説明

ワイパーブレード用ゴムのコーティング組成物、このコーティング方法及びこれによって製造されたワイパーブレード用ゴム

【課題】本発明は、ワイパーブレード用ゴムの耐久性と摩擦力に対する耐性を改善するために、このようなゴムにコーティング(塗装)するための組成物及びそのコーティング方法を提供する。
【解決手段】コーティング組成物は、ワイパーブレード用ゴムをコーティングするための組成物において、溶媒の存在下で、3.5乃至15重量%のテフロン、3.2乃至9.6重量%のウレタン樹脂、1.6乃至6.0重量%のシリコン樹脂、5.0乃至25.0重量%の水溶性樹脂を含み、これらの構成成分であるテフロン、ウレタン樹脂、シリコン樹脂及び水溶性樹脂の大きさが全部50乃至500ナノメートルであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパーブレード用ゴムのコーティング組成物に関するもので、さらに詳しくは、耐久性と摩擦力に対する耐性を改善するために、ワイパーブレード用ゴムにコーティングするためのナノ単位の組成物、そのコーティング方法及びこのような方法によって製造されたワイパーブレード用ゴムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に自動車においては、自動車のワイパーアームを介してワイパーブレードに結合されたワイパー用ストリップゴムが駆動するようになる。このような駆動装置によって、ワイパー用ストリップゴムは自動車のガラス面の上で左右旋回しながら雨、雪、塵等の異物を除去して運転者の視野を確保する役割をする。このようなワイパーブレードのガラス面に接する部分は、ストリップ状(strip−shaped)をしているのでワイパーブレード用ストリップゴムと言い、これをワイパーブレード用ゴム又はワイパー用ゴムとも略称するので、以下ではこれらを混用して使用する。
【0003】
このようなワイパーブレードのフレームに結合して使用されるワイパー用ゴムは、弾性材料で構成され、このようなワイパー用ゴムは、ワイパーブレードのフレームに結合される部分であるヘッド部と、自動車のガラス面に接触するワイパーの刃部分であるウェッジ部とに分けられる。このようなワイパーヘッド部及びウェッジ部は、自動車のガラスの洗浄時、ガラスとワイパー用ゴムとの間で発生する摩擦力によってガラスの洗浄方向と反対方向に折り曲げられるように相互に組み立てられる。これによって、ワイパー用ゴムは、均一でかつ、可能な限り滑りのない洗浄機能を維持することができる。
【0004】
このようなワイパーブレード用ゴムの素材には、機械的な特性だけでなく、外部影響に対する安定性と関連した複雑な要求条件が求められる。すなわち、ワイパー用ゴム素材は、可撓性を有するとともに、自動車のフロントガラス上を滑らかに滑走しなければならなく、外部の影響、特に酸化物、石油(mineral oil)または洗浄液に含有された化学薬品に対する耐久性を有しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワイパー用ゴム素材は、一般に、ゴム、つまり、加硫された天然ゴム又は合成ゴムであるが、ゴムの滑走特性を改善するために、例えば、ワイパー用ゴムの表面にコーティング処理をしたり、塩素処理をしたり、黄化モリブデンのような潤滑粉末剤を塗布することなどが提案されてきた。
【0006】
DE−C−35 27 093に明示されたワイパー用ゴムは、主にEPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)から構成されるが、EPDMの場合、非飽和位置が重合体主環の外部に置かれるようになる。従って、EPDMはハロゲン化されておらず、EPDMは、石油及び洗浄液に含有された化学薬品に対する耐久性が足りなかった。DE−C−35 27 093においては、主にEPDMから構成されるワイパー用ゴムの滑走特性と耐久性を改善するために、EPDMから構成されたマトリックスに、少なくともフロントガラス表面上で滑走する領域に塩素処理をしたジエン−タイプ−ゴム断片が配置される。このようなワイパー用ゴムには、異なるゴム素材層の比較的複雑な構造を有するという短所がある。
【0007】
