説明

ワイヤハーネス

【課題】ワイヤハーネスが備える電線群の分岐位置において、3つ以上の方向に向かう電線群全てが予め定められた経路に沿って保持されるように電線群を結束する作業を容易にすること。
【解決手段】ワイヤハーネス1は、分岐した電線群8と電線結束具10とを備える。電線結束具10は、金属性の棒状の芯部材に樹脂のコーティングが施された曲げ変形可能な3本以上の長尺部11が一つの分岐部101から枝分かれして形成された用具である。電線結束具10は、長尺部11各々が電線群の分岐位置7から3つ以上の方向に向かう電線群81,82,83各々に対して巻き付けられることにより、電線群81,82,83各々を結束するとともに電線群の分岐状態を保持する。さらに、電線結束具10の両端の把持部20各々が、電線束の電線9を挟んで保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐した電線群を備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、分岐した電線群を備える場合が多く、その場合、ワイヤハーネスは、電線群の分岐位置から3つ以上の方向へ分かれた電線束の経路を形成する。そのようなワイヤハーネスにおいては、不規則な曲げ跡(クセ)の付きやすい電線束が、分岐位置を含む予め定められた経路に沿って正しく配線されなければならない。
【0003】
従来のワイヤハーネスの組み立て工程では、配線用の治具が用いられる。その治具は、作業台と、その作業台上の予め定められた経路に沿った位置に固定され、電線が引っ掛けられる複数の電線保持具を含む。まず、作業者は、ワイヤハーネスを構成する電線群を、治具の電線保持具に順次引っ掛けつつ配線する。その後、作業者は、粘着テープを電線群に巻き付けることにより電線群を結束するとともに、電線束の経路を規制する。
【0004】
しかしながら、電線群の分岐位置において、複数の方向に向かう電線群各々が予め定められた経路に沿って保持されるように電線群に粘着テープを巻き付ける作業は、熟練を要する作業である。
【0005】
一方、特許文献1には、屈曲可能な長尺な部材に樹脂のコーティングが施された電線結束具が、電線群が幹線から支線へ分岐する分岐位置において、電線群に対して螺旋状に巻き付けられた構成を備えたワイヤハーネスについて示されている。特許文献1に示される技術によれば、電線群の分岐位置において、複数の方向に向かう電線群各々が予め定められた経路に沿って保持されるように電線群を結束する作業が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−267896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に示されるワイヤハーネスが採用された場合、電線群の分岐位置から3つ以上の方向に向かう電線群のうち、2方向に向かう電線群は、電線結束具によって結束及び保持される。しかしながら、他の方向に向かう電線群は、電線結束具によって結束及び保持されない。
【0008】
本発明は、ワイヤハーネスが備える電線群の分岐位置において、3つ以上の方向に向かう電線群全てが予め定められた経路に沿って保持されるように電線群を結束する作業を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るワイヤハーネスは、分岐した電線群と電線結束具とを備える。その電線結束具は、金属性の棒状の芯部材に樹脂のコーティングが施された曲げ変形可能な3本以上の長尺部が一つの分岐部から枝分かれして形成された用具である。さらに、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、電線結束具は、長尺部各々が電線群の分岐位置から3つ以上の方向に向かう電線群各々に対して巻き付けられることにより、電線群各々を結束するとともに電線群の分岐状態を保持する。
【0010】
本発明に係るワイヤハーネスにおいて、電線結束具が、3本以上の長尺部各々の先端に設けられ電線を挟んで保持する把持部を備えることが考えられる。この場合、把持部各々が、電線群の分岐位置から3つ以上の方向に向かう電線群各々の電線を挟んで保持する。
【0011】
