説明

ロール状金型を用いた光学シートの製造方法

【課題】ロール状金型の外周面に形成された加工パターンを保護することができる光学シートの製造方を提供する。
【解決手段】プリズムパターン3aが形成されたロール状金型3の外周面と、シート基材9の間にモノマーを配置して、このモノマーにUV光を照射して、シート基材9の表面にプリズム15を形成するためのロール状金型3の保護方法およびロール状金型3を用いた光学シートの製造方法であって、ロール状金型3の外周面を保護するための保護シート23を、ロール状金型3の外周面に予め配置し、該保護シート23は、モノマーによって、シート基材9の表面に接着されてロール状金型3の表面から除去されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状金型の保護方法及びロール状金型を用いた成型方法に関し、特に、長尺シート基材の表面に活性エネルギ線硬化性樹脂パターンを形成するためのロール状金型を用いた光学シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外周面に所定のプリズムパターンが形成されたロール状金型を用いたプリズムシートの製造方法が知られている。このようなプリズムシートの製造方法に用いられる装置は、ロール状金型と対向して配置されたニップローラと、ロール状金型とニップローラのニップ部に活性エネルギ線硬化型樹脂を塗布するための塗布装置を備えている。そしてこのような装置を用いて光学シートを製造する場合、先ず、ニップローラとロール状金型によって挟持搬送される基材の一方の面に、塗布装置によって活性エネルギ線硬化型樹脂を塗布する。そして、この活性エネルギ線硬化型樹脂に活性エネルギ線を照射することによって樹脂を硬化させる。これにより活性エネルギ線硬化型樹脂には、ロール状金型の外周面に形成されたプリズムパターンの形状が転写される。そして、プリズムパターンの形状が転写された活性エネルギ線硬化型樹脂に活性エネルギ線が照射されると、活性エネルギ線硬化型樹脂が硬化して基材上にプリズムが形成されるようになっている。
【0003】
このようなプリズムシート製造装置の初回駆動時、金型交換後の駆動時、又は装置の運転を一時的に停止してから再度駆動するような立ち上げ時には、先ず、金型に活性エネルギ線硬化型樹脂を塗布せずに、基材が架け渡されたロール状金型、ニップローラ、及び剥離ローラ、並びに基材を搬送するための搬送ローラを駆動して、基材を搬送方向下流側に向けて搬送する空運転を行う。次いで、活性エネルギ線を出射するためのUVランプを駆動する。UVランプのような活性エネルギ線を出射する装置は、出射する光の光量が安定するまで例えば3分程度の時間を要する。そして光学シートの製造時には、UVランプが安定した後に、金型に活性エネルギ線硬化型樹脂を塗布して基材上にプリズムを形成するようになっている。このようなプリズムシート製造装置としては、特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−192540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来用いられていた光学シートの製造方法では、金型及び基材の一定の箇所に活性エネルギ線が照射されるのを防止するために、UVランプの光量が安定するまで空運転を行う必要があるので、プリズムシート製造装置の立ち上がり時に基材、又は金型表面に付着した埃や塵等の異物によって、ロール状金型の外周面に形成されたプリズムパターンが破損してしまう恐れがあった。また、基材を搬送するときに、ロール状金型の周速と基材の搬送速度の間にずれが生じて金型と基材の間の擦れが生じ、これにより金型に欠陥が生じるおそれがあった。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、光学シートの製造時に、その製造に用いられるロール状金型の外周面に形成された加工パターンを保護することができるロール状金型を用いた光学シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、外周面に加工パターンが形成されたロール状金型の周囲に長尺シート基材を配置し、ロール状金型を回転させて長尺シート基材を搬送し、長尺シート基材を通して、ロール状金型への活性エネルギ線の照射を開始し、ロール状金型と長尺シート基材との間に活性エネルギ線硬化性樹脂を供給し、活性エネルギ線により活性エネルギ線硬化性樹脂を硬化させ、加工パターンに相補的な光学パターンを長尺シート基材上に形成することにより光学シートを製造する方法であって、長尺シート基材は、ロール状金型の外周面に配置された加工パターンを保護する保護シートを介してロール状金型の周囲に配置され、保護シートは、ロール状金型と長尺シート基材との間に供給される活性エネルギ線硬化性樹脂によって、長尺シート基材に接着されてロール状金型から除去される。
