説明

ワクチン免疫療法

【課題】癌または他の抗原産生性の疾患または病変を治療する免疫療法の組成物および方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態によると、抗原産生性の疾患または病変を患う患者における少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物であって、好ましくはIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ(ガンマ)、およびTNF−α(アルファ)を含む有効量のサイトカイン混合物を含有する組成物が提供される。該サイトカイン混合物は、抗原産生性の疾患または病変に関連する抗原のアジュバントとして作用して、該抗原に対する患者の免疫応答を増強する。従って、本発明のサイトカイン混合物を用いて、抗原産生性の疾患または病変を患う患者における少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘発するための方法もまた提供される。該組成物および方法は、癌、感染症または持続性病変といった抗原産生性の疾患の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチン免疫療法に関する。より具体的には、本発明は、癌または他の抗原産生性の疾患状態または病変を患う患者における、内因性または外因性のペプチドまたはタンパク質抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの癌は抗原を有し、該抗原は、宿主の免疫系に作用すると、腫瘍の退縮をもたらしうることが次第に明らかになりつつある。これらの抗原は血清学的および細胞免疫性の両方のアプローチによって定義されており、これらはB細胞およびT細胞の両エピトープの定義に至った(Sahin、1997;Van der Eynde、1997;Wang、1999)。これらの結果に基づいて、腫瘍の退縮を誘発することが癌免疫療法治療家にとって目標となった。しかしながら、従来、成功した試みは散発的であり、および、頻度および規模において一般に小さなものある。
【0003】
癌患者を、即ち、腫瘍抗原に対して免疫する試みにおける基本的な問題は、担癌状態が、腫瘍および宿主の免疫系障害の両方に由来する免疫抑制機序と関連していることである(Kavanaugh、1996)。このため、免疫が困難となり、現在までのところ安定して行うことは不可能であった。免疫の抑制ないし低下は免疫系応答能の低下を伴う。このような抑制は、薬剤誘導性、即ち薬剤治療によって誘導される可能性、例えばAIDSなどでのウイルス誘導性である可能性、または、癌などの疾患状態によって誘導される可能性がある。この状態では免疫系は事実上停止する。癌などの疾患状態の場合、生体は腫瘍抗原に対して自己防御することはできず、このため、腫瘍の成長を許容し、および転移する可能性もある。
【0004】
様々な腫瘍免疫戦略が開発されてきた。これらの戦略のすべては複雑であり、感染症に用いられる従来の免疫戦略から大きく逸脱している(例えばWeber、2000を参照)。このような腫瘍免疫戦略の一つは、キーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)と共役し、かつ、デトックス(登録商標)マイコバクテリア・アジュバント、および低用量のシクロフォスファミド(Maclean、1996)とともに投与されるセラトープ(登録商標)、即ち、シアリルTN多糖ムチン抗原にかかわる。転移性乳癌および卵巣癌の患者におけるこのワクチンの使用は、患者の低い比率(%)でのみ著名な臨床的反応(即ち、50%を上回る腫瘍の縮小)をもたらした。
【0005】
腫瘍抗原を発現する遺伝子の発現ベクターとしてウイルス構築物を用いる遺伝子治療も試みられてきた。例えば、ヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)E6およびE7タンパク質配列の修飾された形態をコード化する組換えワクチン・ウイルス構築物が、子宮頸癌の患者の免疫に用いられてきた。この構築物による免疫は、疑問のある臨床的反応をもたらした(Borysiewickz、1996)。また、組換えワクチンPSA(前立腺特異抗原)構築物が前立腺癌患者におけるワクチンとして用いられたSanda、1999も参照のこと。
【0006】
別のアプローチは樹状細胞媒介性の治療である。例えば、樹状細胞は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)のオリゴペプチド断片を用いてパルスした。次いで、樹状細胞は(PSMA抗原の初回刺激の存在時または非存在時に)転移性前立腺癌の患者に投与された。著名な臨床的反応が患者の低い比率でのみ得られた(Murphy、1999;Tjoa、2000も参照)。
【0007】
さらに、悪性黒色腫を患う癌患者に免疫するために、自己腫瘍が、低用量のシクロフォスファミドおよびBCG(カルメット・ゲラン桿菌)とともに用いられてきた。しかしながら、臨床的反応はほとんど報告されなかった(Mastrangelo、1996)。他の戦略は、MAGE抗原の様々なワクチンアジュバントとの併用を含んだ。この戦略は、悪性黒色腫の患者に反応を起こしたとしても、非常に弱い反応を起こした(私信、Thierry Boon)。
【0008】
Doyleらのいくつかの特許(米国特許第5,503,841号;第5,800,810号;第6,060,068号;第5,643,565号;および第5,100,664号)は、インターロイキン2(IL−2)を用いて患者における免疫応答を増強する方法を開示する。この方法は、感染症に応答した使用のために開示され、免疫原性であることが知られている抗原を用いて主に機能する。限定的な適用性が示された。上記に開示されるように、癌の治療には異なるアプローチを必要とすることが知られている。今日まで、IL−2を用いた治療は、腎細胞癌および悪性黒色腫の二つの癌において軽度の効果を示してきた(20%未満の奏効率)。該治療は一般に、頭頸部の扁平上皮細胞癌、子宮頸癌、および前立腺癌には無効と考えられる。従って、この治療はこれらの用途には承認されていない。
【0009】
複雑な構造および高分子量の既知の「古典的」抗原を用いた健康な患者における予防と、腫瘍抗原またはペプチド(一般的に不成功)を用いた免疫抑制患者(一般的に不成功)における治療(一般的に不成功)とを対比することが重要である。前者は容易であり、われわれが今日用いるウイルス・ワクチンはそれらの有効性を証明する。後者は30年の真剣な努力にもかかわらず、日常では不可能に近い。
【0010】
さらに、有効な癌ワクチンは、おそらくは抗体産生よりも優先的に、細胞媒介性の免疫を刺激することを必要とする。記載したように、様々な抗原、アジュバントおよびワクチン構築物を用いた多数の検討にもかかわらず、今日までの臨床試験のデータは失望させるものであった。T細胞媒介性抗癌免疫応答に対する重要なイベントは、主として、腫瘍または免疫の部位に流入する局所リンパ節中のT細胞に対する抗原の提示であり、およびその後の、T細胞の活性化および末梢部位への移動である。実際には、組織マクロファージ、好中球および/または樹状細胞による抗原の取り込み、および、MHCクラスIおよびクラスII抗原と併用して処理されたペプチドのリンパ節中のT細胞への提示は、完全免疫応答にとって不可欠である。T細胞の免疫活性化の成功への鍵は、免疫部位および流入局所リンパ節の両方でワクチンに対する免疫応答を促進する、適切なサイトカイン環境を生成することである。
【0011】
免疫応答の動態には二つの段階が含まれる。前者は抗原および可溶性タンパク質のリンパ節への流入であり、リンパ節中で初回の免疫活性化が発生する。その24〜48時間後、抗原提示細胞(APC)、とりわけ樹状細胞は、免疫部位から流入リンパ管を介してリンパ節へと移動し、リンパ節において、抗原の提示および活性化の第二の波が発生する。より具体的にはAPCはリンパ節内で、共刺激受容体とのならびにT細胞受容体との結合によって前駆体Tヘルパー細胞と相互反応し、Tヘルパー1(Th1)細胞とTヘルパー2(Th2)細胞のいずれかまたは両方を産する。これらのサブセットの比率によって、その後に発生する細胞媒介性または体液(抗体)性のいずれかの免疫応答の進行が制御される(Th1はDTH/細胞毒性にバイアスするが、一方、Th2は抗体の産生にバイアスする)。これらの活性化されたT細胞の誘導の後、免疫応答は低下し、主として記憶T細胞が残る。該記憶T細胞は、抗原に対する再暴露に応答可能である。
【0012】
この経路における重大なイベントは、サイトカインによって媒介され、サイトカインは、応答を体液性ないし細胞学的な免疫の方向にバイアスする。IL−1、IL−2、IFN−γ、GM−CSF、IL−6、TNF−α、IL−12およびIL−8といった局所的に産生されるサイトカインは、免疫系細胞の動員、抗原の取り込み、樹状細胞の成熟、制御性T細胞活性の減衰、T細胞の教育および増殖、およびTh1細胞の発生と関連している(Naylor、2003)。応答の相互依存性とは、任意の所定のサイトカインの活性が前駆体イベントの発生に依存していることを意味する。その結果、異なるサイトカインに対する細胞応答の動態に応じて、同時に存在する複数のサイトカインが、注射部位および流入局所リンパ節の両方において、異なる効果をもちうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、出願人に対して発行された米国特許第5,632,983号および第5,698,194号に開示された、癌患者もしくは他の抗原産生性の病変ないし疾患状態を患う他の患者といった患者を免疫するための天然サイトカイン混合物(NCM)を用いる。より具体的には、過去に米国特許第5,698,194号において、NCM(本明細書中において「IRX−2」ともいう)は、老齢の免疫抑制マウスにおけるT細胞の発生および機能の促進に有効であることが示されてきた。NCMは、胸腺中の未成熟T細胞の比率を低下させるとともに、成熟T細胞の比率を増加させることが示されてきた。NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−γ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、および微量のIL−3、IL−4、IL−7を含んだ。
【0014】
本明細書中に詳細に記載された開示より、本発明のサイトカイン組成物およびそれらを用いる方法は、関心のある任意の抗原、例えば癌または腫瘍抗原、ならびに、他の持続性疾患状態または病変によって産生された抗原に対する免疫応答を刺激するのに適用できることは明らかであろう。本明細書中に詳細に記載されたように、本発明のサイトカイン混合物はアジュバントとして作用して、好ましくはin vivoでT細胞の免疫を刺激する。
【0015】
さらに本発明は、内因性抗原、即ち、in vivoに存在し、APC(樹状細胞など)によってin vivoで処理され、提示されるタンパク質ないしペプチド、または、外因性抗原、即ち、in vitroで単離ないし生成され、次いで、樹状細胞が存在し、かつ、抗原を例えばT細胞に効果的に提示することが可能な環境(例えばリンパ節)にin vivoで投与されるタンパク質またはペプチドのいずれかに対する免疫応答を誘発することに関するが、これに限定されない。とりわけ、本発明がペプチド抗原に関する場合、この目標は克服できないと考えられている。ペプチドは有効な免疫原となるには非常に小さすぎると、一般的に考えられている。ペプチドの半減期は短く、および、多くの場合、患者が免疫学的に耐性を有する非突然変異体の自己抗原である。従って、このような抗原に対する免疫応答を得ることは、自己免疫を誘起することと等しい。
【0016】
本明細書中に記載のとおり、本発明は、ワクチン免疫療法の矛盾のない、かつ、有効な方法を開発するために有用である。該方法において、本発明のサイトカイン組成物を、腫瘍抗原、および、ペプチドをはじめとする内因性および外因性の疾患関連抗原のいずれかまたは両方と併用することにより、癌患者などの患者における免疫応答が誘発される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、癌または他の抗原産生性の疾患ないし病変を治療する免疫療法の組成物および方法に関する。本発明の一実施形態によると、抗原産生性の疾患または病変を患う患者における少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物であって、好ましくはサイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ(ガンマ)、およびTNF−α(アルファ)を含む有効量のサイトカイン混合物を含有する組成物が提供される。好ましい実施形態によると、該サイトカイン混合物は、米国特許第5,632,983号および第5,698,194号に開示される、天然サイトカイン混合物、即ちNCMである。該サイトカイン混合物は、抗原産生性の疾患または病変に関連する抗原のアジュバントとして作用して、該抗原に対する患者の免疫応答を増強する。
【0018】
IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αを含有する本発明のサイトカイン混合物は、天然、組換えないしPEG化したサイトカイン、または、天然、組換えないしPEG化したサイトカインの混合物を含みうる。本発明の別の実施形態によると、該サイトカイン混合物は、IL−12、GM−CSF、およびG−CSFなどの他の天然、組換えないしPEG化したサイトカインをさらに含有しうる。
【0019】
本発明はまた、抗原産生性の疾患または病変を患う患者における少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αを含有する有効量のサイトカイン混合物を投与することを含み、該サイトカインは抗原のアジュバントとして作用して、患者における該抗原に対する免疫応答を刺激する、方法にも関する。
【0020】
さらに本発明によると、該抗原は内因性抗原および外因性抗原の両方またはそのいずれかでありうる。該抗原が内因性抗原である、即ち、in vivoで存在する本発明の実施形態では、該サイトカイン混合物は患者に投与され、および、該サイトカインは、内因性抗原のアジュバントとして作用して、患者の免疫応答を刺激する。該抗原が外因性抗原である、即ち、in vitroで単離ないし生成され、および、患者にin vivoで投与される実施形態では、該サイトカイン混合物は外因性抗原と併用して投与される(同一製剤でまたは個別の製剤のいずれかで、同時または異なる時間のいずれかで)。該サイトカイン混合物は、外因性抗原のアジュバントとして作用して、該抗原に対する免疫応答を刺激する。
【0021】
本発明の組成物および方法の好ましい実施形態によると、該抗原は腫瘍抗原であり、および、該抗原産生性の疾患は、頭頸部の扁平上皮細胞癌(H&N SCC)、前立腺癌、黒色腫、乳癌、リンパ腫、子宮頸癌、または肝臓癌などの癌である。代替的には、該抗原は、肝炎、結核、ないしHIVなどの感染症、または、皮膚ないし全身性カンジダ症、パピローマ・ウイルスと関連する性病いぼ、ないし子宮頸部形成異常などの持続性病変と関連しうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明については、添付図面に照らして下記の詳細な説明を参照することによって一層理解されるので、本発明の他の利点は容易に理解される。
【図1】正常対照、H&N SCC癌患者の対照群、H&N SCC癌患者のNCM治療群におけるリンパ節の大きさを示す棒グラフである。
【図2】図2Aは、T細胞領域を示す棒グラフであり、図2Bは、正常対照、H&N SCC対照、およびNCMで治療したH&N SCC患者における密度を示す。
【図3】図3Aは上記3つの治療群におけるB細胞領域を比較する棒グラフであり、図3Bは、同群における濾胞を比較する棒グラフである。
【図4】図4Aは上記3つの治療群における他の細胞の比較であり、図4Bは、同群における洞組織球症(SH)の比較を示す。
【図5】節のB&T(B細胞およびT細胞)および腫瘍のB&Tの適合プロットを示すグラフである。
【図6】48ヶ月時点での治療患者の生存率を示すグラフである。
【図7】わずかな奏効者および無奏効者と比較した、完全奏効者および部分奏効者の生存率を示すグラフである。
【図8】生存率に対する病理指標の関係を示すグラフである。
【図9】生存率に対するリンパ球浸潤の関係を示すグラフである。
【図10】24ヶ月時点での治療患者の生存率%(用量反応)を示すグラフであり、「x」は約100IU/mlのIL−2に等しい。
【図11】図11Aは、SH+癌患者のリンパ節中に、部分的に成熟したCD83+樹状細胞(DC)の蓄積を示す棒グラフである。図11BはNCM(IRX−2)による治療直後のCD86+活性化DCの数の増加を示す棒グラフである。
【図12】DC上のCD83の発現の増加によって検出されるDCの成熟を、NCM(IRX−2)が誘起することを示すグラフである。
【図13】サイトプシン製剤中の単球由来のDCの形態学に対してNCMが及ぼす効果を示す。NCMで処理した細胞(図13B)は、細胞学的な突起および大きな不規則形状の核など、成熟したDCの形態学的特徴を示した。
【図14】NCM(IRX−2)でインキュベートした末梢血単核細胞(PBMC)の発現による、CD1a抗原のダウン・レギュレーション、MHCII、CD86、CD40、およびCD54(ICAM−1)抗原のアップ・レギュレーションを示すヒストグラムを含む。これらの変化はNCMがDCの成熟を刺激することを示す。
【図15】NCM(IRX−2)が未熟なDCの細胞内活性を低下させることを示すグラフであり、この活性の低下はDCの成熟を示唆する。
【図16】NCM(IRX−2)がDCのT細胞刺激能を増強することを示すグラフであり、この増強はDCの成熟および活性化を示す。
【図17】図17Aは、IL−12を細胞内に産生するDCの数を、NCM(IRX−2)が増加させることを示す棒グラフである。IL−12は、活性化された成熟DCによって産生されたサイトカインである。図17Bは、DCによって分泌される生物活性IL−12の全数を、NCM(IRX−2)が増加させることを示す棒グラフである。
