの固定構造としては、例えば、上記ローラ支持部51bの支持プレート51e,51eに形成されているローラ軸支持孔51dにローラ軸53aが挿通され、このローラ軸53aの両端面がカシメ加工されて外周側に塑性変形されて、ローラ軸支持孔51dに対して抜け止めおよび回り止めされた状態で組み付けられている。
【0051】
上記リフタ51はリフタガイド52によって軸線に沿って(図3における上下方向に)摺動自在に支持されている。つまり、このリフタガイド52は、略円柱形状の空間を有し、この空間内にリフタ51が軸線方向へ摺動可能に収納されている。このリフタガイド52は、例えば、円筒形状に形成され、吸気カムシャフト110を支持している図示しないカムキャリアの上部に一体的に取り付けられている。
【0052】
プランジャ23の基端部にはリテーナ26が一体に装着されている。また、リフタガイド52の上部にはスプリングシート部材52aが嵌め込まれている。これらスプリングシート部材52aの下面とリテーナ26との間に圧縮コイルばね27が挟み込まれている。この圧縮コイルばね27の弾性力によって、プランジャ23を押し下げる方向(加圧室22の容積を拡大させる方向)の付勢力が付与されているとともに、ローラ支持部51bにローラ軸53aを介して支持されたローラ53がカム111に向けて押圧されている。
【0053】
ここで、カム111が吸気カムシャフト110とともに回転すると、そのカム111のカムノーズ112がローラ53およびリフタ51に対して上向きの押圧力を作用させることによって、リフタ51およびプランジャ23が上昇しながら圧縮コイルばね27を圧縮して加圧室22の容積を縮小する。一方、カムノーズ112がローラ53から外れる位置までカム111が回転すると、圧縮コイルばね27の付勢力によりリフタ51およびプランジャ23が下降させられて加圧室22の容積を拡大する。
【0054】
電磁スピル弁30は、加圧室22に対向して配置されている。この電磁スピル弁30は、電磁ソレノイド31と、ボビン32と、コア33と、アーマチャ34と、ポペット弁35と、シート体36とを備えている。電磁ソレノイド31は、ボビン32にリング状に巻装されたコイルからなり、このボビン32の中心貫通孔にコア33が嵌合固定されている。アーマチャ34は、ポペット弁35の一端に固定された状態で、その一部がコア33と同軸上でボビン32の中心貫通孔に進入可能に配置されている。コア33およびアーマチャ34の各対向面にはそれぞれ凹部が形成されており、それら凹部間には圧縮コイルばね37が圧縮状態で収納されている。そして、この圧縮コイルばね37の弾性力により、アーマチャ34が加圧室22側に向けて付勢されている。ポペット弁35は、シート体36内の貫通孔に摺動可能に挿入されている。ポペット弁35の下端部には円板状の弁体35aが形成されている。
【0055】
以上の構成において、電磁ソレノイド31の非通電時には、圧縮コイルばね37の弾性力により、弁体35aがシート体36のシート部36aから離間されて、電磁スピル弁30が開弁状態となる。一方、端子38への電力供給により電磁ソレノイド31が通電状態になると、コア33、アーマチャ34および電磁スピル弁30全体を支持する支持部材39により磁気回路が形成され、圧縮コイルばね37の弾性力に抗して、アーマチャ34がコア33側に移動する。これにより、ポペット弁35が加圧室22と反対側に移動し、その弁体35aがシート体36のシート部36aに当接して、電磁スピル弁30は閉弁状態となる(図3に示す状態)。
【0056】
一方、電磁スピル弁30が開弁状態にあるときには、シート体36に形成された複数の供給通路36bと加圧室22との間で燃料が流通可能となっている。
【0057】
供給通路36bと連通するように、ハウジング10には低圧燃料通路11が形成されている。そして、電磁スピル弁30の開弁状態で、プランジャ23が下降するとき、フィードポンプ102の作動により燃料タンク101から汲み上げられた低圧燃料が、フィルタ141、プレッシャレギュレータ142、低圧燃料通路11、および、供給通路36bを経て加圧室22に吸入されるようになっている。
【0058】
シリンダ21の先端側に形成された加圧室22は、シリンダ21の内周面よりも大径に形成されている。そして、プランジャ23は、電磁スピル弁30の閉タイミング前に加圧室22に進入し、電磁スピル弁30が閉弁した後にプランジャ23が上死点に到達するようになっている。また、プランジャ23の先端部が加圧室22内に進入した状態で、加圧室22の内周面とプランジャ23の外周面との間に隙間が形成されるようになっている。ハウジング10には高圧燃料通路12が形成されており、加圧室22がこの高圧燃料通路12を介して逆止弁40に連通するようになっている。
【0059】
