説明

ロールオーバ保護装置

【課題】 屋根を開いた状態で横転しても、エアバッグを展開することによって、乗員をより確実に保護し、車内へものが侵入するのを防ぎ、乗員の保護性能を高める。
【解決手段】 ロールオーバ保護装置11では、車両の横転時に車体を支持するロールオーバ保護部材51,51と、フロントウインドガラス35の近傍(ルーフフロントレール34)に配置した第1緩衝部材(第1エアバッグ本体)88,91と、ロールオーバ保護部材に配置した第2緩衝部材(第2エアバッグ本体)82,83と、車両状態検出手段の情報に基づいて第1緩衝部材の展開を制御する第1制御手段と、第2緩衝部材の展開を制御する第2制御手段と、を備える。また、第3前・後エアバッグ本体)94,95,101,102及び第3制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の屋根が開閉するもので、横転時など乗員を保護する必要があるときにエアバッグを作動させるロールオーバ保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロールオーバ保護装置は、車両が横転したときに、主に地面に対する衝撃を緩和するもので、乗員の頭部の上方に配置したパイプ部材などの支持部材(ロールバー)で車体を支持し、乗員を保護する。支持部材には、固定式と可動式がある。
可動式では、必要なときに、乗員の頭部上方まで支持部材を引き出す技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】独国特許発明第19838989号明細書
【0003】
ロールバーは、自動車が横転したときに乗員と地面との間に空間を確保する目的で用いられる。しかし、乗員がシートベルトを着用していなかったり、適切に着用されていない場合には、乗員を十分に拘束できない可能性があり、結果的に、ロールバーによる保護性能は低下する。
【0004】
また、ロールバーによって乗員の上側の空間を確保したとしても、自動車の側面衝突等によって発生する横転の際には、乗員は左方向若しくは右方向に揺れて、乗員の一方の肩に掛けたベルトの拘束力が不足する可能性があり、結果的に、ロールバーによる保護性能は低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、屋根を開いた状態で横転しても、緩衝部材(エアバッグ)を展開することによって、乗員をより確実に保護し、車内へものが侵入するのを防ぎ、乗員の保護性能を高めるロールオーバ保護装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車両の屋根の少なくとも一部が開閉可能で、フロントウインドガラスを支持する前部ピラーより後方に配置して車両の横転時に車体を支持するロールオーバ保護部材と、フロントウインドガラスの近傍に配置するとともに、乗員の頭部上方へ展開する第1緩衝部材と、ロールオーバ保護部材に配置するとともに、乗員の頭部上方へ展開する第2緩衝部材と、車両に配置した車両状態検出手段の情報に基づいて第1緩衝部材の展開を制御する第1制御手段と、車両状態検出手段の情報に基づいて第2緩衝部材の展開を制御する第2制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、車両が運転席を含む第1列座席と第1列座席の後に配置した第2列座席を備え、ロールオーバ保護部材は、第2列座席の近傍に配置し、第2緩衝部材は第2列座席の乗員の頭部上方へ展開し、第1緩衝部材は第1列座席の乗員の頭部上方へ展開することを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、車両のドア開口の近傍に配置し、乗員の側方に展開する第3緩衝部材と、第3緩衝部材の展開を制御する第3制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、第1・第2・第3制御手段がそれぞれ、横転であると判断して、第1制御手段が第1緩衝部材を展開し、第2制御手段が第2緩衝部材を展開し、第3制御手段が第3緩衝部材を展開する横転作動モードと、第3制御手段が側面衝突であると判断して、第3緩衝部材を展開する側面作動モードと、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、第1・第2・第3緩衝部材はそれぞれ、何れかに重なる重なり部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