説明

ロール及び洗浄装置

【課題】ロール部に吸収された液体を、迅速、且つ均一に吸引してロールの外部に排出すると共に、ロールの回転バランスが保持され、長期間に亘って、被洗浄面から均一に液体を除去、搾取、洗浄することができる耐久性に優れたロール、及びそのロールを搭載した洗浄装置を提供する。
【解決手段】ロールはロール部及び台座を有し、台座は開口部が形成された本体部、及び本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有し、継ぎ手部A及び継ぎ手部Bは中空部が形成され、中空部は開口部と連通されてあり、本体部の外周には開口部に連通する孔部が開設されてあると共に、ロール部が形成され、ロール部は不織布からなる概円環状の複数のロール片が積層されると共に、内周に切欠き部が設けられたロール片を有し、切欠き部が本体部の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部が形成され、孔部のロール部側に流体導入溝部が位置するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロール、及びそのロールを搭載した洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のロールに関しては、不織布ロール、ゴムロール等が一般的に使用され、例えば、不織布ロールに関しては、極細繊維が立体的に絡合された不織布の空隙部に高分子弾性体が多孔質構造で充填された繊維質シートからなるディスク状物を多数枚重畳してなる吸液ロール(特許文献1)がある。
【0003】
特許文献1の吸液ロールは、液体を吸引するのに必要な外部装置を備えていない為、不織布層からなるロール部が徐々に吸液飽和状態となる。液体を吸引するのに必要な外部装置を備えていないロールにおける液体除去機能は、コンプレッサー等を介してエアー圧、油圧等の一定の圧力がかかりながら回転しているロールに、液体が付着した被洗浄面が接触することにより、液体を被洗浄面の両端部から流し去るダム機能と、ロールが回転しながら被洗浄面に接触して圧力により圧縮される圧縮ゾーンにおいて、ロール部の空隙部に吸収された液体を被洗浄面に一旦放出し、次いでロールが圧力による圧縮から開放される開放ゾーンにおいて、不織布を形成する繊維質の毛細管現象により被洗浄面の液体がロール部に吸い上げられ、ロール部の空隙部に放出される仕組みからなる吸排機能とから構成されている。前記ダム機能はゴムロール等にも発現する機能であるが、前記吸排機能は不織布ロールに特有の機能である。すなわち、不織布に充填された高分子弾性体が弾性変形する為、ロール部の空隙率が前記圧縮ゾーンで0%となり、前記開放ゾーンで元の空隙率に復元することにより発現する。しかし、液体がロール部の空隙部に吸収、及び空隙部から排出されることを繰り返すと、高分子弾性体は液体と接触することにより、徐々に膨潤して弾性率が低下し、前記開放ゾーンで元の空隙率に復元することができなくなる。その為、空隙率が減少したロール部の空隙部には、繊維質の毛細管現象により吸い上げられた液体の全量を放出することができず、ロール部は吸液飽和状態となり、液体除去機能が長期間に亘って持続しないという問題を有していた。なお、高分子弾性体の弾性率と膨潤度の関係は、弾性率は膨潤度の3/5乗に反比例するというフローリーのゴム弾性の理論が知られている。
【0004】
上記問題を解決するために、吸液機能を備えた軸本体、及びこの軸本体に圧着重畳された不織布シートで構成する不織布ロールと、当該不織布ロールと配管を介し連通される真空ポンプとで構成される、送出、吸液機能を備えた不織布ロールを利用する吸液方法であって、この吸液方法は、吸引抵抗による真空値、及び毛細管の機能を高めることを意図して、前記不織布部をウエットな吸液状態にして使用し、かつこの使用状態で前記軸本体に多数千鳥状等に開設した透孔を介して、前記吸液状態にある不織布部内部に於いて、不織布ロール外表面方向に向かってほぼ倒円錐形状に有効な吸液、送液毛細管部を作用せしめるとともに、前記真空吸引力の一部が前記不織布ロールの外表面に於いて重畳作用するように構成したことにより、前記真空吸引力を当該不織布ロールの外表面で均一作用させる構成とした不織布ロールを利用する吸液方法と、この吸液方法に使用する吸液ロール装置(特許文献2)が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−262586号公報
【特許文献2】特開平7−120145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の不織布ロールを利用する吸液方法と、この吸液方法に使用する吸液ロール装置は、不織布ロールの有するダム機能と吸排機能に加えて、ロール部に吸収された液体は、真空ポンプにより、透孔、空洞部、貫通孔を介して不織布ロール外部に排出されるので、吸液に必要な外部装置を備えていない不織布ロールに比べて、ロール部の吸液飽和状態は抑制され、液体除去機能は長期間に亘って持続される。しかしながら、前記不織布ロールは、軸本体の一方の端部からのみ液体を吸引する構成であり、真空吸引力にバラツキが発生しやすい。すなわち、真空ポンプに近い軸本体の一方の端部では真空吸引力が強く、真空ポンプから離れている軸本体の他方の端部では真空吸引力が弱くなる。その為、不織布シートに吸収された液体を均一に吸引することが難しいという課題を有していた。
【0007】
上記の現象は、一般的に摩擦エネルギー損失と呼ばれている。不織布部の内部に吸収された液体は、真空吸引力により、流体となって、透孔、空洞部、貫通孔を介して不織布ロールの外部に排出されるが、流体が流れる際、空洞部の内壁面や流体同士の接触に伴う摩擦によりエネルギーの損失が発生する。空洞部における流体の移動距離が短ければ、エネルギー損失は小さく、真空吸引力も強く作用するが、流体の移動距離が長ければ、エネルギー損失は大きく、真空吸引力が弱くなるのである。
【0008】
また、真空ポンプに近い軸本体の一方の端部は中空状であり、真空ポンプから離れた軸本体の他方の端部は中実状であり、軸本体の両端部において重量差が生じる。その為、不織布ロールの回転バランスが悪く、被洗浄面に不織布シートが均一に摺接し難くいことから、被洗浄面から液体を均一に除去できず、被洗浄面に残滓マークが発生しやすいという課題も有していた。