逆止弁40は、高圧燃料通路12に接続されたケーシング41と、そのケーシング41内に配置されたシート体42およびスプリングベース体45と、シート体42に接離可能に対向するバルブ体(弁体)43と、このバルブ体43をシート体42に対する当接位置に向けて付勢する圧縮コイルばね44とを備えている。また、逆止弁40は高圧燃料配管105に接続されている。そして、加圧室22内から高圧燃料通路12を介して圧送される燃料の圧力が所定値を超えたとき、バルブ体43が圧縮コイルばね44の付勢力に抗してシート体42から離間する位置に移動される。これにより、逆止弁40が開弁状態になって、高圧燃料通路12から圧送される高圧燃料が高圧燃料配管105を経てデリバリパイプ106に供給されるようになっている。
【0060】
−ローラリフタの構造−
次に、本実施形態の特徴部分であるローラリフタ構造についての複数の実施形態を説明する。
【0061】
上記リフタ51は、上述した如く、上記ローラ支持部51bの支持プレート51e,51eにそれぞれ形成されたローラ軸支持孔51d,51dにローラ軸53aが挿通された状態で、このローラ軸53aの両端面部分がカシメ加工されることにより、このローラ軸53aとローラ支持部51bとが一体的に組み付けられている。また、上述した如く、ローラ軸53aは、ころ軸受け(ニードルベアリング)を介してローラ53を回転自在に支持している。
【0062】
そして、本実施形態の特徴とするところは、リフタ本体51aの構成として、上記ローラ53の軸心に沿う方向でのリフタ51の振れ許容量(リフタガイド52内での傾きの許容量)を拡大すると共にローラ53の軸心に直交する方向でのリフタ51の振れ許容量を制限するリフタ傾き許容量調整手段を備えていることにある。以下、このリフタ傾き許容量調整手段についての複数の実施形態について説明する。
【0063】
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態について説明する。図4は、本実施形態におけるリフタ51を示す斜視図である。また、図5および図6は、上記加圧行程時に、カム111からの押圧力を受けてリフタ51がリフタガイド52の内部で傾いている状態を示しており、図5はローラ53の軸心に沿った方向から見た図であり、図6はローラ53の軸心に直交する方向から見た断面図である。
【0064】
これらの図に示すように、略円筒形状に形成されているリフタ本体51aは、その上端縁部分および下端縁部分のそれぞれに面取り加工によって傾斜面54,55が形成されている。この傾斜面54,55の形状としては、上記ローラ53の軸心に沿う方向の位置(リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置)では傾斜面54,55の面積が最大とされ(面取り寸法が最大とされ)、ローラ53の軸心に直交する方向の位置(リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置)に向かうに従って傾斜面54,55の面積が次第に小さくなっている(面取り寸法が次第に小さくなっている)。そして、リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では傾斜面54,55は形成されておらず、この部分ではリフタ本体51aの上端面および下端面は水平方向に延びる平坦面56,57として形成されている。このような傾斜面54,55の形状は、リフタ本体51aの周方向の位相に応じて面取り加工の角度(傾斜面54,55の傾斜角度)を変化させることにより得られている。
【0065】
言い換えると、リフタ本体51aの外周面(円筒形状となっている部分の外周面)の高さ寸法は、上記リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では最小(図4における寸法T1)とされると共に、リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では最大(図4における寸法T2)とされ、その間は、徐々に高さ寸法が変化していく(ローラ軸心延長方向での位相位置からローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置に向かって次第に長くなっていく)ように形成されている。つまり、リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心方向の位相位置ではリフタガイド52の内周面に対する接触面の高さ寸法(嵌合長さ寸法)が最小とされると共に、リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心に直交する方向の位相位置ではリフタガイド52の内周面に対する接触面の高さ寸法(嵌合長さ寸法)が最大とされ、その間は、徐々に接触面の高さ寸法が変化していくように形成されている。これにより、本発明でいうリフタ傾き許容量調整手段が構成されている。
【0066】
このため、図5に示すように、リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心に直交する方向の位相位置(図5における左右方向の両側位置)ではリフタガイド52の内周面に対するリフタ本体51aの接触面の高さ寸法が最大(寸法T2)とされていることに起因して、リフタ51の傾きはリフタガイド52の内周面によって大きく制約されることになる。
【0067】
