説明

ワイヤーハーネス用締結具

【課題】何れの方向に引き離し力が作用しても容易に分断させることができてワイヤーハーネスを車体から取り外すことができ、同時にワイヤーハーネスからバンドを取り外すこともできるワイヤーハーネス用締結具を提供する。
【解決手段】ワイヤーハーネスを結束するための可撓性を有するバンド11と、バンド11の基端部に一体に連設され、バンド11の先端側を挿通させて抜け止め状に係止させる挿通係止孔12を貫通状に形成したヘッド部13とを備えている。ヘッド部13に、車体側の取付孔に差し込み固定される固定部15が一体に設けられ、ヘッド部13の、バンド11の基端部との連設部であって挿通係止孔12を囲む周壁部16に、ワイヤーハーネスを車体から引き離す力でバンド11とヘッド部13とを分断させるとともに挿通係止孔12を破壊させることのできる一対の脆弱部17が孔貫通方向に沿って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に備えられるワイヤーハーネスを車体に締結固定するために用いられるワイヤーハーネス用締結具に係り、詳しくは、車両解体時にワイヤーハーネスを車体から簡易に取り外し可能にするために、容易に分断可能にしたワイヤーハーネス用締結具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のワイヤーハーネス用締結具としては、例えば、図33、図34に示すような合成樹脂製のものが公知である(例えば、特許文献1参照。)。このワイヤーハーネス用締結具1は、ワイヤーハーネスWHを結束するための可撓性を有するバンド2と、バンド2とは別体に形成され車体B側の取付孔3に差し込み固定される固定部4とからなっている。バンド2の基端部にはバンド2の先端側を挿通させて抜け止め状に係止させる挿通係止孔5を有するヘッド部6を一体に形成し、このヘッド部6に係合突起7を設ける一方、固定部4に、係合突起7が着脱可能に嵌合する嵌合孔8を設けている。
そして、このように構成されたワイヤーハーネス用締結具1は、車両解体時に、固定部4からヘッド部6を引き離す方向に引っ張ることで、嵌合孔8から係合突起7が外され、ワイヤーハーネスWHを車体Bから容易に取り外すことができる、というものである。
【0003】
【特許文献1】特開平11−215667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記公知のワイヤーハーネス用締結具では、車両解体時に、嵌合孔8から係合突起7を引き出す方向が、真直ぐではなく斜めとなる場合、引き離し力が有効に作用せず、容易に分離できない虞があり、ヘッド部6の引き離し方向が真直ぐな方向に特定されるという取扱い上不利な面があった。また、ワイヤーハーネスを車体から取り外してもバンドはワイヤーハーネスに巻き付けられたままの状態にあるため、車体からのワイヤーハーネスの取り外し後、さらに、ワイヤーハーネスからバンドを取り外す必要があるという問題もあった。
【0005】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、何れの方向に引き離し力が作用しても容易に分断させることができてワイヤーハーネスを車体から取り外すことができるうえ、同時にワイヤーハーネスからバンドを取り外すこともでき、これらの取り外し作業、解体作業性の向上を図れるワイヤーハーネス用締結具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載のように、発明の内容を理解し易くする為に図1〜図32に付した符号を参照して説明すると、ワイヤーハーネス(WH)を結束するための可撓性を有するバンド(11)と、バンド(11)の基端部に一体に連設され、バンド(11)の先端側を挿通させて抜け止め状に係止させる挿通係止孔(12)を貫通状に形成したヘッド部(13)とを備えている合成樹脂製のワイヤーハーネス用締結具において、ヘッド部(13)に、車体側の取付孔(14)に差し込み固定される固定部(15)が一体に設けられ、ヘッド部(13)の、バンド(11)の基端部との連設部であって挿通係止孔(12)を囲む周壁部(16)に、一対の脆弱部(17,17、23,23、24,24、26,26、28,28)が孔貫通方向に沿って形成されていることに特徴を有するものである。
【0007】
このような構成のワイヤーハーネス用締結具によると、車体側の取付孔(14)に差し込み固定される固定部(15)はヘッド部(13)に一体に設けられているので、それら固定部とヘッド部とが別体に形成される二部品からなって両者を組み合わす従来のワイヤーハーネス用締結具に比較して、単一部材で足りて加工コストを低減でき、また二部品の組み合す手間を省くことができる。
