説明

ワイヤ及びケーブルを調製するための半導電体ポリマー組成物

ポリオレフィンポリマー及び膨張黒鉛を含む組成物が一様な導電性を広い温度範囲にわたって示す。一実施形態において、ポリオレフィンポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー又はポリエチレンホモポリマー、あるいは、ポリプロピレンコポリマー又はポリエチレンコポリマーである。本発明の組成物は一様な導電性を提供し、中電圧用ケーブル及び高電圧用ケーブルの構成成分のための導電性配合物として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンポリマー及び膨張黒鉛(expanded graphite)を含む半導電体組成物に関する。1つの態様において、本発明はケーブル及びワイヤに関する。別の態様において、本発明は、絶縁層を含む電力ケーブルに関し、一方で、別の態様において、本発明は、絶縁層が、ポリオレフィンポリマー及び膨張黒鉛を含む組成物を含む電力ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な絶縁された電力ケーブルは一般に、1つ又はそれ以上の高電位導体を、第1の半導電性シールド層(導体又はストランドシールド)、絶縁層(典型的には不導体層)、第2の半導電性シールド層(絶縁シールド)、接地相として使用される金属性のワイヤシールド又はテープシールド、及び、保護外被(これは半導電性である場合があるか、又は、半導電性でない場合がある)を含む数層のポリマー材料によって取り囲まれるケーブルコアに含む。このような構成体の内部に存在するさらなる層、例えば、水分不浸透性材料などが組み込まれることが多い。
【0003】
電気伝導性を達成するための1つの一般的な手段が、ポリマー配合物における導電性カーボンブラックの使用によるものである。典型的には、半導電性ポリマー配合物におけるカーボンブラック負荷が30重量パーセントから40重量パーセント(wt%)にまで及ぶ。これらの半導電体コンパウンドの体積抵抗率は一般には、非特許文献1(絶縁ケーブル技術者協会(ICEA)規格書S−66−524(1982))に記載されている方法を使用して完成後の電力ケーブル構成物に対して測定されるとき、10オーム・センチメートルから10オーム・センチメートル(Ω−cm)の範囲にある。様々なポリオレフィン配合物(例えば、これらのポリオレフィン配合物など)が、特許文献1(米国特許第4,286,023号)、特許文献2(米国特許第4,612,139号)及び特許文献3(米国特許第5,556,697号)、ならびに、特許文献4(欧州特許第0420271号)に開示される。しかしながら、そのような大きいカーボンブラック負荷は高い粘度及び不良な清浄度をもたらす。より低いカーボンブラック負荷量が、高い電気伝導性を維持しながら、半導電性シールドの押出し加工性を改善するために望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,286,023号
【特許文献2】米国特許第4,612,139号
【特許文献3】米国特許第5,556,697号
【特許文献4】欧州特許第0420271号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】絶縁ケーブル技術者協会(ICEA)規格書S−66−524(1982)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、より大きい導電性を従来の導電性カーボンブラックよりも低いフィラー負荷量で示す、半導電性ポリマー組成物の調製において有用なポリマー組成物が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、本発明は、ポリオレフィンポリマー及び膨張黒鉛(これはまたナノ黒鉛としても知られている)を含む半導電体組成物に関する。このような半導電体組成物は一様な導電性を広い温度範囲にわたって提供する;好ましくは、一様な導電性が15℃から160℃まで維持される。
【0008】
別の実施形態において、組成物の膨張黒鉛は配合物全体の所定の割合を構成し(comprises)、その割合には、約0.1wt%から約35wt%、好ましくは約1wt%から約15wt%が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態において、膨張黒鉛は、40平方メートル/グラム(m/g)を超えるブルナウアー・エメット・テラー(Brunauer, Emmett and Teller)(BET)表面積を有する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、半導電性シールド層を含み、シールド層がポリオレフィンポリマー及び膨張黒鉛を含む電力ケーブルに関する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、(i)ポリオレフィンポリマーと、(ii)40m/gを超えるBET表面積を有する、組成物の重量に基づいて約1wt%から約15wt%の膨張黒鉛とを含む半導電性組成物に関する。本発明の半導電体組成物は一様な導電性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図は、エチレンビニルアセテートコポリマー(ethylene vinyl acetate copolymer)における5重量パーセントの、1000m/gの膨張黒鉛の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「ケーブル」、「電力ケーブル」及び同様な用語は、保護用の外被又はシースの内部における少なくとも1つのワイヤ又は光ファイバーを意味する。典型的には、ケーブルは、典型的には共通する保護用の外被又はシースにおいて一緒に束ねられる2つ又はそれ以上のワイヤ又は光ケーブルである。外被の内側における個々のワイヤ又はファイバーはむき出しであり得るか、又は被覆され得るか、又は絶縁され得る。組合せケーブルは電気ワイヤ及び光ファイバーの両方を含有することができる。このようなケーブルなどは、低電圧用、中電圧用及び高電圧用の用途のために設計することができる。典型的なケーブル設計が、米国特許第5,246,783号、同第6,496,629号及び同第6,714,707号に例示される。
【0013】
「ポリマー」は、同じタイプのモノマーであろうとも、又は、異なるタイプのモノマーであろうとも、モノマーを重合することによって調製される多量体化合物を意味する。従って、総称用語のポリマーは、1つだけのタイプのモノマーから調製されるポリマーを示すために通常の場合には用いられる用語のホモポリマー、及び、下記で定義されるような用語のコポリマーを包含する。
