説明

ロール、ロールリング、及びこのようなロールの製造における方法

【課題】本発明は、ロールの複合的なロールリングが、利用可能なロール幅の大きな部分を占めることのないエレメントによってロールシャフトに対して回転可能に取り付けられることができるようなロール、ロールリング、及びこのようなロールの製造における方法に関する。
【解決手段】一方で、間隔を置かれた2つのストップリング(2,3)を有するシャフト(1)を備え、他方で、ストップリングの間に配置された多数のロールリング(4)を備え、ロールリングが個々に硬質金属の外側リング(6)と、冶金学的に外側リングに永久に結合されかつ、外側リングの端部から軸方向に所定の距離だけ突出したフランジ(12)を有するより延性の金属からなる同心的な内側リング(7)とから成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様において、本発明は、一方で、軸方向で間隔を置いた2つのストップリングを有する駆動シャフト又はロールシャフトを備え、ストップリングの一方が固定されており、他方がロックナットであり、他方で、固定されたストップリングとロックナットとの間に配置された多数のロールリングを備え、これらのロールリングが個々に硬質金属の外側リングと、冶金学的に外側リングに永久に結合された、より延性の金属の同心的な内側リングとから成っており、内側リングが、外側リングの端部から軸方向に所定の距離だけ突出した部分を有するタイプのロールに関する。
【0002】
当業者によってコンビロールと呼ばれる、概して上述されたタイプのロールは、実際にはワイヤ、バー、パイプ等の金属の細長い製品の高温又は低温圧延のために使用される。この目的のために、この場合には複合ロールリングと呼ばれるロールリングに多数の周方向の溝が形成され、これらの溝は所望の順序で製品を形成する。溝の数は1つだけから複数まで変化してよい。ロールの能力は、与えられたロール幅内にどれだけ多くのロールリングが取り付けられることができるかによって決定され、例えばこれは固定されたストップリングとロックナットとの間の距離によって決定される。
【背景技術】
【0003】
このようなロールの長続きする良好な機能のための重要な要因は、ロールリングが信頼できる形式で回転可能に取り付けられているということである。なぜならば、極端に大きなトルクが、互いに対し、及びシャフトに対するリングのスリップなしに、駆動シャフトからロールリングに伝達されなければならないからである。問題となっている技術において、相対的に脆性を有する超硬合金から製造され、ひいては圧縮強さ及び耐摩耗性に関して良好な特性を有するが、引っ張り強度が劣るこのようなロールリングを回転可能に取り付けるという問題のソリューションのための種々異なる提案がなされてきた(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5を参照)。しかしながら、以前から知られたロールにとって一般的なことは、ロールリングを回転可能に取り付けるという目的を有するエレメント(例えば、くさび、ばね、液圧式装置)は全て、ロール幅のある部分、すなわちシャフトの固定されたストップリングとロックナットとの間の利用可能な軸方向空間、を占める。
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,280,147号明細書
【特許文献2】米国特許第5,248,289号明細書
【特許文献3】米国特許第5,558,610号明細書
【特許文献4】米国特許第5,735,788号明細書
【特許文献5】米国特許第6,685,611号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来公知のロールの前記欠点を排除し、改良された能力を有するロールを提供することを目的とする。したがって、第1の態様において、本発明の主な目的は、ロールの複合的なロールリングが、利用可能なロール幅の大きな部分を占めることのないエレメントによってロールシャフトに対して回転可能に取り付けられることができるようなロールを提供することである。別の目的は、容易に製造されるロールを提供することであり、同時にロールは実用的な形式で矯正することが可能であるべきである。さらに、発明の目的は、ロールのロールリングが、少なくとも従来公知のロールの場合と同様に強くかつ信頼できるものであるように、駆動シャフトに対してしっかりと取り付けられるようなロールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、少なくとも主な目的は請求項1の特徴部に定義された特徴によって達成される。本発明によるロールの好適な実施形態はさらに従属請求項2〜6に定義されている。
【0007】
第2の態様において、本発明はロールリングに関する。このロールリングの決定的な特徴は、独立請求項7に定義されている。本発明によるロールリングの好適な実施形態はさらに従属請求項8及び9に定義されている。
