説明

ワイヤーハーネスの保護構造体

【課題】コルゲートチューブを固定する取付けバンドがこのチューブの谷部に落ち込むことを防止しこのチューブとワイヤーハーネスとの相対位置を適切に保ちながら被取付け部材に取り付け可能なワイヤーハーネスの保護構造体を提供する。
【解決手段】ワイヤーハーネス8を保護するコルゲートチューブ7の外側に巻きつけてこのチューブを被取付け部材に固定する取付けバンド2を有し、取付けバンドはコルゲートチューブを締め付けるバンド部2とバンド部の基端部に設けられバンド部をこのチューブを締め付けた位置に固定するヘッド部4からなり、バンド部は、コルゲートチューブの山部と当接する内側面に摩擦係数の大きい滑り止め層5が形成され、バンド部及び滑り止め層は、このチューブの山部7aの幅と谷部7bの幅との和よりも広く形成され、ヘッド部にコルゲートチューブを被取付け部材に取り付けるクランプ部4が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスに外装されたコルゲートチューブを車体等の被取付け部材に取り付けるワイヤーハーネスの保護構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に配索するワイヤーハーネスの組立は、作業台上にーの配索経路に沿ってハーネス冶具を立設しておき、ワイヤーハーネスを構成する電線群を順次ハーネス治具に通して配索し、配索終了後に粘着テープ等を巻き付けて結束している。そして、ワイヤーハーネスは、組立時に例えば車体のパネルの突起部やエンジン等の加熱部に干渉する箇所を保護用のコルゲートチューブを外装して取付けバンドにより締め付け固定されている。
【0003】
コルゲートチューブは、外周面に環状をなす山部と谷部が長手方向に沿って交互に形成された可撓性を有するチューブで、例えば可撓性を有する合成樹脂製の内管の外周に可撓性を有する合成樹脂製の外管が一体的に設けられると共に、外管の外周面に環状かつ軸線方向(長手方向)に並んで設けられた突条が形成されて構成されたコルゲート管がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、取付けバンドとしては細長のバンド部の長手方向に沿って係止用の凹凸を形成し、そのバンド部の一端に当該バンド部を他端側から挿通させる四角形状の挿通孔を有するヘッド部を設け、このヘッド部の内部にバンド部の凹凸を係合させてヘッド部にバンド部をロックさせる係止歯を形成した結束バンドがある(例えば、特許文献2参照)。尚、取付けバンドとしては他にも種々提案されている(例えば、特許文献3乃至特許文献6参照)。
【特許文献1】特開2006−177496号公報(3頁、図1)
【特許文献2】実開平7−13756号公報(6頁乃至7頁、図1)
【特許文献3】特開平6−346907号公報(2頁乃至3頁、図1)
【特許文献4】特開2002−340105号公報(2頁乃至4頁、図1)
【特許文献5】特開2000−92648号公報(3頁乃至4頁、図2)
【特許文献6】特開2003−134648号公報(4頁乃至5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワイヤーハーネス組立時にワイヤーハーネスをコルゲートチューブに挿通して取付けバンドにより締め付け固定する場合、締付バンドがコルゲートチューブの山部を締め付けて固定する場合、隣り合う山部と山部との間(以下「谷部」という)を締め付けて固定する場合があり得る。
【0006】
前述したようにコルゲートチューブや取付けバンドは、合成樹脂部材で形成されているために表面が滑り易く、コルゲートチューブの山部を取付けバンドで締め付けてワイヤーハーネスに固定した場合、例えば多数のワイヤーハーネスを車両の組立現場に搬送する際やワイヤーハーネスを車両に組み付ける際に振動等の外力に起因にして山部からずれて谷部に落ち込む場合がある。
【0007】
より具体的には、コルゲートチューブの山部の幅と谷部の幅が同じ場合、又は谷部の幅が山部の幅よりも広く取付けバンドの幅が谷部の幅よりも狭い場合、山部を取付けバンドで締め付けた後バンド部に外力が加わったりした場合、バンド部が滑って谷部に落ち込むことがある。そして、取付けバンドが谷部に落ち込んだ場合、谷部の外径が山部の外径よりも小径であるために取付けバンドとの間に隙間が生じてワイヤーハーネスへの締付力が低下したり、或いは締付力が無くなり、ワイヤーハーネスがコルゲートチューブから長手方向にずれてしたりするおそれがある。
