ワイヤハーネス用固定具、ワイヤハーネス、ワイヤハーネスの配索方法
【課題】配索後の電線に取り付けられ、前記電線の線径の大小に対応し、前記電線に安定して取り付けられるワイヤハーネス用固定具、および、該ワイヤハーネス用固定具を備えたワイヤハーネス、および、該ワイヤハーネスの配索方法を提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス用固定具2は、当該ワイヤハーネス用固定具2を電線9に取り付ける目印とされ且つ当該電線9の外周面に沿って巻かれた目印部材61を抱持する抱持部7が設けられている。
【解決手段】ワイヤハーネス用固定具2は、当該ワイヤハーネス用固定具2を電線9に取り付ける目印とされ且つ当該電線9の外周面に沿って巻かれた目印部材61を抱持する抱持部7が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配索後の電線に取り付けられ、前記電線の線径の大小に対応し、前記電線に安定して取り付けられるワイヤハーネス用固定具、および、該ワイヤハーネス用固定具を備えたワイヤハーネス、および、該ワイヤハーネスの配索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等には、種々の電子機器と電装品とが搭載されている。これらの電子機器と電装品とにバッテリなどの電源等からの電力や制御装置等からの制御信号などを伝達する手段として、ワイヤハーネスが用いられている。
【0003】
ワイヤハーネスは、自動車等の車体を構成するパネル上に配索されている。ワイヤハーネスには、前記パネルに開孔された取付孔に係止され前記ワイヤハーネスを当該パネルに固定する固定具が設けられている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0004】
特許文献1に記載のワイヤハーネスは、当該ワイヤハーネスを構成する電線に前記固定具の取付位置を表示する目印テープが設けられ、前記目印テープ上に前記固定具の結束バンドが結束工具によって緊縛されている。
【0005】
特許文献2に記載のワイヤハーネスは、当該ワイヤハーネスを構成する電線に、当該電線の軸方向に摺動可能に形成され前記固定具に嵌合される嵌合部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−301944号公報
【特許文献2】特開2008−230481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のワイヤハーネスは、前記ワイヤハーネスが狭い箇所で配索された場合、結束口部によって固定具の帯状部を結束することが困難となるため、ワイヤハーネスの製造工程で前記固定具が取り付けられている。このため、ワイヤハーネスを配索した時に、前記固定具がパネル等に引っかかってしまい、円滑にワイヤハーネスの配索作業が行えないという問題があった。
【0008】
また、特許文献1に記載のワイヤハーネスは、前述のように、ワイヤハーネスの製造工程で固定具が取り付けられているため、ワイヤハーネスの製造工程とは異なる工程や別の場所等で、ワイヤハーネスに固定具を取り付けることができないという問題があった。
【0009】
特許文献2に記載のワイヤハーネスは、電線に設けられるスペーサと当該スペーサに嵌合される固定具とが一対として形成されているため、互いに専用品となっており、汎用性がないという問題があった。
【0010】
また、特許文献2に記載のワイヤハーネスは、線径が大径の電線にスペーサを取り付けられないという問題があった。このため、電線の線径に応じて各種寸法のスペーサと固定具とを製造した場合、コストがかかるという問題があった。
【0011】
また、特許文献2に記載のワイヤハーネスは、電線に対してスペーサが移動可能に形成されているため、スペーサを安定して位置決め状態に保持することができないという問題があった。
【0012】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、配索後の電線に取り付けられ、前記電線の線径の大小に対応し、前記電線に安定して取り付けられるワイヤハーネス用固定具、および、該ワイヤハーネス用固定具を備えたワイヤハーネス、および、該ワイヤハーネスの配索方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、電線をパネルに固定するワイヤハーネス用固定具において、前記ワイヤハーネス用固定具には、当該ワイヤハーネス用固定具を前記電線に取り付ける目印とされ且つ当該電線の外周面に沿って巻かれた目印部材を抱持する抱持部が設けられていることを特徴とするワイヤハーネス用固定具である。
【0014】
請求項2に記載された発明は、前記抱持部は、前記電線を収容する第一収容部と、前記電線を収容すると共に前記第一収容部に対向する第二収容部と、を備え、かつ、前記第一収容部と前記第二収容部とに連設され且つ当該第一収容部と当該第二収容部とを回動可能に連結した可撓部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス用固定具である。
【0015】
請求項3に記載された発明は、前記抱持部は、前記電線を収容する第一収容部と、前記電線を収容すると共に前記第一収容部に対向する第二収容部と、を備え、前記第一収容部と前記第二収容部とには、互いに係合する係合手段が設けられ、かつ、前記第一収容部と前記第二収容部とが、別体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス用固定具である。
【0016】
請求項4に記載された発明は、前記目印部材が、前記電線の外周面に沿って巻かれ且つ帯状に形成された帯状部と、前記帯状部の一端に設けられ且つ当該帯状部を挿通して係合する係合部と、を備え、前記ワイヤハーネス用固定具の前記抱持部には、前記目印部材の前記係合部を露出する開口部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のワイヤハーネス用固定具である。
【0017】
請求項5に記載された発明は、パネルに配索される電線と、前記電線を前記パネルに固定するワイヤハーネス用固定具と、を備えたワイヤハーネスにおいて、前記ワイヤハーネス用固定具が、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス用固定具とされていることを特徴とするワイヤハーネスである。
【0018】
請求項6に記載された発明は、請求項5に記載のワイヤハーネスを前記パネルに配索する配線方法であって、前記目印部材が外周面に沿って巻かれた前記電線を前記パネルに配索し、前記目印部材を前記ワイヤハーネス用固定具の抱持部で抱持し、前記ワイヤハーネス用固定具を前記パネルに固定することを特徴とするワイヤハーネスの配索方法である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された発明によれば、ワイヤハーネス用固定具は、電線の外周面に沿って巻かれた目印部材を抱持部で抱持するため、前記ワイヤハーネス用固定具の取付位置の位置精度が向上する。
【0020】
また、ワイヤハーネス用固定具は、電線の外周面に沿って巻かれた目印部材を抱持部で抱持するため、結束工具などの工具を使用せずに電線に取り付けることができる。このため、ワイヤハーネス用固定具が引掛かるような狭い箇所に電線を配索した後に、前記ワイヤハーネス用固定具を電線に取り付けて当該電線をパネルに固定することができる。
【0021】
また、ワイヤハーネス用固定具は、電線の外周面に沿って巻かれた目印部材を抱持するため、線径の異なる電線に取り付けることができる。このため、汎用性が向上する。
【0022】
また、ワイヤハーネス用固定具は、電線の外周面に沿って巻かれた目印部材を前記ワイヤハーネス用固定具の取付位置の目印としているため、電線をパネル等に配索した後に所要の位置に前記ワイヤハーネス用固定具を取り付けることができる。
【0023】
請求項2に記載された発明によれば、ワイヤハーネス用固定具は、互いに係合され且つ可撓部によって回動可能に形成された第一収容部と第二収容部とを備えているため、電線の外周面に沿って巻かれた目印部材を簡単な操作で容易に抱持することができる。このため、ワイヤハーネス用固定具を電線に取り付ける取付作業の作業時間を短縮することができる。
【0024】
請求項3に記載された発明によれば、ワイヤハーネス用固定具は、互いに係合され且つ別体で構成された第一収容部と第二収容部とを備えているため、金型における前記ワイヤハーネス用固定具を成形するキャビティの構造が簡略化される。このため、金型の制作費が抑えられ、ワイヤハーネス用固定具の費用を抑えることができる。
【0025】