とくに、ヘッド部(13)の、バンド(11)の基端部との連設部であって挿通係止孔(12)を囲む周壁部(16)に形成された一対の脆弱部(17,23,24,26,28)が、ワイヤーハーネス(WH)を車体(B)から引き離す力で、破断されて、バンド(11)とヘッド部(13)とを容易に分断させるとともに、挿通係止孔(12)を破壊させることができる。これによりワイヤーハーネス(WH)を車体(B)から取り外すことができると同時に、ワイヤーハーネス(WH)からバンド(11)を取り外すことができる。その際、脆弱部(17,23,24,26,28)に加わる力は、ワイヤーハーネス(WH)の引き離し方向によって、略変わらず、常に容易にバンド(11)とヘッド部(13)とを分断させることができる。また、分断と同時にワイヤーハーネス(WH)からバンド(11)を取り外すこともできるので、その取り外し手数が省けて、この点においても分離解体性が向上する。
【0008】
請求項1記載のワイヤーハーネス用締結具は、請求項2に記載のように、脆弱部(17,23,24,28)は、周壁部(16)に形成された切欠部(21,22,25a,25b,29)を有する、という構成を採用することができる。この構成によると、切欠部(21,22,25a,25b,29)からバンド(11)とヘッド部(13)とを容易に分断させることができる。
【0009】
請求項1記載のワイヤーハーネス用締結具は、請求項3に記載のように、脆弱部(17,24,26)は、周壁部(16)に形成された薄肉部(20,24a,27)を有する、という構成を採用することができる。この構成によると、薄肉部(20,24a,27)からバンド(11)とヘッド部(13)とを容易に分断させることができる。
【0010】
請求項1記載のワイヤーハーネス用締結具は、請求項4に記載のように、脆弱部(17,24)は、周壁部(16)に形成された切欠部(21,22,25a,25b)、および薄肉部(20,24a)を有する、という構成を採用することができる。この構成によると、切欠部(21,22,25a,25b)および薄肉部(20,24a)からバンド(11)とヘッド部(13)とを容易に分断させることができる。
【0011】
請求項2記載のワイヤーハーネス用締結具は、請求項5に記載のように、図9〜図14に付した符号を参照して説明すると、前記周壁部(16)は下壁部(16a)と、この下壁部(16a)から相対向状に立設した左右一対の側壁部(16b,16c)と、側壁部(16b,16c)の上端部同士を連結する上壁部(16d)とを有しており、上壁部(16d)はバンド(11)の基端部と一体に形成されており、前記切欠部(22,22)は、左右の側壁部16b,16cの各前後端にそれぞれ、切欠部(22,22)の先細端部(22a,22a)同士間に幅狭状の前記脆弱部(23,23)を形成するように設けられる、という構成を採用することができる。この構成によると、ワイヤーハーネス(WH)を車体(B)から引き離す力が作用すると、左右の側壁部(16b,16c)に形成された脆弱部(23,23)としての幅狭部に応力が集中して該幅狭部が容易に破断される。
【0012】
請求項2記載のワイヤーハーネス用締結具は、請求項6に記載のように、図27〜図32に付した符号を参照して説明すると、前記周壁部(16)は下壁部(16a)と、この下壁部(16a)から相対向状に立設した左右一対の側壁部(16b,16c)と、側壁部(16b,16c)の上端部同士を連結する上壁部(16d)とを有しており、上壁部(16d)はバンド(11)の基端部と一体に形成されており、上壁部(16d)の前後方向である孔貫通方向の幅を側壁部(16b,16c)の前後方向長さよりも狭くする形状に形成し、この幅狭形状の上壁部(16d)の左右両端部と側壁部(16b,16c)の各上端部との連結部のうち、いずれか一方の連結部の前端部および後端部に、また他方の連結部の前端部および後端部にそれぞれ平面視においてV形状の前記切欠部(29)を形成する、という構成を採用することができる。この構成によると、ワイヤーハーネス(WH)を車体(B)から引き離す力が作用すると、左右の切欠部(29,29)に応力が集中して上壁部(16d)の左右両端部と側壁部(16b,16c)の各上端部との連結部が容易に破断される。
【0013】