【0008】
ワイヤーハーネスは取付け対象である車体との相関関係で所定の長さに設定されているため、コルゲートチューブとワイヤーハーネスの相対位置がずれてしまうと、コルゲートチューブは車体の所定位置に取り付けることができるが、ワイヤーハーネスはコルゲートチューブからずれた分だけ一方の側が長くなって余る反面他方の側が短くなる。特にワイヤーハーネスに複数のコルゲートチューブが取り付けられている場合には、各コルゲートチューブとのずれ分が積分され、最悪の場合にはワイヤーハーネスの端末部分に具わったコネクタが車体側の所定位置に取り付けられている相手側コネクタに接続できなくなるおそれがある。このような場合、ワイヤーハーネスの配索をやり直す必要があり、流れ作業により車両の組立を行う現場では場合によってはラインを止めたり最終工程でワイヤーハーネスの配索作業を再度行ったりしなければならず、作業性の低下をきたすことになる。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、コルゲートチューブを締め付けて固定する取付けバンドがコルゲートチューブの谷部に落ち込んで締付力が低下することを防止することで、コルゲートチューブとワイヤーハーネスとの相対位置を適切な関係に保ちながらコルゲートチューブを被取付け部材に取り付けることができるワイヤーハーネスの保護構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係わるワイヤーハーネスの保護構造体は、
ワイヤーハーネスと、
前記ワイヤーハーネスを保護するコルゲートチューブと、
前記コルゲートチューブの外側に巻きつけられると共に前記コルゲートチューブを被取付け部材に固定する取付けバンドとを有するワイヤーハーネスの保護構造体において、
前記取付けバンドは可撓性を有する合成樹脂部材により形成され、前記コルゲートチューブを締め付けるバンド部と、該バンド部の基端部に設けられ前記バンド部を先端部から挿通させかつ前記コルゲートチューブを締め付けた位置に固定するヘッド部からなり、
前記バンド部は前記コルゲートチューブの山部と当接する内側面に外側面よりも摩擦係数の大きい滑り止め層が形成されており、
前記バンド部及び滑り止め層はその幅が前記コルゲートチューブの隣り合う山部の幅と谷部の幅との和よりも広く形成され、
前記ヘッド部には前記コルゲートチューブを被取付け部材に取り付けるためのクランプ部が一体に形成されていることを特徴としている。
【0011】
取付けバンドのバンド部をコルゲートチューブの山部に巻き付け、その先端部をヘッド部に挿通させて締め付け、この締め付けた位置に固定する。バンド部の幅は、コルゲートチューブの隣り合う山部の幅と谷部の幅との和よりも広く設定されていることにより、バンド部をコルゲートチューブにどのように巻き付けても常に山部に巻き付けられた状態を保ち、山部から外れて谷部に落ち込むことが防止される。これにより、バンド部による締付力の低下が防止される。
【0012】
また、取付けバンドのバンド部のコルゲートチューブと当接する面に可撓性を有し摩擦力が大きい滑り止め層を設けることによりバンド部の滑りを防止することができ、バンド部によりコルゲートチューブの山部をより有効に締め付けることが可能となると共に、コルゲートチューブとワイヤーハーネスとの相対位置を適切な関係に保ちながらコルゲートチューブを被取付け部材に容易に取り付けることができる。取付けバンドは、バンド部によりコルゲートチューブを締め付けた後ヘッド部に形成されているクランプ部により被取付け部材に固定される。
【0013】
また、ワイヤーハーネスがコルゲートチューブからずれることが防止されることで、車体に組み付けた際のワイヤーハーネスのずれが無くなり、正確に配索することが可能となり、ワイヤーハーネスの端末部に取り付けられたコネクタ等を車体側に配設されている機器のコネクタ等に接続することができ、組付作業の不具合を無くすことができると共に作業性の向上が図られる。