、横転時に車体を支持するロールオーバ保護部材と、フロントウインドガラスの近傍に配置して頭部上方へ展開する第1緩衝部材と、ロールオーバ保護部材に配置して頭部上方へ展開する第2緩衝部材と、車両状態検出手段の情報に基づいて第1緩衝部材の展開を制御する第1制御手段と、車両状態検出手段の情報に基づいて第2緩衝部材の展開を制御する第2制御手段と、を備えたので、フロントウインドガラスの位置する乗員室の前側から後方へ向けて第1緩衝部材(第1エアバッグ本体)を展開し、一方、乗員室の後側から前方へ向けて第2緩衝部材(第2エアバッグ本体)を展開することによって、屋根を開いた開口を覆うことができる。つまり、屋根を開いた状態で横転しても、緩衝部材(第1・第2エアバッグ本体)を展開することによって、乗員をより確実に保護し、車内へものが侵入するのを防ぎ、乗員の保護性能を高めることができるという利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明では、運転席を含む第1列座席と、第2列座席を備え、ロールオーバ保護部材は、第2列座席の近傍に配置し、第2緩衝部材は第2列座席の乗員の頭部上方へ展開し、第1緩衝部材は第1列座席の乗員の頭部上方へ展開するので、第2列座席を備えた四人乗り若しくは五人乗りであっても、乗員の保護性能を高めることができるという利点がある。
【0013】
請求項3に係る発明では、車両のドア開口の近傍に配置し、乗員の側方に展開する第3緩衝部材と、第3緩衝部材の展開を制御する第3制御手段と、を備えたので、乗員の側方への移動を規制することができるとともに、車外の側方からの異物の侵入を防止することができるという利点がある。
また、緩衝部材によって、乗員の側方の空間及び頭部上方の空間を遮断し、かつ、側方及び頭部上方に加わる力を緩衝する。従って、力の加わる位置がめまぐるしく変化する横転時の保護性能をより高めることができる。
【0014】
請求項4に係る発明では、第1・第2・第3制御手段が横転であると判断して、それぞれ第1・第2・第3緩衝部材を展開する横転作動モードと、第3制御手段が側面衝突であると判断して、第3緩衝部材を展開する側面作動モードと、を備えたので、側面衝突時に側方の第3緩衝部材のみを展開する。その結果、それぞれの衝突形態に、より適した形で乗員を保護することができ、結果的に、不要な緩衝部材(エアバッグ本体)の展開を防止することができる。
【0015】
請求項5に係る発明では、第1・第2・第3緩衝部材はそれぞれ、何れかに重なる重なり部を備えたので、第1・第2・第3緩衝部材間に生じる開口を少なくすることができる。
また、第1・第2・第3緩衝部材間に生じる開口を少なくすることで、異物の侵入に対する乗員の保護性能を高めることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明のロールオーバ保護装置の斜視図である。
ロールオーバ保護装置11は、車両12に採用したもので、乗員室13の後部に配置した車体支持手段14,15と、エアバッグ装置16と、エアバッグ装置16を制御するエアバッグ制御装置17と、を備える。具体的には後述する。
【0017】
車両12は、屋根21を開閉することができる四人乗りのコンバーチブルで、屋根21とサイドボデー22,23と、左ドア24、右ドア25と、第1列座席26と、第1列座席26の後に配置した第2列座席27と、を有する。
サイドボデー22は、前部ピラーであるところのフロントピラー31,31と、左・右ドア24,25を取付けるドア開口32,32と、を備える。
サイドボデー23は、車両12の中心の対称軸線Sを基準にサイドボデー22と対称である。
【0018】
図中、34はフロントピラー31,31の上部に連なるルーフフロントレール、35はフロントウインドガラスを示す。
第1列座席26は、運転席37の座席38と、助手席41の座席42とからなる。L1は助手席41に座る乗員M1(図4参照)の側方、R2は運転席37に座る乗員M2(図4参照)の側方を示す。
【0019】
第2列座席27は、助手席41の後に左後座席43を配置し、左後座席43に連ねて右後座席44を配置したものである。L3は左後座席43に座る乗員M3の側方、R4は右後座席44に座る乗員M4の側方を示す。
【0020】
ここで、図下の軸は、座標軸であり、直線又は回転で動く方向を示す。Xは前後に水平な直線運動を示す軸、YはXに直交する軸、ZはX,Yに直交する鉛直軸、AはX軸の周りの旋回運動を示す軸、BはY軸の周りの旋回運動を示す軸、CはZ軸の周りの旋回運動を示す軸である。