請求項3記載のワイヤーハーネス用締結具は、請求項7に記載のように、図21〜図26に付した符号を参照して説明すると、前記周壁部(16)は下壁部(16a)と、この下壁部(16a)から相対向状に立設した左右一対の側壁部(16b,16c)と、側壁部(16b,16c)の上端部同士を連結する上壁部(16d)とを有しており、上壁部(16d)はバンド(11)の基端部と一体に形成されており、上壁部(16d)の前後方向である孔貫通方向の幅を側壁部(16b,16c)の前後方向長さよりも狭くする形状に形成するとともに、この幅狭形状の上壁部(16d)の、側壁部(16b,16c)と連設する左右端部のそれぞれの壁厚は、上壁部(16d)の他の壁厚よりも薄く形成する左右一対の前記薄肉部(27,27)を有するように構成する、という構成を採用することができる。この構成によると、ワイヤーハーネス(WH)を車体(B)から引き離す力が作用すると、左右の側壁部(16b,16c)に形成された薄肉部(27,27)に応力が集中して該薄肉部(27,27)が容易に破断される。
【0014】
請求項4記載のワイヤーハーネス用締結具は、請求項8に記載のように、図15〜図20に付した符号を参照して説明すると、前記周壁部(16)は下壁部(16a)と、この下壁部(16a)から相対向状に立設した左右一対の側壁部(16b,16c)と、側壁部(16b,16c)の上端部同士を連結する上壁部(16d)とを有して0り、上壁部(16d)はバンド(11)の基端部と一体に形成されており、左右の側壁部(16b,16c)に形成される前記脆弱部(24,24)は、側面視において「く」の字形状の内側の前記切欠部(25a)と外側の前記切欠部(25b)が各側壁部(16b,16c)の厚さ方向寸法が小さくなるように各切欠部(25a,25b)の先細端部(25c,25d)同士を平面視で重複する位置まで切り欠き形成することにより、上下斜めに位置する前記薄肉部(24a,24a)を有する形に形成される、という構成を採用することができる。この構成によると、ワイヤーハーネス(WH)を車体(B)から引き離す力が作用すると、左右の側壁部(16b,16c)に形成された薄肉部(24a,24a)に応力が集中して該薄肉部(24a,24a)が容易に破断される。
【0015】
請求項4記載のワイヤーハーネス用締結具は、請求項9に記載のように、図1〜図8に付した符号を参照して説明すると、前記周壁部(16)は下壁部(16a)と、この下壁部(16a)から相対向状に立設した左右一対の側壁部(16b,16c)と、側壁部(16b,16c)の上端部同士を連結する上壁部(16d)とを有しており、上壁部(16d)はバンド(11)の基端部と一体に形成されており、上壁部(16d)の、側壁部(16b,16c)と連設する左右端部のそれぞれの壁厚は、上壁部(16d)の他の壁厚よりも薄く形成する左右一対の前記薄肉部(20,20)を有し、上壁部(16d)の左右の薄肉部(20,20)のうち、いずれか一方の薄肉部(20)の前端部、および他方の薄肉部(20)の後端部にそれぞれ平面視においてV形状の前記切欠部(21)を上壁部(16d)の平面視において対角線上に位置するように形成する、という構成を採用することができる。この構成によると、ワイヤーハーネス(WH)を車体(B)から引き離す力が作用すると、切欠部(21)に応力が集中して、該切欠部(21)を発端として薄肉部(20)による脆弱部(17)が容易に破断し、バンド(11)とヘッド部(13)とが容易に分断される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のワイヤーハーネス用締結具によれば、何れの方向に引き離し力が作用しても容易にバンドとヘッド部とを分断させることができるとともに挿通係止孔を破壊させることができるため、ワイヤーハーネスを車体から取り外すことができると同時に、ワイヤーハーネスからバンドを取り外すことができ、これら取り外し作業性、解体作業性を著しく向上できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例のワイヤーハーネス用締結具でワイヤーハーネスを結束した状態の斜視図、図2は同ワイヤーハーネス用締結具の平面図、図3は同ワイヤーハーネス用締結具の正面図、図4は同ワイヤーハーネス用締結具の斜視図、図5は同ワイヤーハーネス用締結具でワイヤーハーネスを結束した状態の正面図、図6は図5におけるA−A線拡大断面図、図7は同ワイヤーハーネス用締結具のバンドとヘッド部とを分断した状態を一方向から見た斜視図、図8は同ワイヤーハーネス用締結具のバンドとヘッド部とを分断した状態を他方向から見た斜視図である。
【0018】