【0014】
「コポリマー」は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。この総称用語には、2つの異なるタイプのモノマーから調製されるポリマーを示すために通常の場合には用いられるコポリマー、及び、3つ又はそれ以上の異なるタイプのモノマーから調製されるポリマー、例えば、ターポリマー、テトラポリマーなどが含まれる。
【0015】
「ブレンド(blend)」、「ポリマーブレンド」及び同様な用語は、2つ又はそれ以上のポリマーのブレンドを意味する。そのようなブレンドは混和性又は非混和性である場合がある。そのようなブレンドは相分離する場合があるか、又は、相分離しない場合がある。そのようなブレンドは、透過電子顕微鏡観察、光散乱、x線散乱及び当分野で知られている何らかの他の方法から明らかにされるように、1つ又はそれ以上のドメイン形態を含有する場合があるか、又は含有しない場合がある。
【0016】
「膨張黒鉛」、「ナノ黒鉛」及び同様な用語は、x線回折パターンによって示されるような有意な(significant)秩序(order)を何ら有さない黒鉛を意味する。膨張黒鉛は、黒鉛構造を構成する個々の層の面間距離(inter-planar distance)を増大させるように処理されている。
【0017】
一実施形態において、本発明は、ポリオレフィンポリマー、又は、ポリオレフィンポリマーを含むブレンドと、膨張黒鉛とを含む組成物(composition)に関する。別の実施形態において、本発明は、ポリオレフィンポリマー又はそのブレンドと、配合物(formulations)全体の総重量に基づいて約0.1wt%から約35wt%の膨張ナノ黒鉛とを含む組成物に関し、好ましくは、膨張ナノ黒鉛が配合物全体の約1wt%から15wt%を含む。さらに別の実施形態において、膨張黒鉛はさらに、ポリマーマトリックスのナノサイズ又はミクロサイズ又はより大きいサイズの凝集物を含むことができる。別の実施形態において、組成物の膨張黒鉛は、250m/gを超えるBET表面積を有する。別の実施形態において、ナノ黒鉛は官能基を含有することができ、そのような官能基には、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン、アルキル及びビニル、ならびに、ポリマーマトリックスとの相溶化を高めることができる何らかの他の基が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
膨張黒鉛は、典型的には、少なくとも10m/gのBET表面積を有し、より典型的には少なくとも40m/gのBET表面積を有し、好ましくは少なくとも250m/gのBET表面積を有し、より好ましくは少なくとも500m/gのBET表面積を有する。膨張黒鉛の表面積の上限は、原理的には、完全膨張黒鉛の理論的表面に近い約2700m/gもの大きさであり得る。しかしながら、膨張黒鉛についての典型的な最大表面積は1500m/gであり、より典型的には1000m/gである。
【0019】
本発明の目的のために、BET表面積の測定を、ヘリウム中での30%窒素を0.3のP/Po比で使用して行うことができる。数多くの市販されているデバイスのいずれか1つを、その測定を行うために使用することができ、これには、Micromeritics TRISTAR3000装置、及び、Quantachrome Monosorb装置が含まれるが、これらに限定されない。サンプルは好適には、測定を行う前に脱ガスされる。好適な条件には、200℃の温度及び大気圧が含まれる。
【0020】
ポリオレフィンポリマーは、10分あたり約0.1グラムから約50グラム(約0.1g/10分から約50g/10分)のメルトインデックス(MI、I)、及び、1立方センチメートルあたり0.85グラムから0.95グラム(0.85g/ccから0.95g/cc)の間での密度を有する少なくとも1つの樹脂又はそのブレンドを含むことができる。典型的なポリオレフィンには、高圧低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、メタロセンによる線状低密度ポリエチレン、及び、幾何拘束触媒(CGC)によるエチレンポリマーが含まれる。密度はASTM D−792の手順によって測定され、メルトインデックスはASTM D−1238(190℃/2.16kg)によって測定される。
【0021】
別の実施形態において、ポリオレフィンポリマーには、エステル含有量がコポリマーの重量に基づいて少なくとも約5wt%である、エチレン及び不飽和エステルのコポリマーが含まれるが、これに限定されない。エステル含有量は、多くの場合、80wt%もの高さであり、これらのレベルにおいて、主要なモノマーはエステルである。
【0022】
さらに別の実施形態において、エステル含有量の範囲が約10wt%から約40wt%である。この重量パーセントはコポリマーの総重量に基づく。不飽和エステルの例には、ビニルエステル、ならびに、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルがある。エチレン/不飽和エステルコポリマーは通常、従来の高圧プロセスによって作製される。そのようなコポリマーは約0.900g/ccから0.990g/ccの範囲での密度を有することができる。さらに別の実施形態において、そのようなコポリマーは0.920g/ccから0.950g/ccの範囲での密度を有する。そのようなコポリマーはまた、約1g/10分から約100g/10分の範囲でのメルトインデックスを有することができる。さらに別の実施形態において、そのようなコポリマーは約5g/10分から約50g/10分の範囲でのメルトインデックスを有することができる。
【0023】
エステルは4個から約20個の炭素原子を有することができ、好ましくは、4個から約7個の炭素原子を有することができる。ビニルエステルの例には、ビニルアセテート、ビニルブチラート、ビニルピバラート、ビニルネオノナノアート、ビニルネオデカノアート及びビニル2−エチルヘキサノアートがある。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、3−メタクリルオキシ−プロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート及びオレイルメタクリレートがある。メチルアクリレート、エチルアクリレート、及び、n−ブチルアクリレート又はt−ブチルアクリレートが好ましい。アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートの場合、アルキル基は1個から約8個の炭素原子を有することができ、好ましくは、1個から4個の炭素原子を有する。アルキル基はオキシアルキルトリアルコキシシランにより置換することができる。