【0008】
第3の態様において、本発明は、本発明によるロールの製造のための方法にも関する。この方法を特徴付けるものは、独立請求項10に示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に部分的に示されたロールは、回転対称的な基本形状を有する中央の駆動可能なシャフト又はロールシャフト1を有する。軸方向で間隔をおいた2つのストップリング2,3の間には、多数の(この場合には3つの)個々のロールリング4が複合ロールリングの形式で配置されている。複合ロールリング4も回転対称的な基本形状を有しており、ストップリング2,3の間に延びたシャフト1の円筒状周面の外径よりも僅かに大きな内径が設けられている。したがって、ロールリング4は精密なはめあいでシャフトに取り付けられることができる。
【0010】
ストップリング2はシャフト1に固定されているのに対し、ストップリング3はロックナットである。実施例の場合、固定されたストップリング2は、軸方向に移動することができないようにシャフトに結合された別個の部材である。しかしながら、固定されたストップリング2は、シャフトの他の部分と一体化された管状の肩部であってもよく、この肩部は、シャフトの切削加工によって形成される。第2のストップリング2はロックナットであり、すなわち、リングは、シャフトにおける雄ねじ山と係合する雌ねじ山(図示せず)を有する。さらに、ロックナットは、ロッキングねじ5等によって固定されることもできる。
【0011】
図2及び図3は個々のロールリング4の構造をより詳細に示している。前記ロールリングは、中心軸線Cに関して対称的な基本形状を有する。この中心軸線Cを中心としてロールリングは回転可能であり、中心軸線はシャフト1の回転軸線Cと一致する(図1参照)。ロールリング4において、硬質金属の外側リング6と、冶金学的に外側リングに永久に結合された、より延性の金属からなる同心的な内側リング7とが設けられている。実際には、外側リングは、プレス加工及び焼結による慣用の超硬合金インサートの製造のために使用されるような粉体コンポーネント(例えば、バインダとしてのコバルトを含むタングステンカーバイド)から製造されてもよい。内側リング7において、ノジュラー鋳鉄若しくは鋳鉄が使用されることもある。硬質の外側リング6の周面8に、多数の周方向の溝9が形成されており、これらの溝において高温金属が圧延される。
【0012】
図2に明らかに示されるように、より延性の内側リング7は、外側リング6よりも僅かに幅広であり、外側リングの2つの向き合った端面10,11から僅かに突出している。この実施例では、突出した部分は符号12,13で示されており、厚さの異なるフランジとして形成されている。より正確には、フランジ12はフランジ13よりも著しく厚い。厚いフランジ12は、一方で、回転軸線Cに対して垂直に延びた平坦な環状の端面14によって、他方では、外側円筒面15と、内側リングの内面全体の一部である内側円筒面16とによって規定されている。同様に、薄いフランジ13は、平坦な環状の端面17と、外側円筒面18とによって形成されている。したがって、個々のフランジ12,13は、一方で外側リング6の内径よりも大きく、他方で外側リングの外径よりも小さな外径を有しており、外側リングの端面10,11は部分的にフランジに埋め込まれており、冶金学的にこれらのフランジに、外側リングの内側と内側リングの外側との間の円筒状の境界面におけるのと同様に接合されている。
【0013】
これまで示されたロール及びロールリングが説明されてきたが、同じものは、従来知られた全ての本質にある。
【0014】
本発明によるロールの新規性及び特性は、個々のロールリング4が、1つ又は2つ以上のロッキングピン19によってシャフト1にしっかりと結合されるということであり、このロッキングピンは、内側リング7のフランジのうちの1つ、すなわちフランジ12に設けられた貫通孔20に挿入され、シャフト1の周面に開口しておりかつシャフトボディ内へ所定の距離だけ延びた孔若しくはシート21に係合する。図3に示されたように、この場合、個々のロールリングは6つのこのような貫通孔20を有しており、これらの貫通孔はリングの円周に沿って等しく間隔を置かれている。最も好適には、必ずというわけではないが、孔と、付属のロッキングピンとは半径方向に向けられ、孔の中心軸線A(図2参照)は回転軸線Cに対して垂直に延びている。これに関して、隣り合う孔の間の角度αは等しい大きさである。より正確には、実施例における角度αは60°である。
【0015】
孔及びロッキングピンの断面形状は発明の実施にとって重要ではないが、実用上、回転対称的な、好適には円筒の形状を有するものを形成することが好適である。円筒形のボア22は、ピンボディの内部に中央に適切に形成されており、このボアの直径はロッキングピンの外径よりも著しく小さい。このボアに、工具、例えばねじが挿入されることができ、ロールリングをシャフトから取り外したい場合にはこの工具によってロッキングピンが孔20,21から引き出されることができる。
