説明

ワイヤーハーネス用保護材料及びワイヤーハーネス

【課題】熱成形性を有する不織布を用いたワイヤーハーネス用保護材料において、ワイヤーハーネス保護材として利用される場合に、電線束との間の接着力を更に向上せしめることや、ワイヤーハーネス保護材の強度等を向上させたりすること等の、各種の機能を付加することが可能である、ワイヤーハーネス用保護材料およびワイヤーハーネスを提供する。
【解決手段】熱成形性を有する不織布2の表面に、接着樹脂層3からなる機能付与層を積層してシート状に形成してワイヤーハーネス用保護材料1を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス用保護材料及びワイヤーハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や電化製品を中心に高性能化、高機能化が進められている。自動車や電化製品等の様々なエレクトロニクス設備を正確に作動させるため、自動車や電化製品等の内部配線には、複数の電線が使用されている。一般に、これら複数の電線は、ワイヤーハーネスの形態で使用される。
【0003】
ワイヤーハーネスは、複数の電線からなる電線束が予め配線に必要な形態に組み上げられている。例えばワイヤーハーネスは、必要な分岐が形成され、その端末へのコネクタ付け等が施され、ワイヤーハーネス保護材が電線束の外周に巻装されて形成されている。
【0004】
上記ワイヤーハーネス保護材は、シート状のワイヤーハーネス用保護材料が、凹溝状、チューブ状等の種々の形状に形成されているものが用いられ、電線束の周囲を被覆することで所定の形状に形成される。
【0005】
ワイヤーハーネス保護材は、ワイヤーハーネス用保護材料を用いて電線束の所定の部分の周囲を被覆することで所定の形状に形成されている。従来、ワイヤーハーネス用保護材料として、例えば樹脂等の堅い材料で成形された断面半円状の一対の保護部材を用いることが公知である(例えば特許文献1、段落〔0002〕参照)。
【0006】
また特許文献1には、粘着剤層が設けられた保護シートを用いて、ワイヤーハーネス保護材を形成することが公知である(特許文献1、請求項1参照)。上記保護シートはゴム、樹脂等の取付け層と保護層とからなる。上記取付け層は粘着面を接着面とし、他面には保護層が接着剤等で一体的に取付けられている。
【0007】
しかし、上記従来の保護部材の場合、予め所定の形状に形成する必要があり、形状維持性を高くすると電線との密着性が低下するという問題があった。また、上記従来の保護シートの場合、電線や成形品の保護部材などとの密着性を良くすることができるが、形状維持性が低く、粘着剤層を形成する必要や、接着剤等を用いて接着する必要があるという問題があった。
【0008】
本出願人等は、上記問題点を解決するために、熱融着性繊維と該熱融着性繊維よりも融点の高い熱可塑性繊維との2つの短繊維を含有する不織布からなる形状維持部材を用いたワイヤーハーネスの製造方法を先に提案している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−247070号公報
【特許文献2】特開2010−267412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献2に記載の特定の不織布シートをワイヤーハーネス用保護材料として用い、所定の形状に熱成形された形状維持部材(ワイヤーハー
ネス保護材)は、成形性、形状維持性等の特性に優れたものであった。しかしながら、以下の問題点があることが判明した。
【0011】
例えば、保護材と電線束との間の接着強度について更に高い接着強度が求められることがあるが、熱融着性繊維のみで、接着強度を向上させるのは限界があった。また、保護材の引張強度等を更に向上させる必要がある場合、不織布の強度を上げるだけでは引張強度等に限界がある。
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、熱成形性を有する不織布を用いたワイヤーハーネス用保護材料において、ワイヤーハーネス保護材として利用される場合に、電線束との間の接着力を更に向上せしめることや、ワイヤーハーネス保護材の強度等を向上させたりすること等の、各種の機能を付加することが可能である、ワイヤーハーネス用保護材料およびワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明のワイヤーハーネス用保護材料は、熱成形性を有する不織布と、前記不織布の表面に積層されている機能付与層を有することを要旨とするものである。