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、ロール部に吸収された液体を、迅速、且つ均一に吸引してロールの外部に排出すると共に、ロールの回転バランスが保持され、長期間に亘って、被洗浄面から均一に液体を除去、搾取、洗浄することができる耐久性に優れたロール、及びそのロールを搭載した洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決する為に、請求項1の発明のロールは、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記台座は開口部が形成された本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bは中空部が形成され、前記中空部は前記開口部と連通されてあり、前記本体部と前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bの接合部の近傍は、前記開口部の開口面積が、前記本体部の略中央部の開口面積より小となるよう徐変部が形成され、前記本体部の外周には前記開口部に連通する孔部が開設されてあると共に、前記ロール部が形成され、前記ロール部は不織布からなる概円環状の複数のロール片が積層されると共に、内周に切欠き部が設けられた前記ロール片を有し、前記切欠き部が前記本体部の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部が形成され、前記孔部の前記ロール部側に前記流体導入溝部が位置するもので、台座は開口部、及び中空部にて中空状に貫通して形成されてあることから、本体部の両端部に連接された継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bは、共に配管を介して真空ポンプに接続することができる。従って、ロール部に吸収された液体を、台座の両方の端部から同時に吸引することができるので、流体は開口部の長手方向における略中央部より台座の両端部に向けて略同一の距離にて移動することから、流体の摩擦エネルギー損失の発生が極力抑えられ、真空吸引力のバラツキの発生がなく、ロール部に吸収された液体を、迅速、且つ均一に吸引してロールの外部に排出する。その為、ロール部の吸液飽和状態が解消され、ロールの耐用年数の長期化を図ることができる。
【0011】
台座を構成する継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bは、共に中空部を有し、中空状であることから、台座の両端部において重量差が生じることがなく、ロールの回転バランスが保持される。その為、ロール部は被洗浄面に均一に摺接するので、被洗浄面から均一に液体を除去、搾取、洗浄することができる。
【0012】
台座を構成する本体部と継ぎ手部A及び継ぎ手部Bの接合部の近傍は徐変部が形成されてあることから、孔部を介してロール部から本体部の開口部に吸引された液体は、開口部に滞留することなく、徐変部の傾斜面に沿って、継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bに形成された中空部に流入し、ロールの外部に排出される。なお、本体部の両端部に傾斜面を有する徐変部が形成されていない場合、本体部と継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bの連接箇所において、還流が発生し、流体が本体部の開口部に滞留することになり、効率よく確実に液体を吸引することが難しくなる。また、真空ポンプにたいする負荷も増大する。
【0013】
ロール部は不織布からなる概円環状の複数のロール片が積層されると共に、内周に切欠き部が設けられたロール片を有し、切欠き部が本体部の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部が形成され、流体導入溝部は孔部と対向して形成されていることから、ロール部に吸収された液体は、真空吸引力により、流体導入溝部を介して、均一に孔部から開口部に流入することができる。その為、ロールは、ロール部に流体導入溝部が形成されておらず、孔部がロール片の内周と略接触するよう形成された形態に比べて、ロール部に吸収された液体を、迅速、且つ均一に吸引してロールの外部に排出することが可能となる。なお、本発明のロールは、ロール片の内周に形成された切欠き部が連なることにより、流体導入溝部が形成されることから、台座に流体導入溝部を加工する必要がなく、低コストで台座を製作することができる。さらに、同一台座にて、必要に応じてロール片を交換するのみで、違う形状の切欠き部を用いて流体導入溝部を形成することができる。
【0014】
請求項2の発明のロールは、特に、請求項1のロールにおいて、流体導入溝部はロール部の長手方向における一方の端部の近傍と他方の端部の近傍との範囲内に形成されてあるもので、ロール部の両端部の近傍には流体導入溝部が形成されていない。その為、真空吸引力により発生する流体は、ロール部の両端部からロールの外部に流出することがなく、ロール部に吸収された液体は、流体となって流体導入溝部、孔部、開口部、中空部の順に確実にロールの外部に流出する。従って、圧力損失がなく、ロール部からの液体の吸引性能が大幅に向上する。
【0015】
請求項3の発明のロールは、特に、請求項1から2のロールにおいて、ロール部はロール片よりも回転外径が小である補強部材を有するもので、ロール部の表面部は、芯部に比べて硬度が低く、柔軟性が高いことから、ロールの弾力性が向上し、ロール部と被洗浄面の接触面積が広がり、被洗浄面から効率よく確実に液体が除去、搾取、洗浄される。一方、ロール部の芯部は、ロール片と補強部材が積層されているので、表面部に比べて硬く、ロールの回転中において、ロール片が本体部から位置ズレを生じ、ロール部の表面部に凹凸が発生することが防止される。その為、ロールは被洗浄面に残滓マークを発生させることがなく、被洗浄面に付着した液体を、確実に除去、搾取、洗浄することができると共に、高い耐久性を保持することができる。
【0016】
請求項4の発明のロールは、特に、請求項3のロールにおいて、補強部材の内周には切欠き部が形成されてあるもので、ロール部は補強部材が積層されてあっても、連続的に形成された流体導入溝部が確保される為、流体の流れが補強部材により遮断されることがない。その為、流体を均一にロール部から開口部に吸引することができる。
【0017】
請求項5の発明のロールは、特に、請求項1から4のロールにおいて、ロール片及び補強部材の有する切欠き部は内周の等分箇所に形成されてあるもので、ロールは回転時のバランスがよく、回転ブレを発生することがなく、安定した回転が保持される為、長期間に亘り、優れた液体除去性能が発揮される。
【0018】
請求項6の発明のロールは、特に、請求項1から5のロールにおいて、本体部の外周にたいする孔部の開口面積の比率が、本体部の端部の近傍よりも略中央部の方が大にて形成されてあるもので、本体部の略中央部の近傍において、より多くの流体が流体導入溝部に沿って流れると共に、孔部を介して開口部に流出する。ところで、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面は、さまざまな幅のものがロール部に接触し、通過するが、ロール部の略中央部の近傍は、必ず前記被洗浄面が通過する。従って、ロール部の略中央部の近傍は、最も液体が吸収される箇所である。その為、本体部の略中央部の近傍から、より多くの流体が開口部に流れ込む形態とすることにより、ロール部からの液体の吸引性能が飛躍的に向上する。
【0019】