また、第一収容部と第二収容部との一方が破損した場合に、この破損した一方を交換することでワイヤハーネス用固定具として使用できるため、部品交換にかかる費用を抑えることができる。
【0026】
請求項4に記載された発明によれば、ワイヤハーネス用固定具は、電線の外周面に沿って巻かれた目印部材の係合部を露出する開口部が抱持部に設けられているため、前記開口部の周縁部に前記係合部が干渉し、前記ワイヤハーネス用固定具が前記電線に対して移動することを防止する。このため、前記ワイヤハーネス用固定具の取付位置と、取付方向とを前記目印部材によって規定することができる。
【0027】
請求項5に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス用固定具を備えているため、前記ワイヤハーネス用固定具の取付位置の位置精度が向上したワイヤハーネスとなる。
【0028】
また、ワイヤハーネスは、ワイヤハーネス用固定具が引掛かるような狭い箇所に電線を配索した後に、前記ワイヤハーネス用固定具を電線に取り付けて当該電線をパネルに固定することができるワイヤハーネスとなる。
【0029】
また、ワイヤハーネスは、ワイヤハーネス用固定具の取付位置と、取付方向とを前記目印部材によって規定することができるワイヤハーネスとなる。
【0030】
請求項6に記載された発明によれば、ワイヤハーネスの製造方法は、電線を配索した後に当該電線の目印部材にワイヤハーネス用固定具を取り付けるため、配索時にワイヤハーネス用固定具が引掛かることがなくなり、配索作業を円滑に行うことができる。また、所要の位置に前記ワイヤハーネス用固定具を容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかるワイヤハーネス用固定具を備えたワイヤハーネスの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すワイヤハーネスのワイヤハーネス用固定具の横断面図である。
【図3】図2に示すワイヤハーネス用固定具の目印部材の斜視図である。
【図4】図1に示すワイヤハーネスのワイヤハーネス用固定具の抱持部が閉止された状態を示す斜視図である。
【図5】図4に示すワイヤハーネス用固定具の抱持部が開放された状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第二の実施形態にかかるワイヤハーネス用固定具を備えたワイヤハーネスの要部拡大斜視図である。
【図7】図6に示すワイヤハーネスのI−I矢視断面図である。
【図8】図6に示すワイヤハーネスのワイヤハーネス用固定具の抱持部が閉止された状態を示す図である。
【図9】図8に示すワイヤハーネス用固定具の正面図である。
【図10】図8に示すワイヤハーネス用固定具の第一収容部を示す図である。
【図11】図8に示すワイヤハーネス用固定具の第二収容部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図11を参照して説明する。
【0033】
本発明の第一の実施形態にかかるワイヤハーネス用固定具2を有するワイヤハーネス1は、図1に示すように、複数本の電線9と、前記電線9の端末に設けられたコネクタ72と、前記複数本の電線9を保護するプロテクタ76とチューブ77と、図示しないパネルの貫通孔に挿通された前記複数本の電線9を保護するグロメット75と、前記複数本の電線9を束ねるワイヤハーネス用テープ78と、前記電線9を前記パネルに固定するワイヤハーネス用固定具2と、を備えている。
【0034】
電線9は、図2に示すように、導電性の芯線9aと、絶縁性の被覆部9bとを備えている。芯線9aは、複数本の導線が撚られて形成されている。導線は、銅や銅合金等の導電性の金属からなる。被覆部は、ポリ塩化ビニル樹脂、あるいは、ポリエチレン樹脂などからなり、前記芯線の外周面に設けられ当該芯線を被覆している。このため、電線9の外表面は、前記被覆部9bの外表面となっている。なお、芯線9aは、一本の導線から構成されても良い。
【0035】
ワイヤハーネス用固定具2は、図2に示すように、電線9に巻かれた目印部材としての結束バンド61を抱持している。結束バンド61は、図3に示すように、帯状部61aの一端に係合部61bが設けられている。結束バンド61は、ポリプロピレン樹脂などの合成樹脂によって形成されている。
【0036】
帯状部61aには、図3に示すように、鋸歯状突起61cが前記帯状部61aの長手方向に連続して設けられている。係合部61bには、前記帯状部61aの一端部から挿通され前記鋸歯状突起61cに係合する係合爪61fが設けられた挿通孔61dが開孔されている。結束バンド61は、前記電線9を結束すると共に、前記挿通孔61dに挿通され当該挿通孔61dから突出した前記帯状部61aの余長が、前記係合部61bの近傍で切断されている。
【0037】
ワイヤハーネス用固定具2は、電線9の外周面に沿って巻かれた目印部材としての結束バンド61を抱持する抱持部7を備えている。ワイヤハーネス用固定具2には、パネルに締結されるネジ部材等が取り付けられる孔部(図2に示す)26,39が設けられている。ワイヤハーネス用固定具2は、ポリプロピレン樹脂などの可撓性を有する合成樹脂で一体成形されている。
【0038】
抱持部7は、図2、図4および図5に示すように、第一収容部8と、第二収容部6とを備えている。第一収容部8には、薄板状に形成された板状部21と、前記板状部21の一方の面の一端部に設けられ前記電線9の外形に沿って円弧状に形成された第一円弧状部22と、前記板状部21の一方の面から立設された係合突起24と、が設けられている。
【0039】
第二収容部6には、図2および図4に示すように、前記第一円弧状部22の一端部に設けられた可撓部38に連結され前記電線9の外形に沿って円弧状に形成された第二円弧状部31と、前記第二円弧状部31の一端部から延長されて形成された板状部32と、前記係合突起24が挿通され当該係合突起24が係合される係合孔34と、が設けられている。
【0040】
板状部21には、図2に示すように、前記板状部21の他端側に開孔され当該板状部21を貫通する孔部26が設けられている。
【0041】
第一円弧状部22は、図2および図5に示すように、前記電線9の外形に沿って円弧状に形成され当該電線9の外表面を押圧する押圧突起23,23と、前記結束バンド61の帯状部61aと係合部61bとが露出される開口部40と、前記開口部40の両側に設けられ前記第二円弧状部31に連設された可撓部38,38と、を備えている。
【0042】
押圧突起23,23は、図5に示すように、前記結束バンド61の帯状部61aと係合部61bとに干渉しない間隔を空けて、前記電線9の軸方向に並設されている。押圧突起23,23は、前記第二円弧状部31に設けられた押圧突起36,36に対向して配置されている。
【0043】
可撓部38は、図4に示すように、前記第一円弧状部22と前記第二円弧状部31とよりも薄肉に形成され、図7に示すように、前記第一円弧状部22と前記第二円弧状部31とが開放された状態を保持する強度に形成されている。このため、可撓部38によって、前記第一収容部8と前記第二収容部6とが回動可能に連結されている。
【0044】
係合突起24は、図2に示すように、前記係合突起24の先端部から基端部に向かって突出量が増加する傾斜面が形成されている。係合突起24は、前記可撓部38の略中間位置にまで延長して立設されている。
【0045】
第二円弧状部31は、図2および図5に示すように、前記開口部40の両側に設けられた前記可撓部38,38と、前記電線9の外周面に沿って円弧状に形成され当該電線9の外表面を押圧する押圧突起36,36と、前記開口部40に連通され前記第二円弧状部31の外側に突設され外部に露出した前記結束バンド61の帯状部61aと係合部61bとを保護する庇部33と、を備えている。
【0046】
押圧突起36,36は、図5に示すように、前記結束バンド61の帯状部61aと係合部61bとに干渉しない間隔を空けて、前記電線9の軸方向に並設されている。押圧突起36,36は、前記第一円弧状部22に設けられた押圧突起23,23に対向して配置されている。
【0047】
開口部40は、図2および図5に示すように、前記結束バンド61の帯状部61aと係合部61bと前記開口部40とが干渉して、前記ワイヤハーネス用固定具2が前記電線9の軸方向に移動したり、前記電線9の外周面の周方向に回転したりしない寸法に形成されている。なお、開口部40によって電線9の軸方向の位置と、前記電線9の外周面方向の位置とが規定されるため、前記電線9を押圧する前記押圧突起23,23,36,36を設けずに、図示した前記電線9よりも大径の電線を抱持部7で抱持するようにしても良い。
【0048】
庇部33は、図2および図5に示すように、前記開口部40の前記電線9の軸方向の幅と同一幅に形成されている。庇部33は、前記結束バンド61の係合部61bが収容される寸法の突出量で突設されている。
