説明

ワーク切断装置及びワーク切断方法

【課題】接着剤を用いることなくても複数段のブロック状ワークの摺動状態又は保持状態が安定し、切断精度が向上するワーク切断装置及びワーク切断方法を提供する。
【解決手段】ワーク切断装置は、複数のワイヤを有するワーク切断部と、位置決め用基準面を有する位置決め用基準板と、位置決め用基準面にワークを押し当てる状態で位置決め用基準面に直交する方向にずれないようにワークを位置決めする位置決め用保持部材と、を有するワーク位置決め体と、位置決め用基準面に直交する挟持用基準面を有する挟持用基準板と、挟持用基準板に対向配置されて前記ワークが切断される方向の端部にスリットを有する挟持用保持部材を有し、ワイヤ長手方向に位置するワークの両端を挟持するワーク挟持体と、ワークを、位置固定されたワーク切断部に対して切断方向に押し出す押出手段と、を含み、ワイヤがスリットを通過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチワイヤ方式のワーク切断部を用いて切断対象となるワークを同時に複数の片状ワークに切断するワーク切断装置及びワーク切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体材料、ガラス材料、セラミックス、磁性材料等の硬質で脆い材料からなるワークに、細線ワイヤを等ピッチで多数列状態に配列させたマルチワイヤ方式のワーク切断部を用いて同時に複数の片状ワークに切断するようにしたマルチワイヤソーがある。
【0003】
例えば、従来のマルチワイヤソーは、同時に切断を行う複数のワークをワイヤソーにセットするために、隣接して直交する2枚の位置決め用基準板を用いてワークを位置決めしつつガラス板等のベースに接着剤で貼り付けるようにしている。そして、ガラス板上に固定されたワークをマルチワイヤソーに対してセットし、ガラス板側をマルチワイヤソー側に向けて上昇移動させることで、ワークをマルチワイヤソーの等ピッチ配列の各ワイヤによってガラス板ごと切断するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の装置では、位置決め用基準板を用いて位置決めしながらワークの固定作業を行っても、接着剤の塗布量や硬化時の状況により、ワークの固定位置に傾きやずれが生じてしまう。この結果、マルチワイヤソーによる切断に際して切断精度が低下してしまう。特に、ワーク同士の繋ぎ目部の両端においては、切断位置精度が出せない。このため、両端部の片状ワークは不良品として廃棄しているものであり、ワーク材料に無駄が生じてしまう。あるいは、両端部の薄片状ワークをリサイクル材料として活用することもありえるが、両端部の薄片状ワークを原材料へ戻すことになり、効率の良い再利用ではない。また、ワークの固定に接着剤を用いているため、必然的に、切断前の接着工程と切断後の剥離工程とを必要とする。接着工程の接着作業時間や接着剤硬化時間には、例えば6時間にも及ぶ多大な時間がかかり、剥離工程の選別作業時間や剥離時間にも、例えば2時間ほどの時間がかかっている現状にあり、効率が悪く、工程・時間の無駄の多いものである。さらに、特許文献1の装置は接着剤やガラス板などの副部材をも切断することとなるので、これらの切削くずが、薄片状ワークの表面性状(表面平滑性、表面抵抗、めっき製膜性)を悪化させる場合もある。
【0005】
そこで、接着剤を用いることなくワークを位置決め固定して切断精度を向上させることが望まれている。例えば、特許文献2には、接着工程や剥離工程が不要なワーク切断装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−128649号公報
【特許文献2】特許第4355029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の図2には、挟持用基準板の下部側にワイヤの切断部を配置させ、上方よりワークを押出手段としての押出プッシャにより下方のワイヤに向けて押し出すことで切断させるダウンカット可能なワーク切断装置が記載されている。ダウンカット可能なワーク切断装置では、挟持用基準板に対向配置させた挟持用押え板を備え、挟持用押え板は、例えば縦長棒状に形成されたもので、挟持対象となるワークを挟持用基準面に押圧接触させて弾性的かつ切断方向(上下方向)に摺動自在に挟持する押えばねを挟持用保持部材として有する。挟持用基準板は、ワイヤを通過させるため、上下に2分割されている。