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載のワイヤーハーネスの保護構造体は、請求項1に記載のワイヤーハーネスの保護構造体において、前記滑り止め層の幅は前記バンド部の本体より幅狭に形成されていて、前記ヘッド部の挿通孔には前記滑り止め層を遊嵌状態に挿通可能な膨出部が形成されていることを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、コルゲートチューブの外径が小さく滑り止め層がヘッド部のところまで到達するような場合であっても、ヘッド部の挿通孔と滑り止め層との接触を回避することができ、滑り止め層の損傷を防止することができる。よって滑り止め層を長めに形成することができ、滑り止め層による取付けバンドのコルゲートチューブ上における滑りを防止する効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、コルゲートチューブを締め付けて固定する取付けバンドがコルゲートチューブ上で位置ずれしたり、それによりコルゲートチューブの谷部に落ち込んで締付力が低下することを防止することができ、これによりコルゲートチューブとワイヤーハーネスとの相対位置を適切な関係に保ちながらコルゲートチューブを被取付け部材に取り付けることができるワイヤーハーネスの保護構造体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係わるワイヤーハーネスの保護構造体のコルゲートチューブをワイヤーハーネスに締め付けて被取付け部材に固定する取付けバンドの斜視図を示し、取付けバンド1は、バンド部2とヘッド部3とクランプ部4及びバンド部2の内側面に形成された滑り止め層5により形成されている。バンド部2は、可撓性を有する長い帯状をなし、基端部2aにヘッド部3が設けられている。バンド部2の上面(外側面)2cには基端部2a近傍から先端部2b近傍まで全幅に亘り係止爪2eが連続して形成されている。係止爪2eは、基端部2a側から先端部2b側に向かってテーパ状に立ち上がりその頂部から垂直に立ち下がる側面視略鋸歯状をなして形成されている。
【0018】
そして、バンド部2の幅Wは、図5に示す保護部材としてのコルゲートチューブ7の隣り合う山部7aの幅W1と谷部7bの幅W2との和(W1+W2)よりも広く(W>W1+W2)設定されている。これにより、バンド部2がコルゲートチューブ7のどの位置に巻き付けた場合でも常に少なくとも1つの山部7aに巻き付けることができ、かつ谷部7bに落ち込むことが防止される。
【0019】
ヘッド部3は、略四角形状をなし、バンド部2の基端部2aに連設して形成されており、バンド部2の長手方向に沿って該バンド部2が挿通可能な挿通孔3aが形成されている。挿通孔3aは、図3に示すように下面3bがバンド部2の上面2cと面一をなしており、挿通孔3aの上面3cにはバンド部2の係止爪2eと係合する係止爪3dが形成されている。
【0020】
係止爪3dは、バンド部2が後述するように係止爪2eを外側にしてコルゲートチューブ7を締め付けて先端部2bから挿通孔3aに挿通されたときに図3に2点鎖線で示す係止爪2eと係合してバンド部2をコルゲートチューブ7の締め付け位置に固定する。ヘッド部3のバンド部2と反対側の開口端3eの上部3gは、下面3hが略テーパ状をなして突き出しており、ベルト部2の先端部2bを挿通孔3aに挿入し易くなっている。尚、図3において係止爪3dは、1個形成した場合について記述したが、これに限るものではなく係止爪2eと同様に連続して複数形成しても良い。
【0021】
クランプ部4は、ヘッド部3の上面3iの開口端3e側寄りに設けられた略逆円錐台形状の基部4aと、この基部4aの上面中央に垂設された支持軸4bと、支持軸4bの曲面をなす上端部4cから基部4aに向けて図2に示すように左右両側に略矢尻状(末広がり)をなして広がる係止部4dとにより形成されている。このクランプ部4は、上端部4cから左右の係止部4dを縮径するようにして図示しない被取付け部材の取付け穴に挿入され、基部4aが前記取付け穴の表側の周縁部に当接したときに左右の係止部4dの下端が前記取付け穴の裏側の周縁部に当接して前記被取付け部材に固定される。
【0022】
この取付けバンド1は、可撓性を有する例えばポリプロピレン(PP)等の合成樹脂部材により一体に形成されている。従って、バンド部2は、可撓性を有しかつ高い強度を有しており、コルゲートチューブ7に容易に巻き付けることができると共に強固に締め付け固定することが可能である。
【0023】