一方、リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心方向の位相位置(図6における左右方向の両側位置)ではリフタガイド52の内周面に対する接触面の高さ寸法が最小(寸法T1)とされていることに起因して、リフタガイド52の内周面によるリフタ51の傾きの制約は小さく、この方向では、リフタ51の傾きが大きく許容されることになる。
【0068】
このため、リフタ51が、その往復移動方向に対して略直交する方向の荷重(分力)をカム111から受けて、この荷重によってリフタ51がリフタガイド52の内部で傾く状況となった場合、図5における左右方向(リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心に直交する方向の位相位置)ではリフタ51の傾きはリフタガイド52の内周面によって大きく制約されているため、リフタ51の上端縁や下端縁がリフタガイド52の内面に片当たりする場合のその接触部分での摺動抵抗を抑制することができ、上述したリフタ51のコッキングを抑制することができる。
【0069】
一方、上記カム111の回転軸心とローラ53の回転軸心との平行度が良好に得られていない場合であっても、図6における左右方向(リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心方向の位相位置)ではリフタ51の傾きが大きく許容されているために、リフタ51はカム111の傾きに追従して傾くことができ、上述したカム111に対するローラ53の片当たりを抑制することができる。言い換えると、上記ローラリフタを構成する各部品の加工精度や組み付け精度、また、カム111の加工精度や組み付け精度に高い精度を要求することなしにカム111に対するローラ53の片当たりを抑制することが可能になり、各精度の管理を緩和することができる。
【0070】
以上のように、本実施形態によれば、リフタ51のコッキングの抑制と、カム111に対するローラ53の片当たりの抑制とを併存させることができ、リフタ51とリフタガイド52との間での異音の発生を防止でき、また、この両者間の摺動抵抗が低減できて、リフタ51の円滑な往復移動を実現することができる。また、カム111の外周面にピッチング等の損傷を招いてしまうことも回避できる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、リフタ傾き許容量調整手段の構成が上述した第1実施形態のものと異なっている。その他の構成は第1実施形態のものと同様であるので、ここではリフタ傾き許容量調整手段の構成およびその機能について主に説明する。
【0072】
図7は、本実施形態におけるリフタ51の平面図である。この図7の上下方向がローラ53の軸心に沿う方向であり、左右方向がローラ53の軸心に直交する方向である。また、図8および図9は、上記加圧行程時に、カム111からの押圧力を受けてリフタ51がリフタガイド52の内部で傾いている状態を示しており、図8はローラ53の軸心に沿った方向から見た図であり、図9はローラ53の軸心に直交する方向から見た断面図である。
【0073】
これらの図に示すように、本実施形態に係るリフタ本体51aでは、その上端部分の板厚寸法が周方向で変化していることによって、本発明でいうリフタ傾き許容量調整手段を構成している。
【0074】
具体的には、ローラ53の軸心に直交する方向位置(リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置)では、その全体に亘って均一で且つ比較的板厚が大きく設定されている(図7における寸法T3)。これに対し、上記ローラ53の軸心に沿う方向の位置(リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置)では、上端側に向かうに従って次第に板厚が小さく設定されている(上端位置での板厚寸法を図7および図9において寸法T4で示す)。また、このリフタ本体51aの上端部の板厚寸法の変化としては、ローラ53の軸心方向位置(リフタ本体51aの外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置)に向かうに従って、板厚寸法が次第に小さくなり、このリフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心方向の位相位置では、板厚が最小となっている。
【0075】
これにより、リフタ本体51aの周方向におけるローラ軸心方向の位相位置ではリフタ本体51aの剛性が最小に設定されている一方、リフタ本体51aの周方向におけるローラ軸心に直交する方向の位相位置ではリフタ本体51aの剛性が最大に設定され、その間は徐々に剛性が変化していく(ローラ軸心方向の位相位置からローラ軸心に直交する方向の位相位置に向かって剛性が次第に高くなっていく)ように形成されている。
【0076】