【0008】
このワーク切断装置は、接着剤を用いることなく複数段のブロック状ワークを位置決め固定している。その結果、ワイヤの挙動変化が切断されているブロック状ワーク毎に影響を生じやすい。ところで、ワーク切断装置では、押出プッシャにより下方のワークがワイヤに向けて押し出されると、ワイヤがたわみながらワークを切断する。このため、ワイヤがたわみ、分割された挟持用基準板の下側である排出ガイド部材にワイヤが接触すると、ワイヤの挙動が変化し、ワークへの切断精度に影響が生じることがある。また、分割された挟持用基準板のうち下側は、ワークが下降する際に載り移り(挟持用基準板の上側から下側へ移動)を良くする必要がある。このため、上側の挟持用基準板と対向配置させた挟持用押え板との距離に対して、下側の挟持用基準板と対向配置させた挟持用押え板との距離を若干広く(長く)設計する必要がある。これにより、ワークが動き易く(姿勢変動が起こり易く)なり、ワークの切断精度に影響が生ずることがある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、接着剤を用いることがなくてもワイヤの挙動が安定し、複数段のブロック状ワークの摺動状態又は保持状態が安定し、切断精度が向上するワーク切断装置及びワーク切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するためにワーク切断装置は、複数のブロック状ワークの端面同士を押し当てて重ねた集合体であるワークを同時に複数の片状ワークに切断する複数のワイヤを有するワーク切断部と、前記ワーク切断部の前記ワイヤによる切断面に平行で前記ワイヤとの位置関係が設定された位置決め用基準面を有する位置決め用基準板と、前記位置決め用基準面に前記ワークを押し当てる状態で前記位置決め用基準面に直交する方向にずれないように前記ワークを位置決めする位置決め用保持部材と、を有するワーク位置決め体と、前記位置決め用基準面に直交する挟持用基準面を有する挟持用基準板と、前記挟持用基準板に対向配置されて前記ワークが切断される方向の端部にスリットを有する挟持用保持部材を有し、ワイヤ長手方向に位置する前記ワークの両端を挟持するワーク挟持体と、前記ワークを、位置固定された前記ワーク切断部に対して押し出す押出手段と、を含み、前記ワイヤが前記スリットを通過することを特徴とする。
【0011】
これにより、ワイヤがたわみ、ワークがワークの切断される方向に下がったとしても、ワイヤが挟持用基準板と接触することがない。その結果、ワイヤの挙動が変化し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。また、接着剤を用いていないため、多大な時間を要する接着工程や剥離工程が不要となり、切断工程全体の時間を大幅に短縮させることができる。
【0012】
本発明の望ましい態様として、前記挟持用基準板は、前記ワークが切断される方向の前記挟持用基準板の端部が櫛歯状に形成されていることが好ましい。これにより、スリットの間隔を短くし、ワイヤを通すスリットとワイヤを通さないスリットとを備えることができる。その結果、複数のワイヤ間隔を自在に選ぶことができる。また、ワイヤ間隔を短くする場合、1回に切断できる片状ワークの個数が増える。また、ワークが、単一部材の基準面(櫛歯)と挟持用保持部材との間を下降するので、ワークが安定し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。
【0013】
本発明の望ましい態様として、前記挟持用保持部材が複数あり、前記挟持用保持部材の間を前記ワイヤが通過することが好ましい。これにより、ワイヤがたわみ、ワイヤがワークの切断される方向に下がったとしても、挟持用保持部材の間をワイヤが通過するため、ワイヤが挟持用保持部材と接触することがない。その結果、ワイヤの挙動が変化し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。また、ワークが、単一部材の基準面と挟持用保持部材との間を下降するので、ワークが安定し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。
【0014】