請求項7の発明の洗浄装置は、請求項1から6のいずれか1項に記載されたロールと、前記ロールを回転駆動する駆動手段と、継ぎ手部A及び継ぎ手部Bに配管を介して連通される真空ポンプを有するもので、長期間に亘って、被洗浄面から液体を確実に除去、搾取、洗浄することができるロールが搭載されていることから、優れた液体除去性能が発揮される。その為、被洗浄面に液体が不均一に残る残滓マークの発生が抑制され、被洗浄面の品質の向上につながる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明のロールは、ロール部に吸収された液体を、迅速、且つ均一に吸引してロールの外部に排出すると共に、ロールの回転バランスが保持され、長期間に亘って、被洗浄面から均一に液体を除去、搾取、洗浄することができる。
【0021】
請求項2の発明のロールは、流体がロール部の両端部からロールの外部に流出することがなく、ロール部から確実に吸引され、ロールの外部に流出するので、ロール部からの液体の吸引性能が大幅に向上する。
【0022】
請求項3の発明のロールは、被洗浄面に残滓マークを発生させることがなく、被洗浄面に付着した液体を、確実に除去、搾取、洗浄することができると共に、高い耐久性を保持することができる。
【0023】
請求項4の発明のロールは、流体の流れが補強部材により遮断されることがなく、流体を均一にロール部から開口部に吸引することができる。
【0024】
請求項5の発明のロールは、回転時のバランスがよく、回転ブレを発生することがなく、安定した回転が保持され、長期間に亘り、優れた液体除去性能を発揮することができる。
【0025】
請求項6の発明のロールは、本体部の略中央部の近傍から、より多くの流体が開口部に流れ込むことから、多量の液体を吸収するロール部の略中央部の近傍において液体が吸引しやすくなり、ロール部からの液体の吸引性能が飛躍的に向上する。
【0026】
請求項7の発明の洗浄装置は、搭載されたロールにより優れた液体除去性能が発揮されることから、被洗浄面に液体が不均一に残る残滓マークの発生が抑制され、被洗浄面の品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施例におけるロールの正面図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】台座の正面図である。
【図4】(a)本体部の非形成領域の外周に積層されるロール片の平面図、(b)本体部の形成領域の外周に積層されるロール片の平面図である。
【図5】本発明の第2の実施例におけるロールの断面図である。
【図6】(a)本体部の非形成領域の外周に積層されるロール片の平面図、(b)本体部の形成領域の外周に積層されるロール片の平面図、(c)本体部の非形成領域の外周に積層される補強部材の平面図、(d)本体部の形成領域の外周に積層される補強部材の平面図である。
【図7】本発明の第3の実施例におけるロールに用いられる台座の正面図である。
【図8】(a)本体部の非形成領域の外周に積層されるロール片の平面図、(b)本体部の形成領域の外周に積層されるロール片の平面図、(c)本体部の集中形成領域の外周に積層されるロール片の平面図、(d)本体部の非形成領域の外周に積層される補強部材の平面図、(e)本体部の形成領域の外周に積層される補強部材の平面図、(f)本体部の集中形成領域の外周に積層される補強部材の平面図である。
【図9】本発明のロールが搭載された洗浄装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
図1から図4を用いて、実施例1のロールについて説明する。
【0030】
図1、及び図2において、ロール1は、台座3、止め金具5、プレート6、及び複数のロール片4a、4bからなるロール部2より構成されている。台座3は、鉄等の金属材料からなり、外周にロール部2が形成されてあると共に、開口部10を有する本体部7、及び本体部7の両方の端部に連接されると共に、中空部11を有する継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9から形成されている。ロール部2は、複数のロール片4a、4bが台座3を構成する本体部7の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具5、及びプレート6にて挟み付けられて形成されてある。止め金具5には、スナップリングが使用されている。
【0031】
図2、及び図3において、台座3を構成する本体部7は、長手方向と略平行となるよう外周に複数の円形の孔部13が形成されている。孔部13は、本体部7の外周等分6箇所に設けられていると共に、本体部7の長手方向に亘る全長の内、両端部の近傍における非形成領域Lを除く形成領域Lの範囲内にて開設されている。さらに、孔部13は、本体部7の有する開口部10に連通している。孔部13の形状は円形以外にも、概三角形、概四角形等の多角形状、星型、十字型等の異形断面形状であってもよい。また、継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9は、中空部11が設けられてあると共に、一方の端部には、ロータリージョイント(図示せず)が接続されるネジ部12が形成されてあり、他方は本体部7の端部に、溶接による接合部16を介して連接されている。従って、本体部7の有する開口部10と、継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の有する中空部11は、必然的に連通することになる。継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9に形成された窪み部15には、止め金具5が嵌合挿入される。
【0032】
また、本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の接合部16の近傍には、傾斜面を有して徐変部71が形成されている。従って、本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の接合部16の近傍は、開口部10の開口面積が、本体部7の略中央部の開口面積より小さくなる。
【0033】
図4(a)において、ロール片4aは、中心部に穴部18、外周に側縁部19が形成された概円環状の不織布17からなる。不織布17は、複数本の繊維(図示せず)を有する。ロール片4aは、図2、及び図3の如く、台座3を構成する本体部7の長手方向に亘る両端部の近傍、すなわち孔部13が本体部7の外周に開設されていない非形成領域Lの範囲に積層される。
【0034】
図4(b)において、ロール片4bは、中心部に穴部18、外周に側縁部19が形成された概円環状の不織布17からなる。不織布17は、複数本の繊維(図示せず)を有する。また、ロール片4bは、内周の等分6箇所に、概U字状の切欠き部20が形成されている。ロール片4bは、図2、及び図3の如く、台座3を構成する本体部7の長手方向に亘る両端部の近傍における非形成領域Lを除く孔部13が外周に開設された形成領域Lの範囲内に積層される。そして、切欠き部20が本体部7の形成領域Lに亘って連なることにより、図2の如く、複数の流体導入溝部14が形成されると共に、孔部13のロール部2側に流体導入溝部14が位置するよう設定される。すなわち、孔部13と、流体導入溝部14は対向するよう形成される。ロール片4bの内周に形成される切欠き部20の数は、本体部7の外周に開設される孔部13の円周上の数に応じて変更される。さらに、切欠き部20の形状は、概U字状以外にも、概V字状、概凹状等であっても構わない。