このため、図8に示すように、リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心に直交する方向の位相位置(図8における左右方向の両側位置)では、上記剛性が高いために、リフタ本体51aは殆ど変形せず、リフタ51の傾きはリフタガイド52の内面によって大きく規制され、ローラ53の軸心に直交する方向でのリフタガイド52に対するリフタ51の傾き許容量は制限されることになる。
【0077】
一方、リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心方向の位相位置(図9における左右方向の両側位置)では、上記剛性が低いために、リフタ本体51aが弾性変形することでリフタガイド52に対する傾きが大きくなる。
【0078】
このため、リフタ51が、その往復移動方向に対して略直交する方向の荷重(分力)をカム111から受けて、この荷重によってリフタ51がリフタガイド52の内部で傾く状況となった場合、図8における左右方向(リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心に直交する方向の位相位置)ではリフタ51の傾きはリフタガイド52の内周面によって大きく制約されているため、リフタ51の上端縁や下端縁がリフタガイド52の内面に片当たりする場合のその接触部分での摺動抵抗を抑制することができ、上述したリフタ51のコッキングを抑制することができる。
【0079】
一方、上記カム111の回転軸心とローラ53の回転軸心との平行度が良好に得られていない場合であっても、図9における左右方向(リフタ本体51aの外周面の周方向におけるローラ軸心方向の位相位置)では上記リフタ本体51aの弾性変形によってリフタ51の傾きが大きくなるために、リフタ51はカム111の傾きに追従して傾くことができ、上述したカム111に対するローラ53の片当たりを抑制することができる。
【0080】
以上のように、本実施形態によっても、リフタ51のコッキングの抑制と、カム111に対するローラ53の片当たりの抑制とを併存させることができ、リフタ51とリフタガイド52との間での異音の発生を防止でき、また、この両者間の摺動抵抗が低減できて、リフタ51の円滑な往復移動を実現することができる。また、カム111の外周面にピッチング等の損傷を招いてしまうことも回避できる。
【0081】
尚、本実施形態では、図7に示すように、リフタ本体51aの内面を傾斜面とすることで板厚を変化させるようにしていたが、図10(リフタ51の平面図)に示すように、リフタ本体51aの外面を傾斜面とすることで板厚を変化させるようにしてもよい。
【0082】
また、剛性を低く設定するための他の手段として、図11に示すように、リフタ本体51aに、スリット(切り欠き部)58を設けるようにしてもよい。具体的には、リフタ本体51aの周方向におけるローラ軸心方向の位相位置の近傍にスリット58を形成し、このリフタ本体51aの周方向におけるローラ軸心方向の位相位置での剛性を低く設定するものである。このようにして剛性を低く設定したことによる作用効果は上述したものと同様にして得られる。
【0083】
−他の実施形態−
以上、本発明の実施形態について説明したが、ここに示した実施形態は一例であり、さまざまに変形することが可能である。
【0084】
上記各実施形態では、吸気カムシャフト110に取り付けられたカム111の回転によってリフタ51が往復動される構成としたが、排気カムシャフトに取り付けられたカムの回転によってリフタ51を往復動させる構成としてもよい。
【0085】
また、上記各実施形態では、3つのカムノーズ112,112,112を有するカム111によりリフタ51が往復動される構成としたが、その他の個数のカムノーズ(例えば、2つのカムノーズ)を有するカムによってリフタ51を往復動させる構成としてもよい。
【0086】
更に、上記各実施形態では、自動車に搭載される筒内直噴型6気筒ガソリンエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限られることなく、例えば、筒内直噴型4気筒ガソリンエンジンなどの他の任意の気筒数のガソリンエンジンに適用可能である。また、ガソリンエンジンに限らず、ディーゼルエンジン等の他の内燃機関にも本発明は適用可能である。さらに、本発明が適用可能なエンジンは、自動車用のエンジンに限るものでもない。
【0087】
また、上記各実施形態では、リフタ本体51aにリフタ傾き許容量調整手段を備えさせるようにしていた。本発明はこれに限らず、リフタガイド52にリフタ傾き許容量調整手段を備えさせるようにしてもよい。例えば、リフタ本体51aを円筒形状としておく一方、リフタガイド52の内部空間を平面視楕円形状または平面視長円形状に形成するものである。具体的には、ローラ軸心に沿う方向の長さ寸法がローラ軸心に直交する方向の長さ寸法よりも僅かに長く設定された楕円形状や長円形状とする。これによれば、リフタ本体51aの周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では、リフタガイド52の内面との間のガイドクリアランスが大きく得られ、ローラ53の軸心に沿う方向でのリフタガイド52に対するリフタ51の傾き許容量を拡大することができる。