【図18】DC中のVEGF媒介性アポトーシスを、NCM(IRX−2)が減少させることを示す棒グラフであり、DCの生存に対するNCMの防御効果を示している。
【図19】図19Aは、付着PBMCをNCMで処理した後の、活性化マーカー、CD86、HLA−DR、CD80およびCD40の組み合わせに対して陽性の染色を示した単球/マクロファージの、フロー・サイトメトリーで求めたパーセント比率の増加を示す、二つの棒グラフを含む。図19Bは、付着PBMCをNCMで処理した後の、活性化マーカー、CD86、HLA−DR、CD80およびCD40に対するフロー・サイトメトリーで求めた平均蛍光強度(MFI)の増加を示す、一連の棒グラフである。
【図20】本発明のNCMが単球/マクロファージを活性化すること、即ち、活性化マーカー、CD86、HLA−DR、CD80およびCD40の発現を、TNF−αを上回る程度まで誘起することを示す棒グラフを含む。
【図21】本発明のNCMが単球/マクロファージを活性化すること、即ち、免疫抑制サイトカインIL−10の存在時であっても、活性化マーカー、HLA−DR、CD86およびCD40を誘起することを示す棒グラフを含む。IL−10の存在時および非存在時の両方において、NCMはLPSよりも単球/マクロファージの活性化にすぐれている。
【図22】本発明のNCMが、活性化された単球/マクロファージからのTNF−αの産生を刺激し、および、IL−10の免疫抑制効果を克服することを示す棒グラフである。NCMは、LPSを上回る程度でTNF−αの産生を刺激した。
【図23】本発明のNCM(IRX)をはじめとする、様々な共役体およびアジュバントで免疫したマウスの、前立腺特異的膜抗原(PSMA)のペプチド特異的DTH応答を示す図である。該応答は各マウスのmm単位の腫脹(点)および平均(棒)として示され、アジュバントはx軸上に記載し、未感作とは免疫されていないマウスを示す。他のすべてのマウスは、(KLHと)指示しない限り、オブアルブミンPSMAペプチド共役体で免疫される。
【図24】図24Aは、OVA−PSMAまたはKLH−PSMA共役体のいずれかと併用して本発明のNCM(IRX−2)で免疫し、および次いで(共役体を生成するのに用いられた)PSMAペプチドで惹起したマウスにおける、DTH検定におけるペプチド特異的DTH免疫応答の増強を示す。各マウスの腫脹の増加はデータポイントで表し、腫脹の増加の平均は影付の四角形で表す。図24Bは、共役体の免疫において用いられる担体のみでの惹起に対するDTH応答を示す。
【図25】OVA−PSMA共役体およびNCMで免疫されたマウスにおける、ペプチド特異的DTH応答に及ぼすシクロフォスファミド処理の影響を示す。シクロフォスファミド処理はDTH応答に効果を及ぼさなかった。
【図26】本発明のNCM(IRX)をはじめとする、様々なアジュバントがペプチド特異的DTH応答に及ぼす効果を、各アジュバントと併用してPSMA共役体で免疫したマウスにおいて比較して示す。NCMのアジュバント効果は、試験を実施した他のアジュバントよりも大きかった。未感作のマウス、即ち、非免疫マウスは陰性対照を表す。
【図27】図27Aは、アジュバントとしてNCM(IRX)またはミョウバン(alum)のいずれかと併用してOVA−PSMA共役体で免疫した、老齢マウス対若齢マウスのペプチド特異的DTH応答を示す。本発明のNCMは、老齢マウスおよび若齢マウスの両方において、ミョウバンと比較してより大きなペプチド特異的DTH応答を刺激した。図27Bは、アジュバントとしてNCM(IRX)またはミョウバンのいずれかと併用してPSMA共役体で免疫した、老齢マウス対若齢マウスの担体特異的DTH応答を示す。本発明のNCMは、老齢マウスにおける担体特異的DTH応答を、若齢マウスでみとめられた応答へと回復させた。
【図28】T細胞応答KLH−PSMA共役体および本発明のNCM(IRX−2)で免疫した、マウス由来の脾臓細胞によって分泌されるIFN−γの形態でのT細胞応答の増強を示す。結果は、各マウス(データポイントマーカー)ならびに応答の平均(影付の棒)について表される。分泌されたIFN−γのすべての増加は、未感作対照と比較して統計的に有意であった。
【図29】本発明のNCMと併用してPSMA共役体で免疫したマウスにみとめられた血清抗体応答を示す。図29Aは、OVA−PSMA共役体およびNCM(IRX)、ミョウバンまたはCpGで免疫されたマウスにおける、OVA担体への血清抗体応答を、他のアジュバント、即ち、ミョウバンおよびCpGと比較して示す。データは、1群あたりマウス5〜10匹の平均および標準誤差として提示される。図29Bは、OVA−PSMA共役体、およびNCM(IRX)、ミョウバンまたはCpGで免疫したマウスにおける、PSMAペプチドに対する血清抗体応答を示す。図29Cは、NCM(IRX)、ミョウバンまたはPBSと併用して、KLH−PSMA共役体で免疫したマウスにおけるPSMAペプチドに対する血清抗体応答を示す。結果はELISA検定によって求められ、および、光学密度として提示される。
【図30】PSMAペプチド抗原と併用して本発明のNCMで治療した前立腺癌患者3例における6ヶ月間のPSA濃度の安定化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、癌または他の抗原産生性の持続性病変ないし疾患状態を治療する免疫療法の組成物および方法に関する。本発明はより具体的には、癌または他の抗原産生性の疾患ないし病変に関連する抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物および方法であって、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αを含有するサイトカイン混合物が、患者における該抗原に対する免疫応答を刺激するのに有効な量だけ、患者に投与される組成物および方法に関する。本発明によると、抗原は内因性抗原および外因性抗原のいずれかまたは両方であってもよく、および、サイトカイン混合物は抗原のアジュバントとして作用して、患者における該抗原に対する免疫応答を刺激する。
【0024】
本明細書中に使用される用語「アジュバント」は、特定の抗原に対する免疫応答を増強する能力をもつ組成物を意味する。このような能力は、免疫媒介性の防御の有意な増加によって現れる。アジュバントが有効であるためには、抗原部位にまたはその近傍に送達されなければならない。免疫の増強は、典型的には、抗原に対して生じる抗体の力価の有意な増加(通常10倍を上回る)、および、細胞学的な免疫の増強、のいずれかまたは両方によって明示され、後者は、陽性皮膚試験、細胞障害性T細胞検定、IFN−γないしIL−2のELISPOT検定またはT細胞の腫瘍内浸潤により、測定できる。本発明のサイトカイン組成物は、T細胞媒介性の免疫応答を増強するのに特に適している。本発明のサイトカイン組成物のアジュバント効果には、未感作T細胞の生成、樹状細胞の分化および成熟の促進、単球およびマクロファージの刺激、および、癌患者の場合は腫瘍へのリンパ球浸潤の増加、腫瘍の断片化、腫瘍の退縮、ならびにリンパ節内における洞組織球症の縮小を含む。
【0025】
本明細書中に使用される用語「腫瘍関連抗原」とは、腫瘍に対する免疫応答を誘起する能力があるタンパク質、またはペプチド、または他の分子を意味する。これは、PSMAペプチド、MAGEペプチド(Sahin、1997;Wang、1999)、パピローマ・ウイルス・ペプチド(E6およびE7)、MAGE断片、NY ESO−1、または他の類似の抗原を含みうるが、これらに限定されない。かつて、これらの抗原は、その大きさ、即ち、これらの抗原が小さすぎるとみなされていたこと、または、免疫原性がないとかつて考えられていた(即ち、自己抗原であるとみなされていた)ことのいずれかを根拠に、患者を治療するのに有効とはみなされていなかった。
【0026】
本明細書中に使用される「NCM」とは、米国特許第5,632,983号および第5,698,194号に定義および記載される、天然サイトカイン混合物を意味する。簡潔には、NCMは、4−アミノキノロン抗生物質の常在下で、および、分裂促進因子の常在またはパルス存在下で調製され、該分裂促進因子は好ましい実施形態ではPHAである。NCMは、天然発生型サイトカインのほかに、組換えサイトカインとPEG化したサイトカインのいずれかまたは両方を含むことができ、その産生は当業において周知である(例えば米国特許第4,738,927号、第4,992,367号、米国特許出願第2004/0136952 A1号、およびMehvar、2000を参照)。
【0027】
本明細書中に使用される用語「内因性抗原」は、in vivoで、即ち、患者などの生体の内部で産生され、および内部に存在し、その結果、本発明のサイトカイン組成物のin vivoでの投与後、該サイトカインが患者の内部の抗原のアジュバントとして作用して、抗原に対する免疫応答を刺激する抗原を意味する。
【0028】
本明細書中に使用される用語「外因性抗原」は、in vitroで、即ち、治療対象の生体の外部で産生、即ち、単離または生成され、および、in vivoで生体(即ち、患者)に投与され、その結果、本発明のサイトカイン組成物のin vivoでの投与後、該サイトカインが患者の内部の抗原のアジュバントとして作用して、抗原に対する免疫応答を刺激する抗原を意味する。外因性抗原は、化学合成ないし遺伝子工学による化合物ないし分子であってもよく、または、in vivo環境から抽出され、および、in vitroで単離された内因性抗原であってもよい。抽出された抗原は、in vivoでの再導入のために処理または別の方法で修飾されてもよい。外因性抗原は、本発明のサイトカイン組成物とは別の薬理学的製剤でもまたは同一の製剤のいずれでも投与できる。
【0029】
上記に定義されるように、本発明のサイトカイン混合物はアジュバントとして作用する、即ち、特定の抗原への患者の免疫応答を刺激または増強する。さらに、本発明のサイトカイン組成物および方法は、T細胞媒介性の免疫応答を刺激するのに特に適している。本発明の組成物および方法によって促進される免疫応答は、未感作T細胞の誘導または生成、抗原のT細胞への適切な提示(例えばリンパ節内で)を提供する樹状細胞の分化および成熟、および単球ならびにマクロファージの活性化を含む。具体的には、癌患者において本発明の組成物および方法によって促進される免疫応答は、リンパ球による腫瘍浸潤、腫瘍の断片化ならびに退縮、および洞組織球症の(存在する場合は)縮小を含む。
【0030】
より具体的には、本発明の組成物および方法は、未感作T細胞の産生を誘起することによって、患者における免疫の低下/抑制を克服するのに役立つ。本明細書中に定義される用語「未感作」T細胞は、新たに産生されたT細胞を意味し、該T細胞は抗原に暴露されていない。このようなT細胞は非特異的であるが、腫瘍ペプチドなど、T細胞に暴露した抗原をもつ成熟樹状細胞によって抗原が提示された直後に、特異的になることができる。従って、本発明の組成物および方法は、新しいT細胞を補充または生成する(以下の実施例2および8を参照)。
【0031】
さらに、とりわけ腫瘍を有する癌患者では、本組成物および方法は、顕著な腫瘍の断片化および退縮を伴う、腫瘍へのリンパ球浸潤を提供する。例えば、以下の実施例2〜7を参照されたい。このような浸潤は、臨床的反応を最大にし、および、生存率を最大にするために重要である。例えば、リンパ球:顆粒球ないしマクロファージの90:10の比率での浸潤が最適であり、好ましくは、T細胞とB細胞のいずれかまたは両方の浸潤は、広範性で集中的であり末梢性でない。組織学的標本における腫瘍の縮小および断片化は良好な免疫応答を反映し、および、本発明の組成物によるアジュバント効果を示す。
【0032】
さらに、特異的なリンパ節の変化は、リンパ節の腫脹などの有効な免疫応答を示す。即ち、大きさの腫瘍に起因する縮小の逆転だけでなく、正常な節の大きさと比べた大きさの全体的な増加、ならびに、T細胞およびB細胞領域の増加も示す。さらに、癌患者のリンパ節は、多くの場合、洞組織球症(SH)とも呼ばれる大型の組織球の類洞内蓄積を含有する。SHは未熟な樹状細胞の蓄積であると信じられており、該細胞は腫瘍抗原を取り込み、処理するが、成熟できず、および、これらの腫瘍ペプチドを未感作T細胞に提示できない。T細胞への抗原の適切な提示がなければ、これらのT細胞はTh1およびTh2のエフェクター細胞を刺激することができない。通常は、該刺激は、体内において細胞媒介性および抗体媒介性の免疫をそれぞれきたす。下記の実施例2〜7に示すように、本発明のサイトカイン組成物および方法は、癌患者のリンパ節内でSHを減少させ、および、上記に記載の様々なリンパ変化を産生し、ここでもまた、本発明の組成物によるアジュバント効果を示した。
【0033】
in vivoでの適切な免疫応答の産生時の抗原提示において、樹状細胞がこのように重要な役割を果たすことが知られているので、抗原への良好な免疫応答を誘発する際には、樹状細胞の成熟に対する刺激効果を有する薬剤がアジュバントとして作用する。下記の実施例9に示されるように、本発明のサイトカイン組成物は樹状細胞の成熟を促進する。さらに、実施例2のデータは、本発明のサイトカイン組成物が、SHを引き起こす樹状細胞欠損を、即ちDCの成熟を促進することによって取り除くこと、および従って、具体的には癌患者において、本発明の組成物は複数のアジュバント効果を提供する、即ち、リンパ節内でSH中のDCを取り除き、DCの成熟を全般的に促進することを示している。
【0034】
本発明のサイトカイン組成物はまた、単球/マクロファージの強力な活性化因子として作用することによって、さらなるアジュバント効果を提供する。単球は体内のDCおよびマクロファージの両方に対する前駆体であり、このため、単球/マクロファージの活性化を促進する薬剤はin vivoでの免疫応答に対するアジュバント効果をもつ。下記の実施例10を参照のこと。
【0035】
上記に鑑みて、本発明の組成物および方法は、樹状細胞のin vivoでの成熟による有効なペプチド抗原の提示、ならびに単球とマクロファージの活性化、および、未感作していないT細胞(naive uncommitted T cells)の産生、をはじめとする複数の効果により、免疫系を刺激する。抗原の適切な提示は、T細胞およびB細胞のクローン性増殖を導き、患者における免疫を作成する。癌患者の場合、上記に記載された効果によって、腫瘍への例えばリンパ球の(例えば血行性転移による)浸潤、および、腫瘍の縮小と崩壊のいずれかまたは両方が生じる。下記のデータによって示される結果は、免疫記憶に起因する生存率の増加である(例えば下記の実施例3を参照)。
【0036】
より具体的には次いで、本発明は、サイトカインであるIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αを含有するサイトカイン混合物を含有する組成物を提供する。好ましい実施形態によると、サイトカイン混合物は、60〜6,000pcg/mlの、より好ましくは150〜1,200pcg/mlの範囲の濃度のIL−1;600〜60,000pcg/mlの、より好ましくは1,000〜12,000pcg/mlの、およびより好ましくは4,000〜8,000pcg/mlの範囲の濃度のIL−2;60〜6,000pcg/mlの、より好ましくは300〜2,000pcg/mlの範囲の濃度のIL−6;6,000〜600,000pcg/mlの、より好ましくは20,000〜180,000pcg/mlの範囲の濃度のIL−8;および、それぞれ、200〜20,000pcg/ml、より好ましくは1,000〜4,000pcg/mlの範囲の濃度のIFN−γおよびTNF−αを含有する。
【0037】
本発明の別の実施形態によると、サイトカイン混合物は、サイトカインIL−12、GM−CSF、および/またはG−CSFをさらに含む。さらに別の実施形態によると、該サイトカイン混合物のサイトカインは、天然、組換え、PEG化した混合物、または、天然、組換えないしPEG化したサイトカインの混合物でありうる。サイトカインは、in vivoでのサイトカインの半減期を増加するために、および/または、in vivoでのサイトカインタンパク質の免疫原性または毒性を減少させるためにPEG化してもよい(例えば、米国特許出願第US2004/0136952 A1号を参照)。サイトカインをはじめとするタンパク質をPEG化する方法は当業において周知であり(例えばMehvar、2000を参照)、患者の治療用途のために、多数のPEG化したサイトカインがこれまでFDAによって承認されてきた(例えばIFN−αおよびG−CSF)。
【0038】
本明細書中に開示されたサイトカインに関連した誘導体、断片およびペプチドもまた本発明によって包含されており、このような誘導体、断片およびペプチドはそれらそれぞれのサイトカイン生物活性を保持している。好ましい実施形態によると、サイトカイン混合物は、米国特許第5,632,983号および第5,698,194号に開示される天然サイトカイン混合物であるNCMである。
【0039】
本発明のサイトカイン混合物は、疾患または病変に関連した抗原のアジュバントとして作用して、患者における該抗原に対する免疫応答を刺激する。さらに、該抗原は、内因性抗原またはペプチド(例えば癌の場合、抗原またはペプチドは、局所リンパ節内または腫瘍部位に存在しうる)、または、外因性抗原またはペプチド製剤、即ち、in vitroで単離または生成され、および次いで、本発明のサイトカイン混合物と併用して、患者の所定部位に(例えば癌の場合、腫瘍に所属するリンパ節領域の近傍または内部に)in vivoで投与されるもののいずれであってもよい。
【0040】
抗原が内因性である本発明の実施形態によると、本発明の組成物および方法は、本発明のサイトカイン混合物を含有するが、任意の外部の抗原を添加することはない。抗原が外因性である本発明の実施形態によると、本発明の組成物および方法は、本発明のサイトカイン混合物を外因性抗原とともに含有する。後者の実施形態によると、サイトカイン混合物および外因性抗原は、単一の薬理学的製剤でまたは別々の製剤のいずれでも同時に投与でき、または、別々の製剤で異なる時間に投与することもできる。