【0049】
係合孔34は、図2および図5に示すように、前記係合突起24の前記傾斜面の突出量が最大となる部分に係合する爪部37が設けられている。係合孔34は、前記係合突起24が挿通される寸法に形成されている。
【0050】
板状部32は、図2および図5に示すように、前記板状部32を貫通する孔部39が設けられている。孔部39は、前記板状部32と前記板状部21とが閉止した状態で、当該板状部21に開孔された孔部26に連通する位置に設けられている。
【0051】
抱持部7は、前記電線9の外周面に沿って円弧状に形成され当該電線9の軸方向に延長された第一円弧状部22と、前記電線9の外周面に沿って円弧状に形成され当該電線9の軸方向に延長された第二円弧状部31と、前記第一円弧状部22と前記第二円弧状部31とに連通され前記結束バンド61の帯状部61aと係合部61bとを外部に露出させる開口部40と、前記開口部40に連通され前記第二円弧状部31に設けられ前記帯状部61aと係合部61bとを保護する庇部33と、前記第一円弧状部22の内周面に設けられ前記電線9の外周面に沿って円弧状に形成され当該電線9の外表面を押圧する押圧突起23,23と、前記第二円弧状部31の内周面に設けられ前記電線9の外周面に沿って円弧状に形成され当該電線9の外表面を押圧する押圧突起36,36と、を備えている。前記第一円弧状部22と前記第二円弧状部31とは、前記板状部21と前記板状部32とが閉止された状態で、前記電線9の外周面に沿った円筒状に形成されている。
【0052】
上述の如く構成されたワイヤハーネス用固定具2は、図5に示すように、第一収容部8と第二収容部6とが開放された形態で、射出成形等によって形成される。次いで、前記ワイヤハーネス用固定具2が前記ワイヤハーネス1に取り付けられる取付位置に、前記結束バンド61が結束され、当該結束バンド61の帯状部61aの余長が切断され取り除かれる。
【0053】
次いで、前記ワイヤハーネス1が車体等のパネルに所要の配索形態で配索される。次いで、ワイヤハーネス用固定具2は、図4に示すように、第一収容部8と第二収容部6とが閉止され、前記ワイヤハーネス1の電線9と前記結束バンド61とが抱持部7に抱持され、前記ワイヤハーネス用固定具2が前記ワイヤハーネス1に固定される。なお、前記ワイヤハーネス用固定具2に抱持される電線9は、複数本の電線9が束ねられた電線束でも良い。
【0054】
次いで、前記ワイヤハーネス1に固定された前記ワイヤハーネス用固定具2の孔部26,39とパネルの取付孔とを連通させ、前記孔部26,39と前記取付孔とにネジ部材等が挿通されて螺合される。そして、前記ワイヤハーネス1が前記パネルに固定される。
【0055】
上述の第一の実施形態にかかるワイヤハーネス用固定具2は、当該ワイヤハーネス用固定具2を電線9に取り付ける目印とされ且つ当該電線9の外周面に沿って巻かれた目印部材としての結束バンド61を抱持する抱持部7が設けられている。
【0056】
前記抱持部7は、前記電線9を収容する第一収容部8と、前記電線9を収容すると共に前記第一収容部8に対向する第二収容部6と、を備え、かつ、前記第一収容部8と前記第二収容部6とに連設され且つ当該第一収容部8と当該第二収容部6とを回動可能に連結した可撓部38が設けられている。
【0057】
前記結束バンド61が、前記電線9の外周面に沿って巻かれ且つ帯状に形成された帯状部61aと、前記帯状部61aの一端に設けられ且つ当該帯状部61aを挿通して係合する係合部61bと、を備え、前記ワイヤハーネス用固定具2の前記抱持部7には、前記結束バンド61の前記係合部61bを露出する開口部40が設けられている。
【0058】
このため、ワイヤハーネス用固定具2は、電線9の外周面に沿って巻かれた結束バンド61を抱持部7で抱持するため、前記ワイヤハーネス用固定具2の取付位置の位置精度が向上する。
【0059】
また、ワイヤハーネス用固定具2は、電線9の外周面に沿って巻かれた結束バンド61を抱持部7で抱持するため、結束工具などの工具を使用せずに電線9に取り付けることができる。このため、ワイヤハーネス用固定具2が引掛かるような狭い箇所に電線9を配索した後に、前記ワイヤハーネス用固定具2を電線9に取り付けて当該電線9をパネルに固定することができる。
【0060】
また、ワイヤハーネス用固定具2は、電線9の外周面に沿って巻かれた結束バンド61を抱持するため、線径の異なる電線9に取り付けることができる。
【0061】
また、ワイヤハーネス用固定具2は、電線9の外周面に沿って巻かれた結束バンド61を前記ワイヤハーネス用固定具2の取付位置の目印としているため、電線9をパネル等に配索した後に所要の位置に前記ワイヤハーネス用固定具2を取り付けることができる。
【0062】
また、ワイヤハーネス用固定具2は、互いに係合され且つ可撓部38によって回動可能に形成された第一収容部8と第二収容部6とを備えているため、電線9の外周面に沿って巻かれた結束バンド61を簡単な操作で容易に抱持することができる。このため、ワイヤハーネス用固定具2を電線9に取り付ける取付作業の作業時間を短縮することができる。
【0063】
また、ワイヤハーネス用固定具2は、電線9の外周面に沿って巻かれた結束バンド61の係合部61bを露出する開口部40が抱持部7に設けられているため、前記開口部40の周縁部に前記係合部61bが干渉し、前記ワイヤハーネス用固定具2が前記電線9に対して移動することを防止する。このため、前記ワイヤハーネス用固定具2の取付位置と、取付方向とを前記結束バンド61によって規定することができる。
【0064】
ワイヤハーネス1は、前述したワイヤハーネス用固定具2を備えているため、前記ワイヤハーネス用固定具2の取付位置の位置精度が向上したワイヤハーネス1となる。
【0065】
また、ワイヤハーネス1は、ワイヤハーネス用固定具2が引掛かるような狭い箇所に電線9を配索した後に、前記ワイヤハーネス用固定具2を電線9に取り付けて当該電線9をパネルに固定することができるワイヤハーネス1となる。
【0066】
また、ワイヤハーネス1は、ワイヤハーネス用固定具2の取付位置と、取付方向とを前記結束バンド61によって規定することができるワイヤハーネス1となる。
【0067】
ワイヤハーネスの製造方法は、電線9を配索した後に当該電線9の結束バンド61にワイヤハーネス用固定具2を取り付けるため、配索時にワイヤハーネス用固定具2が引掛かることがなくなり、配索作業を円滑に行うことができる。また、電線9の所要の位置に前記ワイヤハーネス用固定具2を容易に取り付けることができる。
【0068】
また、目印部材として結束バンド61が使用されるため、電線9が確実に結束され、位置決めが確実となる。
【0069】
また、目印部材は、汎用品である結束バンド61を使用することができるため、各種線径の電線9に使用することができ、汎用性が向上すると共にワイヤハーネス1を安価に提供することができる。
【0070】
(第二の実施形態)
次に、本発明にかかるワイヤハーネス用固定具2Aを備えたワイヤハーネス1Aの第二の実施形態について、図6〜図11を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
本実施形態にかかるワイヤハーネス1Aは、図6および図7に示すように、電線9と、前記電線9に巻かれた目印部材としての粘着テープ52と、前記粘着テープ52を抱持したワイヤハーネス用固定具2Aと、を備えている。
【0072】
粘着テープ52は、汎用品としての電気絶縁用粘着テープ、粘着シート等が使用される。粘着テープ52は、合成樹脂からなるフィルム層と、前記フィルム層上に設けられ前記電線9に粘着可能な粘着剤層と、を備えている。フィルム層は、ポリ塩化ビニル樹脂を主成分とし、可塑剤や難燃剤等が配合され形成されている。粘着剤は、ゴムを主成分とし、粘着付与剤や架橋剤等が配合され形成されている。粘着テープ52は、前記電線9の外周面に捲回され当該電線9を結束している。粘着テープ52が前記電線9に捲回された部分の直径は、前記電線9の外周面に捲回され後述するワイヤハーネス用固定具2Aの抱持部7Aに抱持される直径に形成されている。
【0073】
ワイヤハーネス用固定具2Aは、図6に示すように、電線9の外周面に沿って巻かれた目印部材としての粘着テープ62を抱持する抱持部7Aを備えている。抱持部7Aは、第一収容部8Aと第二収容部6Aとを備え、前記第二収容部6Aと前記第一収容部8Aとが係合手段によって互いに係合している。
【0074】
第一収容部8Aは、図7〜図10に示すように、薄板状に形成された板状部21Aと、前記板状部21Aの一方の面に設けられた第一凹溝25が設けられている。板状部21Aには、図14、図21および図22に示すように、前記板状部21Aの両端部にそれぞれ開孔された孔部26,26が設けられている。孔部26,26は、図示しないネジ部材の軸が挿通される寸法かつ当該ネジ部材の頭部が係止される寸法に開孔されている。
