説明

ワイヤハーネス配索構造

【課題】ワイヤハーネス上に装備した複数のクランプ部材間の離間距離の変動を抑えて、車体パネル上のワイヤハーネス配索経路への配索作業を容易にする。
【解決手段】ワイヤハーネスを構成する複数の電線11a,11b,11cの束を、複数のクランプ部材31により車体パネル21に固定するワイヤハーネス配索構造H1であって、クランプ部材は、複数の電線の外周を直に結束して剛性の高い棒状の電線束に形成するバンド部32と、車体パネル上のクランプ取付孔の周辺部に当接する基台部33と、基台部の表面に突設されてクランプ取付孔に固定されるパネル連結部34とを備え、電線束に固定されたクランプ部材相互間の離間距離は、電線束の剛性により変動が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線から構成されるワイヤハーネスを車体パネル上のワイヤハーネス配索経路に固定するワイヤハーネス配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6〜図8は、従来のワイヤハーネス配索構造の説明図である。
図6に示したワイヤハーネス配索構造は、下記特許文献1に開示されたものである。
【0003】
この特許文献1のワイヤハーネス配索構造は、ワイヤハーネス101を構成する複数の電線102と、この複数の電線102の束を車体パネル上のワイヤハーネス配索経路に固定する複数のクランプ部材111と、を備える。
【0004】
ワイヤハーネス101は、図6に示すように、複数の電線102の外周を、外装材104に収容した構造になっている。
【0005】
複数のクランプ部材111は、図6に示すように、外装材104の外周に縦添えされる連結帯体121に装着される。連結帯体121は、図7に示すように、帯板121aの両側縁に鋸歯状凹凸からなる係止部121bが連続形成されている。
【0006】
それぞれのクランプ部材111は、連結帯体121が挿通される帯体挿通孔112aを有した帯体連結部112と、この帯体連結部112の外周面に突設されたパネル連結部113と、を備える。帯体連結部112は、帯体挿通孔112a内に、係止部121bと係合する係止突起(不図示)を備えていて、前記係止突起と係止部121bの凹凸との係合により、連結帯体121上の任意位置に位置決めすることができる。
【0007】
クランプ部材111のパネル連結部113は、不図示の車体パネルのクランプ取付孔に嵌合させることで、車体パネルに固定される。
【0008】
特許文献1に記載のワイヤハーネス配索構造では、複数のクランプ部材111相互間の離間距離L1は、連結帯体121上でクランプ部材111を連結帯体121の長手方向(図6の矢印X1方向)にスライド移動させることで、調整することができる。
【0009】
連結帯体121に装着された複数のクランプ部材111は、連結帯体121を結束バンド131によって外装材104の外周に固定することで、ワイヤハーネス101の外周に固定された状態となる。
【0010】
図8に示したワイヤハーネス配索構造は、下記特許文献2に開示されたものである。
この特許文献2のワイヤハーネス配索構造は、樹脂製のプロテクタ141内にワイヤハーネス151を構成する複数の電線152を挿通させる。そして、プロテクタ141の外周には、プロテクタ141の長手方向(図8(c)の矢印X2方向)にスライド可能に、クランプ部材161が取り付けられる。
【0011】
プロテクタ141は、例えば硬質の樹脂製で、図8(a)に示すように、底壁部141aと、この底壁部141aの両側縁に回動可能に延設された一対の可動壁部141b,141cと、を備える。図8(a)に実線で示すように、一対の可動壁部141b,141cを互いに先端が突き合さるように折り曲げると、これら一対の可動壁部141b,141cの先端同士が嵌合接続して、所定断面の筒状構造に組み立てることができる。
【0012】
プロテクタ141に挿通する複数の電線152は、外周に粘着テープ154を巻き付けることで、1束に結束しておく。
【0013】
クランプ部材161は、図8(b)に示すように、プロテクタ141に嵌合するプロテクタ連結部162と、このプロテクタ連結部162に突設されたパネル連結部163と、を有する。
【0014】
プロテクタ連結部162は、プロテクタ141の外周に嵌合する筒構造の周方向の一部を切り離した形状である。
【0015】
パネル連結部163は、不図示の車体パネルのクランプ取付孔に嵌合させることで、車体パネルに固定される。
【0016】
