説明

ロール状原反の評価方法

【課題】長尺体のロール状原反の幅方向に沿った表面形状を適切に評価することができるロール状原反の評価方法を得る。
【解決手段】本発明の実施形態に係るロール状原反の評価方法では、磁気テープ原反をハブに巻き回して形成された磁気テープ原反ロールの幅方向に沿った表面形状を測定し、該測定結果を磁気テープ原反ロールの全幅に亘って単一の4次関数に最小2乗近似することで、該磁気テープ原反ロールの表面の幅方向に沿った形状トレンド値を定量化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば磁気テープ等の長尺体の製造工程で用いられるロール状原反の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺状のロール状原反の幅方向の表面形状を二次曲線で表し、該二次曲線を平均中心線との関連においてデータ処理することにより表面形状を定量化する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、上記の如く定量化された原反の表面形状に基づいて、長尺体の厚みむらを判定する。
【特許文献1】特開2006−234605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如き従来の技術では、長尺体の幅方向各部における部分的な二次関数をつなぎ合わせて原反の表面形状を全幅に亘り数値化するため、原反の全幅に亘る形状トレンドを把握するのに適さず、この点に改善の余地があった。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、長尺体のロール状原反の幅方向に沿った表面形状を適切に評価することができるロール状原反の評価方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係るロール状原反の評価方法は、長尺体を巻き回して形成されたロール状原反の幅方向に沿った表面形状を、該ロール状原反の全幅に亘って単一の4次以上の関数に近似することで、該ロール状原反表面の幅方向に沿った形状の変動傾向を定量化する。
【0006】
請求項1記載のロール状原反の評価方法では、ロール状原反の幅方向に沿う表面形状すなわち幅方向各部における径方向寸法を、ロール状原反の全幅に亘って単一の4次以上の関数に近似する。近似の手法として、例えば最小2乗近似等を採用することができる。これにより、原反の表面形状が全幅に亘って単一の高次関数にて定量的に表されたロール状原反表面の形状の変動傾向(以下、形状トレンド値という)を定量化することができる。このため、形状トレンド値(定量化された形状変動傾向)に基づいて、例えばロール状原反を幅方向に等分して細幅の長尺体を得る裁断工程後での該長尺体の湾曲発生を予測したり、長尺体(ロール状原反)の製造工程等の前工程に対しロール状原反の形状改善のためのフィードバックを行ったりすることが可能になる。
【0007】
このように、請求項1記載のロール状原反の評価方法では、長尺体のロール状原反の幅方向に沿った表面形状を適切に評価することができる。なお、ロール状原反の表面形状を近似する関数は、原反表面の一部分の形状の影響を受けることを抑制してより平均化された形状トレンドを得るとの観点から、4次関数とすることが好ましい。
【0008】
請求項2記載の発明に係るロール状原反の評価方法は、請求項1記載のロール状原反の評価方法において、前記長尺体が巻き回される巻芯の外径をd[m]、前記長尺体の長さをL[m]、前記長尺体の厚みをt[m]、前記ロール状原反の前記定量化された表面形状における幅方向の一端から全幅の15%の位置までの範囲での径方向の最大寸法差をh[m]とした場合に、
h > 6.86×10−3×((d2+(4/π)×L×t)1/2−d)
となる前記ロール状原反における前記評価範囲の部分を不良部分と評価する。
【0009】
請求項2記載のロール状原反の評価方法では、ロール状原反の幅方向の端部から全幅の15%の評価範囲は、
h > 6.86×10−3×((d2+(4/π)×L×t)1/2−d)
となる場合に不良と評価される。これにより、例えばロール状原反を幅方向に等分して細幅の長尺体を得る裁断工程等の後続工程に至る前に細幅の長尺体の不良発生を予測したり、長尺体(ロール状原反)の製造工程等の前工程に対し評価範囲の形状改善のためのフィードバックを行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明に係るロール状原反の評価方法は、長尺体のロール状原反の幅方向に沿った表面形状を適切に評価することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係るロール状原反の評価方法について、図1〜図6に基づいて説明する。先ず、ロール状原反の評価方法が適用された磁気テープの製造装置10の概略全体構成を説明し、次いで、磁気テープ原反ロール16の表面形状と磁気テープ11の湾曲との関係を説明し、その後、ロール状原反の評価方法について詳細に説明することとする。