【0075】
第一凹溝25は、図8および図10に示すように、前記板状部21Aの一方の面から立設され前記電線9の軸方向に延長され互いに平行に設けられた壁部27,27と、前記壁部27,27のそれぞれの外側に設けられた係合手段としての係合爪28,28と、前記壁部27,27の内側に設けられ前記電線9の外表面を押圧する押圧突起23A,23A,23Aと、前記板状部21Aの他方の面に立設された係止部12と、を備えている。
【0076】
係合爪28,28は、図8に示すように、前記電線9の軸方向に間隔を空けて設けられている。係合爪28,28は、前記壁部27,27の上端部から下方に向かって突出量が増加する傾斜面が形成されている。
【0077】
押圧突起23A,23A,23Aは、図9および図10に示すように、前記壁部27,27側から中央側に向かって凹状に形成され前記電線9の外形に沿って円弧状に形成されている。押圧突起23A,23A,23Aは、前記電線9の軸方向に等間隔に設けられている。
【0078】
第二収容部6Aは、図9および図11に示すように、裏面に第二凹溝35が設けられている。第二凹溝35は、前記第一凹溝25の壁部27,27の上端部に重ねられる板部42と、前記板部27の両端部からそれぞれ下方に延長され前記壁部27,27の外側に隣接する壁部43,43と、前記壁部43,43のそれぞれに開孔され前記係合爪28,28が係合される係合手段としての係合孔44,44と、前記板部42の内側かつ前記壁部43,43の内側に設けられ前記電線9の外表面を押圧する押圧突起36A,36Aと、を備えている。
【0079】
係合孔44,44は、図8および図11に示すように、前記係合爪28,28が挿通する寸法の開口が設けられている。係合孔44,44は、前記電線9の軸方向に間隔を空けて設けられている。
【0080】
押圧突起36A,36Aは、図9および図11に示すように、前記電線9の外形に沿って円弧状に形成されている。押圧突起36A,36Aは、前記電線9の軸方向に間隔を空けて設けられていると共に、前記電線9に対して前記押圧突起23A,23A,23Aと前記押圧突起36A,36Aとが交互に当該電線9を押圧する間隔に設けられている。
【0081】
抱持部7Aは、前記第一収容部8Aと前記第二収容部6Aとから構成され、前記第一収容部8A側に設けられた押圧突起23A,23A,23Aと、前記第二収容部6A側に設けられた押圧突起36A,36Aと、を備えている。
【0082】
上述の如く構成されたワイヤハーネス用固定具2Aは、図10および図11に示すように、第一収容部8Aと第二収容部6Aとが別体として、射出成形等によって形成される。次いで、前記ワイヤハーネス用固定具2Aが前記ワイヤハーネス1Aに取り付けられる取付位置に、前記粘着テープ62が捲回され前記電線9が結束される。
【0083】
次いで、前記ワイヤハーネス1Aが車体等のパネルに所要の配索形態で配索される。次いで、ワイヤハーネス用固定具2Aは、図6に示すように、第一収容部8と第二収容部6とが閉止される。このとき、前記ワイヤハーネス1Aの電線9に捲回された粘着テープ62が第一凹溝25と第二凹溝35とからなる抱持部7に抱持され、前記抱持部7Aの押圧突起23A,23A,23Aと押圧突起36A,36Aとによって前記粘着テープ62が押圧され、前記ワイヤハーネス1Aに前記ワイヤハーネス用固定具2Aが固定される。なお、前記電線9は、複数本の電線9が束ねられた電線束でも良い。
【0084】
そして、前記ワイヤハーネス用固定具2Aが固定された前記ワイヤハーネス1Aが、孔部26,26に挿入したネジ部材によってパネルに固定される。
【0085】
上述の第二の実施形態にかかるワイヤハーネス用固定具2Aは、電線9に巻かれた粘着テープ62を抱持する抱持部7Aが設けられているため、結束工具などの取付工具を使用せずに前記電線9に前記固定具2Aを容易に取り付けられる。このため、前記ワイヤハーネス1Aがパネル等の狭い箇所に配索された後に、前記電線9に前記ワイヤハーネス用固定具2Aを取り付けることができる。従って、前記ワイヤハーネス1Aをパネル等に配索する際に前記ワイヤハーネス用固定具2Aが当該パネル等に引っかかることが防止される。
【0086】
また、ワイヤハーネス用固定具2Aは、線径の異なる電線9に巻かれた前記粘着テープ62を当該ワイヤハーネス用固定具2Aの抱持部7Aで抱持するため、線径の異なる電線9に取り付けることができる。
【0087】
また、ワイヤハーネス用固定具2Aは、前記第一収容部8と前記第二収容部6とには、互いに係合する係合手段としての係合爪28と係合孔44とが設けられ、かつ、前記第一収容部8と前記第二収容部6とが、別体で構成されているため、金型における前記ワイヤハーネス用固定具2を成形するキャビティの構造が簡略化される。このため、金型の制作費が抑えられ、ワイヤハーネス用固定具2の費用とワイヤハーネス1の費用とを抑えることができる。
【0088】
また、第一収容部8と第二収容部6との一方が破損した場合に、この破損した一方を交換することでワイヤハーネス用固定具2として使用できるため、部品交換にかかる費用を抑えることができる。
【0089】
また、ワイヤハーネス用固定具2Aは、電線9に巻かれた粘着テープ62を抱持するため、前記ワイヤハーネス用固定具2Aの取付位置の目印として前記粘着テープ62を使用できる。このため、ワイヤハーネス用固定具2Aの取付位置の調整作業が容易となる上に、取付精度が向上する。
【0090】
また、ワイヤハーネス用固定具2Aは、目印部材として粘着テープ62が使用されるため、位置決めが確実な上に、捲回数に応じて直径を適宜設定できる。このため、電線9の線径の大小に対応してワイヤハーネス用固定具2Aを当該電線9に取り付けることができる。また、ワイヤハーネス用固定具2Aが前記電線9の軸方向に移動したり、前記電線9の外周面の周方向に回転したりしない程度に前記粘着テープ62を巻き付ける捲回数が調整できるため、汎用性が向上する。
【0091】
また、目印部材は、汎用品である粘着テープ62を使用することができるため、ワイヤハーネス1Aを安価に提供することができる。
【0092】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0093】
1,1A ワイヤハーネス
2,2A ワイヤハーネス用固定具
6,6A 第二収容部
7,7A 抱持部
8,8A 第一収容部
9 電線
28 係合爪(係合手段)
44 係合孔(係合手段)
38 可撓部
40 開口部
61 結束バンド(目印部材)
61a 帯状部
61b 係合部
62 粘着テープ(目印部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、配索後の電線に取り付けられ、前記電線の線径の大小に対応し、前記電線に安定して取り付けられるワイヤハーネス用固定具、および、該ワイヤハーネス用固定具を備えたワイヤハーネス、および、該ワイヤハーネスの配索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等には、種々の電子機器と電装品とが搭載されている。これらの電子機器と電装品とにバッテリなどの電源等からの電力や制御装置等からの制御信号などを伝達する手段として、ワイヤハーネスが用いられている。
【0003】
ワイヤハーネスは、自動車等の車体を構成するパネル上に配索されている。ワイヤハーネスには、前記パネルに開孔された取付孔に係止され前記ワイヤハーネスを当該パネルに固定する固定具が設けられている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0004】
特許文献1に記載のワイヤハーネスは、当該ワイヤハーネスを構成する電線に前記固定具の取付位置を表示する目印テープが設けられ、前記目印テープ上に前記固定具の結束バンドが結束工具によって緊縛されている。
【0005】
特許文献2に記載のワイヤハーネスは、当該ワイヤハーネスを構成する電線に、当該電線の軸方向に摺動可能に形成され前記固定具に嵌合される嵌合部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−301944号公報
【特許文献2】特開2008−230481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のワイヤハーネスは、前記ワイヤハーネスが狭い箇所で配索された場合、結束口部によって固定具の帯状部を結束することが困難となるため、ワイヤハーネスの製造工程で前記固定具が取り付けられている。このため、ワイヤハーネスを配索した時に、前記固定具がパネル等に引っかかってしまい、円滑にワイヤハーネスの配索作業が行えないという問題があった。
【0008】