特許文献2に記載のワイヤハーネス配索構造では、複数のクランプ部材161相互間の離間距離L2は、プロテクタ141上でクランプ部材161をプロテクタ141の長手方向にスライド移動させることで、調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】実開平5−45372号公報
【特許文献2】特開平7−143647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところが、上記の特許文献1及び特許文献2に開示されたワイヤハーネス配索構造の場合、ワイヤハーネスを車体パネルへ結合するためのクランプ部材111,161は、ワイヤハーネスを構成する複数の電線102,152に直接ではなく、複数の電線102,152の外周に被さる外装材104やプロテクタ141に取り付けられている。
【0019】
そのため、これらのワイヤハーネス配索構造では、外装材104やプロテクタ141の装備のため、ワイヤハーネスが高額化したり、重量化するという問題があった。
【0020】
また、外装材104やプロテクタ141に取り付けられるクランプ部材111,161は、それぞれのワイヤハーネス101,151の長さ方向に移動可能に、取り付けられている。
【0021】
そのため、特許文献1,2に開示のワイヤハーネス配索構造では、車体パネルへの組み付け時などに、一部のクランプ部材がワイヤハーネスの長さ方向に移動してしまい、クランプ部材相互間の離間距離が設計値から変動してしまうことがあった。その場合、クランプ部材相互間の離間距離が、車体パネル上のクランプ取付孔相互の離間間隔と合わないため、クランプ部材の位置調整を行わなければならず、配索作業の遅延という問題が生じた。
【0022】
また、特許文献2に開示のワイヤハーネス配索構造では、ワイヤハーネス151を構成する複数の電線152は、プロテクタ141内に遊嵌している状態で、ワイヤハーネス151は、長さ方向と直交する方向(例えば、図8(c)の矢印Y2方向)には、一定量の移動が可能である。
【0023】
そのため、車両走行時の振動等でワイヤハーネスが長さ方向と直交する方向に振れて、プロテクタ141から露出している電線152が車体と干渉して、電線152の汚損が発生するおそれがあった。
【0024】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、構成部品の削減によって低コスト化や軽量化を図ることができ、しかも、ワイヤハーネス上に装備した複数のクランプ部材間の離間距離の変動を抑えて、車体パネル上のワイヤハーネス配索経路への配索作業を容易にすることができ、且つ、ワイヤハーネスを構成する電線が車体パネルとの擦れによって汚損することを防止することができるワイヤハーネス配索構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)ワイヤハーネスを構成する複数の電線と、前記複数の電線の束を車体パネル上のワイヤハーネス配索経路に固定する複数のクランプ部材と、を備えるワイヤハーネス配索構造であって、
前記複数の電線には、これらの複数の電線を束ねた電線束自体が前記ワイヤハーネス配索経路の形状に対応する曲げ形状を維持する剛性を備えるように、曲げ剛性の高い電線を採用し、
前記クランプ部材は、前記複数の電線の外周を直に結束して剛性の高い棒状の電線束に形成するバンド部と、前記バンド部に一体形成されて前記車体パネル上のクランプ取付孔の周辺部に当接する基台部と、前記周辺部に当接する基台部の表面に突設されて前記クランプ取付孔に固定されるパネル連結部と、を備え、
前記基台部は、前記パネル連結部をクランプ取付孔に固定した状態において前記バンド部に固定された電線束の表面と前記車体パネルの表面との間に電線束と車体パネルとを非接触状態に保つ離間距離を確保し、
電線束に固定されたクランプ部材相互間の離間距離は、前記電線束の剛性により変動が規制されることを特徴とするワイヤハーネス配索構造。
【0026】
(2)前記電線束が接触する前記基台部の表面には、前記電線束に屈曲部を形成して前記電線束の長手方向への移動を規制する移動規制突起を備えたことを特徴とする上記(1)に記載のワイヤハーネス配索構造。
【0027】
(3)ワイヤハーネスを構成する複数の電線と、前記複数の電線の束を車体パネル上のワイヤハーネス配索経路に固定する複数のクランプ部材と、を備えるワイヤハーネス配索構造であって、
前記ワイヤハーネス配索経路の形状に対応する曲げ形状を維持する剛性を備えて、前記複数の電線に縦添えされると共に、長手方向に間隔をあけて前記複数のクランプ部材が固着装備される棒状体と、
