説明

ロールフォーム成形された部品を製造する方法及びその方法によって製造された部品

【課題】高強度鋼板及び超高強度鋼板からロールフォーム成形された部品を製造する方法であって、遅れ破壊や脆性破壊の発生を防止するために使用できる方法を提供する。
【解決手段】引張強度が780MPaを超える高強度鋼板及び超高強度鋼板から、ロールフォーム成形された部品を製造する方法であって、鋼板のストリップをロールフォーミング設備に供給し、ロールフォーミング設備において、対向するロールスタンド間に鋼板ストリップを通すとともに、鋼板ストリップに成形ローラを作用させることによって鋼板ストリップを変形させる工程、及び変形させた鋼板ストリップの塑性変形領域における水素による脆性破壊を防止するために、スタンピング、据込み鍛造、曲げ加工、並びに過曲げ曲げ戻し加工より成る群から選択される少なくとも1種の処理により、塑性変形領域に圧縮応力を加える工程、及び/又は、切削加工又は研削加工により、前記塑性変形領域を除去する工程、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張強度が780MPaを超える高強度鋼板及び超高強度鋼板から、ロールフォーム成形された部品を製造する方法及びその方法によって製造された部品に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の自動車産業をめぐる環境は、めまぐるしく変化している。欧州をはじめとして、二酸化炭素排出削減の要求は益々大きくなり、これに対応するため、自動車用部品の更なる軽量化が求められている。一方、日本、米国、欧州等における衝突規制は益々厳しくなり、そのため自動車用部品の強度を更に強化することが要求され、これが部品の重量化を引き起こす要因となっている。
【0003】
自動車用部品を軽量化し、かつ強化するというこの相反する要求を同時に満たし得る材料として、高強度鋼及び超高強度鋼が注目されている。しかし、高強度鋼及び超高強度鋼は、自動車用部品を軽量化し、かつ強度を強化することは可能であるとしても、高強度鋼及び超高強度鋼の特性上、プレス成形が困難であるという弱点がある。鋼の特性上、成形性に限界があり、寸法精度の確保が困難であり、プレス能力がオーバーしやすい。
【0004】
プレス成形に代わる高強度鋼及び超高強度鋼の成形技術として、ロールフォーム成形が知られている。ロールフォーム成形は、回転するロールの間に鋼板を通すことで、徐々に成形する加工方法であり、連続した断面形状をもつ部品の成形に適している。
【0005】
ロールフォーム成形は、(1)多段成形であるため、発生し得るひずみを一様化できて、寸法精度のコントロールが可能であり、(2)プレス成形ではできない断面形状を作成できるため、閉断面構造の形成や縦壁にビードを形成することができる。
【0006】
例えば特許文献1は、切断口変形の防止を目的として、冷間ロール成形方法において、最終断面形状又はこれに近い形状に成形後、曲げ加工を行い、残留応力を除去することを提案している。
【0007】
また、例えば特許文献2は、高い寸法精度を得ることを目的として、冷間ロール成形方法において、略最終断面形状に成形後、水平ロール、サイドロールと、エッジサイドロールとによって、成形材に板幅方向の圧縮応力を作用させることを提案している。
【特許文献1】特開平3−99724
【特許文献2】特開平4−200927
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ロールフォーム成形がそのような特徴をもつにもかかわらず、高強度鋼及び超高強度鋼から公知の方法でロールフォーム成形すると、材料に遅れ破壊と呼ばれる脆化現象が発生することが知られている。例えば、高強度鋼及び超高強度鋼から公知の方法でロールフォーム成形された開断面形状のものでは、例えばハットチャンネルを腐食環境下に置いた場合、エッジ部等に、一定時間後に亀裂(以下、「遅れ破壊」という)が発生した。また、ロールフォーム成形品の開口部を溶接して閉断面管としたものでは、例えばレーザー溶接部において脆性破壊が発生した。
【0009】
このような遅れ破壊や脆性破壊は、水素が周囲から成形された材料内に金属学的に巻き込まれて生じるものと説明される。そして、水素の巻き込みによる脆性破壊は、成形された材料中の局部的な残留応力状態によって大きく左右されると考えられる。特に、自動車用部品の製造に用いられる標準的な方法では、材料の生産における加圧成形、スタンピング、深絞りなどの作業中に非常に高い応力荷重を伴い、成形後に高い引張残留応力が残った領域に水素による脆性破壊が発生した。
【0010】
また、遅れ破壊や脆性破壊は、高い引張残留応力が残った領域だけでなく、エッジ領域、例えばせん断加工や切断加工が行われた領域でも発生した。これらの作用も、せん断領域や切断領域の応力状態や微小亀裂のためと考えられる。
【0011】
この不都合な水素脆化は、この種の高強度鋼及び超高強度鋼が溶接された際にも発生した。溶接継ぎ目の領域では、熱の作用のみならず、環境的な要素や大気の作用も同様に水素脆化に起因する亀裂をもたらした。
【0012】
さらに不都合なことは、高強度鋼及び超高強度鋼から公知の方法でロールフォーム成形された成形品では、上記水素脆化に起因する遅れ破壊のため、真に望ましい度合よりも低い度合の変形しか達成できないことである。その結果、成形加工がかなりの制限を受け、大円弧の曲げ加工しか達成できない。
【0013】