また、特許文献1に記載のワイヤハーネスは、前述のように、ワイヤハーネスの製造工程で固定具が取り付けられているため、ワイヤハーネスの製造工程とは異なる工程や別の場所等で、ワイヤハーネスに固定具を取り付けることができないという問題があった。
【0009】
特許文献2に記載のワイヤハーネスは、電線に設けられるスペーサと当該スペーサに嵌合される固定具とが一対として形成されているため、互いに専用品となっており、汎用性がないという問題があった。
【0010】
また、特許文献2に記載のワイヤハーネスは、線径が大径の電線にスペーサを取り付けられないという問題があった。このため、電線の線径に応じて各種寸法のスペーサと固定具とを製造した場合、コストがかかるという問題があった。
【0011】
また、特許文献2に記載のワイヤハーネスは、電線に対してスペーサが移動可能に形成されているため、スペーサを安定して位置決め状態に保持することができないという問題があった。
【0012】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、配索後の電線に取り付けられ、前記電線の線径の大小に対応し、前記電線に安定して取り付けられるワイヤハーネス用固定具、および、該ワイヤハーネス用固定具を備えたワイヤハーネス、および、該ワイヤハーネスの配索方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、電線をパネルに固定するワイヤハーネス用固定具において、前記ワイヤハーネス用固定具には、当該ワイヤハーネス用固定具を前記電線に取り付ける目印とされ且つ当該電線の外周面に沿って巻かれた目印部材を抱持する抱持部が設けられていることを特徴とするワイヤハーネス用固定具である。
【0014】
請求項2に記載された発明は、前記抱持部は、前記電線を収容する第一収容部と、前記電線を収容すると共に前記第一収容部に対向する第二収容部と、を備え、かつ、前記第一収容部と前記第二収容部とに連設され且つ当該第一収容部と当該第二収容部とを回動可能に連結した可撓部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス用固定具である。
【0015】
請求項3に記載された発明は、前記抱持部は、前記電線を収容する第一収容部と、前記電線を収容すると共に前記第一収容部に対向する第二収容部と、を備え、前記第一収容部と前記第二収容部とには、互いに係合する係合手段が設けられ、かつ、前記第一収容部と前記第二収容部とが、別体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス用固定具である。
【0016】
請求項4に記載された発明は、前記目印部材が、前記電線の外周面に沿って巻かれ且つ帯状に形成された帯状部と、前記帯状部の一端に設けられ且つ当該帯状部を挿通して係合する係合部と、を備え、前記ワイヤハーネス用固定具の前記抱持部には、前記目印部材の前記係合部を露出する開口部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のワイヤハーネス用固定具である。
【0017】
請求項5に記載された発明は、パネルに配索される電線と、前記電線を前記パネルに固定するワイヤハーネス用固定具と、を備えたワイヤハーネスにおいて、前記ワイヤハーネス用固定具が、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス用固定具とされていることを特徴とするワイヤハーネスである。
【0018】
請求項6に記載された発明は、請求項5に記載のワイヤハーネスを前記パネルに配索する配線方法であって、前記目印部材が外周面に沿って巻かれた前記電線を前記パネルに配索し、前記目印部材を前記ワイヤハーネス用固定具の抱持部で抱持し、前記ワイヤハーネス用固定具を前記パネルに固定することを特徴とするワイヤハーネスの配索方法である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された発明によれば、ワイヤハーネス用固定具は、電線の外周面に沿って巻かれた目印部材を抱持部で抱持するため、前記ワイヤハーネス用固定具の取付位置の位置精度が向上する。
【0020】
また、ワイヤハーネス用固定具は、電線の外周面に沿って巻かれた目印部材を抱持部で抱持するため、結束工具などの工具を使用せずに電線に取り付けることができる。このため、ワイヤハーネス用固定具が引掛かるような狭い箇所に電線を配索した後に、前記ワイヤハーネス用固定具を電線に取り付けて当該電線をパネルに固定することができる。
【0021】
また、ワイヤハーネス用固定具は、電線の外周面に沿って巻かれた目印部材を抱持するため、線径の異なる電線に取り付けることができる。このため、汎用性が向上する。
【0022】
また、ワイヤハーネス用固定具は、電線の外周面に沿って巻かれた目印部材を前記ワイヤハーネス用固定具の取付位置の目印としているため、電線をパネル等に配索した後に所要の位置に前記ワイヤハーネス用固定具を取り付けることができる。
【0023】
請求項2に記載された発明によれば、ワイヤハーネス用固定具は、互いに係合され且つ可撓部によって回動可能に形成された第一収容部と第二収容部とを備えているため、電線の外周面に沿って巻かれた目印部材を簡単な操作で容易に抱持することができる。このため、ワイヤハーネス用固定具を電線に取り付ける取付作業の作業時間を短縮することができる。
【0024】
請求項3に記載された発明によれば、ワイヤハーネス用固定具は、互いに係合され且つ別体で構成された第一収容部と第二収容部とを備えているため、金型における前記ワイヤハーネス用固定具を成形するキャビティの構造が簡略化される。このため、金型の制作費が抑えられ、ワイヤハーネス用固定具の費用を抑えることができる。
【0025】
また、第一収容部と第二収容部との一方が破損した場合に、この破損した一方を交換することでワイヤハーネス用固定具として使用できるため、部品交換にかかる費用を抑えることができる。
【0026】
請求項4に記載された発明によれば、ワイヤハーネス用固定具は、電線の外周面に沿って巻かれた目印部材の係合部を露出する開口部が抱持部に設けられているため、前記開口部の周縁部に前記係合部が干渉し、前記ワイヤハーネス用固定具が前記電線に対して移動することを防止する。このため、前記ワイヤハーネス用固定具の取付位置と、取付方向とを前記目印部材によって規定することができる。
【0027】
請求項5に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス用固定具を備えているため、前記ワイヤハーネス用固定具の取付位置の位置精度が向上したワイヤハーネスとなる。
【0028】
また、ワイヤハーネスは、ワイヤハーネス用固定具が引掛かるような狭い箇所に電線を配索した後に、前記ワイヤハーネス用固定具を電線に取り付けて当該電線をパネルに固定することができるワイヤハーネスとなる。
【0029】
また、ワイヤハーネスは、ワイヤハーネス用固定具の取付位置と、取付方向とを前記目印部材によって規定することができるワイヤハーネスとなる。
【0030】
請求項6に記載された発明によれば、ワイヤハーネスの製造方法は、電線を配索した後に当該電線の目印部材にワイヤハーネス用固定具を取り付けるため、配索時にワイヤハーネス用固定具が引掛かることがなくなり、配索作業を円滑に行うことができる。また、所要の位置に前記ワイヤハーネス用固定具を容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかるワイヤハーネス用固定具を備えたワイヤハーネスの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すワイヤハーネスのワイヤハーネス用固定具の横断面図である。
【図3】図2に示すワイヤハーネス用固定具の目印部材の斜視図である。
【図4】図1に示すワイヤハーネスのワイヤハーネス用固定具の抱持部が閉止された状態を示す斜視図である。
【図5】図4に示すワイヤハーネス用固定具の抱持部が開放された状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第二の実施形態にかかるワイヤハーネス用固定具を備えたワイヤハーネスの要部拡大斜視図である。
【図7】図6に示すワイヤハーネスのI−I矢視断面図である。
【図8】図6に示すワイヤハーネスのワイヤハーネス用固定具の抱持部が閉止された状態を示す図である。
【図9】図8に示すワイヤハーネス用固定具の正面図である。
【図10】図8に示すワイヤハーネス用固定具の第一収容部を示す図である。
【図11】図8に示すワイヤハーネス用固定具の第二収容部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図11を参照して説明する。
【0033】