【0088】
また、上記各実施形態では、高圧燃料ポンプのローラリフタに本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、その他の機器(例えばエンジンの動弁系等)に適用されるローラリフタにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】実施形態に係る燃料供給装置を模式的に示す図である。
【図2】電磁スピル弁の開閉動作を説明するための図である。
【図3】高圧燃料ポンプを示す縦断面図である。
【図4】第1実施形態におけるリフタを示す斜視図である。
【図5】第1実施形態においてリフタがリフタガイドの内部で傾いている状態をローラの軸心に沿った方向から見た図である。
【図6】第1実施形態においてリフタがリフタガイドの内部で傾いている状態をローラの軸心に直交する方向から見た断面図である。
【図7】第2実施形態におけるリフタの平面図である。
【図8】第2実施形態においてリフタがリフタガイドの内部で傾いている状態をローラの軸心に沿った方向から見た図である。
【図9】第2実施形態においてリフタがリフタガイドの内部で傾いている状態をローラの軸心に直交する方向から見た断面図である。
【図10】第2実施形態の第1の変形例におけるリフタの平面図である。
【図11】第2実施形態の第2の変形例におけるリフタの平面図である。
【図12】従来例においてリフタがリフタガイドの内部で傾いている状態をローラの軸心に沿った方向から見た図である。
【図13】従来例においてリフタがリフタガイドの内部で傾いている状態をローラの軸心に直交する方向から見た断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 高圧燃料ポンプ
51 リフタ
51a リフタ本体
52 リフタガイド
53 ローラ
54,55 傾斜面
58 スリット
111 カム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムの外周面に接触してカムからの押圧力を受けるローラと、このローラを回転自在に支持すると共にリフタガイドの内部空間に往復移動自在に収容されたリフタとを備えたローラリフタ構造において、
上記ローラの軸心に沿う方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量を拡大すると共にローラの軸心に直交する方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量を制限するリフタ傾き許容量調整手段を備えていることを特徴とするローラリフタ構造。
【請求項2】
上記請求項1記載のローラリフタ構造において、
上記リフタは、略筒状に形成されたリフタ本体を備えており、
上記リフタ傾き許容量調整手段は、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では、リフタガイドの内面に接触する部分の上記往復移動方向での嵌合長さ寸法が短く設定されている一方、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では、リフタガイドの内面に接触する部分の上記往復移動方向での嵌合長さ寸法が長く設定されていることを特徴とするローラリフタ構造。
【請求項3】
上記請求項2記載のローラリフタ構造において、
上記リフタ傾き許容量調整手段は、上記嵌合長さが、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置からリフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置に向けて次第に長く設定されていることを特徴とするローラリフタ構造。
【請求項4】
上記請求項2または3記載のローラリフタ構造において、
上記リフタ傾き許容量調整手段は、リフタ本体の軸心方向の両端の外周縁部が面取り加工されることにより構成されており、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では面取り寸法が大きく設定されている一方、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では面取り寸法が小さく設定されていることを特徴とするローラリフタ構造。
【請求項5】
上記請求項1記載のローラリフタ構造において、
上記リフタは、略筒状に形成されたリフタ本体を備えており、
上記リフタ傾き許容量調整手段は、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置ではリフタ本体の剛性が低く設定されている一方、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置ではリフタ本体の剛性が高く設定されていることを特徴とするローラリフタ構造。
【請求項6】
上記請求項5記載のローラリフタ構造において、