図1〜図8は本発明に係るワイヤーハーネス用締結具10の実施例(請求項1〜4、請求項9に記載の発明の実施例)を示すものであり、このワイヤーハーネス用締結具10は、全体がナイロン等合成樹脂製の一体成形品であり、ワイヤーハーネスWHの外周に巻き付けてワイヤーハーネスWHを結束するための可撓性を有するバンド11と、バンド11の基端部に一体に連設され、バンド11の先端側を挿通させて抜け止め状に係止させる挿通係止孔12を貫通状に形成したヘッド部13とを備えている。そして、ヘッド部13には、車体B側の取付孔14に差し込み固定される固定部15が一体に設けられ、バンド11の基端部とヘッド部13との連設部であって挿通係止孔12を囲む周壁部16には、ワイヤーハーネスWHを車体Bから引き離す力で、破断されて、バンド11とヘッド部13とを容易に分断させるとともに挿通係止孔12を破断させることのできる一対の脆弱部17,17が孔貫通方向に沿って形成されている。
【0019】
ワイヤーハーネス用締結具10の更に具体的な構造について詳述する。図7、図8に示すように、バンド11の内面側には、複数の係合歯18をその長手方向に所定ピッチで列設している。バンド11の基端部に一体に連設されたヘッド部13は、図2〜図4に示すように、バンド11の先端側が挿通される四角形断面の挿通係止孔12を囲む周壁部16を有する。この周壁部16は下壁部16aと、この下壁部16aから相対向状に垂直に立設した左右一対の側壁部16b,16cと、側壁部16b,16cの上端部同士を連結する上壁部16dとを有してなる。上壁部16dはバンド11の基端部と一体に形成されている。上壁部16dの内面には、バンド11がこれの先端部11aから挿通係止孔12に矢印X方向(図6参照)に挿入されると係合歯18が反挿入方向に引抜き不可能に係合する鋸歯状の係止爪19(図7参照)が一体に形成されている。
【0020】
図2〜図4に示すように、ヘッド部13において、側壁部16b,16cの各上端部と連結される上壁部16dの左右両端部には一対の脆弱部17,17が挿通係止孔12の貫通方向(孔貫通方向)に沿って形成されて、ワイヤーハーネスWHを車体Bから引き離す力で、上壁部16dの左右両端部と側壁部16b,16cの各上端部との連結部が破断し易くしている。すなわち、脆弱部17は、上壁部16dの前後方向(孔貫通方向)の幅を側壁部16b,16cの前後方向長さよりも狭くする形状に形成するとともに、この幅狭の上壁部16dの、側壁部16b,16cと連設する左右端部のそれぞれの壁厚は、上壁部16dの他の壁厚よりも薄く形成する左右一対の薄肉部20,20を有するように構成することによって、上壁部16dの左右両端部と側壁部16b,16cの各上端部との連結部が破断し易くしている。更に、脆弱部17は、図2に示すように、幅狭形状の上壁部16dの左右の薄肉部20,20のうち、いずれか一方の薄肉部20の前端部、および他方の薄肉部20の後端部にそれぞれ平面視においてV形状の切欠部21を上壁部16dの平面視において対角線上に位置するように形成することで、該切欠部21,21を発端として上壁部16dの左右の薄肉部20,20が容易に分断できるようにしている。
【0021】
ヘッド部13の下壁部16aの下面側には、図6のように、車体B側の取付孔14に差し込み固定される固定部15が一体に設けられ、この固定部15は下壁部16aの下面側に一体に形成された傘型の鍔部15aと、この鍔部15aの下面側に下向きに一体に突設されたステム部15bと、ステム部15bの先端より上向きに拡開状に突設した左右一対の弾性係止片15c,15cとを備えている。
【0022】
次に、上記構成のワイヤーハーネス用締結具10を用いてワイヤーハーネスWHを車体Bに締結固定する要領、および車両解体時にワイヤーハーネスWHを車体Bから取り外す要領について説明する。
【0023】
先ず、ワイヤーハーネス用締結具10でワイヤーハーネスWHを車体Bに締結固定するには、図1、図5、図6に示すように、バンド11をワイヤーハーネスWHの外周に巻き付け、バンド11の先端部をヘッド部13の挿通係止孔12に挿通させて該バンド11の係合歯18を挿通係止孔12内の係止爪19に抜け止め状に係止させて締結する。
【0024】
また、図6に示すように、車体B側の取付孔14に、固定部15のステム部15bが差し込まれると、弾性係止片15c,15cが取付孔14の周縁に係止されて、鍔部15aと弾性係止片15cの先端部との間で車体Bの一部が挟持され、これによりワイヤーハーネスWHが車体Bに装着固定される。
【0025】
次に、車両解体時、ワイヤーハーネスWHを車体Bから取り外すには、ワイヤーハーネスWHにフック部材等を引っ掛けて、ワイヤーハーネスWHを車体Bから引き離す。すると、ヘッド部13の側壁部16b,16cの各上端部と上壁部16dの左右両端部との間に形成されている脆弱部17,17が、ワイヤーハーネスWHを車体Bから引き離す力で、図7、図8に示すように、破断される。この破断によりバンド11の基端部と一体の上壁部16dの左右両端部と側壁部16b,16cの各上端部との連結部が分離して、バンド11とヘッド部13とが分断するとともに、挿通係止孔12が破壊する。これによりワイヤーハーネスWHを車体Bから取り外すことができると同時に、ワイヤーハーネスWHからバンド11を取り外すことができる。