本発明の第一の実施形態にかかるワイヤハーネス用固定具2を有するワイヤハーネス1は、図1に示すように、複数本の電線9と、前記電線9の端末に設けられたコネクタ72と、前記複数本の電線9を保護するプロテクタ76とチューブ77と、図示しないパネルの貫通孔に挿通された前記複数本の電線9を保護するグロメット75と、前記複数本の電線9を束ねるワイヤハーネス用テープ78と、前記電線9を前記パネルに固定するワイヤハーネス用固定具2と、を備えている。
【0034】
電線9は、図2に示すように、導電性の芯線9aと、絶縁性の被覆部9bとを備えている。芯線9aは、複数本の導線が撚られて形成されている。導線は、銅や銅合金等の導電性の金属からなる。被覆部は、ポリ塩化ビニル樹脂、あるいは、ポリエチレン樹脂などからなり、前記芯線の外周面に設けられ当該芯線を被覆している。このため、電線9の外表面は、前記被覆部9bの外表面となっている。なお、芯線9aは、一本の導線から構成されても良い。
【0035】
ワイヤハーネス用固定具2は、図2に示すように、電線9に巻かれた目印部材としての結束バンド61を抱持している。結束バンド61は、図3に示すように、帯状部61aの一端に係合部61bが設けられている。結束バンド61は、ポリプロピレン樹脂などの合成樹脂によって形成されている。
【0036】
帯状部61aには、図3に示すように、鋸歯状突起61cが前記帯状部61aの長手方向に連続して設けられている。係合部61bには、前記帯状部61aの一端部から挿通され前記鋸歯状突起61cに係合する係合爪61fが設けられた挿通孔61dが開孔されている。結束バンド61は、前記電線9を結束すると共に、前記挿通孔61dに挿通され当該挿通孔61dから突出した前記帯状部61aの余長が、前記係合部61bの近傍で切断されている。
【0037】
ワイヤハーネス用固定具2は、電線9の外周面に沿って巻かれた目印部材としての結束バンド61を抱持する抱持部7を備えている。ワイヤハーネス用固定具2には、パネルに締結されるネジ部材等が取り付けられる孔部(図2に示す)26,39が設けられている。ワイヤハーネス用固定具2は、ポリプロピレン樹脂などの可撓性を有する合成樹脂で一体成形されている。
【0038】
抱持部7は、図2、図4および図5に示すように、第一収容部8と、第二収容部6とを備えている。第一収容部8には、薄板状に形成された板状部21と、前記板状部21の一方の面の一端部に設けられ前記電線9の外形に沿って円弧状に形成された第一円弧状部22と、前記板状部21の一方の面から立設された係合突起24と、が設けられている。
【0039】
第二収容部6には、図2および図4に示すように、前記第一円弧状部22の一端部に設けられた可撓部38に連結され前記電線9の外形に沿って円弧状に形成された第二円弧状部31と、前記第二円弧状部31の一端部から延長されて形成された板状部32と、前記係合突起24が挿通され当該係合突起24が係合される係合孔34と、が設けられている。
【0040】
板状部21には、図2に示すように、前記板状部21の他端側に開孔され当該板状部21を貫通する孔部26が設けられている。
【0041】
第一円弧状部22は、図2および図5に示すように、前記電線9の外形に沿って円弧状に形成され当該電線9の外表面を押圧する押圧突起23,23と、前記結束バンド61の帯状部61aと係合部61bとが露出される開口部40と、前記開口部40の両側に設けられ前記第二円弧状部31に連設された可撓部38,38と、を備えている。
【0042】
押圧突起23,23は、図5に示すように、前記結束バンド61の帯状部61aと係合部61bとに干渉しない間隔を空けて、前記電線9の軸方向に並設されている。押圧突起23,23は、前記第二円弧状部31に設けられた押圧突起36,36に対向して配置されている。
【0043】
可撓部38は、図4に示すように、前記第一円弧状部22と前記第二円弧状部31とよりも薄肉に形成され、図7に示すように、前記第一円弧状部22と前記第二円弧状部31とが開放された状態を保持する強度に形成されている。このため、可撓部38によって、前記第一収容部8と前記第二収容部6とが回動可能に連結されている。
【0044】
係合突起24は、図2に示すように、前記係合突起24の先端部から基端部に向かって突出量が増加する傾斜面が形成されている。係合突起24は、前記可撓部38の略中間位置にまで延長して立設されている。
【0045】
第二円弧状部31は、図2および図5に示すように、前記開口部40の両側に設けられた前記可撓部38,38と、前記電線9の外周面に沿って円弧状に形成され当該電線9の外表面を押圧する押圧突起36,36と、前記開口部40に連通され前記第二円弧状部31の外側に突設され外部に露出した前記結束バンド61の帯状部61aと係合部61bとを保護する庇部33と、を備えている。
【0046】
押圧突起36,36は、図5に示すように、前記結束バンド61の帯状部61aと係合部61bとに干渉しない間隔を空けて、前記電線9の軸方向に並設されている。押圧突起36,36は、前記第一円弧状部22に設けられた押圧突起23,23に対向して配置されている。
【0047】
開口部40は、図2および図5に示すように、前記結束バンド61の帯状部61aと係合部61bと前記開口部40とが干渉して、前記ワイヤハーネス用固定具2が前記電線9の軸方向に移動したり、前記電線9の外周面の周方向に回転したりしない寸法に形成されている。なお、開口部40によって電線9の軸方向の位置と、前記電線9の外周面方向の位置とが規定されるため、前記電線9を押圧する前記押圧突起23,23,36,36を設けずに、図示した前記電線9よりも大径の電線を抱持部7で抱持するようにしても良い。
【0048】
庇部33は、図2および図5に示すように、前記開口部40の前記電線9の軸方向の幅と同一幅に形成されている。庇部33は、前記結束バンド61の係合部61bが収容される寸法の突出量で突設されている。
【0049】
係合孔34は、図2および図5に示すように、前記係合突起24の前記傾斜面の突出量が最大となる部分に係合する爪部37が設けられている。係合孔34は、前記係合突起24が挿通される寸法に形成されている。
【0050】
板状部32は、図2および図5に示すように、前記板状部32を貫通する孔部39が設けられている。孔部39は、前記板状部32と前記板状部21とが閉止した状態で、当該板状部21に開孔された孔部26に連通する位置に設けられている。
【0051】
抱持部7は、前記電線9の外周面に沿って円弧状に形成され当該電線9の軸方向に延長された第一円弧状部22と、前記電線9の外周面に沿って円弧状に形成され当該電線9の軸方向に延長された第二円弧状部31と、前記第一円弧状部22と前記第二円弧状部31とに連通され前記結束バンド61の帯状部61aと係合部61bとを外部に露出させる開口部40と、前記開口部40に連通され前記第二円弧状部31に設けられ前記帯状部61aと係合部61bとを保護する庇部33と、前記第一円弧状部22の内周面に設けられ前記電線9の外周面に沿って円弧状に形成され当該電線9の外表面を押圧する押圧突起23,23と、前記第二円弧状部31の内周面に設けられ前記電線9の外周面に沿って円弧状に形成され当該電線9の外表面を押圧する押圧突起36,36と、を備えている。前記第一円弧状部22と前記第二円弧状部31とは、前記板状部21と前記板状部32とが閉止された状態で、前記電線9の外周面に沿った円筒状に形成されている。
【0052】
上述の如く構成されたワイヤハーネス用固定具2は、図5に示すように、第一収容部8と第二収容部6とが開放された形態で、射出成形等によって形成される。次いで、前記ワイヤハーネス用固定具2が前記ワイヤハーネス1に取り付けられる取付位置に、前記結束バンド61が結束され、当該結束バンド61の帯状部61aの余長が切断され取り除かれる。
【0053】
次いで、前記ワイヤハーネス1が車体等のパネルに所要の配索形態で配索される。次いで、ワイヤハーネス用固定具2は、図4に示すように、第一収容部8と第二収容部6とが閉止され、前記ワイヤハーネス1の電線9と前記結束バンド61とが抱持部7に抱持され、前記ワイヤハーネス用固定具2が前記ワイヤハーネス1に固定される。なお、前記ワイヤハーネス用固定具2に抱持される電線9は、複数本の電線9が束ねられた電線束でも良い。
【0054】
次いで、前記ワイヤハーネス1に固定された前記ワイヤハーネス用固定具2の孔部26,39とパネルの取付孔とを連通させ、前記孔部26,39と前記取付孔とにネジ部材等が挿通されて螺合される。そして、前記ワイヤハーネス1が前記パネルに固定される。
【0055】
上述の第一の実施形態にかかるワイヤハーネス用固定具2は、当該ワイヤハーネス用固定具2を電線9に取り付ける目印とされ且つ当該電線9の外周面に沿って巻かれた目印部材としての結束バンド61を抱持する抱持部7が設けられている。
【0056】
