説明

ローラ

【課題】案内ローラとカム面の間にガタが無く、ローラ軸に対して相対回転するローラ外筒が軸方向に円滑に往復運動するローラを提供する。
【解決手段】ローラ軸1と、ローラ軸1を中心として回転自在かつ軸方向に移動自在に支持されるローラ外筒2とを有し、ローラ外筒2の内周に周方向に連続する第1カム面10と第2カム面11とを形成し、第1カム面10と第2カム面11とにそれぞれ転がり接触する第1案内ローラ12と第2案内ローラ13とをローラ軸1に設け、ローラ軸1に対するローラ外筒2の相対回転によりローラ外筒2を軸方向に往復運動させるローラにおいて、第1カム面10を第2カム面11に対して軸方向に位置調整可能とし、第1カム面10を調整位置で固定するロック手段8を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ローラ外筒が回転しながら軸方向に往復運動するローラに関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷においては版の非画線部に水を付着させ、その水がインクをはじく性質を利用して版の非画線部にインクが付着するのを防止する。版の非画線部への水の付着は、非画線部が親水性となるように版を形成し、図5に示すように版胴21に取り付けた版22へ水着けローラ23を接触させ、この接触によって水着けローラ23の表面の水膜を版の非画線部に移すことにより行なう。
【0003】
この水着けローラ23の表面の水膜の厚さは均一であるほうが好ましく、その水膜の厚さは、ローラ外筒が回転しながら軸方向に往復運動するライダーローラ24を水着けローラ23に接触させることにより均一化することができる。また、水着けローラ23に水を供給するローラ25のローラ外筒を軸方向に往復運動させることによっても均一化することができる。
【0004】
このようにローラ外筒が回転しながら軸方向に往復運動するローラとして、従来、ローラ外筒の内周に周方向に連続するカム溝を形成し、そのカム溝のカム面に転がり接触する案内ローラをローラ軸に1個取り付けたものが提案されている(特許文献1)。しかし、このローラは、往動過程から復動過程に移る際に案内ローラの回転方向が急激に変化するので、案内ローラおよびカム面が摩耗しやすく、円滑に往復運動しにくい。
【0005】
また、同様のローラとして、ローラ外筒の内周に周方向に連続するカム突条を形成し、そのカム突条を両側から挟んでカム面と転がり接触する1対の案内ローラをローラ軸に取り付けたものが提案されている(特許文献2)。しかし、このローラは、案内ローラをローラ軸にねじ止めしているので、加工誤差や組立て誤差、あるいは接触部の摩耗などによって案内ローラとカム面との間にガタが生じるとそのガタを取り除くことができず、ローラ外筒を円滑に往復運動させることができない。
【0006】
【特許文献1】特開平4−22640号公報
【特許文献2】特開平7−47663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、案内ローラとカム面の間にガタが無く、ローラ軸に対して相対回転するローラ外筒が軸方向に円滑に往復運動するローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、ローラ軸と、そのローラ軸を中心として回転自在かつ軸方向に移動自在に支持されるローラ外筒とを有し、そのローラ外筒の内周に周方向に連続するカム面を形成し、そのカム面に転がり接触する案内ローラを前記ローラ軸に設け、前記ローラ軸に対して相対回転する前記ローラ外筒が前記案内ローラと前記カム面との接触により軸方向に往復運動するローラにおいて、前記カム面が軸方向に間隔をおいて対向配置された1対のカム面からなり、一方の前記カム面を他方の前記カム面に対して軸方向に位置調整可能とし、位置調整可能な前記カム面を調整位置で固定するロック手段を設け、前記案内ローラを、一方の前記カム面と転がり接触する第1案内ローラと他方の前記カム面と転がり接触する第2案内ローラとで構成した。
【発明の効果】
【0009】
互いに向き合うカム面の一方と他方とに別個の案内ローラが転がり接触するので、往動過程から復動過程に移る際に案内ローラの回転方向が変化せず、案内ローラおよびカム面が摩耗しにくい。また、一方のカム面を他方のカム面に対して軸方向に位置調整することができるので、第1案内ローラとカム面の隙間および第2案内ローラとカム面の隙間を共に小さくして案内ローラとカム面の間のガタを無くすことができ、ローラ外筒の軸方向の往復運動を円滑にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1にこの発明のローラの実施形態を示す。このローラは、ローラ軸1とローラ軸1の外側に設けられたローラ外筒2とを有する。ローラ外筒2は、ニードルベアリング3を介してローラ軸1に支持されており、ローラ軸1を中心として回転自在かつ軸方向に移動自在となっている。
【0011】
ローラ外筒2の端部内にはカムユニット4が組み込まれており、このカムユニット4は図2に示すように、ローラ外筒2に嵌合する円筒状のカムホルダ5と、カムホルダ5の一端部内に一端が挿入された第1カム体6と、カムホルダ5の他端部内に組み込まれた第2カム体7とからなる。第1カム体6は、図2および図3に示すように、カムホルダ5の外周からねじ込まれるロックボルト8の締め付けによりカムホルダ5に固定されている。このロックボルト8とカムホルダ5に形成されたボルト用孔5aとの間には遊びが設けられており、その遊びの範囲内において第1カム体6を軸方向に位置調整できるようになっている。一方、第2カム体7は、カムホルダ5の外周からねじ込まれる皿ボルト9の締め付けによりカムホルダ5に固定されている。
【0012】
第1カム体6のカムホルダ5の他端から外部に臨む他端部外周にはおねじ6aが形成されており、そのおねじ6aとローラ外筒2の端部内周に形成されためねじ2aとのねじ係合によってローラ外筒2にカムユニット4が固定されている。
【0013】
