説明

ロール停止装置

【課題】各ロール間を通過したゴムがロールに巻き付いた場合、ロールの回転を速やかに停止させることのできるロール停止装置を提供する。
【解決手段】各ロール1の対向位置よりもロール1の回転方向下流側にロール1の外周面に近接して配置された可動板12と、可動板12がロール1の回転方向に動作したことを検知するスイッチとを備え、スイッチによって可動板12の動作を検知すると、各ロール1の回転を停止するようにしたので、各ロール1で圧延されたゴムAが一方のロール1に付着したまま一方のロール1に巻き付いた場合、ゴムAの当接により可動板12が回動してスイッチが作動し、各ロール1の回転を速やかに停止させることができる。これにより、ゴムAがロール1に一周以上巻き付くことがなく、ゴムAをロール1から剥がす作業を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタイヤの製造工程において、混練機から搬送されたゴムを一対のロールで圧延するロール圧延機に用いられるロール停止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤの製造工程において、混練機から搬送されたゴム(コンパウンド)を一対のロールで圧延することにより、ゴムをシート状に成形したり、或いは各ロール間にゴムを連続的に繰り返し通過させてゴムを混練する工程がある。この工程に用いるロール圧延機としては、互いに外周面が間隔をおいて対向するように横向きに配置された一対のロールを外周面の対向面が下方に向かうように回転させ、各ロール間に上方から投入されるゴムを各ロールによって圧延して下方のコンベアに送り出すようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−178257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記ロール圧延機では、各ロール間で圧延されたゴムが各ロールから剥がれて下方に送り出されるが、希に一方のロールに付着したままロールに巻き付く場合がある。このような場合、ロールの回転を速やかに停止させないと、ゴムがロールに一周以上巻き付き、これを剥がす作業に多大な手間を要するという問題がある。そこで、従来では、作業者が足蹴りスイッチ等の停止スイッチを操作して手動でロールの回転を停止するようにしているが、手動では作業者の対応が遅れて速やかに停止スイッチを操作することができない場合があるという問題点があった。
【0004】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、各ロール間を通過したゴムがロールに巻き付いた場合、ロールの回転を速やかに停止させることのできるロール停止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記目的を達成するために、互いに外周面が間隔をおいて対向するように配置された一対のロールを回転させ、各ロール間に投入されるゴムを各ロールによって圧延して送り出すロール圧延機に用いられるロール停止装置において、前記各ロールの対向位置よりもロールの回転方向下流側のロールの外周面に近接して配置され、ロールの回転方向に動作可能な可動部材と、可動部材がロールの回転方向に動作したことを検知する検知手段とを備え、検知手段によって可動部材がロールの回転方向に動作したことを検知すると、各ロールの回転を停止するように構成している。
【0006】
これにより、各ロールによって圧延されたゴムが一方のロールに巻き付いた場合、ロールに巻き付いたゴムの先端が可動板にロールの回転方向に当接して可動板が動作すると、可動板の動作が検知手段によって検知されて各ロールの回転が停止することから、ゴムがロールに一周以上巻き付くことがない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各ロールで圧延されたゴムが一方のロールに巻き付いた場合、各ロールの回転を速やかに停止させることができるので、ゴムがロールに一周以上巻き付くことがなく、ゴムをロールから剥がす作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1乃至図4は本発明の一実施形態を示すもので、図1はロール停止装置を備えたロール圧延機の側面図、図2はロール停止装置の斜視図、図3はその側面断面図、図4はその動作を示す側面断面図、図5はロール停止装置の動作を示すロール圧延機の側面図である。
【0009】
同図に示すロール圧延機は、互いに外周面が間隔をおいて対向するように横向きに配置された一対のロール1を外周面の対向面が下方に向かうように回転させ、各ロール間に上方のコンベア2から投入されるゴムAを各ロール1によって圧延して下方のコンベア3に送り出すようになっている。
【0010】
本実施形態のロール停止装置10は、下面を開口した装置本体11と、装置本体11の下面側に上下方向に回動自在に設けられた可動板12と、可動板12を下方に付勢するスプリング13と、可動板12の下方への移動を所定位置で規制する下側ストッパ14と、可動板12の上方への移動を検知する検知手段としてのスイッチ15とから構成されている。
【0011】
装置本体11は金属製の箱状の部材からなり、その上面には複数の円形の孔11aが設けられている。装置本体11の背面壁11b(図中左側)は前面壁11c(図中右側)よりも下方に長く形成され、前面壁11cの下端は可動板12の上方への移動を規制する上側ストッパをなす。
【0012】
可動板12は金属製の平板からなり、その後端は蝶番12aを介して装置本体11の背面壁11bに回動自在に連結されている。可動板12の前端側は装置本体11の前面壁11cよりも前方に長く形成され、可動板12が上方に回動すると装置本体11の前面壁11cの下端に当接するようになっている。
【0013】
スプリング13は上端を装置本体11内の上面に固定され、その下端は可動板12の上面に圧接している。
【0014】
下側ストッパ14は、装置本体11内の上面に固定された第1の当接部材14aと、可動板12の上面に固定された第2の当接部材14bとからなり、第1の当接部材14aの下端側と第2の当接部材14bの上端側とが互いに当接することにより、可動板12の下方への移動を規制するようになっている。この場合、第2の当接部材14bはシャフト14cの上端に設けられ、第1の当接部材14aの下端側にはシャフト14cを挿通する切り欠き14dが設けられている。即ち、切り欠き14dの縁部に第2の当接部材14bが上方から当接するようになっている。
【0015】