本発明の望ましい態様として、前記挟持用保持部材は、前記ワークが切断される方向の端部に第2のスリットを有し、前記ワイヤが前記第2のスリットを通過することが好ましい。これにより、スリットの間隔を短くしても、スリットにワイヤを通すことができる。その結果、複数のワイヤ間隔を自在に選ぶことができる。また、ワイヤ間隔を短くする場合、1回に切断できる片状ワークの個数が増える。
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するためにワーク切断方法は、記ワークをワーク切断装置に投入するワーク投入工程と、前記ワークを同時に複数の片状ワークに切断する複数のワイヤを有するワーク切断部に対して、ワーク切断装置の挟持用基準板及び挟持用保持部材が前記ワークを保持し、前記かつ押し出す切断工程と、を含み、前記挟持用基準板の前記ワークが切断される方向の端部でスリットを貫通する前記ワイヤが前記ブロック状ワークを切断することを特徴とする。
【0016】
これにより、ワイヤがたわみ、ワイヤがワークの切断される方向に下がったとしても、ワイヤが挟持用基準板と接触することがない。その結果、ワイヤの挙動が変化し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。また、ワークが、単一部材の基準面と挟持用保持部材との間を下降するので、ワークが安定し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。また、接着剤を用いていないため、多大な時間を要する接着工程や剥離工程が不要となり、切断工程全体の時間を大幅に短縮させることができる。
【0017】
本発明の望ましい態様として、前記ワイヤは、前記挟持用保持部材の間、又は前記ワークが切断される方向の前記挟持用保持部材の端部に有する第2のスリットを通過することが好ましい。これにより、ワイヤがたわみ、ワイヤがワークの切断される方向に下がったとしてもワイヤが挟持用保持部材と接触することがない。その結果、ワイヤの挙動が変化し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のワーク切断装置及びワーク切断方法は、接着剤を用いることがなくてもワイヤの挙動が安定し、複数段のブロック状ワークの摺動状態又は保持状態が安定し、切断精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、ワーク切断装置の概略図である。
【図2】図2は、本実施形態の挟持用基準板の概略図である。
【図3】図3は、本実施形態の挟持用保持部材の概略図である。
【図4】図4は、本実施形態の挟持用保持部材の断面状態を説明するための説明図である。
【図5】図5は、本実施形態に係るワーク切断装置の切断工程を説明するフローチャートである。
【図6】図6は、ワーク切断装置の切断工程を説明する説明図である。
【図7】図7は、ワーク切断装置の切断工程を説明する説明図である。
【図8】図8は、ワーク切断工程でのワイヤの挙動を説明する説明図である。
【図9】図9は、ワーク切断装置の切断工程を説明する説明図である。
【図10】図10は、ワーク切断装置の切断工程を説明する説明図である。
【図11】図11は、実施形態2に係る挟持用保持部材の概略図である。
【図12】図12は、実施形態2に係る挟持用保持部材と切断工程との関係を説明する説明図である。
【図13】図13は、ワーク切断装置の具体的な構成を示す斜視図である。
【図14】図14は、変形例に係るワーク切断装置の具体的な構成を示す斜視図である。
【図15】図15は、ワーク集合体の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0021】
(実施形態1)
図1は、ワーク切断装置の概略図である。ワーク切断装置100は、複数のワイヤ11を含むワーク切断部10と、位置決め用基準板21、挟持用基準板31と、位置決め用保持部材22、挟持用保持部材32と、押出プッシャ40と、を有している。また、位置決め用基準板21、挟持用基準板31と、位置決め用保持部材22、挟持用保持部材32と、により囲まれる空間がワーク集合体1の収納部(ワーク収納部)となる。
【0022】
ブロック状ワーク2は、複数段に積み上げられており、ブロック状ワーク2が集まって、ワーク集合体1となっている。また、ブロック状ワーク2は、複数列に並べられており、ブロック状ワーク2が集まって、ワーク集合体1となっている。ブロック状ワーク2同士は、接着剤を用いることなく位置決め固定されている。ブロック状ワーク2は矩形であり、例えば同一形状の直方体である。