【0021】
車体支持手段14は、左後座席43の左右の下でかつ車体47に金属製の管48,48を固定し、管48,48に連ねてコ字状にロールオーバ保護部材51を形成したものである。
車体支持手段15は、対称軸線Sを基準に車体支持手段14と対称である。
なお、ロールオーバ保護部材51は、屋根の残りの部分及びセンタピラーなど車両12の上下を反転するような横転時に、地面に対して車体を支持するものを含む。
【0022】
エアバッグ装置16は、フロントウインドガラス35の上端を支持するルーフフロントレール34に助手席用第1緩衝手段54並びに運転席用第1緩衝手段55を取付け、左後の車体支持手段14のロールオーバ保護部材51内に左用第2緩衝手段56を配置し、右後の車体支持手段15のロールオーバ保護部材51内に右用第2緩衝手段57を配置した。
【0023】
また、エアバッグ装置16は、左ドア24内に左ドア用第3緩衝手段61を配置し、右ドア25内に右ドア用第3緩衝手段62を配置し、左のサイドボデー22内に左後用第3緩衝手段63を配置し、右のサイドボデー23内に右後用第3緩衝手段64を配置し、エアバッグ制御装置17によって制御される。
【0024】
エアバッグ制御装置17は、車両12に配置して車両12の衝突や横転を検出する車両状態検出手段67と、車両状態検出手段67の情報に基づいてエアバッグ装置16を制御する制御部68と、を備える。
【0025】
車両状態検出手段67は、車両12の横転(A,B軸方向)や衝突など車両12の状態、例えば、加速度(例えば、X軸方向)、ロール角θ(A軸方向)、滑り(スリップ)角、ピッチ角α(B軸方向)、車速Vを検出するもので、仕様は任意である。
【0026】
制御部68は、車両状態検出手段67の横転情報に基づいて車両12の横転の可能性ありか否かや、横転か否かを判断するとともに、エアバッグ装置16を作動(展開)させるもので、仕様は任意である。
また、制御部68は、車両状態検出手段67の衝突情報に基づいて正面衝突であるか否か、側面衝突であるか否かを判断するとともに、エアバッグ装置16を作動(展開)させる。
【0027】
さらに、制御部68は、助手席用第1緩衝手段54並びに運転席用第1緩衝手段55を制御する第1制御手段71と、左のロールオーバ保護部材51内に配置した左用第2緩衝手段56並びに右のロールオーバ保護部材51内に配置した右用第2緩衝手段57を制御する第2制御手段72と、第3緩衝手段61〜64を制御する第3制御手段73と、からなる。
その上、制御部68は、必要に応じて設定する横転作動モードと側面作動モードを備える。
横転情報は、ロール角θとピッチ角αとからなる。車速Vを含めてもよい。
【0028】
図2は、本発明のロールオーバ保護装置が備えるエアバッグ装置を説明する図で、左後の車体支持手段14のロールオーバ保護部材51を透視した状態で左用第2緩衝手段56を示す。
【0029】
第2緩衝手段56は、ロールオーバ保護部材51に金属製のケース76を一体的に取付け、ケース76に樹脂製の装飾パネル77を取付け、ケース76及び装飾パネル77に開口蓋部78を形成し、ケース76内にインフレータ(ガス発生装置)81及びインフレータ(ガス発生装置)81の反応ガスで展開する第2緩衝部材であるところの第2エアバッグ本体82を配置した。
【0030】
インフレータ(ガス発生装置)81は、既存のインフレータであり、例えば、助手席用としてインストルメントパネルに配置したインフレータとほぼ同様である。
第2緩衝手段57(図1参照)は、対称軸線Sを基準に第2緩衝手段56と対称であり、第2緩衝部材であるところの第2エアバッグ本体83(第2エアバッグ本体82と同じもの)を有する。
【0031】
次に、図1を併用して第1緩衝手段54,55、第3緩衝手段61〜64を説明する。
第1緩衝手段54,55及び第3緩衝手段61〜64は、既に説明した第2緩衝手段56,57とほぼ同様である。
【0032】
第1緩衝手段54は、ルーフフロントレール34に金属製のケースを一体的に取付け、ケースに樹脂製の装飾パネル85を取付け、ケース及び装飾パネル85に開口蓋部86を形成し、ケース内にインフレータ(ガス発生装置)87及びインフレータ(ガス発生装置)87の反応ガスで展開する第1緩衝部材であるところの第1エアバッグ本体88を配置した。
第1緩衝手段55は、対称軸線Sを基準に第1緩衝手段54と対称であり、第1緩衝部材であるところの第1エアバッグ本体91(第1エアバッグ本体88と同じもの)を有する。