【0024】
ポリオレフィンポリマーの他の例には、ポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー、ポリブテン、ポリブテンコポリマー、エチレンコモノマーが約50モルパーセント未満から約0モルパーセントである高短鎖分岐α−オレフィンコポリマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン、EPR(プロピレンと共重合されたエチレン)、EPDM(プロピレン及びジエン(例えば、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン又はエチリデンノルボルネンなど)と共重合されたエチレン)、エチレンと、3個から20個の炭素原子を有するα−オレフィンとのコポリマー(例えば、エチレン/オクテンコポリマーなど)、エチレンと、α−オレフィンと、ジエン(好ましくは非共役ジエン)とのターポリマー、エチレンと、α−オレフィンと、不飽和エステルとのターポリマー、エチレン及びビニル−トリ−アルキルオキシシランのコポリマー、エチレンと、ビニル−トリ−アルキルオキシシランと、不飽和エステルとのターポリマー、あるいは、エチレンと、アクリロニトリル又はマレイン酸エステルの1つ又はそれ以上とのコポリマーがある。本発明のさらに別の実施形態において、ポリオレフィンポリマーはエチレンエチルアクリレートである。
【0025】
別の実施形態において、ポリオレフィンポリマーはホモポリマーであり得るか、あるいは、プロピレン、ならびに、約50モルパーセントまでのエチレン(好ましくは約30モルパーセントまでのエチレン、より好ましくは約20モルパーセントまでのエチレン)、及び/又は、約20個までの炭素原子(好ましくは12個までの炭素原子、より好ましくは8個までの炭素原子)を有する1つもしくはそれ以上の他のα−オレフィンに由来するユニットからなる1つ又はそれ以上のコポリマーであり得る。コポリマーの場合、コポリマーは、ランダム、ブロック又はグラフトであることが可能である。ポリプロピレンの分子量は便宜的に、ASTM D−1238の230℃/2.16kgの条件(これは以前には「条件(L)」として知られている)に従ったメルトフロー測定(これはまた、Iとして知られている)を使用して示される。メルトフローレートはポリマーの分子量に逆比例する。従って、分子量が大きくなるほど、メルトフローレートは低くなるが、この関係は直線的ではない。本発明の実施において有用であるポリプロピレンについてのメルトフローレートは一般には約0.1から40の間であり、より好ましくは約1から40の間である。本発明の実施において有用である例示的なポリプロピレンには、The Dow Chemical Companyから入手可能なVERSIFY(登録商標)ポリマー、及び、ExxonMobil Chemical Companyから入手可能なVISTAMAXX(登録商標)ポリマーが含まれる。様々なポリプロピレンポリマーの完成した議論が、Modern Plastics Encyclopedia/89, mid October 1988 Issue, Volume 65, Number 11, pp. 86-92に含まれる。
【0026】
一実施形態において、ポリオレフィンポリマーは気相で製造される。別の実施形態において、ポリオレフィンポリマーを従来の技術によって溶液又はスラリーでの液相において製造することができる。さらに別の実施形態において、ポリオレフィンポリマーを高圧プロセス又は低圧プロセスによって製造することができる。低圧プロセスは典型的には7メガパスカル(MPa)未満の圧力で操作され、これに対して、高圧プロセスは典型的には100MPa超の圧力で操作される。
【0027】
様々な触媒系を、本発明の実施において使用されるポリオレフィンポリマーを調製するために使用することができ、これらには、米国特許第4,302,565号に記載されている触媒系によって例示され得る、マグネシウム/チタンに基づく触媒系;バナジウムに基づく触媒系、例えば、米国特許第4,508,842号、同第5,332,793号、同第5,342,907号及び同第5,410,003号に記載されている触媒系など、クロムに基づく触媒系、例えば、米国特許第4,101,445号に記載されている触媒系など、メタロセン触媒系、例えば、米国特許第4,937,299号及び同第5,317,036号に記載されているメタロセン触媒系など、又は、他の遷移金属触媒系が含まれるが、これらに限定されない。これらの触媒系の多くは、しばしばチーグラー・ナッタ触媒系と呼ばれる。シングルサイト触媒(例えば、メタロセン触媒又は幾何拘束触媒など)を用いて作製されるポリオレフィンコポリマーは、典型的には、約95℃未満の融点を有し、好ましくは約90℃未満の融点を有し、より好ましくは約85℃未満の融点を有し、一層より好ましくは約80℃未満の融点を有し、さらにより好ましくは約75℃未満の融点を有する。
【0028】
別の実施形態において、マルチサイト触媒(例えば、チーグラー・ナッタ触媒又はフィリップス触媒)を用いて作製されるポリオレフィンコポリマーについては、融点が典型的には約125℃未満であり、好ましくは約120℃未満であり、より好ましくは約115℃未満であり、一層より好ましくは約110℃未満である。融点は、例えば、米国特許第5,783,638号に記載されているように示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される。
【0029】
別の実施形態において、ポリオレフィンポリマーは、シリカ−アルミナの担体に担持されたクロム酸化物又はモリブデン酸化物を使用する触媒系を使用して製造することができる。典型的なin−situポリマーブレンド及びプロセス及び触媒系が米国特許第5,371,145号及び同第5,405,901号に記載されている。従来の高圧プロセスが、Introduction to Polymer Chemistry, Stille, Wiley and Sons, New York, 1962の149頁から151頁)に記載されている。
【0030】