【0008】
このように構成された本発明によれば、長尺シート基材を配置する前に、ロール状金型の外周面と長尺シート基材との間に、加工パターンを保護するための保護シートを配置することができる。これにより、埃や塵等が加工パターンに付着するのを防止することができる。また、ロール状金型の回転駆動を開始したときに、ロール状金型と長尺シート基材との間でずれが生じた場合でも、保護シートによって加工パターンを保護することができ、これにより加工パターンが破損するのを防止することができる。そしてこのような保護シートは、ロール状金型と長尺シート基材との間に供給された活性エネルギ線硬化性樹脂によって、長尺シート基材に接着されてロール状金型から除去されるようになっているので、保護シートを、一連の光学シートの製造工程中にインラインでロール状金型の外周面から除去することができる。
【0009】
また、本発明において好ましくは、保護シートは、ロール状金型の外周面よりも硬度が低い材料からなる第1層と、耐熱性を有する材料からなる第2層とを含む積層体であり、保護シートは、第1層がロール状金型の径方向内側に面し、且つ第2層がロール状金型の径方向外側に面するように配置され、ロール状金型の外周面に巻き付けられる。
【0010】
このように構成された本発明によれば、保護シートの第1層をロール状金型の外周面よりも硬度が低い材料とすることにより、保護シートがロール状金型の外周面を破損させるのを防止することができる。また、保護シートの第2層を、耐熱性を有する材料とすることにより、第1層を活性エネルギ線から保護することができる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、保護シートは、その長さがロール状金型の外周長よりも長く、さらにロール状金型の回転方向上流側から下流側に向かってロール状金型の外周面に巻きつけられている。
また、本発明において好ましくは、保護シートにおけるロール状金型の回転方向下流側の端は、先細り形状を有し、その先端部が保護シートにおけるロール状金型径方向外側の面に保持されている。
【0012】
このように構成された本発明によれば、保護シートの除去に際して、ロール状金型から保護シートを容易に剥がすことができる。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明のロール状金型を用いた光学シートの製造方法によれば、ロール状金型の外周面に形成された加工パターンを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態によるプリズムシート製造装置の側面図である。
【図2】本発明の実施形態によるプリズムシート製造装置が備えるロール状金型の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態によるプリズムシート製造装置によって製造されるプリズムシートの斜視図である。
【図4】本発明の実施形態によるプリズムシート製造装置を立ち上げる前のロール状金型を模式的に示す端面図である。
【図5】本発明の実施形態による保護シートの先端近傍を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるプリズムシートの製造方法について詳述する。図1は、本発明の実施形態によるプリズムシート製造装置の側面図であり、図2は、このプリズムシート製造装置が備えるロール状金型の斜視図であり、図3は、このプリズムシート製造装置によって製造されるプリズムシートの斜視図である。
【0016】
まず、図1に示すように、プリズムシート製造装置1は、ロール状金型3と、ロール状金型3に近接して配置されたニップローラ5と、剥離ローラ7とを備える。また、プリズムシート製造装置1は、これらロール状金型3、ニップローラ5、及び剥離ローラ7によって搬送されるシート基材9上に、活性エネルギ線硬化性組成物としてのモノマーを配置するためのモノマー塗布装置11と、活性エネルギ線としての紫外線を出射するUVランプ13a,13bとを備える。
【0017】
このプリズムシート製造装置1は、シート基材9が、矢印A方向に回転駆動される円筒柱状のロール状金型3の外周面に巻回されながら矢印B方向に搬送されるように構成されている。
【0018】
図2に示すようにロール状金型3の外周面には、製造するプリズムシートのプリズムと相補的な形状のプリズムパターン3aが形成されている。このようなプリズムパターン3aは、アルミニウム、黄銅、鋼等の金属で形成されており、切削加工や、Ni電鋳法によってロール状金型3の外周面に形成される。
【0019】
再び図1を参照すると、ロール状金型3のシート基材9搬送方向上流側には、モノマー塗布装置11が配置され、ロール状金型3とニップローラ5のニップ部においてシート基材9におけるプリズムが形成されるプリズム形成面に、製品有効幅でモノマーを塗布するようになっている。尚、本明細書において製品有効幅とは、レンズシートを製品として使用する範囲をいう。
