説明

ワークリフト装置

【課題】ワークステージと平行状態を保ちながらワークを押し上げることができ、かつリフトピンの動作タイミングにずれが生じることを防止することのできるワークリフト装置を提供する。
【解決手段】リフトピン11を上下方向に駆動するシリンダ装置25に各々対応する複数の液体シリンダ27と、液体シリンダ27とシリンダ装置25とを各々接続する複数の作動液供給管28と、液体シリンダ27の各ピストンロッド27aに連結部材32を介して連結されたピストンロッド29aを有するエアーシリンダ29と、エアーシリンダ29に作動用圧縮空気を供給する圧縮空気供給源30と、圧縮空気供給源30からエアーシリンダ29に供給される圧縮空気の流れ方向を切り換える切換弁31とを有してなる作動流体供給機構26を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明基板などの板状に形成されたワークをワークステージ上から押し上げるワークリフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のワークリフト装置は、図5に示すように、板状のワークWをワークステージWS上から押し上げる適宜の複数本のリフトピン11(図では便宜上、二本のリフトピンを示している)と、これらのリフトピン11をそれぞれ上下方向に駆動する複数のシリンダ装置12とを備えている。これらのシリンダ装置12は圧縮空気供給源13から電磁式切換弁14を経て供給される圧縮空気により作動するようになっており、各シリンダ装置12と電磁式切換弁14とを各々接続する二本の圧縮空気供給管15には流量調整用の絞り弁16が設けられている。
【0003】
このようなワークリフト装置では、シリンダ装置12内に流入する圧縮空気の流入量を絞り弁16で調整することによりシリンダ装置12の摩擦抵抗によるリフトピン11の動作速度のばらつきを小さくすることが可能であるが、シリンダ装置12を作動させる作動流体として空気等の圧縮性流体を使用しているため、シリンダ装置12の摩擦抵抗に起因するスティックスリップや配管距離の不均一などによってリフトピン11の動作タイミングにずれが生じ、その結果、図6に示すように、ワークWが斜めに傾いた状態でワークステージWSの上方に押し上げられてしまうことがある。
【0004】
このような不具合を解消する方策として、例えば水平ガイド17(図7参照)に支持されたクサビ状部材18をシリンダ装置12により水平方向に移動させてリフトピン11を上下動させる方式や、横リンクガイド19(図8参照)に支持された横リンク20とリフトピン11の下端部に連結された斜めリンク21とを連結し、シリンダ装置12により横リンク20を水平方向に移動させてリフトピン11を上下動させる方式などが考えられるが、図7及び図8に示したワークリフト装置では、構造が複雑になると共にワークステージWSの下方に大きなスペースを必要とするなどの難点がある。そこで、図9に示すように、リフトピン11を上下動させるシリンダ装置として油圧シリンダ22を用いると共に圧縮空気供給源13からの空気圧を圧力コンバータ23により油圧に変換して、リフトピン11を上下動させるようにしたワークリフト装置が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなワークリフト装置では、リフトピンを上下動させるシリンダ装置としてエアーシリンダを用いた場合のように、作動流体の圧縮性に起因するリフトピンの動作タイミングにずれが生じることを抑制することができるが、次のような問題点を有していた。すなわち上述したワークリフト装置では、各油圧シリンダ22と圧力コンバータ23とを接続する各々の作動油供給管24に流量調整用の絞り弁16が設けられているため、絞り弁16の開度調整に手間を要するという問題があった。また、リフトピン11に加わる荷重が変化すると各油圧シリンダ22の動作速度が変動するという問題もあった。さらに、圧力コンバータ23から作動油供給管24にエアーが混入するため、エアー抜き作業を定期的に行わなければならないという問題があった。また、作動油供給管24にエアーが混入した場合には、リフトピンの動作タイミングにずれが生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、ワークステージと平行状態を保ちながらワークを押し上げることができ、かつリフトピンの動作タイミングにずれが生じることを防止することのできるワークリフト装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、板状のワークをワークステージ上から押し上げる複数のリフトピンと、該リフトピンをそれぞれ上下方向に駆動する複数のシリンダ装置と、該シリンダ装置に非圧縮性の作動流体を供給する作動流体供給機構とを備えたワークリフト装置であって、前記作動流体供給機構が前記シリンダ装置に各々対応する複数の液体シリンダと、該液体シリンダと前記シリンダ装置とを各々接続する複数の作動液供給管と、前記液体シリンダの各ピストンロッドに連結部材を介して連結されたピストンロッドを有するエアーシリンダと、該エアーシリンダに作動用圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、該圧縮空気供給源から前記エアーシリンダに供給される圧縮空気の流れ方向を切り換える切換弁とを有して構成されることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るワークリフト装置において、前記作動流体供給機構は前記エアーシリンダと前記切換弁とを接続する二本の圧縮空気供給管を有するものでもよい。この場合、前記圧縮空気供給管は流量調整用の絞り弁をそれぞれ有することが好ましい。