また、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、把持部が、長尺部各々における先端の一部の範囲を占め、折り返して曲げられることによって電線を内側に挟んで保持する部分であることが考えられる。この場合、長尺部における把持部を形成する部分のうちの先端の部分が、さらに折り曲げられて形成されていることが望ましい。
【0012】
一方、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、把持部が、以下の各構成要素を備えることが考えられる。第1の構成要素は、長尺部各々の先端に固定され、可撓性を有する二股のアーム部である。第2の構成要素は、二股のアーム部各々の先端に形成され、相互に引っ掛かり合うことによって二股のアーム部をそれらの間に電線を挟む状態で保持する係合部である。
【発明の効果】
【0013】
本発明において、電線結束具を構成する曲げ変形可能な長尺部は、金属性の芯部材を備えるため、曲げられた形状を維持する特性を有する。従って、本発明に係るワイヤハーネスにおいては、電線結束具が、長尺部の形状維持特性により、電線群の分岐位置において3つ以上の方向に向かう電線群全てを予め定められた経路に沿って保持する。従って、本発明における電線結束具を用いて、3つ以上の方向に向かう電線群全てが予め定められた経路に沿って保持されるように電線群を結束する作業は、粘着テープを用いた作業に比べ格段に容易である。
【0014】
また、本発明における電線結束具は、粘着テープに比べ、電線群からの取り外しが容易であり、取り外された電線結束具は、再利用可能である。そのため、本発明における電線結束具が採用されることにより、設計変更などに伴う電線群の結束のやり直し作業が容易となる。
【0015】
ところで、本発明に係るワイヤハーネスの周囲に突起部又は角部などが存在すると、電線群に巻き付けられた電線結束具の長尺部における先端部分が周囲の物に引っ掛かる。そうすると、電線群の結束が緩む、及び電線結束具の位置がずれるなどの不都合が生じ得る。
【0016】
そこで、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、電線結束具の長尺部の先端に設けられた把持部が、電線束の電線を挟んで保持すれば、長尺部の先端部分が周囲の物に引っ掛かることに起因する電線群の結束の緩み及び電線結束具の位置ずれが防止される。
【0017】
また、本発明において、把持部が、長尺部の先端における折り返して曲げられた部分であれば、非常に簡易な構成によって把持部を実現することができる。さらに、長尺部における把持部を形成する部分のうちの先端の部分が、さらに折り曲げられて形成されていれば、その先端の部分は、折り返し部分に挟まれた電線の抜け止めとして機能する。その結果、電線群の結束の緩み及び電線結束具の位置ずれが、より確実に防止される。
【0018】
また、本発明において、把持部が、二股のアーム部と、その二股のアーム部各々の先端に形成された係合部とを備えることにより、把持部による電線の保持力がより高まる。その結果、電線群の結束の緩み及び電線結束具の位置ずれが、より確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1の主要部の外観図である。
【図2】ワイヤハーネス1が備える電線結束具10の斜視図である。
【図3】電線結束具10における長尺部の断面図である。
【図4】端部に電線を挟み込む把持部が形成された電線結束具10の側面図である。
【図5】電線を挟み込む電線結束具10の把持部を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス1Aの主要部の外観図である。
【図7】ワイヤハーネス1Aが備える電線結束具10Aの斜視図である。
【図8】ワイヤハーネス1に採用され得る電線結束具10Bの斜視図である。
【図9】ワイヤハーネス1に採用され得る電線結束具10Cの把持部の部分の斜視図である。
【図10】電線を挟み込む電線結束具10Cの把持部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。本発明の実施形態に係るワイヤハーネス1,1Aは、自動車などの車両に搭載され、例えば、インバータ回路などの電力供給源と電装機器との間、又は複数の電装機器相互間を電気的に接続する。
【0021】
<第1実施形態>