【0041】
好ましい実施形態によると、該内因性または外因性の抗原は腫瘍抗原であり、および、腫瘍抗原は全長抗原であっても、または、腫瘍抗原の免疫原性ペプチドまたは断片であってもよい。さらに本発明は、抗原の処理全般に影響を及ぼすことを目的としているので、任意の抗原に対する免疫応答を刺激するのに有用である。さらに、本発明は、ペプチド、脂質および/または糖質をはじめとする抗原およびハプテンのすべての形態に適用可能である。
【0042】
本発明はまた、抗原産生性の疾患または病変を患う患者において、少なくとも一つの内因性または外因性の抗原に対する免疫応答を誘発する方法も提供する。より具体的には本発明の方法は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αを含有する有効量のサイトカイン混合物を投与する工程を含み、該サイトカイン混合物は抗原のアジュバントとして作用して、患者における該抗原に対する免疫応答を刺激する。一実施形態によると、患者が患う抗原産生性の疾患は癌である。このような癌は、H&N SCC、前立腺癌、黒色腫、乳癌、リンパ腫、子宮頸癌、または肝臓癌を含みうる。
【0043】
代替的には、抗原産生性の疾患は、抗原をin vivoで産生する任意の感染症、例えば、肝炎、結核またはHIVを含みうる。したがって、本発明は、適用領域を、たとえば、HIV+患者におけるAIDSウイルス・ワクチン療法との併用による本発明のサイトカイン組成物および方法の使用、または、アジュバント療法が適切な他の状況、即ち、高齢者における腎移植など免疫系を高めるための状況への用途へと、拡大することができる。
【0044】
さらに、本発明の組成物および方法は、抗原をin vivoで産生する感染性の病変、例えば、皮膚または全身性カンジダ症、パピローマ・ウイルスと関連する性病いぼ、または、子宮頸部形成異常など、非癌性の持続性病変を治療するのに用いることができる。
【0045】
本発明の方法の一実施形態によると、少なくとも一つの外因性抗原がサイトカイン混合物と併用して患者に投与され、該サイトカイン混合物は、外因性抗原とともに作用して、患者における免疫応答を刺激する。この実施形態によると、本発明の方法は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αを含有する有効量のサイトカイン混合物を、少なくとも一つの有効量の外因性抗原と併用して投与することを含む。好ましい実施形態によると、抗原は腫瘍抗原である。該外因性抗原は、サイトカイン混合物と同じ薬理学的製剤で、従って、サイトカイン混合物と同時に投与でき、または、該抗原は、別々の薬理学的製剤で、サイトカイン混合物が投与されるのと同時にあるいはサイトカイン混合物の投与の前ないし後のある時間に投与できる。下記の実施例11のデータによって示されるように、本発明のNCM組成物は、外因性の前立腺特異的膜抗原(PSMA)と併用すると、マウスおよびヒトの両方における免疫応答を促進するのに有効である。
【0046】
本発明の方法の代替的な実施形態は、本発明のサイトカイン組成物を患者に投与することを包含し、該サイトカインは、アジュバントとして作用する抗原が一つ以上の内因性抗原、即ち、in vivoですでに配置された抗原である。従って、いずれの外部の抗原も患者に投与する必要はない。この実施形態によると、外因性の抗原製剤を投与する必要はないが、本発明のサイトカイン組成物のみが患者に投与される。
【0047】
本発明はまた、内因性抗原および外因性抗原の両方を使用することを包含する、即ち、本発明のサイトカイン組成物は、in vivoで内因性抗原を有する患者に、外因性抗原と併用して投与され、および、該サイトカインは両方の抗原のアジュバントとして作用して、患者における免疫応答を刺激する。
【0048】
本発明の方法はまた、H&N SCC、前立腺癌、黒色腫、乳癌、リンパ腫、子宮頸癌、および肝臓癌などの癌を治療する免疫療法の方法も含み、該方法において、本発明のサイトカイン混合物は患者に投与されて、免疫応答を刺激する。記載したように、サイトカイン混合物は腫瘍抗原(内因性と外因性のいずれかまたは両方)のアジュバントとして作用して、患者における抗原に対する免疫応答を刺激する。
【0049】
上記の実施形態のいずれにおいても、下記の治療用投与明細とプロトコールのいずれかまたは両方が用いられる。
【0050】
好ましくは、本発明のサイトカイン組成物は、治療中の腫瘍または他の持続性病変など病変に所属するリンパ節へと流入するリンパ管の周囲に注射される。より具体的には、局所外リンパ注射または当業者に公知の他の注射が投与されて、免疫療法製剤の十分な局在化を与える。頭頸部癌の場合、頸部に注射を投与するが、治療対象の疾患の必要に応じて他の場所に適用することができる。このような治療は、頭頸部癌患者の高い割合に臨床的退縮を誘起し、このような患者は無再発生存率の向上も示した(Hadden、1994;Meneses、1998;Barrera、2000;Whiteside、1993)。対照的に、頭頸部癌の患者における組換えインターロイキン−2の腫瘍内注射(Whitesideら(Cancer Res.53:5654〜5662、1993))は、T細胞リンパ球の浸潤を産生したが、有意な臨床的反応はなかった。同様に、外リンパ注射と併用したMultikineの腫瘍周辺の注射(Celsci Website)は、11例の患者にのみ有意な腫瘍応答(即ち、50%を上回る腫瘍の縮小)を引き起こし、これらの応答割合は10%未満であった。さらに、サイトカイン・プロトコールに対して最初に陽性応答した患者においても、腫瘍周辺および腫瘍内の注射は、疾患の進行と関連する可能性があり、利点を帳消ししてしまう。従って腫瘍周辺または腫瘍内の注射は禁忌である。
【0051】
本発明の組成物の投与には10日間の注射計画が好ましいが、20日間の注射プロトコールも用いることができる。両側注射が有効である。根治的頸部廓清が発生した場合、対側注射が有効である。
【0052】
外因性抗原が用いられる実施形態では、外因的に供給される腫瘍抗原およびペプチドなどの合成または抽出された抗原(Bellone、1998を参照)を、異なる製剤で、または、本発明のサイトカイン組成物の一部として、前感作または共感作された局所または遠位リンパ節へと投与できる。
【0053】
本発明の一実施形態によると、T細胞の内因的抑制が、例えば癌または他の免疫抑制疾患によって起こりうるが、該抑制は、低用量のシクロフォスファミド(CY)および非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の共投与によって(即ち、本発明のサイトカイン組成物と併用して)阻害することができる。NSAIDは好ましくはインドメタシン(INDO)であるが、イブプロフェンまたはセレコキシブ(セレブレックス(登録商標))またはロフェコキシブ(ビオックス(登録商標))などのCox−II阻害剤、またはそれらの組み合わせを用いてもよい。NSAIDSの副作用はプロトン阻害剤およびプロスタグランジンE類似体で積極的に治療できる。亜鉛および総合ビタミン類、可能ならセレンの添加を含むものもまた、T細胞の免疫回復の助けとなる製剤として添加することができる。好ましくは、亜鉛の用量は15〜75mgである。標準的な総合ビタミンを投与できる。亜鉛は市販のグルコン酸塩でありうる。
【0054】
本発明のサイトカイン組成物は、外科手術、放射線治療、化学治療またはそれらの組み合わせの、前または後に投与できる。本発明の組成物は、腫瘍の再発期、即ち、腫瘍が消失または寛解したと考えられた後の腫瘍成長の再発期間に投与できる。
【0055】
本発明のサイトカイン組成物は、外因性抗原または内因性抗原のいずれかに対する最適な免疫を促進するために、各患者の臨床状態、投与部位および投与方法、投与の日程計画、患者の年齢、性別、および体重を考慮して、投与および投薬される。従って、本明細書の目的では薬学的な「有効量」とは、当分野で知られるような検討事項によって決定される。該量は、免疫を促進し、その結果、例えば、腫瘍の縮小、腫瘍の断片化およびリンパ球浸潤、再発の遅延または生存率の改善、または、T細胞数の増加をはじめとする症状の改善もしくは解消を含む。
【0056】
本発明の方法では、本発明の組成物は様々な方法で投与できる。本発明の組成物に用いられるサイトカインまたは外因性抗原は、その標準的な形態でないし薬学的に許容しうる誘導体として投与でき、および、単独で、または、活性成分として薬学的に許容しうる担体、希釈剤、アジュバントおよび賦形剤と併用して投与できることに留意するべきである。さらに、本発明の組成物は、皮内もしくは皮下、または、外リンパもしくはリンパ内に、節内または脾臓内または筋肉内に、腹腔内に、および胸内に投与できる。治療される患者は、温血動物、とりわけヒトをはじめとする哺乳動物である。薬学的に許容しうる担体、希釈剤、アジュバントおよび賦形剤、ならびに移植担体とは、本発明の活性成分と反応しない、不活性かつ非毒性の固体もしくは液体の増量剤、希釈剤、または、封入材料のことを一般に指す。
【0057】
投与量は、単回用量または数日間にわたる複数回用量であってもよい。本発明の組成物を投与する場合、該組成物は一般に単位用量の注射剤型(例えば溶液、懸濁液、または乳濁液)で処方される。注射に適した薬剤処方は、滅菌水溶液または分散液、および、滅菌注射溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含む。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレン・グリコール、液体ポリエチレン・グリコールなど)、これらの適切な混合物、または植物油を含有する溶媒または分散媒であってもよい。
【0058】
適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤の使用により、分散液の場合は必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、保持することができる。綿実油、ゴマ油、オリーブ油、大豆油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、または落花生油、および、ミリスチン酸イソプロピルなどエステル類などの非水性賦形剤もまた、本発明の組成物のための溶媒系として用いることができる。その上、該組成物の安定性、滅菌性、および等張性を増強するための、抗菌性保存剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝剤をはじめとする様々な添加剤も添加できる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって保証することができる。多くの場合において、等張剤、例えば、糖類、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましい。注射用剤型の持続的な吸収は吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用により実施できる。しかしながら本発明によると、用いられる任意の賦形剤、希釈剤または添加剤は、本発明のサイトカインまたは外因性抗原と相溶性でなければならない。
【0059】
滅菌注射溶液は、本発明を実施するのに用いられるサイトカインまたは外因性抗原を、所望に応じていくつかの他の成分とともに、必要量の適切な溶媒中に加えることによって調製できる。
【0060】
本発明の薬理学的剤型は、様々な賦形剤、添加剤、および希釈剤など、相溶性のある任意の担体を含有する注射製剤で患者に投与できる。あるいは、本発明で用いられるサイトカインと外因性抗原のいずれかまたは両方は、徐放性皮下移植、または、モノクローナル抗体、ベクター伝達、イオン導入、ポリマー・マトリクス、リポソーム、およびマイクロスフェアなど標的送達系の形態で患者に非経口で投与できる。本発明において有用な送達系の例は、米国特許第5,225,182号;第5,169,383号;第5,167,616号;第4,959,217号;第4,925,678号;第4,487,603号;第4,486,194号;第4,447,233号;第4,447,224号;第4,439,196号;および第4,475,196号に開示される送達系を含む。他の多くのこのような移植、送達系、およびモジュールは当業者に周知である。
【0061】
本発明の組成物および方法が、上記で論じた癌、感染症または持続性病変などの抗原産生性の疾患の治療に有用なことは明らかであろう。該組成物および方法は、患者におけるin vivoでの免疫応答を刺激することによって、これらの疾患によって産生された抗原に対する免疫を促進し、該免疫応答は、患者における疾患の症状および影響を緩和または解消する助けになる。
【0062】
上記の議論は、本発明の使用に対する事実に基づく論拠を提供する。本明細書中に開示された用途での使用のための本発明の組成物および方法は、下記の非限定的な実施例および添付の図面によって示すことができる。
【0063】
下記に記載される実施例は、本発明によるサイトカイン混合物であるNCMの調製、癌患者の免疫応答を刺激するための内因性の腫瘍抗原のアジュバントとしてのNCMの使用を示す臨床試験のデータ、ならびに、in vivoで免疫応答を刺激するための本発明のサイトカイン混合物の外因性抗原との併用を示すマウスおよびヒトの実験を記載する。
【0064】
より具体的には下記の実施例1は、本発明によるサイトカイン組成物NCMの産生について記載する。NCMの産生は米国特許第5,632,983号および第5,698,194号に完全に開示され、これら特許は参照により本明細書に組み入れられる。
【0065】
下記の実施例2は、NCM(低用量のシクロフォスファミド(CY)、インドメタシン(INDO)および亜鉛と併用)で処理したH&N SCC患者が、免疫を示す節の変化(例えば節の大きさの増加およびを洞組織球症の減少)、リンパ球による腫瘍浸潤、ならびに、腫瘍の縮小および断片化をはじめとする、有意な臨床的および病理学的応答を示した臨床試験データを開示する。実施例4〜7は、さらに別の癌患者、即ち、リンパ腫、子宮頸癌、肝臓癌、および(ヒト・パピローマ・ウイルスと関連する)陰茎の扁平上皮細胞癌を患う癌患者に関し、これらの患者は全例、本発明のNCMによって治療され、および、治療に対して有意な臨床的反応を示した。実施例3は、これら試験の癌患者の生存率の増加(2年以内)に関するデータを提供する。
【0066】
実施例2において示されるように、NCMによる治療は、Tリンパ球減少症患者における顕著なTリンパ球数の増加、および、それに対応する未感作T細胞(抗原に暴露されない新たに産生されるT細胞)の増加もきたした。さらに、下記の実施例8のデータによって示されるように、これらの試験において観察されたT細胞の増加は、本発明のサイトカイン組成物による治療に特に起因する。より具体的には、実施例8は、リンパ球減少症H&N SCC癌患者に対する、NCMのみ(CYとINDOのいずれかまたは両方の併用投与を伴わない)による治療のデータを提供する。このデータでは、全リンパ球数、ならびに、特異的なCD3+およびCD4+T細胞サブセット個体群に有意な増加が得られた。
【0067】
同様に、実施例9のデータは、形態学、表現型および機能的基準によって測定された、樹状細胞の分化および成熟を、NCMが促進することを示している。上述したように、樹状細胞(DC)が、患者の抗原に対する免疫において、即ち、適切なT細胞に抗原を提示することによって重要な役割を果たすことが知られている。より具体的には実施例9は、成熟を示唆するDC中の形態学的変化を、NCMが促進することを示す。またNCMは、DC細胞表面上のCD1a抗原の発現をダウン・レギュレートし、DC細胞表面上のCD83およびMHC II抗原の発現をアップ・レギュレートし、および、DC細胞表面上のT細胞共刺激および接着分子、例えば、CD86、CD40、およびCD54(ICAM−1)の発現を増加することも示された。さらにNCMは、DCの細胞内活性をダウン・レギュレートし(これはDCの成熟と一貫している)、DCのT細胞刺激活性を増強し(MLR活性の増加によって示される)、および、DCからのIL−12の産生を増加することも示された。ここでIL−12自体は、未感作CD4+ヘルパーT細胞の(Th1細胞への)分化、ならびに、免疫系の細胞学的および食作用成分の活性化および増殖における不可欠の因子である。最後に、NCMはDCのVEGF誘導性アポトーシスを減少させることが示された。NCMのこの抗アポトーシス効果は、腫瘍環境内の成熟したDCの生存を維持するのに非常に重要な役割を果たしうる。これによって、持続した抗原の提示および腫瘍抗原に特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性化が可能になる。
【0068】
下記の実施例10のデータは、NCMが単球およびマクロファージの強力な活性化因子であることをさらに示す。例えば、NCMは、単球/マクロファージの活性化マーカー、即ち、HLA−DR、CD86、CD40およびCD80を有意に増加させる。さらにNCMは、TNF−αまたはLPSよりも強力な、単球/マクロファージの活性化因子であることが示され、および、NCMは免疫抑制サイトカインIL−10の存在下であっても細胞の活性化を継続することができた。
【0069】
下記の実施例11は、マウスにおいて、サイトカイン組成物を外因性の前立腺特異的膜(PSMA)ペプチド抗原共役体と併用して投与した後に、免疫応答を、即ち、DTH応答ならびに抗体応答の形で誘発する、NCMの能力を示す。NCMは、進行性前立腺癌を患うヒトにおける非共役PSMAペプチドに対するDTH応答を刺激するのにも有効であった。
【実施例】
【0070】
細胞培養に関するすべての工程は滅菌状態のもとで実施される。本明細書中に記載されない細胞免疫学の一般的な方法は、MishellおよびShiigiなど(細胞免疫学において選択される方法、1981)の細胞免疫学的な技法についての一般的な参照文献に記載されるように実施され、および、当業者に周知である。
【0071】
実施例1
天然サイトカイン混合物(NCM)の調製