【0035】
なお、ロール部2は、ロール1に使用する総数のロール片4a、4bより形成される。非形成領域Lに位置するロール片4aと形成領域Lに位置するロール片4bは、同一材質の不織布17であり、外径、及び内径の寸法は略同一である。また、特に図示しないが、台座3にたいするロール片4a、4bの位置ズレを防止する為に、ロール片4a、4bの内周に凹状の溝部を形成すると共に、台座3を構成する本体部7の長手方向の外周に凸状のキーを装着して、前記凹状の溝部を凸状のキーに嵌合挿入することにより、ロール片4a、4bを、本体部7の外周に積層してもよい。
【0036】
次に、ロール1の製作方法について説明する。
【0037】
最初に、外周に孔部13が開設され、開口部10を有する略円筒形状の本体部7を用意する。次いで、中空部11、及び傾斜面を有する徐変部71が形成された中空状の継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9を、本体部7の両方の端部に挿入し、圧入、あるいは焼きバメすると共に、溶接による接合部16を介して本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9を一体化し、台座3を形成する。本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の連接方法は、台座3の強度が保持されるのであれば、ネジ止め、ボルト締め等の方法であっても構わない。
【0038】
次に、複数本の繊維を有する平板状の不織布17を用意し、不織布17をトムソン型、あるいはレーザーカッター等を用いて、穴部18、及び側縁部19を有する概円環状のロール片4aと、穴部18、側縁部19、及び内周の等分6箇所に切欠き部20を有する概円環状のロール片4bに打ち抜く。次いで、ロール片4aを複数重ね合わせて、穴部18を台座3にたいして貫通させ、本体部7の外周に孔部13が開設されていない一方の非形成領域Lの範囲の近傍に積層する。次に、ロール片4bを複数重ね合わせて、穴部18を台座3にたいして貫通させ、本体部7の外周に孔部13が開設された形成領域Lの範囲の近傍に積層する。その際、切欠き部20が長手方向に連なるように積層し、切欠き部20が連なることにより形成される流体導入溝部14と、孔部13が対向するようにする。次に、ロール片4aを複数重ね合わせて、穴部18を台座3にたいして貫通させ、本体部7の外周に孔部13が開設されていない他方の非形成領域Lの範囲の近傍に積層する。そして、非形成領域Lの範囲にロール片4a、形成領域Lの範囲にロール片4bが位置するよう台座3の長手方向からプレス機にて所定長さだけ圧縮させ、止め金具5、及びプレート6にて複数のロール片4a、4bを挟み付けて固定する。次に、所定時間放置することにより、重ね合わせた複数のロール片4a、4bの内部応力を均一化させ、側縁部19を切削加工及び研磨加工し、台座3を構成する本体部7の外周にロール部2を形成してロール1が製作される。
【0039】
ロール部2の表面部の硬度は、40°〜95°程度に設定されるのが望ましい。硬度が40°未満の場合、硬度が低すぎて、被洗浄面の端面が繰り返しロール部2に当接すると、早期にロール部2が摩耗する。また、硬度が95°を超えると、硬度が高すぎて、ロール1の弾力性が劣り、効果的にダム機能、及び吸排機能を発揮することが難しくなる。なお、硬度とは物質の硬さを表わし、JISK6253加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法に記載のデュロメータ硬さ試験により測定した硬度である。
【0040】
孔部13の直径、流体導入溝部14の幅、深さについては、特に限定されるものではないが、例えば、孔部13の直径は1〜8mm程度、流体導入溝部14の幅は2〜30mm程度、深さは0.1〜20mm程度に設定されるのが望ましく、流体導入溝部14の幅は、孔部13の直径よりも大きく設定される必要がある。孔部13の直径が1mm未満の場合、径が小さすぎて効率よく流体をロール部2から吸引することができず、8mmを超える場合、径が大きすぎて一孔あたりの流体を吸引する力が弱くなる。また、流体導入溝部14の幅が2mm未満の場合、幅が狭すぎて効率よく流体が流れることができず、30mmを超える場合、広すぎてロール片4bの内周と本体部7の間に隙間部分が増大し、ロール1の回転に伴い、ロール片4bが位置ズレを発生しやすくなる。流体導入溝部14の深さが0.1mm未満の場合、浅すぎて効率よく流体が流れることができず、20mmを超える場合、深すぎてロール片4bの肉厚が薄くなり、ロール1の弾力性が劣ることになる。
【0041】
次に、ロール片4a、4bを構成する不織布17の製造方法について、いくつか述べる。
【0042】
第1の方法は、複数本の繊維を、平板状に集積させて布状体を形成し、前記布状体を複数枚、重ね合わせた後、特殊な針を突き刺して、3次元に絡合された不織布17を得る。前記の製造方法は、一般的には、ニードルパンチングと呼ばれている。また、布状体はウエッブと呼ばれている。得られた不織布17は、ポリウレタン溶液中に含浸され、不織布17にポリウレタンを充填させる。次いで、ポリウレタンを充填させた不織布17を、水中に浸漬させると共に、水中に二酸化炭素を注入し、炭酸発泡させることにより、不織布17、及び極微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンよりなる平板状の二重構造体を形成する。なお、不織布17を形成する繊維には、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、別名ウレタン弾性糸とも呼ばれるスパンデックス繊維等が単独使用、あるいは併用される。
【0043】
第2の方法は、複数本の繊維を、平板状に集積させて布状体となるウエッブを形成し、ニードルパンチングにより3次元に絡合された不織布17を得る。得られた不織布17にたいして、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて付着させ、加熱することにより不織布17を形成する繊維の間を結合させるもので、前記の製造方法により得られた不織布17は、一般的にケミカルボンド法不織布と呼ばれている。なお、不織布17を形成する繊維には、綿、レーヨン、セルロース等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維が単独使用、あるいは併用される。また、高分子弾性体には、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、ウレタンゴム、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が単独使用、あるいは併用される。また、架橋剤は、前記高分子弾性体の分子間に橋架け構造を形成し、一段と優れた弾力性を高分子弾性体に付与する目的で配合されるものであり、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメラミン樹脂、ブロックイソシアネート等のイソシアネート樹脂、脂肪族エポキシ等のエポキシ樹脂を単独、あるいは併用して用いることができる。