【0014】
上記ワイヤーハーネス用保護材料において、前記不織布が、熱融着繊維と該熱融着繊維よりも高融点の熱可塑性樹脂繊維を含むことが好ましい。
【0015】
上記ワイヤーハーネス用保護材料において、前記機能付与層が、接着樹脂層から構成することができる。
【0016】
上記ワイヤーハーネス用保護材料において、前記接着樹脂層が、前記不織布の繊維よりも低融点の熱可塑性樹脂からなるように構成することができる。
【0017】
上記ワイヤーハーネス用保護材料において、前記接着樹脂層が、硬化温度が前記不織布の融点よりも低い温度の熱硬化性樹脂から構成することができる。
【0018】
上記ワイヤーハーネス用保護材料において、前記機能付与層が、金属膜とすることができる。
【0019】
上記ワイヤーハーネス用保護材料において、前記機能付与層が、ガラス繊維シートとすることができる。
【0020】
本発明のワイヤーハーネスは、上記のワイヤーハーネス用保護材料により電線束の周囲が被覆されていることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のワイヤーハーネス用保護材料は、熱成形性を有する不織布と、前記不織布の表面に積層されている機能付与層を有することにより、ワイヤーハーネス保護材を形成する際に、熱により所定の形状に成形することが可能であると共に、機能付与層により、例えば接着性向上や強度向上等の各種機能を付与することが可能である。
【0022】
また本発明のワイヤーハーネスは、上記のワイヤーハーネス用保護材料を用いたことにより、各種の形状に保護材を形成するのが容易であり、保護材の接着性や強度等に優れたものとすることが、容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のワイヤーハーネス用保護材料の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のワイヤーハーネスの一例の外観を示す斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明のワイヤーハーネスの態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明のワイヤーハーネス用保護材料の一例を示す断面図である。図1に示すワイヤーハーネス用保護材料(以下、単に保護材料ということもある)1は、熱成形性を有する不織布2の表面に、接着樹脂層3からなる機能付与層が積層されてシート状に形成されている。
【0025】
不織布2の熱成形性とは、加熱により所定の形状に成形することが可能な熱可塑性を有していればよい。図1に示す保護材料1の不織布2は、熱可塑性樹脂繊維からなる短繊維を用いることで熱成形性が付与されている。
【0026】
不織布2の短繊維は、目付100〜2000g/m、厚み0.5〜30mmのものが用いられる。不織布2の短繊維は、繊維径1〜40デニール、繊維長30〜120mmである。繊維の形状は、円筒型、中空型、サイドバイサイド型、芯鞘型等が挙げられる。不織布2は、ニードルパンチやスパンボンド法で作製することができる。
【0027】
図1の保護材料1の不織布2は、融点の異なる2種類の熱可塑性樹脂繊維の短繊維を混綿させたものを用いるのが、形状維持性が良好となる点から好ましい。不織布2の熱可塑性樹脂繊維は、具体的には第一の繊維として(1)熱融着性を有する熱融着繊維と、第二の繊維として(2)前記熱融着繊維よりも融点の高い熱可塑性樹脂繊維を含む。すなわち上記(1)熱融着繊維とは、(2)の熱可塑性樹脂繊維と比較して融点が低い熱可塑性樹脂繊維のことである。
【0028】
このように不織布2が、熱融着繊維と、該熱融着繊維よりも融点の高い熱可塑性樹脂繊維とを含むことにより、不織布2を熱可塑性樹脂繊維のみから構成した場合と比較して、融点の低い熱融着繊維により熱成形性が良好となるので、成形後の形状保持性に優れたワイヤーハーネス保護材を形成することができる。
【0029】
上記(1)熱融着繊維の熱可塑性樹脂としては、所定の融点を有する熱可塑性樹脂の短繊維であれば特に限定されず、種々の短繊維を用いることができる。(1)熱融着繊維は、融点が200℃以下の熱可塑性樹脂繊維を用いることが好ましく、更に好ましくは融点が160℃以下の熱可塑性樹脂繊維である。
【0030】
このような(1)熱融着繊維としては、例えば、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維が挙げられる。