前記抱持部7は、前記電線9を収容する第一収容部8と、前記電線9を収容すると共に前記第一収容部8に対向する第二収容部6と、を備え、かつ、前記第一収容部8と前記第二収容部6とに連設され且つ当該第一収容部8と当該第二収容部6とを回動可能に連結した可撓部38が設けられている。
【0057】
前記結束バンド61が、前記電線9の外周面に沿って巻かれ且つ帯状に形成された帯状部61aと、前記帯状部61aの一端に設けられ且つ当該帯状部61aを挿通して係合する係合部61bと、を備え、前記ワイヤハーネス用固定具2の前記抱持部7には、前記結束バンド61の前記係合部61bを露出する開口部40が設けられている。
【0058】
このため、ワイヤハーネス用固定具2は、電線9の外周面に沿って巻かれた結束バンド61を抱持部7で抱持するため、前記ワイヤハーネス用固定具2の取付位置の位置精度が向上する。
【0059】
また、ワイヤハーネス用固定具2は、電線9の外周面に沿って巻かれた結束バンド61を抱持部7で抱持するため、結束工具などの工具を使用せずに電線9に取り付けることができる。このため、ワイヤハーネス用固定具2が引掛かるような狭い箇所に電線9を配索した後に、前記ワイヤハーネス用固定具2を電線9に取り付けて当該電線9をパネルに固定することができる。
【0060】
また、ワイヤハーネス用固定具2は、電線9の外周面に沿って巻かれた結束バンド61を抱持するため、線径の異なる電線9に取り付けることができる。
【0061】
また、ワイヤハーネス用固定具2は、電線9の外周面に沿って巻かれた結束バンド61を前記ワイヤハーネス用固定具2の取付位置の目印としているため、電線9をパネル等に配索した後に所要の位置に前記ワイヤハーネス用固定具2を取り付けることができる。
【0062】
また、ワイヤハーネス用固定具2は、互いに係合され且つ可撓部38によって回動可能に形成された第一収容部8と第二収容部6とを備えているため、電線9の外周面に沿って巻かれた結束バンド61を簡単な操作で容易に抱持することができる。このため、ワイヤハーネス用固定具2を電線9に取り付ける取付作業の作業時間を短縮することができる。
【0063】
また、ワイヤハーネス用固定具2は、電線9の外周面に沿って巻かれた結束バンド61の係合部61bを露出する開口部40が抱持部7に設けられているため、前記開口部40の周縁部に前記係合部61bが干渉し、前記ワイヤハーネス用固定具2が前記電線9に対して移動することを防止する。このため、前記ワイヤハーネス用固定具2の取付位置と、取付方向とを前記結束バンド61によって規定することができる。
【0064】
ワイヤハーネス1は、前述したワイヤハーネス用固定具2を備えているため、前記ワイヤハーネス用固定具2の取付位置の位置精度が向上したワイヤハーネス1となる。
【0065】
また、ワイヤハーネス1は、ワイヤハーネス用固定具2が引掛かるような狭い箇所に電線9を配索した後に、前記ワイヤハーネス用固定具2を電線9に取り付けて当該電線9をパネルに固定することができるワイヤハーネス1となる。
【0066】
また、ワイヤハーネス1は、ワイヤハーネス用固定具2の取付位置と、取付方向とを前記結束バンド61によって規定することができるワイヤハーネス1となる。
【0067】
ワイヤハーネスの製造方法は、電線9を配索した後に当該電線9の結束バンド61にワイヤハーネス用固定具2を取り付けるため、配索時にワイヤハーネス用固定具2が引掛かることがなくなり、配索作業を円滑に行うことができる。また、電線9の所要の位置に前記ワイヤハーネス用固定具2を容易に取り付けることができる。
【0068】
また、目印部材として結束バンド61が使用されるため、電線9が確実に結束され、位置決めが確実となる。
【0069】
また、目印部材は、汎用品である結束バンド61を使用することができるため、各種線径の電線9に使用することができ、汎用性が向上すると共にワイヤハーネス1を安価に提供することができる。
【0070】
(第二の実施形態)
次に、本発明にかかるワイヤハーネス用固定具2Aを備えたワイヤハーネス1Aの第二の実施形態について、図6〜図11を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
本実施形態にかかるワイヤハーネス1Aは、図6および図7に示すように、電線9と、前記電線9に巻かれた目印部材としての粘着テープ52と、前記粘着テープ52を抱持したワイヤハーネス用固定具2Aと、を備えている。
【0072】
粘着テープ52は、汎用品としての電気絶縁用粘着テープ、粘着シート等が使用される。粘着テープ52は、合成樹脂からなるフィルム層と、前記フィルム層上に設けられ前記電線9に粘着可能な粘着剤層と、を備えている。フィルム層は、ポリ塩化ビニル樹脂を主成分とし、可塑剤や難燃剤等が配合され形成されている。粘着剤は、ゴムを主成分とし、粘着付与剤や架橋剤等が配合され形成されている。粘着テープ52は、前記電線9の外周面に捲回され当該電線9を結束している。粘着テープ52が前記電線9に捲回された部分の直径は、前記電線9の外周面に捲回され後述するワイヤハーネス用固定具2Aの抱持部7Aに抱持される直径に形成されている。
【0073】
ワイヤハーネス用固定具2Aは、図6に示すように、電線9の外周面に沿って巻かれた目印部材としての粘着テープ62を抱持する抱持部7Aを備えている。抱持部7Aは、第一収容部8Aと第二収容部6Aとを備え、前記第二収容部6Aと前記第一収容部8Aとが係合手段によって互いに係合している。
【0074】
第一収容部8Aは、図7〜図10に示すように、薄板状に形成された板状部21Aと、前記板状部21Aの一方の面に設けられた第一凹溝25が設けられている。板状部21Aには、図14、図21および図22に示すように、前記板状部21Aの両端部にそれぞれ開孔された孔部26,26が設けられている。孔部26,26は、図示しないネジ部材の軸が挿通される寸法かつ当該ネジ部材の頭部が係止される寸法に開孔されている。
【0075】
第一凹溝25は、図8および図10に示すように、前記板状部21Aの一方の面から立設され前記電線9の軸方向に延長され互いに平行に設けられた壁部27,27と、前記壁部27,27のそれぞれの外側に設けられた係合手段としての係合爪28,28と、前記壁部27,27の内側に設けられ前記電線9の外表面を押圧する押圧突起23A,23A,23Aと、前記板状部21Aの他方の面に立設された係止部12と、を備えている。
【0076】
係合爪28,28は、図8に示すように、前記電線9の軸方向に間隔を空けて設けられている。係合爪28,28は、前記壁部27,27の上端部から下方に向かって突出量が増加する傾斜面が形成されている。
【0077】
押圧突起23A,23A,23Aは、図9および図10に示すように、前記壁部27,27側から中央側に向かって凹状に形成され前記電線9の外形に沿って円弧状に形成されている。押圧突起23A,23A,23Aは、前記電線9の軸方向に等間隔に設けられている。
【0078】
第二収容部6Aは、図9および図11に示すように、裏面に第二凹溝35が設けられている。第二凹溝35は、前記第一凹溝25の壁部27,27の上端部に重ねられる板部42と、前記板部27の両端部からそれぞれ下方に延長され前記壁部27,27の外側に隣接する壁部43,43と、前記壁部43,43のそれぞれに開孔され前記係合爪28,28が係合される係合手段としての係合孔44,44と、前記板部42の内側かつ前記壁部43,43の内側に設けられ前記電線9の外表面を押圧する押圧突起36A,36Aと、を備えている。
【0079】
係合孔44,44は、図8および図11に示すように、前記係合爪28,28が挿通する寸法の開口が設けられている。係合孔44,44は、前記電線9の軸方向に間隔を空けて設けられている。
【0080】
押圧突起36A,36Aは、図9および図11に示すように、前記電線9の外形に沿って円弧状に形成されている。押圧突起36A,36Aは、前記電線9の軸方向に間隔を空けて設けられていると共に、前記電線9に対して前記押圧突起23A,23A,23Aと前記押圧突起36A,36Aとが交互に当該電線9を押圧する間隔に設けられている。
【0081】
抱持部7Aは、前記第一収容部8Aと前記第二収容部6Aとから構成され、前記第一収容部8A側に設けられた押圧突起23A,23A,23Aと、前記第二収容部6A側に設けられた押圧突起36A,36Aと、を備えている。
【0082】
上述の如く構成されたワイヤハーネス用固定具2Aは、図10および図11に示すように、第一収容部8Aと第二収容部6Aとが別体として、射出成形等によって形成される。次いで、前記ワイヤハーネス用固定具2Aが前記ワイヤハーネス1Aに取り付けられる取付位置に、前記粘着テープ62が捲回され前記電線9が結束される。
【0083】