本発明の目的は、高強度鋼板及び超高強度鋼板から、ロールフォーム成形された部品を製造する方法であって、高度の変形を達成することができ、かつ遅れ破壊や脆性破壊の発生を防止するために使用することができる方法を提供することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、高強度鋼板及び超高強度鋼板から製造される、ロールフォーム成形された部品であって、高い変形度を持ち、かつ遅れ破壊や脆性破壊の発生しない部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、水素の巻き込みによる遅れ破壊や脆性破壊は、引張応力のかかる領域で発生することが非常に多く、圧縮応力のかかる領域で水素の巻き込みが認められることは無いに等しいこと、及び水素の巻き込みは、材料の引張応力が上昇するにつれて大幅に拡大する、という事実に着目した。
【0016】
本発明者等は、高強度鋼及び超高強度鋼を用いてロールフォーム成形試験を行い、高強度鋼及び超高強度鋼から製造されるロールフォーム成形品では、成形中に残留した引張残留応力を低減させる条件、あるいはエッジの加工条件を適正化することにより、水素による脆性破壊を防止できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
【0017】
本発明の一局面は、引張強度が780MPaを超える高強度鋼板及び超高強度鋼板から、ロールフォーム成形された部品を製造する方法であって、前記鋼板のストリップをロールフォーミング設備に供給し、前記ロールフォーミング設備において、対向するロールスタンド間に前記鋼板ストリップを通すとともに、前記鋼板ストリップに成形ローラを作用させることによって鋼板ストリップを変形させる工程、及び変形させた前記鋼板ストリップの塑性変形領域における水素による脆性破壊を防止するために、スタンピング、据込み鍛造、曲げ加工、並びに過曲げ曲げ戻し加工より成る群から選択される少なくとも1種の処理により、前記塑性変形領域に圧縮応力を加える工程、及び/又は、切削加工又は研削加工により、前記塑性変形領域を除去する工程、を備えるロールフォーム成形された部品を製造する方法である。
【0018】
前記構成により、ロールスタンドや成形ローラを備えたロールフォーミング設備の中で、高強度鋼板ストリップ及び超高強度鋼板ストリップを変形させることにより、部品の形状について大きな制限を受ける必要もなく、かつロールフォーム成形された部品中の塑性変形領域に圧縮応力を加えることにより、残留する引張応力を低減させることができる。これにより、該部品の塑性変形領域、例えば曲げ円弧の領域及びエッジ部領域において水素による遅れ破壊や脆性破壊を防止することができる。
【0019】
更に前記構成により、例えば、開断面形状を有する鋼板ストリップの引張応力がかかった長手方向の自由エッジ部の塑性変形領域を切削加工又は研削加工することにより、エッジ部の局所的な引張残留応力領域およびエッジ表面の微小亀裂を除去することができる。
【0020】
本発明の更に他の局面は、引張強度が780MPaを超える高強度鋼板及び超高強度鋼板から、ロールフォーム成形された部品を製造する方法であって、前記鋼板のストリップをロールフォーミング設備に供給し、前記ロールフォーミング設備において、対向するロールスタンド間に前記鋼板ストリップを通すとともに、前記鋼板ストリップに成形ローラを作用させることによって、鋼板ストリップの長手方向両端部が対向する状態で、長手方向に開口部を有する開断面管に成形する工程、及び前記開口部の長手方向に沿って溶接装置で溶接して長手方向の溶接継ぎ目を形成する溶接工程を備え、前記溶接工程において、溶接継ぎ目が作られるべき管の内側に前記溶接装置の上流側から不活性ガスを流すことにより、水素を含まない遮蔽ガス雰囲気を確保した状態で溶接する、ロールフォーム成形された部品を製造する方法である。
【0021】
前記構成により、溶接継ぎ目を形成する溶接工程において、潜在的な水素発生源へのアクセスを断つことにより、溶接継ぎ目領域における水素による脆性破壊を防止することができる。
【0022】
本発明の方法によって製造されるロールフォーム成形された部品は、引張応力を相殺して水素による脆性破壊を防止するために、スタンピング、研削、フライス加工、平削り若しくはシェービングされた長手方向の自由エッジ部、スタンピングされた曲がり領域、及び据込み鍛造された曲がり領域より成る群から選択される少なくとも1つを有する部品である。
【0023】
前記構成により、引張強度が780MPaを超える高強度鋼板及び超高強度鋼板からロールフォーム成形され、高い変形度を持ち、かつ水素による遅れ破壊や脆性破壊の発生しない部品が得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の、高強度鋼板及び超高強度鋼板からロールフォーム成形された部品を製造する方法によれば、簡便な手段で、部品の折り曲げエッジ部の領域や溶接されたエッジ部の領域等において、水素による遅れ破壊や脆性破壊の発生を防止することができる。また、本発明に係るロールフォーム成形によれば、水素による脆性破壊を防止するための特定の処理工程を、効果的にロールフォームラインに組み込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の一局面は、引張強度が780MPaを超える高強度鋼板及び超高強度鋼板からロールフォーム成形された部品を製造する方法であって、前記鋼板のストリップをロールフォーミング設備に供給し、前記ロールフォーミング設備において、対向するロールスタンド間に前記鋼板ストリップを通すとともに、前記鋼板ストリップに成形ローラを作用させることによって鋼板ストリップを変形させる工程、及び変形させた前記鋼板ストリップの塑性変形領域における水素による脆性破壊を防止するために、スタンピング、据込み鍛造、曲げ加工、並びに過曲げ曲げ戻し加工より成る群から選択される少なくとも1種の処理により、前記塑性変形領域に圧縮応力を加える工程、を備える。