【0026】
また、ヘッド部13の側壁部16b,16cの各上端部と上壁部16dの左右両端部との間の薄肉部20による脆弱部17,17に加わる破断力は、ワイヤーハーネスWHの引き離し方向によって、略変わらず、例えば、斜め前方向からあるいは斜め後ろ方向から引き離されても、常に引き裂く方向の力として作用するので、容易に、この脆弱部17からバンド11とヘッド部13とを分断させることができる。このため、ワイヤーハーネスWHをフック部等で引っ掛けて、ワイヤーハーネスWHを車体Bから引き離す方向に引っ張る簡便な解体作業でも容易に分解できる。
【0027】
幅狭形状の上壁部16dの左右の薄肉部20,20による脆弱部17,17のうち、いずれか一方の薄肉部20による脆弱部17の前端部、および他方の薄肉部20による脆弱部17の後端部にそれぞれ切欠部21を形成しているので、ワイヤーハーネスWHを車体Bから引き離す力が作用すると、切欠部21に応力が集中して、該切欠部21を発端として薄肉部20による脆弱部17が容易に破断する。また、切欠部21,21は上壁部16dの平面視において対角線上に位置するように相互に前後反対方向に向くように形成しているので、前方向又は後ろ方向の一方向からのワイヤーハーネスWHを車体Bから引き離す力で、一方の薄肉部20が破断されにくい場合でも、他方の薄肉部20が破断して、バンド11とヘッド部13とを容易に分離させることができる。
【0028】
図9〜図14は、ワイヤーハーネス用締結具10の他の実施例(請求項1,2、請求項5に記載の発明の実施例)を示すものであり、図1〜図8に示す上記実施例とは脆弱部の構成を相違し、その他の構成は上記実施例のものと同様であるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略し、以下、相違する脆弱部の構成のみについて説明する。
【0029】
この実施例では、図9〜図14に示すように、ヘッド部13において、左右の側壁部16b,16cの各前後端にはそれぞれ側面視において「く」の字形状の切欠部22,22が、各側壁部16b,16cの前後方向幅寸法が小さくなるように切欠部22,22の先細端部22a,22a同士を対向させた対称位置に形成されていて、これら先細端部22a,22a同士間に、幅狭状の脆弱部23,23が設けられている。
【0030】
このように構成されたワイヤーハーネス用締結具10では、ワイヤーハーネスWHを車体Bから引き離す力が作用すると、左右の側壁部16b,16cに形成された脆弱部23,23としての幅狭部に応力が集中して該幅狭部が容易に破断される(図13、図14参照)。この破断によりバンド11とヘッド部13とが分断するとともに、挿通係止孔12が破壊する。これによりワイヤーハーネスWHを車体Bから取り外すことができると同時に、ワイヤーハーネスWHからバンド11を取り外すことができる。
【0031】
また、ヘッド部13の側壁部16b,16cに前後一対の切欠部22,22により形成された脆弱部23の幅狭部に加わる破断力は、ワイヤーハーネスWHの引き離し方向によって、略変わらず、例えば、斜め前方向から或いは斜め後ろ方向から引き離されても、常に引きちぎる方向の力として作用するので、容易に、この脆弱部23からバンド11とヘッド部13とを分断させることができる。
【0032】
図15〜図20は、ワイヤーハーネス用締結具10の更に他の実施例(請求項1〜4、請求項8に記載の発明の実施例)を示すものであり、図1〜図8に示す上記実施例とは脆弱部の構成を相違し、その他の構成は上記実施例のものと同様であるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略し、以下、相違する脆弱部の構成のみについて説明する。
【0033】
この実施例では、図15〜図20に示すように、ヘッド部13において、左右の側壁部16b,16cに形成される脆弱部24,24は、側面視において「く」の字形状の内側切欠部25aと外側切欠部25bが各側壁部16b,16cの厚さ方向寸法が小さくなるように各切欠部25a,25bの先細端部25c,25d同士を平面視で重複する位置まで切り欠き形成することにより、上下斜めに位置する薄肉部24a,24aを有する形に形成されている。
【0034】