【0033】
第3緩衝手段61は、左ドア24のインナパネルに金属製のケースを左ドア24の開口蓋部92に対応するように取付け、ケース内にインフレータ(ガス発生装置)93及びインフレータ(ガス発生装置)93の反応ガスで展開する第3緩衝部材であるところの第3前エアバッグ本体94を配置した。
第3緩衝手段62は、対称軸線Sを基準に第3緩衝手段61と対称であり、第3緩衝部材であるところの第3前エアバッグ本体95(第3前エアバッグ本体94と同じもの)を有する。
【0034】
第3緩衝手段63は、サイドボデー22のパネルに金属製のケースをサイドボデー22の開口蓋部96に対応するように取付け、ケース内にインフレータ(ガス発生装置)97及びインフレータ(ガス発生装置)97の反応ガスで展開する第3緩衝部材であるところの第3後エアバッグ本体101を配置した。
第3緩衝手段64は、対称軸線Sを基準に第3緩衝手段63と対称であり、第3緩衝部材であるところの第3後エアバッグ本体102(第3後エアバッグ本体101と同じもの)を有する。
【0035】
横転作動モードは、第1・第2・第3制御手段71,72,73がそれぞれ、横転であると判断して、第1制御手段71が第1緩衝部材(第1エアバッグ本体)88,91を展開し、第2制御手段72が第2緩衝部材(第2エアバッグ本体)82,83を展開し、第3制御手段73が第3緩衝部材(第3前・後エアバッグ本体)94,95,101,102を展開する。
側面作動モードは、第3制御手段73が側面衝突であると判断して、第3緩衝部材(第3前・後エアバッグ本体)94,95,101,102のみを展開する。
【0036】
次に図5を用いて第1〜第3エアバッグ本体を説明する。
第1エアバッグ本体88は、後端に形成した後重なり部106と、左端に形成した左重なり部107を有する。
第1エアバッグ本体91は、後端に形成した後重なり部108と右端に形成した右重なり部111を有する。
【0037】
第2エアバッグ本体82は、前端に形成した前重なり部112と左端に形成した左重なり部113を有する。
第2エアバッグ本体83は、前端に形成した前重なり部114と右端に形成した右重なり部115を有する。
【0038】
第3前エアバッグ本体94は、上端に形成した上重なり部116を有する。
第3前エアバッグ本体95は、上端に形成した上重なり部117を有す
第3後エアバッグ本体101は、上端に形成した上重なり部118を有する。
第3後エアバッグ本体102は、上端に形成した上重なり部121を有する。
【0039】
ここでは、四人乗りの自動車(コンバーチブル)を一例に説明したが、二人乗りの自動車であるロードスターにロールオーバ保護装置11を採用してもよい。
ロードスターの場合は、二人の乗員に対応するようにそれぞれを変更する。当然、ロールオーバ保護部材51を第1列座席26の後に配置し、第1エアバッグ本体88の長さ(X軸方向)と第2エアバッグ本体82の長さ(X軸方向)を約50%とし、第3後エアバッグ本体101,102を省く。
【0040】
次に図3〜図5でロールオーバ保護装置11の作用を説明する。
まず、第1エアバッグ本体88,91のみの展開を説明し、その次に第1エアバッグ本体88,91を展開すると同時に第2エアバッグ本体82,83を展開する場合を説明し、引き続き、第1エアバッグ本体88,91、第2エアバッグ本体82,83、第3前・後エアバッグ本体94,95,101,102をほぼ同時に展開する場合を説明し、最後に、第3前・後エアバッグ本体94,95,101,102のみの展開を説明する。
【0041】
図3は、本発明のロールオーバ保護装置の第1作用図である。図1、図2を併用して説明する。
車両12が衝突したときや車両12に横転が起き始めたときに、第1エアバッグ本体88,91は乗員M1の頭部H1の上方並びに乗員M2の頭部H2の上方を覆うように膨らむ。
具体的には、正面衝突や側面衝突など衝突が起きると、車両状態検出手段67の衝突情報に基づいて、第1制御手段71は衝突であると判断して作動情報を出力し、作動情報に基づいて第1緩衝手段54のインフレータ87は作動して反応ガスを第1エアバッグ本体88に吹込むので、第1エアバッグ本体88はケース及び装飾パネル85に設定した開口蓋部86のティアラインを破断し、開口蓋部86を矢印a1のように開くとともに、乗員M1の頭部H1の上方の空間へ矢印a2のように展開する。
第1制御手段71は、第1エアバッグ本体88と同じタイミングで第1緩衝手段55の第1エアバッグ本体91を乗員M2の頭部H2の上方の空間へ矢印a3のように展開する。