スイッチ15は装置本体11内の上面に固定され、その下端には押圧部15aが設けられている。押圧部15aは、可動板12が下方位置(下側ストッパ14との当接位置)にあるときは可動板12と離れており、可動板12が上方に回動すると、可動板12が上方位置(前面壁11cとの当接位置)に達するまでに可動板12に押圧されるようになっている。即ち、スイッチ15はロール圧延機の駆動制御部に接続され、押圧部15aが押圧されると、各ロール1の回転が停止するようになっている。
【0016】
以上のように構成されたロール停止装置10は、装置本体11の上面をロール圧延機の上方のコンベア2の下面に固定することにより取付けられるとともに、可動板12の前端側が一方のロール1(図中左側)の外周面に近接するように配置される。この場合、可動板12は各ロール1の対向位置よりもロール1の回転方向下流側に位置している。
【0017】
ロール圧延機では、各ロール1間で圧延されたゴムAが各ロール1から剥がれて下方に送り出されるが、図5に示すように、圧延されたゴムAが一方のロール1(図中左側)に付着したまま一方のロール1に巻き付く場合がある。この場合、各ロール1が回転し続けると、ロール1に巻き付いたゴムAの先端がロール停止装置10の可動板12に下方から当接し、可動板12が回動してスイッチ15が作動する。これにより、各ロール1の回転が停止し、ゴムAがロール1に一周以上巻き付くことがない。
【0018】
このように、本実施形態のロール停止装置10によれば、各ロール1の対向位置よりもロール1の回転方向下流側にロール1の外周面に近接して配置された可動板12と、可動板12がロール1の回転方向に動作したことを検知するスイッチ15とを備え、スイッチ15によって可動板12の動作を検知すると、各ロールの回転を停止するようにしたので、各ロール1で圧延されたゴムAが一方のロール1に付着したまま一方のロール1に巻き付いた場合、ゴムAの当接により可動板12が回動してスイッチ15が作動し、各ロール1の回転を速やかに停止させることができる。これにより、ゴムAがロール1に一周以上巻き付くことがなく、ゴムAをロール1から剥がす作業を容易に行うことができる。また、ロール1に巻き付いたゴムAが可動板12に当接する前に作業者が手作業でゴムAを剥がそうとした場合でも、作業者の手指との接触により可動板12が回動すると、各ロール1の回転が停止するので、作業者に対する安全性の確保にも効果的である。
【0019】
更に、可動板12が回動自在に連結された装置本体11と、可動板12をロール1の回転方向反対側に付勢するスプリング13と、可動板12の回動を所定範囲内に規制する上側ストッパ(装置本体11の前面壁11c)及び下側ストッパ14とを備え、可動板12の動作がストッパによる動作規制範囲内でスイッチ15により検知されるようにしたので、可動板12の動作とスイッチ15の作動とを確実に連動させることができる。この場合、スプリング13の付勢力により可動板12をロール1の回転方向反対側に保持することができるので、単なる振動等によって可動板12が容易に回動することがなく、誤動作の防止に効果的である。
【0020】
また、装置本体11に複数の孔11aを設けたので、装置本体11の軽量化を図ることができ、ロール圧延機に容易に取付けることができる。
【0021】
尚、前記実施形態では、ロール停止装置10を一方のロール1側(図中左側)に設けたものを示したが、他方のロール1側(図中左側)、または両方のロール1側に設けるようにしてもよい。
【0022】
また、前記実施形態では、可動板12を金属板によって形成したものを示したが、可動板12を合成樹脂または木材によって形成することにより、より軽量化を図ることができる。この場合、装置本体11も合成樹脂または木材によって形成するようにしてもよい。
【0023】
更に、前記実施形態では、可動板12を平板状に形成したものを示したが、図6に示すように前端側及び後端側をそれぞれ上方に屈曲した可動板16を用いるようにしてもよい。この場合、装置本体11は背面を開口しており、可動板16は後端壁16aの上端を蝶番16bを介して装置本体11の後端に回動自在に連結されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示すロール停止装置を備えたロール圧延機の側面図
【図2】ロール停止装置の斜視図
【図3】ロール停止装置の側面断面図
【図4】ロール停止装置の動作を示す側面断面図
【図5】ロール停止装置の動作を示すロール圧延機の側面図
【図6】変形例を示すロール停止装置の側面断面図
【符号の説明】
【0025】
1…ロール、10…ロール停止装置、11…装置本体、11c…前面壁、12…可動板、13…スプリング、14…下側ストッパ、15…スイッチ、16…可動板、A…ゴム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに外周面が間隔をおいて対向するように配置された一対のロールを回転させ、各ロール間に投入されるゴムを各ロールによって圧延して送り出すロール圧延機に用いられるロール停止装置において、
前記各ロールの対向位置よりもロールの回転方向下流側のロールの外周面に近接して配置され、ロールの回転方向に動作可能な可動部材と、
可動部材がロールの回転方向に動作したことを検知する検知手段とを備え、
検知手段によって可動部材がロールの回転方向に動作したことを検知すると、各ロールの回転を停止するように構成した
ことを特徴とするロール停止装置。
【請求項2】
前記可動部材を回動自在に支持する装置本体と、
可動部材をロールの回転方向反対側に付勢するスプリングと、
可動部材の回動を所定範囲内に規制するストッパとを備え、
可動部材の動作がストッパによる動作規制範囲内で検知手段により検知されるように構成した
ことを特徴とする請求項1記載のロール停止装置。
【請求項3】
前記装置本体に孔を設けた
ことを特徴とする請求項1または2記載のロール停止装置。
【請求項4】
前記可動部材及び装置本体の少なくとも一方を合成樹脂によって形成した
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のロール停止装置。
【請求項5】
前記可動部材及び装置本体の少なくとも一方を木材によって形成した
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のロール停止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−83083(P2010−83083A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256705(P2008−256705)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】