このように構成されたワイヤーハーネス用締結具10では、ワイヤーハーネスWHを車体Bから引き離す力が作用すると、左右の側壁部16b,16cに形成された薄肉部24a,24aに応力が集中して該薄肉部24a,24aが容易に破断される(図19、図20参照)。この破断によりバンド11とヘッド部13とが分断するとともに、挿通係止孔12が破壊する。これによりワイヤーハーネスWHを車体Bから取り外すことができると同時に、ワイヤーハーネスWHからバンド11を取り外すことができる。
【0035】
また、ヘッド部13の側壁部16b,16cに形成された薄肉部24a,24aに加わる破断力は、ワイヤーハーネスWHの引き離し方向によって、略変わらず、例えば、斜め前方向から或いは斜め後ろ方向から引き離されても、常に引き裂く方向の力として作用するので、容易に、バンド11とヘッド部13とを分断させることができる。
【0036】
図21〜図26は、ワイヤーハーネス用締結具10の更に他の実施例(請求項1、3、請求項7に記載の発明の実施例)を示すものであり、図1〜図8に示す上記実施例とは脆弱部の構成を相違し、その他の構成は上記実施例のものと同様であるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略し、以下、相違する脆弱部の構成のみについて説明する。
【0037】
この実施例では、図21〜図26に示すように、ヘッド部13において、側壁部16b,16cの各上端部と連結される上壁部16dの左右両端部に脆弱部26,26が挿通係止孔12の貫通方向(孔貫通方向)に沿って形成されて、ワイヤーハーネスWHを車体Bから引き離す力で、上壁部16dの左右両端部と側壁部16b,16cの各上端部との連結部が破断し易くしている。すなわち、脆弱部26は、上壁部16dの前後方向(孔貫通方向)の幅を側壁部16b,16cの前後方向長さよりも狭くする形状に形成するとともに、この幅狭形状の上壁部16dの、側壁部16b,16cと連設する左右端部のそれぞれの壁厚は上壁部16dの他の壁厚よりも薄く形成する左右一対の薄肉部27,27を有するように構成することによって、上壁部16dの左右両端部と側壁部16b,16cの各上端部との連結部が破断し易くしている。
【0038】
このように構成されたワイヤーハーネス用締結具10では、ワイヤーハーネスWHを車体Bから引き離す力が作用すると、左右の側壁部16b,16cに形成された薄肉部27,27に応力が集中して該薄肉部27,27が容易に破断される(図25、図26参照)。この破断によりバンド11とヘッド部13とが分断するとともに、挿通係止孔12が破壊する。これによりワイヤーハーネスWHを車体Bから取り外すことができると同時に、ワイヤーハーネスWHからバンド11を取り外すことができる。
【0039】
また、ヘッド部13の側壁部16b,16cに形成された薄肉部27,27に加わる破断力は、ワイヤーハーネスWHの引き離し方向によって、略変わらず、例えば、斜め前方向から或いは斜め後ろ方向から引き離されても、常に引き裂く方向の力として作用するので、容易に、バンド11とヘッド部13とを分断させることができる。
【0040】
図27〜図32は、ワイヤーハーネス用締結具10の更に又、他の実施例(請求項1、2、請求項6に記載の発明の実施例)を示すものであり、図1〜図8に示す上記実施例とは脆弱部の構成を相違し、その他の構成は上記実施例のものと同様であるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略し、以下、相違する脆弱部の構成のみについて説明する。
【0041】
この実施例では、図27〜図32に示すように、ヘッド部13において、側壁部16b,16cの各上端部と連結される上壁部16dの左右両端部に脆弱部28,28が挿通係止孔12の貫通方向(孔貫通方向)に沿って形成されて、ワイヤーハーネスWHを車体Bから引き離す力で、上壁部16dの左右両端部と側壁部16b,16cの各上端部との連結部が破断し易くしている。すなわち、脆弱部28は、上壁部16dの前後方向(孔貫通方向)の幅を側壁部16b,16cの前後方向長さよりも狭くする形状に形成し、また幅狭形状の上壁部16dの左右両端部と側壁部16b,16cの各上端部との連結部のうち、いずれか一方の連結部の前端部および後端部に、また他方の連結部の前端部および後端部にそれぞれ平面視においてV形状の切欠部29を形成することで、該切欠部29,29を発端として上壁部16dの左右両端部と側壁部16b,16cの各上端部との連結部が容易に分断できるようにしている。なお、この実施例において、幅狭形状の上壁部16dの側壁部16b,16cと連設する左右端部のうち、いずれか一方の端部の壁厚は上壁部16dの他の壁厚よりも薄く形成する薄肉部30(図28参照)を有するものとすること、あるいは両方の端部の壁厚は上壁部16dの他の壁厚よりも薄く形成する薄肉部30を有するものとすることが好ましい。