【0044】
第3の方法は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂を溶融紡糸すると共に、得られた合成繊維にたいして100〜150kgf程度の高圧水流を噴射することにより、繊維を絡合させる。次いで、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて繊維に付着させ、加熱することにより不織布17を形成するもので、前記の製造方法により得られた不織布17は、一般的に水流絡合法不織布と呼ばれている。
【0045】
上記に示した不織布17の製造方法は代表的な例であり、上記以外にも、例えば、熱溶融した合成樹脂を連続的に紡糸して繊維を形成し、繊維を延伸しながら捕集ネット上に集積して熱ロールで加圧することにより繊維を結合して不織布17を形成するスパンボンド法、熱溶融した合成樹脂を紡糸口から吐出する際、高温エアーで紡出し、捕集ネット上で加熱された繊維を結合させて不織布17を形成するメルトブロー法、塩化メチレン、フロン等の低沸点溶剤中に合成樹脂を溶解し、紡糸口から加熱、加圧状態で繊維を紡糸すると同時に、前記低沸点溶剤を揮発させ、繊維を捕集ネット上に集積し、熱ロールで加圧して繊維を結合して不織布17を形成するフラッシュ紡糸法、融点の異なる複数の合成樹脂を溶融して融点の高い方の合成樹脂を紡糸して繊維を形成し、溶融された融点の低い方の合成樹脂をバインダーとして繊維を接着させて不織布17を形成するファイバーボンド法やサーマルボンド法等により製造された不織布17を用いても構わない。なお、不織布17は、ロール1に形成された場合、被洗浄面の繰り返しの当接に強く、繊維がほつれ難く、織布、編物等の他の布帛をロール1に用いた場合に比べて、ロール1の耐久性の向上につながる。
【0046】
ロール片4a、4bに用いられる不織布17の選択については、ロール1が使用される雰囲気温度、除去対象となる液体の性状等の使用条件、コスト等を考慮して、適宜、決定されるものである。
【0047】
上記の如く構成されたロール1の動作、作用は下記の通りである。
【0048】
ロール1はロール部2及び台座3を有し、台座3は開口部10が形成された本体部7、及び本体部7の両端に連接される継ぎ手部A8及び継ぎ手部B9を有し、継ぎ手部A8及び継ぎ手部B9は中空部が形成され、中空部11は開口部10と連通されてあり、本体部7と継ぎ手部A8及び継ぎ手部B9の接合部16の近傍は、開口部10の開口面積が、本体部7の略中央部の開口面積より小さくなるよう傾斜面を有する徐変部71が形成され、本体部7の外周には開口部10に連通する孔部13が開設されてあると共に、ロール部2が形成され、ロール部2は不織布17からなる概円環状の複数のロール片4a、4bが積層されると共に、内周に切欠き部20が設けられたロール片4bを有し、切欠き部20が本体部7の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部14が形成され、孔部13のロール部2側に流体導入溝部14が位置するので、液体が付着した被洗浄面は、ロール部2と接触すると、ロール1のダム機能と吸排機能により、液体が除去される。ロール1は、吸排機能により、ロール部2を構成する不織布17が有する繊維の毛細管現象により、ロール部2の内部に液体を放出すると共に、外部に排出する。ロール1は、台座3を構成する継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9に中空部11が形成されると共に、本体部7に開口部10が形成され、中空部11と開口部10は連通している。継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9のネジ部12に図示しないロータリージョイントを接続し、配管(図示せず)を介して真空ポンプ(図示せず)を接続し、真空ポンプを稼働して真空吸引力を作用させると、ロール部2に負圧が付加され、ロール部2に吸収された液体は、流体となり、流体は、図2の二点鎖線矢印の如く、流体導入溝部14、及び孔部13を通り、開口部10に流れ込み、継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9に形成された中空部11からロール1の外部に吸引されて、放出される。従って、ロール部2の吸液飽和状態が解消され、吸排機能が持続する為、ロール1は長期間に亘って、被洗浄面に付着した液体を、確実に除去、搾取、洗浄することができる。なお、真空ポンプを稼働するタイミングとしては、ロール1の稼働時、あるいは非稼動時のいずれでもよい。
【0049】
本発明のロール1は、台座3が開口部10、及び中空部11にて中空状に貫通して形成されてあることから、本体部7の両端部に連接された継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9は、共に配管を介して真空ポンプに接続することができる。従って、ロール部2に吸収された液体を、台座3の両方の端部から同時に吸引することができるので、流体は開口部10の長手方向における略中央部より台座3の両端部に向けて略同一の距離にて移動することから、流体の摩擦エネルギー損失の発生が極力抑えられ、真空吸引力のバラツキの発生がなく、ロール部2に吸収された液体を、迅速、且つ均一に吸引してロール1の外部に排出することができる。
【0050】
台座3を構成する継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9は、共に中空部11を有し、中空状であることから、台座3の両端部において重量差が生じることがなく、ロール1の回転バランスが保持される。その為、ロール部2は被洗浄面に均一に摺接するので、被洗浄面から均一に液体を除去、搾取、洗浄することができる。
【0051】
台座3を構成する本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の接合部16の近傍は徐変部71が形成されてあることから、孔部13を介してロール部2から本体部7の開口部10に吸引された液体は、開口部10に滞留することなく、徐変部71の傾斜面に沿って、継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9に形成された中空部11に流入し、ロール1の外部に排出される。
【0052】