前記棒状体と前記複数の電線とを直に束ねて、前記棒状体の曲げ形状に倣う曲げ形状の電線束を形成する結束手段と、
を備え、
前記クランプ部材は、前記棒状体に固着されると共に前記車体パネル上のクランプ取付孔の周辺部に当接する基台部と、前記周辺部に当接する基台部の表面に突設されて前記クランプ取付孔に固定されるパネル連結部と、を備え、
前記基台部は、前記パネル連結部をクランプ取付孔に固定した状態において前記電線束の表面と前記車体パネルの表面との間に前記電線束と前記車体パネルとを非接触状態に保つ離間距離を確保し、
前記電線束に固定されたクランプ部材相互間の離間距離は、前記棒状体の剛性により変動が規制されることを特徴とするワイヤハーネス配索構造。
【0028】
上記(1)の構成によれば、クランプ部材は、ワイヤハーネスを構成する複数の電線の外周を直に結束するバンド部を有していて、複数の電線の外周に外装材やプロテクタを装着せずに、クランプ部材を直にワイヤハーネスに取り付けることができる。
【0029】
従って、外装材やプロテクタを省くことで構成部品を削減して、低コスト化や軽量化を図ることができる。
【0030】
また、上記(1)の構成によれば、クランプ部材は、バンド部を介して直にワイヤハーネスに強固に固定される。そのため、ワイヤハーネス上に装備する複数のクランプ部材は、いずれも、ワイヤハーネスの長さ方向に不用意に移動することがなく、クランプ部材相互間の離間距離の変動を防止することができる。
【0031】
更に、ワイヤハーネスを構成する複数の電線には曲げ剛性の高い電線が採用されて、クランプ部材のバンド部によって束ねられた状態では、電線束自体がワイヤハーネス配索経路の形状に対応する曲げ形状を維持する剛性を備える。
【0032】
そのため、クランプ部材を取り付けたワイヤハーネスは不用意に弛むことがなく、ワイヤハーネスの弛み変形等によってクランプ部材相互間の離間距離が変動することを防止することもできる。
【0033】
従って、クランプ部材相互間の離間距離の変動によって一部のクランプ部材の位置が車体パネル上のクランプ取付孔の位置に合わなくなるといった不都合が発生せず、車体パネル上のワイヤハーネス配索経路への配索作業を容易にすることができる。
【0034】
また、上記(1)の構成によれば、クランプ部材に装備された基台部と、電線束に付与した剛性との相乗効果によって、配索される電線束と車体パネルの表面との間には、電線束と車体パネルとを非接触状態に保つ離間距離が確保される。
【0035】
そのため、ワイヤハーネスを構成する電線が車体パネルとの擦れによって汚損することを防止することもできる。
【0036】
上記(2)の構成によれば、基台部の表面の移動規制突起と電線束の屈曲部とが凹凸嵌合することで、ワイヤハーネスに取り付けられたクランプ部材は、ワイヤハーネス長手方向への移動を規制する結合力が更に高くなる。そのため、クランプ部材相互間の離間距離の変動を抑止する性能が更に向上する。
【0037】
上記(3)の構成によれば、複数のクランプ部材は、ワイヤハーネスを構成する複数の電線と一緒に結束手段により結束される棒状体に固着装備される。そのため、クランプ部材は、複数の電線の外周に外装材やプロテクタを装着せずに、ワイヤハーネスに取り付けることができる。
【0038】
従って、外装材やプロテクタを省くことで構成部品を削減して、低コスト化や軽量化を図ることができる。
【0039】
また、上記(3)の構成によれば、複数のクランプ部材が固着される棒状体は、ワイヤハーネス配索経路の形状に対応する曲げ形状を維持する剛性を備えているため、該棒状体が不用意に撓んでクランプ部材相互間の離間距離が変動することを防止することができる。
【0040】
従って、クランプ部材相互間の離間距離の変動によって一部のクランプ部材の位置が車体パネル上のクランプ取付孔の位置に合わなくなるといった不都合が発生せず、車体パネル上のワイヤハーネス配索経路への配索作業を容易にすることができる。
【0041】
また、上記(3)の構成によれば、クランプ部材に装備された基台部と、棒状体により電線束に付与された剛性によって、配索される電線束と車体パネルの表面との間には、電線束と車体パネルとを非接触状態に保つ離間距離が確保される。
【0042】
そのため、ワイヤハーネスを構成する電線が車体パネルとの擦れによって汚損することを防止することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によるワイヤハーネス配索構造によれば、クランプ部材は、ワイヤハーネスを構成する複数の電線の外周に外装材やプロテクタを装着せずに、ワイヤハーネスに取り付けることができる。