【0026】
本発明の方法において、ロールフォーム成形された部品は、引張強度が780MPaを超える高強度鋼板及び超高強度鋼板から製造される。
【0027】
前述のように、引張強度が780MPaを超える高強度鋼及び超高強度鋼を用いて公知の方法でロールフォーム成形した場合、例えば、ハットチャンネルのような開断面形状のものでは、そのエッジ部等に水素による遅れ破壊が発生しやすい。また、ロールフォーム成形品の開口部を溶接して閉断面管としたものでは、例えばレーザー溶接部において水素による脆性破壊が発生しやすい。しかるに本発明の方法によれば、ロールフォーム成形された部品中の塑性変形領域に圧縮応力を加えることにより、残留する引張応力を低減、若しくは圧縮応力により相殺することができ、または塑性変形領域を除去することができる。これにより、該部品の塑性変形領域例えばエッジ部等において、水素による遅れ破壊や脆性破壊を防止することができる。このため、引張強度が780MPaを超えるような高強度鋼板及び超高強度鋼板から製造されるロールフォーム成形された部品において、本発明の方法による上記作用効果が特に顕著に発揮される。
【0028】
本発明の方法は、高強度鋼板及び超高強度鋼板のストリップをロールフォーミング設備に供給し、前記ロールフォーミング設備において、対向するロールスタンド間に前記鋼板ストリップを通すとともに、前記鋼板ストリップに成形ローラを作用させることによって鋼板ストリップを変形させる工程を備える。
【0029】
ロールフォーミング設備は、鋼板ストリップを間に通すための対向するロールスタンドと、鋼板ストリップに作用させることによって鋼板ストリップを変形させる成形ローラとを備えるものであれば、特に限定されない。回転するロールの間に鋼板ストリップを通すことで鋼板ストリップを徐々に成形して、連続した断面形状の部品に加工し得るようなロールフォーミング設備を使用することができる。
【0030】
本発明の方法は更に、変形させた鋼板ストリップの塑性変形領域における水素による脆性破壊を防止するために、スタンピング、据込み鍛造、曲げ加工、並びに過曲げ曲げ戻し加工より成る群から選択される少なくとも1種の処理により、前記塑性変形領域に圧縮応力を加える工程を備える。
【0031】
本発明の方法において、変形させた鋼板ストリップの塑性変形領域に圧縮応力を加える工程は、ロールフォーミング設備の中で、鋼板ストリップに成形ローラを作用させることによって鋼板ストリップを変形させる工程に組み込んで、実施することができる。
【0032】
図1は、鋼板ストリップのエッジ部の応力状態に影響を与えるスタンピング処理を示す。鋼板ストリップ2のストリップエッジ部1におけるスタンピングは、ストリップエッジ部1の領域における引張応力を低減させるために行われる。スタンピング処理は、例えば楔形又はV字形の接触面4を有するローラ3を用いて行うことができる。このようにすれば、前記ローラ3は、エッジ部1に、2つの据込み鍛造された面取り面を与える。その結果、水素による脆化現象に敏感な塑性変形領域に残留する引張応力は、加えた圧縮応力により相殺される。
【0033】
図2は、本発明に係るスタンピング処理をうけた鋼板ストリップのエッジ部を示す。スタンピングは、長手方向エッジ部の自由端面5の領域でもストリップ材料が圧縮される程度に行うことができ、その結果、図2に示されるように、自由端面5の全領域から鋼板の面取り面に至るまで長手方向に圧縮の残留応力を発生させることができる。
【0034】
本発明の方法において、鋼板ストリップの塑性変形領域に圧縮応力を加える据込み鍛造は、例えば、楔形の金型を用い、鋼板ストリップを送りながら、板幅方向に断続的に押し込むことにより、実施することができる。
【0035】
本発明の方法においては、鋼板ストリップの塑性変形領域が曲がり領域である場合でも、曲げ加工により、鋼板ストリップの曲がり領域に圧縮応力を確保することができる。このような曲げ加工は、例えば、鋼板ストリップをロールフォームラインに搬入する水平面から、変形させた鋼板ストリップの基底面が逸脱する成形モードを採用することにより、より効果的に行うことができる。水平面から逸脱する方向は、下降方向であっても上昇方向であってもよい。図4は、鋼板ストリップ2が水平面から下降方向に曲げ加工をうける成形モードを示している。本発明者等は、上昇方向または下降方向の成形モードを適切に選択することにより、ロールフォーム成形された部品中の応力状態に大きな影響を与えることができることを見出した。これは、上記成形モードにより、鋼板ストリップの主たる変形領域がゆっくりと曲げ加工を受けることで圧縮応力が加えられ、この圧縮応力が引張応力の発生を相殺するからである、と考えられる。ロールフォーム成形された部品中の応力状態に影響を与える成形モードとしては、上昇のサイズまたは下降のサイズが、部品の高さの0.1〜0.6倍であることが好ましい。
【0036】
本発明の方法において、圧縮応力を加える塑性変形領域は、曲がりエッジ部、曲がり領域、及び長手方向の自由エッジ部より成る群から選択される少なくとも1つの領域であることが好ましい。
【0037】
成形ローラを作用させて、鋼板ストリップを、例えばハットチャンネルのような開断面形状のものに変形させた場合、曲がりエッジ部、曲がり領域、または長手方向の自由エッジ部には、特に引張応力が残留しやすく、そのため、水素による遅れ破壊が発生しやすい。従って、これらの塑性変形領域に圧縮応力を加えることにより、加えられた圧縮応力が、残留する引張応力を低減させ、若しくは引張応力を相殺することができるのである。