これに対して、国際特許公開番号第WO1999/39948では、ワイパー用ゴムのヘッド部とウェッジ部の素材を夫々分離した形態が提案されている。ここで、ジエン−タイプ−ゴムのヘッド部は、ハロゲン化することができるので、滑走性が良い。また、ワイパーブレードの転換ブリッジ及びウェッジにはクロロプレン(chloroprene; CR)ゴムが使用され、このようなクロロプレンは、優秀な機械的特性と悪天候、老化、化学薬品及び温度の影響に対する高い耐久性を有するので、簡単でかつ経済的な方法で良好な洗浄力を達成することができる。しかし、このようなクロロプレンは、悪天候、老化、化学薬品及び温度等の影響に対する高い耐久性を有しているのに対して、ガラスとワイパー用ゴムとの間で発生する摩擦力に対する耐性などに対しては限界があった。
【0008】
一方、韓国特許公開公報第10−2005−006677号には、ワイパーブレードのコーティング組成物及びそのコーティング方法が提示されている。ここで使用されるコーティング組成物は、黒鉛とジメチルシリコンオイルを必須成分としながら、溶媒の存在下でポリオール樹脂、ウレタン樹脂、水酸基含有フッ素樹脂、エポキシ樹脂及びシリコン樹脂から選択された樹脂を含んでいる。このようなコーティング組成物でコーティングされたワイパーブレードを自動車に取り付けて作動させる場合、自動車のフロントガラスに耐久性の優れた撥水被膜を形成させることができ、ワイパーブレードの騒音、震えの発生を防止することができると記載されている。しかし、このような先行発明で使用される溶媒は、有機溶媒であるメチルエチルケトン、トルエン、キシレン及びブチルアセテートから選択して使用し、使用される樹脂も水溶性樹脂に限定していないので、環境汚染を起こす問題があった。
【0009】
従って、本発明の目的は、悪天候、化学薬品及び温度等の影響に対する高い耐久性を有しながら、摩擦力に対する耐性も増進させるために、ワイパー用ゴムにコーティングするための親環境的なテフロンコーティング組成物を提供することにある。また、本発明のコーティング組成物の粒子として従来よりも小さいナノメートル単位の素粒子を使用してコーティングすることで、前記韓国特許公開公報第10−2005−006677号に記載されたコーティング組成物よりも優れたコーティング効果を奏し、長期間撥水性能を持続することのできるコーティング組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記本発明の目的は、ワイパーブレード用ゴムをコーティングするための組成物であって、溶媒の存在下で、3.5乃至15重量%のテフロン、3.2乃至9.6重量%のウレタン樹脂、1.6乃至6.0重量%のシリコン樹脂、5.0乃至25.0重量%の水溶性樹脂を含み、これらの構成成分であるテフロン、ウレタン樹脂、シリコン樹脂及び水溶性樹脂が全部50乃至500ナノメートルであるコーティング組成物によって達成され、特に蒸溜水を溶媒として使用することが好ましい。
【0011】
本発明の一様態として、本発明のコーティング組成物は、0.16乃至0.24重量%以下の銀、又は3.5重量%乃至15重量%の黒鉛(グラファイト)又はカーボンブラック、又はこれらの銀と黒鉛を全部含むことができ、これらの成分も全部50乃至500ナノメートルで使用することができる。
【0012】
本発明で使用されるゴムとしては、一般的なゴム、すなわち、加硫された天然ゴム又は合成ゴムも使用可能であるが、上述した先行技術で例示したジエン−タイプ−ゴム又はクロロプレンゴムを使用することが好ましい。特に、前記ジエン−タイプ−ゴムとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、 EPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)ゴムを使用することがさらに好ましく、必要によってシリコンゴムも使用可能である。
【0013】
一方、前記本発明の目的は、上記のようなコーティング組成物でワイパーブレード用ゴムをコーティングする方法及びこれによって製造されたワイパーブレードによっても達成される。特に、このようなコーティングは、撥水性能及び耐久性の向上のために中間媒介剤(例えば、黒鉛、ポリウレタン樹脂、フッ素)で1次コーティングした後、2次コーティングする。2次コーティング時には、使用されたゴムの表面を膨張可能な温度で予熱してゴムの表面を膨張させた状態でスプレー方式でコーティングすることが好ましい。
【0014】
本発明で主な成分として使用されるテフロンは、フッ素合成樹脂の中で代表的なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の商品名であり、これは、結晶性樹脂として260℃での長期使用に耐える耐熱性を有し、耐薬品性、電気絶縁性、非接着性、低摩擦係数等が特異な合成樹脂として知られている。特に、このようなPTFEは、融点327℃の結晶性ポリマーとして、連続使用温度が260℃であり、低温(−268℃)から高温まで安定的に使用することができると知られている。