【0042】
このように構成されたワイヤーハーネス用締結具10では、ワイヤーハーネスWHを車体Bから引き離す力が作用すると、左右の切欠部29,29に応力が集中して上壁部16dの左右両端部と側壁部16b,16cの各上端部との連結部が容易に破断される(図31、図32参照)。この破断によりバンド11とヘッド部13とが分断するとともに、挿通係止孔12が破壊する。これによりワイヤーハーネスWHを車体Bから取り外すことができると同時に、ワイヤーハーネスWHからバンド11を取り外すことができる。
【0043】
また、ヘッド部13の上壁部16dに形成された切欠部29,29に加わる破断力は、ワイヤーハーネスWHの引き離し方向によって、略変わらず、例えば、斜め前方向から或いは斜め後ろ方向から引き離されても、常に引き裂く方向の力として作用するので、容易に、バンド11とヘッド部13とを分断させることができる。
【0044】
なお、本発明のワイヤーハーネス用締結具は自動車等の車両以外に、OA機器等各種産業機械・機器類に備えられるワイヤーハーネスの締結具にも適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例のワイヤーハーネス用締結具でワイヤーハーネスを結束した状態の斜視図である。
【図2】同ワイヤーハーネス用締結具の平面図である。
【図3】同ワイヤーハーネス用締結具の正面図である。
【図4】同ワイヤーハーネス用締結具の斜視図である。
【図5】同ワイヤーハーネス用締結具でワイヤーハーネスを結束した状態の正面図である。
【図6】図5におけるA−A線拡大断面図である。
【図7】同ワイヤーハーネス用締結具のバンドとヘッド部とを分断した状態を一方向から見た斜視図である。
【図8】同ワイヤーハーネス用締結具のバンドとヘッド部とを分断した状態を他方向から見た斜視図である。
【図9】他の実施例のワイヤーハーネス用締結具の平面図である。
【図10】同ワイヤーハーネス用締結具の正面図である。
【図11】同ワイヤーハーネス用締結具の側面図である。
【図12】同ワイヤーハーネス用締結具の斜視図である。
【図13】同ワイヤーハーネス用締結具のバンドとヘッド部とを分断した状態を一方向から見た斜視図である。
【図14】同ワイヤーハーネス用締結具のバンドとヘッド部とを分断した状態を他方向から見た斜視図である。
【図15】更に他の実施例のワイヤーハーネス用締結具の平面図である。
【図16】同ワイヤーハーネス用締結具の正面図である。
【図17】同ワイヤーハーネス用締結具の側面図である。
【図18】同ワイヤーハーネス用締結具の斜視図である。
【図19】同ワイヤーハーネス用締結具のバンドとヘッド部とを分断した状態を一方向から見た斜視図である。
【図20】同ワイヤーハーネス用締結具のバンドとヘッド部とを分断した状態を他方向から見た斜視図である。
【図21】更に又、他の実施例のワイヤーハーネス用締結具の平面図である。
【図22】同ワイヤーハーネス用締結具の正面図である。
【図23】同ワイヤーハーネス用締結具を一方向から見た斜視図である。
【図24】同ワイヤーハーネス用締結具を他方向から見た斜視図である。
【図25】同ワイヤーハーネス用締結具のバンドとヘッド部とを分断した状態を一方向から見た斜視図である。
【図26】同ワイヤーハーネス用締結具のバンドとヘッド部とを分断した状態を他方向から見た斜視図である。
【図27】更に又、他の実施例のワイヤーハーネス用締結具の平面図である。
【図28】同ワイヤーハーネス用締結具の正面図である。
【図29】同ワイヤーハーネス用締結具を一方向から見た斜視図である。
【図30】同ワイヤーハーネス用締結具を他方向から見た斜視図である。
【図31】同ワイヤーハーネス用締結具のバンドとヘッド部とを分断した状態を一方向から見た斜視図である。
【図32】同ワイヤーハーネス用締結具のバンドとヘッド部とを分断した状態を他方向から見た斜視図である。
【図33】従来例のワイヤーハーネス用締結具の分解斜視図である。
【図34】同ワイヤーハーネス用締結具によるワイヤーハーネスの取付状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
WH ワイヤーハーネス
B 車体
10 ワイヤーハーネス用締結具
11 バンド
12 挿通係止孔
13 ヘッド部
14 取付孔
15 固定部
16 周壁部
17,23,24,26,28 脆弱部
20,24a,27 薄肉部