【0042】
次に横転が起き始めた場合について説明する。
車両12に何らかの理由で横転が起き始めると、車両状態検出手段67の横転情報に基づいて、第1制御手段71は横転の可能性ありと判断して作動情報を出力し、作動情報に基づいて第1緩衝手段54のインフレータ87は作動する。以降は前述したように、第1エアバッグ本体88は乗員M1の頭部H1の上方の空間へ矢印a2のように展開すると同時に、第1エアバッグ本体88と同じタイミングで第1エアバッグ本体91は乗員M2の頭部H2の上方の空間へ矢印a3のように展開する。
【0043】
次に第1エアバッグ本体88,91を展開すると同時に第2エアバッグ本体82,83を展開する場合を説明する。
図4は、本発明のロールオーバ保護装置の第2作用図である。図1、図2を併用して説明する。
【0044】
前述した第1制御手段71が第1エアバッグ本体88,91を展開する過程とほぼ同じタイミングで第2制御手段72によって第2エアバッグ本体82,83は乗員M3の頭部H3の上方並びに乗員M4の頭部H4の上方を覆うように膨らむ。
すなわち、第1制御手段71と同時に第2制御手段72は衝突であると判断して作動情報を出力し、作動情報に基づいて第2緩衝手段56のインフレータ81は作動して反応ガスを第2エアバッグ本体82に吹込むので、第2エアバッグ本体82は開口蓋部78のティアラインを破断し、開口蓋部78を矢印a4のように開くとともに、乗員M3の頭部H3の上方の空間へ矢印a5のように展開する。その際、第2エアバッグ本体82の前端の前重なり部112に第1エアバッグ本体88の後端の後重なり部106が載った状態で重なる。
【0045】
第2制御手段72は、第2エアバッグ本体82と同じタイミングで第2緩衝手段57の第2エアバッグ本体83を乗員M4の頭部H4の上方の空間へ矢印a6のように展開する。その際、第2エアバッグ本体83の前端の前重なり部114に第1エアバッグ本体91の後端の後重なり部108が載った状態で重なる。
【0046】
次に横転が起き始めた場合について説明する。
車両状態検出手段67の横転情報に基づいて、第2制御手段72は横転の可能性ありと判断して作動情報を出力し、作動情報に基づいて第2緩衝手段56,57のインフレータ81,81は作動する。以降は前述したように、第1エアバッグ本体88と第2エアバッグ本体82は共に膨らみ、重なり、乗員M1の頭部H1の上方の空間、乗員M3の頭部H3の上方の空間へ矢印a5のように展開する。同時に、第1エアバッグ本体91と第2エアバッグ本体83は共に膨らみ、重なり、乗員M2の頭部H2の上方の空間、乗員M4の頭部H4の上方の空間へ矢印a6のように展開する。
【0047】
このように、請求項1のロールオーバ保護装置11では、乗員室13の前側から後方へ向けて第1エアバッグ本体88,91を展開し、一方、乗員室13の後側から前方へ向けて第2エアバッグ本体82,83を展開することによって、屋根21を開いた開口を覆うことができる。
【0048】
具体的には、ロールオーバ保護装置11では、乗員M1〜M4の頭部H1〜H4を地面や侵入物から保護することができる。つまり、屋根21を開いた状態で横転しても、エアバッグ(第1・第2エアバッグ本体)88,91,82,83を展開することによって、乗員M1〜M4をより確実に保護し、車内へものが侵入するのを防ぎ、乗員M1〜M4の保護性能を高めることができる。
【0049】
また、請求項2のロールオーバ保護装置11では、第1列座席26と第2列座席27を備え、ロールオーバ保護部材51,51は、第2列座席27の近傍に配置し、第2緩衝部材(第2エアバッグ本体)82,83は第2列座席24の乗員M3、M4の頭部H3、H4上方へ展開し、第1緩衝部材(第1エアバッグ本体)88,91は第1列座席26の乗員M1,M2の頭部H1,H2上方へ展開するので、四人〜五人乗りであっても、四人〜五人の頭部を保護することができ、四人〜五人の頭部を保護する保護性能を高めることができる。
【0050】
請求項1のロールオーバ保護装置11では、二人乗りの自動車であるロードスターにロールオーバ保護装置11を採用した場合には、第1エアバッグ本体88と第2エアバッグ本体82は共に膨らみ、重なり、乗員M1の頭部H1の上方の空間へ展開する。同時に、第1エアバッグ本体91と第2エアバッグ本体83は共に膨らみ、重なり、乗員M2の頭部H2の上方の空間へ展開する。その結果、乗員M1の頭部H1並びに乗員M2の頭部H2を地面や侵入物から保護することができる。
