説明

ワイパ制御装置及びワイパ制御方法

【課題】車両駐車中の積雪によるワイパの不具合の発生を防止する。
【解決手段】車両(10)のガラス部分(11)を払拭するワイパ(1)の動作を制御する制御装置は、前記車両の位置における天気情報を取得する天気情報取得手段(29)と、前記車両が駐車状態であるか否かを検出する駐車状態検出手段(25)と、前記天気情報に基づいて降雪の可能性があると判定し且つ前記車両が駐車状態である場合に、前記ワイパ(1)を倒立位置(A)に移動させる倒立制御を行う制御手段(21、S11−S13)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のワイパ制御装置及びワイパ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された従来技術のワイパ制御装置は、ワイパブレードの凍結の防止のため、車両のイグニッションスイッチがオフするとワイパブレードをガラス面から退避位置に移動させる。
【0003】
また、他に関連する技術として特許文献2に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−174026号公報
【特許文献2】特開2008−155833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の従来技術では、車両駐車中の積雪によるワイパの不具合の発生を防止することには対応できなかった。特に、トラック等の大型車では、通常の乗用車に比較してフロントガラスの水平方向からの角度が大きく、車両駐車中にワイパが略水平な停止位置にある場合に積雪による不具合が生じ易い。不具合として、例えば、ワイパ上でフロントガラスに支持されるようにして積もった雪の荷重が掛って、ワイパブレードが破損したりワイパが動かなくなることがある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、車両駐車中の積雪によるワイパの不具合の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る制御装置は、車両のガラス部分を払拭するワイパの動作を制御する。制御装置は、前記車両の位置における天気情報を取得する天気情報取得手段と、前記車両が駐車状態であるか否かを検出する駐車状態検出手段と、を備える。さらに、制御装置は、前記天気情報に基づいて降雪の可能性があると判定し且つ前記車両が駐車状態である場合に、前記ワイパを倒立位置に移動させる倒立制御を行う制御手段を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の駐車中に降雪の可能性がある場合に、ワイパの位置を倒立位置に移動することにより、積雪によるワイパの不具合の発生が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る車両のワイパと車両の前部を示す図である。
【図2】本実施形態に係るワイパ制御装置を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る倒立制御(第一のワイパ制御)の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】実施形態に係る復帰制御(第二のワイパ制御)の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下では図面を参照して本発明を実施するための形態について、さらに詳しく説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る車両のワイパ1を示す図である。ワイパ1は、車両10のガラス部分としてフロントガラス11に対向するように取り付けられ、フロントガラス11を払拭する。車両10は、例えばトラック等の大型車であり、通常の乗用車に比較してフロントガラス11の水平方向からの角度が大きく、車両の駐車中又は停車中の積雪による不具合が生じ易い。例えば、フロントガラス11の角度は、80度程度である。
【0012】
ワイパ1は、ワイパアーム3と、ワイパアーム3に取り付けられたワイパブレード5からなる。ワイパ1は、ワイパブレード5のゴム部分がフロントガラス11に接して、ワイパ1の移動によりフロントガラス11の水滴や雪などを払拭する。ワイパ1は、従来技術のとおり、図示しないリンク機構を介して、ワイパモータ(電気モータ)23により駆動される。
【0013】
図2は、本実施形態に係るワイパ制御装置20を示すブロック図である。ワイパ制御装置20は、コントローラ21と、ワイパモータ23と、エンジン回転センサ25、モータ回転位置センサ27、天気情報取得装置29を備える。
【0014】