さらに別の実施形態において、ポリオレフィンポリマーはポリプロピレン及びエラストマーのブレンドを含み、この場合、エラストマーは、密度が約0.90g/cc未満、好ましくは約0.89g/cc未満、より好ましくは約0.885g/cc未満、一層より好ましくは約0.88g/cc未満、一層より好ましくは約0.875g/cc未満であるポリオレフィンコポリマーである。そのようなエラストマーポリオレフィンコポリマーは典型的には、約0.85g/ccを超える密度を有し、より好ましくは約0.86g/ccを超える密度を有する。低密度エラストマーポリオレフィンコポリマーは一般に、非晶質であるとして、また、柔軟であるとして、また、良好な光学特性、例えば、可視光及びUV光の高い透過性、ならびに、低いヘイズ(haze)を有するとして特徴づけられる。
【0031】
エラストマーポリオレフィンコポリマーはどれも本発明の実施において使用することができる一方で、好ましいエラストマーポリオレフィンコポリマーが、シングルサイト触媒(例えば、メタロセン触媒又は幾何拘束触媒など)を用いて作製され、典型的には、約95℃未満の融点を有し、好ましくは約90℃未満の融点を有し、より好ましくは約85℃未満の融点を有し、一層より好ましくは約80℃未満の融点を有し、なおさらにより好ましくは約75℃未満の融点を有する。
【0032】
本発明の実施において有用であるエラストマーポリオレフィンコポリマーには、インターポリマーの重量に基づいて約15wt%から、好ましくは少なくとも約20wt%のα−オレフィン含有量、一層より好ましくは少なくとも約25wt%のα−オレフィン含有量を有するエチレン/α−オレフィンインターポリマーが含まれる。このようなインターポリマーは、典型的には、インターポリマーの重量に基づいて、約50wt%未満のα−オレフィン含有量、好ましくは約45wt%未満のα−オレフィン含有量、より好ましくは約40wt%未満のα−オレフィン含有量、一層より好ましくは約35wt%未満のα−オレフィン含有量を有する。α−オレフィン含有量は、Randall(Rev. Macromol. Chem. Phys., C29 (2&3))に記載されている手順を使用して13C核磁気共鳴(NMR)分光法によって測定される。一般に、インターポリマーのα−オレフィン含有量が大きくなるほど、密度は低くなり、インターポリマーは非晶質になり、このことが保護用絶縁層のための望ましい物理的特性及び化学的特性につながる。
【0033】
α−オレフィンは、好ましくは、C3−20の線状又は分枝型又は環状のα−オレフィンである。インターポリマーの用語は、少なくとも2つのモノマーから作製されるポリマーを示す。この用語には、例えば、コポリマー、ターポリマー及びテトラポリマーが含まれる。C3−20α−オレフィンの例には、プロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン及び1−オクタデセンが含まれる。α−オレフィンはまた、α−オレフィン、例えば3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)及びビニルシクロヘキサンなどをもたらす環状構造、例えば、シクロヘキサン又はシクロペンタンなどを含有することができる。この用語の古典的意味でのα−オレフィンではないが、本発明の目的のために、ある環状オレフィン、例えば、ノルボルネン及び関連したオレフィン、具体的には、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどがα−オレフィンであり、上記で記載されているα−オレフィンの一部又はすべての代わりに使用することができる。同様に、スチレン及びその関連したオレフィン(例えば、α−メチルスチレンなど)が本発明の目的のためのα−オレフィンである。例示的なポリオレフィンコポリマーには、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン及びエチレン/スチレンなどが含まれる。例示的なターポリマーには、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/ブテン、エチレン/ブテン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)及びエチレン/ブテン/スチレンが含まれる。コポリマーはランダム又はブロック状が可能である。
【0034】
本発明の実施において有用なエラストマーポリオレフィンコポリマーは、ASTM D−3418−03の手順を使用して示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるとき、約−20℃未満のTg、好ましくは約−40℃未満のTg、より好ましくは約−50℃未満のTg、一層より好ましくは約−60℃未満のTgを有する。そのうえ、典型的には、本発明の実施において使用されるエラストマーポリオレフィンコポリマーはまた、約100g/10分未満のメルトインデックス、好ましくは約75g/10分未満のメルトインデックス、より好ましくは約50g/10分未満のメルトインデックス、一層より好ましくは約35g/10分未満のメルトインデックスを有する。典型的な最小MIは約1であり、より典型的には、最小MIは約5である。
【0035】
本発明において有用なエラストマーポリオレフィンコポリマーのより具体的な例には、超低密度ポリエチレン(VLDPE)(例えば、The Dow Chemical Companyによって作製されるFLEXOMER(登録商標)エチレン/1−ヘキセンポリエチレン)、均一分岐線状エチレン/α−オレフィンコポリマー(例えば、Mitsui Petrochemicals Company LimitedによるTAFMER(登録商標)、及び、Exxon Chemical CompanyによるEXACT(登録商標))、及び、均一に分岐した実質的に線状のエチレン/α−オレフィンポリマー(例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能なAFFINITY(登録商標)ポリエチレン及びENGAGE(登録商標)ポリエチレン)が含まれる。より好ましいエラストマーポリオレフィンコポリマーは、均一分岐線状エチレンコポリマー及び均一に分岐した実質的に線状のエチレンコポリマーである。実質的に線状のエチレンコポリマーが特に好ましく、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号及び同第5,986,028号においてより詳しく記載されている。
【0036】