【0031】
また上記(2)熱融着繊維は、融点の高い熱可塑性樹脂繊維の周囲を融点の低い熱融着樹脂からなるバインダ層により被覆したバインダ繊維を用いてもよい。上記熱融着樹脂としては、例えば、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
【0032】
上記バインダ繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(融点:約250℃)の外周がポリエチレンイソフタレートとPETとの共重合体(融点:約110〜160℃)で被覆されたものが好ましい材料として挙げられる。またこのバインダ繊維を(1)熱融着繊維として用いた場合には、(2)熱可塑性樹脂繊維として、例えばPET繊維(融点:約250℃)を用いることができる。
【0033】
上記(2)熱可塑性樹脂繊維としては、上記熱融着繊維よりも融点が高い短繊維であれば特に限定されず使用することができる。(2)熱可塑性樹脂繊維は、例えば、融点が200℃以上の熱可塑性樹脂繊維を用いることが好ましく、更に好ましくは融点が250℃以上の熱可塑性樹脂繊維である。熱可塑性樹脂繊維の融点は、上記熱融着繊維の融点に対し、30℃以上高く、好ましくは50℃以上高いことであり、更に好ましくは100℃以上高いことである。
【0034】
このような熱可塑性樹脂繊維としては、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、アクリル繊維、トリアセテート繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維等が挙げられる。
【0035】
不織布2の上記(1)熱融着繊維と(2)熱可塑性樹脂繊維の混合比は、熱融着繊維:熱可塑性樹脂繊維=5:95〜95:5の範囲であるのが好ましい。その際の熱融着樹脂成分:熱可塑性樹脂成分の混合比が、1:99〜50:50の範囲であるのが好ましい。
【0036】
不織布2は、短繊維として、更に(3)他の熱可塑性樹脂繊維を含むように構成することができる。(3)他の熱可塑性樹脂繊維としては、難燃性を有する繊維、撥水性を有する繊維、耐薬品性を有する繊維等が挙げられる。
【0037】
不織布2の表面に形成される接着樹脂層3は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等の接着性樹脂を用いることができる。接着性樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合は、不織布に用いられる熱可塑性樹脂繊維よりも融点の低い低融点の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂の接着性樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂や、ポリエステル、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0038】
また接着性樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合は、硬化温度が不織布に用いられる熱可塑性樹脂繊維の融点よりも硬化温度の低いものを用いることが好ましい。熱硬化性樹脂の接着性樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0039】
接着樹脂層3は、不織布2の表面に接着性樹脂からなるシートを積層する方法により形成することができる。また接着樹脂層3は、熱可塑性樹脂のパウダーを不織布表面に散布してコーティングする、所謂パウダー樹脂散布法等で形成してもよい。また接着樹脂層は、接着性樹脂の組成物を不織布表面に塗工することにより形成してもよい。接着樹脂層3の目付量(塗工量)は、不織布目付の1〜30質量%とするのが好ましい。
【0040】
機能付与層として接着樹脂層3を形成することにより、更に接着強度の優れたワイヤーハーネス保護層が得られる。例えば、不織布に熱融着繊維を使用しない場合でも、ワイヤーハーネス保護材の接着を行うことができる。また不織布に熱融着繊維を用いた場合には、ワイヤーハーネス保護材の接着強度が更に向上し、良好な接着性が得られる。
【0041】