【0023】
ブロック状ワーク2は、半導体材料、ガラス材料、セラミックス、磁性材料等の硬質で脆い材料とすることができる。また、ブロック状ワーク2は、高価な材料、例えば希土類焼結磁石とすることができる。
【0024】
ワーク切断部10は、所定の間隔で配列された複数本のワイヤ11と、これらのワイヤ11を安定走行させるためのガイド溝が形成された複数のガイドローラ12a、12bにより駆動されるマルチワイヤソー方式の切断手段である。
【0025】
ワイヤ11は、炭素鋼等の金属製のワイヤである。複数のワイヤ11を含むワーク切断部10は、ガイドローラ12a、12bにより、複数のワイヤ11を往復運動させる。複数のワイヤ11により、切断対象となるワーク集合体1が同時に複数の片状ワークに切断される。ワーク集合体1が同時に複数の片状ワークに切断されるため、ワーク切断装置100は、マルチワイヤ方式の切断装置である。なお、ワーク切断部10のワイヤ11は、例えば固定砥粒方式が用いられる。
【0026】
位置決め用基準板21は、ワーク切断部10のワイヤ11による切断面(切断時の相対移動によりワイヤ11が形成する垂直面)に平行でワイヤ11との位置関係が設定された位置決め用基準面21aを有する。
【0027】
位置決め用保持部材22は、切断に際して位置決め用基準面21aにワーク集合体1を矢印Aで示すように押し当てた状態で位置決め用基準面21aに直交する方向(前後方向)にずれないようにワーク集合体1を位置決めするための部材である。
【0028】
ワーク切断装置100は、位置決め用基準板21に位置決め用保持部材22を対向配置させる。位置決め用保持部材22は、例えば縦長棒状に形成されたもので、位置決め対象となるワーク集合体1を位置決め用基準面21aに押圧接触させて弾性的かつ切断方向(上下方向)に摺動自在に位置決めする。このため、位置決め用保持部材22は、バネ等による押圧手段を有する。そして、位置決め用基準板21及び位置決め用保持部材22は、ワーク位置決め体20Aとなる。ここで、位置決め用保持部材22は、複数のブロック状ワーク2からなるワーク集合体1に対する押圧のばらつきをなくすために、ブロック状ワーク2の左右方向(ワイヤの長手方向)の列毎にそれぞれ1つ以上設けられている。
【0029】
挟持用基準板31は、ワーク切断部10のワイヤ11の長手方向と直交となる位置関係が設定された挟持用基準面31aを有する。図2は、本実施形態の挟持用基準板の概略図である。ワーク集合体側の面からみると図2に示すように、挟持用基準板31は、切断方向(上下方向)に分割されていない一体の板状部材である。また、ワーク集合体1が切断される方向(矢印U方向)の端部に切り欠きを有している。この切り欠きは、ワーク集合体1が切断される方向(矢印U方向)の端部に複数の櫛歯部31cを有している。そして、櫛歯部31cの間に複数のスリット31bが形成されている。また、複数のスリット31bは、集合体1が切断される方向(矢印U方向)に開口している。つまり、ワーク集合体1が切断される方向(矢印U方向)の端部は、櫛歯状に形成されている。ワイヤ11が櫛歯部31cの間(スリット31b)を通過する。なお、ワーク集合体1が切断される方向(矢印U方向)は、後述する押出手段がワーク集合体1を押し出す方向と平行な方向である。また、ワーク集合体1が切断される方向(矢印U方向)は、ワーク集合体1がワーク切断部10のワイヤ11に近づいていく方向でもある。
【0030】
スリット31bは、集合体1が切断される方向(矢印U方向)に延びて形成されている。スリット31bの幅は、ワイヤ11の直径よりも広い。櫛歯部31cの集合体1が切断される方向(矢印U方向)長さは、ワイヤ11の直径よりも長い。これにより、ワイヤ11がたわみ、ワイヤ11がワーク集合体1の切断される方向に下がったとしても、集合体1が切断される方向(矢印U方向)に櫛歯部31cがワイヤと接触する部分がないため、ワイヤ11が挟持用基準板31と接触することがない。これにより、ワイヤ11の挙動が変化し、ワーク集合体1への切断精度に影響が生じるおそれが低減されている。また、ワークが、単一部材の基準面と挟持用保持部材との間を下降するので、ワークが安定し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。