【0020】
ニップローラ5は、ロール状金型3に対向して配置されており、硬化前のモノマーの厚さを均すようになっている。また、ニップローラ5は、金属製ロール、ゴム製ロール等によって構成されており、シート基材9の表面におけるモノマーの厚さを均一にするため、真円度、表面粗さ等について高い精度で加工されたロールが用いられる。そしてプリズム形成面にモノマーが塗布されたシート基材9は、プリズム形成面をロール状金型3に向けるようにして、ロール状金型3とニップローラ5の間で挟持搬送される。
【0021】
剥離ローラ7は、UVランプ13a,13bよりもシート基材9搬送方向下流側の位置で、ロール状金型3と対向して配置されている。そして、剥離ローラ7を支点としてシート基材9をロール状金型3の回転方向とは逆方向に引っ張ることで、シート基材9がロール状金型3から剥離される。
【0022】
モノマー塗布装置11は、ニップローラ5とロール状金型3のニップ部の上方に配置され、このニップ部にモノマーを滴下するようになっており、これによりロール状金型3の外周面にモノマーが塗布される。このようなモノマー塗布装置11から滴下されるモノマーとしては、取扱性や硬化性等の点で、多価アクリレートおよび/または多価メタクリレート、モノアクリレートおよび/またはモノメタアクリレート、および活性エネルギ線による光重合開始剤を主成分とするものが好ましい。代表的な多価(メタ)アクリレートとしては、ポリオールポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、エポキシポリ(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上の混合物として使用される。また、モノ(メタ)アクリレートとしては、モノアルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリオールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられるが、後者の場合には、金属型を使用するときに水酸基の影響であると思われる金属型との離型困難性を低減するために、少量で使用するのがよい。また、金属型を使用する場合には、(メタ)アクリル酸およびその金属塩についても、高い極性を有していることから、少量で使用するのがよい。
【0023】
UVランプ13a,13bは、ロール状金型3とニップローラ5のニップ部よりもシート基材9搬送方向下流側の位置に設けられている。UVランプ13a,13bから出射された紫外線は、シート基材9を透過して、その一方の面に塗布されたモノマーに照射され、シート基材9上でモノマーを硬化させる。
【0024】
そしてモノマーが硬化すると、図3に示すようなプリズムシートが製造される。プリズムシートは、シート基材9の一方の面に、ロール状金型3の加工パターン3aと相補的な形状のプリズム15を備える。このシート基材9は、可視光、および紫外線、電子線等の活性エネルギ線を透過する、例えば、硝子、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド系樹脂等の材料をフィルム、またはシート状に加工したものである。
【0025】
図4は、プリズムシート製造装置を立ち上げる前のロール状金型を模式的に示す端面図である。図4に示すように、プリズムシート製造装置1を立ち上げてプリズムシートの製造を開始する前に、ロール状金型3の外周面には、ロール状金型3の外周面を保護するための保護シート23が予め配置される。この保護シート23は、ロール状金型3の外周面全面に巻き付けて配置されており、プリズムシート製造装置1の空運転時に、ロール状金型3の外周面に形成されたプリズムパターン3aとシート基材9が接触するのを防止するようになっている。
【0026】
保護シート23は、モノマー塗布装置11から滴下されるモノマーによって、シート基材9の表面に接着可能である。そしてモノマーによって保護シート23をシート基材9に接着させることにより、保護シート23をシート基材9と共に、シート基材9の搬送方向下流側に向けて搬送する。これにより、保護シート23がロール状金型3の外周面から除去される。
【0027】
このような保護シート23は、長尺に形成され、その長さは、少なくともロール状金型3の外周長よりも長くなっており、ロール状金型3の外周を少なくとも1.5周巻けるような長さであるのが好ましい。そして、保護シート23は、ロール状金型3の回転方向上流側から回転方向下流側に向かって巻かれており、その後端23aが保護シート23と接触するように配置され、その先端23bが、保護シート23の一部とオーバラップして保護シート23の外側面に接触するように配置されている。
【0028】