本発明の組成物はまた、膨張ナノ黒鉛を含む。剥離黒鉛(exfoliated graphite)は、個々の小板が、媒介剤、例えばポリマー又はポリマー成分などとともに、又は、媒介剤を伴うことなく加熱することによって分離させられた膨張黒鉛の1つの形態である。膨張ナノ黒鉛は、1つ又はそれ以上の導電性フィラー(例えば、カーボンブラック、炭素ナノチューブ、炭素繊維、フラーレン、導電性ポリマー(例えば、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリチオフェン及びポリアニリンなど)など)と混合することができる。膨張黒鉛は典型的には組成物の総重量の約0.1パーセントから35パーセントの間、より典型的には組成物の総重量の約1パーセントから15パーセントの間、一層より典型的には組成物の総重量の約1パーセントから10パーセントの間を構成する。
【0037】
膨張性黒鉛粒子を形成するための一般的な従来的方法の1つが米国特許第3,404,061号に記載されている。出発物質は、99.9%のLOI(強熱減量(loss on ignition))の最小純度レベルに加工された天然黒鉛フレークであり、この場合、黒鉛の粒子サイズが約−20メッシュから+60メッシュの間であり、好ましくは30メッシュから70メッシュ(200ミクロンから600ミクロン)の間である。天然のフレーク状黒鉛を、2901グレードの黒鉛として、Superior Graphite Co.(Chicago、IL)から得ることができる。しかしながら、当業者は、出発物質の最小純度レベルが、その方法から生じる離層した剥離黒鉛の最終的な使用に依存することを理解する。
【0038】
黒鉛フレークは、フレークを、酸化剤及び酸化性混合物を含有する溶液に分散することによってインターカレート化される。そのような溶液には、硝酸及び硫酸の混合物、あるいは、硝酸、塩素酸カリウム、クロム酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム、二クロム酸カリウム及び過塩素酸などを含有する様々な溶液、あるいは、濃硝酸及び塩素酸塩、クロム酸及びリン酸、硫酸及び硝酸、又は、強い有機酸(例えば、トリフルオロ酢酸)と、有機酸に可溶性である強い酸化剤との混合物(これらに限定されない)をはじめとする様々な混合物が含まれるが、これらに限定されない。フレークがインターカレート化された後、過剰な溶液がフレークから除かれる。除去後のフレークに保持されるインターカレーション溶液の量は、典型的には、黒鉛フレークの100重量部あたり100重量部(pph)を超える溶液であり、より典型的には約100pphから150pphである。
【0039】
一実施形態において、インターカラントは、硫酸、又は、硫酸及びリン酸と、酸化剤(例えば、硝酸、過塩素酸、クロム酸、過マンガン酸カリウム、ヨウ素酸又は過ヨウ素酸など)との溶液である。別の実施形態において、インターカラントは、ハロゲン化金属(例えば、塩化第二鉄、及び、硫酸と混合された塩化第二鉄など)、又は、ハロゲン(例えば、臭素及び硫酸の溶液としての臭素、又は、有機溶媒における臭素など)を含有することができる。
【0040】
さらに別の実施形態において、インターカラントにより処理された黒鉛フレークの粒子は、還元性有機薬剤(これには、25℃から110℃の範囲での温度で酸化性インターカレート化溶液の表面薄膜と反応し得るアルコール、糖、アルデヒド及びエステルが含まれるが、これらに限定されない)と、混合することによって接触させられる。好適な具体的な有機薬剤には、下記の薬剤が含まれるが、それらに限定されない:ヘキサデカノール、オクタデカノール、1−オクタノール、2−オクタノール、デシルアルコール、1,10−デカンジオール、デシルアルデヒド、1−プロパノール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、デキストロース、ラクトース、スクロース、ジャガイモデンプン、エチレングリコールモノステアラート、ジエチレングリコールジベンゾアート、プロピレングリコールモノステアラート及びグリセロールモノステアラート。有機還元剤の量は、好適には、黒鉛フレークの粒子の重量に基づいて約0.75wt%から4wt%である。
【0041】
インターカラントにより被覆されたインターカレート化黒鉛フレークを有機還元剤と混合した後、混合物は、還元剤と、インターカラント被覆との反応を促進させるために、25℃から110℃の範囲での温度にさらされる。加熱期間は約20時間から2分の1時間であるが、加熱期間は上記範囲でのより高い温度については短くなる。インターカレーション後の揮発物含有量は好ましくは約12wt%から22wt%の間である。インターカレート化黒鉛の一例が、UCAR Carbon Company(Danbury、Conn.)から得られるGRAFGUARD(酸処理された化学的フレーク状黒鉛)であり、これは、硫酸及び硝酸によりインターカレート化された天然黒鉛である。
【0042】
高い温度(典型的には、600℃から1200℃の範囲での高い温度)にさらされたとき、インターカレート化黒鉛の粒子は、c方向において、すなわち、黒鉛の結晶面に対して垂直な方向においてアコーディオン様の様式でその元の体積の80倍から1000倍又はそれ以上もの大きさに膨張する。そのような加熱は、インターカレート化黒鉛を炎により直接に加熱すること、インターカレート化黒鉛を高温の表面に置くことによる方法、赤外加熱エレメントを使用することによる方法、又は、誘導加熱による方法など(これらに限定されない)を含めて、多数の方法で行うことができる。
【0043】
別の実施形態において、マイクロ波エネルギー又はRF誘導加熱は、膨張黒鉛ナノフレーク、膨張黒鉛ナノシート又は膨張黒鉛ナノ粒子を製造するための方法を提供する。マイクロ波法又はRF法は大規模製造において有用であり得るし、また、費用効果的であり得る。化学的にインターカレート化された黒鉛フレークは、RFエネルギー又はマイクロ波エネルギーを加えることによって膨張させることができる。典型的には、3分間から5分間の加熱により、膨張する化学物質が除かれるが、この加熱期間は、特に、化学物質に依存する。黒鉛は、対流及び伝導の熱移動機構によって制限されることなく迅速にRFエネルギー又はマイクロ波エネルギーを吸収する。インターカラントは沸点を超えて熱くなり、黒鉛をその元の体積の何倍にも膨張させる。このプロセスを、市販されているコンベアを伴う誘導システム又はマイクロ波システムを使用することによって連続的に行うことができる。
【0044】