つまり、屋根21を開いた状態で横転しても、エアバッグ(第1・第2エアバッグ本体)88,91,82,83を展開することによって、乗員M1,M2をより確実に保護し、車内へものが侵入するのを防ぎ、乗員M1,M2の保護性能を高めることができる。
【0051】
第2緩衝部材(第2エアバッグ本体)82,83と、第1緩衝部材(第1エアバッグ本体)88,91と、を備えるので、二人又は四〜五人の頭部を保護する緩衝部材(エアバッグ本体)の長さ(X軸方向)は短くなり、緩衝部材(エアバッグ本体)の小型化を図ることができる。従って、より速やかに緩衝部材(エアバッグ本体)を展開させることができ、乗員M1,M2の保護性能を高めることができる。
【0052】
次に、第1エアバッグ本体88,91、第2エアバッグ本体82,83、第3前・後エアバッグ本体94,95,101,102をほぼ同時に展開する場合を説明する。
図5は、本発明のロールオーバ保護装置の第3作用図である。図1、図2、図4を併用して説明する。
既に説明した第1制御手段71と第2制御手段72の作動のタイミングと同じタイミングで第3制御手段73によって、第3前・後エアバッグ本体94,95,101,102は乗員M1の側方L1、乗員M2の側方R2、乗員M3の側方L3、乗員M4の側方R4を覆うようにそれぞれ膨らむ。
【0053】
すなわち、第1・第2制御手段71,72と同時に第3制御手段73は衝突であると判断して作動情報を出力し、作動情報に基づいて第3緩衝手段61のインフレータ93、第3緩衝手段62のインフレータ93、第3緩衝手段63のインフレータ97、第3緩衝手段64のインフレータ97は作動して反応ガスをそれぞれの第3前・後エアバッグ本体94,95,101,102に吹込むので、第3前・後エアバッグ本体94,95,101,102はそれそれの開口蓋部92,92,96,96のティアラインを破断し、開口蓋部92,92,96,96を開くとともに、乗員M1の側方L1、乗員M2の側方R2、乗員M3の側方L3、乗員M4の側方R4に展開する。
【0054】
その際、第1エアバッグ本体88の左端の左重なり部107に第3前エアバッグ本体94の上端の上重なり部116が所定の距離だけ重なり、第1エアバッグ本体91の右端の右重なり部111に第3前エアバッグ本体95の上端の上重なり部117が所定の距離だけ重なり、第2エアバッグ本体82の左端の左重なり部113に第3後エアバッグ本体101の上端の上重なり部118が所定の距離だけ重なり、第2エアバッグ本体83の右端の右重なり部115に第3後エアバッグ本体102の上端の上重なり部121が所定の距離だけ重なる。
【0055】
次に横転が起き始めた場合について説明する。
車両状態検出手段67の横転情報に基づいて、第3制御手段73は横転の可能性ありと判断して作動情報を出力し、作動情報に基づいて第3緩衝手段61のインフレータ93、第3緩衝手段62のインフレータ93、第3緩衝手段63のインフレータ97、第3緩衝手段64のインフレータ97は作動する。以降は前述した通りである。
【0056】
このように、請求項3のロールオーバ保護装置11では、乗員M1の側方L1、乗員M2の側方R2、乗員M3の側方L3、乗員M4の側方R4に展開する第3緩衝部材(第3前・後エアバッグ本体)94,95,101,102と、第3緩衝部材96,97,102,103の展開を制御する第3制御手段73と、を備えたので、乗員M1〜M4の側方
L1,R2,L3,R4への移動(矢印b1〜b4の方向)を規制することができる。
また、第3緩衝部材(第3前・後エアバッグ本体)94,95,101,102によって、側方からの異物の侵入を防止することができる。
【0057】
請求項5のロールオーバ保護装置11では、重なり部106,108,112,114,116〜118,121を備えたので、エアバッグ本体間に生じる開口を少なくすることができる。
また、エアバッグ本体間に生じる開口を少なくすることで、異物の侵入に対する乗員の保護性能を高めることができる。
【0058】
次に、第3前・後エアバッグ本体94,95,101,102のみを展開する場合について説明する。
【0059】
第1・第2・第3制御手段71,72,73に横転作動モードを設定すると、横転時に既に説明したように、第1緩衝部材(第1エアバッグ本体)88,91、第2緩衝部材(第2エアバッグ本体)82,83、第3緩衝部材(第3前・後エアバッグ本体)94,95,101,102を展開する。
【0060】