【0038】
塑性変形領域が長手方向のエッジ部である場合、V字形の楔を有するローラ又は前記エッジ部に一致して作用する2個のローラを用いて、長手方向の自由エッジ部の上側と下側とに面取り面を押し当てることにより、長手方向エッジ部のスタンピング又は据込み鍛造を行うことが好ましい。
【0039】
図7は、鋼板ストリップのエッジ部に対するスタンピングローラ又は研削ローラによる処理を示す概略図である。鋼板ストリップ2の引張応力が残留する長手方向のエッジ部領域に対するスタンピング、据込み鍛造または引張応力の機械的除去は、自由エッジ部をはさんで互いに上側と下側で向かい合い、かつ自由エッジ部の両側に一致して作用する2個のローラ15及び16を用いて行うことができる。このようにすれば、例えばフランジエッジを加工する場合は、2個のローラでフランジエッジをコイニングすることにより、長手方向に圧縮応力を発生させることができる。また、2個のローラでフランジエッジを研削することにより、フランジエッジ面の加工硬化層の除去と平滑化を行い、脆性破壊を引き起こす水素の浸入を抑制することができる。
【0040】
長手方向の自由エッジ部の上側と下側とに面取り面を押し当てる場合、面取り面をエッジ部に押し当てる角度は、垂直軸に対して15°〜60°の角度になるようにすることが好ましい。
【0041】
垂直軸に対して15°〜60°の角度になるように、より好ましくは30°〜50°の角度になるように、面取り面をエッジ部に押し当てることにより、例えばコイニングによる圧縮応力の発生、あるいは研削による加工硬化層の除去と平滑化が最適に行われることで、水素による遅れ破壊や脆性破壊を効果的に防止することができる。
【0042】
本発明に係るロールフォーム成形においては、ロールスタンド間に設けた付加的なローラにより、鋼板ストリップの過曲げ曲げ戻しの変形処理を行うことが好ましい。
【0043】
図5は、ロールスタンド間に設けた中間ローラによる過曲げ曲げ戻しの変形処理を示す。ロールスタンド間に中間ローラを設けて、この中間ローラによって過曲げ曲げ戻しの変形を制御することにより、ロールフォーム成形された部品中の応力状態に影響を与えることができる。例えば、最後のロールスタンド12と1つ前のロールスタンド11との間に、最後のロールスタンド12から手前に所定の距離をおいて中間ローラ10を配置する。この中間ローラ10により、鋼板ストリップ2の曲がり領域13の過曲げ処理を行う(図6)。その後に後続のロールスタンド12により曲げ戻しを行う。この曲げ戻しにより加えられた圧縮応力が、鋼板ストリップに存在する引張応力を相殺する。その結果、水素による遅れ破壊や脆性破壊が防止される。
【0044】
従って、本発明に係る過曲げ曲げ戻しの変形処理においては、過曲げ用ローラを用いて、成形に必要な曲げ加工よりも大きい曲げ加工を行い、その後、後続のロールスタンドが、その過曲げを所望の部品形状に曲げ戻すことが好ましい。
【0045】
また、ロールスタンド間に設けた過曲げの変形処理を行う過曲げ用ローラは、直線ローラ又は円錐形ローラであることが好ましい。図6は、鋼板ストリップ2の曲がり領域13の過曲げ処理を行う過曲げ用ローラが円錐形ローラである場合を示す。
【0046】
特に、成形される部分がフランジ領域である場合、このフランジ領域について上記過曲げの変形処理を行うことが好ましい。成形ローラを作用させて、鋼板ストリップを、例えばハットチャンネルに変形させる場合、ハットフランジには引張応力が残留しやすく、そのため、水素による遅れ破壊が発生しやすい。従って、例えばハットチャンネルへの曲げ加工時に、過曲げ処理を行い、その後に所望の形状に曲げ戻しを行うことにより、この曲げ戻しにより加えられた圧縮応力が、ハットフランジに存在する引張応力を相殺し、その結果、水素による遅れ破壊を防止することができる。
【0047】
ロールスタンド間に設けた過曲げ用ローラは、後続のロールスタンドまで100〜300mmの距離を離して配置されることが好ましい。過曲げを行う過曲げ用ローラと、その後の曲げ戻しを行うロールスタンドとの距離を100〜300mmに調製することにより、過曲げ曲げ戻しの変形を最適に制御することができ、もって水素による遅れ破壊を効果的に防止することができる。
【0048】
過曲げ用ローラによる過曲げ角度は、所望の部品形状の曲げ角度より5°〜30°大きいことが好ましい。5°〜30°大きい過曲げ角度を、所望の曲げ角度に曲げ戻すことにより、この曲げ戻しによる圧縮応力が、効果的に引張残留応力を相殺することができる。この過曲げ角度を得るためには、過曲げ用ローラとして、円錐角が所望の曲げ角度より5°〜30°大きい円錐形ローラを用いることが好ましい。
【0049】
本発明に係るロールフォーム成形においては、例えば、鋼板ストリップを開断面形状に成形する時、開断面形状を有する鋼板ストリップの塑性変形領域における水素による脆性破壊を防止するために、長手方向の自由エッジ部の塑性変形領域を切削加工又は研削加工によって除去することも好ましい。
【0050】
なお、上記長手方向の自由エッジ部の塑性変形領域を切削加工又は研削加工によって除去する工程は、ロールフォーミング設備の中で、鋼板ストリップに成形ローラを作用させることによって鋼板ストリップを開断面形状に成形する工程に組み込んで、実施することができる。
【0051】
図3は、鋼板ストリップのエッジ部の引張応力を有する領域を除去する処理を示す。開断面形状を有する鋼板ストリップ2の長手方向の自由エッジ部7において、引張応力が残留する塑性変形領域およびエッジ表面の微小亀裂は、切削加工又は研削加工によって除去することができる。塑性変形領域およびエッジ表面の微小亀裂の除去は、研削面8を有する適切に設計されたローラ6または他の適切な工具を用いた切削加工又は研削加工によって、好ましくは0.1〜0.5mmの深さまで除去を行うことができる。鋼板ストリップ2の長手方向の自由エッジ部7は、塑性変形領域の除去の範囲を考慮して、その厚み等のサイズをあらかじめ大きめに設定しておくことが好ましい。