NCM(本明細書中においてIRX−2ともいう)は、フィトヘムアグルチニン(PHA)およびシプロフロキサシンによってヒトの末梢血単核細胞(PBMC)を刺激した後、GMP条件のもとで24時間かけて産生される規定のサイトカイン混合物である。PBMCの提供者をスクリーニングし、および試験済みの軟膜はFDAに認可された血液銀行から購入される。PHAの刺激の後、分裂促進因子を遠心分離および洗浄によって除去する。すべての細胞学的要素を遠心分離によって除去し、およびDNAを、陰イオン交換クロマトグラフィーによって除去する。細胞の存在しない上清を、フィルターを通して滅菌しナノフィルターで濾過してウイルスの除去を可能にし、および、これをIRX−2と指名する。生物学的試験およびサイトカイン濃度のELISAによる決定の両方を含む厳格なQC試験によって、IRX−2の一貫性が保証される。滅菌性、DNA、マイコプラズマ、エンドトキシンに関する安全性試験、および、CMVおよびEBVに対するウイルス試験もまたGMP工程の一部である。IRX−2はこれまで様々な臨床試験において150例を上回る患者に安全に投与されてきており、および、FDAによって承認されたINDのもと現在第I/II相試験にある。
【0072】
より具体的には、NCMは下記のように調製できる。
【0073】
複数のHIV陰性肝炎ウイルス陰性提供者からのヒトの血液の軟膜白血球が回収される。代替的な実施形態では、動物が獣医学用途の細胞供給源でありうる。提供者からの細胞はプールされおよびフィコール・ハイパック勾配(Pharmacia)上に積層して、好中球および赤血球を含まないリンパ球を得た。当業で知られるものと同じ出発リンパ球集団を生じうる代替的な方法を使用することができる。
【0074】
リンパ球は洗浄し、および細胞サブセットの選別用の表面活性化細胞培養フラスコ中のX−VIVO10培地(Whittaker Bioproducts)中に分配した。フラスコ(MICROCELLECTOR(登録商標)T−25細胞培養フラスコ)は、固定化した刺激剤、即ち、PHAなどの分裂促進因子を含有する。刺激剤の固定化工程は、パニング手法、即ち、フラスコ中で細胞を単離するための、様々な物質を固定化するための製造業者による記載のとおりである。代替的には、リンパ球は、PHAなど刺激剤に2〜4時間暴露され、およびその後3回洗浄される。
【0075】
細胞は、CO/空気インキュベーター中で、80μg/mlのシプロフロキサシン(Miles Lab)を含むX−VIVO10培地中で、37℃で24〜48時間インキュベートする。代替的には、RPMI1640培地を用いることができる(Webbら、1973)。HSAを含まない培地が生成に用いられる場合、インターロイキン類をさらに安定させるために、HSA(ヒト血清アルブミン)を添加してもよい。一般に、HSAは0.1〜0.5%(質量/体積)で用いられる。インキュベーションの後、上清を注ぎ出して回収する。上清は4℃から−70℃で保存される。
【0076】
実施例2
頸部におけるNCMの局所外リンパ注射を、低用量のCY(300mg/m)、INDO(25mgを経口で1日3回)、および亜鉛(元素亜鉛65mgを硫酸塩として、1日1回経口)による治療に加えることによって、頭頸部の扁平上皮細胞癌(H&N SCC)の患者の高い比率に臨床的退縮を誘起し(Hadden、1994;Meneses、1998;Barrera、2000;Hadden、2003;Menesis、2003)、無再発生存率の向上の徴候も伴った。全体としては、わずかな奏効(25%〜50%)、腫瘍の縮小、および病理組織標本中の腫瘍の縮小を含めると、90%を上回る患者に効果があり、およびその大半に50%を上回る腫瘍の縮小があった。
【0077】
Bリンパ球およびTリンパ球の両方の腫瘍への浸潤が観察されたので、これらの反応は免疫の退化によって媒介されたと推測される。この療法は有意な毒性を伴わなかった。リンパ球減少症癌患者のNCMとの併用による治療は、顕著なリンパ球の動員をきたし、分析によって、これらの患者は、CD45RA陽性T細胞(即ち、未感作T細胞(下記の表Iを参照))の増加を示した。さらに、H&N SCCの患者において、腫瘍内または腫瘍周辺へのNCMの注射の結果、免疫療法に起因する腫瘍の退縮の逆行、または、腫瘍の進行のいずれかが生じた。従って、腫瘍は免疫の部位ではない。むしろ、局所リンパ節の分析によって、局所リンパ節が、想定した腫瘍抗原に対する免疫の部位であることを明らかにした(Meneses、2003;図1〜5を参照)。臨床的には15%および病理学的には50%の患者に転移が予測されていたが、NCMによって治療したこれらの患者のいずれも転移を発症しなかった。これらの結果は、単なる局所免疫ではなくむしろ全身性免疫が誘起されたことを示す。患者は治療前に、皮膚試験において0.1mlのNCMに対して事前検査を行っており、皮膚試験で陽性(24時間時点で>0.3mm)であった患者のうち90%を上回る患者に、強い臨床的および病理学的応答があった。皮膚試験が陰性であった患者は弱い応答または無応答があった。このように、皮膚試験では応答の良好な者を選別する。
【0078】
これらのTリンパ球減少症患者には、Tリンパ球数(CD3)の顕著な増加が観察された752→1020(T細胞数:752対1600(正常))。重要なことに、これに対応して「未感作の」CD45RA陽性T細胞も増加した(532→782)。先述したように、一般には、これらの増加は、成人、とりわけNCMのような薬理療法を受けた患者には、発生しないと考えられている。これらの細胞はおそらくは最近胸腺から遊出したものであり、および、腫瘍抗原のような新しい抗原に応答する大きな新たな能力となると考えられうる。先に存在するCD45RA陽性細胞は腫瘍抗原に応答していなかった。これは、腫瘍による免疫抑制(アネルギー)を理由に、応答できなかったと思われる。
【0079】
【表1】

【0080】
文献(Hadden JW,Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644、1997;Hadden JW,Int’l J Immunopharmacol 21:79〜101、1999)は、局所リンパ節が、二つの主要な癌の型であるSCCおよび腺癌の両方に対して、腫瘍と関連した異常を反映することを示す。該異常は、洞組織球症、リンパの枯渇、および、多くの場合、腫瘍細胞と(IL−2とともに)反応できる腫瘍と関連したリンパ球の存在を含む。転移によって、リンパの枯渇および機能の低下が発生する。併発のない頸部リンパ節のH&N SCC患者10例に対する未発表の分析では、リンパ節の平均の大きさの減少およびH&N SCCに関連する洞組織球症の増加を示した(本出願の図1〜4Aおよび4Bの対照を参照)。
【0081】
一周期のNCMプロトコールを用いた治療の後(Hadden、1994;Meneses、1998;Barrera、2000)、併発のない頸部リンパ節は図1〜4に示す変化を示した。NCMで治療しないH&N SCC患者の局所リンパ節と比べると、これらの節は、大きさ、T細胞領域および密度の有意な増加、および、洞組織球症およびうっ血の減少を示した。治療患者のリンパ節はすべて刺激され、および、対照の節よりも大きく、T細胞領域および密度も増加していた。従ってこれらの節は、正常に回復しただけでなく、T細胞の優勢、すなわち既知であるH&N SCCにおける生存率との正の相関の証拠を示した(Hadden、1997)。
【0082】
重要なことに、B細胞およびT細胞領域に関連するリンパ節の変化が、T細胞およびB細胞の浸潤を反映する腫瘍の変化と相関した場合、高い相関関係がT細胞(p.<0.01)およびB細胞(<0.01)および全リンパの存在(p.<0.001)(図5)に対して得られた。同様に、これらの変化は病理学的および臨床的基準による腫瘍の縮小と相関した。これらの知見は、腫瘍反応がリンパ節の変化と、直接的なかつ正の相関をすること、および、従属変数としてのリンパ節の変化を腫瘍の反応が反映することを示す。免疫系が機能する機序一般(Roitt、1989)、および、その後のサイトカイン遺伝子による腫瘍トランスフェクション(Maass、1995)に関する知識とあわせて鑑みると、これらの知見は、NCMプロトコールが、これらの患者に対して、リンパ節のレベルで内因性の腫瘍抗原に対して免疫することを示す。これまでは誰も、自己腫瘍抗原による免疫を反映するリンパ節変化の証拠を提示してこなかった。このことは、本発明が、遠隔転移の縮小を生じる目的で、かつては無効であるかまたは効果に乏しかった、腫瘍抗原による免疫を誘起しうることを確認するものである。
【0083】
実施例3
前述した臨床試験の臨床学的、病理学的および生存率のデータのさらなる分析によって、より多くの洞察が本発明の性質に提供される。その理由は、本発明は、自らの自己腫瘍抗原に対する患者の免疫、および、結果として生じる腫瘍の免疫の退化に関するからである。図6は、NCM(IRX−2)プロトコールによる治療が48ヶ月時点での生存率の増加に関連する(p<0.01)ことを示す。図7は、正の臨床反応が生存率と相関する、即ち、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)の患者(50%を上回る腫瘍縮小)が、わずかな奏効(MR)(50%未満であるが25%を上回る腫瘍縮小)または無反応(NR)(25%未満)の患者よりも生存率が良好であった(p<0.01)ことを示す。図8は、病理反応がより強い患者(指標6〜9)のほうが、病理反応がより弱い患者よりも(6未満)、生存率が良好であった(p<0.02)ことを示す。図9は、腫瘍へのリンパ浸潤が単一の変数として生存率を予測する(p<0.01)ことを示す。臨床反応の病理反応との関係のカイ二乗分析は有意性の高い関係(p<0.01)を示し、このことは、この両者が生存率と相関するだけでなく、互いに相関し、従って、臨床反応、免疫の退化パラメータ、および生存率の間で相互に関連する、統計的なデータの三角関係を提供することを示している。このような関係は、ヒトの癌の免疫療法に対してこれまで全く示されてこなかった。
【0084】
最後に図10は、本発明のNCMに関して、用量と24ヶ月時点での全体の生存率を関連付ける用量反応曲線を提示する。NCM治療は、約100〜233国際単位のIL−2当量で生存率に最適な影響を及ぼす。
【0085】
実施例4
頭頸部のリンパ腫の患者2例を、上記に記載されたプロトコールに従って治療した。下記のスキームに従った。
【0086】
治療前に患者には、0.1mlのNCMを前腕の皮下に注射して皮膚試験を行い、領域に印を付け、および24時間後に、試験結果を読み取った。誘起および紅斑が3mm以上であった場合、該試験は陽性とみなされた。
【0087】
症例1
患者は、左顎下腺領域の腫瘍の存在を示し、他に症状のない病歴3ヶ月の23歳の男性であった。緊急治療室にて患者は、左顎下腺領域に深いレベルに部分的に固定された堅い直径約6.5cmのリンパ節腫脹がみとめられた。残りの健康診断は正常であった。切開生検はホジキン・リンパ腫を示した。病変はECIIA期であった。NCMの一周期治療が施され、リンパ節腫脹の大きさが直径1cmだけ減少するわずかな奏効を得た。NCM治療の後に得られた生検報告は、病変の60%が正常なリンパ浸潤を示し、および、新生物の残り(40%)は壊死を示した。生存率する腫瘍細胞が見出されなかった。
【0088】
この後、患者は頸部に3600ラドの放射線治療を受けた。患者は2年間無病であった。
【0089】
症例2
患者は、有痛性の中頸部腫瘤ならびに10kgの体重減少を提示した病歴2ヶ月の82歳の男性である。健康診断で、患者は、右口蓋扁桃に腫瘍を提示し、該腫瘍は約4×3cmまで肥大し、扁桃の中心に潰瘍があった。頸部では、右顎下リンパ節の測定値は約2×2cmであり、および、リンパ節腫瘤はレベルIIおよびIII、約5×5cmであった。健康診断の残りは正常であった。扁桃および一方の頸部リンパ節の切開生検は中等度の明確な非ホジキン・リンパ腫の混合物を示した。
【0090】
患者は2周期のNCMを受け、その終了時に、扁桃および頸部リンパ節腫脹の直径1cmの縮小が観察された。NCM治療後の病理報告は、20%が生存腫瘍、30%が腫瘍の断片化および壊死、および、50%が正常なリンパ球浸潤を示した。
【0091】
患者には、6周期の化学治療(CHOP)、次いで、合計用量4600ラドの外部放射線治療(RT)が施された。患者はRTの8ヶ月後に後頭部レベルで副腎過形成が再発した。患者は、頸部疾患の徴候から3ヶ月後に死亡した。
【0092】
実施例5
臨床的にIB1期、IB2期およびIIA期の未治療の早期子宮頸癌の患者10例を、NCMの局所外リンパ注射(10日の連日注射)、その後、21日目の広範子宮全摘術によって治療した。NCM治療を開始する1日前に、患者は、300mg/mのCYの単回のIV投与を受けた。INDOないしイブプロフェン、および硫酸亜鉛が1日目から21日目まで経口で投与された。臨床反応ならびに病理反応、毒性ならびに無病生存率を評価した。
【0093】
すべての患者がNCM治療を完了し、および、反応および毒性を評価した。臨床反応は、患者の50%(3例が部分奏効(PR)、2例がわずかな奏効(MR)(25%を上回り50%未満の縮小))に見られた。7例の患者は外科手術を受けた。病理学的には、腫瘍の断片化と関連する腫瘍の縮小が5例にみとめられた。リンパ球、形質細胞、好中球、マクロファージおよび好酸球を含む、腫瘍に浸潤する細胞型には不均一なパターンがあった。治療は、注射中の軽度の疼痛ならびに少量の出血およびINDOへの胃の不耐性を除いて、耐性が高かった。24ヶ月のフォロー・アップ時に、9例の患者は無病であった。
【0094】
本試験は、早期の未治療の子宮頸癌において、NCM治療が免疫媒介性腫瘍への応答を誘起することを示す。
【0095】
実施例6
原発性肝細胞癌から肝転移した2例の患者を、脾臓内NCM(1回または3回の注射)によって治療した。プロトコールは、H&N SCC、子宮頸部、またはリンパ腫の症例について前述したとおりであった。進行性肝細胞癌の患者1例は部分奏効を示し、断層撮影によって確認された。残りの1例は、部分奏効を示し、外科手術によって確認された。組織学的試験は腫瘍の縮小、断片化、およびリンパ浸潤を示した。
【0096】
実施例7
(ヒト・パピローマ・ウイルスが関連する)陰茎の扁平上皮細胞癌の患者4例を、上記に記載したようなNCMプロトコールで治療した。4例はすべて臨床的に部分奏効し、および、外科標本はH&N SCC癌患者に特徴的にみられる腫瘍の縮小および断片化、およびリンパ浸潤を示した。
【0097】
実施例8
NCMによるTリンパ球減少症の改善
下記の実験の目的は、リンパ球減少症患者のリンパ球数(LC)に対する10日の連日注射(115単位IL−2当量/日)での、6つのサイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αを含有するNCMによる治療の効果を評価することであった。これらの患者は、過去の頭頸部癌への外科手術および放射線治療から回復し、および、平均細胞数441個/mmの持続性リンパ球減少症を患っていた。LCの正常レベルは2000個/mmである。患者は治療時に癌はなかった。0日目および13日目にLCを得た。Tリンパ球(CD3+)およびT細胞サブセット(CD4+またはCD8+)を細胞蛍光測定法によって評価した。表IIは、応答した患者5例のデータを提示する。有意な増加がLC、CD3+、およびCD4+T細胞に観察された。
【0098】
【表2】

【0099】
これらの変化は、リンパ球減少症のAIDS患者において、はるかに高い用量のPEG化したインターロイキン2(3×10単位の組換えIL−2)によって達成した変化と匹敵している(T.Merigan、私信)が、毒性は少なかった。これらの変化は、AIDS患者において10×10単位/日を上回るIL−2の8日間の注入によって達成される変化よりも少ない。しかしながら後者は、多大な費用、不都合を要し、顕著な毒性があった(Kovaks、1997)。NCMによるこれらの結果は、INDOおよびCYの非存在下で得られた。従って、この治療法のLCに対する効果は、本発明のNCM組成物による効果であることを示す。
【0100】
実施例9
NCMは樹状細胞の成熟および活性化を刺激する
過去の実験において、NCMで治療したH&N SCC患者5例、および未治療H&N SCC対照患者5例からリンパ節を単離し、および、樹状細胞の細胞表面マーカー(即ち、CD83+、CD86+、およびCD68+)のパネルを用いて、フロー・サイトメトリーによって、細胞組成を分析した。上述したように、洞組織球症は、一部の癌患者に見られるリンパ節の病変であり、未熟な樹状細胞を代表する大きな組織球のリンパ節内で蓄積することを特徴とする。図11Aに示すように、SHを患う患者(SH+)はリンパ節内にCD68+、CD83+、CD86DCの蓄積を有するが、一方、顕著なSHのない患者はCD83+細胞がほとんどなかった。しかしながら、NCM治療によって、未治療の癌対照と比べると、CD86+(CD68+、CD83+と共存する)DCの数が5倍増加し、このことは「活性化された」DC表現型への変換を示している。対照は、NCMで治療した癌患者と比較するための、未治療のH&N SCC患者である(図11Bを参照)。
【0101】
洞組織球症は、内因性の腫瘍ペプチドを有すると推測される部分的に成熟したDCの蓄積を表しているので、共刺激受容体CD86の発現による完全な成熟および活性化によって、成熟後ただちにこの欠損を修正し、T細胞に対する有効な抗原の提示をできるように、本発明のNCMを使用したことを反映する。従って本発明のNCMは、洞組織球症を逆行させ、未感作T細胞の有効な免疫化を導く。
【0102】
上記に記載のデータおよびその後のMenesesら(2003)の文献に含まれるデータは、H&N SCC患者の治療への外リンパNCM、低用量のCY、およびINDOを用いた治療によって、該癌および他の癌のリンパ節内に高頻度にみられる洞組織球症を逆行させたことを示した。しかしながら、上記の薬剤NCM、CYおよび/またはINDOのうち何がこの欠損を修正したかは、このデータからは明らかでなかった。
【0103】