そして、バンド部2の下面(内側面)2dには、基端部2a近傍からコルゲートチューブ7の山部7aの外径、即ち外周の長さに応じて適宜の長さに亘り滑り止め層5が設けられている。この滑り止め層5は、バンド部2よりも可撓性を有しかつ摩擦係数の大きい部材、例えばウレタンゴム、二トリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等のゴム部材により形成されており、バンド部2の下面2dに貼着されている。従って、バンド部2は、バンド部2本体の硬い層とバンド部2よりも柔らかい滑り止め層5の柔軟な層との二重構造をなしている。尚、バンド部2の内側面に滑り止め層を一体に形成しても良い。ここで、滑り止め層5の幅はバンド部2本体の幅と略同一としている。
【0024】
滑り止め層5は、バンド部2よりも可撓性を有することで、バンド部2の可撓性を損なうことなくコルゲートチューブ7に巻き付けることができる。これにより、バンド部2が合成樹脂部材により形成された表面が滑り易いコルゲートチューブ7の山部7aに当接して締め付けられた場合でもコルゲートチューブ7の長手方向に滑ることが有効に防止される。このようにして取付けバンド1が形成されている。
【0025】
コルゲートチューブ7は、図5に示すように可撓性を有する合成樹脂部材により形成されたチューブの外周面に環状の山部7aと環状の谷部7bとが長手方向(軸方向)に沿って交互に形成されている。そして、山部7aの幅がW1、谷部7bの幅がW2とされている。山部7aの幅W1と谷部7bの幅W2は、仕様により適宜の幅に設定されており、同じ幅の場合(W1=W2)もあり、異なる場合(W1<W2、W1>W2)もある。尚、図5においては山部7aの幅W1が谷部7bの幅W2よりも僅かに狭い場合について描いてある。
【0026】
以下に上記構成の取付けバンドの使用例を説明する。図4及び図5に示すように所定の長さに設定されたコルゲートチューブ7に所定本のワイヤーハーネス8を挿通し、ワイヤーハーネス8の所定位置において図4に示すように取付けバンド1のバンド部2を、滑り止め層5をコルゲートチューブ7の山部7aに当接させ、係止爪2eを外側にして巻き付け、その先端部2bをヘッド部3の開口端3eから挿通孔3aに挿入し、開口端3fから引き出す。
【0027】
次いで、バンド部2の先端部2bを引っ張りコルゲートチューブ7の山部7aを締め付ける。バンド部2の係止爪2eは、バンド部2を引っ張るに伴い図3に2点鎖線で示すようにヘッド部3の係止爪3dの下を通り抜け、バンド部2の引っ張り操作を止めたときに係止爪2eが係止爪3dに係止されて当該位置に固定される。バンド部2の幅Wは、コルゲートチューブ7の山部7aの幅W1と谷部7bの幅W2との和(W1+W2)よりも広く設定されているためどのように巻き付けても必ず山部7aに位置し、かつ谷部7bに落ち込むことが防止される。
【0028】
即ち、バンド部2は、図5に実線で示すように谷部7bを架橋して両側の山部7aに巻き付けられる場合もあり、2点鎖線2’で示すようにバンド部2の略中央部分が1つの山部7aに巻き付けられる場合もある。しかしながら、何れの場合においてもバンド部2は必ず山部7aに位置して谷部7bに落ち込むことが防止される。
【0029】
しかも、バンド部2のコルゲートチューブ7の山部7aと当接する下面2dには滑り止め層5が設けられているためにバンド部2に外力が加わった場合でもバンド部2が山部7aに対して滑ることが防止される。尚、このとき山部7aが滑り止め層5に僅かに食い込むが図では省略して描いてある。これにより、コルゲートチューブ7をワイヤーハーネス8の所定位置に締め付けて固定し、かつワイヤーハーネス8がコルゲートチューブ7に対してずれることを防止することができる。尚、取付けバンド1は、コルゲートチューブ7を締め付けた後ヘッド部3から突出しているベルト部2を適宜の長さに切断することで、取り扱いや使い勝手を良くすることができる。
【0030】
尚、取付けバンド1の変形例として、図6に示すように、滑り止め層5の幅をバンド部2本体の幅より幅狭としておくとともに、ヘッド部3の挿通孔3aに膨出部3jを形成しておき、滑り止め層5が膨出部3j内で遊嵌状態に挿通される態様(クリアランスを設けた態様)とすることも可能である。
【0031】
そのためには、膨出部3jは、高さが滑り止め層5の高さより高く、幅が滑り止め層5よりは広いがバンド部2本体の幅よりは狭くなるように設定しておく。また、この構成においても滑り止め層5の幅は(W1+W2)よりも広く形成されている。従って、バンド部2本体の幅はそれより当然広く形成されていることになる。