【0012】
(磁気テープ11の製造方法)
図5には、磁気テープの製造装置10の一部が模式的な側面図にて示されている。この図に示される如く、磁気テープの製造装置10は、例えばコンピュータバックアップ用の高密度磁気記録テープ11を製造する装置であって、本発明における長尺体としての幅広の磁気テープ原反12を長手方向に沿って裁断することによって複数の幅狭の磁気テープ11を製造するようになっている。
【0013】
具体的には、磁気テープ原反12は、製品である磁気テープ11よりも広い幅の帯状を成しており、例えば、非磁性の支持体上に強磁性微粒子を含む磁性層を塗布法や真空蒸着法等によって形成し、該磁性層に配向処理、乾燥処理、表面処理等を行うことによって製造されている。この磁気テープ原反12は、巻芯としてのハブ14にロール状に巻き回されてロール状原反としての磁気テープ原反ロール16を成している。磁気テープ原反ロール16は、ハブ14を介して軸線回りに回転自在に支持されて巻き戻し部15を構成している。これにより、磁気テープの製造装置10では、磁気テープ原反12の磁気テープ原反ロール16からの連続的な巻き戻しが可能とされている。
【0014】
磁気テープ原反12は、フィードローラ18に巻き掛けられており、該フィードローラ18を駆動することによって磁気テープ原反ロール16から連続的に巻き戻されて送り出されるようになっている。フィードローラ18の下流側には、磁気テープ原反12を幅方向の複数箇所において長手方向に沿って裁断するためのスリッタ20が配置されている。
【0015】
図6にも示される如く、スリッタ20は、上下対とされると共に磁気テープ原反12の幅方向に並列された複数対の回転上刃22と回転下刃24とを備えている。各回転上刃22は、モータ26によって回転駆動され、各回転下刃24はモータ28によって回転駆動されるようになっている。
【0016】
そして、これら複数対の回転上刃22と回転下刃24との間に送り込まれた磁気テープ原反12が、スリッタ20の図示を省略した図4に示される如く、幅方向に等分されて複数の細幅の磁気テープ11が形成される構成である。この実施形態では、磁気テープ11の幅は、12.65[mm]とされている。
【0017】
図5に戻り、スリッタ20による裁断後の磁気テープ11は、パスローラ30に巻き掛けられた後、フィードローラ18と同期して回転する巻取ハブ32に巻き取られて所謂パンケーキ34が形成されるようになっている。複数のパスローラ30及び巻取ハブ32は、磁気テープ原反12の幅方向に交互に上下にオフセットして配置されており、幅方向に隣り合う磁気テープ11は互いに上下にオフセットして巻取ハブ32に巻き取られるようになっている。
【0018】
なお、磁気テープ原反ロール16とフィードローラ18との間、フィードローラ18とスリッタ20との間、スリッタ20とパスローラ30との間には、磁気テープ原反12又は磁気テープ11が巻き掛けられたガイドローラ35が適宜配置されている。
【0019】
巻取ハブ32に巻き回された磁気テープ11は、図示しないサーボライト装置に搬送され、該サーボライト装置におけるサーボ工程にて、巻取ハブ32から巻き戻されつつサーボ信号が書き込まれ、その後、製品リールに巻き回されるようになっている。
【0020】
(原反ロールの表面形状と磁気テープの湾曲についての補足)
磁気テープ原反ロール16の表面形状と磁気テープ11の湾曲(テープカーバチャともいう)について補足する。
【0021】
図2(A)に示される如く、磁気テープ原反ロール16は、磁気テープ原反12の長手方向、幅方向の厚みムラ等に起因して、表面形状がハブ14と同軸の円筒面に対し凸凹した形状となることが知られている。また、例えば図2(B)に示される如き表面形状16Aの磁気テープ原反ロール16から巻き戻された磁気テープ原反12をスリッタ20にて裁断すると、幅方向一方側で他方側よりも周長が長くなるX部と、幅方向他方側で一方側よりも周長が長くなるY部とでは、図2(C)に示される如く、磁気テープ11の湾曲方向が逆になることが知られている。
【0022】
図3(A)に示される如く、上向きに凸となる湾曲状態をプラス湾曲といい、図3(B)に示される如く、下向きに凸となる湾曲状態をマイナス湾曲ということとする。プラス湾曲、マイナス湾曲を規定する上下方向は、磁気テープ11にサーボ信号を書き込むサーボライタ、磁気テープ11に対する情報の読み書きを行うドライブ装置の記録再生ヘッド(製品リール)の磁気テープ11の幅方向における向きが基準とされる。磁気テープ11の湾曲量は、基準距離だけ離間した磁気テープ11のエッジTA上の点A、Cを結ぶ直線ACと、点A、Cの中央に(基準距離の半分だけ離間して)位置するエッジTA上の点Bとのテープ幅方向の偏差ΔDとして測定される。基準距離は、JJS X6175にて1.0mと規定されている。