【0044】
従って、外装材やプロテクタを省くことで構成部品を削減して、低コスト化や軽量化を図ることができる。
【0045】
また、本発明によるワイヤハーネス配索構造によれば、ワイヤハーネスに組み付けられた複数のクランプ部材は、ワイヤハーネスを構成する電線自体の剛性又は電線束に縦添えされる棒状体の剛性によって、クランプ部材相互間の離間距離が変動することが防止される。
【0046】
従って、クランプ部材相互間の離間距離の変動によって一部のクランプ部材の位置が車体パネル上のクランプ取付孔の位置に合わなくなるといった不都合が発生せず、車体パネル上のワイヤハーネス配索経路への配索作業を容易にすることができる。
【0047】
また、本発明によるワイヤハーネス配索構造によれば、クランプ部材に装備された基台部と、電線束に付与した剛性とによって、配索される電線束と車体パネルの表面との間には、電線束と車体パネルとを非接触状態に保つ離間距離が確保される。
【0048】
そのため、ワイヤハーネスを構成する電線が車体パネルとの擦れによって汚損することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るワイヤハーネス配索構造の第1実施形態により車体パネルに固定されるワイヤハーネスの概略構成図である。
【図2】図1に示したワイヤハーネスの幹線ハーネスを車体パネルに固定する配索構造を示す拡大側面図である。
【図3】本発明に係るワイヤハーネス配索構造の第2実施形態により車体パネルに固定されるワイヤハーネスの概略構成図である。
【図4】図3に示したワイヤハーネスの幹線ハーネスを車体パネルに固定する配索構造を示す拡大斜視図である。
【図5】第2実施形態の配索構造で、棒状体を複数の電線の外周にスパイラル状に添えた場合の、クランプ部材の向きの説明図である。
【図6】従来のワイヤハーネス配索構造を示す斜視図である。
【図7】図6に示しクランプ部材と連結帯体の斜視図である。
【図8】従来の別のワイヤハーネス配索構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明に係るワイヤハーネス配索構造の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0051】
図1は、本発明に係るワイヤハーネス配索構造の第1実施形態により車体パネルに固定されるワイヤハーネスの概略構成図である。
【0052】
図1に示したワイヤハーネス1は、幹線ハーネス11の途中に4本の分岐ハーネス12,13,14,15が分岐形成された構成である。幹線ハーネス11は、長さ方向の中間の区間L3の両端部が図2に示す第1実施形態のワイヤハーネス配索構造H1で、車体パネル21に固定される。
【0053】
この第1実施形態のワイヤハーネス配索構造H1は、図2に示すように、ワイヤハーネス1における幹線ハーネス11を構成する3本の電線11a,11b,11cの束を、2つのクランプ部材31によって車体パネル21上のワイヤハーネス配索経路に固定する構造である。
【0054】
本実施形態の場合、3本の電線11a,11b,11cは、いずれも、帯板状をなす単線導体の周囲を絶縁被覆で覆ったフラット電線で、後述のバンド部32によって互いに積層された電線束に形成される。単線導体を使った被覆電線は、撚り線導体を使った一般的な被覆電線よりも、曲げ剛性が高い。
【0055】
更に詳しく説明すると、3本の電線11a,11b,11cを束ねた電線束自体が、車体パネル21上のワイヤハーネス配索経路の形状に対応する曲げ形状に成形したときにその曲げ形状を維持する十分な剛性を備えるように、各電線11a,11b,11cの剛性が選定されている。
【0056】
幹線ハーネス11を構成する3本の電線11a,11b,11cに必要な剛性は、例えば、幹線ハーネス11の電線束径が10mm以上の場合は、電線束とクランプ部材31との間の横ずれ荷重が60N(ニュートン)以上、クランプ部材31を捻り変位させる際の回転荷重が30N(ニュートン)以上となる曲げ強さである。また、幹線ハーネス11の電線束径が10mm未満の場合は、電線束とクランプ部材31との間の横ずれ荷重が30N(ニュートン)以上となる曲げ強さである。
【0057】
クランプ部材31は、図2に示すように、バンド部32と、基台部33と、パネル連結部34と、を備える。
【0058】
バンド部32は、3本の電線11a,11b,11cの外周を直に結束して剛性の高い棒状の電線束に形成する。バンド部32は、基台部33に一体形成されている。また、バンド部32は、1つのクランプ部材31において、ワイヤハーネスの長さ方向に離間した2箇所に装備されている。