また、前記作動流体供給機構は、前記複数の液体シリンダのピストンロッドと前記エアーシリンダのピストンロッドとを連結するリンク部材と、該リンク部材を揺動可能に支持する支持ピンとを有するものであってもよい。
さらに、前記複数の作動液供給管をバイパス管により接続し、かつ前記バイパス管に開閉弁を設けた構成であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るワークリフト装置では、シリンダ装置を作動させる作動流体として油、水等の非圧縮性流体を用いたことにより、作動流体として空気等の圧縮性流体を用いた場合のように、シリンダ装置の摩擦抵抗に起因するスティックスリップや配管距離の不均一によるリフトピンの動作タイミングのずれを小さくできるので、ワークステージと平行状態を保ちながらワークを押し上げることができる。
【0010】
また、シリンダ装置に各々対応する複数の液体シリンダと、液体シリンダとシリンダ装置とを各々接続する複数の作動液供給管と、液体シリンダの各ピストンロッドに連結部材を介して連結されたピストンロッドを有するエアーシリンダと、エアーシリンダに切換弁を介して作動用空気を供給する空気供給源とを有する作動流体供給機構を備えたことにより、シリンダ装置、液体シリンダ及び作動液供給管からなる閉回路(液体回路)はエアーシリンダ、圧縮空気供給源及び切換弁からなる空気の回路と分離されており、図9に示すような圧力コンバータ23を用いる場合のように前記液体回路内に前記空気の回路内の空気が混入することなくリフトピンを駆動できるので、リフトピンの動作タイミングにずれが生じることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るワークリフト装置を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るワークリフト装置の概略構成を示す図である。同図に示されるように、第1の実施形態に係るワークリフト装置10は、板状のワークWをワークステージWS上から押し上げる適宜の複数本のリフトピン11(図では便宜上、二本のリフトピンを示している)と、これらのリフトピン11をそれぞれ上下方向に駆動する複数のシリンダ装置25とを備えており、シリンダ装置25は油、水等の非圧縮性流体によって作動するようになっている。また、ワークリフト装置10はシリンダ装置25に作動流体を供給する作動流体供給機構26を備えている。
【0012】
作動流体供給機構26はシリンダ装置25に各々対応する複数の液体シリンダ27と、これら液体シリンダ27とシリンダ装置25とを各々接続する複数の作動液供給管28とを有している。また、作動流体供給機構26はエアーシリンダ29と、このエアーシリンダ29に作動用圧縮空気を供給する圧縮空気供給源30と、この圧縮空気供給源30からエアーシリンダ29に供給される圧縮空気の流れ方向を切り換える切換弁31とを有しており、エアーシリンダ29のピストンロッド29aは連結部材32を介して液体シリンダ27の各ピストンロッド27aに連結されている。
【0013】
さらに、作動流体供給機構26はエアーシリンダ29と切換弁31とを接続する二本の圧縮空気供給管33を有しており、これらの圧縮空気供給管33には流量調整用の絞り弁34が設けられている。
なお、エアーシリンダとして、バルブが直接マウントされたものを用いる場合は、圧縮空気供給管33を省略してもよい。
【0014】
このような構成において、切換弁31を図1に示す状態から図2に示す状態に切り換えるとエアーシリンダ29の二つのシリンダ室のうち図中右側のシリンダ室に圧縮空気が空気供給源30から供給され、これにより、エアーシリンダ29のピストンロッド29aが図中左方に移動する。そして、エアーシリンダ29のピストンロッド29aが図中左方に移動すると各液体シリンダ27のピストンが図中左方に移動し、これにより、液体シリンダ27の二つのシリンダ室27b,27c(図2参照)のうち図中左側のシリンダ室27bから作動液が押し出される。
【0015】
このようにして液体シリンダ27のシリンダ室27bから押し出された作動液はシリンダ装置25の二つのシリンダ室25a,25b(図2参照)のうち図中下側のシリンダ室25aに作動液供給管28を流通して供給され、これにより、リフトピン11が上方に押し上げられる。
上述のように、シリンダ装置25を作動させる作動流体として油、水等の非圧縮性流体を用いたことにより、作動流体として空気等の圧縮性流体を用いた場合のように、シリンダ装置の摩擦抵抗に起因するスティックスリップや配管距離の不均一によるリフトピン11の動作タイミングのずれを小さくできるので、ワークステージWSの上面部と平行状態を保ちながらワークWを押し上げることができる。
【0016】
また、作動流体供給機構26がシリンダ装置25に各々対応する複数の液体シリンダ27と、液体シリンダ27とシリンダ装置25とを各々接続する複数の作動液供給管28と、液体シリンダ27の各ピストンロッド27aに連結部材32を介して連結されたピストンロッド29aを有するエアーシリンダ29と、エアーシリンダ29に作動用圧縮空気を供給する圧縮空気供給源30と、圧縮空気供給源30からエアーシリンダ29に供給される圧縮空気の流れ方向を切り換える切換弁31とを有して構成されることにより、図9に示すような圧力コンバータ23を用いることなくリフトピン11を駆動でき、これにより、作動液供給管28にエアーが混入することがないので、リフトピン11の動作タイミングにずれが生じることを防止することができる。
【0017】