【0015】
また、テフロンは、有機材料の中で最高の耐薬品性を有すると知られている。特に、酸、アルカリ、各種の溶剤により全然変形されず、フッ素ガス、溶融アルカリ金属等の特殊な薬品の苛酷な条件でのみ変形されるので、ガスケット、パッキング、各種のシーリング材等に利用されている。また、テフロンの機械的な特性における最大の特徴は、摩擦係数が小さい点にあり、各種充填材として補強される。また、テフロンの非接着性も大きな特徴であり、フライパンや各種鋼板のコーティング等に最適な合成樹脂として知られている。
【0016】
本発明は、このようなテフロンの物理、化学的な特性と機械的な特性を利用してテフロンを含有する組成物でワイパー用ゴムをコーティングすることによって、ワイパー用ゴムにもこのような悪天候、老化、化学薬品及び温度の影響に対する高い耐久性を与えながら、ガラスとワイパー用ゴムとの間で発生する摩擦力に対する耐性も増進させることができる点に着眼して完成された。
【0017】
このようなテフロンは、コーティング組成物において、組成物の全体重量を基準として3.5乃至15重量%の範囲内で使用され、該範囲から外れれば所望のコーティング効果を達成することができない。好ましい成分比は7乃至8重量%である。
本発明で使用されるポリウレタン樹脂は、ジイソシアネートとジアルコールがウレタン結合を繰り返す重付加反応によって製造される合成高分子化合物として、主鎖中にウレタン結合を有するもので、一般に市販される水溶性ポリウレタンであれば何れも使用可能である。
【0018】
このようなウレタン樹脂は、コーティング組成物において、組成物の全体重量を基準として3.2乃至9.6重量%の範囲内で使用され、該範囲から外れればと所望のコーティング効果を達成することができない。好ましい成分比は5乃至7重量%である。
本発明で使用されるシリコン樹脂は、シリコンの有機誘導体の重合物として、珪素樹脂とも言う。この分子構造は、珪素と酸素が交互にあるシロキサン結合(Si−O結合)の形態で、珪素を中心とし、珪素にメチル基、フェニル基、ヒドロキシル基等が添加された熱可塑性合成樹脂である。このようなシリコン樹脂は、ほとんどの溶剤において泡を無くす作用が大きく、特に、無機物や有機物に対して撥水性(water repellent property)があるので、本発明の組成物として使用される。本発明で使用されるシリコン樹脂は、一般に市販されるシリコン樹脂であれば何れも使用可能であるが、ポリハイドロモノメチルシロキサン(polyhydromonomethylsiloxane)オイルまたは樹脂を使用することが好ましい。
【0019】
このようなシリコン樹脂は、コーティング組成物において、組成物の全体重量を基準として1.6乃至6.0重量%の範囲内で使用され、シリコン樹脂が6重量%以上であればガラス面に白膜化現象が現れるので開発しようとする目的を達成することができなく、シリコン樹脂が1.6重量%以下であっても同様である。したがって、シリコン樹脂の好ましい成分比は、2乃至3重量%である。
【0020】
一方、本発明のコーティング組成物の撥水性を増進させるためにシリコン樹脂を使用するが、このような撥水性以外にも、ワイパーブレードに必要な他の物理的、化学的な特性を与えるために、市販中の水溶性樹脂(water soluble resin)を本発明のコーティング組成物に追加することができれば、水溶性樹脂としては熱硬化性樹脂を使用することが好ましく、特にウレタン樹脂を使用することが好ましい。
【0021】
このような水溶性樹脂は、コーティング組成物において、組成物の全体重量を基準として5乃至25重量%の範囲内で使用され、該範囲から外れれば所望の発明の効果を達成することができない。好ましい成分比は約20重量%範囲内である。
【0022】
また、本発明のコーティング組成物に、良好な機械的な特性だけでなく外部影響に対する高い耐久性等を与えるために、市販中の黒鉛やカーボンブラックを本発明のコーティング組成物に追加することができる。
【0023】
また、銀は、抗菌、殺菌、耐久性の増加以外にも化学的な性質を増進させるものと知られているが、このような銀の性質は、本発明のワイパーブレードに必要なものであるので、本発明で使用することができる。このような銀は、コーティング組成物において、少量でも十分であるので、組成物の全体重量を基準として0.16乃至0.5重量%の範囲内で使用され、該範囲から外れれば所望の発明の効果を達成することができないか、経済性が低下する。