【0032】
このような構成によれば、コルゲートチューブ7の外径が小さく滑り止め層5がヘッド部3のところまで到達する態様となるような場合であっても、挿通孔3aと滑り止め層5との接触を回避でき、滑り止め層5の損傷を防止することができる。よって滑り止め層5を長めに形成することができ、滑り止め層5による取付けバンド1のコルゲートチューブ7上における滑りを防止する効果を高めることができる。
【0033】
図7は、本発明に係わるワイヤーハーネスの保護構造体の取付けバンドの変形例を示し、取付けバンド11のバンド部12と滑り止め層15の幅を広く形成したものでコルゲートチューブ17の複数例えば4個の山部17aに跨る幅とされている。尚、図7において取付けバンド11は、図1に示す取付けバンド1と同様の構成とされているがバンド部12と滑り止め層5についてのみ描いてある。そして、山部17aの頂部の幅をW3とし、谷部17bの開口部の幅をW4とした場合、バンド部12及び滑り止め層15の幅W’を、W’>(4×W3+3×W4)に設定してある。
【0034】
これにより、取付けバンド12のバンド部12をどのようにコルゲートチューブ17に巻き付けた場合でもバンド部12が隣り合う4つの山部17aを締め付けると共に各山部17aが滑り止め層15に僅かに食い込む。これにより、バンド部12が谷部17bに落ち込むことが有効に防止される。
【0035】
このようにバンド部12と滑り止め層15の幅を広く形成してコルゲートチューブ17の4個の山部17aを締め付けることにより、コルゲートチューブ17の締付力が大きくなりワイヤーハーネスとコルゲートチューブとの相対位置関係のずれをより有効に防止することが可能となる。更に、滑り止め層15の摩擦力の増加によりバンド部12のコルゲートチューブ17に対する滑りが有効に防止される。
【0036】
図8は、図示しないコルゲートチューブに取り付けられた取付けバンドの隣り合う2つのクランプ部4の間隔(クランプ間ピッチ)Aに対するワイヤーハーネスの撓みの一例を示す。直線Iはワイヤーハーネス8が撓みなしで配策された場合を示し、曲線II,II’は、ワイヤーハーネス8の撓みBが小さく僅かに撓んだ場合(例えば、A±3mm程度)を示す。また、点線で示す曲線III,III’は、ワイヤーハーネス8の撓みBが大きい場合(例えば、A±5mm程度)を示す。
【0037】
クランプ間ピッチAのばらつきが大きくなるほどワイヤーハーネス8の撓みが大きくなり、例えばクランプ間ピッチAが200mm±5mmの場合、撓みBは約±20mm生じる。このように撓みBが大きくなると曲線IIIに示すように例えば車両のエンジンなどの発熱部やパネルの突起部などの干渉物18とワイヤーハーネス8との接触の問題が生ずる。更に、この撓みBがワイヤーハーネス8の全長に亘り積分されると、前述したようにワイヤーハーネス8の端末部分に具わったコネクタが車体側の所定位置に取り付けられている相手側コネクタに接続できなくなるおそれがある。
【0038】
しかしながら、本願発明のワイヤーハーネスの保護構造体によれば、ワイヤーハーネスとコルゲートチューブとの相対位置関係のずれを有効に防止することが可能であり、図8の直線Iで示す配策に近い配策が可能となりワイヤーハーネス8の撓みを略無くすことができる。
【0039】
以上説明したように本発明によると、コルゲートチューブを締め付けて固定する取付けバンドがコルゲートチューブの谷部に落ち込んで締付力が低下することを防止することができ、これにより、コルゲートチューブとワイヤーハーネスとの相対位置を適切な関係に保ちながらコルゲートチューブを被取付け部材に取り付けることができる。
【0040】
また、取付けバンドのバンド部のコルゲートチューブと当接する内側面に摩擦係数が大きい滑り止め層を形成することによりバンド部の滑りを防止することができ、コルゲートチューブの山部をより有効に締め付けることが可能となると共にコルゲートチューブとワイヤーハーネスとの相対位置を適切な関係に保つことができる。
【0041】
また、取付けバンドのバンド部でコルゲートチューブを締め付けた後ヘッド部に一体に形成したクランプ部により被取付け部材に固定することで、コルゲートチューブを被取付け部材に容易に固定することができる。
【0042】