【0031】
ワイヤ11は、全てのスリット31bに貫通されている必要はない。切断する片状ワークの幅に対応して、必要なワイヤ11、11間となるように、ワイヤ11がスリット31bに貫通される。
【0032】
挟持用保持部材32は、切断に際して位置決め用基準面31aにワーク集合体1を矢印Bで示すように押し当てた状態で挟持用基準面31aに直交する方向(左右方向)にずれないようにワーク集合体1を位置決めするための部材である。図3は、本実施形態の挟持用保持部材の概略図である。図4は、本実施形態の挟持用保持部材の断面状態を説明するための説明図である。ワーク集合体1側の面からみると図3に示すように、挟持用保持部材32は、切断方向(上下方向)に分割されていない一体の棒状部材である。また、挟持用保持部材32が複数並んでおり、挟持用保持部材32と挟持用保持部材32との間のスリット33にワイヤ11を通過させている。また、図3及び図4に示すように挟持用保持部材32は、摺動部32Aと、テーパ部32Bとを含んでいる。テーパ部32Bは、ブロック状ワーク2が投入されるときに傾斜面によりガイドとして案内する。また、摺動部32Aは、ブロック状ワーク2を切断方向に摺動自在に挟持する押圧面である。
【0033】
スリット33の幅は、ワイヤ11の直径よりも広い。ワイヤ11が挟持用保持部材32と挟持用保持部材32との間のスリット33を通過しており、ワイヤ11がたわみ、ワイヤ11がワーク集合体1の切断される方向に下がったとしてもワイヤ11と挟持用保持部材32とは接触することがない。これにより、ワイヤ11の挙動が変化し、ワーク集合体1への切断精度に影響が生じるおそれが低減されている。なお、本実施形態の挟持用保持部材32と挟持用保持部材32との間のスリット33が形成される間隔は、ワイヤピッチ(並行するワイヤとワイヤの幅)に合せるようにすれば良い。
【0034】
ワーク切断装置100は、挟持用基準板31に挟持用保持部材32を対向配置させる。挟持用保持部材32は、例えば縦長棒状に形成されたもので、挟持対象となるワーク集合体1を挟持用基準面31aに押圧接触させて弾性的かつ切断方向(上下方向)に摺動自在に挟持する。このため、挟持用保持部材32は、バネ等による押圧手段を有する。図4に示すように、ワーク切断装置100は、挟持用保持部材32をワーク集合体1側へ押圧する押圧手段70を有している。押圧手段70は、摺動部32Aに接続する軸71と、バネ又はゴム等の弾性体72と、軸受け73と、を有している。なお、押圧手段70は、上述した位置決め用保持部材22の押圧手段にも用いられている。挟持用基準板31及び挟持用保持部材32は、ワーク位置決め体20Aにより位置決めされ、かつワイヤ長手方向に位置するワーク集合体1の両端を挟持するワーク挟持体30Aとなる。ここで、挟持用保持部材32は、複数のブロック状ワーク2からなるワーク集合体1に対する押圧のばらつきをなくすために、ブロック状ワーク2の前後方向(ワイヤの並ぶ方向)の列毎にそれぞれ1つ以上設けられている。
【0035】
挟持用保持部材32は、各々複数の押圧手段70が設けられていることが好ましい。これにより、摺動部32Aを一様にワーク集合体1へ押圧するとともに摺動させることが可能となる。その結果、摺動部32Aは、ブロック状ワーク2へ適切な押圧力を加えることができる。
【0036】
また、挟持用基準板31及び挟持用保持部材32が、位置決め用基準板21及び位置決め用保持部材22と共にワーク集合体1を囲むガイド枠形状に一体化されワーク集合体1の収納部となる。
【0037】
押出プッシャ40は、ワーク集合体1の切断される方向(矢印方向U)に押し出す押出手段である。押出プッシャ40は、ワーク集合体1の上面全体を均等に押圧できる面積を有することが好ましい。押出プッシャ40の面積は、位置決め用基準板21と、位置決め用保持部材22と、挟持用基準板31と、挟持用保持部材32と、により囲まれる空間であるワーク集合体1の収納部の開口面積と等しいか、位置決め用基準板21、位置決め用保持部材22、挟持用基準板31、挟持用保持部材32に不接触な程度の面積である。
【0038】
次に、ワーク切断装置100の動作について説明する。図5は、ワーク切断装置の切断工程を説明するフローチャートである。図6及び図7は、ワーク切断装置の切断工程を説明する説明図である。図8は、ワーク切断工程でのワイヤの挙動を説明する説明図である。図9、図10は、ワーク切断装置の切断工程を説明する説明図である。図5のフローチャートに沿って、ワーク切断装置100の切断工程を説明する。