【0052】
長手方向自由エッジ部の塑性変形領域の除去は、フライス加工、研削、シェービング又は平削りによって行うことが好ましい。
【0053】
フライス加工、研削、シェービング及び平削りによる長手方向自由エッジ部の塑性変形領域の除去は、例えば、鋼板ストリップをロールフォーミングするロールスタンドの直前において、鋼板ストリップのエッジ両側に前記加工法に用いる刃物または砥石を当てることにより、実施することができる。これらの手段を用いた切削加工又は研削加工によって、長手方向自由エッジ部に残留する引張応力を効果的に除去することができる。
【0054】
また、長手方向自由エッジ部の塑性変形領域を除去する範囲は、長手方向エッジ部の端から0.1〜0.5mm幅の範囲であることが好ましい。鋼板ストリップを開断面形状に成形した場合、長手方向エッジ部の端から0.1〜0.5mm幅の範囲に、引張応力が残留しやすい。そのため、水素による脆性破壊を効果的に防止するためには、長手方向エッジ部の端から0.1〜0.5mm幅、好ましくは0.3〜0.5mm幅の範囲を切削加工又は研削加工によって除去することが好ましい。
【0055】
さらに、長手方向自由エッジ部の塑性変形領域の除去は、長手方向エッジ部の端の傾斜角度が45°〜90°になるように、除去を行うことが好ましい。長手方向エッジ部の端部に残留する引張応力は、傾斜角度が45°〜90°になるように切削加工又は研削加工することによって、ほぼ完全に除去することができる。
【0056】
また、ロールフォーム成形された部品が、長手方向に開口部を有し、開口部を形成する長手方向のエッジ部の両端を溶接して管とする開断面管であることも好ましい。図8は、このような開断面管を示す。鋼板ストリップ2を開断面管14に変形させるとき、形成される開口部を定義する長手方向のエッジ部の両端17及び18は、水素による脆性破壊を引き起こしやすい塑性変形領域である。従って、この塑性変形領域に圧縮応力を加えるために、上述したような、スタンピング、据込み鍛造、曲げ加工、並びに過曲げ曲げ戻し加工より成る群から選択される少なくとも1種の処理を実施することができる。また、この塑性変形領域を除去するために、上述したような切削加工又は研削加工を実施することができる。
【0057】
また、このような開断面管は、例えば、図9に示されるような、ロールフォーム成形における過スタンピングによる開断面管への変形処理によって製造することができる。図9は、上記処理による上昇方向及び下降方向の変形メカニズムを、個々の変形段階に分けて示している。
【0058】
本発明の更に他の局面は、引張強度が780MPaを超える高強度鋼板及び超高強度鋼板から、ロールフォーム成形された部品を製造する方法であって、前記鋼板のストリップをロールフォーミング設備に供給し、前記ロールフォーミング設備において、対向するロールスタンド間に前記鋼板ストリップを通すとともに、前記鋼板ストリップに成形ローラを作用させることによって、鋼板ストリップの長手方向両端部が対向する状態で、長手方向に開口部を有する開断面管に成形する工程、及び前記開口部の長手方向に沿って溶接装置で溶接して長手方向の溶接継ぎ目を形成する溶接工程を備える。前記溶接工程においては、溶接継ぎ目が作られるべき管の内側に前記溶接装置の上流側から不活性ガスを流すことにより、水素を含まない遮蔽ガス雰囲気を確保した状態で溶接する。
【0059】
なお、この溶接工程は、ロールフォーミング設備の中で、鋼板ストリップに成形ローラを作用させることによって長手方向に開口部を有する開断面管に成形するロールフォーム成形の工程に引き続いて、実施することができる。
【0060】
図10は、ロールフォーム成形工程に続く溶接工程において、管の内側領域に設けた水素侵入防止手段を示す概略図である。溶接継ぎ目21が作られるべき管14の内側を、水素を含まない遮蔽ガス雰囲気で確保するために、管の移動方向25に対して溶接装置20(例えばレーザー溶接装置)の上流側から、溶接継ぎ目が作られる管の内側に不活性ガス22を流すことができる。不活性ガス放出手段23は、開断面管の開口部を定義する長手方向のエッジ部の両端17及び18(図8)の間で溶接装置20の手前に配置して、ノズル24から不活性ガス22を放出することができる。不活性ガス22は、80〜500℃に加熱してもよい。
【0061】
本発明に係る溶接工程においては、溶接継ぎ目が作られるべき管の内側を、水素を含まない遮蔽ガス雰囲気を確保した状態で、溶接が行われて溶接継ぎ目が形成されるため、潜在的な水素発生源へのアクセスが断たれ、これにより溶接継ぎ目領域における水素による脆性破壊を防止することができる。
【0062】
溶接工程においては、溶接装置近くの管の内側領域を溶接装置の上流側まで遮蔽するために、管の内側領域にスクレーパを配置して、溶接区域を水蒸気含有雰囲気から遮蔽し、管の内側をワイパ装置で拭くことが好ましい。
【0063】
図10を参照すれば、管の内側領域にスクレーパ26を配置し、溶接区域を水蒸気含有雰囲気から遮蔽し、管14の内側をワイパ装置27で拭くことにより、先行するロールフォーム成形工程における上述の各種の処理から残留する水または潤滑剤を、残渣を残すことなく除去することができる。これにより、さらに、潜在的な水素発生源へのアクセスを断つことができる。
【0064】
また、溶接工程においては、溶接に先立ち、管の移動方向に対して溶接装置の上流側で、管エッジ部を、空気流又は同種のガス流で清浄化及び/又は乾燥することが好ましい。