また、コルゲートチューブにワイヤーハーネスを挿通し所定箇所にて取付けバンドによりコルゲートチューブにワイヤーハーネスを固定した後バンド部が谷部に落ち込むことが防止されることで、締付力の低下が防止されワイヤーハーネスがコルゲートチューブからずれることが防止される。この結果、ワイヤーハーネスを車体に正確に配索することが可能となり、ワイヤーハーネスの端末部に取り付けられたコネクタ等を車体側に配設されている機器の相手側のコネクタ等に接続することができ、組付作業の不具合を無くすことができると共に作業性の向上が図られる。
【0043】
更にワイヤーハーネスの撓みが防止されることで、干渉物に当たることが防止され、ワイヤーハーネスの損傷等が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係わるワイヤーハーネスの保護構造体の取付けバンドの斜視図である。
【図2】図1に示した取付けバンドの正面図である。
【図3】図1に示した取付けバンドの要部断面図である。
【図4】図1に示した取付けバンドの使用状態を示す説明図である。
【図5】図4に示した取付けバンドの使用状態における取付けバンドの矢線V―Vに沿う断面図である。
【図6】本発明に係わるワイヤーハーネスの保護構造体の変形例を示し、コルゲートチューブを締め付けた状態におけるバンド部及び滑り止め層とヘッド部開口端近傍の正面図である。
【図7】本発明に係わるワイヤーハーネスの保護構造体の変形例を示し、コルゲートチューブを締め付けた状態の取付けバンドの断面図である。
【図8】コルゲートチューブに取り付けられた取付けバンドの隣り合う2つのクランプ部の間隔(クランプ間ピッチ)Aに対するワイヤーハーネスの撓みBの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 コルゲートチューブの取付けバンド
2 バンド部
2a 基端部
2b 先端部
2c 上面
2d 下面
2e 係止爪
3 ヘッド部
3a 挿通孔
3b 下面
3c 上面
3d 係止爪
3e,3f 開口端
3g 開口端3eの上部
3h 上部3gの下面
3i 上面
3j 膨出部
4 クランプ部
4a 基部
4b 支持軸
4c 上端部
4d 係止部
5 滑り止め層
7 コルゲートチューブ
7a 山部
7b 谷部
8 ワイヤーハーネス
11 取付けバンド
12 バンド部
12e 係止爪
15 滑り止め層
W,W’ バンド部の幅
W1,W3 コルゲートチューブの山部の幅
W2,W4 コルゲートチューブの谷部の幅
A クランプ間ピッチ
B 撓み
I 直線(ワイヤーハーネス)
II,II’,III,III’ 曲線(ワイヤーハーネス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスと、
前記ワイヤーハーネスを保護するコルゲートチューブと、
前記コルゲートチューブの外側に巻きつけられると共に前記コルゲートチューブを被取付け部材に固定する取付けバンドとを有するワイヤーハーネスの保護構造体において、
前記取付けバンドは可撓性を有する合成樹脂部材により形成され、前記コルゲートチューブを締め付けるバンド部と、該バンド部の基端部に設けられ前記バンド部を先端部から挿通させかつ前記コルゲートチューブを締め付けた位置に固定するヘッド部からなり、
前記バンド部は前記コルゲートチューブの山部と当接する内側面に外側面よりも摩擦係数の大きい滑り止め層が形成されており、
前記バンド部及び滑り止め層はその幅が前記コルゲートチューブの隣り合う山部の幅と谷部の幅との和よりも広く形成され、
前記ヘッド部には前記コルゲートチューブを被取付け部材に取り付けるためのクランプ部が一体に形成されていることを特徴とするワイヤーハーネスの保護構造体。
【請求項2】
前記滑り止め層の幅は前記バンド部の本体より幅狭に形成されていて、前記ヘッド部の挿通孔には前記滑り止め層を遊嵌状態に挿通可能な膨出部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のワイヤーハーネスの保護構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−168932(P2008−168932A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5231(P2007−5231)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】