下記のデータは、6つのサイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αを含有するNCMが、CYとINDOのいずれかまたは両方の非存在下で、DCの成熟および活性化を誘起する証拠を提示する。これらの実験に用いられるNCM(IRX−2)は、上記に記載した6つのサイトカイン、または下記の表IIIに示されるようなサイトカインを含有する。これらの実験の目的のため、NCM(IRX−2)の濃度は、IRX−2に含有されるTNF−αの濃度として表される。IRX−2中のTNF−αを始めとするサイトカインの濃度は、ELISAによって測定され、および組換えTNF−αの純度は95%を上回る。滴定を除くすべての実験では、NCMは濃度1ng/mlで用いた。
【0104】
【表3】

【0105】
用いた培地は、L−グルタミン2mM、ストレプトマイシン50μg/ml、ペニシリン50U/ml、および、10%のFBSを添加したRPMI 1640であった。(すべての試薬はCellgro(ハーンドン、バージニア州)から購入した。)GM−CSF、TNF−α、およびVEGF165はPeprotech(ロッキーヒル、ニュージャージー州)から購入した。X−VIVO 10はBioWhittaker(ウォーカーズビル、メリーランド州)から購入した。LPSはSigma(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。すべての試薬について、高感度のリムルス血球抽出液検定(LAL検定;BioWhittaker)で、製造業者の指示に従ってエンドトキシンの混入を試験し、陰性であることがわかった。すべての溶液の含有量は、検出下限である0.06EU/ml未満であった。さらに、すべてのプラスチック品は発熱性ではなかった。
【0106】
これらの実験に用いられたPBMCは、健常な提供者の白血球に富む軟膜30mlから、フィコール・ハイパック遠心分離(Cellgro、ハーンドン、バージニア州)を用いた遠心分離によって取得し、および、42.5〜50%のインタフェースから軽い比重の画分が回収された。細胞は培養培地中に再懸濁され、および、6ウェル・プレート(Costar、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)に付着させた。37℃で2時間後に、付着していない細胞を洗浄によって除去し、および付着細胞(90%までがCD14細胞、即ち単球)は、50ng/mlのGM−CSF(500U/ml)および50ng/mlのIL−4(500U/ml)を添加した培地3ml中で培養した。
【0107】
表面マーカーの分析のため、下記の蛍光色素共役mAbs:CD86−PE、CD80−FITC、CD54−APC、CD83−PE、HLA−DR−FITC、CD1a−APC、CD40−FITC(すべてはBD Pharmingen、サンディエゴ、カリフォルニア州から購入)、および適切なアイソタイプ対照を用いた。免疫表現型分析をFACSを用いて実施した。細胞(0.25x10)を、2%のFBSおよび0.1%のNaN(FACS洗浄緩衝剤)を添加したPBS中で洗浄し、および、APC共役mAbs、PE共役mAbsないしFITC共役mAbs、または、対応するアイソタイプに合致したmAbで、室温で30分間インキュベートした。過剰なmAbを、FACS洗浄緩衝剤中で洗浄することによって除去した。結果は、平均蛍光強度または特定の抗原を発現する細胞のパーセント比率のいずれかとして表した。10,000イベントの取得後に、蛍光分析をFACSCaliburフロー・サイトメーター(BD Biosciences、ロックビル、メリーランド州)で実施し、および、BD BiosciencesのCellQuestソフトウェア(ロックビル、メリーランド州)で解析した。
【0108】
図12に示すように、本発明のNCM組成物は、DC成熟の主要なマーカーであるCD83抗原を持つDCの数を増加させた。より具体的には、付着PBMCを、上記に記載したようにGM−CSFおよびIL−4の存在下で7日間培養し、および次いで、組換えTNF−α(PeproTech)またはNCM(IRX−2)のいずれかでその量を増加させながら刺激した。48時間後、細胞を洗浄し、およびCD83の発現をフロー・サイトメトリーで分析した。CD83+細胞の増加から明らかなように、図12は、DCの成熟を誘起するのにNCMが活発であることを示す。さらにNCMは、当量用量の単独のTNF−αよりもより活発に、DCの成熟を誘起した。図12に示すデータは、5回の個々の実験の平均±SEM(p<0.0001、分散分析による)として表す。
【0109】
これらのデータは、NCMがDCの成熟を促進すること、および、NCM混合物中に含有されるDCの成熟に作用することが知られたいずれの単一のサイトカインによっても説明ができない方法で成熟を促進することを示す。例えば、PBMCのin vitroでの正常な分化には、100〜500U/mlのGM−CSF(約10〜50ng/ml)および500〜1000U/mlのIL−4(50〜100ng/ml)の存在が必要である。これによって、DC系統に分化したが比較的未熟な状態(低/中等度のCD86、CD40、HLA−DRの発現、CD83には無効)にある細胞群を生成する。未希釈のNCMは、検出不能な量のIL−4を有し、および、in vitroのDCの分化に必要な量よりも、10〜50倍低い濃度のGM−CSF(約1.1ng/ml)を含有する。従って、図12の培養において産生されたCD83+細胞は、NCM中の個別のサイトカインIL−4およびGM−CSFでは説明がつけられない。
【0110】
TNF−αはこのような細胞を誘導できるが、その濃度は、本発明のNCM中の濃度を大きく上回る(図12を参照)。例えば、樹状細胞系統への初回の分化の後(in vitroでのGM−CSF+IL−4より数日後)に、病原体に由来するシグナル(例えばLPS)など「danger signal」を加えることによって、CD86、CD40、HLA−DRの高/強発現およびCD83の存在をはじめとする、完全に成熟した樹状細胞の表現型が誘起される。20〜50ng/mlの範囲にあるTNF−αは、このような病原体由来の危険シグナルを概ね模倣することができ、同マーカーのアップ・レギュレーションをきたす。しかしながら、未希釈のNCM混合物は、平均してわずか2.8ng/mlのTNF−αを有し、これは、DCの完全な成熟に必要なTNF−α濃度よりもはるかに低い。このため、図12に示される結果は、この実験に用いられたTNF−α当量濃度においては、NCMによるCD83マーカーの誘起は、NCM混合物中のTNF−αの存在のみが原因でないであろうことを、明らかに示している。
【0111】
DCは、未熟な細胞から成熟細胞へと進化するにつれ、明確な形態学的変化を遂げることが知られている。従って、未熟なDCをNCMで処理して、NCM処理が細胞の形態を変化させたか否かを決定した。より具体的には、上述したように、付着PBMCをGM−CSF(500U/ml)およびIL−4(500U/ml)の存在下で4日間成長させ(該処理は未熟なDCを産することが知られている)、および次いで、NCM(IRX−2)で処理するか、または、対照として未処理のまま放置するかのいずれかとした。3日後に、細胞をライト染色および顕微鏡検査によって可視化した。図13に示すように、NCMで処理した細胞(図13B)は成熟したDCに特徴的な細胞学的突起および運動性を示し、細胞学的プロセスおよびベールを連続的に伸縮させた。これらの細胞は、大きな不規則形状の核、多数の小胞、比較的少数の細胞質顆粒、および、未処理の対照(図13A)と比べて、顕著なかつ豊富な細胞学的突起を有していた。従って、NCM処理の結果、典型的な成熟DCの形態を所有するDCを生じた。
【0112】
さらに、未熟なDCから成熟したDCへの原型的変化の結果、所定の細胞表面抗原の特徴のはっきりした増加および減少をきたすことが知られている。例えば、未熟なDCは高レベルのCD1aを発現し、および、サイトカインまたは細菌産物などの刺激との遭遇後ただちに、このマーカーはダウン・レギュレートされる。従って、(上記に記載したように)GM−CSFおよびIL−4で処理した付着PBMC(単球)を7日間成長させ、および次いで、NCM(IRX−2)の存在下非存在下で、48時間インキュベートして、DCの活性化および成熟と関連した細胞の表面マーカーの獲得または損失が、NCM処理に起因するか否かを決定した。CD1a、HLA−DR、CD86、CD40およびCD54の発現をフロー・サイトメトリーで試験し、および、平均蛍光強度で表した。
【0113】
図14のヒストグラムによって示されるように、未熟なDCをNCM(IRX−2)で処理した(ヒストグラム中実線で示される)の結果、CD1a発現のダウン・レギュレーション(147対62)、ならびに、MHCII 発現のアップレギュレーション(455対662)をきたした。さらに、NCM処理は、細胞の大きさの増加および粒度の減少(データ表示なし)をきたした。未処理の対照は各ヒストグラム中の破線によって示される。未治療のDCの平均値はパネルの左上の角に示され、NCMで処理したDCのそれぞれの値は右上の角に示されている。示したヒストグラムは代表的な実験からのものであり、および、各値は、少なくとも10回の個々の実験からの平均結果を表す(=p<0.05、**=p<0.002、***=p<0.00005、2群スチューデントt検定)。さらに図14によって示すように、NCM(IRX−2)処理は、共刺激表面分子CD86(B7−2としても知られる)(193対390)、CD40(46対75)、およびCD54(細胞間接着分子1、ICAM−1としても知られる)(1840対3779)の発現を増強した。表面マーカー発現におけるこれらの変化のすべては、本発明のNCMがDCの活性化の強力なエフェクターであることを示す。
【0114】
抗原提示細胞としての役割と整合して、未熟なDCは高いエンドサイトーシス活性を持ち、活発に抗原を取り込む。成熟後ただちに、この活性はダウン・レギュレートされ、その直後に、DCは抗原処理および提示に携わる。生理学的条件のもとでは、APCのエンドサイトーシスのダウン・レギュレーションは、表面上のペプチド/MHC錯体の増加と関連し、T細胞の刺激の増強をきたす。エンドサイトーシスに及ぼすNCM(IRX−2)の影響を試験するために、DCをNCM(IRX−2)でその量を増加させながらインキュベートし、FITC−デキストランを取り込む能力を決定した。より具体的には、(上述したように)付着PBMC(単球)をGM−CSFおよびIL−4で4日間処理し、および次いで、TNF−α(1μg/ml)で、または、NCM(IRX−2)を1ng/mlのTNF−α当量となるまで濃度を増加させながら刺激した。18時間後、細胞をFITC−デキストラン(Sigma、セントルイス、ミズーリ州)でインキュベートし、最終濃度1mg/mlとなるまで添加した。細胞を37℃で30分間培養した。インキュベーションの後、細胞を氷温のPBSで4回洗浄し、および、上述したようにフロー・サイトメトリーによって分析した。
【0115】
図15に示すように、NCM(IRX−2)でインキュベートした(黒色円)未熟なDCは、用量依存的にエンドサイトーシスをダウン・レギュレートした。NCM中にみとめられた対応する用量のTNF−αによる処理(白色円)は、最小の効果をもたらした。未熟なDCをより大量のTNF−α(10〜25ng/ml)で処理した結果、期待されたようなエンドサイトーシスの活性のダウン・レギュレーションをきたした(データ表示なし)。図15のデータは、未刺激のDCの平均蛍光強度に対する刺激したDCの平均蛍光強度のパーセント比率として示され、および、4回の独立した実験の平均±SEMである(p<0.00001、分散分析による)。これらの実験は、本発明のNCMが、DCの細胞内活性をダウン・レギュレートすることを示し、このダウン・レギュレーションはDC成熟の指標である。
【0116】
次に、NCMがDCのT細胞刺激能を増強する能力を評価した。活性化され、成熟したDCは未感作T細胞の強力な刺激剤である。NCM(IRX−2)による処理が、機能的効果、ならびに、上記に記載された表現型および形態学的変化へと変換されたことを示すために、DCのT細胞刺激能に及ぼすNCM(IRX−2)の影響をリンパ球混合反応(MLR)増殖検定にて評価した。
【0117】
より具体的には、(上記に記載したように)付着PBMC(単球)をまずGM−CSFおよびIL−4で7日間処理し、および次いで、NCM(IRX−2)の存在下または非存在下で刺激した。48時間後、NCM(IRX−2)で処理または未処理のDCを回収し、および、下記のようにMLRで検定した。精製したDCを無関係の提供者からの1×10個のT細胞とともに、DC:T比率1:5、1:10、1:30、および1:100で共培養した。軟膜から精製したPBMCを、ナイロンとウールのカラムにかけてフィコール・ハイパック勾配遠心分離することにより、同種T細胞を調製した。丸底96ウェル・プレート中で検定を3回を実施した。MLR検定中はNCM(IRX−2)は提示されなかった。DCとT細胞の共培養から5日後、ウェルをBrDUで18時間パルシングした。BrDUの取り込みを測色BrDU取り込み検定(Roche Diagnostics、インディアナポリス、インディアナ州)を用いて測定した。
【0118】
図16に示すように、共培養の2日前にNCM(IRX−2)に暴露されたDC(黒色正方形)は、T細胞増殖応答の誘起において、未治療のDC(白色円)よりもより強力であり、これは、NCMで処理したDCが機能的に能力が高いことを確認するものである。図16のデータは、((DC刺激T細胞の光学濃度−DC単独の光学濃度)/静止T細胞の光学濃度)±SEMとして定義される刺激指数として表され、4回の個々の実験の平均結果である(p<0.05、分散分析による)。
【0119】
共培養中にNCMがなかったこと、および、観察されたT細胞刺激の増加は、T細胞に対するNCMの直接的な効果よりも、むしろDCに対するNCMの刺激効果に起因することに留意することが重要である。従って、同種MLR反応における増殖の増強によって示されるように、本発明のNCMは、DCのT細胞刺激活性を増強する。さらに上記において、NCMは、ICAM−1(CD54)の発現を増加させることが示された。この細胞表面の補助リガンドは、LFA−1を介したシグナル伝達に関与しており、その結果として、Th1表現型へのバイアスを生じる(Rogers、2000)。これらの効果の癌における機能的な結果は、NCMで処理したDCが、T細胞応答をTh1表現型に向けて極性化させ、および、腫瘍に特異的なCTL活性の活性化に有利に働き、従って、腫瘍拒絶を促進する。
【0120】
本発明者らのデータはまた、NCMがDCからのIL−12の産生を刺激することも示している。IL−12は、感染中に病原体に応答して、DCによって分泌されるサイトカインを極性化させる強力なTh1である。しかしながら、DCが腫瘍拒絶を媒介する際の最も重要な役割の一つは、Th1へとバイアスした抗腫瘍T細胞応答を効果的に、かつ、効率的に刺激することであり、および、この応答を指示する際にきわめて重要なサイトカインの一つがIL−12である。IL−12は活性化されたDCによって産生され、および、未感作CD4ヘルパーT細胞のTh1細胞への分化に関与する必須因子である。Th1細胞はIFN−γおよびIL−2を分泌し、および、これらのサイトカインは、IL−12とあいまって、CD8細胞毒性Tリンパ球(CTL)など、免疫系の細胞学的および食作用の成分の活性化および増殖を仲介する。
【0121】
NCMがDC中のIL−12産生を誘起しうるか否かを決定するため、GM−CSF/IL−4培養単球をNCM(IRX−2)で18時間刺激し、および、細胞内のIL−12 p70産生について試験した。より具体的には、(上述したように)付着PBMCをGM−CSFおよびIL−4中で4日間成長させ、および次いで、NCM(IRX−2)の存在下または非存在下で、または、LPSで18時間処理した。最後の4時間にブレフェルディンA(BFA;10μg/ml;Sigma、セントルイス、ミズーリ州)を添加して、サイトカインの大部分をゴルジ体に蓄積させた。フィックス・アンド・パーム(Caltag、バーリンゲーム、カリフォルニア州)を用いて、製造業者の指示に従って、細胞を固定および透過し、および次いで、FITC標識抗IL−12 p70mAb(BD Pharmingen、サンディエゴ、カリフォルニア州)または適切なアイソタイプの対照(BD Pharmingen、サンディエゴ、カリフォルニア州)で標識した。細胞をフロー・サイトメトリーによって分析した。
【0122】
図17Aに示すように、NCM(IRX−2)は、IL−12を産生するDCの比率を平均して4.5%(陽性)から22.5%まで増加させた。DC中におけるIL−12産生の刺激剤であるLPSを陽性対照として用いて、および、NCMと相対して同等のレベル(27%±11)の誘起を提供した。図17Aのデータは、4回の独立した実験の平均であり、および、IL−12に対して陽性の染色を示した細胞のパーセント比率±SEMとして表される(p<0.05、スチューデントt検定)。IL−12の細胞内産生の増加が生物活性IL−12の分泌の増加と対応していることを確認するために、NCMで処理した(上述したように最初にGM−CSFおよびIL−4で4日間培養し、および、NCMで48時間インキュベートした)DCの上清中の生物活性IL−12の濃度を、生物活性p70ヘテロ二量体を検出する市販のELISAキット(R&Dシステム、ミネアポリス、ミネソタ州)を用いて測定した。従って、図17Bに示すように、NCMへの暴露の48時間後、DC上清は対照で処理したDCよりも有意に多くの生物活性IL−12を含有した。図17Bのデータは、6回の独立した実験の平均(±SEM)である(p<0.05、スチューデントt検定)。
【0123】