図3は本発明の第2の実施形態を示す図であり、第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、液体シリンダ27のピストンロッド27aとエアーシリンダ29のピストンロッド29aとを連結するリンク部材35と、このリンク部材35を揺動可能に支持する支持ピン36とを作動流体供給機構26が有している点である。なお、図3において符号27aは液体シリンダ27のピストンロッド、29aはエアーシリンダ29のピストンロッドである。
【0018】
このような構成において、図3に示す通り、支持ピン36の位置を液体シリンダ27寄りに設定してある(図3(b)においてA>B)ため、支持ピン36の位置をリンク部材35の中央部に設定した場合に比べて、エアーシリンダ29のピストンロッド29aの移動速度に対して液体シリンダ27のピストンロッド27aの移動速度が小さくなる。これにより、エアーシリンダ29のピストンロッド29aの移動速度を小さくすることなく液体シリンダ27のピストン移動速度を小さくできるので、上述した第1の実施形態の効果に加え、エアーシリンダ29にスティックスリップを生じさせることなくリフトピン11の動作速度を極低速まで調整できる。また、リフトピン11による持ち上げ力を大きくすることができる。
【0019】
図4は本発明の第3の実施形態を示す図であり、第3の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、シリンダ装置25と液体シリンダ27とを接続する作動液供給管28をバイパス管37で接続し、バイパス管37の途中にそれぞれ開閉弁38を設けた点である。
このような構成によると、各々シリンダ装置25、液体シリンダ27及び作動液供給管28からなる各液体回路内の作動液体の量に差が生じた場合にバイパス管37に設けられた開閉弁38を開放操作することにより、各液体回路内の作動液を均等にすることが可能となるので、作動液体量の不均一による各シリンダ装置25間の動作量のばらつきを抑えることができ、その結果、各リフトピン11を同じストロークで上下動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るワークリフト装置の概略構成図である。
【図2】図1に示すワークリフト装置の動作を説明するための図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るワークリフト装置の要部を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るワークリフト装置の要部を示す図である。
【図5】第1の従来例を示す図である。
【図6】図5に示すワークリフト装置の欠点を説明するための図である。
【図7】第2の従来例を示す図である。
【図8】第3の従来例を示す図である。
【図9】第4の従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
W ワーク
WS ワークステージ
10 ワークリフト装置
11 リフトピン
12 シリンダ装置
13 圧縮空気供給源
14 電磁式切換弁
15 圧縮空気供給管
16 絞り弁
17 水平ガイド
18 クサビ状部材
19 横リンクガイド
20 横リンク
21 斜めリンク
22 油圧シリンダ
23 圧力コンバータ
25 シリンダ装置
26 作動流体供給機構
27 液体シリンダ
27a ピストンロッド
28 作動液供給管
29 エアーシリンダ
29a ピストンロッド
30 圧縮空気供給源
31 切換弁
32 連結部材
33 圧縮空気供給管
34 絞り弁
35 リンク部材
36 支持ピン
37 バイパス管
38 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークをワークステージ上から押し上げる複数のリフトピンと、該リフトピンをそれぞれ上下方向に駆動する複数のシリンダ装置と、該シリンダ装置に非圧縮性の作動流体を供給する作動流体供給機構とを備えたワークリフト装置であって、
前記作動流体供給機構が前記シリンダ装置に各々対応する複数の液体シリンダと、該液体シリンダと前記シリンダ装置とを各々接続する複数の作動液供給管と、前記液体シリンダの各ピストンロッドに連結部材を介して連結されたピストンロッドを有するエアーシリンダと、該エアーシリンダに作動用圧縮空気を供給する圧縮空気供給源と、該圧縮空気供給源から前記エアーシリンダに供給される圧縮空気の流れ方向を切り換える切換弁とを有して構成されることを特徴とするワークリフト装置。
【請求項2】
前記作動流体供給機構は、前記エアーシリンダと前記切換弁とを接続する二本の圧縮空気供給管を有することを特徴とする請求項1記載のワークリフト装置。
【請求項3】
前記圧縮空気供給管は流量調整用の絞り弁をそれぞれ有することを特徴とする請求項2記載のワークリフト装置。
【請求項4】
前記作動流体供給機構は、前記複数の液体シリンダのピストンロッドと前記エアーシリンダのピストンロッドとを連結するリンク部材と、該リンク部材を揺動可能に支持する支持ピンとを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のワークリフト装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載のワークリフト装置において、前記複数の作動液供給管をバイパス管により接続し、かつ前記バイパス管に開閉弁を設けたことを特徴とするワークリフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−347709(P2006−347709A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176539(P2005−176539)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】