【0023】
そして、磁気テープ11は、マイナス湾曲状態でかつ湾曲量が所定値以上となった場合に、巻取ハブ32、サーボライタ、ドライブ装置における走行が不安定になりやすいことが知られている。図2(B)の例では、X部から得られる磁気テープ11がマイナス湾曲となることが解る。
【0024】
(原反ロールの評価方法)
次に、本発明のロール状原反の評価方法が磁気テープ原反ロール16の表面形状評価方法として適用された例について説明する。
【0025】
磁気テープ原反ロール16の評価方法では、先ず、図2(A)に示される如く、形状センサ36を用いて、磁気テープ原反ロール16の表面形状を該磁気テープ原反ロール16の幅方向に平行な一直線に沿って、かつ該磁気テープ原反ロール16の全幅に亘って測定する。
【0026】
形状センサ36は、磁気テープ原反ロール16の表面の所定の基準位置に対する径方向の距離を、磁気テープ原反ロール16の幅方向に断続的又は連続的に測定することで、図2(B)に一部拡大して示される如く、磁気テープ原反ロール16の表面形状を測定することができる。形状センサ36としては、磁気テープ原反ロール16の表面に接触された接触式センサを用いても良く、磁気テープ原反ロール16の表面に非接触の非接触式センサを用いても良い。
【0027】
このようにして、図1に例示される如き磁気テープ原反ロール16の表面形状についての生データが得られる(図1の細線参照)。磁気テープ原反ロール16の評価方法では、この生データを磁気テープ原反ロール16の全幅に亘って単一の4次関数に最小2乗近似する。これにより、図1に太線にて示される如き磁気テープ原反ロール16表面の定量化された形状トレンド値(形状トレンド曲線)Stが得られる。すなわち、形状トレンド値Stは、磁気テープ原反ロール16表面形状の幅方向に沿った平均的に定量化された変動傾向を示している。
【0028】
磁気テープ原反ロール16では、一般に図1に示される如く、幅方向の両端(肩部)において径方向寸法が小さくなる表面形状(肩ダレ状、鼓状ともいう)を成すことが知られてる。本磁気テープ原反ロール16の評価方法では、上記の如く磁気テープ原反ロール16の幅方向両端のうち、磁気テープ11にマイナス湾曲を生じさせ得る幅方向一端側の所定の範囲Hについて、形状トレンド値Stに基づく評価を行うようになっている。この実施形態では、図1における左端Eから、磁気テープ原反12の全幅の15%となる位置P15までの範囲Hが評価範囲とされている。
【0029】
そして、本磁気テープ原反ロール16の評価方法では、形状トレンド値Stにおける評価範囲H内での径方向の最大の高度差(径方向寸法との差分)h[m]を、管理値hsと比較することで、磁気テープ原反ロール16の表面形状を評価している。
【0030】
管理値hsは、ハブ14の外径をd[m]、磁気テープ原反12の長さをL[m]、磁気テープ原反12の厚みをt[m]とした場合に、
hs = 6.86×10−3×((d2+(4/π)×L×t)1/2−d)
(1)
として設定されている。
【0031】
そして、この実施形態に係る磁気テープ原反ロール16の評価方法では、評価範囲Hにおける高度差hについて、h≦hsである場合に磁気テープ原反ロール16における評価範囲Hの表面形状が良と評価され、h>hsである場合に磁気テープ原反ロール16における評価範囲Hの表面形状が不良と評価される。
【0032】
以上の評価方法は、図1に示される如く磁気テープの製造装置10を構成するコントローラ38によって行われるようになっている。コントローラ38は、形状センサ36に電気的に接続されており、形状センサ36からの信号に基づく磁気テープ原反ロール16の表面形状に対し、上記の如く4次元関数への最小2乗近似を行い、これにより定量化された形状トレンド値Stから磁気テープ原反ロール16における所定範囲Hでの高度差hを算出し、該高度差hを上記管理値hsと比較するようになっている。
【0033】
次に、本実施形態の作用について、図7に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0034】
上記構成の磁気テープの製造装置10では、磁気テープ原反12から磁気テープ11を製造するに当たっては、先ず、巻き戻し部15に磁気テープ原反ロール16がセットされる。すると、磁気テープの製造装置10では、コントローラ38は、ステップS10で形状センサ36に磁気テープ原反ロール16の表面形状を測定させる。
【0035】