【0024】
本発明では、シリコン樹脂以外にも黒鉛(Graphite)またはカーボンブラックを追加する。すなわち、コーティングされたワイパーブレード用ゴムにあるシリコン成分が先にワイパーによって左右運動をしながら自動車のガラスに撥水成分を転移させ、ガラスが撥水機能を有するようになるが、このような撥水成分は、摩擦係数を大きくし、ワイパーのワイピング時に騒音や震えを誘発する。そのため、これを防止するために、摩擦係数を減らす黒鉛やカーボンブラックを入れてコーティング組成物を製造する。このような黒鉛またはカーボンブラック成分は、コーティング組成物において、組成物の全体重量を基準として3.5乃至15重量%の範囲内で使用され、該範囲から外れれば所望の発明の効果を達成することができないか、経済性が低下する。
【0025】
本発明のコーティング組成物は、組成物の製造を容易にするか、組成物がよく乾燥されるように積極的に助ける役割をする分散剤のみならず、安定剤、乾燥剤、増粘剤、消泡剤等の塗料機能のための添加剤等を追加的に含むことができる。このような分散剤及び添加剤は、少量でも十分であるので、組成物の全体重量を基準としてそれぞれ0.5重量%の範囲内で使用される。
【0026】
最後に、コーティング液組成物を製造するための溶媒として様々な有機溶媒を使用することができるが、有機溶媒は環境汚染物質を発生するので、この有機溶媒としては、環境親和的な蒸溜水、すなわち水を利用することが好ましい。しかし、蒸溜水だけで前記各成分を迅速にかつ十分に溶解させることができない場合、少量のラッカー用シンナーを蒸溜水と混合した混合物を使用することもできる。本発明で使用されるラッカー用シンナーは、一般的に、塗装時に塗料の粘性度を低下させるための混合溶剤として使用されるもので、市中で容易に購入することができる。
【0027】
本発明では、コーティング組成物の粒子として既存よりも小さいナノメートル単位の小さい素粒子を使用してコーティングするが、このようなナノメートル粒子のコーティング組成物を製造するために、使用される各成分は、50乃至500ナノメートルの素粒子に製造された後、溶媒である蒸溜水に溶解させてコーティング組成物を製造する。ここで、テフロン成分としては、約300ナノメートル以下の製品を使用することが好ましく、その他の成分としては約400ナノメートルのものを使用することが好ましい。
【0028】
このようなナノメートル単位の組成物によってコーティングが行われる工程は、60乃至100℃で予熱してゴムの表面を膨張させた状態でコーティング組成物をスプレーする。予熱温度は、ゴムの性質によって異なるが、使用されたゴム表面の膨張可能な程度の温度として一般的に80℃が適切である。このような予熱過程は、既存のコーティング方法とは異なってナノメートル単位の素材を利用してスプレーするので、ゴム表面にコーティングされるだけでなく、ゴム表面の内部にコーティング成分が浸透されるようになる。したがって、本発明のコーティング組成物によれば、既存のコーティング組成物による場合に比べて優れたコーティング効果を奏することができ、より長期間撥水性能を持続することができるという長所がある。
【0029】
本発明によるワイパーブレード用ゴムは、通常的な方法によって製造されるが、上述した先行文献に記載されたように、ジエン−弾性ゴムとクロロプレン−弾性ゴムの共押し出し(coextrusion)によって製造することが有利であり、この場合、一番最初に規定された断面形態の加硫処理されていないストリップが製造される。次に、ワイパーブレード用ゴムを加硫処理したり、必要によっては、例えば、次亜塩素酸塩またはトリクロロシアン酸を使用して塩素処理することが好ましい。
【0030】
本発明のコーティング組成物には、黒鉛(Graphite)またはカーボンブラックとシリコン成分が全部含まれているので、一度のコーティングで黒鉛コーティングをしてからシリコンコーティングをしたような二重の効果を達成することのできるコーティング法があり、また特定の成分によって接着力が弱くて耐久性に問題があるので、前処理後に上塗りコーティングをする方法を用いてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によるテフロンコーティングワイパーブレードは、作動性もよく、低い摩擦係数を有するので、ワイパーによる自動車の騒音が少なく発生し、ワイパーによるチャタリング(chattering)の発生も少ない。このような効果をさらに具体的に確認するために、下記の実施例で得られたコーティング組成物をもって作動性試験、撥水コーティング試験、摩擦力試験を行った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下では、具体的な実施例を参照して、コーティング組成物を製造した後のコーティング過程を簡単に説明する。