【0065】
図11は、溶接の直前における管エッジ部の清浄化及び乾燥を示す概略図である。溶接に先立ち、管の移動方向25に対して溶接装置20の上流側で、開断面管の長手方向のエッジ部の両端17及び18(図8)を、空気流28又は同種のガス流を使って、清浄化及び乾燥の少なくとも一方を行うことができる。これにより、開断面管の長手方向の溶接継ぎ目だけでなくエッジ両端部においても、水素による脆性破壊を防止することができる。
【0066】
さらに、管エッジ部を清浄化及び/又は乾燥するためのガス流は、高温ガス流であることが好ましい。ガス流が100〜800℃に加熱されていると、管エッジ部の清浄化及び/又は乾燥を効果的に行うことができる。
【0067】
本発明に係るロールフォーム成形された部品は、上述の本発明の方法によって製造することができる。本発明の方法によって製造される、引張強度が780MPaを超える高強度鋼板及び超高強度鋼板からロールフォーム成形された部品は、軽さと高い強度を併せ持ち、かつ水素による遅れ破壊や脆性破壊の発生が防止される。従って、特に、軽量化と強度を同時に要求する自動車用部品にロールフォーム成形されることが好ましい。自動車用部品としては、例えば、ロッカー、バンパー、サイドインパクトビーム、セキュリティー部品、ピラー、ルーフレール、クロスメンバー、サイドメンバー、スティフナー、及びサスペンションメンバーを挙げることができる。
【0068】
さらに、本発明に係るロールフォーム成形された部品は、引張応力を相殺して水素による脆性破壊を防止するために、スタンピング、研削、フライス加工、平削り若しくはシェービングされた長手方向の自由エッジ部、スタンピングされた曲がり領域、及び据込み鍛造された曲がり領域より成る群から選択される少なくとも1つを有する部品であることが好ましい。
【0069】
本発明に係るロールフォーム成形された部品において、長手方向の自由エッジ部のスタンピング、研削、フライス加工、平削り若しくはシェービング、及び曲がり領域のスタンピング及び据込み鍛造は、上述した本発明の方法を用いて、実施することができる。
【0070】
以上、本発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において、例示であって、本発明がそれらに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0071】
以下に、本発明に関する実施例が示されるが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0072】
(実施例1)ハットチャンネルへのロールフォーム成形試験
(実施例1−1)エッジ部のスタンピングによる圧縮応力の付与
引張強度が1300MPaの超高強度鋼板のストリップをロールフォームラインに搬入し、対向するロールスタンド間に通すとともに、成形ローラを作用させて、ロールフォーム成形を行い、ハットチャンネルを作製した。
【0073】
ロールフォーム成形中において、フランジエッジをローラでスタンピングすることにより、圧縮残留応力を付与し、これによってフランジ部の引張残留応力を相殺させることができるかどうかを検討した。スタンピングの角度は、エッジ面に対して45°であった。
【0074】
その結果、図2に示すように、フランジエッジのスタンピングが長手方向に圧縮残留応力を発生させることが確認された。
【0075】
得られたハットチャンネルを5%塩酸中に最長24時間までの所定の時間浸漬して、遅れ破壊を加速させ(5%塩酸浸漬試験)、浸漬後の目視により、ハットチャンネルにおける遅れ破壊の発生の有無を評価した。その結果、24時間浸漬後でも遅れ破壊は発生しなかった。
【0076】
(実施例1−2)成形中の中間ローラによる鋼板変形の制御
引張強度が1000MPaの超高強度鋼板のストリップを用いて、以下の処理を除いて、実施例1−1と同様にロールフォーム成形を行い、ハットチャンネルを作製した。
【0077】
すなわち、実施例1−1におけるスタンピングに代えて、ロールフォーム成形中において、ロールスタンド間に設けたガイドローラにより、フランジ部の曲げ曲げ戻し変形を制御し、これによりフランジ部の引張残留応力を低減させることができるかどうかを検討した。過曲げは、部品の曲げ角度より20°大きい曲げ角度で行った。
【0078】
その結果、5%塩酸浸漬試験では、24時間浸漬後でも遅れ破壊は発生しなかった。
【0079】
(実施例1−3)ダウンヒルフォームによる鋼板変形の制御
引張強度が1300MPaの超高強度鋼板のストリップを用いて、以下の処理を除いて、実施例1−1と同様にロールフォーム成形を行い、ハットチャンネルを作製した。
【0080】
すなわち、実施例1−1におけるスタンピングに代えて、ロールフォーム成形中において、鋼板ストリップに水平面から下降方向に曲げ加工を与える成形モードにより、フランジ部の伸び変形を制御し、これによりハットフランジに圧縮残留応力を付与できるかどうかを検討した。ダウンヒルモードにおける水平面からの下降サイズは、ハットの高さの30%の高さであった。
【0081】
その結果、5%塩酸浸漬試験では、24時間浸漬後でも遅れ破壊は発生しなかった。
【0082】
(実施例1−4)エッジ部の研削による塑性変形領域の除去
引張強度が1500MPaの超高強度鋼板のストリップを用いて、以下の処理を除いて、実施例1−1と同様にロールフォーム成形を行い、ハットチャンネルを作製した。
【0083】