【0059】
基台部33は、上記のようにバンド部32と一体に形成されている。この基台部33は、図2に示すように、車体パネル21上のクランプ取付孔(図示せず)の周辺部に当接する。
【0060】
パネル連結部34は、図示しないクランプ取付孔に嵌合して、前記クランプ取付孔への固定を果たす傘形の突起である。このパネル連結部34は、前記クランプ取付孔の周辺部に当接する基台部33の表面に突設されている。
【0061】
更に詳しく説明すると、パネル連結部34は、基台部33の中心部に突設されている。そして、前述した2つのバンド部32は、基台部33の中心部を挟む2箇所に設けられている。
【0062】
本実施形態の場合、前述の基台部33は、図2に示すようにパネル連結部34をクランプ取付孔に固定した状態において、バンド部32に固定された電線束の表面と車体パネル21の表面との間に、電線束と車体パネル21とを非接触状態に保つ離間距離Sを確保する。
【0063】
この離間距離Sは、ワイヤハーネスが一対のクランプ部材31で固定される区間L3における電線束に生じる最大撓み量よりも大きく設定されていて、電線束が撓んでも電線束が車体パネル21の表面に接触しない程度に設定される。
【0064】
また、本実施形態のワイヤハーネス配索構造H1では、電線束が接触する基台部33の表面には、移動規制突起36が、電線束側に突出して備えられている。この移動規制突起36は、電線束に屈曲部16を形成して、屈曲部16との凹凸嵌合により、電線束の長手方向への移動を規制する。
【0065】
以上に説明した本実施形態のワイヤハーネス配索構造H1では、電線束に固定されたクランプ部材31相互間の離間距離L3は、電線束の剛性により変動が規制される。
【0066】
以上に説明した第1実施形態のワイヤハーネス配索構造H1では、クランプ部材31は、ワイヤハーネス1を構成する3本の電線11a,11b,11cの外周を直に結束するバンド部32を有していて、3本の電線11a,11b,11cの外周に外装材やプロテクタを装着せずに、クランプ部材31を直にワイヤハーネス1に取り付けることができる。
【0067】
従って、外装材やプロテクタを省くことで構成部品を削減して、低コスト化や軽量化を図ることができる。
【0068】
また、以上に説明した第1実施形態のワイヤハーネス配索構造H1では、クランプ部材31は、バンド部32を介して直にワイヤハーネス1に強固に固定される。そのため、ワイヤハーネス1上に装備する複数のクランプ部材31は、いずれも、ワイヤハーネス1の長さ方向に不用意に移動することがなく、クランプ部材31相互間の離間距離L3の変動を防止することができる。
【0069】
更に、ワイヤハーネス1を構成する3本の電線11a,11b,11cには曲げ剛性の高い電線が採用されていて、クランプ部材31のバンド部32によって束ねられた状態では、電線束自体がワイヤハーネス配索経路の形状に対応する曲げ形状を維持する剛性を備える。
【0070】
そのため、クランプ部材31を取り付けたワイヤハーネス1は不如意に弛むことがなく、ワイヤハーネス1の弛み変形等によってクランプ部材31相互間の離間距離L3が変動することを防止することもできる。
【0071】
従って、クランプ部材31相互間の離間距離L3の変動によって一部のクランプ部材31の位置が車体パネル21上のクランプ取付孔の位置に合わなくなるといった不都合が発生せず、車体パネル21上のワイヤハーネス配索経路への配索作業を容易にすることができる。
【0072】
また、以上に説明した第1実施形態のワイヤハーネス配索構造H1では、クランプ部材31に装備された基台部33と、電線束に付与した剛性との相乗効果によって、配索される電線束と車体パネル21の表面との間には、電線束と車体パネル21とを非接触状態に保つ離間距離Sが確保される。
【0073】
そのため、ワイヤハーネス1を構成する電線11a,11b,11cが車体パネル21との擦れによって汚損することを防止することもできる。
【0074】
更に、以上に説明した第1実施形態のワイヤハーネス配索構造H1では、基台部33の表面の移動規制突起36と電線束の屈曲部16とが凹凸嵌合することで、ワイヤハーネス1に取り付けられたクランプ部材31は、ワイヤハーネス長手方向への移動を規制する結合力が更に高くなる。そのため、クランプ部材31相互間の離間距離L3の変動を抑止する性能が更に向上する。
【0075】
図3は、本発明に係るワイヤハーネス配索構造の第2実施形態により車体パネルに固定されるワイヤハーネスの概略構成図である。
【0076】