このような保護シート23は、ロール状金型3の径方向内側に配置されるようになった第1層23cと、ロール状金型3の径方向外側に配置されるようになった第2層23dとの積層体によって構成されており、これら第1層23cと第2層23dは、例えば接着剤等により互いに接合されている。
【0029】
保護シート23の第1層23cは、ロール状金型3の外周面に接触する層であり、ロール状金型3の外周面及びシート基材9よりも硬度の低い材料によって構成される。具体的には第1層23cは、シート基材9としてポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられる場合、これよりも硬度が低いポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体などからなる材料をシート状にしたものを用いることができる。また、第1層23cを構成する材料としては、第一工業製薬株式会社製のポリウレタン水分散体のスーパーフレックスに代表される水溶性ポリマー、カラギーナンおよびグァーガム等の天然多糖類からなるシートを用いることができる。また、第1層23cとしては、なるべく柔らかくて厚い、異物に対しての緩衝能力の優れたシート材料を用いることが好ましい。
【0030】
また、第2層23dは、モノマー塗布装置11から滴下されるモノマーによってシート基材9に接着され、且つ耐熱性を有する材料をシート状にしたものから構成される。このように第2層23dを、耐熱性を有する材料によって構成することで、装置の空運転時にUVランプ13a,13bから照射された紫外線が透過するのを防ぐことができる。そして、第2層23dを構成する材料としては、アルミ箔、銀箔、金箔、ニッケル箔、銅箔、樹脂フィルム等がある。
【0031】
また、図5は、保護シート23の先端近傍を示す上面図である。図5に示すように、保護シート23の先端23bは、先細り形状を有している。そしてこの先細り形状の先端23bの先端部は、上述のモノマー塗布装置11から滴下されるモノマーや、他の接着剤によって、保護シート23の外側面に接着されている。そして保護シート23の先端23bは、シート基材9に接着されてロール状金型3の外周面から除去される。この時に保護シート23の先端近傍を先細り形状とすることで、より確実に保護シート23をロール状金型3の外周面から除去することができる。なお、保護シート23の先端は、保護シート23の外側面に接着されている必要はなく、意図せずに保護シート23の先端部がロール状金型3から外れない程度に保持されていればよい。
【0032】
また、保護シート23自体に微細な粉塵が付着している可能性があるので、保護シート23の両面は、クリーンな環境下で予めクリーニングされることが好ましい。このクリーニング作業は、例えば保護シート23の両面を帯電防止性の粘着ローラで数回除塵する等の処置によって行われるのが好ましい。
【0033】
なお、本実施形態では、保護シート23が第1層23cと第2層23dの積層体を用いることとするが、保護シートとしては、ロール状金型3と接触する部分がロール状金型3の外周面よりも硬度が低く、且つ保護シート23をロール状金型3に巻き付けたときに径方向外側に面する部分が耐熱性を有するような複合体を用いることもできる。
【0034】
次に、このようなプリズムシート製造装置1を用いたプリズムシートの製造方法について詳述する。
【0035】
先ず、プリズムシート製造装置1を立ち上げる前、すなわちモノマー塗布装置11、UVランプ13a,13bの駆動、及びシート基材9の搬送を開始する前に、ロール状金型3の外周面に保護シート23を配置する。なお、ロール状金型3を製造した直後に保護シート23を配置してもよく、また、プリズムシートの製造が終了し、プリズムシート製造装置1からロール状金型3を取り外して外周面のクリーニングを行った後に、ロール状金型3の外周面に保護シート23を配置してもよい。即ち、保護シート23は、ロール状金型3がプリズムシート製造装置1に装着されてプリズムシートを製造している間を除いて、常にロール状金型3の外周面に配置される。これにより、ロール状金型3の保管中、プリズムシート製造装置1への装着作業中などに、ロール状金型3の外周面に異物が付着するのを防止し、さらに、プリズムシートの製造工程初期においても、シート基材9と、ロール状金型3のプリズムパターン3aが接触するのを防止することができ、これによりプリズムパターン3aを確実に保護することができる。
【0036】
次いで、シート基材9を、ニップローラ5、ロール状金型3、及び剥離ローラ7に架け渡す。そしてシート基材9をロール状金型3に架け渡すとき、シート基材9は保護シート23の上に架け渡されるので、シート基材9とロール状金型3のプリズムパターン3aが接触しないようになっている。
【0037】