すなわち、実施例1−1におけるスタンピングに代えて、ロールフォーム成形中において、ダウンヒルモードにおける水平面からの下降サイズをハット高さの10%の高さとするダウンヒル成形を行うとともに、フランジエッジ面の研削により、加工硬化層の除去と平滑化を行い、これによりフランジエッジ部への水素浸入量を低減させることができるかどうかを検討した。研削幅は0.1mm及び0.3mmであった。
【0084】
その結果、いずれの場合も、5%塩酸浸漬試験では、24時間浸漬後でも遅れ破壊は発生しなかった。
【0085】
(比較例1)
塑性変形領域に特別の圧縮応力を加える処理をすることなく、またエッジ部の研削による塑性変形領域を除去することもなく、引張強度が1300MPaの超高強度鋼板のストリップを用いて、通常のロールフォーム成形により作製したハットチャンネルを比較試験に供した。
【0086】
その結果、5%塩酸浸漬試験では、ハットチャンネルのフランジ部において、24時間浸漬後にすでに、遅れ破壊の発生が認められた。
【0087】
(実施例2)ロールフォーム成形された角パイプの溶接試験
(実施例2−1)パイプ内部の不活性ガスによる遮蔽
引張強度が1300MPaの超高強度鋼板のストリップをロールフォームラインに搬入し、対向するロールスタンド間に通すとともに、成形ローラを作用させて、長手方向両端部が対向する状態で長手方向に開口部を有する開断面管にロールフォーム成形した。この時、フランジ部について、ロールスタンド間に設けた中間ローラにより、部品の曲げ角度より15°大きい角度で過曲げ加工を行った。引き続いて、レーザー溶接により開口部を溶接して、角パイプを作製した。
【0088】
溶接中において、パイプ内部をHeガスで遮蔽しながら溶接し、レーザー溶接後の脆性破壊を防止することができるかどうかを検討した。
【0089】
所定の溶接速度でレーザー溶接を行い、角パイプの溶接継ぎ目における脆性破壊の発生の有無を評価した。その結果、溶接継ぎ目における脆性破壊は、発生しなかった。
【0090】
(実施例2−2)溶接部位の水分及び潤滑剤の除去
引張強度が1500MPaの超高強度鋼板のストリップを用いて、実施例2−1と同様にロールフォーム成形及びレーザー溶接を行い、角パイプを作製した。
【0091】
但し、溶接前に高圧エアを噴射して溶接部位に残留する水分及び潤滑剤を除去した後に、実施例2−1のようにパイプ内部をHeガスにより遮蔽しながら溶接し、レーザー溶接後の脆性破壊を防止することができるかどうかを検討した。
【0092】
その結果、溶接継ぎ目における脆性破壊は、発生しなかった。
【0093】
(比較例2)
引張強度が1300MPaの超高強度鋼板のストリップを用いてロールフォーム成形した開断面管について、通常のレーザー溶接により開口部を溶接して作製した角パイプを比較試験に供した。
【0094】
その結果、溶接継ぎ目における脆性破壊の発生が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】変形又はスタンピングによって、鋼板ストリップのエッジ部の応力状態に影響を与える処理を示す。
【図2】変形又はスタンピング処理をうけた鋼板ストリップのエッジ部を示す。
【図3】鋼板ストリップのエッジ部の引張応力を有する領域を除去する処理を示す。
【図4】ロールフォーム成形における下降方向の曲げ加工処理を示す。
【図5】ロールスタンド間に設けた中間ローラによる過曲げ曲げ戻しの変形処理を示す。
【図6】鋼板ストリップに対する中間ローラによる過曲げ処理を示す。
【図7】鋼板ストリップのエッジ部に対するスタンピングローラ又は除去ローラによる処理を示す概略図である。
【図8】長手方向に開口部を有し、開口部を形成する長手方向のエッジ部の両端を溶接して管とする開断面管を示す。
【図9】ロールフォーム成形における過スタンピングによる開断面管への変形処理を示す。
【図10】ロールフォーム成形工程に続く溶接工程において、管の内側領域に設けた水素侵入防止手段を示す概略図である。
【図11】溶接工程の直前における管エッジ部の清浄化及び乾燥を示す概略図である。
【符号の説明】
【0096】
1 鋼板ストリップのエッジ部
2 鋼板ストリップ
3 ローラ
4 ローラの接触面
5 エッジ部の自由端面
6 ローラ
7 自由エッジ部
8 研削面
10 中間ローラ
11 ロールスタンド
12 ロールスタンド
13 曲がり領域
14 開断面管
15 ローラ
16 ローラ
17 エッジ部の端部
18 エッジ部の端部
20 溶接装置
21 溶接継ぎ目
22 不活性ガス
23 不活性ガス放出手段
24 ノズル
25 管の移動方向
26 スクレーパ
27 ワイパ装置
28 空気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張強度が780MPaを超える高強度鋼板及び超高強度鋼板から、ロールフォーム成形された部品を製造する方法であって、
前記鋼板のストリップをロールフォーミング設備に供給し、前記ロールフォーミング設備において、対向するロールスタンド間に前記鋼板ストリップを通すとともに、前記鋼板ストリップに成形ローラを作用させることによって鋼板ストリップを変形させる工程、及び
変形させた前記鋼板ストリップの塑性変形領域における水素による脆性破壊を防止するために、スタンピング、据込み鍛造、曲げ加工、並びに過曲げ曲げ戻し加工より成る群から選択される少なくとも1種の処理により、前記塑性変形領域に圧縮応力を加える工程、及び/又は、切削加工又は研削加工により、前記塑性変形領域を除去する工程、
を備えるロールフォーム成形された部品を製造する方法。
【請求項2】