最後に、発明者らのデータは、NCMがDC中のVEGF誘導性アポトーシスを低下させることを示した。VEGFはDC成熟の阻害剤であり、およびこれまで、成熟中のDCにおけるアポトーシスレベルを増加させることが示されてきた。NCMがVEGFの効果を軽減できるか否かを決定するために、DCを、IRX−2の存在下または非存在下でVEGFで処理し、および、アポトーシスのレベルをアネキシン−FITC V結合により決定した。より具体的には、付着PBMCをGM−CSFおよびIL−4で7日間処理し、および次いで、VEGF(100ng/ml)の存在時または非存在時に、NCM(IRX−2)の存在下または非存在下で(1:3)、さらに2日間インキュベートした。細胞を採取し、および氷温のPBS中で2回洗浄し、および、アネキシン結合緩衝液(BD Pharmingen、サンディエゴ、カリフォルニア州)中で再懸濁した。アネキシン−V FITC(BD Pharmingen、サンディエゴ、カリフォルニア州)およびヨウ化プロピジウムを添加し、および細胞を4℃で30分間インキュベートした。細胞をフロー・サイトメトリーによって分析した。
【0124】
図18に示すように、対照と比べると、VEGFで処理した細胞中でのアポトーシスレベルが増加した。しかしながら、NCM(IRX−2)はVEGFで処理した細胞中のアポトーシスのレベルを減少させた。図18のデータは4回の独立した実験の結果であり、および、アネキシンV−FITCに対して陽性の染色を示した細胞のパーセント比率(±SEM)として表した。このデータは、NCMが、刺激能に加えて、成熟したDCに対する防御効果も有することを示唆している。さらに、欠陥のあるDCの機能および数は、腫瘍による異常なVEGFの発現によって一部調節されうる(Gabrilovich、1996b;Saito、1999;Takahashi、2004)。腫瘍によるVEGF産生は、H&N SCC、肺癌、胃癌、および骨肉種を含むいくつかの癌において、予後不良の予測因子であることが示された(Gallo、2001;Kaya、2000;Miyake、1992;Saito、1998;Smith、2000)。本明細書中に含まれたデータは、NCMが、DCのVEGF媒介性アポトーシスを逆行させることができ、ひいては、腫瘍環境内での成熟したDCの生存を促進し、および、持続した抗原の提示および腫瘍抗原に特異的な細胞毒性Tリンパ球の活性化を許容する。
【0125】
DCによる過去の試験は、単球培養培地(MCM)など天然サイトカイン混合物、または、TNF−α、IL−1β、IL−6およびPGE2を含有する組換え炎症性サイトカインの混合物を採用して、DCを成熟させて、ex vivoで生成されたDC系の癌ワクチンに用いてきた(Romani、1996;Bender、1996;Sorg、2003)。NCMと、他の試験に用いられるサイトカイン混合物との非常に重要な違いは、本試験に用いられたサイトカインの濃度が10〜100倍低かったことであり、このことは、NCMの固有サイトカイン成分間の相乗効果を示唆している。さらに、これらの他の混合物によって成熟したDCの使用には重大な問題が伴う。例えば、TNF−α、IL−1β、IL−6、およびPGEの存在下で成熟したDCは、IL−12の産生が低いかまたは全くなく、仮に不適切に活性化されると、寛容原性をもちうる(Steinman、2002;Langenkamp、2000)。さらに、ex vivoで生成されて完全に成熟したDCは「消耗」し、効率的に有効なT細胞応答を一次刺激できない可能性があるとの懸念がある(Kalinski、2001)。ex vivo法で成熟させ、DCで治療した患者に見られる低いレベルの臨床反応は、これらの懸念を裏付けている(Holtl、2002;Schuler−Thurner、2002;Thurner、1999)。
【0126】
本明細書中に提示される証拠は、NCMが樹状細胞の強力な活性化因子であることを確認するものである。このデータは、T細胞に対するNCMの既知の効果(Hadden、1995b)とあいまって、NCMが、癌患者にみとめられるAPCおよびT細胞の欠損を克服できることを示唆しており、および、出願人による臨床試験に見られる良好な臨床結果に対する機序の説明を提供している。現在では、DCが癌を対象とした免疫療法において中心的な役割を果たすと認識されているが、一方で、例えば、腫瘍に特異的なT細胞免疫の戦略、または、腫瘍−抗原でパルシングしたDC単独の再導入など、免疫系の単一の要素を個々に操作しても、患者に対して有意な臨床的改善を産み出しえない(Ridgway、2003;Rosenberg、2004)ことが明らかになりつつある。より有益な治療計画は、併用するいくつかの調整的な細胞型、例えばT細胞とDC、の活性を増強する治療計画であってもよい。この治療計画によって、相互反応を増強できるとともに、機能的なカスケードが、腫瘍の様々な免疫抑制戦略によって阻害されずに、むしろ永続化する可能性が高い。この場合には、本発明のNCMは、腫瘍抗原を添加した内因性のDC、および、腫瘍抗原に特異的な細胞毒性T細胞の両方を刺激するよう作用してもよく、その結果、有効な免疫応答および腫瘍拒絶をもたらす。これらを一緒に考慮すると、これらの結果は、本発明のサイトカイン組成物が、内因性の腫瘍抗原に対する免疫応答を誘起するための強力な臨床ツールとなりうること、または、癌ワクチンの場合において、外因的に添加された腫瘍抗原とともに用いられうることを示す。
【0127】
実施例10
NCMによる単球/マクロファージの活性化の刺激
サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γおよびTNF−αを含有する本発明のNCMは、単球/マクロファージの強力な活性化因子でもある。より具体的には、付着PBMC(90%まで単球)をX−VIVO10培地中(BioWhittaker Bioproducts)で一晩成長させ、NCM(IRX−2)で24時間刺激し(最終濃度1:3で)、および、活性化されたマクロファージ上に典型的にみとめられる様々な活性化マーカーの発現について、フロー・サイトメトリーによって試験した。対照として、細胞をNCMのない培地中で24時間インキュベートした。図19に示すように、サイトカインを添加しないものと比べて、NCMによる細胞の処理によって、陽性の染色を示した細胞のパーセント比率が統計学的に増加し(図19A)、および、HLA−CR、CD86、CD40およびCD80(すべて単球/マクロファージの活性化マーカーである)に対する平均蛍光指数(MFI)が増加した(p<.03)(図19B)。図19に示すデータは、3回の独立した実験/提供者からの平均値±SEMを表す。
【0128】
さらに、本発明のNCMが、TNF−αを上回る程度まで単球を活性化することがみとめられた。より具体的には、付着PBMCを、NCM(IRX−2)(最終濃度1:3で;約1ng/mlのTNF−α)またはTNF−α(10ng/ml)のいずれかで刺激し、および、活性化マーカーの発現についてフロー・サイトメトリーによって試験した。図20に示すように、NCMは、TNF−αよりも統計的に大きな、HLA−DR、CD86、CD40およびCD80の発現を誘起した(p<.03)。図20に示すデータは、3回の独立した実験/提供者からの平均値±SEMを表す。
【0129】
同様に、適度の(活性化はするが最大ではない)用量のLPSを用いて実施した試験でも、NCMが比較的に強い活性化シグナルであったことを示した。より具体的には、付着PBMCを、IL−10(5ng/ml)の存在時または非存在時に、NCM(IRX−2)(最終濃度1:3で)またはLPS(10ng/ml)のいずれかで刺激し、および、活性化マーカーの発現についてフロー・サイトメトリーによって試験した。図21に示すように、NCMは、単球/マクロファージ成熟マーカーであるHLA−DR、CD86、およびCD40の発現において、LPSよりも大きな増加をきたした。さらに、免疫抑制サイトカインIL−10の存在下で、NCMは依然として単球を刺激することができたが、一方、LPSはできなかった(p<.02)。図21に示すデータは、3回の独立した実験/提供者からの平均値±SEMを表す。
【0130】
最後に、単球が活性化シグナルに応答してTNF−αを分泌し、この分泌が単球/マクロファージの非特異的な殺活性と関連していることが知られている。図22に示すデータは、本発明のNCMが単球からのTNF−αの産生を刺激し、およびIL−10の免疫抑制効果を克服することを示している。より具体的には、付着PBMCを、IL−10(5ng/ml)の存在時または非存在時に、NCM(IRX−2)(最終濃度1:3で)またはLPS(10ng/ml)のいずれかで刺激し、および、細胞内染色およびフロー・サイトメトリーによって、TNF−α産生について試験した。図22に示すように、NCMは、LPSまたは対照よりもTNF−αの産生の増加が大きかった。IL−10の存在時であっても、NCMは依然として単球を刺激してTNF−αを産生することができたが、一方、LPSは産生できなかった(p<.05)。図22に示すデータは、5回のそれぞれの実験/提供者からの平均値±SEMを表す。
【0131】
実施例11
下記に詳説する各実験は、本発明のNCM組成物が、外因性抗原と併用して作用して、マウス中の抗原に対する免疫応答の向上(細胞学的なおよび抗体の両方)を誘発する能力を示す。
【0132】
外因性腫瘍抗原の投与
マウス
該手順は、オブアルブミン(OVA)またはキーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)のいずれかに共役させたPSMAの予測されたT細胞エピトープ(LLH&ALF)(各100μg)に基づいて、前立腺特異的膜抗原(PSMA)ペプチドでマウスに免疫することであった。単離された非共役ペプチドを用いたこれまでの試みはマウスで成功しなかった。低用量のCY(400μg/マウス)の後に、NCM(0.1ml)を両方の共役抗原と併用して単回免疫として提供した後、NCM(0.1ml)を抗原を伴わずに9日間連続注射した。一方、CpG、ミョウバン、またはRIBI−Corixaアジュバントは、OVA共役体と併用した単回一次免疫であった。追加免疫(上記の共役体およびアジュバント)を各群のマウスに21日目及び28日目に与えた。T細胞ペプチドに対するDTH応答は最後の追加免疫の9日後に測定し、および、15〜21日目の屠殺時に血清を採取した。
【0133】
図23は、抗原惹起として個々のALFおよびLLHペプチド(各10μg)を用いた、即ち、共役体を用いない、マウスの皮膚試験に対するDTHの結果を示す。該図に示すように、両共役体による免疫化の後、および、OVA共役体にミョウバンを与えた後に、NCMは抗原に対する有意なDTH応答を誘起する。ミョウバン、RIBI−Corixa、およびCpGの活性はごく僅かであった。
【0134】
血清抗体の結果
血清を指示どおりに希釈し、および、ペプチド(ALFもしくはLLH)またはオブアルブミンのいずれかで被覆したマイクロプレートのウェルに添加した。結果は、5つのマウス群に対して405での平均ODとして表される。データは下記の表IVに提示される。
【0135】
より具体的には、NCMと併用したKLH共役体によって免疫されたマウスは、オブアルブミン抗体に対して陰性であったが、ペプチドに対して陽性であった。OVA共役体およびNCMで免疫されたマウスは、OVAおよびペプチドの両方の抗体に対して陽性であった。一方、OVA共役体+CpGで免疫されたマウスは、OVAに対してのみ陽性であった。これらの結果は、NCMがアジュバントとして作用して、共役PSMAペプチドが該ペプチドに特異的なDTHおよびIgG応答の両方を刺激する能力を増強するが、一方、ミョウバン、RIBI−Corixa、およびCpGなど他のアジュバントは不活性または活性に乏しかったことを示す。
【0136】
【表4A】

【表4B】

【表4C】

【0137】
追加的な実験を実施して、上記の結果を確認し、および、本発明のNCM組成物が若齢マウスおよび老齢マウスの両方においてT細胞に特異的な免疫応答を増強することを示した。下記に記載する実験では、下記の方法および材料を用いた。
【0138】
試薬
前立腺特異的膜抗原ペプチド(ペプチド1:Leu−Leu−His−Glu−Thr−Asp−Ser−Ala−Val;ペプチド2:Ala−Leu−Phe−Asp−Ile−Glu−Ser−Lys−Val)は、BioSynthesis Inc.(ルイスヴィル、テキサス州)によって合成された。オブアルブミンおよびシクロフォスファミドはSigmaから、およびKLHはPierce Biochemicalsから得た。RASとも呼ばれるRIBIアジュバントシステム(R−700)はCorixaから購入し、およびミョウバン(各40mg/mlの水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウム)はPierce Chemicalsから購入した。RASは、モノホスホリル脂質A(0.5mg)および合成トレハロース・ジコリミコレート(0.5mg)、および44μlのスクアレンおよびツイン−80から成る。CpGオリゴヌクレオチド(マウスに特異的な配列)はBioSynthesisによって合成された。CpG配列はTCCATGACGTTCCTGACGTTであり、および、チオフォスフォネート誘導体であった。マウス中のCpGの生物活性は、マウス脾臓細胞の増殖およびマウス付着細胞によるTNF−αの産生(データ表示なし)を測定することによって確認される。
【0139】
(本明細書中においてIRX−2ともいう)NCMは、PHAおよびシプロフロキサシンによってヒト末梢血単核細胞を刺激した後24時間かけて産生される規定されたサイトカイン混合物である。PHAは、サイトカインを含有する上清を回収する前に除去される。2つのウイルス除去工程が、その後の処理(イオン交換および2段階のナノ濾過)に含まれている。生物学的試験およびサイトカイン濃度のELISA判定の両方を含む厳格なQC試験によってNCM(IRX−2)の一貫性を保証する。滅菌性、DNA、マイコプラズマ、エンドトキシンに関する安全性試験、および、CMVおよびEBVに対するウイルス試験もまた、該工程の一部である。これら試験の全期間にわたって数ロットのIRX−2を用いた。NCM(IRX−2)のロットに含有される多数のサイトカインの濃度が下記の表Vに記載されている。該表では、は、これら試験に用いられた5ロットのIRX−2の平均サイトカイン濃度を表し、および**は、すべてのロットでは測定されていないが直近のロットのみに対して測定されたレベルを表す。pg/mlの範囲で提示された追加的なサイトカインは、G−CSF、IL−l2、およびIL−10を含む。IL−3、IL−4、IL−5、IL−7およびIFN−αなどの典型的なTh2にバイアスするサイトカインは、提示されなかった。同じ実験で二つのロットが試験された場合は、該2ロットは常に活性が類似していた(データ表示なし)。
【0140】
【表5】

【0141】
抗原ペプチドの共役体
上記に記載のペプチド1および2を、上記に記載したようなオブアルブミンまたはKLH担体などの担体分子に共役させた。両方のペプチドは各担体に、即ち、単一の製剤として共役させた。例えば、これらの試験に用いられたOVA−PSMA共役体またはKLH−PSMA共役体は、担体分子に結合した両方のペプチドを含有した。ペプチドは、カルボジイミド法を用いてそれぞれの担体に共役させた(ODC;ピアスEDCキット77502、ロックフォード、イリノイ州)。早期の試験では、グルタルアルデヒド(Sigma、セントルイス、ミズーリ州)を使用したが、この2方法の間に免疫原性の差(データ表示なし)はなかったので、その後の試験にはより管理された方法としてカルボジイミド結合が選択された。共役体は、セファデックス精製カラムからの画分中のOD280および215を測定することによって特徴付けた。カラムからの280ODピークはオブアルブミンまたはKLH共役体を表し、および、共役体として回収された。用量決定はカラムから回収した担体の濃度に基づいた。215を観測すると、遊離ペプチドを表すテーリングピークを示し、このことは、共役手順の間に過剰なペプチドが存在したことを確認した。
【0142】
免疫
Balb/cマウスを、Charles RiverまたはHarlanのいずれかから購入し、Cold Spring Harbor Animal Facility(CSHL)によって飼育した。すべての手順はCSHLのALAC委員会によって承認された。いくつかの実験では、シクロフォスファミド(400または2000μg/100μl、腹腔内)をIRX−2による処理の3日前に注射した。その後の試験は、シクロフォスファミドが、マウスにおけるNCM(IRX−2)による応答の増強に対して、統計学的に有意な効果を及ぼさなかったことを示した(データ表示なし)。免疫を下記のように実施した。PSMA共役体100μl、および、100μgのNCMないしミョウバンなどアジュバント、または、PBSを含有する200μl/マウスを、尾の付け根の皮下に注射して、局所リンパ節への急速な流入を与えた。一次免疫の後に、常に9回の(2、3、4、5、8、9、10、11および12日目に)追加的なNCMの注射(100μl=6〜8IUのIL−2当量)を行った。ミョウバンまたはRIBIとは異なり、NCM(IRX−2)を反復して同一部位に注射しても、該部位に顕著な炎症をきたさなかった(未公開の所見)。DTH活性を評価する前に、共役体およびアジュバントによる(14日目および28日目の)追加免疫を2回実施した。追加免疫では、追加のNCMは与えなかった。
【0143】
若齢マウスにおけるアジュバント比較試験では、RAS(R−700=スクアレン/ツイン80中のMPL+TDM)を1mlのPBSで再構成し(推奨されたプロトコールによる)、および次いで、共役体1ml(1mg/ml)と混合した。ミョウバンを抗原と1:1で混合した。CpGオリゴヌクレオチドを、マウス用に公開されたプロトコールにしたがって、共役体と混合した(マウス1匹あたり共役体100μgおよびCpG20μg)。
【0144】
DTH検定
DTH検定のためのin vivoでの抗原惹起は、該2個のPSMAペプチドの混合物(担体を含まない)(20μl中100μg)または担体単独(オブアルブミンまたはKLH)(20μl中50〜100μg)のいずれかによって行った。マウスには、追加免疫の9日後に、惹起抗原を左肢足蹠におよびPBSを右肢足蹠に皮下に注射した。24時間後、右肢および左肢足蹠の厚さをデジタル読み取りノギス(Preisser DIGI−METモデル18314、Stofiting Co.、ウッド デール 、イリノイ州)を用いて測定した。腫脹応答を左肢足蹠の厚さ(実験的応答)から右肢足蹠の厚さ(ベースライン)を減算することによって計算した。データは、各マウスの腫脹ならびに平均±平均の標準誤差として表した。統計学的解析はスチューデントt検定または分散分析により行った。