次いで、シート基材9の搬送方向上流側及び下流側に設けられた搬送ローラ(図示せず)を駆動することによって、シート基材9の搬送を開始する。これにより、シート基材9は、搬送方向上流側から、ニップローラ5の外周、ロール状金型3の外周、及び剥離ローラ7の外周を通って、搬送方向下流側に搬送される。そしてロール状金型3の外周面に配置された保護シート23は、ロール状金型3と共に回転する。これにより、空運転時にロール状金型3のプリズムパターン3aとシート基材9が接触して、ロール状金型3のプリズムパターン3aが破損するのを防止することができる。また、装置の空運転を開始する瞬間に、ロール状金型3の周速とシート基材9の搬送速度が同期せずに、両者の間にずれが生じてプリズムパターン3aが破損する場合があるが、ロール状金型3とシート基材9の間に保護シート23を配置することによって、プリズムパターン3aを保護することができ、これによりロール状金型3が破損するのを防止することができる。
【0038】
次いで、UVランプ13a,13bを駆動する。このとき、保護シート23は、耐熱性を有する第2層23dが径方向外側に配置されているので、第1層23cがUVランプ13a,13bが発する熱に曝されるのを防ぐことができる。これにより、保護シート23の第1層23cが軟化して、保護シート23がロール状金型3の外周面から剥がれるのを防止することができる。
【0039】
そして、数分間してUVランプ13a,13bの光量が安定した後、モノマー塗布装置11を駆動して、ニップローラ5とロール状金型3のニップ部にモノマーを滴下する。そしてニップローラ5とロール状金型3のニップ部では、シート基材9と保護シート23が接触するようになっているので、モノマー塗布装置11から滴下されたモノマーは、シート基材9と保護シート23の間に入り込む。そして上述のように、保護シート23の第2層23dは、モノマーによってシート基材9の表面に接着されるような材料によって形成されているので、モノマー塗布装置11からモノマーが滴下されると、保護シート23はシート基材9と接着される。そして、保護シート23の先端23bは先細り形状を有しているので、保護シート23は、先端23bから徐々に、ロール状金型3の外周面から剥離し始める。そして保護シート23は、シート基材9と共にシート基材9の搬送方向下流側に向けて搬送され、これにより、ロール状金型3の外周面のプリズムパターン3aが露出してシート基材9のプリズム形成面と接触するようになる。
【0040】
次いで、モノマー塗布装置11から滴下されたモノマーは、シート基材9のプリズム形成面とロール状金型3の外周面の間に入り込む。そして、UVランプ13a,13bからの紫外線がシート基材9を透過してモノマーに照射されると、モノマーはプリズムパターン3aと相補的な形状で硬化し、シート基材9上にプリズムが形成される。
【0041】
このようにプリズムシート製造装置1によれば、第1層23cと第2層23dを有する保護シート23を設けることによって、ニップローラ5や剥離ローラ7等の基材に付着した塵等からプリズムパターン3aを保護することができる。さらにこの保護シート23は、プリズムシートの製造に使用されるモノマーを用いてインラインで自動的にロール状金型3の外周面から除去することができるので、シート基材9上にプリズムを形成する直前までプリズムパターン3aを保護することができる。そしてこれにより、UVランプ13a,13bが安定した後に空運転を停止してロール状金型3の駆動中に保護シート23を取り除くような煩雑な作業を行うことなく、プリズムパターン3aを保護することができる。
【0042】
尚、本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、上記プリズムシート製造装置の構成は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【0043】
(実施例)
以下、本発明の実施例について詳述する。
まず、ロール状金型を作製するために、熱処理を行った外径318.5mm、肉厚30mm、長さ1000mmの機械構造用炭素鋼管(STKM)を用意し、汎用旋盤により直径300mm、肉厚15mm、長さ900mmの円筒形状の部材を作成した。次いで、円筒形状の部材に厚み100μmの硬質クロムめっきを施し、円筒研削機に乗せて外周面を研磨した。その後、円筒形状の部材の外周部に厚み500μmの硬質銅めっきを形成し、銅めっきロール状部材を作製した。
【0044】
そして、銅めっきロール状部材を超精密旋盤に設置し、加工プログラムに従ってダイヤモンドバイトによりピッチ50μmのプリズムを幅800mmに渡り切削加工した。その後、切削加工を行った部分に厚み1μmの無電解ニッケルめっき処理を施し、ロール状金型を作製した。
【0045】