コントローラ21は、制御部又は制御手段として機能し、中央演算処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入出力インターフェース(I/O interface)を有するマイクロコンピュータからなる。コントローラ21は、駆動回路22を介して、ワイパモータ23を制御する。
【0015】
エンジン回転センサ25は、車両10が駐車状態であるか否かを検出する駐車状態検出手段(検出部)として機能する。ここで、駐車とは、車両10が継続的に停止すること、又は、運転者が、車両10を離れてすぐには運転できない状態にあることをいう。エンジン回転センサ25は、車両10のエンジン13の回転速度(回転数)を検出することにより、エンジン13のオンオフ状態を検出する。エンジン回転センサ25は、エンジン回転速度を示す回転速度信号をコントローラ21に入力する。エンジン回転速度がゼロでない場合、エンジン13はオン状態であり、車両10は駐車状態でないとみなせる。エンジン回転速度がゼロである場合、エンジン13はオフ状態であり、車両10は駐車状態であるとみなせる。
【0016】
モータ回転位置センサ27は、ワイパが略水平な停止位置(基準位置)“B"(図1参照)にあること検出するワイパ停止位置検出手段(又は検出部)として機能する。モータ回転位置センサ27は、ワイパモータ23の回転位置(回転角度)を検出し、このモータ回転位置を示す回転位置信号をコントローラ21に入力する。ワイパモータ23の回転位置が、ワイパ1の停止位置に相当する位置になる場合、ワイパが略水平な停止位置にある。
【0017】
天気情報取得装置29は、天気情報(特に降雪情報)を取得する天気情報取得手段(又は取得部)として機能し、車両10の現在位置における天気情報を表わす天気情報信号をコントローラ21に入力する。天気情報取得装置29は、例えば、テレマティクスシステムでありインターネットなどから天気情報を取得する。天気情報取得装置29は、受信器、GPS(Global Positioning System)システム、マイクロコンピュータ、入出力インターフェースなどからなる。GPSシステムから、車両10の現在位置が取得される。
【0018】
図3のフローチャートは、コントローラ21が実行する倒立制御(第一のワイパ制御)の制御ルーチンを示す。制御ルーチンは、エンジン13のオン状態において、繰返し実行される。
【0019】
ステップS11において、天気情報に基づいて降雪(又は積雪)の可能性があるか否か判定される。具体的には、天気情報が現在の降雪を示すか否か判定し、且つ、天気情報が数時間後の降雪の予報を示すか否か判定する。なお、コントローラ21のメモリには、天気情報信号とその内容を対応付ける参照テーブルが格納されており、コントローラ21は参照テーブルに基づいて、降雪の可能性があるか否か判定する。ステップS11は、降雪判定手段を構成する。
【0020】
天気情報が、現在の降雪(現在降雪していること)を示すか、又は、数時間後の降雪(数時間後降雪すること)の予報を示す場合、降雪の可能性があると判定でき、ルーチンはステップS12に進む。天気情報が、現在の降雪を示さず、数時間後の降雪の予報も示さない場合、降雪の可能性はないと判定でき、ルーチンは終了する。
【0021】
ステップS12において、エンジン13がオフ状態であるか否か判定される。エンジン回転速度がゼロである場合、エンジン13はオフ状態であると判定できる。エンジン回転速度がゼロでない場合、エンジン13はオフ状態でないと判定できる。エンジン13がオフ状態である場合、車両10が駐車状態(駐車中)であるとみなせ、ルーチンはステップS13に進み、ワイパ1が倒立位置“A” (図1参照)に移動される。エンジン13がオフ状態でない場合、車両10が駐車状態(駐車中)でないとみなせ、ルーチンは待機される。これにより、車両10が駐車中であるとき、ワイパ1を立てて、ワイパ1上に雪が積もらないようにするとともに、フロントガラス11に積もった雪の荷重がワイパに加わらないようにする。ステップS12は、駐車状態判定手段を構成する。
【0022】
ステップS13において、ワイパ1は所定時間Tだけ駆動され、倒立位置(所定位置)“A”に移動する。ここで、倒立位置とは、ワイパ1の長手方向が鉛直方向近傍になる位置、又は、ワイパ1の略水平な停止位置(基準位置)からの最大移動位置である。所定時間Tは、ワイパ1の停止位置から倒立位置に移動するために要する時間である。また、倒立制御が実行されたことを示すフラグが1に設定され(F=1)、メモリに記憶される。ステップS13の後、ルーチンは終了する。
【0023】
図4のフローチャートは、コントローラ21が実行する復帰制御(第二のワイパ制御)の制御ルーチンを示す。制御ルーチンは、エンジン13のオフ状態において、繰返し実行される。