次いで、コントローラ38は、ステップS12に進み、形状センサ36の出力信号すなわち磁気テープ原反ロール16の表面形状の測定結果を、4次関数に最小2乗近似して形状トレンド値Stを定量化する。さらに、コントローラ38は、ステップS14に進み、形状トレンド値Stに基づいて、評価対象である磁気テープ原反ロール16における評価範囲Hでの高度差hを算出する。
【0036】
そして、コントローラ38は、ステップS16に進み、ステップS14で算出した高度差hを管理値hsと比較する。h≦hsであると判断した場合、コントローラ38は、ステップS18に進んで磁気テープの製造装置10を構成する図示しないメインコントローラに良信号を出力し、h>hsであると判断した場合、コントローラ38は、ステップS20に進んでメインコントローラに不良信号を出力する。
【0037】
コントローラ38から不良信号、すなわち磁気テープ原反ロール16における範囲Hから得られる磁気テープ11の許容値以上のマイナス湾曲が生じる可能性が高いことに対応する情報が入力されたメインコントローラは、例えば、スリッタ20の下流工程で、上記範囲Hから得られた磁気テープ11の湾曲を規定範囲内にするための工程を実行させ又は該工程の実行を促す報知を行う。磁気テープ11の湾曲を規定範囲内にするための工程としては、例えば、磁気テープ11の巻き返し(別の巻取ハブ32に巻き代えて反転させる動作)等により行うことができる。これにより、磁気テープ原反ロール16における範囲Hから得られる磁気テープ11の、サーボ品質評価の1つであるPESの合格率を向上させることができる。
【0038】
また、コントローラ38から不良信号が入力されたメインコントローラは、例えば、磁気テープ原反12の製造工程に、範囲Hにおける高度差hの値、又は形状トレンド値Stをフィードバックする。これらのデータに基づき、磁気テープ原反12の製造工程では、不良(h>hs)の原因となる磁気テープ原反12の厚み分布がh≦hsとなる厚み分布に改善されるように、磁性層の塗布、蒸着等の工程が行われる。すなわち、磁気テープ原反ロール16の表面形状の評価(トレンド管理)に基づいて、前工程への原反形状改善のフィードバックを行うことで、磁気テープ原反ロール16の不良率自体を低減することができる。
【0039】
このように、磁気テープ原反ロール16の表面形状の評価(トレンド管理)に基づいて磁気テープ11の湾曲を裁断前に予測することができ、下流工程での巻き返し等の工程実行により、後工程での不良品に対する事前対応(巻き返し等)が可能になり、また前工程への原反形状改善のフィードバックが可能になる。特に、磁気テープ原反ロール16の表面形状を4次関数に近似することで形状トレンド値Stを得るため、該磁気テープ原反ロール16の幅方向に沿った形状を、局所的な形状変動の影響が少ない平均的な形状トレンド値Stとして定量化することができる。このため、形状トレンド値Stに基づく評価の信頼性が高い。
【0040】
そして、本磁気テープ原反ロール16の評価方法においては、形状トレンド値Stの管理値として上記した式(1)により得られる管理値hsを用い、h≦hsとなるように管理することで、後工程でのサーボトラッキングの異常、巻取ハブ32や製品リールに対する磁気テープ11の巻き乱れ等の故障を防止することができる。
【0041】
この点につき、磁気テープ11における、高度差hが管理値hsを満たす場合と満たさない場合のPES(positioning error signal:位置ずれ量のばらつきを表す数値)の合格率の比較により補足する。なお、PESは磁気テープの幅方向のテープ走行位置の変動に対し、サーボフォローできなかった量の標準偏差である。ここでは、PESは、改造したLTOドライブ(記録トラック幅:20.6μm、再生トラック幅:12μm)を用いて、記録(記録波長0.37μm)・再生した時のサーボフォローできなかった量の標準偏差を求めた。
【0042】
各実施例、比較例について、高度差hが管理値hs(=600μm)を超えるもの・管理値以下のもの、それぞれ3原反ロールに関して、各原反ロール両端部からそれぞれ全幅の15%の位置までのスリット品に対して、240サンプルづつPESの測定を行い、PESが2.3μmを超えたものを不合格として、合格となるサンプル数の割合をPESの合格率とした。この比較の結果を表1に示す。なお、実際の高度差を変えたサンプルは、特開平11−314065記載の手段にて、非磁性の支持体上に塗布される磁性層等の塗布厚みを調整することで作成した。
【0043】
【表1】

【0044】
この表から、磁気テープ原反ロール16においてマイナス湾曲のTが製造されやすい範囲Hにおける高度差hを管理値hs以下に管理することで、該範囲Hから得られる磁気テープ11について、高いPESの合格率を得ることができることが解る。このため、本磁気テープ原反ロール16の評価方法を適用することで、上記した通り、後工程でのサーボトラッキングの異常、巻取ハブ32や製品リールに対する磁気テープ11の巻き乱れ等の故障を防止することができる。