21,22,25a,25b,29 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスを結束するための可撓性を有するバンドと、前記バンドの基端部に一体に連設され、前記バンドの先端側を挿通させて抜け止め状に係止させる挿通係止孔を貫通状に形成したヘッド部とを備えている合成樹脂製のワイヤーハーネス用締結具において、前記ヘッド部に、車体側の取付孔に差し込み固定される固定部が一体に設けられ、前記ヘッド部の、前記バンドの基端部との連設部であって前記挿通係止孔を囲む周壁部に、一対の脆弱部が孔貫通方向に沿って形成されていることを特徴とする、ワイヤーハーネス用締結具。
【請求項2】
前記脆弱部は、前記周壁部に形成された切欠部を有することを特徴とする、請求項1記載のワイヤーハーネス用締結具。
【請求項3】
前記脆弱部は、前記周壁部に形成された薄肉部を有することを特徴とする、請求項1記載のワイヤーハーネス用締結具。
【請求項4】
前記脆弱部は、前記周壁部に形成された切欠部および薄肉部を有することを特徴とする、請求項1記載のワイヤーハーネス用締結具。
【請求項5】
前記周壁部は下壁部と、この下壁部から相対向状に立設した左右一対の側壁部と、この左右の側壁部の上端部同士を連結する上壁部とを有しており、前記上壁部は前記バンドの基端部と一体に形成されており、前記切欠部は、前記左右の側壁部の各前後端にそれぞれ、前記切欠部の先細端部同士間に幅狭状の前記脆弱部を形成するように設けられていることを特徴とする、請求項2記載のワイヤーハーネス用締結具。
【請求項6】
前記周壁部は下壁部と、この下壁部から相対向状に立設した左右一対の側壁部と、この左右の側壁部の上端部同士を連結する上壁部とを有しており、前記上壁部は前記バンドの基端部と一体に形成されており、前記上壁部の前後方向である孔貫通方向の幅を前記側壁部の前後方向長さよりも狭くする形状に形成し、この幅狭形状の上壁部の左右両端部と前記左右の側壁部の各上端部との連結部のうち、いずれか一方の連結部の前端部および後端部に、また他方の連結部の前端部および後端部にそれぞれ平面視においてV形状の前記切欠部を形成していることを特徴とする、請求項2記載のワイヤーハーネス用締結具。
【請求項7】
前記周壁部は下壁部と、この下壁部から相対向状に立設した左右一対の側壁部と、この左右の側壁部の上端部同士を連結する上壁部とを有しており、前記上壁部は前記バンドの基端部と一体に形成されており、前記上壁部の前後方向である孔貫通方向の幅を前記側壁部の前後方向長さよりも狭くする形状に形成するとともに、この幅狭形状の上壁部の、前記側壁部と連設する左右端部のそれぞれの壁厚は、前記上壁部の他の壁厚よりも薄く形成する左右一対の前記薄肉部を有することを特徴とする、請求項3記載のワイヤーハーネス用締結具。
【請求項8】
前記周壁部は下壁部と、この下壁部から相対向状に立設した左右一対の側壁部と、この左右の側壁部の上端部同士を連結する上壁部とを有しており、前記上壁部は前記バンドの基端部と一体に形成されており、前記左右の側壁部に形成される前記脆弱部は、側面視において「く」の字形状の内側の前記切欠部と外側の前記切欠部が左右の各側壁部の厚さ方向寸法が小さくなるように前記各切欠部の先細端部同士を平面視で重複する位置まで切り欠き形成することにより、上下斜めに位置する前記薄肉部を有する形に形成されていることを特徴とする、請求項4記載のワイヤーハーネス用締結具。
【請求項9】
前記周壁部は下壁部と、この下壁部から相対向状に立設した左右一対の側壁部と、この左右の側壁部の上端部同士を連結する上壁部とを有しており、前記上壁部は前記バンドの基端部と一体に形成されており、前記上壁部の、前記左右の側壁部と連設する左右端部のそれぞれの壁厚は、前記上壁部の他の壁厚よりも薄く形成する左右一対の前記薄肉部を有し、前記上壁部の左右の薄肉部のうち、いずれか一方の薄肉部の前端部、および他方の薄肉部の後端部にそれぞれ平面視においてV形状の前記切欠部を前記上壁部の平面視において対角線上に位置するように形成していることを特徴とする、請求項4記載のワイヤーハーネス用締結具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate


【公開番号】特開2009−165200(P2009−165200A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338991(P2007−338991)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000108524)ヘラマンタイトン株式会社 (57)
【Fターム(参考)】