【0024】
ステップS21において、倒立制御が実行されたか否か判定される。即ちF=1か否か判定される。倒立制御が実行されていない場合(F=0の場合)、ルーチンは終了する。倒立制御が実行された場合(F=1の場合)、ルーチンはステップS22に進む。
【0025】
ステップS22において、エンジン13がオン状態か否か判定される。エンジン13がオン状態である場合、車両10は駐車中でないとみなせ、ルーチンはステップS23に進む。エンジン13がオン状態でない場合、車両10は駐車中であるとみなせ、ルーチンは待機される。
【0026】
ステップS23において、ワイパ1が略水平な停止位置まで駆動される。即ち、ワイパモータ23の回転位置がワイパ1の停止位置に相当する位置になることにより、コントローラ20がモータ回転位置センサ27から停止位置を示す信号(停止位置信号)を受信するまで、ワイパ1が駆動される。これにより、車両10は発進等のために駐車中でない場合、運転者がワイパを駆動するワイパスイッチを操作することなく、ワイパ1が自動的に停止位置に戻り、簡便である。又、ここで、フラグが0に設定される(F=0)。その後、ルーチンは終了する。
【0027】
−作用効果−
コントローラ(制御手段)21は、天気情報に基づいて降雪の可能性があると判定し且つ車両10が駐車状態である場合に、ワイパ1を倒立位置“A”に移動させる倒立制御を行う。これにより、車両10が駐車中に降雪の可能性がある場合に、ワイパ1が立てられ雪が積もらないようにし、積雪によるワイパ1の不具合を防止できる。
【0028】
コントローラ(制御手段)21は、倒立制御が行われた後、車両10が駐車状態でなくなった場合に、ワイパ1を停止位置に移動させる復帰制御が行う。このため、車両10が発進等のために駐車中でない場合、ワイパ1が自動的に停止位置に戻り、運転者の労力が削減できる。
【0029】
本発明は以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれることが明白である。例えば、車両10が駐車状態であるか否かを検出する駐車状態検出手段(検出部)として、エンジン回転センサ25の代わりに、イグニッションスイッチ(エンジンキースイッチ)を用いてもよい。イグニッションスイッチがオフの場合、車両10が駐車状態であることが検出できる。また、ワイパが略水平な停止位置にあること検出するワイパ停止位置検出手段(又は検出部)として、モータ回転位置センサの代わりに、ワイパが停止位置にある場合に停止位置信号を発生するような他のセンサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 ワイパ
10 車両
11 フロントガラス(ガラス部分)
21 コントローラ(制御手段)
23 ワイパモータ
25 エンジン回転センサ(駐車状態検出手段)
27 モータ回転位置センサ(ワイパ停止位置検出手段)
29 天気情報取得装置(天気情報取得手段)
A 倒立位置
B 停止位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のガラス部分を払拭するワイパの動作を制御する制御装置であって、
前記車両の位置における天気情報を取得する天気情報取得手段と、
前記車両が駐車状態であるか否かを検出する駐車状態検出手段と、
前記天気情報に基づいて降雪の可能性があると判定し、且つ、前記車両が駐車状態である場合に、前記ワイパを倒立位置に移動させる倒立制御を行う制御手段と、
を備えることを特徴とするワイパ制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記倒立制御が行われた後、前記車両が駐車状態でなくなった場合に、前記ワイパを停止位置に移動させる復帰制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のワイパ制御装置。
【請求項3】
車両のガラス部分を払拭するワイパの動作を制御する制御方法であって、
前記車両の位置における天気情報を取得する天気情報取得ステップと、
前記車両が駐車状態であるか否かを検出する駐車状態検出ステップと、
前記天気情報に基づいて降雪の可能性があると判定され、且つ、前記車両が駐車状態である場合に、前記ワイパを倒立位置に移動させる倒立制御を行う制御ステップと、
を含むことを特徴とするワイパ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−121485(P2012−121485A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274576(P2010−274576)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】