流体導入溝部14は、ロール部2の長手方向における一方の端部の近傍における非形成領域Lと、他方の端部の近傍における非形成領域Lとの範囲内における形成領域Lにて形成されているので、ロール部2の両端部の近傍には流体導入溝部14が形成されていない。その為、真空吸引力により発生する流体は、ロール部2の両端部からロール1の外部に流出することがなく、ロール部2に吸収された液体は、流体となって流体導入溝部14、孔部13、開口部10、中空部11の順に確実にロール1の外部に流出する。従って、圧力損失がなく、ロール部2からの液体の吸引性能が大幅に向上する。
【実施例2】
【0053】
図5、及び図6を用いて、実施例2のロールについて説明する。なお、上記実施例1と同一部材については、詳しい説明を省略する。
【0054】
図5において、ロール21は、台座23、止め金具25、プレート26、及び複数のロール片24a、24bと補強部材39a、39bからなるロール部22より構成されている。台座23は、鉄等の金属材料からなり、外周にロール部22が形成される本体部27は開口部30を有する略円筒形状であり、本体部27の両端部に連接される継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29は中空部31を有する中空状であると共に、それぞれの一方の端部にはロータリージョイントが連接されるネジ部32が形成されている。ロール部22は、複数のロール片24a、24bと補強部材39a、39bが台座23を構成する本体部27の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具25、及びプレート26にて挟み付けられて形成されてある。止め金具25には、スナップリングが使用されている。
【0055】
台座23を構成する本体部27は、長手方向と略平行となるよう外周に複数の円形の孔部33が形成されている。孔部33は、本体部27の外周等分6箇所に設けられていると共に、本体部27の長手方向に亘る全長の内、両端部の近傍における非形成領域を除く形成領域の範囲内にて形成されている。さらに、孔部33は、本体部27の有する開口部30に連通している。また、継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29は、中空部31が設けられてあると共に、一方の端部には、ロータリージョイント(図示せず)が接続されるネジ部32が形成されてあり、他方は本体部27の両端部に、溶接による接合部36を介して連接されている。従って、本体部27の有する開口部30と、継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29の有する中空部31は、必然的に連通することになる。
【0056】
また、本体部27と継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29の接合部36の近傍には、傾斜面を有して徐変部81が形成されている。従って、本体部27と継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29の接合部36の近傍は、開口部30の開口面積が、本体部27の略中央部の開口面積より小さくなる。
【0057】
図6(a)において、ロール片24aは、中心部に穴部38が形成された概円環状の不織布37からなる。不織布37は、複数本の繊維を有する。ロール片24aは、図5の如く、台座23を構成する本体部27の長手方向に亘る両端部の近傍、すなわち孔部33が本体部27の外周に開設されていない非形成領域の範囲に積層される。
【0058】
図6(b)において、ロール片24bは、中心部に穴部38が形成された概円環状の不織布37からなる。不織布37は、複数本の繊維を有する。また、ロール片24bは、内周の等分6箇所に、概U字状の切欠き部40が形成されている。ロール片24bは、図5の如く、台座23を構成する本体部27の長手方向に亘る両端部の近傍における非形成領域を除く孔部33が外周に開設された形成領域の範囲内に積層される。
【0059】
図6(c)において、補強部材39aは、中心部に穴部38を有する概円環状にて形成されている。補強部材39aは、図5の如く、台座23を構成する本体部27の長手方向に亘る両端部の近傍、すなわち孔部33が本体部27の外周に開設されていない非形成領域の範囲に、ロール片24aと共に積層される。補強部材39aの外径はロール片24aの外径よりも小さく、内径はロール片24aの内径と略同一である。
【0060】
図6(d)において、補強部材39bは、中心部に穴部38を有する概円環状にて形成されている。また、補強部材39bは、内周の等分6箇所に、概U字状の切欠き部40が形成されている。補強部材39bは、図5の如く、台座23を構成する本体部27の長手方向に亘る両端部の近傍における非形成領域を除く孔部33が外周に開設された形成領域の範囲内に、ロール片24bと共に積層される。補強部材39bの外径はロール片24bの外径よりも小さく、内径はロール片24bの内径と略同一である。
【0061】
ロール片24bと補強部材39bの有する切欠き部40が本体部27の形成領域に亘って連なることにより、図5の如く、複数の流体導入溝部34が形成されると共に、孔部33のロール部22側に流体導入溝部34が位置するよう設定される。すなわち、孔部33と、流体導入溝部34は対向するよう形成される。
【0062】
補強部材39a、39bは、ロール片24a、24bより回転外径が小さく、ロール部22に吸収される液体により膨潤等により劣化しなければ、材質、形状等は、特に限定されるものではない。補強部材39a、39bの材質としては、例えば、平板状の不織布37、織布、編物等の布帛、合成樹脂板、金属板、フィルム状樹脂組成物、合成樹脂発泡体等が用いられる。好適には、液体が浸透しやすい空隙部を有する不織布37が用いられる。前記不織布37の空隙率は、強度等を考慮し、5%以上50%以下であることが望ましい。補強部材39aと補強部材39bは同一の材質であっても、異なる材質であっても構わない。また、ロール片24a、24bと補強部材39a、39bは同一の材質であっても、異なる材質であっても構わない。ロール片24a、24bと補強部材39a、39bが異なる材質である場合、補強部材39a、39bは、ロール片24a、24bよりもコストが安価な材質であれば、ロール21のコストを抑えることができる。
【0063】
ロール片24aにたいする補強部材39aの挿入枚数、及びロール片24bにたいする補強部材39bの挿入枚数は、ロール部22の表面部と芯部における硬度、コスト等を考慮して、適宜、決定すればよい。例えば、2乃至10枚のロール片24a、24bにたいして、1枚の補強部材39a、39bを挿入する。
【0064】
上記の如く構成されたロール21の動作、作用は下記の通りである。
【0065】
ロール21は、本体部27に連接する継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29が共に中空部31を有する中空状であり、ネジ部32にロータリージョイントを挿入し、配管を介して真空ポンプを接続し、真空ポンプを稼働して真空吸引力を作用させると、ロール部22に負圧が付加され、ロール部22に吸収された液体は、流体となり、流体は、図5の二点鎖線矢印の如く、流体導入溝部34、及び孔部33を通り、開口部30に流れ込み、継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29に形成された中空部31からロール21の外部に吸引されて、放出される。従って、ロール部22の吸液飽和状態が解消され、吸排機能が持続する為、ロール21は長期間に亘って、被洗浄面に付着した液体を、確実に除去、搾取、洗浄することができる。