【0039】
ワーク切断装置100は、ワーク受け板80を準備する(ステップS1)。例えば、図7に示すように、ワーク受け板80は、挟持用基準板31と、挟持用保持部材32と、ワイヤ11の位置より下側(押出手段がワーク集合体1を押し出す方向側)にリフト機構等により設置される。図示されていないが、ワーク受け板80は、位置決め用基準板21及び位置決め用保持部材22のワーク集合体1が切断される方向側の端部の位置よりも下側(押出手段がワーク集合体1を押し出す方向側)に設置される。ワーク受け板80は、ワーク集合体1のワーク進行方向に対して垂直な面の面積より大きい。
【0040】
次に、ワーク切断装置100は、ワーク切断装置100のワーク収納部にワーク投入する(ステップS2)。ワーク集合体1は、複数のブロック状ワークの端面同士を押し当てて重ねた集合体として、ワーク収納部へ投入される。図6に示すようにワーク集合体1は、ブロック状ワーク2A〜2Lを含む。ワーク集合体1は、図1に示すように位置決め用基準板21と、位置決め用保持部材22との間、及び挟持用基準板31と、挟持用保持部材32との間に保持される。
【0041】
次に、ワーク切断装置100は、ワーク切断する(ステップS3)。図1に示すワーク切断装置100は、ガイドローラ12a、12bにより、複数のワイヤ11が往復運動する。ワーク切断装置100は、接着剤を用いることなく複数段のブロック状ワーク2を位置決め固定している。このため、複数段のブロック状ワーク2が個々に積み重なっているだけで、ブロック状ワークは押出プッシャ40により下方のワイヤ11に向けて押しだされ、切断される。図7に示す押出プッシャ40がワーク集合体1を押し出し、ブロック状ワーク2A〜2Lが押し出される。ここで、図7に示すように、挟持用保持部材32は、ブロック状ワーク2D、2G、2Jのいずれかと摺動する。挟持用保持部材32は、位置決め用基準板21、位置決め用保持部材22、挟持用基準板31と共に、押出プッシャ40がワーク集合体1を押し出す方向のガイドの役割を果たすことになる。
【0042】
本実施形態では、ブロック状ワーク2A〜2L含むワーク集合体1は接着されていないので、図7に示すように、切断が終わると、片状ワーク2aとなり1つずつ矢印Y方向落下し、ワーク受け板80上に移動する。ワイヤ11の状態によって、ワーク集合体1のうち、ワーク集合体1が切断される方向側の同じ段のブロック状ワーク2A、2B、2Cでも切断に時間差が生じることがある。例えば、図6に示すブロック状ワーク2Aが先ず切断され、図7に示す片状ワーク2aとなる。図7に示すワーク受け板80上に移動した片状ワーク2aは、挟持用保持部材32と片状ワーク2aの端面の一面が当接し、当接している距離はワーク集合体1が切断される方向の距離T1である。なお、図7では、ワーク受け板80上に移動した片状ワーク2aは、挟持用保持部材32と片状ワーク2aの端面の一面が当接した例を説明しているが、挟持用保持部材32の代わりに、位置決め用基準板21、位置決め用保持部材22、挟持用基準板31のいずれかと片状ワーク2aの端面の一面が当接することがある。また、片状ワーク2aは、ワーク切断部10により切断中のブロック状ワーク2Bと片状ワーク2aの端面の一面が当接し、当接している距離はワーク集合体1が切断される方向の距離T2である。ワーク集合体1が切断される方向に生じている空間距離T3は、ワーク切断部10により切断中のブロック状ワーク2B、2Cとワーク受け板80との距離である。空間距離T3は、ブロック状ワークの高さWTよりも小さい。また、片状ワーク2aがワーク受け板80上に移動することにより生じるワーク集合体1が切断される方向の空間高さT4もブロック状ワークの高さWTよりも小さい。空間高さT4は、片状ワーク2aの落下高さである。これにより、片状ワーク2aの落下高さは、ワーク受け板80により、ワーク集合体1に含まれるブロック状ワーク2A〜2Lの個々の高さ以下となるように規制される。
【0043】
空間高さT4は、例えばブロック状ワークの高さWTの1/3以上からブロック状ワークの高さWTの1/2以下である場合、片状ワーク2aは、ブロック状ワーク2Bの端面と接する面積が多くなる。これにより、落下する片状ワーク2aが切断中のブロック状ワーク2Bの姿勢へ影響するおそれがより低減される。