【0033】
(実施例1)
溶媒として使用される蒸溜水に、テフロン25重量%、ウレタン樹脂25重量%、シリコン樹脂1重量%、カーボンブラック1重量%、銀2重量%、2重量%の塗料添加剤(それぞれ0.4重量%の分散剤、安定剤、乾燥剤、増粘剤及び消泡剤の混合成分)を添加するが、使用されるテフロンは約300ナノメートルに、残りの成分は約400ナノメートルの素粒子に製造し、ナノメートル単位のコーティング液組成物を製造した。
【0034】
図1は、内部弾性レール10を有するヘッド部13と自動車のガラス面に接するウェッジ部15とが転換ブリッジ17を介して結合された従来のワイパー用ゴムの横断面図である。また、図2は、外部弾性レール30を有するヘッド部33と自動車のガラス面に接するウェッジ部35とが一体となった二つのワイパー用ゴムが相互に対向しながら連結部40によって弱く連結された形態である、本発明による二つのワイパー用ゴムの横断面図である。
【0035】
本発明では、図1の形態の従来のワイパー用ゴムを上記のように製造されたコーティング組成物でコーティングすることもできる。また、図示していないが、外部弾性レールを有するヘッド部と自動車のガラス面に接するウェッジ部とが転換ブリッジを介して結合または一体に結合された従来のワイパーブレード用ワイパーストリップの場合にも同様に適用する。
【0036】
しかし、本発明では、図2のように、二つのワイパーゴムが連結部40によって結合された状態で成形されたものを完全に切断せずに、連結部40を刃で刻んだ後、コーティングが円滑に行われるようにする中間媒介剤として黒鉛で前処理過程を行う。続いて、ワイパーブレード用ゴム全体に、すでに製造された組成物でスプレー方式でコーティングする。その後、刃で連結部40の中間のゴム部分を切断し、二つのワイパーブレード用ゴムとしてそれぞれを使用する。
【0037】
(実施例2)
溶媒として使用される蒸溜水に、テフロン18重量%、ウレタン樹脂20重量%、黒鉛7重量%、銀2重量%、2重量%の塗料添加剤(それぞれ0.4重量%の分散剤、安定剤、乾燥剤、増粘剤及び消泡剤の混合成分)を添加するが、使用されるテフロンは約300ナノメートルに、残りの成分は約400ナノメートルの素粒子に製造して、ナノメートル単位のコーティング液組成物を製造した。
【0038】
本実施例2で得られたコーティング組成物をワイパーブレード用ゴムにコーティングする方法は、実施例1で説明した方法と同様に適用する。
【0039】
(実施例3)
溶媒として使用される蒸溜水に、テフロン8重量%、ウレタン樹脂20重量%、黒鉛9重量%、銀2重量%、2重量%の塗料添加剤(それぞれ0.4重量%の分散剤、安定剤、乾燥剤、増粘剤及び消泡剤の混合成分)を添加するが、使用されるテフロンは約300ナノメートルに、残りの成分は約400ナノメートルの素粒子に製造し、ナノメートル単位のコーティング液組成物を製造した。
【0040】
本実施例3で得られたコーティング組成物をワイパーブレード用ゴムにコーティングする方法も、実施例1で説明した方法と同様に適用する。
【0041】
<試験1(ワイパー作動性試験)>
上記のように製造されたワイパーブレードの作動性試験は、KS R 3015、 RS R 0031に規定されたワイパーブレード性能評価に利用する試験装置に準じる試験装置を使用して評価点数で表示した。このような評価方法は、自動車のガラスに水を撒いた後、実際にワイパーを駆動し、点数表に基づいて10点満点を基準として評価する感性評価方式である。
【0042】
まず、テストは、実施例1によって製造されたコーティング組成物を選択し、現代自動車の‘EF Sonata’自動車を選択して気温28.3℃及び湿度74%の気象条件下で10点を基準としてワイパー作動性を評価した。夫々の点数は、(1−1)コーティングしていないワイパー用ゴムを利用した実験結果を下記の表1に示し、(1−2)コーティングしたワイパー用ゴムを利用した実験結果を下記の表2に示した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