まず、図1から図5を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1の構成について説明する。図1に示されるように、ワイヤハーネス1は、複数の電線9からなる分岐した電線群8と、電線結束具10とを備える。
【0022】
ワイヤハーネス1は、電線群8の分岐位置7から3つ以上の方向へ分かれた電線束の経路を形成する。図1に示される例では、電線群8は、分岐位置7から3方向の経路へ分かれて形成されている。以下、分岐位置7から3方向の経路へ分かれた電線群8のうち、第1の経路に沿う電線群8を第一電線群81、第2の経路に沿う電線群8を第二電線群82、第3の経路に沿う電線群8を第三電線群83と称する。
【0023】
なお、図1に示される例では、第一電線群81の経路及び第二電線群82の経路がなす角度は180°であり、第一電線群81の経路及び第二電線群82と第三電線群83の経路とがなす角度は90°であるが、各電線群の経路がなす角度は、180°又は90°とは限らない。
【0024】
図1及び図2に示されるように、電線結束具10は、3本の長尺部11が一つの分岐部101から枝分かれして形成された部材である。分岐部101は、3方向各々に伸びる3本の長尺部11を一体に連結する連結部であるともいえる。
【0025】
また、図2に示されるように、電線結束具10において、3本の長尺部11のなす角度は、分岐した電線群のなす角度と同様に180°と90°である。一方、図8は、ワイヤハーネス1に採用され得る電線結束具10Bの斜視図である。3本以上の長尺部11のなす角度は、分岐した電線群のなす角度に応じて設定され、180°又は90°とは限らない。例えば、図8に示されるような電線結束具10Bが、電線結束具10の代わりに採用されることも考えられる。電線結束具10Bにおける3本の長尺部11は、180°及び90°以外の角度を形成している。
【0026】
図3に示されるように、電線結束具10の長尺部11は、金属性の棒状の芯部材13に樹脂のコーティング14が施された曲げ変形可能な部材である。芯部材13は、例えば、銅合金、鉄又はステンレスなどの材料からなる。また、芯部材13は、曲げ変形可能な特性が得られ、かつ、電線群8に対する接触面積が十分に確保されるように、長尺な板状に形成されている。電線結束具10の長尺部11は、金属性の芯部材13を備えるため、曲げられた形状を維持する特性を有する。なお、芯部材13が、丸棒状であることも考えられる。
【0027】
本実施形態において、芯部材13は、3本の長尺部11及び分岐部101の両方の芯を形成する一体成形部材である。しかしながら、芯部材13が、3本の長尺部11各々の芯を形成し、3本の芯部材13各々の一端が、3本の芯部材13とは別個に設けられた分岐部101に対して固着された構造も考えられる。この場合、分岐部101は、3本の長尺部11各々の一端が挿入される3つの孔が形成された樹脂製の部材であることが考えられる。
【0028】
樹脂のコーティング14は、例えば、塩化ビニルなどの樹脂材からなるコーティング材であるが、柔軟性を有する他の樹脂材で構成されてもよい。また、板状の芯部材13の厚みは、例えば、約1.0mmから約1.5mmの範囲で形成され、板状の芯部材13の幅は、例えば、約4.0mmから4.5mm程度で形成されている。
【0029】
また、図4に示されるように、電線結束具10における長尺部11各々の先端の一部の範囲を占める部分12は、折り返して曲げられることによって電線9を内側に挟んで保持する把持部20となる。即ち、長尺部11各々の先端の一部の範囲を占める部分12は、折り返して曲げられることにより、折り返し位置から先端寄りの部分である復路部21と、折り返し部分から分岐部101寄りの部分である往路部22とが形成される。
【0030】
そして、図5に示されるように、長尺部11各々の先端に形成された復路部21及び往路部22は、それらの間に電線9を挟み込む。また、復路部21及び往路部22は、芯部材13の形状維持特性により、電線9を挟み込んだ状態で保持する。なお、図5に示される例では、把持部20(復路部21及び往路部22)は、1本の電線9を把持しているが、把持部20が、複数の電線9を把持することも考えられる。
【0031】
