説明

ワイヤ挿入溝を有するチップ要素の製造方法

【課題】マイクロ電子チップに電力を供給するための2本の導電ワイヤを固定する溝を、溝間の距離を高精度に、かつ再現性良く形成する方法を提供する。
【解決手段】ウエハ20上に形成された複数のデバイス22から、溝14を有する複数のチップ要素を製造するチップ要素製造方法において、製造ステップが、前記ウエハ20上に犠牲膜26を前記溝が形成されるような高さで堆積し、前記各デバイス22の中央部を露出させたまま、かつ前記デバイスの端部を覆うように堆積する堆積ステップと、前記犠牲膜上にモールド28を塗布する塗布ステップと、前記モールドに硬化性材料30を注入する注入ステップと、前記硬化性材料を硬化させる硬化ステップと、前記ウエハを前記デバイスの間においてダイシングするダイシングステップと、前記犠牲膜を除去する除去ステップとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ電子チップ要素(microelectronic chip elements)に関するものであり、その最大ディメンジョンはミリメートルよりも小さいものとすることができ、例えばチップに電力を供給する目的を果たす導電ワイヤを固定する(secure)ものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、国際特許出願2009/112644に記載された、2つの平行なワイヤ12a及び12bを固定するチップ要素10の透視図を示す。要素10は、通常、平行四辺形の面を有する6面体(parallelepipedic)形状であり、2つの対向する側面は、それぞれ平行な溝14a及び14bを有し、溝は要素10の長さ全体に及ぶものである。これらの溝のそれぞれは、ワイヤ12a及び12bのうちの1つを受けている。
【0003】
ワイヤ12a及び12bは通常電気接続の役割を持ち、例えば、要素10のチップに形成された発光ダイオードに電流を供給するものである。従って、ワイヤ12a及び12bは接続され、各溝の側壁に形成された伝導バンプ16を用いてチップと電気的に接続される。溝の幅とバンプ16の高さとはワイヤ12の直径に従って選択され、各ワイヤがバンプと溝14の対向する側壁との間に差し込まれる。
【0004】
図1のタイプの要素は通常2つの部分で形成される。第1の部分18aは、要素の下の1/3部分(the bottom third)であり、チップにより形成される。第2の部分18bは、要素の残りの上部分であり、保護カバーを形成する。チップのアクティブ表面は、カバー18bと向かい合っており、バンプ16を備え、溝14の第1の側壁を形成する。カバー18bは、T型の断面を有しており、溝の第2の側壁と底面とを形成することができる。
【0005】
チップ要素10の小ささのために、チップ18a上にカバー18bをアセンブルすることはいくつかの問題を生じさせることとなる。特に、再現性を持って(in reproducible manner)、溝14の側壁を離す(separating)距離を確保(respect)することは難しい。上記の国際特許出願2009/112644に記載されているように、一方の側にあるバンプ16と他方の側にあるバンプと対向する溝の側壁との間の溝に挟まれたゴム(elastic)により、ワイヤ12を固定することが必要とされる。離す距離が大きい場合には、ワイヤ12を挟むことができない。離す距離が小さい場合には、要素10を破壊することなく、溝の中にワイヤ12を挿入することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、再現性と正確性と持った溝の側壁の間の距離を得ることができる手段を提供することが求められている。
【0007】
従って、この要求に合わせるようにするために、製造方法は、ウエハ(20)上に形成された複数のデバイス(22)から、溝(14)を有する複数のチップ要素(10)を製造することを提供する。この方法は、ウエハ(20)上に犠牲膜(26)を溝が形成されるような高さ(level)で堆積し、各デバイス(22)の中央部を露出させたまま、且つ、デバイスの端部を覆うようにする堆積ステップと、犠牲膜上にモールド(28)を塗布する(applying)塗布ステップと、モールドに硬化性材料(30)を注入する注入ステップと、硬化性材料を硬化させる硬化ステップと、ウエハをデバイスの間においてダイシングするダイシングステップと、犠牲膜を除去する除去ステップと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、前述の、2つのワイヤを固定するチップ要素の透視図である。
【図2】図2Aから図2Fは、方法の各ステップを示すものであり、これにより、正確且つ再現性がある幅の溝を有するチップ要素を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
他の利点及び特徴は、本発明の特定の実施形態についての下記の説明により、さらに明らかにされる。本発明の特定の実施形態は、単なる例示であって、本発明を限定するものではない。本発明の特定の実施形態は、添付の図面により示される。
【0010】
図2Aはウエハ20の断面の部分を示し、ウエハ上には、集積されたデバイス22のセットが、所望のチップ要素のチップ18aに対応するように形成されている。これらのデバイス22のそれぞれは、それらの2つの端部に、後にワイヤ12との接続を確立する目的のための伝導バンプ16を有する。
【0011】
ウエハ20は、例えばシリコンから形成され、この例においては、ウエハ20の厚さは最終的なチップ要素の所望のディメンジョンと両立できるように(compatible)、薄いものとなっている。好ましくは、ウエハ20は薄く、剛性(regidity)が減少していることから、ウエハ20は、その裏面を介して支持プレート、又は“ハンドル”24に固定され、製造方法の各ステップにおいて所望の剛性を持ったアセンブリを与える。支持プレート24上のウエハ20のアセンブリは、通常、デバイス22の様々な製造オペレーションの間において高い温度にさらされることに耐える役割を持っていなくてはならない。
【0012】
図2Bにおいては、犠牲膜26が薄膜状にウエハ20の上面の上に堆積され、例えば100μmである。この膜26は、半導体分野の通常の技術により、パターニング、平坦化、及び、除去が可能であるような材料から形成される。材料は、例えば、樹脂、ポリイミド、又は金属である。
【0013】