前記表1及び表2を比較すると、ゴムコーティング前のワイパーブレード用ゴムは、ワイパー作動性において、ワイパーがアップするときの平均が5.9で、ダウンするときの平均が5.6であるのに対して、コーティング後のワイパーブレード用ゴムは、ワイパーがアップするときの平均が9.1で、ダウンするときの平均が8.9である。このワイパー作動性の感性評価で、コーティング後のワイパーブレード用ゴムがゴムコーティング前のワイパーブレード用ゴムよりも約2倍優れていることが分かる。
【0046】
<試験2(撥水コーティング試験)>
撥水耐久性(撥水率=ワイパーの撥水面積/ワイパーの作動面積、%)は、JIS D5710の規格に基づいて行われ、ワイパーブレードのコーティングによる撥水試験は、(1)実施例1で得られたコーティング組成物でコーティングしたワイパーブレードでそのまま撥水試験をする場合と、(2)撥水ティッシュで事前に処理した後、実施例1のコーティング組成物でコーティングしたワイパーブレードで撥水試験をする場合とに分けた。ここで、撥水ティッシュの処理は、市販中の撥水専用ティッシュで簡単に拭いて使用することであり、撥水ティッシュに撥水液が付いているので、先に処理すれば、撥水液がガラスに付いてすぐに撥水効果が追加的に得られるという長所がある。
【0047】
試験比較対象は、市販中の‘カレクス’社の撥水コーティングワイパー(‘市中製品’と表示)であり、本発明による製品は‘NPT815’と表示した。そして、‘市中製品’では、溶媒としてトルエンを、水溶性樹脂としてキシレン等の有害物質を使用したが、本発明の‘NTP815’は、溶媒として人体に無害な蒸溜水を、水溶性樹脂としてウレタン樹脂を使用した親環境的な製品である。
【0048】
(2−1)撥水ティッシュの処理のない撥水率に関する試験
ワイパーの往復試験回数として114回、228回、380回及び5,380回の四つを選択し、この結果を下記の表3に示した。これらの撥水率と試験回数間のグラフを図3に示し、実際の試験結果の写真を図4及び図5に示した。
【0049】
【表3】

【0050】
前記表3の結果を分析すれば、撥水ティッシュ処理のない状態での初期撥水率の試験結果、本発明の製品の初期撥水率(114回 往復試験)において約13%の面積がさらに発生するので、本発明の初期撥水力が向上したことが分かる。
【0051】
(2−2)事前に撥水ティッシュを処理した後の撥水率に関する試験
ワイパーの往復試験回数として総15回を選択し、この結果を下記の表4に示した。これらの撥水率x試験回数間のグラフを図6に示し、実際の試験結果写真を図7及び図9に示した。
【0052】
【表4】

【0053】
前記表4の結果を分析すれば、撥水ティッシュの処理後の撥水率試験結果、本発明の製品の耐久撥水率において18%の面積がさらに発生するので、本発明の耐久撥水力が向上したことが分かる。
【0054】
<参考試験1(摩擦力試験)>
摩擦力試験は、標準試験規格に基づかずに、電流の量で摩擦力の大きさを判断して評価した。ここで、摩擦力の尺度として使用された抵抗値は、定量的な抵抗値を意味するものでなく、ワイパーゴムの摩擦力などの比較可能な一つの比較尺度として使用された。即ち、ワイパーの駆動時に一定の電圧が流れながら電流の量が変わる形態であるが、表面の摩擦が小さい場合には少量の電流が流れ、表面の摩擦が大きい場合には多量の電流が流れるという原理によるものである。
摩擦係数は、初期撥水率試験と関連して撥水ティッシュ処理をせずに、乾燥状態(DRY)と湿潤状態(WET)で比較対象製品(‘市中製品’)と本発明の製品(‘NTP815’)に対して試験し、これらの結果を図10及び図11に示した。
【0055】
このような実験結果、摩擦係数は、定量として見ることができなく、電流の量を比較することで相対的な摩擦力を把握するときにのみ使用することができ、本発明の製品は、比較対象製品に比べて比較的高い電流値を有するので、摩擦力が高いことが分かる
また、このようなテストを実施例2及び3で製造されたコーティング組成物に対しても実施した場合に上記と類似した結果が出たので、具体的な記載は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】内部弾性レールを有するヘッド部と自動車のガラス面に接するウェッジ部とが結合された従来のワイパー用ゴムの横断面図である。
【図2】外部弾性レールを有するヘッド部と自動車のガラス面に接するウェッジ部とが一体となった二つのワイパー用ゴムが相互に対向して弱く連結された形態である、本発明による二つのワイパー用ゴムの横断面図である。