機能付与層として、接着樹脂層3以外に、引張り強度等の強度向上のための樹脂層を形成してもよい。また機能付与層として、アルミニウム薄膜等の金属膜を形成することができる。不織布2の表面に機能付与層として金属膜を形成した場合、ワイヤーハーネス保護材の引張り強度を向上せしめることができる。例えば機能付与層としてアルミニウム薄膜を形成した場合、その薄膜の厚さは0.01〜0.3mmであるのが好ましい。アルミニウム薄膜を不織布2に積層する場合、アルミニウム薄膜を不織布に重ね加熱して熱融着繊維と溶着することで積層一体化させることができる。このように不織布が熱融着繊維を含有する場合は、接着剤を用いずに直接加熱するだけで金属膜等の機能付与層を積層することができる。
【0042】
また機能付与層として、ガラス繊維シートを用いることができる。不織布2の表面に機能付与層としてガラス繊維シートを積層した場合、ワイヤーハーネス保護材の強度を向上させたり、難燃性を向上させたりすることが可能である。
【0043】
図2は、本発明のワイヤーハーネスの一例の外観を示す斜視図である。図2に示すように本発明のワイヤーハーネス4は、複数の電線を束にした電線束5の周囲がワイヤーハーネス保護材6により被覆されている。ワイヤーハーネス保護材6は、上記の不織布2に機能付与層として接着樹脂層3が設けられた保護材料1のシートを2枚用いて形成したものである。
【0044】
図2に示すワイヤーハーネス4は、例えば、上下に二分割される上型と下型からなる所定の成形型を用い、各成形型に上記保護材料1のシートを接着樹脂層が対向するように配置し、型締めして2枚の前記保護材料1、1が電線束5を挟んでいる状態で加熱して成形を行う。
【0045】
成形の際、電線束5の外側に突出している保護材料1の両端部は、上下の保護材料1,1の接着樹脂層どうしを接着させる。電線束5の外表面と保護材料1の接着樹脂層が接合し、図2に示すように電線束を覆う部分とら両端の接合部とからなる形状に成形されたワイヤーハーネス4が得られる。
【0046】
保護材料1は、不織布2が熱成形性を有するので、成形型により容易に所定の形状に成形することができる。また保護材料1の不織布2は、熱融着繊維を有するため、より低い成形温度で成形することができ、成形後の形状保持性が優れている。更にワイヤーハーネス4は、保護材料1が機能付与層として、接着樹脂層3が不織布1の表面に積層されているので、接着樹脂層3同士の接着力、及び電線束5と保護材料1との間の接着力が良好であり、ワイヤーハーネス保護材6の接着強度が優れている。
【0047】
本発明のワイヤーハーネス4は、上記の形態に限定されず、ワイヤーハーネス保護材の外形形状、ワイヤーハーネス保護材の接合部の形状、保護材料の接着様式等任意の形態に形成することができる。
【0048】
図3(a)〜(c)は、本発明のワイヤーハーネスの態様を示す断面図である。図3(a)に示すワイヤーハーネス4は、1枚の保護材料1のシートを用いて、電線束5の周囲を巻回し、保護材料1の両端部が当接するように、所定の成形型等を用いて曲げ加工を施して、当接部分を熱融着等で接着することで構成されている。また、ワイヤーハーネス4の外観形状は、長手方向と交差する断面が、図3(a)に示すように、略四角形に形成されている。
【0049】
図3(b)に示すワイヤーハーネス4は、1枚のワイヤーハーネス保護材料1を用いて、端部がオーバーラップして重なるように巻回した状態で成形型等で加熱、加圧して積層部分を熱融着して接着し一体化し、所定の形状に形成されているものである。このワイヤーハーネス4の外観形状は、長手方向と交差する断面が、図3(b)に示すように、略四角形に形成されている。
【0050】
また同図(c)に示すワイヤーハーネス4は、2枚の保護材料1のシートを用いて、電線束5を上下から挟んで成形を行い、上下の保護材料1のシートを電線束5と接着一体化したものである。ワイヤーハーネス4は、電線束5の周囲が断面円形となるように形成されている。
【0051】
上記の実施形態のように、保護材料1として二種類以上の短繊維を混在させて構成した場合、その中でも低い軟化点の熱可塑性樹脂が、融点以上で溶融することにより、不織布の繊維どうしを固着させることができる。それにより、不織布表面や、内部を硬化させることで、ワイヤーハーネス保護材6を固定する際に、従来必要であったテープを使用せずに固定することが可能である。更にワイヤーハーネス保護材6は、形状保持、電線保護といった保護材としての特性が得られる。また、多くの保護材が必要な場所でも、保護材料のシートに種々の機能を持たせることができることから、適宜の機能を保護材料に持たせておけば、ワイヤーハーネス保護材を組み付ける際の工数削減が見込まれる。更に多重外装の部品を削減可能であるから、ワイヤーハーネスの軽量化にも寄与することができる。