【0145】
抗原/分裂促進因子誘導性サイトカインの産生および測定
これら試験のために、追加免疫の14〜21日後に脾臓を採取し、および、金網を通して分散させて単離した。脾臓細胞を採取しおよびプラスチックに90分間付着させることによって付着細胞を得た。単離した付着細胞はプールされ、その後培養に添加されて、追加的な抗原提示細胞を提供した。2×10個の付着細胞を1ウェルあたり約6×10個のリンパ球に添加した。
【0146】
抗原からのサイトカイン放出、またはリンパ球の分裂促進因子誘導性の活性化を、R and D Systems(ミネアポリス、ミネソタ州)のデュオセッツELISA試薬を用いて上清中で測定した。抗原に刺激された細胞からの上清を採取するための最適日は6日目(IFN−γの場合)であり、一方、PHAに刺激されたIL−2の産生は3日目に最適であった(データ表示なし)。
【0147】
オブアルブミンおよびペプチドに対する血清抗体
屠殺時の血清は、ELISA検定で後に使用するために凍結させた。ELISAプレート(イムノロン−4、Nunc、デンマーク)を興味のある抗原(オブアルブミン、KLH、共役体または個々のペプチド)で一晩被覆した。血清の希釈液をブロックされおよび洗浄されたウェルに添加して、一晩インキュベートした。抗マウス・ビオチンおよびビオチン−アルカリ・フォスファターゼ(Southern BioTech、バーミングハム、アラバマ州)を順次添加し、およびpNPP基質の添加の後、ODを測定しおよび血清の希釈に対してプロットした。
【0148】
下記に詳説するこれら試験の結果は、若齢マウスおよび老齢マウスの両方において、本発明のNCMが、in vivoで腫瘍抗原に特異的な免疫応答を刺激することを示している。より具体的には下記に記載する実験では、T細胞活性化の指標としてin vivoのDTH(遅延型過敏症)検定を使用した。癌抗原に対するDTH応答は、動物モデルおよび臨床試験における腫瘍の除去と良好に相関し、従って、in vivoでのT細胞免疫応答との有用な相関を提供する(例えば、Stuart、1987;Sweat、1998を参照)。この実験によって示されるように、若齢マウスにおいて本発明のNCM組成物は、in vivoでT細胞免疫応答を刺激する際に、前立腺特異腫瘍抗原のアジュバントとして作用する。さらに本実験は、NCMが、若齢マウスにおいてT細胞ペプチドに対する免疫応答を増加させるだけでなく、T細胞に障害のある老齢マウスにおいてT細胞免疫応答も回復させることを示している。従って、下記に詳説する実験では、老齢マウスおよびヒトの両方に発生する、加齢を原因とする免疫機能の低下である免疫機能不全のモデルとして、老齢マウスを用いた。さらに、この免疫機能不全は、ヒトにおいて加齢に伴う癌の発生率の増加の主な理由であると信じられている。
【0149】
若齢マウスにおけるペプチド特異的DTH応答のNCMによる増強
若齢マウスに、OVA−PSMAまたはKLH−PSMA共役体と併用した、NCM(または陰性対照としてのPBSのいずれか)で、上述したように(例えば、共役体100μg、およびNCMまたはPBS100μlを含む200μl/マウスを)免疫した。免疫は、尾の付け根に皮下注射として投与され、局所リンパ節への急速な流入を提供した。マウスは後に、上記に記載したようなDTH検定において、惹起抗原として、PSMAペプチド(図24A)、または、共役体の免疫にそれぞれ用いられる担体(図24B)のいずれかを用いて惹起した。
【0150】
図24Aに示すように、OVA−PSMAまたはKLH−PSMA共役体と併用した、NCM(IRX−2)による若齢マウス(6〜8週齢)の免疫は、担体にかかわらずペプチド特異的DTH応答を増強した。ペプチドをNCMと共投与したが共役を伴わない場合、ペプチド特異的DTH応答は測定されなかった(データ表示なし)。担体(オブアルブミンまたはKLHのいずれも)に対するDTH応答はペプチドに対するよりも強く、および、NCMの投与によってDTH活性を増強しなかった(図24B)。NCMペプチド共役体による免疫へのミョウバンの添加は、陽性のペプチド特異的DTH応答(データ表示なし)を変更しなかった。
【0151】
初期の試験では、免疫の3日前に、NCM(IRX−2)を、シクロフォスファミドによる1回の前処理と併用して用いた。より具体的には、一次免疫の3日前に、マウスを、シクロフォスファミドの投与(400μg/マウスまたは2mg/マウスのいずれか)の存在下または非存在下で、OVA−PSMA共役体およびNCM(IRX−2)で免疫した。2回の追加免疫の後(14日目および28日目)、上述したようにDTH検定を実施した。
【0152】
図25に示すように、シクロフォスファミドによる前処理はペプチド特異的応答には必要なく、その後の実験には用いられなかった。さらにこの実験は、ペプチド共役体と併用したNCM処理は、マウスをシクロフォスファミドで前処理したか否かにかかわらず、ミョウバンまたはPBSの使用よりも有意に大きな程度(p<0.05)、ペプチド特異的DTH応答を増強したことを確認した。この検定の結果を、平均の腫脹(図25中の棒)および各マウスの腫脹(図25中の菱形のデータポイント)で表した。さらに、これらのマウス試験のすべての結果は、一次免疫後に9日間の追加的なNCM(IRX−2)注射を用いたが、4日間の追加的な処理は9日間の処理とは統計的な差はなかった(データ表示なし)。
【0153】
さらに、PSMA共役体に対するペプチド特異的免疫応答をNCMが刺激する能力を、3つの他のアジュバント、ミョウバン、RIBIアジュバントシステム(またはRAS)、およびCpGの能力と比較した。より具体的には、これらの異なるアジュバントと併用したOVA−ペプチド共役体で免疫した。2回の追加免疫(14日目および28日目に)の後、上記に記載したようなDTH検定を(追加免疫後9日目に)実施した。本試験の結果を図26に示し、および平均の腫脹(棒)および各マウスの腫脹(菱形のデータポイント)として表される。
【0154】
図26に示すように、NCM(IRX−2)のアジュバント効果は、試験を実施した他のアジュバントの効果よりも大きかった(p<0.001)。すべてのアジュバントが、未感作マウスよりも担体タンパク質への応答を増強したが(データ表示なし)、NCM(IRX−2)のみが腫瘍ペプチド特異的免疫応答を増強した。
【0155】
加齢マウスにおけるペプチド特異的免疫応答のNCMによる増強
出願人らは最初に、分裂促進因子(PHA)で刺激した老齢マウスの脾臓細胞が、若齢マウスの応答と比べて、二つの主要なT細胞サイトカイン、IL−2およびIFN−γの分泌において劣っていた(IL−2:285対75pg/ml、およびIFN−γ:1535対128pg/ml)ことを示すことによって、老齢マウス(>18月齢)におけるT細胞免疫応答が若齢マウス(8〜16週齢)における応答と比べて不完全であることを確認した。
【0156】
出願人らは次いで、PSMA共役体、および、アジュバントとしてNCMまたはミョウバンのいずれかで免疫し、その後抗原惹起した老齢マウス対若齢マウスにおいて、上記に記載のDTH検定を用いてDTH応答を試験した。より具体的には、老齢マウス(試験の開始時に18〜20月齢)および若齢マウス(試験の開始時に6〜8週齢)を、上述したように、アジュバントとしてNCMまたはミョウバンと併用して、PSMA共役体であるOVA−PSMAで免疫した。マウスを次いで、上記に記載のDTH検定に従って抗原で惹起した。
【0157】
図27Aに示すように、ペプチド特異的DTH応答に関して、NCM(IRX−2)は老齢マウスの免疫活性を若齢マウスの免疫活性までに回復させた。結果は、1群あたりマウス9〜15匹の平均に対する、PBSを注射した足と抗原を注射した足との腫脹の差として表される。NCMで処理した老齢群および若齢群の腫脹の平均は、ペプチド特異的応答に関して統計的に差はなかった。しかしながら、NCM若齢群およびNCM老齢群の両方のDTH応答は、ミョウバンで処理したマウスにみとめられたものよりも有意に大きかった(p<0.005、スチューデントt検定)。
【0158】
OVA担体に特異的なDTH応答について、図27Bは、老齢マウスは若齢マウスと比べてこの応答が不十分であった(p<0.05)が、NCM処理によって、老齢マウス中のオブアルブミンに特異的なDTH応答が回復した(図27B)ことを示す。オブアルブミンに対する若齢マウスの応答はミョウバンにおいて最適であり、従って、NCMによって向上しなかった。
【0159】
これらの実験は、老齢マウスおよび若齢マウスの両方において、特定の抗腫瘍抗原のT細胞免疫応答を刺激する際の、本発明のNCM組成物のin vivoでのアジュバント効果を示した。実際には本発明のNCMは、試験を実施した他のアジュバントと比べて、より大きな腫瘍抗原特異的T細胞免疫応答を提供した。
【0160】
下記に記載するような別の実験を実施して、免疫刺激の別の指標である、T細胞サイトカインおよびIFN−γの産生に対するNCM処理の効果を測定した。
【0161】
脾臓T細胞のEx vivoでの応答に対してNCMが及ぼす効果
従って、NCMおよびPSMA共役体で免疫したマウスに対するNCM処理のアジュバント効果を、免疫したマウス由来の脾臓細胞によるIFN−γの分泌を測定することによって決定した。より具体的には、KLH−PSMA共役体(上記に記載したような)およびNCM(IRX−2)で免疫したマウスから脾臓細胞を採取し、共役体(KLH−PSMA)、担体(KLH)、またはペプチド(PSMA)でex vivoでインキュベートした。培養の6日後に脾臓細胞からの上清を回収し、および、上記方法および材料の節に記載されているようにIFN−γの分泌を測定した。図28に示すように、共役体およびNCMで免疫したマウスにおけるIFN−γ(pg/ml中)の産生形態でのT細胞応答は、3抗原すべてについて、未感作マウスよりも大きかった。
【0162】
血清抗体力価に対するアジュバントの効果
さらに、NCM処理がin vivoで抗体産生に対するアジュバント効果を有したか否かを決定するために実験を実施した。より具体的には、マウスを、上記に記載したようなPSMA−共役体、および、アジュバントであるNCM、ミョウバンまたはCpGで免疫した。アジュバントに対する陰性対照としてPBSを用いた。マウスからの血清を、3回目の免疫から15日後(図29AおよびBに示すデータ)、または、3回目の追加免疫から8および15日後(図29Cのデータ)のいずれかの日の屠殺時に得た。血清をELISAによって抗体について検定し、結果を希釈率対光学密度として(図29AおよびB)、または、最適希釈率1/400での光学密度として(図29C)表した。
【0163】
担体(オブアルブミンまたはKLHのいずれか)に対する血清抗体力価を測定し、および、NCM(IRX−2)、ミョウバンおよびCpGがオブアルブミンに対して類似の力価を誘起し、応答はCpG>ミョウバン>NCM(IRX−2)であったことを示した(図29Aおよびデータ表示なし)。予測されたように、KLH共役体で免疫したマウスは、オブアルブミンに対して力価を生成せず、このことは、ELISA検定の特異度を確認するものであった(例えば、図29Aを参照)。しかしながら、図29Bに示されるようなペプチドに特異的な抗体応答に関しては、ミョウバンおよびCpGとは対照的に、OVA−PSMAペプチド共役体と併用してNCMは、両方のペプチドに対する血清抗体を誘起した。図29B中のデータは、NCMをミョウバンならびにCpGと比較したALFペプチドに対するデータであり、分散分析により、p<0.05である。同様の応答をLLHペプチドに対して測定した(データ表示なし)。図29Cに示すように、ペプチドに対する担体としてKLHが共役体中で用いられる場合、NCM(IRX−2)は、アジュバントなし(PBS)またはミョウバンよりも高いペプチド抗体応答を誘起した(NCM対ミョウバンおよびPBS、p<0.001)。図29Cのマーカーは個々のマウスを示す。上記に記載したような検定方法で、両方のペプチドで被覆したELISAプレートに対する抗体応答を測定した。
【0164】
上記に記載の試験は、本発明のNCMが、原型前立腺ペプチドのワクチンモデルにおいて、in vivoでのT細胞ペプチド特異的DTH応答、およびex vivoでの脾臓細胞のT細胞応答を増強することを示す。サイトカイン混合物の(2、3のみのサイトカインのいくつかの活性とは異なる)このきわめて重要な性質は、単球がないため単球由来のサイトカインが不十分な細胞培養から作られた製剤が、脾臓細胞のペプチド特異的DTH応答またはin vitroでのT細胞応答を増強できなかったことが観察されることによって、確認される。NCMのこの新しい性質は、様々な作用機序を代表するよう選択された他のアジュバントとNCMを比較することによっても示された。例えば、CpGはAPCに対するTLR作動アジュバントであり、およびTLR活性化アジュバント代表する。一方、RASシステムは、油および細菌成分を有するアジュバントを代表し、マウスモデル中のフロインド・アジュバントのより安全な代替物である。ミョウバンは、FDAに承認されたワクチンの大半に用いられるアジュバントである。本試験では、NCMはペプチド特異的DTH応答を増強したが、ミョウバン、CpGおよびRASは増強しなかった。さらに、in vivoでのT細胞ペプチド特異的DTH応答のNCMによる増強は、IFN−γの抗原特異的分泌によって定義される脾臓細胞によるex vivoでのT細胞応答の増加と相関した。最後に、すべてのアジュバントが(PBSと比べて)担体に対する抗体応答を増強したが、担体に共役させたペプチドに対する抗体応答を増強したのはNCMのみであった。
【0165】
NCM中のサイトカインが、DTH検定によって定義されるペプチド特異的免疫応答を増強するべく作用する機序は、大概複雑である。その理由は、APCの動員、呑食、増殖、活性化、成熟および移動、および、T細胞の動員、増殖、分化および成熟が、すべてサイトカインの影響を受けるからである。しかしながら、これらの試験においてみとめられたDTH応答のこのペプチド特異性は、抗原の提示、ならびに、その後のT細胞の増殖および末梢への移動に及ぼすNCMの影響の結果であると信じられている。NCMのサイトカインは、DC耐性またはT調整バランスをT細胞エピトープに対する応答の活性化へと移行させることもまた信じられている。NCMは、担体中のT細胞ヘルパー・エピトープを増強し、有効なT細胞免疫応答の発生に追加的な刺激を提供している可能性がある。本明細書中に示されるように(実施例9および10を参照)、本発明のNCMは、樹状細胞の成熟および活性化を刺激し、これによって、抗原の提示およびIL−12の分泌(樹状細胞による)を促進する。ここで、IL−12は強力なTh1極性化サイトカインである。NCMは、単球およびマクロファージの強力な活性化因子でもある。
【0166】
NCMは、NCM中に存在するサイトカインの既知の影響にもとづき、T細胞に別の影響を及ぼす。上記の実施例2および8に示すように、本発明のNCMは、リンパ球減少症患者において、未感作T細胞の産生をはじとする、Tリンパ球数を増加させる。さらに、IL−1(NCM中に存在する)が、リンパ球の走化性因子、ならびに、他のサイトカイン産生の刺激剤であることが知られている。既知の活性には、IL−2分泌の誘起による静止T細胞の増殖およびの活性化の増加、および、NCMの活性にとってより重要な、IL−2受容体のアップ・レギュレーションが含まれる。さらに、TNF−α(これもNCM中に存在する)は、L−8およびCSFなど他のサイトカインが行うように、IL−1の活性を増強する。IL−8もまた、T細胞、好塩基球および好中球をはじめとする複数の細胞に対する走化性因子(chemoattractant)として作用する。IL−2は、受容体を介して刺激することによってだけでなく、追加的なIL−2受容体ならびに追加的なサイトカインの受容体をアップ・レギュレートすることによっても、活性化された細胞の増殖を増強するべく作用する。従って、本発明のNCM組成物のサイトカインは多面発現的であり、単球、樹状細胞およびT細胞に影響を及ぼす。
【0167】
本発明のNCM中に生理的濃度で存在するサイトカインの活性部位は局所性であり、注射部位ならびに注射部位と関連するリンパ節の両方を含む。NCMは毎日投与できるので、すべてのサイトカインの局所濃度の上昇を維持することができる。本発明のNCMをアジュバントとして用いるDTH応答のこのペプチド特異性は、将来のT細胞ワクチンにおけるNCMの使用を支持するものである。
【0168】
さらに本試験は、本発明のNCMが、加齢マウスにおけるT細胞サイトカイン欠損を修正することを示している。癌は免疫系の低下が知られている老齢の個体により高頻度に発生することに留意することが重要である。さらに、腫瘍に対する現在の治療(放射線治療および化学治療)の多くは、それ自体が免疫抑制性でありうるため、患者の免疫能力をさらに低下させる。従って、多くの患者のための癌ワクチンは、加齢、癌治療および癌防御機構と関連する免疫不全を回復する潜在力のある薬剤が有用でありうる。高齢者におけるワクチンの使用に対するこの潜在的な障害を考慮し、本試験では、老齢マウスならびに免疫能力の高い若齢マウスにおいて、NCMの有効性を評価した。まず、老齢マウスからの脾臓細胞は、若齢マウスと比べた場合、IL−2およびIFN−γの両方のサイトカインの産生が不十分であることが判明した。オブアルブミンに関しては、DTH応答も損なわれた。本発明のNCM組成物は担体に対する弱い応答を回復させることができただけでなく、ペプチド特異的応答を若齢マウスの応答と類似のレベルまで回復させるにも有効であった。
【0169】