図3に示したワイヤハーネス2は、幹線ハーネス41の途中に4本の分岐ハーネス42,43,44,45が分岐形成された構成である。幹線ハーネス41は、長さ方向の中間の区間L4が図4に示す第2実施形態のワイヤハーネス配索構造H2で、車体パネルに固定される。
【0077】
この第2実施形態のワイヤハーネス配索構造H2は、図4に示すように、ワイヤハーネス2における幹線ハーネス41を構成する複数の被覆電線41a,41a……の束を、4つのクランプ部材51によって車体パネル(不図示)上のワイヤハーネス配索経路に固定する構造である。
【0078】
本実施形態の場合、幹線ハーネス41を構成する複数の被覆電線41a,41a……は、撚り線導体を用いた一般的な被覆電線、あるいは単線導体を用いた高剛性の被覆電線のいずれでも良い。
【0079】
この第2実施形態のワイヤハーネス配索構造H2では、幹線ハーネス41を車体パネルに固定する手段として、前述のクランプ部材51の他に、棒状体61と、結束手段71と、を使用している。
【0080】
棒状体61は、ワイヤハーネス配索経路の形状に対応する曲げ形状を維持する剛性を備えて、複数の被覆電線41a,41a……に縦添えされる。また、本実施形態の場合、棒状体61は、クランプ部材51と同じ材料で形成されており、長手方向に間隔をあけて4つのクランプ部材51が固着装備される。棒状体61へのクランプ部材51の固着方法は、これらの部材の材質に応じて、選択される。例えば、棒状体61及びクランプ部材51が樹脂製の場合は、超音波溶着や、接着剤によって固着が行われる。また、棒状体61及びクランプ部材51が金属製の場合は、溶接によって固着が行われる。
【0081】
結束手段71は、棒状体61と複数の被覆電線41a,41a……とを直に束ねて、棒状体61の曲げ形状に倣う曲げ形状の電線束を形成する。この結束手段71としては、粘着テープや、樹脂製の結束バンドを使用される。また、結束手段71は、複数の被覆電線41a,41a……が、棒状体61から離れないように、装備する間隔が調整される。通常、結束手段71はクランプ部材51の両側に装備すると良いが、隣接するクランプ部材51相互の間隔が大きい場合は、更に結束手段71の装備箇所を増やすようにしても良い。
【0082】
本実施形態の場合、棒状体61に固着装備されるクランプ部材51は、基台部33とパネル連結部34とを備える。
【0083】
基台部33は、棒状体61に固着されると共に車体パネル上のクランプ取付孔の周辺部に当接する板状部材で、第1実施形態のクランプ部材31における基台部33と同一構造でよい。
【0084】
パネル連結部34は、基台部33の表面に突設されて車体パネルのクランプ取付孔に固定される部材で、第1実施形態のクランプ部材31におけるパネル連結部34と同一構造で良い。
【0085】
本実施形態の場合も、基台部33は、パネル連結部34をクランプ取付孔に固定した状態において電線束の表面と車体パネルの表面との間に電線束と車体パネルとを非接触状態に保つ離間距離S(図2参照)を確保する。
【0086】
また、本実施形態の場合、電線束に固定されたクランプ部材51相互間の離間距離は、棒状体61の剛性により変動が規制される。
【0087】
以上に説明した第2実施形態のワイヤハーネス配索構造H2では、複数のクランプ部材51は、ワイヤハーネス2を構成する複数の被覆電線41a,41a……と一緒に結束手段71により結束される棒状体61に固着装備される。そのため、クランプ部材51は、複数の被覆電線41a,41a……の外周に外装材やプロテクタを装着せずに、ワイヤハーネス2に取り付けることができる。
【0088】
従って、外装材やプロテクタを省くことで構成部品を削減して、低コスト化や軽量化を図ることができる。
【0089】
また、以上に説明した第2実施形態のワイヤハーネス配索構造H2では、複数のクランプ部材51が固着される棒状体61は、ワイヤハーネス配索経路の形状に対応する曲げ形状を維持する剛性を備えているため、該棒状体61が不用意に撓んでクランプ部材51相互間の離間距離が変動することを防止することができる。
【0090】
従って、クランプ部材51相互間の離間距離の変動によって一部のクランプ部材51の位置が車体パネル上のクランプ取付孔の位置に合わなくなるといった不都合が発生せず、車体パネル上のワイヤハーネス配索経路への配索作業を容易にすることができる。
【0091】
また、以上に説明した第2実施形態のワイヤハーネス配索構造H2では、クランプ部材51に装備された基台部33と、棒状体61により電線束に付与された剛性によって、配索される電線束と車体パネルの表面との間には、電線束と車体パネルとを非接触状態に保つ離間距離が確保される。