【0066】
ロール部22は、ロール片24a、24bよりも回転外径が小さい補強部材39a、39bを有するので、ロール部22の表面部は、芯部に比べて硬度が低く、柔軟性が高いことから、ロール21の弾力性が向上し、ロール部22と被洗浄面の接触面積が広がり、被洗浄面から効率よく確実に液体が除去、搾取、洗浄される。一方、ロール部22の芯部は、ロール片24a、24bと補強部材39a、39bが積層されているので、表面部に比べて硬く、ロール21の回転中において、ロール片24a、24bが本体部27から位置ズレを生じ、ロール部22の表面部に凹凸が発生することが防止される。その為、ロール21は被洗浄面に残滓マークを発生させることがなく、被洗浄面に付着した液体を、確実に除去、搾取、洗浄することができると共に、高い耐久性を保持することができる。
【0067】
補強部材39bの内周には切欠き部40が形成されているので、ロール部22は補強部材39bが積層されてあっても、連続的に形成された流体導入溝部34が確保される為、流体の流れが補強部材39bにより遮断されることがない。その為、流体を均一にロール部22から開口部30に吸引することができる。
【0068】
ロール片24b、及び補強部材39bの有する切欠き部40は、内周の等分6箇所に形成されているので、ロール21は回転時のバランスがよく、回転ブレを発生することがなく、安定した回転が保持される為、長期間に亘り、優れた液体除去性能が発揮される。
【実施例3】
【0069】
図7、及び図8を用いて、実施例3のロールについて説明する。なお、上記実施例1、及び実施例2と同一部材については、詳しい説明を省略する。
【0070】
図7において、台座43は、外周に複数の円形の孔部53が形成された略円筒形状の本体部47の両端部に、中空状の継ぎ手部A48、及び継ぎ手部B49が溶接による接合部56を介し、連接して形成されている。本体部47は、孔部53が外周に開設されていない端部の近傍における非形成領域L、孔部53が本体部47の外周等分6箇所に設けられていると共に、本体部47の長手方向に略平行に形成された形成領域L、孔部53が本体部47の外周等分12箇所に設けられていると共に、本体部47の長手方向に略平行に形成された集中形成領域Lからなる。集中形成領域Lは、本体部47の略中央部の近傍に形成され、形成領域Lは、本体部47の長手方向に亘る全長の内、両端部の近傍における非形成領域L、及び略中央部の近傍における集中形成領域Lを除く範囲内にて形成されている。従って、集中形成領域Lは、本体部47の外周等分12箇所に孔部53が形成されていることから、孔部53の開口面積の比率は、本体部47の外周等分6箇所に孔部53が形成された形成領域Lよりも大きいことになる。継ぎ手部A48、及び継ぎ手部B49に形成された窪み部55には、止め金具25が嵌合挿入される。
【0071】
図8(a)において、ロール片44aは、中心部に穴部58が形成された概円環状の不織布57からなる。不織布57は、複数本の繊維を有する。ロール片44aは、台座43を構成する本体部47の長手方向に亘る両端部の近傍、すなわち孔部53が本体部47の外周に開設されていない非形成領域Lの範囲に積層される。
【0072】
図8(b)において、ロール片44bは、中心部に穴部58が形成された概円環状の不織布57からなる。不織布57は、複数本の繊維を有する。また、ロール片44bは、内周の等分6箇所に、概U字状の切欠き部50が形成されている。ロール片44bは、台座43を構成する本体部47の長手方向に亘る両端部の近傍における非形成領域Lと、略中央部の近傍における集中形成領域Lを除く孔部53が外周等分6箇所に開設された形成領域Lの範囲内に積層される。
【0073】
図8(c)において、ロール片44cは、中心部に穴部58が形成された概円環状の不織布57からなる。不織布57は、複数本の繊維を有する。また、ロール片44cは、内周の等分12箇所に、概U字状の切欠き部50が形成されている。ロール片44cは、台座43を構成する本体部47の外周等分12箇所に孔部53が開設された長手方向の略中央部の近傍における集中形成領域Lの範囲内に積層される。
【0074】
図8(d)において、補強部材59aは、中心部に穴部58を有する概円環状にて形成されている。補強部材59aは、台座43を構成する本体部47の長手方向に亘る両端部の近傍、すなわち孔部53が本体部47の外周に開設されていない非形成領域Lの範囲に、ロール片44aと共に積層される。補強部材59aの外径はロール片44aの外径よりも小さく、内径はロール片44aの内径と略同一である。
【0075】
図8(e)において、補強部材59bは、中心部に穴部58を有する概円環状にて形成されている。また、補強部材59bは、内周の等分6箇所に、概U字状の切欠き部50が形成されている。補強部材59bは、台座43を構成する本体部47の長手方向に亘る両端部の近傍における非形成領域Lと、略中央部の近傍における集中形成領域Lを除く孔部53が外周等分6箇所に開設された形成領域Lの範囲内に、ロール片44bと共に積層される。補強部材59bの外径はロール片44bの外径よりも小さく、内径はロール片44bの内径と略同一である。
【0076】
図8(f)において、補強部材59cは、中心部に穴部58を有する概円環状にて形成されている。また、補強部材59cは、内周の等分12箇所に、概U字状の切欠き部50が形成されている。補強部材59cは、台座43を構成する本体部47の外周等分12箇所に孔部53が開設された長手方向の略中央部の近傍における集中形成領域Lの範囲内に、ロール片44cと共に積層される。補強部材59cの外径はロール片44cの外径よりも小さく、内径はロール片44cの内径と略同一である。
【0077】
ロール片44bと補強部材59bの有する切欠き部50が本体部47の形成領域Lに亘って連なり、ロール片44cと補強部材59cの有する切欠き部50が本体部47の集中形成領域Lに亘って連なることにより、複数の流体導入溝部34が形成されると共に、孔部53のロール部22側に流体導入溝部34が位置するよう設定される。すなわち、孔部53と、流体導入溝部34は対向するよう形成される。
【0078】
上記の如く構成された台座43を用いて、本体部47の外周にロール片44a、44b、44cと補強部材59a、59b、59cを積層させてロール部22が形成されたロール21の動作、作用は下記の通りである。
【0079】