【0016】
ロッキングピン19と孔20,21とのはめあいは精密であるべきである。より正確には、孔の内径はロッキングピンの外径よりも最大でも0.03mm大きいべきである。図1に示されたように、ロッキングピン19の全長のより小さな部分だけがシャフトにおける孔若しくはシート21に収容されるのに対し、ピンのより大きな部分がフランジ12における孔20に収容される。実際には、ロッキングピンの長さの最大でも1/3がシャフト孔21に収容されるべきである。
【0017】
前記ロールの製造又は組立ては以下のように行われる。
【0018】
一工程において、シャフト1は切削加工され、固定されるストップリング2とロックナット3とが装備される。別の工程において、複合的なロールリング4が、例えば米国特許第5,248,289号明細書に開示された一般的な方法において製造される。しかしながら、この特許文書に開示されたロールリングとは対照的に、本発明によるロールリングには、フランジ12を貫通した半径方向の孔20が形成されている。最も適切には、これは、ドリル穿孔によって、ただし孔が最終的な直径を与えられることなく行われる。言い換えれば、孔は、ある程度の残りの切削猶予を持ってドリル穿孔される。次の工程において、ロールリング4はシャフト1に取り付けられ、次いでロックナット3が締結され、ロールリング4は、互いに対して及び固定されたストップリング2に対して密着するように押し付けられる。これが行われると、フランジ12における各孔20は、適切なシャフトにおける孔若しくはシート21が穿孔されるのと同時に穿孔される。言い換えれば、(実質的にロッキングピンと同じ直径を有する)1つの同じドリルが、シャフトを貫通するほど深く挿入される。最後に、ロッキングピン19が付属の孔に提供され、ロールが回転するときに投げ出されないように適切な形式で孔に固定される。ロッキングピンの保持は、例えば、ピンと孔との間の接触面における接着剤層によって提供されることもできる。この状態において、隣り合うロールリングの間の境界面における(ロックキー等の)いかなる軸方向に突出した連結エレメントの助けなしに、ロールリングはシャフトにしっかりと結合されている。したがって、ロールリングの平坦な端面は互いに密接し、回転可能な固定は、ロールリングの2つの端面の間の空間に収容されたエレメント、すなわちロッキングピンによって保証される。
【0019】
本発明によるロールの実質的な利点は、ロールリングと、ロールリングに関連した溝との数が、あらゆる与えられたロール幅のために最適化されることができるということである。図1に示されたロールのタイプでは、従来は、それぞれが3つの溝を有する2つのロールリングしか取り付けることができなかった、すなわちロールは6つの溝を有していた。ロールリングの本発明のロッキングによれば、今や、それぞれが3つの溝を有する3つのロールリングが取り付けられることができる。言い換えれば、有効なロール溝の数が50%増加される。
【0020】
(発明の実行可能な変更)
本発明は、上に説明されかつ図面に示された実施形態に限定されない。したがって、ロールリングの内側リングの突出した部分は内側リングの他の部分と同じ外径を有することができ、すなわち突出した部分は外側リングの端面は部分的にさえ埋め込まれない。さらに、内側リングは、その向き合った端部において、いかなる突出した部分なしに形成されることができる。言い換えれば、内側リング7の一方の端部は、外側リングの端面と同じ平面において終わっていることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるロールの、部分的に切り取られた側面図である。
【図2】ロールに設けられた1つの個々のロールリングのみの拡大した縦断面図である。
【図3】図2によるロールリングの、部分的に切り取られた端面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 シャフト
2,3 ストップリング
4 ロールリング
5 ロッキングねじ
6 外側リング
7 内側リング
8 周面
9 溝
10,11 端面
12,13 突出した部分
14 端面
16 内側円筒面
18 外側円筒面
19 ロッキングピン
20 貫通孔
21 孔若しくはシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方で、軸方向で間隔を置かれた2つのストップリング(2,3)を有する駆動可能なシャフト(1)を備え、前記ストップリングのうちの一方(2)が固定されており、他方がロックナット(3)であり、他方で、固定された前記ストップリングと前記ロックナットとの間に配置された多数のロールリング(4)を備え、該ロールリングが、個々に硬質金属からなる外側リング(6)と、冶金学的に前記外側リングに永久に結合されかつ、前記外側リング(6)の端部(10)から軸方向に所定の距離だけ突出した部分(12)を有する、より延性の金属からなる同心的な内側リング(7)とから成る、ロールにおいて、