別の実施形態において、マイクロ波オーブン、広範囲にわたる高周波エネルギー(誘導加熱)又はマイクロ波振動数エネルギーを膨張のために使用することができる。さらに別の実施形態において、2.45ギガヘルツ(GHz)で作動する市販のマイクロ波オーブンを膨張のために使用することができる。このプロセスは、市販されているコンベアを伴うマイクロ波システムを使用することによって連続的に行うことができる。膨張後、黒鉛材は、柔軟な黒鉛シート形成するするために、バインダー樹脂とともに、又は、バインダー樹脂を用いることなくカレンダー処理される。得られたシートは様々なサイズ及び形状に切断することができる。
【0045】
さらに別の実施形態において、RF膨張又はマイクロ波膨張と、適切な粉砕技術(例えば、遊星式ボールミル粉砕(及び振動ボールミル粉砕)との組合せを、大きいアスペクト比を有するナノ小板状黒鉛フレークを効率的に製造するために使用することができる。好適な黒鉛フレークを製造するための結晶黒鉛のマイクロ波膨張又はRF膨張及び微粉化は、黒鉛フレークのサイズ分布の制御をより効率的に可能にする。適切な表面処理を組み込むことによって、プロセスは、表面処理された膨張黒鉛を製造するための経済的な方法を提供する。
【0046】
さらに別の実施形態において、膨張黒鉛は、大きいアスペクト比を有する黒鉛フレーク(小板)を製造するために、例えば、ボールミル粉砕、機械的粉砕、エアーミリング又は超音波によって微粉化される。市販されている膨張性黒鉛フレーク製造物が、UCAR Carbon Company Inc(Danbury、CT)から入手可能である。別の市販されている膨張性黒鉛フレーク(Nord−Min(登録商標)シリーズの膨張性黒鉛)が、Nyacol,Inc.(Ashland、MA)から入手可能である。Nord−Minシリーズについては、膨張性黒鉛は下記の特徴を有する:92%から99%の純度;6.0から7.5のpH値;+32メッシュから−200メッシュの粒子サイズ;350ml/gまでの膨張体積;95mmまでの膨張強度;及び、150℃から300℃の開始膨張温度。
【0047】
別の実施形態において、ポリオレフィンポリマー及び膨張黒鉛を含む本発明の組成物はまた、従来の添加物を含むことができ、そのような添加物には、酸化防止剤、硬化剤、架橋助剤、ブースター剤及び遅延剤、加工助剤、フィラー、カップリング剤、紫外線吸収剤又は安定剤、帯電防止剤、核形成剤、スリップ剤、可塑剤、滑剤、粘度調整剤、粘着性付与剤、抗ブロッキング剤、界面活性剤、エキステンダー油、酸スカベンジャー及び金属不活化剤が含まれるが、これらに限定されない。添加物は、組成物の重量に基づいて約0.01wt%未満から約10wt%超にまで及ぶ量で使用することができる。
【0048】
酸化防止剤の例には、下記のような物質が挙げられるが、それらに限定されない:ヒンダードフェノール類、例えば、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナマート)]メタン、ビス[(β−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−メチルカルボキシエチル)]スルフィド、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)及びチオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナマートなど;ホスフィト及びホスホニト、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィト及びジ−tert−ブチルフェニル−ホスホニトなど;チオ化合物、例えば、ジラウリルチオジプロピオナート、ジミリスチルチオジプロピオナート及びジステアリルチオジプロピオナートなど;様々なシロキサン;重合された2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、n,n’−ビス(1,4−ジメチルペンチル−p−フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン類、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、混合ジ−アリール−p−フェニレンジアミン類、及び、他のヒンダードアミン系の劣化防止剤又は安定剤。酸化防止剤は、組成物の重量に基づいて約0.1wt%から約5wt%の量で使用することができる。
【0049】
硬化剤の例には、下記のような物質が挙げられる:ジクミルペルオキシド、ビス(α−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、イソプロピルクミルt−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)2,5−ジメチルヘキシン−3、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルクミルクミルペルオキシド、ジ(イソプロピルクミル)ペルオキシド、又は、これらの混合物。ペルオキシド系硬化剤は、組成物の重量に基づいて約0.1wt%から5wt%の量で使用することができる。様々な他の公知な硬化助剤、ブースター剤及び遅延剤を使用することができ、例えば、トリアリルイソシアヌラート、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、α−メチルスチレンダイマー、ならびに、米国特許第5,346,961号及び同第4,018,852号に記載されている他の助剤などを使用することができる。
【0050】
加工助剤の例には、カルボン酸の金属塩、例えば、ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウムなど;脂肪酸、例えば、ステアリン酸、オレイン酸又はエルカ酸など;脂肪アミド、例えば、ステアルアミド、オレアミド、エルカミド又はn,n’−エチレンビスステアルアミドなど;ポリエチレンワックス;酸化されたポリエチレンワックス;エチレンオキシドのポリマー、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー;植物ワックス;石油ろう;非イオン性界面活性剤;及び、ポリシロキサンが含まれるが、これらに限定されない。加工助剤は、組成物の重量に基づいて約0.05wt%から約5wt%の量で使用することができる。
【0051】
フィラーの例には、算術平均粒子サイズが15ナノメートルよりも大きい粘土、沈降シリカ及びケイ酸塩、フュームドシリカ、炭酸カルシウム、粉砕鉱物及びカーボンブラックが含まれるが、これらに限定されない。フィラーは、組成物の重量に基づいて約0.01wt%未満から約50wt%超にまで及ぶ量で使用することができる。
【0052】