ロール21は、本体部47の外周にたいする孔部53の開口面積の比率が、本体部47の端部の近傍における形成領域Lよりも、略中央部の近傍における集中形成領域Lの方が大きく形成されているので、本体部47の略中央部の近傍において、より多くの流体が流体導入溝部34に沿って流れると共に、孔部53を介して開口部30に流出する。ところで、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面は、さまざまな幅のものがロール部22に接触し、通過するが、ロール部22の略中央部の近傍は、必ず前記被洗浄面が通過する。従って、ロール部22の略中央部の近傍は、最も液体が吸収される箇所である。その為、本体部47の略中央部の近傍から、より多くの流体が開口部30に流れ込む形態とすることにより、ロール部22からの液体の吸引性能が飛躍的に向上する。
【実施例4】
【0080】
図9を用いて、実施例4の洗浄装置について説明する。なお、構成の説明を容易にする為に、各部品の軸受け部や、支持部品の図示、説明は省略することとする。また、ロールは、鋼板に付着した油分除去用として用いられるものとする。
【0081】
ロール61a、61bは、洗浄装置60に上下一対で設置され、上部に位置するロール61aの台座63の両端部、すなわち継ぎ手部A68、及び継ぎ手部B69に一定の圧力が加えられ、駆動手段64により矢印の方向に回転駆動し、上部のロール61aと下部のロール61bの間を、両面に油分(図示せず)が付着したピース状の鋼板70が白抜き矢印の方向に送出されている。また、継ぎ手部A68と継ぎ手部B69の端部にはロータリージョイント66が挿入されると共に、配管65を介して真空ポンプ67に連接されている。上部に位置するロール61aは鋼板70の表面から油分を除去し、下部に位置するロール61bは鋼板70の裏面から油分を除去する。油分が付着した鋼板70は、ロール部62と接触し、ロール部62を構成する不織布の有する繊維の毛細管現象により、油分がロール部62に吸い上げられると共に、ロール部62の空隙に放出される。なお、ロール61a、61bは、上記に示した実施例1〜3のロール1、21のいずれかと同一である。
【0082】
上記の如くのロール61a、61bの状態において、真空ポンプ67を稼働して真空吸引力を作用させると、ロール部62に負圧が付加され、ロール部62に吸収された油分は、流体となり、流体は、流体導入溝部、及び孔部を通り、開口部に流れ込み、継ぎ手部A68、及び継ぎ手部B69に形成された中空部から配管65を通り、ロール61a、61bの外部に吸引されて、放出される。流体は、真空ポンプ67にてフィルター(図示せず)を介し、図示しない配管を通り、洗浄油タンクへ再び送出される。従って、ロール部62の吸液飽和状態が解消され、吸排機能が持続する為、ロール61a、61bは長期間に亘って、鋼板70に付着した油分を、確実に除去することができる。
【0083】
上記の如く構成された洗浄装置60の動作、作用は下記の通りである。
【0084】
洗浄装置60は、長期間に亘って、鋼板70から油分を確実に除去することができるロール61a、61bが搭載されていることから、優れた油分除去性能が発揮される。その為、鋼板70に油分が不均一に残る残滓マークの発生が抑制され、鋼板70の品質の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のロールは、主に、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する目的以外にも、高い液体の除去性能を必要とするロールとして、広く好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1、21、61a、61b ロール
2、22、62 ロール部
3、23、43、63 台座
4a、4b、24a、24b、44a、44b、44c ロール片
5、25 止め金具
6、26 プレート
7、27、47 本体部
8、28、48、68 継ぎ手部A
9、29、49、69 継ぎ手部B
10、30 開口部
11、31 中空部
12、32 ネジ部
13、33、53 孔部
14、34 流体導入溝部
15、55 窪み部
16、56 接合部
17、37、57 不織布
18、38、58 穴部
19 側縁部
20、40、50 切欠き部
39a、39b、59a、59b、59c 補強部材
60 洗浄装置
64 駆動手段
65 配管
66 ロータリージョイント
67 真空ポンプ
70 鋼板
71、81 徐変部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記台座は開口部が形成された本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bは中空部が形成され、前記中空部は前記開口部と連通されてあり、前記本体部と前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bの接合部の近傍は、前記開口部の開口面積が、前記本体部の略中央部の開口面積より小となるよう徐変部が形成され、前記本体部の外周には前記開口部に連通する孔部が開設されてあると共に、前記ロール部が形成され、前記ロール部は不織布からなる概円環状の複数のロール片が積層されると共に、内周に切欠き部が設けられた前記ロール片を有し、前記切欠き部が前記本体部の長手方向に連なることにより複数の流体導入溝部が形成され、前記孔部の前記ロール部側に前記流体導入溝部が位置することを特徴とするロール。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなるロールにおいて、流体導入溝部はロール部の長手方向における一方の端部の近傍と他方の端部の近傍との範囲内に形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項3】
請求項1から2記載の構成よりなるロールにおいて、ロール部はロール片よりも回転外径が小である補強部材を有することを特徴とするロール。
【請求項4】
請求項3記載の構成よりなるロールにおいて、補強部材の内周には切欠き部が形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項5】
請求項1から4記載の構成よりなるロールにおいて、ロール片及び補強部材の有する切欠き部は内周の等分箇所に形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項6】
請求項1から5記載の構成よりなるロールにおいて、本体部の外周にたいする孔部の開口面積の比率が、本体部の端部の近傍よりも略中央部の方が大にて形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載されたロールと、前記ロールを回転駆動する駆動手段と、継ぎ手部A及び継ぎ手部Bに配管を介して連通される真空ポンプを有する洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−214265(P2010−214265A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62235(P2009−62235)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】