図4及び図5に示されるように、電線結束具10における把持部20を形成する部分12のうちの先端の部分23、即ち、復路部21の先端の一部分は、さらに折り曲げられて形成されている。その先端の部分23は、復路部21及び往路部22に挟まれた電線9の抜け止めとして機能する。
【0032】
図1に示されるように、ワイヤハーネス1において、電線結束具10における3本の長尺部11は、電線群8の分岐位置7から3方向に向かう第一電線群81、第二電線群82及び第三電線群83各々に対して螺旋状に巻き付けられている。これにより、電線結束具10の長尺部11は、それら第一電線群81、第二電線群82及び第三電線群83各々を結束する。なお、電線群8に対する長尺部11の巻き付けの形態としては、図1に示されていない他の各種の形態も考えられる。
【0033】
また、電線結束具10の長尺部11は、芯部材13の形状維持特性により、第一電線群81、第二電線群82及び第三電線群83の分岐状態を保持する。即ち、電線結束具10は、3本の長尺部11各々が電線群の分岐位置7から3方向に向かう第一電線群81、第二電線群82及び第三電線群83各々に対して巻き付けられることにより、3方向に向かう電線群各々を結束するとともに、電線群の分岐状態を保持する。
【0034】
従って、電線結束具10を用いて、電線群の分岐位置7から3方向に向かう全ての電線群81,82,83各々が予め定められた経路に沿って保持されるように電線群8を結束する作業は、粘着テープを用いた作業に比べ格段に容易である。
【0035】
なお、電線結束具10における長尺部11の長さは、経路の異なる電線群8各々に対して2回から4回程度巻き付けることが可能な程度の長さであることが望ましい。
【0036】
さらに、図1及び図5に示されるように、電線結束具10における3本の長尺部11の先端の把持部20各々は、3方向の経路各々を形成する第一電線群81の束、第二電線群82の束及び第三電線群83の束における一部の電線9を挟んで保持する。そのため、電線結束具10の先端部分が周囲の物に引っ掛かることに起因する電線群8の結束の緩み及び電線結束具10の位置ずれが防止される。
【0037】
また、ワイヤハーネス1において、把持部20は、長尺部11各々の先端における折り返して曲げられただけの部分であるため、非常に簡易な構成によって把持部20を実現することができる。
【0038】
さらに、把持部20を形成する部分のうちの先端の部分23が、復路部21及び往路部22に挟まれた電線9の抜け止めとして機能するため、電線群8の結束の緩み及び電線結束具10の位置ずれが、より確実に防止される。
【0039】
また、ワイヤハーネス1における電線結束具10は、粘着テープに比べ、電線群8からの取り外しが容易であり、取り外された電線結束具10は、再利用可能である。そのため、電線結束具10が採用されることにより、設計変更などに伴う電線群8の結束のやり直し作業が容易となる。
【0040】
<第2実施形態>
次に、図6及び図7を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス1Aについて説明する。この第2実施形態に係るワイヤハーネス1Aは、図1に示されたワイヤハーネス1と比較して、電線群8の分岐の数及び電線結束具10における長尺部11の数のみが異なる構成を有している。ワイヤハーネス1Aは、ワイヤハーネス1の電線結束具10に相当する電線結束具10Aを備える。図6及び図7において、図1〜図5に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス1Aにおけるワイヤハーネス1と異なる点についてのみ説明する。
【0041】
図6は、ワイヤハーネス1Aの主要部の外観図、図7は、ワイヤハーネス1Aが備える電線結束具10Aの斜視図である。
【0042】
図6に示されるように、ワイヤハーネス1Aは、電線群8の分岐位置7から4つの方向へ分かれた電線束の経路を形成する。即ち、電線群8は、分岐位置7から4方向の経路へ分かれて形成されている。以下、分岐位置7から4方向の経路へ分かれた電線群8のうち、第1の経路に沿う電線群8を第一電線群81、第2の経路に沿う電線群8を第二電線群82、第3の経路に沿う電線群8を第三電線群83、第4の経路に沿う電線群8を第四電線群84と称する。
【0043】