【0052】
以上、本発明の各種実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態では2種類の短繊維を含む不織布を用いた例を示したが、不織布として融点の異なる3種類以上の繊維を含むように構成してもよい。
【0054】
また図1に示す保護材料1は、不織布2の片面に接着樹脂層3を片面にのみ形成したものであるが、不織布2の両面に接着樹脂層を設けてもよい。すなわち本発明の保護材料は、機能付与層を、不織布2の片面に形成しても、不織布2の両面に形成してもいずれでも良い。
【0055】
本発明のワイヤーハーネスは、自動車用ワイヤーハーネス等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例、比較例を示す。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
実施例1
ポリエチレンテレフタレート短繊維(PET短繊維:融点250℃)を用いた不織布の表面に、接着樹脂層を目付30g/mで形成した保護材料のシートを用いて、180℃でプレス成形して円筒形状のワイヤーハーネス保護材を作製した。尚、不織布のポリエチレンテレフタレートの短繊維は目付量200g/mであり、接着樹脂層は、樹脂として、ポリアミド樹脂を用いて、目付量30g/mになるように塗工した。得られたワイヤーハーネス保護材の引張り強度、接着強度、形状保持性について評価した。評価結果を表1に示す。尚、評価方法は下記の通りである。
【0058】
〔引張り強度の試験方法と評価〕
JIS K6251の引張り試験方法に準じて、試験体として3号ダンベルを用いて引張り速度10mm/分で引張り試験を行った。
【0059】
〔接着強度の試験方法と評価〕
JIS K6854の接着試験方法に準じて、100mm/分の引張り速度で試験を行った。
【0060】
〔形状保持性〕
円筒状に成形したサンプルの片方の端部を固定し他方の端部を固定せず水平に保持した状態で空中に3秒間保持し、形状が変化しなかった場合を○とし、机と平行に見た時、空中上の成形サンプルのたわみが、10°以下の場合を△とし、10°超の場合を×とした。
【0061】
実施例2
実施例1で用いた不織布を、ポリエチレンテレフタレート短繊維(PET短繊維:融点250℃)と、PET繊維(融点250℃)の周囲をポリエチレンイソフタレート樹脂とPET樹脂の共重合体(融点110℃)で被覆した短繊維(バインダ繊維)を、PET短繊維:バインダ繊維=90:10(質量比)で混綿した不織布を用い、接着樹脂層を目付10g/mとした保護材料のシートを用いた以外は、実施例1と同様にしてワイヤーハーネス保護材を作製して特性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0062】
実施例3
実施例2で用いた接着樹脂層の目付量を、30g/mとした保護材料のシートを用いた以外は、実施例2と同様にしてワイヤーハーネス保護材を作製して特性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0063】
実施例4
実施例3で用いた不織布のPET短繊維とバインダ繊維の配合比を、PET短繊維:バインダ繊維=80:20(質量比)で混綿した不織布を用いた以外は、実施例3と同様にしてワイヤーハーネス保護材を作製して特性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0064】
実施例5
実施例3で用いた不織布のPET短繊維とバインダ繊維の配合比を、PET短繊維:バインダ繊維=70:30(質量比)で混綿した不織布を用いた以外は、実施例3と同様にしてワイヤーハーネス保護材を作製して特性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0065】
実施例6
実施例2の接着樹脂層の目付量を、50g/mとした保護材料のシートを用いた以外は、実施例2と同様にしてワイヤーハーネス保護材を作製して特性を評価した。評価結果を1に示す。
【表1】

【0066】
比較例1
比較のために実施例1で用いた保護材料を、接着樹脂層を設けない不織布のみからなる保護材料とした以外は実施例1と同様にしてワイヤーハーネス保護材を作製して特性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0067】
比較例2