半導電体材料の配合を、当業者に知られている標準的な手段によって達成することができる。配合設備の例には、密閉式の回分式ミキサー、例えば、Banbury(商標)又はBolling(商標)の密閉式ミキサーがある。代替として、連続式の単軸スクリューミキサー又は二軸スクリューミキサーを使用することができ、例えば、Farrel(商標)連続ミキサー、Werner及びPfleiderer(商標)の二軸スクリューミキサー、又は、Buss(商標)混練連続押出し機などを使用することができる。利用されるミキサーのタイプ、及び、ミキサーの運転条件は、半導電体材料の特性、例えば、粘度、体積抵抗率及び押出し後の表面平滑度などに影響を及ぼす。
【0053】
ポリオレフィンポリマー及び膨張黒鉛の半導電体組成物を含有するケーブルを、様々なタイプの押出し機(例えば、単軸スクリュータイプ又は二軸スクリュータイプ)で調製することができる。従来の押出し機の説明を米国特許第4,857,600号に見出すことができる。共押出しの一例及びそのための押出し機を米国特許第5,575,965号に見出すことができる。典型的な押出し機はホッパーをその上流端に有し、ダイをその下流端に有する。ホッパーは、スクリューを含有するバレルに材料を供給する。下流端において、スクリューの末端と、ダイとの間には、スクリーンパック及びブレーカープレートが存在する。押出し機のスクリュー部分は、3つの区画(供給物区画、圧縮区画及び計量区画)及び2つの帯域(後方加熱域及び前方加熱域)に分割されていると見なされ、これらの区画及び帯域は上流から下流に及ぶ。代替において、上流から下流に及ぶ軸に沿った多数の加熱域(3つ以上)を存在させることができる。押出し機が2つ以上のバレルを有するならば、バレルは連続してつながれる。それぞれのバレルの長さ対直径比率は約15:1から約30:1の範囲である。ワイヤ被覆において、ポリマー絶縁物が押出し後に架橋される場合、ケーブルは、多くの場合、押出しダイの下流側にある加熱された加硫帯域の中に直ちに進む。この加熱された硬化帯域は約200℃から約350℃の範囲での温度で維持され、好ましくは、約170℃から約250℃の範囲での温度で維持される。加熱された帯域は、加圧スチームによって加熱することができ、又は、加熱された加圧窒素ガスによって誘導的に加熱することができる。
【0054】
下記の実施例により、本発明がさらに例示される。
(具体的な実施形態)
【実施例1】
【0055】
組成物が、Brabender混合ボールを130℃において20rpmで5分間使用して調製される。エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマーと、TIMCAL Graphite and Carbonから得られる、20wt%のナノ黒鉛とのマスターバッチが、3つの他の組成物を調製するために使用される。第1の組成物(これは12wt%ナノ黒鉛組成物と呼ばれる)は、20MIでの39%のEEAコポリマー、20wt%のナノ黒鉛を伴う60%のEEAコポリマー、及び、1%の重合ジ−ヒドロ−トリメチルキノリンを含む。この12wt%のナノ黒鉛組成物は配合物全体において12wt%のナノ黒鉛を含む。第2の組成物(これは16wt%のナノ黒鉛組成物と呼ばれる)は、20MIでの19%のEEAコポリマー、20wt%のナノ黒鉛を伴う80%のEEAコポリマー、及び、1%の重合ジ−ヒドロ−トリメチルキノリンを含む。この16wt%のナノ黒鉛組成物は配合物全体において16wt%のナノ黒鉛を含む。第3の組成物(これは38wt%のカーボンブラック組成物と呼ばれる)は、61%のEEAコポリマー(20M)、Denka Corporationから得られる、38wt%のDenka Acetyleneブラック、及び、1%の重合ジ−ヒドロトリメチルキノリンを含む。
【0056】
12wt%のナノ黒鉛組成物を、98.2%の12wt%のナノ黒鉛組成物と、1.8%のジクミルペルオキシドとの最終的な配合物のために、ジクミルペルオキシドと混合する。16wt%のナノ黒鉛組成物を、98.2%の16wt%のナノ黒鉛組成物と、1.8%のジクミルペルオキシドとの最終的な配合物のために、ジクミルペルオキシドと混合する。38wt%のカーボンブラック組成物を、98.7%の38wt%のカーボンブラック組成物と、1.3%のジクミルペルオキシドとの最終的な配合物のために、ジクミルペルオキシドと混合する。これらの組成物の配合の一覧が表1に提供される。
【表1】

【0057】
1種類のプラーク(plaques)を圧縮成形によって半導電性配合物から調製する。圧縮成形の前に、配合物を2−ロールミルで融解する。架橋することが所望されるならば、有機ペルオキシドを加える。圧縮成形の第1工程は、5分間の2000psiの圧力、続いて、5分間の25トンの圧力のもとでの120℃における通常のプレス成形であり、その後、プラークは冷却される。圧縮成形の第2工程は、25分間の25トンの圧力のもとで185℃で架橋し、その後、再び冷却することである。プラークの大きさは下記の通りである:全長が4インチで、幅が1インチで、厚さが125milである。銀塗料が、抵抗計の電極とのより良好な接触を提供するために、プラークの各末端から1インチである点に塗られる。銀塗料線の間の距離は2インチ(L)である。抵抗Rを対流式エアーオーブンの中で所与の温度で抵抗計により測定する。体積抵抗率を下記の式によって計算する:
【数1】

【0058】
2つの試料片がそれぞれの半導電性配合物について試験される。体積抵抗率を室温(23℃)から150℃までの様々な温度で測定する。それぞれの温度におけるそれぞれの組成物についての測定された抵抗率の一覧が表2に提供される。
【表2】

【0059】
ナノ黒鉛組成物は一様な導電性挙動を広い温度範囲にわたって示す。ポリオレフィンポリマー及びナノ黒鉛を伴う組成物は、より大きい導電性を従来のカーボンブラック負荷よりも低いフィラー負荷において示す。38wt%のカーボンブラック組成物は強い正の温度係数作用(使用温度での体積抵抗率/室温での体積抵抗率の比率)を示す。
【0060】
ポリオレフィンポリマー及びナノ黒鉛の組成物は、電気伝導性を維持しながら、負荷量を効果的に低下させる。さらに、ポリオレフィンポリマー及び膨張ナノ黒鉛を伴う組成物は、半導電性シールド組成物でのより低いフィラー負荷量のために押出し加工性を改善し、また、広い温度範囲にわたって一様な導電性を改善する。ポリオレフィンポリマー及びナノ黒鉛を伴う組成物はワイヤ及びケーブルの用途のために有用である。この組成物は一様な導電性を提供し、また、中電圧用ケーブル及び高電圧用ケーブルの構成成分のための導電性配合物として使用することができる。