第1カム体6および第2カム体7には、軸方向に向き合う第1カム面10と第2カム面11とがそれぞれ形成されており、この第1カム面10および第2カム面11と転がり接触する第1案内ローラ12および第2案内ローラ13が、図2および図4に示すようにローラ軸1に取り付けられている。この第1カム面10および第2カム面11は、軸方向に変位しながら周方向に連続するように形成されており、ローラ軸1に対して相対回転するローラ外筒2を、第1案内ローラ12および第2案内ローラ13との転がり接触により、軸方向に往復運動させる。
【0014】
カム面10、11と案内ローラ12、13の間のガタは、たとえば次のようにして無くすことができる。まず、ローラ外筒のめねじ2aを第1カム体のおねじ6aから外してロックボルト8を操作できる状態にし、つぎにロックボルト8を緩めて第1カム体6を軸方向に位置調整できるようにする。つづいて第1カム体6の位置を調整して、第1カム面10を第2カム面11に対して軸方向に位置調整し、第1カム面10と第1案内ローラ12の隙間および第2カム面11と第2案内ローラ13の隙間を共に小さくする。その後、ロックボルト8を締め付けて第1カム面10の位置を固定し、さらに、めねじ2aにおねじ6aをねじ込んでカムユニット4をローラ外筒2に固定する。このようにして、カム面10、11と案内ローラ12、13の間のガタを無くすことができる。
【0015】
このローラは、第1カム面10と第2カム面11とに、それぞれ別個の第1案内ローラ12と第2案内ローラ13とが転がり接触するので、往動過程から復動過程に移る際に第1案内ローラ12および第2案内ローラ13の回転方向が変化せず、案内ローラ12、13およびカム面10、11が摩耗しにくい。また、第1カム面10を第2カム面11に対して軸方向に位置調整することにより、第1カム面10と第1案内ローラ12の隙間および第2カム面11と第2案内ローラ13の隙間を共に小さくすることができ、案内ローラとカム面の間のガタを無くすことができる。そのため、ローラ軸1に対して相対回転するローラ外筒2が軸方向に円滑に往復運動する。
【0016】
このローラは、たとえば図5に示す平版印刷機の湿し装置における、水着けローラ23と接触してその表面の水膜の厚さを均一にするライダーローラ24として使用することができる。
【0017】
具体的には、まず、ローラ外筒2を水着けローラ23の表面に転がり接触させ、この接触によりローラ外筒2を水着けローラ23に連動して回転させる。さらに、ローラ軸1を図1に示すように回転自在に支持し、このローラ軸1に固定されたギア14を水着けローラ23に固定されたギアと連結して、ローラ軸1も水着けローラ23に連動して回転させる。このときローラ軸1の回転角速度がローラ外筒2の回転角速度よりも遅くなるようにギア比を設定すると、ローラ軸1とローラ外筒2との間に回転角速度差が生じてローラ外筒2が軸方向に往復運動し、しかもローラ外筒2の往復周期はその回転周期よりもゆっくりとしたものとなる。たとえば、ローラ軸1がローラ外筒2の80パーセントの回転角速度で回転するようにすると、ローラ外筒2は5回転するごとに軸方向を1往復する。
【0018】
このように、上記実施形態のローラをライダーローラ24として用いると、ローラ外筒2が円滑に往復運動して水着けローラ23の表面の水膜をより確実に均一化するので、印刷の信頼性が向上する。また、ローラ外筒2の往復周期が長いので、水着けローラ23の周速が大きい場合でも、ローラ外筒2の往復運動による水の飛散が生じにくい。
【0019】
その他、このローラは、水着けローラ23に水を供給するローラ25や、平版印刷機のインク着けローラと接触してその表面のインクの厚さを均一にするローラなど、ローラ軸に対して相対回転するローラ外筒が軸方向に往復運動する種々のローラに使用することができる。
【0020】
第1カム面10の第2カム面11に対する軸方向位置の調整は、ロックボルト8を通すボルト用孔5aを軸方向にのびる長穴となして行なってもよく、カムホルダ5に対する第2カム体7の位置を調整可能となして行なってもよく、第1カム面10の第2カム面11に対する軸方向位置を調整できれば他の構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施形態のローラの全体図
【図2】同上のローラのカム機構部の拡大図
【図3】図2のA−A線に沿った断面図
【図4】図2のB−B線に沿った断面図
【図5】平版印刷機の湿し装置の一例を示す図
【符号の説明】
【0022】
1 ローラ軸
2 ローラ外筒
3 ニードルベアリング
5a ボルト用孔
8 ロックボルト
10 第1カム面
11 第2カム面
12 第1案内ローラ
13 第2案内ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラ軸と、そのローラ軸を中心として回転自在かつ軸方向に移動自在に支持されるローラ外筒とを有し、そのローラ外筒の内周に周方向に連続するカム面を形成し、そのカム面に転がり接触する案内ローラを前記ローラ軸に設け、前記ローラ軸に対して相対回転する前記ローラ外筒が前記案内ローラと前記カム面との接触により軸方向に往復運動するローラにおいて、前記カム面が軸方向に間隔をおいて対向配置された1対のカム面からなり、一方の前記カム面を他方の前記カム面に対して軸方向に位置調整可能とし、位置調整可能な前記カム面を調整位置で固定するロック手段を設け、前記案内ローラを、一方の前記カム面と転がり接触する第1案内ローラと他方の前記カム面と転がり接触する第2案内ローラとで構成したことを特徴とするローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−170252(P2006−170252A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360243(P2004−360243)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000156215)ハマダ印刷機械株式会社 (18)
【Fターム(参考)】