実施例2で用いた保護材料を、接着樹脂層を設けない不織布のみからなる保護材料とした以外は実施例2と同様にしてワイヤーハーネス保護材を作製して特性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0068】
比較例3
比較例2で用いた保護材料の不織布を、PET短繊維:バインダ繊維=55:45とした以外は比較例3と同様にして保護材料とした以外は比較例2と同様にしてワイヤーハーネス保護材を作製して特性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
表1に示すように、実施例1〜6は、いずれも接着樹脂層を有するものであるから接着強度が高く接着性が良好であった。また、不織布としてPET短繊維とバインダ繊維を混合したものを用いた実施例2〜7は、PET短繊維のみからなる不織布を用いた実施例1と比較して形状保持性が特に良好であった。
【0071】
これに対し、比較例1は実施例1に対し、接着樹脂層を有するものではないので、上記の成形条件では、接着強度が発現せず、更に形状保持性も有していなかった。また比較例2は実施例2と比較して、接着樹脂層を有していないことにより、接着強度、形状保持性のいずれも低いものであった。比較例3は比較例2に対し、更に不織布のバインダ繊維の割合を増やしたことにより形状保持性が改良されたが、接着樹脂層を有していないため、接着強度をこれ以上向上させるのは困難である。
【0072】
実施例7
PET短繊維:バインダ繊維=55:45の不織布の表面に、アルミシート材を積層した保護材料のシートを用いて、実施例1と同様にワイヤーハーネス保護材を作製して特性を評価した。評価結果を表3に示す。尚、不織布の短繊維は目付量200g/mである。アルミシート材は、東洋アルミニウム社製のアルミ箔(A1050、厚みt=0.03mm)を用いた。
【0073】
比較例4
実施例7で用いた保護材料の代わりに、アルミシート材を積層しない不織布のみからなる保護材料を用いた以外は実施例7と同様にしてワイヤーハーネス保護材を作製して特性を評価した。評価結果を表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
表3に示すように、実施例7は比較例4と比較して、不織布にアルミシート材が積層された保護材料を用いたことにより、引張強度の高いワイヤーハーネス保護材が得られた。
【符号の説明】
【0076】
1 ワイヤーハーネス用保護材料
2 不織布
3 接着樹脂層(機能付与層)
4 ワイヤーハーネス
5 電線束
6 ワイヤーハーネス保護材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱成形性を有する不織布と、前記不織布の表面に積層されている機能付与層を有することを特徴とするワイヤーハーネス用保護材料。
【請求項2】
前記不織布が、熱融着繊維と該熱融着繊維よりも高融点の熱可塑性樹脂繊維を含むことを特徴とする請求項1項記載のワイヤーハーネス用保護材料。
【請求項3】
前記機能付与層が、接着樹脂層であることを特徴とする請求項1又は2記載のワイヤーハーネス用保護材料。
【請求項4】
前記接着樹脂層が、前記不織布の繊維よりも低融点の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項3記載のワイヤーハーネス用保護材料。
【請求項5】
前記接着樹脂層が、硬化温度が前記不織布の融点よりも低い温度の熱硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項3記載のワイヤーハーネス用保護材料。
【請求項6】
前記機能付与層が、金属膜であることを特徴とする請求項1又は2記載のワイヤーハーネス用保護材料。
【請求項7】
前記機能付与層が、ガラス繊維シートであることを特徴とする請求項1又は2記載のワイヤーハーネス用保護材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のワイヤーハーネス用保護材料により電線束の周囲が被覆されていることを特徴とするワイヤーハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−5623(P2013−5623A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135343(P2011−135343)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】