【0092】
そのため、ワイヤハーネス2を構成する電線が車体パネルとの擦れによって汚損することを防止することができる。
【0093】
なお、上記第2実施形態においては、棒状体61は幹線ハーネス41の外周に単純に縦添えした状態で示したが、棒状体61を幹線ハーネス41の外周にスパイラル状に巻き付けて装備するようにしても良い。その場合には、図5(a)、(b),(c)に示すように、クランプ部材51の突出する向きが、ワイヤハーネスの長さ方向の位置に応じて変化する。
【0094】
また、本発明のワイヤハーネス配索構造は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。例えば、車体パネルにワイヤハーネスを固定する手段として使用するクランプ部材の数量、クランプ部材におけるパネル連結部34の具体的な形状などは、適宜に設計変更することができる。
【0095】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0096】
1,2 ワイヤハーネス
11 幹線ハーネス
11a,11b,11c 電線(被覆電線)
16 屈曲部
21 車体パネル
31 クランプ部材
32 バンド部
33 基台部
34 パネル連結部
36 移動規制突起
41 幹線ハーネス
41a 被覆電線
51 クランプ部材
61 棒状体
71 結束手段
H1,H2 ワイヤハーネス配索構造
S 車体パネルと電線束との間の離間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを構成する複数の電線と、前記複数の電線の束を車体パネル上のワイヤハーネス配索経路に固定する複数のクランプ部材と、を備えるワイヤハーネス配索構造であって、
前記複数の電線には、これらの複数の電線を束ねた電線束自体が前記ワイヤハーネス配索経路の形状に対応する曲げ形状を維持する剛性を備えるように、曲げ剛性の高い電線を採用し、
前記クランプ部材は、前記複数の電線の外周を直に結束して剛性の高い棒状の電線束に形成するバンド部と、前記バンド部に一体形成されて前記車体パネル上のクランプ取付孔の周辺部に当接する基台部と、前記周辺部に当接する基台部の表面に突設されて前記クランプ取付孔に固定されるパネル連結部と、を備え、
前記基台部は、前記パネル連結部をクランプ取付孔に固定した状態において前記バンド部に固定された前記電線束の表面と前記車体パネルの表面との間に前記電線束と前記車体パネルとを非接触状態に保つ離間距離を確保し、
電線束に固定されたクランプ部材相互間の離間距離は、前記電線束の剛性により変動が規制されることを特徴とするワイヤハーネス配索構造。
【請求項2】
前記電線束が接触する前記基台部の表面には、前記電線束に屈曲部を形成して前記電線束の長手方向への移動を規制する移動規制突起を備えたことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス配索構造。
【請求項3】
ワイヤハーネスを構成する複数の電線と、前記複数の電線の束を車体パネル上のワイヤハーネス配索経路に固定する複数のクランプ部材と、を備えるワイヤハーネス配索構造であって、
前記ワイヤハーネス配索経路の形状に対応する曲げ形状を維持する剛性を備えて、前記複数の電線に縦添えされると共に、長手方向に間隔をあけて前記複数のクランプ部材が固着装備される棒状体と、
前記棒状体と前記複数の電線とを直に束ねて、前記棒状体の曲げ形状に倣う曲げ形状の電線束を形成する結束手段と、
を備え、
前記クランプ部材は、前記棒状体に固着されると共に前記車体パネル上のクランプ取付孔の周辺部に当接する基台部と、前記周辺部に当接する基台部の表面に突設されて前記クランプ取付孔に固定されるパネル連結部と、を備え、
前記基台部は、前記パネル連結部をクランプ取付孔に固定した状態において前記電線束の表面と前記車体パネルの表面との間に前記電線束と前記車体パネルとを非接触状態に保つ離間距離を確保し、
前記電線束に固定されたクランプ部材相互間の離間距離は、前記棒状体の剛性により変動が規制されることを特徴とするワイヤハーネス配索構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−115021(P2012−115021A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261255(P2010−261255)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】