前記圧縮応力を加える塑性変形領域が、曲がりエッジ部、曲がり領域、及び長手方向の自由エッジ部より成る群から選択される少なくとも1つの領域である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧縮応力を加える塑性変形領域が長手方向のエッジ部であり、V字形の楔を有するローラ又は前記エッジ部に一致して作用する2個のローラを用いて、長手方向の自由エッジ部の上側と下側とに面取り面を押し当てることにより、長手方向エッジ部の前記スタンピング又は据込み鍛造を行う請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エッジ部の角度が垂直軸に対して15°〜60°の角度になるように、前記面取り面をエッジ部に押し当てる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ロールスタンド間に設けた付加的なローラにより、前記過曲げ曲げ戻しの変形処理を行う請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記過曲げの変形処理を行う過曲げ用ローラが、直線ローラ又は円錐形ローラである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記過曲げ用ローラを用いて、成形に必要な曲げ加工よりも大きい曲げ加工を行い、その後、後続のロールスタンドが、その過曲げを所望の部品形状に曲げ戻す請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記成形される部分がフランジ領域であり、前記フランジ領域について過曲げの変形処理を行う請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記過曲げ用ローラを、後続のロールスタンドまで100〜300mmの距離を離して配置する請求項6又は7に記載の方法。
【請求項10】
前記過曲げ角度が、所望の部品形状の曲げ角度より5°〜30°大きい請求項6又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記切削加工又は研削加工により除去する塑性変形領域が、長手方向の自由エッジ部である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記塑性変形領域を、フライス加工、研削、シェービング又は平削りによって除去する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記除去の範囲は、長手方向エッジ部の端から0.1〜0.5mm幅の範囲である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記除去の範囲は、前記長手方向エッジ部の端の傾斜角度が45°〜90°になるように、除去を行う請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記ロールフォーム成形された部品が、長手方向に開口部を有し、前記開口部を形成する長手方向のエッジ部の両端を溶接して管とする開断面管である請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
引張強度が780MPaを超える高強度鋼板及び超高強度鋼板から、ロールフォーム成形された部品を製造する方法であって、
前記鋼板のストリップをロールフォーミング設備に供給し、前記ロールフォーミング設備において、対向するロールスタンド間に前記鋼板ストリップを通すとともに、前記鋼板ストリップに成形ローラを作用させることによって、鋼板ストリップの長手方向両端部が対向する状態で、長手方向に開口部を有する開断面管に成形する工程、及び
前記開口部の長手方向に沿って溶接装置で溶接して長手方向の溶接継ぎ目を形成する溶接工程を備え、
前記溶接工程において、溶接継ぎ目が作られるべき管の内側に前記溶接装置の上流側から不活性ガスを流すことにより、水素を含まない遮蔽ガス雰囲気を確保した状態で溶接する、ロールフォーム成形された部品を製造する方法。
【請求項17】
前記溶接装置近くの管の内側領域を溶接装置の上流側まで遮蔽するために、前記管の内側領域にスクレーパを配置して、溶接区域を水蒸気含有雰囲気から遮蔽し、管の内側をワイパ装置で拭く請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記管の移動方向に対して前記溶接装置の上流側で、前記管エッジ部を、空気流又は同種のガス流で清浄化及び/又は乾燥する請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記管エッジ部を清浄化及び/又は乾燥するためのガス流が、高温ガス流である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法によって製造されるロールフォーム成形された部品であって、
引張応力を相殺して水素による脆性破壊を防止するために、スタンピング、研削、フライス加工、平削り若しくはシェービングされた長手方向の自由エッジ部、スタンピングされた曲がり領域、及び据込み鍛造された曲がり領域より成る群から選択される少なくとも1つを有する部品。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−148820(P2009−148820A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97573(P2008−97573)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(508102369)フェストアルピネ クレムス ゲーエムベーハー (2)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】