【図3】撥水ティッシュで事前に処理しない状態でコーティングしたワイパーブレードに対する撥水試験結果を撥水率(%)と試験回数で表示したグラフである。
【図4】比較対象製品(市中製品)の初期撥水率状態を往復回数に従って夫々示す自動車のフロントガラスの写真である
【図5】本発明の製品(NTP815)の初期撥水率状態を往復回数に従って夫々示す自動車のフロントガラスの写真である。
【図6】撥水ティッシュで事前に処理した後、撥水試験結果を撥水率(%)と試験回数で表示したグラフである。
【図7】撥水ティッシュで事前に処理した後、往復回数に従って比較対象製品(市中製品)の耐久撥水率を示す自動車のフロントガラスの写真である。
【図8】撥水ティッシュで事前に処理した後、往復回数に従って本発明の製品(NTP815)の耐久撥水率状態を夫々示す自動車のフロントガラスの写真である。
【図9】撥水ティッシュで事前に処理した後、往復回数に従って本発明の製品(NTP815)の耐久撥水率状態を夫々示す自動車のフロントガラスの写真である。
【図10】撥水ティッシュで事前に処理していない状態で比較対象製品(市中製品)の摩擦係数を乾燥(DRY)と湿潤(WET)状態で夫々示すグラフ写真である。
【図11】撥水ティッシュで事前に処理していない状態で本発明の製品(NTP815)の摩擦係数を乾燥(DRY)と湿潤(WET)状態で夫々示すグラフ写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパーブレード用ゴムをコーティングするための組成物において、溶媒の存在下で、3.5乃至15重量%のテフロン、3.2乃至9.6重量%のウレタン樹脂、1.6乃至6.0重量%のシリコン樹脂、5.0乃至25.0重量%の水溶性樹脂を含み、これらの構成成分であるテフロン、ウレタン樹脂、シリコン樹脂及び水溶性樹脂の大きさが全部50乃至500ナノメートルであることを特徴とするコーティング組成物。
【請求項2】
前記溶媒が蒸溜水であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記コーティング組成物は、さらに0.16乃至0.5重量%の銀、または3.5乃至15重量%の黒鉛またはカーボンブラック、またはこれらの成分を全部含み、これらの成分も50乃至500ナノメートルであることを特徴とする請求項2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記シリコン樹脂がポリハイドロモノメチルシロキサン(polyhydromonomethylsiloxane)オイルまたは樹脂であり、前記水溶性樹脂がウレタン樹脂であることを特徴とする請求項3に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記ゴムは、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、 EPDMゴム、クロロプレンゴムまたはシリコンゴムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項によって製造されたコーティング組成物でワイパーブレード用ゴムをコーティングすることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記ゴムは、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、 EPDMゴム、クロロプレンゴムまたはシリコンゴムであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティングは、コーティングが円滑に行われるように中間媒介剤で前処理した後、使用されるゴムの表面を膨張可能な温度で予熱してゴムの表面を膨張させた状態で前記組成物をスプレー方式でコーティングすることを特徴とする請求項6または7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−46659(P2009−46659A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147105(P2008−147105)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506395390)エイディエム21・カンパニー・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】