上記リフタ傾き許容量調整手段は、リフタ本体の板厚寸法を周方向で異ならせることにより構成されており、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では板厚寸法が短く設定されている一方、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では板厚寸法が長く設定されていることを特徴とするローラリフタ構造。
【請求項7】
上記請求項5記載のローラリフタ構造において、
上記リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置またはその近傍位置に切り欠き部が形成されていることにより、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置ではリフタ本体の剛性が低く設定されていることを特徴とするローラリフタ構造。
【請求項1】
カムの外周面に接触してカムからの押圧力を受けるローラと、このローラを回転自在に支持すると共にリフタガイドの内部空間に往復移動自在に収容されたリフタとを備えたローラリフタ構造において、
上記ローラの軸心に沿う方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量を拡大すると共にローラの軸心に直交する方向でのリフタガイドに対するリフタの傾き許容量を制限するリフタ傾き許容量調整手段を備えていることを特徴とするローラリフタ構造。
【請求項2】
上記請求項1記載のローラリフタ構造において、
上記リフタは、略筒状に形成されたリフタ本体を備えており、
上記リフタ傾き許容量調整手段は、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では、リフタガイドの内面に接触する部分の上記往復移動方向での嵌合長さ寸法が短く設定されている一方、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では、リフタガイドの内面に接触する部分の上記往復移動方向での嵌合長さ寸法が長く設定されていることを特徴とするローラリフタ構造。
【請求項3】
上記請求項2記載のローラリフタ構造において、
上記リフタ傾き許容量調整手段は、上記嵌合長さが、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置からリフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置に向けて次第に長く設定されていることを特徴とするローラリフタ構造。
【請求項4】
上記請求項2または3記載のローラリフタ構造において、
上記リフタ傾き許容量調整手段は、リフタ本体の軸心方向の両端の外周縁部が面取り加工されることにより構成されており、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では面取り寸法が大きく設定されている一方、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では面取り寸法が小さく設定されていることを特徴とするローラリフタ構造。
【請求項5】
上記請求項1記載のローラリフタ構造において、
上記リフタは、略筒状に形成されたリフタ本体を備えており、
上記リフタ傾き許容量調整手段は、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置ではリフタ本体の剛性が低く設定されている一方、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置ではリフタ本体の剛性が高く設定されていることを特徴とするローラリフタ構造。
【請求項6】
上記請求項5記載のローラリフタ構造において、
上記リフタ傾き許容量調整手段は、リフタ本体の板厚寸法を周方向で異ならせることにより構成されており、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置では板厚寸法が短く設定されている一方、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向に直交する方向での位相位置では板厚寸法が長く設定されていることを特徴とするローラリフタ構造。
【請求項7】
上記請求項5記載のローラリフタ構造において、
上記リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置またはその近傍位置に切り欠き部が形成されていることにより、リフタ本体の外周面の周方向位相におけるローラ軸心延長方向での位相位置ではリフタ本体の剛性が低く設定されていることを特徴とするローラリフタ構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−257451(P2009−257451A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106542(P2008−106542)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]