このようにして作製されたロール状金型に、厚みが25μmのポリプロピレンシートと厚みが12μmのアルミ箔とが積層されてなる、幅が850mmの保護シートをロール状金型の周囲に配置した。保護シートは、ポリプロピレンシートがロール状金型の径方向内側に向けて配置され、アルミ箔が径方向外側に向けて配置されるように、またシートがプリズム製造装置に取り付けられた際にロール金型の回転方向上流から下流に向かって巻かれるように、ロール状金型の周囲に2周強巻きつけた。その後、図5に示されるように、先端部が頂角60度の略二等辺三角形状となるようにシートを折り返し、先端部を外周部に巻付けて保持した。その後、図1に示されたようなプリズムシート製造装置にロール状金型を取り付けた。次いで、プリズムシート製造装置にシート基材として厚みが100μmのPET基材を配置し、UVランプを点灯し、ロール状金型を回転させながらPET基材の搬送を開始した。
【0046】
UVランプの出力が安定するまで数分間PET基材を搬送した後に、ニップロールとロール状金型との間にニップされているシート基材に(即ちロール状金型の外周面に配置された保護シートとの間)に以下の表1に示すように調製された活性エネルギ線硬化性樹脂を供給し、UVランプから照射される紫外線により、活性エネルギ線硬化性樹脂を硬化させた。
【0047】
【表1】

【0048】
UVランプにより活性エネルギ線硬化性樹脂が硬化すると、保護シートがシート基材に接着されてロール状金型表面から除去され、連続してロール状金型に形成されたパターンと相補的な構造がシート基材上に形成されたプリズムシートが得られた。このようなプリズムシートについて、ロール状金型の円周長毎に周期的な欠陥が現れていないかを確認し、ロール状金型のパターン欠陥の有無を視認により確認した。その結果を表2に示す。
【0049】
(比較例)
ロール状金型の外周面に保護シートを配置しなかった以外は、実施例1と同様にしてプリズムシートを得た後に、プリズムシートにロール状金型の円周長毎に周期的な欠陥が現れていないかを確認し、ロール状金型のパターン欠陥の有無を視認により確認した。
【0050】
このような実施例、及び比較例を各々3回実施し、全てのロール状金型について、欠陥箇所の数をカウントし、ロール状金型1つあたりの欠陥発生個数の平均値を得た。その結果を、表2に示す。表2に示すように、実施例にかかるロール状金型では、微細な欠陥の発生個数が1箇所以下だったが、比較例にかかるロール状金型では欠陥が11箇所確認された。
【表2】

【符号の説明】
【0051】
1 プリズムシート製造装置
3 ロール状金型
3a プリズムパターン
9 シート基材
13a,13b UVランプ
15 プリズム
23 保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に加工パターンが形成されたロール状金型の周囲に長尺シート基材を配置し、
前記ロール状金型を回転させて前記長尺シート基材を搬送し、
前記長尺シート基材を通して、前記ロール状金型への活性エネルギ線の照射を開始し、
前記ロール状金型と前記長尺シート基材との間に活性エネルギ線硬化性樹脂を供給し、
前記活性エネルギ線により前記活性エネルギ線硬化性樹脂を硬化させ、
前記加工パターンに相補的な光学パターンを前記長尺シート基材上に形成することにより光学シートを製造する方法であって、
前記長尺シート基材は、前記ロール状金型の前記外周面に配置された前記加工パターンを保護する保護シートを介して前記ロール状金型の周囲に配置され、
前記保護シートは、前記ロール状金型と前記長尺シート基材との間に供給される活性エネルギ線硬化性樹脂によって、前記長尺シート基材に接着されて前記ロール状金型から除去されること、
を特徴とする光学シートの製造方法。
【請求項2】
前記保護シートは、前記ロール状金型の外周面よりも硬度が低い材料からなる第1層と、耐熱性を有する材料からなる第2層とを含む積層体であり、
前記保護シートは、前記第1層が前記ロール状金型の径方向内側に面し、且つ前記第2層が前記ロール状金型の径方向外側に面するように配置され、前記ロール状金型の外周面に巻き付けられる請求項1に記載のロール状金型を用いた光学シートの製造方法。
【請求項3】
前記保護シートは、その長さが前記ロール状金型の外周長よりも長く、さらに前記ロール状金型の回転方向上流側から下流側に向かって前記ロール状金型の外周面に巻きつけられている請求項1又は2に記載のロール状金型を用いた光学シートの製造方法。
【請求項4】
前記保護シートにおける前記ロール状金型の回転方向下流側の端は、先細り形状を有し、その先端部が前記保護シートにおけるロール状金型径方向外側の面に保持されている請求項1乃至3の何れか1項に記載のロール状金型を用いた光学シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−228347(P2010−228347A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79811(P2009−79811)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】