ワクチンモデルにおけるNCMの使用のプロトコールは、頭頸部癌の患者におけるNCM(IRX−2)を用いた第I/II相臨床試験、および、免疫応答の既知の動態(例えば、Meneses、2003;Hillman、1995を参照)にもとづいている。臨床試験では、低用量のシクロフォスファミドの事前の注射および10日間のNCM(IRX−2)投与と併用して腫瘍流入局所リンパ節を標的化した結果、腫瘍のリンパ球浸潤の増強、腫瘍構造の断片化、および腫瘍の大きさの縮小をきたす(上記の実施例2〜7を参照)。上述したように、マウスにおけるワクチンモデルでは、初回の試験はシクロフォスファミドの事前の注射を用いたが、しかし、その後の試験は健常な非担癌マウスには必要なかったことを確認した(図25)。さらに、一次免疫後のNCMの連日投与(4〜9日間)によって、注射部位、およびそれに続く流入リンパ節が、活性化から記憶移行までの期間に、T細胞免疫応答の最適な刺激のために十分なサイトカイン濃度を有することが保証されるので、重要であると思われる。サイトカイン濃度は低いので、注射部位では顕著な炎症性応答はない。これは、注射部位で腫脹および炎症がみとめられたミョウバンおよびRIBIアジュバントシステムの両方(未公開の所見)とは対照的である。
【0170】
担体への共役のないPSMAペプチドを用いた第I/II相試験について報告されたデータを基にすると、本明細書中に記載の提案されたペプチド担体ワクチンは、治療ワクチンとして臨床的に大いに有望である(Toja、2000;O’Hagan、2001;Katsuyuki、2000;およびNaylor、1991)。この二つのペプチドは、両方のコンピュータモデル化、および、前立腺癌患者のリンパ球の応答にもとづくT細胞エピトープである。患者を、ペプチド単独でまたはペプチドでパルシングした樹状細胞で治療した場合、第I/II相試験において臨床およびT細胞の応答に改善が見られた。しかしながら、第I相試験では、アジュバントのないペプチドはペプチドでパルシングした樹状細胞よりも有効性が低かった。NCMをペプチド共役体とともに投与した場合にみとめられたペプチド特異的応答の増強、および、幅広い臨床試験でのKLH共役体の安全性を考慮すると、ペプチドおよびNCM(IRX−2)での臨床試験は正当化される。
【0171】
本明細書中に提示された癌ペプチド・ワクチン・マウス・モデルを用いた諸試験、および、本発明のNCMを用いた内因性抗原に対して活発な抗腫瘍応答を示したヒトの臨床データは、本発明のNCM組成物を、腫瘍特異的な崩壊を仲介するに十分な免疫応答を生成するために、腫瘍ワクチン中で使用することを裏付けている。さらに、NCMは若齢マウスおよび老齢マウスの両方におけるT細胞特異応答を増強するべく作用するので、NCMは、T細胞免疫応答の増強を狙った任意の癌ワクチン、とりわけ高齢の癌患者に対する癌ワクチンに封入される候補となる。
【0172】
ヒト
進行性前立腺癌の患者3例は、事前の低用量のCY(300mg/m)、および、NCM(1ml−100単位、IL−2当量)と併用した非共役のALF&LLHペプチド(各100μg)、および、連日のINDO(25mg、1日3回)、および、9回の追加的なNCMの注射(1ml)を受けた。15日目に、NCMの追加免疫およびペプチドが与えられた。別の患者(#4)は、この投薬計画においてOVA共役ペプチドを受けた。NCM(0.1ml)、ALFもしくはLLH(10μg)による遅延型過敏性反応(DTH)を、cm単位の紅斑および継続時間について24時間後に読み取った、皮内皮膚試験によって測定した。結果は表VIに提示される。
【0173】
【表6】

【0174】
これらのデータは、NCM投薬計画が進行性前立腺癌のヒトにおいて、非共役および共役PSMAペプチドに対するDTH応答を誘導するのに有効であることを示す。この結果は、単離ペプチドでは成功しなかった大部分の過去の試みの結果とは異なる。
【0175】
別の実験は、本発明のNCMが、PSMAペプチド抗原のアジュバントとして作用して疾患の安定化をもたらす能力を示した。より具体的には、進行性前立腺癌のHLA−A2陽性の男性3例をNCM(IRX−2)(115単位、IL−2当量)および上記に記載の2つのPSMAペプチド(各100μg)で治療した。初回の免疫は頸部への注射により、その後、9回のNCM(IRX−2)の注射(上記の実施例2のプロトコールに記載のように、低用量のシクロフォスファミド、インドメタシン、および亜鉛とともに)、および次いで、NCMおよび二つのペプチドに月1度の追加免疫を5回行った。
【0176】
表VIIは病歴(Hx)および療法への応答(Rx)を簡単にまとめている。3例の患者はすべて、4から10年前に(他の薬剤に加えて)前立腺切除術および精巣摘出術を受けており、再発をきたした。全例が4から推定6ヶ月にわたるPSAの上昇の倍増段階にあった。2例に骨痛の症状があった。NCMおよびペプチドによる免疫およびフォロー・アップである追加免疫注射は症状を誘導しなかった。
【0177】
骨痛を伴う2例の患者には疼痛の消失があった。3例の患者はすべて臨床的に安定していた(患者#2が一過性の増悪により大腿骨の骨折があったことを除く)。3例すべてが単離PSMAペプチドでの皮膚試験に対する一過性の皮膚反応性を発症した(AおよびB;各10μg)。3例すべてがNCMまたはPHAでの皮膚試験に対する反応性の増加を示した。これらの結果は、本発明のNCMが、PSMAペプチドに対する免疫をこれらの患者に付与し、および免疫および追加免疫期間中に疾患を安定させたことを示している。図30も参照されたい。図30はこれら3例の患者における6ヶ月間のPSA抗原レベルの安定化を示す。上記に記載した追加の患者#4は、一過性のPSAおよび臨床的な安定を示したが、臨床的な情報はまだ完全ではない。早期再発したPSAレベル(7)である別の追加の患者は、正常レベルへの復帰を示し、この状態は2年間のフォロー・アップ期間中、追加的な療法なしに(完全奏効)持続した。
【0178】
【表7】

【0179】
本出願書全体にわたって、米国特許を初めとする様々な刊行物は、著者、年、および特許番号によって参照される。刊行物の完全な引用を下記に記載する。本発明が関係する最新技術をより完全に記載するために、これらの刊行物および特許の開示のその全体が、本出願書に参照によって組み込まれる。
【0180】
本発明は例示的に記載されており、および用いられた術語は本質的に限定のための語というよりも説明のための語となるよう意図されていることが理解されるべきである。
【0181】
明らかに、上記の教示の観点から本発明の多くの変形および変更が可能である。従って、記載された発明の範囲内で、本発明は具体的に記載された以外にも実施することができることを理解するべきである。
【0182】
参照
米国特許番号
4,439,196
4,447,233
4,447,224
4,475,196
4,486,194
4,487,603
4,738,927
4,925,678
4,959,217
4,992,367
5,100,664
5,167,616
5,169,383
5,503,841
5,225,182
5,632,983
5,643,565
5,698,194
5,800,810
6,060,068

米国特許出願公開
US 2004/0136952 A1

刊行物
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原産生性の疾患または病変を患う患者における少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物であって、サイトカインIL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αを含む有効量のサイトカイン混合物を含有し、該サイトカインは抗原のアジュバントとして作用し、および、患者における該抗原に対する免疫応答を刺激する、組成物。
【請求項2】
前記サイトカインが、天然もしくは組換えサイトカイン、または、天然および組換えサイトカインの混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記サイトカインが、PEG化したサイトカイン、または天然、組換えないしPEG化したサイトカインの混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記サイトカイン混合物が、IL−12、GM−CSF、およびG−CSFをさらに含有し、該IL−12、GM−CSF、およびG−CSFは、天然もしくは組換えサイトカイン、または、天然および組換えサイトカインの混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記サイトカイン混合物が、IL−12、GM−CSF、およびG−CSFをさらに含有し、該IL−12、GM−CSF、およびG−CSFは、PEG化したサイトカイン、または天然、組換えないしPEG化したサイトカインの混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗原産生性の疾患が癌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記癌が、頭頸部の扁平上皮細胞癌、前立腺癌、黒色腫、乳癌、リンパ腫、子宮頸癌、および肝臓癌からなる群より選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗原産生性の病変が非癌性の持続性病変である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗原が、内因性抗原、外因性抗原、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記抗原が内因性抗原である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗原が外因性抗原である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも一つの有効量の外因性抗原をさらに含有し、前記サイトカインと外因性抗原の組み合わせが外因性抗原に対する免疫応答を刺激する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗原が腫瘍抗原である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
腫瘍抗原がタンパク質またはペプチドである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗原が腫瘍抗原である、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
腫瘍抗原がタンパク質またはペプチドである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
抗原産生性の疾患または病変を患う患者における少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αを含有する有効量のサイトカイン混合物を投与することを含み、該サイトカインは抗原のアジュバントとして作用して、患者における該抗原に対する免疫応答を刺激する、方法。
【請求項18】
前記サイトカインが、天然もしくは組換えサイトカイン、または天然および組換えサイトカインの混合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記サイトカインが、PEG化したサイトカイン、または天然、組換えないしPEG化したサイトカインの混合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記サイトカイン混合物が、IL−12、GM−CSF、およびG−CSFをさらに含有し、該IL−12、GM−CSF、およびG−CSFは、天然もしくは組換えサイトカイン、または天然および組換えサイトカインの混合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記サイトカイン混合物が、IL−12、GM−CSF、およびG−CSFをさらに含有し、該IL−12、GM−CSF、およびG−CSFは、PEG化したサイトカイン、または天然、組換えないしPEG化したサイトカインの混合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記抗原産生性の疾患が癌である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記癌が、頭頸部の扁平上皮細胞癌、前立腺癌、黒色腫、乳癌、リンパ腫、子宮頸癌および肝臓癌からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記抗原産生性の病変が非癌性の持続性病変である、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記抗原が、内因性抗原、外因性抗原、またはそれらの組み合わせである、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記抗原が内因性抗原である、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記抗原が外因性抗原である、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも一つの有効量の外因性抗原を患者に投与する工程をさらに含み、前記サイトカイン混合物と外因性抗原の組み合わせが外因性抗原に対する免疫応答を刺激する、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記抗原が腫瘍抗原である、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記腫瘍抗原がタンパク質またはペプチドである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記抗原が腫瘍抗原である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記腫瘍抗原がタンパク質またはペプチドである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記投与工程は、600から60,000pcg/mlの範囲の濃度でIL−2を投与することと定義される、請求項17に記載の方法。
【請求項34】
前記投与工程は、3,000から12,000pcg/mlの範囲の濃度でIL−2を投与することと定義される、請求項17に記載の方法。
【請求項35】
前記投与工程は、4,000から8,000pcg/mlの範囲の濃度でIL−2を投与することと定義される、請求項17に記載の方法。
【請求項36】
前記サイトカイン混合物が外リンパへの注射によって投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項37】
前記サイトカイン混合物が、両側外リンパへの注射によって投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項38】
前記投与工程は、少なくとも1から20日間、前記サイトカイン混合物を投与することと定義される、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
前記投与工程は、毎月適宜前記サイトカイン混合物および前記外因性抗原の投与することと定義される、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
前記投与工程は、外科手術、放射線治療ないし化学治療、または、外科手術、放射線治療ないし化学療法の組み合わせに先立って、前記サイトカイン混合物を投与することと定義される、請求項17に記載の方法。
【請求項41】
前記投与工程は、腫瘍の再発後に、前記サイトカイン混合物を投与することと定義される、請求項17に記載の方法。
【請求項42】
有効量のシクロフォスファミド(CY)を投与する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項43】
インドメタシン(INDO)、イブプロフェン、セレコキシブ(セレブレックス(登録商標))、ロフェコキシブ(ビオックス(登録商標))、Cox−II阻害剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される有効量の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項44】
IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αを含有する有効量のサイトカイン混合物を投与する工程を含み、該サイトカイン混合物はアジュバントとして作用し、および、患者における免疫応答を刺激する、癌を治療する免疫療法の方法。
【請求項45】
少なくとも一つの有効量の外因性癌抗原を患者に投与する工程をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記癌が、頭頸部の扁平上皮細胞癌、前立腺癌、黒色腫、乳癌、リンパ腫、子宮頸癌および肝臓癌からなる群より選択される、請求項44または45に記載の方法。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25】
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【図26】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図29C】
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【図30】
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【公表番号】特表2009−544724(P2009−544724A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521935(P2009−521935)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/074156
【国際公開番号】WO2008/014220
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(505401687)アイ アール エックス セーラピューティクス, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】