なお、図6に示される例では、第一電線群81の経路及び第二電線群82の経路がなす角度は180°であり、第一電線群81の経路及び第二電線群82各々と第三電線群83の経路及び第四電線群84の経路各々とがなす角度は90°であるが、各電線群の経路がなす角度は、180°又は90°とは限らない。
【0044】
図6及び図7に示されるように、電線結束具10Aは、4本の長尺部11が一つの分岐部101から枝分かれして形成された部材である。分岐部101は、4方向各々に伸びる4本の長尺部11を一体に連結する連結部であるともいえる。
【0045】
電線結束具10Aの長尺部11各々は、電線結束具10の長尺部11各々と同じ構造を有する。さらに、電線結束具10Aの長尺部11各々は、電線結束具10の長尺部11各々と同様に、折り曲げられることにより図4及び図5に示される把持部20を形成する。
【0046】
また、図6に示されるように、ワイヤハーネス1Aにおいて、電線結束具10Aは、4本の長尺部11各々が電線群の分岐位置7から4方向に向かう第一電線群81、第二電線群82、第三電線群83及び第四電線群84各々に対して巻き付けられることにより、4方向に向かう電線群各々を結束するとともに、電線群の分岐状態を保持する。
【0047】
さらに、図6及び図5に示されるように、電線結束具10Aにおける3本の長尺部11の先端の把持部20各々は、4方向の経路各々を形成する第一電線群81の束、第二電線群82の束、第三電線群83の束及び第四電線群84の束における一部の電線9を挟んで保持する。
【0048】
図6に示されるワイヤハーネス1Aが採用されることにより、図1に示されるワイヤハーネス1が採用された場合と同様の効果が得られる。即ち、Nが3以上の整数であるとした場合、本発明に係るワイヤハーネスは、N本の長尺部が一つの分岐部から枝分かれして形成された電線結束具を備える。さらに、その電線結束具は、N本の長尺部11各々が電線群の分岐位置7からN方向に向かう電線群各々に対して巻き付けられることにより、N方向に向かう電線群各々を結束するとともに、N方向へ向かう電線群の分岐状態を保持する。
【0049】
<第1実施形態の応用例>
次に、図9及び図10を参照しつつ、ワイヤハーネス1に適用可能な電線結束具10Cについて説明する。電線結束具10Cは、電線結束具10と比較して、3本の長尺部11各々の先端における把持部の構造のみが異なる構成を有している。即ち、電線結束具10Cは、3本の長尺部11各々の先端に固定された把持部30を備える。この把持部30は、長尺部11とは別個に作製された部材である。
【0050】
図9は、ワイヤハーネス1に採用され得る電線結束具10Cの把持部30の部分の斜視図であり、図10は、電線9を挟み込む電線結束具10Cの把持部30を示す図である。なお、図9において、1本の長尺部11に設けられた把持部30が示されているが、残りの2本の長尺部11に設けられた把持部30の図示は省略されている。
【0051】
図9及び図10に示されるように、ワイヤハーネス1に適用可能な電線結束具10Cにおいて、長尺部11各々の先端に設けられた把持部30は、二股のアーム部32,33と、二股のアーム部32,33各々の先端に形成された係合部34,35とを有する。二股のアーム部32,33は、3本の長尺部11各々の先端に固定された台座部31から二股に伸びて形成されている。台座部31、二股のアーム部32,33及び係合部34,35は、例えば、樹脂製の一体成形部材である。或いは、台座部31、二股のアーム部32,33及び係合部34,35は、金属製の一体成形部材に樹脂のコーティングが施された部材であってもよい。
【0052】
台座部31は、例えば、長尺部11の端部が挿入される孔が形成されたキャップ状の部材である。キャップ状の台座部31は、例えば、接着剤が塗布された長尺部11の先端部が孔に挿入されることにより、長尺部11の先端部に固定される。
【0053】
また、二股のアーム部32,33は、長尺部11各々の先端に固定された台座部31から二股に伸びて形成されている。二股のアーム部32,33は、可撓性を有する部分であり、図9に示されるように、自然状態において、隙間を隔てて対向する状態で形成されている。
【0054】
図9に示される例では、二股のアーム部32,33を構成する第一アーム部32及び第二アーム部33のうち、第一アーム部32は、長尺部11の長手方向に沿って形成されている。また、第二アーム部33は、板状の長尺部11の一方の面に対して起立しつつ湾曲して形成されている。第二アーム部33の湾曲部は、電線9が嵌め入れられる部分である。二股のアーム部32,33を構成する第一アーム部32及び第二アーム部33に対して作業者の手によって相手側の方向へ力が加わることにより、二股のアーム部32,33は、相互に交差する位置まで撓む。