【実施例2】
【0061】
BET表面積が1000m/gである膨張黒鉛が、Staudenmaier法を使用して製造される。慎重に、0.1mgのこの高膨張黒鉛を250mlのジャーに計り取り、100mlのトルエン溶媒を加える。その後、溶媒混合物を、膨張黒鉛ウォーム(worm)物を粉々にして小板物にするために水浴中で20時間超音波処理する。別個のビーカーにおいて、1.9グラムのエチレンビニルアセテートコポリマーを、さらに100mlのトルエンにおいて撹拌しながら100℃でホットプレートの上で溶解する。樹脂が完全に溶解した後、溶液を超音波処理後の黒鉛溶液に加え、続けて80℃でさらに20分間超音波処理する。その後、溶液を冷却し、溶媒をロト蒸発(roto-evaporation)によって除く。残った樹脂を真空オーブンにおいて60℃で一晩乾燥する。
【0062】
その後、この粉末を、Lecoホットプレス機を150℃及び2分間の10ニュートンの圧力で使用してディスクにプレス成形する。棒状の塊(bar)をディスクから切断し、両末端を液体窒素温度で砕いて、新しい表面を棒状の塊の端部において露出させる。新たに露出した端部を銀塗料により被覆し、1時間乾燥させる。その後、棒状試験片の長さに沿った抵抗率を、抵抗計を使用して測定し、体積抵抗率を計算する。このサンプルは396Ω/cmの体積抵抗率を23℃で有する。EVA中の膨張黒鉛の顕微鏡写真が図に示される。
【0063】
本発明が前述の実施例により相当詳しく記載されているが、この詳細は例示目的のためでるので、下記の請求項において記載されているような発明に対する限定として解釈してはならない。米国特許及び特許査定された米国特許出願又は公開された米国特許出願(これらに限定されない)を含むすべての参考文献が参考として本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンポリマー及び膨張黒鉛を含む組成物。
【請求項2】
ポリオレフィンポリマーがポリプロピレンホモポリマー又はポリエチレンホモポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンポリマーが、少なくとも約50モルパーセントのプロピレン由来ユニットと、約20個までの炭素原子を含む少なくとも1つのα−オレフィンに由来するユニットに由来する残部とを含むポリプロピレンコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィンポリマーが、少なくとも約50モルパーセントのエチレン由来ユニットと、20個までの炭素原子を有する少なくとも1つのα−オレフィンに由来するユニットに由来する残部とを含むポリエチレンコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィンポリマーが約0.1g/10分から約50g/10分のメルトインデックスを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオレフィンポリマーが線状低密度ポリエチレンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記膨張黒鉛が少なくとも40m/gのBET表面積を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記膨張黒鉛が組成物の総重量の約0.1パーセントから35パーセントの間を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
一様な導電性を15℃から160℃の温度範囲にわたって提供する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
半導電性シールド層を含み、前記シールド層がポリオレフィンポリマー及び膨張黒鉛を含む電力ケーブル。
【請求項11】
前記ポリオレフィンポリマーがポリプロピレンホモポリマー又はポリエチレンホモポリマーである、請求項10に記載の電力ケーブル。
【請求項12】
前記ポリオレフィンポリマーが、少なくとも約50モルパーセントのプロピレン由来ユニットと、約20個までの炭素原子を含む少なくとも1つのα−オレフィンに由来するユニットに由来する残部とを含むポリプロピレンコポリマーである、請求項10に記載の電力ケーブル。
【請求項13】
前記ポリオレフィンポリマーが、少なくとも約50モルパーセントのエチレン由来ユニットと、20個までの炭素原子を有する少なくとも1つのα−オレフィンに由来するユニットに由来する残部とを含むポリエチレンコポリマーである、請求項10に記載の電力ケーブル。
【請求項14】
前記膨張黒鉛が少なくとも250m/gのBET表面積を有する、請求項10に記載の電力ケーブル。
【請求項15】
前記膨張黒鉛が組成物の総重量の約1パーセントから約15パーセントの間を構成する、請求項10に記載の電力ケーブル。
【請求項16】
前記半導電性シールド層が一様な導電性を15℃から160℃の温度範囲にわたって提供する、請求項10に記載の電力ケーブル。
【請求項17】
(i)ポリオレフィンポリマーと、(ii)250m/gを超えるBET表面積を有する、組成物の重量に基づいて約1wt%から約15wt%の膨張黒鉛とを含む半導電体組成物。
【請求項18】
前記ポリオレフィンポリマーが、エチレンと、4個から約20個の炭素原子の少なくとも1つの不飽和エステルとを含み、前記エステルが約10重量パーセントから約60重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記膨張黒鉛に加えて導電性フィラーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記さらなる導電性フィラーが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維、フラーレン及び導電性ポリマーの少なくとも1つである、請求項19に記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2010−513685(P2010−513685A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543017(P2009−543017)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/085832
【国際公開番号】WO2008/079585
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】