個々の前記ロールリング(4)が、前記内側リングの突出した部分(12)に設けられた貫通した孔(20)に挿入され、かつ、前記シャフト(1)に設けられた孔(21)に係合する1つ又は2つ以上のロッキングピン(19)によって前記シャフト(1)にしっかりと結合されていることを特徴とする、ロール。
【請求項2】
前記シャフト(1)及び個々の前記ロールリング(4)が、軸線(C)に関して回転対称的な基本形状を有しており、前記軸線(C)を中心にしてロールが回転可能であり、個々の前記ロッキングピン(19)が半径方向に向けられており、幾何学的な前記シャフト(C)に対して垂直な中心軸線(A)を有することを特徴とする、請求項1記載のロール。
【請求項3】
個々の前記ロールリング(4)が、等距離及び等角度で間隔を置かれた複数の前記ロッキングピン(19)によって前記シャフト(1)に固定されていることを特徴とする、請求項1又は2記載のロール。
【請求項4】
個々の前記ロッキングピン(19)のみならず、前記シャフト(1)及び前記内側リング(7)の突出した部分(12)における孔(21,20)もまた回転対称的な形状を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のロール。
【請求項5】
前記回転対称的な形状が円筒形であり、前記孔(20,21)の内径が前記ロッキングピン(19)の外径よりも最大でも0.03mmだけ大きいことを特徴とする、請求項4記載のロール。
【請求項6】
前記シャフトに沿って隣接する前記ロールリング(4)が、平坦な環状の端面(13,14)の形式の接触面を介して互いに対して密接して押し付けられており、前記端面が、突出部及び/又はさら穴を欠くように連続していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のロール。
【請求項7】
硬質金属から成る外側リング(6)と、冶金学的に外側リングに永久に結合された、より延性の金属からなる同心的な内側リング(7)とを備え、内側リング(7)の少なくとも1つの部分(12)が外側リング(6)の端部(10)から軸方向に所定の距離だけ突出している、ロールリングにおいて、
前記内側リングの突出した部分(12)において、該部分の外側(15)と内側(16)との間に連続的に延びた1つ又は2つ以上の孔(20)が形成されていることを特徴とする、ロールリング。
【請求項8】
前記内側リング(7)の前記突出した部分(12)において、等距離及び等角度で間隔を置かれた複数の孔(20)が形成されていることを特徴とする、請求項7記載のロールリング。
【請求項9】
前記内側リング(7)の前記突出した部分若しくはフランジ(12)が、平坦な環状の端面(14)によって形成されており、該端面が、突出部及び/又はさら穴を欠くように間断がないことを特徴とする、請求項7又は8記載のロールリング。
【請求項10】
軸方向で間隔を置かれた2つのストップリング(2,3)を有するシャフト(1)を備え、前記ストップリングのうちの一方(2)が固定されており、他方がロックナット(3)であり、固定された前記ストップリングと前記ロックナットとの間に配置された多数のロールリング(4)を備え、該ロールリングが、個々に硬質金属から成る外側リング(6)と、冶金学的に外側リングに永久に結合されかつ、外側リング(6)の端部(10)から軸方向に所定の距離だけ突出した部分(12)を有する、より延性の金属からなる同心的な内側リング(7)とから成るタイプのロールを製造する方法において、
前記内側リング(7)の突出した部分(12)に1つ又は2つ以上の貫通した孔(20)を備えた個々の前記ロールリング(4)を形成し、該ロールリングを1つ又は2つ以上の他の前記ロールリングと共に前記シャフト(1)に取り付け、前記ロールリングを互いに対して押し付けるために前記ロックナット(3)を締め付け、前記ロールリングの前記内側リングにおける孔(20)の延長において前記シャフト(1)に孔(21)を穿孔し、ロッキングピン(19)を前記孔(20,21)に取り付ける工程を特徴とする、ロールを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−349185(P2006−349185A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169026(P2006−169026)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(505277521)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (284)
【Fターム(参考)】