【0045】
なお、上記した実施形態では、本発明に係る長尺体のロール状原反の評価方法が、磁気テープ原反12をハブ14に巻き回して成る磁気テープ原反ロール16の表面形状の評価に適用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、適宜他の用途に適用することができる。
【0046】
また、上記した実施形態では、磁気テープ原反ロール16の表面形状を4次関数に最小2乗近似する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、磁気テープ原反ロール16の表面形状を6次以上のより高次の関数に近似するようにしても良い。但し、高次の関数に近似する場合、磁気テープ原反ロール16の一部の局所的な形状の影響を形状トレンド値Stが受けやすくなるので、磁気テープ原反ロール16の表面形状を平均的に定量化するためには、4次関数に近似することが好ましい。
【0047】
さらに、上記した実施形態では、評価範囲Hで高度差hすなわち磁気テープ原反ロール16の幅方向一端部における表面の勾配を管理する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、磁気テープ原反ロール16の幅方向中央部における径方向の寸法を評価(管理)することで、磁気テープ原反12の全体的な厚みを高精度に制御するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係るロール状原反の評価方法を説明する、原反表面形状の生データと4次元関数に近似した形状トレンド値とを示す線図である。
【図2】本発明の実施形態に係るロール状原反の評価方法を説明するための図であって、(A)は原反ロールの表面の測定状態を示す模式図、(B)は原反ロール表面の形状を一部拡大して示す模式図、(C)は原反ロールの表面形状と磁気テープの湾曲方向との関係を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係るロール状原反の評価方法で評価される原反ロールから得られる磁気テープの湾曲状態を示す図であって、(A)はプラス湾曲を示す側面図、(B)はマイナス湾曲を示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るロール状原反の評価方法で評価される原反ロールの幅方向両端から得られる磁気テープの湾曲状態を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係るロール状原反の評価方法で評価される原反ロールを用いて磁気テープを製造するための製造装置を模式的に示す側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るロール状原反の評価方法で評価される原反ロールを裁断して磁気テープにするためのスリッタを模式的に示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るロール状原反の評価方法を実行するコントローラのフローを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
12 磁気テープ原反(長尺体)
14 ハブ(巻)芯
16 磁気テープ原反ロール(ロール状原反)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺体を巻き回して形成されたロール状原反の幅方向に沿った表面形状を、該ロール状原反の全幅に亘って単一の4次以上の関数に近似することで、該ロール状原反表面の幅方向に沿った形状の変動傾向を定量化するロール状原反の評価方法。
【請求項2】
前記長尺体が巻き回される巻芯の外径をd[m]、前記長尺体の長さをL[m]、前記長尺体の厚みをt[m]、前記ロール状原反の前記変動傾向が定量化された表面形状における幅方向の一端から全幅の15%の位置までの評価範囲での径方向の最大の寸法差をh[m]とした場合に、
h > 6.86×10−3×((d2+(4/π)×L×t)1/2−d)
となる前記ロール状原反における前記評価範囲の部分を不良部分と評価する請求項1記載のロール状原反の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−243964(P2009−243964A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88498(P2008−88498)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】