次いで、前記ワイヤハーネス1Aが車体等のパネルに所要の配索形態で配索される。次いで、ワイヤハーネス用固定具2Aは、図6に示すように、第一収容部8と第二収容部6とが閉止される。このとき、前記ワイヤハーネス1Aの電線9に捲回された粘着テープ62が第一凹溝25と第二凹溝35とからなる抱持部7に抱持され、前記抱持部7Aの押圧突起23A,23A,23Aと押圧突起36A,36Aとによって前記粘着テープ62が押圧され、前記ワイヤハーネス1Aに前記ワイヤハーネス用固定具2Aが固定される。なお、前記電線9は、複数本の電線9が束ねられた電線束でも良い。
【0084】
そして、前記ワイヤハーネス用固定具2Aが固定された前記ワイヤハーネス1Aが、孔部26,26に挿入したネジ部材によってパネルに固定される。
【0085】
上述の第二の実施形態にかかるワイヤハーネス用固定具2Aは、電線9に巻かれた粘着テープ62を抱持する抱持部7Aが設けられているため、結束工具などの取付工具を使用せずに前記電線9に前記固定具2Aを容易に取り付けられる。このため、前記ワイヤハーネス1Aがパネル等の狭い箇所に配索された後に、前記電線9に前記ワイヤハーネス用固定具2Aを取り付けることができる。従って、前記ワイヤハーネス1Aをパネル等に配索する際に前記ワイヤハーネス用固定具2Aが当該パネル等に引っかかることが防止される。
【0086】
また、ワイヤハーネス用固定具2Aは、線径の異なる電線9に巻かれた前記粘着テープ62を当該ワイヤハーネス用固定具2Aの抱持部7Aで抱持するため、線径の異なる電線9に取り付けることができる。
【0087】
また、ワイヤハーネス用固定具2Aは、前記第一収容部8と前記第二収容部6とには、互いに係合する係合手段としての係合爪28と係合孔44とが設けられ、かつ、前記第一収容部8と前記第二収容部6とが、別体で構成されているため、金型における前記ワイヤハーネス用固定具2を成形するキャビティの構造が簡略化される。このため、金型の制作費が抑えられ、ワイヤハーネス用固定具2の費用とワイヤハーネス1の費用とを抑えることができる。
【0088】
また、第一収容部8と第二収容部6との一方が破損した場合に、この破損した一方を交換することでワイヤハーネス用固定具2として使用できるため、部品交換にかかる費用を抑えることができる。
【0089】
また、ワイヤハーネス用固定具2Aは、電線9に巻かれた粘着テープ62を抱持するため、前記ワイヤハーネス用固定具2Aの取付位置の目印として前記粘着テープ62を使用できる。このため、ワイヤハーネス用固定具2Aの取付位置の調整作業が容易となる上に、取付精度が向上する。
【0090】
また、ワイヤハーネス用固定具2Aは、目印部材として粘着テープ62が使用されるため、位置決めが確実な上に、捲回数に応じて直径を適宜設定できる。このため、電線9の線径の大小に対応してワイヤハーネス用固定具2Aを当該電線9に取り付けることができる。また、ワイヤハーネス用固定具2Aが前記電線9の軸方向に移動したり、前記電線9の外周面の周方向に回転したりしない程度に前記粘着テープ62を巻き付ける捲回数が調整できるため、汎用性が向上する。
【0091】
また、目印部材は、汎用品である粘着テープ62を使用することができるため、ワイヤハーネス1Aを安価に提供することができる。
【0092】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0093】
1,1A ワイヤハーネス
2,2A ワイヤハーネス用固定具
6,6A 第二収容部
7,7A 抱持部
8,8A 第一収容部
9 電線
28 係合爪(係合手段)
44 係合孔(係合手段)
38 可撓部
40 開口部
61 結束バンド(目印部材)
61a 帯状部
61b 係合部
62 粘着テープ(目印部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線をパネルに固定するワイヤハーネス用固定具において、
前記ワイヤハーネス用固定具には、当該ワイヤハーネス用固定具を前記電線に取り付ける目印とされ且つ当該電線の外周面に沿って巻かれた目印部材を抱持する抱持部が設けられていることを特徴とするワイヤハーネス用固定具。
【請求項2】
前記抱持部は、前記電線を収容する第一収容部と、前記電線を収容すると共に前記第一収容部に対向する第二収容部と、を備え、かつ、
前記第一収容部と前記第二収容部とに連設され且つ当該第一収容部と当該第二収容部とを回動可能に連結した可撓部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項3】
前記抱持部は、前記電線を収容する第一収容部と、前記電線を収容すると共に前記第一収容部に対向する第二収容部と、を備え、
前記第一収容部と前記第二収容部とには、互いに係合する係合手段が設けられ、かつ、
前記第一収容部と前記第二収容部とが、別体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項4】
前記目印部材が、前記電線の外周面に沿って巻かれ且つ帯状に形成された帯状部と、前記帯状部の一端に設けられ且つ当該帯状部を挿通して係合する係合部と、を備え、
前記ワイヤハーネス用固定具の前記抱持部には、前記目印部材の前記係合部を露出する開口部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項5】
パネルに配索される電線と、前記電線を前記パネルに固定するワイヤハーネス用固定具と、を備えたワイヤハーネスにおいて、
前記ワイヤハーネス用固定具が、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス用固定具とされていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項6】
請求項5に記載のワイヤハーネスを前記パネルに配索する配線方法であって、
前記目印部材が外周面に沿って巻かれた前記電線を前記パネルに配索し、前記目印部材を前記ワイヤハーネス用固定具の抱持部で抱持し、前記ワイヤハーネス用固定具を前記パネルに固定することを特徴とするワイヤハーネスの配索方法。
【請求項1】
電線をパネルに固定するワイヤハーネス用固定具において、
前記ワイヤハーネス用固定具には、当該ワイヤハーネス用固定具を前記電線に取り付ける目印とされ且つ当該電線の外周面に沿って巻かれた目印部材を抱持する抱持部が設けられていることを特徴とするワイヤハーネス用固定具。
【請求項2】
前記抱持部は、前記電線を収容する第一収容部と、前記電線を収容すると共に前記第一収容部に対向する第二収容部と、を備え、かつ、
前記第一収容部と前記第二収容部とに連設され且つ当該第一収容部と当該第二収容部とを回動可能に連結した可撓部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項3】
前記抱持部は、前記電線を収容する第一収容部と、前記電線を収容すると共に前記第一収容部に対向する第二収容部と、を備え、
前記第一収容部と前記第二収容部とには、互いに係合する係合手段が設けられ、かつ、
前記第一収容部と前記第二収容部とが、別体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項4】
前記目印部材が、前記電線の外周面に沿って巻かれ且つ帯状に形成された帯状部と、前記帯状部の一端に設けられ且つ当該帯状部を挿通して係合する係合部と、を備え、
前記ワイヤハーネス用固定具の前記抱持部には、前記目印部材の前記係合部を露出する開口部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のワイヤハーネス用固定具。
【請求項5】
パネルに配索される電線と、前記電線を前記パネルに固定するワイヤハーネス用固定具と、を備えたワイヤハーネスにおいて、
前記ワイヤハーネス用固定具が、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス用固定具とされていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項6】
請求項5に記載のワイヤハーネスを前記パネルに配索する配線方法であって、
前記目印部材が外周面に沿って巻かれた前記電線を前記パネルに配索し、前記目印部材を前記ワイヤハーネス用固定具の抱持部で抱持し、前記ワイヤハーネス用固定具を前記パネルに固定することを特徴とするワイヤハーネスの配索方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−222901(P2012−222901A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84526(P2011−84526)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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