【0055】
係合部34,35は、二股のアーム部32,33各々の先端において相互に反対方向へ曲がって形成された部分である。二股のアーム部32,33が、それらの間に電線9が挟まれた状態で、相互に交差する位置まで撓むと、図10に示されるように、第一アーム部32の先端の第一係合部34と、第二アーム部33の先端の第二係合部35とが、相互に引っ掛かり合う。これにより、係合部34,35は、二股のアーム部32,33をそれらの間に電線9を挟む状態で保持する。
【0056】
なお、図10に示される例では、把持部30(第一アーム部32及び第二アーム部33)は、1本の電線9を把持しているが、把持部30が、複数の電線9を把持することも考えられる。また、把持部30が、電線結束具10A又は電線結束具10Bに採用されることも考えられる。
【0057】
把持部30が、二股のアーム部32,33及び係合部34,35を備えることにより、把持部30による電線9の保持力がより高まる。従って、ワイヤハーネス1に電線結束具10Cが採用されることにより、電線群8の結束の緩み及び電線結束具10Cの位置ずれが、より確実に防止される。
【0058】
<その他>
以上に示された各実施形態では、電線結束具10,10A,10B,10Cにおける長尺部11各々の先端部分に把持部20,30が形成されているが、把持部20,30のない構成が採用されることも考えられる。
【符号の説明】
【0059】
1,1A ワイヤハーネス
7 電線群の分岐位置
8,81,82,83 電線群
9 電線
10,10A,10B,10C 電線結束具
11 電線結束具の長尺部
13 芯部材
14 樹脂のコーティング
20,30 把持部
21 復路部
22 往路部
31 台座部
32,33 アーム部
34,35 係合部
101 電線結束具の分岐部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐した電線群を備えたワイヤハーネスであって、
金属性の棒状の芯部材に樹脂のコーティングが施された曲げ変形可能な3本以上の長尺部が一つの分岐部から枝分かれして形成された電線結束具を備え、
前記電線結束具は、前記長尺部各々が前記電線群の分岐位置から3つ以上の方向に向かう前記電線群各々に対して巻き付けられることにより、前記電線群各々を結束するとともに前記電線群の分岐状態を保持することを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記電線結束具は、3本以上の前記長尺部材各々の先端に設けられ電線を挟んで保持する把持部を備え、
前記把持部各々が、前記電線群の分岐位置から3つ以上の方向に向かう前記電線群各々の電線を挟んで保持する、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記把持部は、前記長尺部各々における先端の一部の範囲を占め、折り返して曲げられることによって前記電線を内側に挟んで保持する部分である、請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記長尺部における前記把持部を形成する部分のうちの先端の部分が、さらに折り曲げられて形成されている、請求項3に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記把持部は、
前記長尺部各々の先端に固定され、可撓性を有する二股のアーム部と、
前記二股のアーム部各々の先端に形成され、相互に引っ掛かり合うことによって前記二股のアーム部をそれらの間に前記電線を挟む状態で保持する係合部と、を備える、請求項2に記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−120339(P2012−120339A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268319(P2010−268319)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】