以下からわかるように、この膜26の厚さは、将来の溝14の幅を決定する。通常の堆積技術は、膜の厚さにおける十分に満足するような正確性を得ることを可能にする。正確性が求められる距離は、実際、溝の対向する壁から、各バンプ16の上面を離す距離である。バンプ16を形成する技術もまた、所望の正確性を得ることを可能にする。
【0014】
図に示されるように、例えばフォトリソグラフィを用いて膜26はパターニングされ、デバイス22の中央部を露出しつつ、バンプ16を有する端部(将来、溝の第1の側壁を形成するようにデザインされた領域)を覆う。パターニングは、好ましくは異方性のものであり、膜26の開口部は、ウエハと垂直な壁となり、これらの壁は将来溝の底面を定めることとなる。
【0015】
図2Cにおいて、デバイス22に対応する空間を備えるモールド28を、膜26上に塗布する。モールド28の空間は、膜26の孔とともに、例えばT型断面を持ったカバーといった、将来のチップ要素のカバー18bの形状を決定する。
【0016】
カバーになるような所望の性質を有する硬化性液体30は、例えばデバイス22が発光ダイオードである場合には透過性エポキシ樹脂であり、モールド28の各空間に注入される。
【0017】
図2Dには、樹脂30が硬化し、モールド28を外した後の結果が示されている。樹脂30は、デバイス22を覆い、カバー18bを形成し、デバイス22の周辺の領域における膜26を露出する。
【0018】
図2Eにおいて、上面を介してダイシングが行われ、デバイス22を切り離し、チップ18aを形成する。このようにして、ダイシングカット32は、カバー18bの間のモールドによって残された空間を貫通し、膜26を貫通し、且つ、ウエハ20を貫通することなくウエハ20を刻む(start to cut)。
【0019】
図2Fにおいて、例えばプラズマや化学エッチングを用いて、残った犠牲膜26を除去する。カバー18bにより決定された溝14は、このようにしてチップ18aのバンプ16の上に現れる。
【0020】
犠牲膜26の除去は、好ましくはダイシングの後に行われる。この順番で進めることによって、ダイシングのけずりくずが溝14の中に堆積することを避け、後にワイヤ12とバンプ16との間の電気的接続の確立を妨げることを避ける。
【0021】
支持プレート24を外すことを行い、続いて、個々のチップ要素10を得るために、ダイシングカットの底面における面Pまで、裏面のウエハ20を研磨する。
【0022】
プレート24を外し、研磨している間に、ウエハ20を固定保持するために、カバー18bを、例えば除去可能な接着支持体(不図示)の上に押し付けることができる。研磨後、個々のチップ要素10は、接着支持体の上に重ねられ、ウエハのダイシング後の従来のチップの状態と似た状態におかれる。チップ要素は、従来のチップハンドリングツールにより、利用する(exploit)ことができる。
【0023】
変形例によれば、図2Eのダイシングステップの前に支持プレート24は外され、ウエハ20は、その裏面を介して除去可能な接着支持体に固定される。ダイシングカット32は、ウエハ20を貫通し、接着支持体を切り込む(cut into)。
【0024】
チップ要素の製造を完了するために、後は、未処理のままであった溝14の面に位置する犠牲膜26の残った部分を除去する。この除去は、接着と相性の良い低い温度の方法を用いて行われることが好ましく、例えば、化学エッチングにより除去することが可能な金属から形成された犠牲膜26を与えることによって行われる。
【0025】
先の場合には、支持体の上に積み重ねられた各々のチップ要素10のセットを持ち、従来のハンドリングツールによりすぐに用いることができる。この変形例においては、カバー18bにより支持体の上に積層する代わりに、要素は、チップ18aにより積層される。
【0026】
この変形例の利点の1つは、ウエハ20の裏面の研磨ステップを避け、研磨による削りくずが溝14の中に堆積するリスクを避けることである。
【0027】
他の実施形態によれば、図2Cに示されるモールドは、各デバイス22のそれぞれに対して個々の空間を備えず、しかし、デバイス22のセット全体を覆うように伸びる1つの空間を備える。この場合、樹脂30の注入及び硬化の後、図2Dのステップにおいて、犠牲膜26を均一に覆う樹脂30の層となる。個々のカバー18bは、図2Eのステップにおいて、ダイシングカット32により形成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ(20)上に形成された複数のデバイス(22)から、溝(14)を有する複数のチップ要素(10)を製造する製造方法であって、以下のステップである、
− 前記ウエハ(20)上に犠牲膜(26)を前記溝が形成されるような高さで堆積し、前記各デバイス(22)の中央部を露出させたまま、且つ、前記デバイスの端部を覆うようにする堆積ステップと、
− 前記犠牲膜上にモールド(28)を塗布する塗布ステップと、
− 前記モールドに硬化性材料(30)を注入する注入ステップと、
− 前記硬化性材料を硬化させる硬化ステップと、
− 前記ウエハを前記デバイスの間においてダイシングするダイシングステップと、
− 前記犠牲膜を除去する除去ステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記モールド(28)は各チップに対応する空間を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ダイシングステップは前記犠牲膜の除去ステップの前に行う、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ダイシングステップで形成されるダイシングカット(32)は、前記ウエハ(20)を完全に貫通するものではなく、前記方法は、前記ダイシングカットに到達するまで前記ウエハの裏面を研磨するステップをさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ウエハはその裏面を介して支持プレート(24)に固定され、前記方法は、前記ダイシングステップ後、前記支持プレートから前記ウエハを外すステップをさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−240481(P2011−240481A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−110054(P2011−110054)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【Fターム(参考)】