第3制御手段73に側面作動モードを設定すると、車両状態検出手段67の衝突情報に含まれる側面衝突情報のみに基づいて、第3制御手段73は側面衝突であると判断して作動情報を出力する。その結果、側面衝突時のみに第3前・後エアバッグ本体94,95,101,102のみを展開して、それぞれの衝突形態に、より適した形で乗員を保護することができ、結果的に、不要な緩衝部材(エアバッグ本体)の展開を防止することができる。
【0061】
尚、本発明のロールオーバ保護装置は、実施の形態では屋根の開閉が可能な自動車に適用したが、屋根のない自動車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のロールオーバ保護装置は、コンバーチブルやロードスターに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のロールオーバ保護装置の斜視図
【図2】本発明のロールオーバ保護装置が備えるエアバッグ装置を説明する図
【図3】本発明のロールオーバ保護装置の第1作用図
【図4】本発明のロールオーバ保護装置の第2作用図
【図5】本発明のロールオーバ保護装置の第3作用図
【符号の説明】
【0064】
12…車両、21…屋根、26…第1列座席、27…第2列座席、31…前部ピラー(フロントピラー)、32…ドア開口、35…フロントウインドガラス、37…運転席、51…ロールオーバ保護部材、67…車両状態検出手段、71…第1制御手段、72…第2制御手段、73…第3制御手段、82,83…第2緩衝部材(第2エアバッグ本体)、88,91…第1緩衝部材(第1エアバッグ本体)、94,95…第3緩衝部材(第3前エアバッグ本体)、106,108…第1緩衝部材の後重なり部、107…第1緩衝部材の左重なり部、111…第1緩衝部材の右重なり部、112,114…第2緩衝部材の前重なり部、113…第2緩衝部材の左重なり部、115…第2緩衝部材の右重なり部、116〜118,121…第3緩衝部材の上重なり部、M1〜M4…乗員、H1〜H4…頭部、L1,R2,L3,R4…乗員の側方。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の屋根の少なくとも一部が開閉可能で、フロントウインドガラスを支持する前部ピラーより後方に配置して車両の横転時に車体を支持するロールオーバ保護部材と、
前記フロントウインドガラスの近傍に配置するとともに、乗員の頭部上方へ展開する第1緩衝部材と、
前記ロールオーバ保護部材に配置するとともに、乗員の頭部上方へ展開する第2緩衝部材と、
前記車両に配置した車両状態検出手段の情報に基づいて前記第1緩衝部材の展開を制御する第1制御手段と、
前記車両状態検出手段の情報に基づいて前記第2緩衝部材の展開を制御する第2制御手段と、を備えたことを特徴とするロールオーバ保護装置。
【請求項2】
前記車両が運転席を含む第1列座席と第1列座席の後に配置した第2列座席を備え、
前記ロールオーバ保護部材は、前記第2列座席の近傍に配置し、前記第2緩衝部材は第2列座席の乗員の頭部上方へ展開し、
前記第1緩衝部材は第1列座席の乗員の頭部上方へ展開することを特徴とする請求項1記載のロールオーバ保護装置。
【請求項3】
前記車両のドア開口の近傍に配置し、乗員の側方に展開する第3緩衝部材と、前記第3緩衝部材の展開を制御する第3制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のロールオーバ保護装置。
【請求項4】
前記第1・第2・第3制御手段がそれぞれ、横転であると判断して、第1制御手段が第1緩衝部材を展開し、第2制御手段が第2緩衝部材を展開し、第3制御手段が第3緩衝部材を展開する横転作動モードと、
第3制御手段が側面衝突であると判断して、第3緩衝部材を展開する側面作動モードと、を備えたことを特徴とする請求項3記載のロールオーバ保護装置。
【請求項5】
前記第1・第2・第3緩衝部材はそれぞれ、何れかに重なる重なり部を備えたことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載のロールオーバ保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−69767(P2007−69767A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259615(P2005−259615)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】