【0044】
図7に示すように片状ワーク2aは、矢印Y方向に落下し、挟持用保持部材32又はブロック状ワーク2Bの端面をガイドとして片状ワーク2aの自重でワーク受け板80上に移動する。片状ワーク2aは、ワーク受け板80上に移動する間に上下の端面はフリーとなるが、左右前後の端面は、位置決め用基準板21、位置決め用保持部材22、挟持用基準板31、挟持用保持部材32、片状ワーク2aが隣接するブロック状ワーク2Bの端面、切断された片状ワークのいずれか1つにより規制されている。つまり、切断工程では、ワーク切断部10のワイヤ11により切断された片状ワーク2aが落下高さ規制板80に載置された状態で、片状ワーク2aの端面のいずれかがブロック状ワーク2Aに隣接しているブロック状ワークの端面、例えばブロック状ワーク2Bの端面と接している状態を含むことになる。このため、落下する片状ワーク2aは姿勢が安定する。また、落下する片状ワーク2aが切断中のブロック状ワーク2Bの姿勢へ影響するおそれが低減される。その結果、落下する片状ワーク2a及び切断中のブロック状ワーク2B、2Cの姿勢によってワイヤ11に瞬間的な強いテンションが生じるおそれが低減される。ワイヤ11が一定のテンションでブロック状ワーク2B、2Cを切断するため、ブロック状ワーク2B、2Cの切断精度が向上する。
【0045】
例えば、図8に示すブロック状ワーク2Aは、切断工程において、ワイヤ11をたわませることがある。図8に示すように、ワイヤ11は、ブロック状ワーク2Aが矢印X方向へ押し出されることに伴い矢印Z方向へたわむことがある。本実施形態1のワーク切断装置100は、図8に示すように、挟持用基準板31が、ワークの切断される方向の端部にワイヤ11を貫通可能なスリット31bを有する。これにより、矢印Z方向へたわむワイヤ11は、挟持用基準板31自体に接触することがない。
【0046】
また、本実施形態1のワーク切断装置100は、図8に示すように、挟持用保持部材32と挟持用保持部材32との間に、ワイヤ11を通過可能なスリット33がある。これにより、矢印Z方向へたわむワイヤ11は、挟持用保持部材32自体に接触することがない。
【0047】
ワーク切断装置100は、押出プッシャ40がワーク集合体を押し出す所定押し出し量となる迄ワークを切断する(ステップS4、No;ステップS3)。ワーク切断装置100は、押出プッシャ40がワーク集合体を押し出す所定押し出し量となる場合(ステップS4、Yes)、1段分のブロック状ワーク2A、2B、2Cが片状ワーク2a、2b、2cとして切断される。図9では、1段分ブロック状ワーク2A、2B、2Cが片状ワーク2a、2b、2cとしてワーク受け板80に整列された状態で載置される状態を示している。
【0048】
次に、ワーク切断装置100は、ワーク搬出する(ステップS5)。ワーク受け板80は、図10に示すようにリフト機構等により押し下げられ、片状ワーク2a、2b、2cを取り出すことができる。ワーク切断装置100は、全ワーク切断完了していない場合(ステップS6、No)、ワーク受け板80を準備する(ステップS7)。そして、ワーク切断装置100では、ワーク切断が続けて行われる(ステップS3)。ワーク切断装置100は、全ワーク切断完了した場合(ステップS6、Yes)、切断の工程を終了する。
【0049】
上述したように本実施形態のワーク切断装置100は、複数のブロック状ワーク2の端面同士を押し当てて重ねたワーク集合体1を同時に複数の片状ワーク2a、2b、2cに切断する複数のワイヤ11を有するワーク切断部10と、ワーク切断部10のワイヤ11による切断面に平行でワイヤ11との位置関係が設定された位置決め用基準面21aを有する位置決め用基準板21と、位置決め用基準面21aにワーク11を押し当てる状態で位置決め用基準面21aに直交する方向にずれないようにワーク集合体1を位置決めする位置決め用保持部材22と、を有するワーク位置決め体と、位置決め用基準面21aに直交する挟持用基準面31aを有する挟持用基準板31と、挟持用基準板31に対向配置されてワークが切断される方向の端部にスリットを有する挟持用保持部材32を有し、ワイヤ長手方向に位置するワーク集合体1の両端を挟持するワーク挟持体と、ワーク集合体1を、位置固定されたワーク切断部10に対して切断方向Uに押し出す押出手段である押し出しプッシャ40と、を含み、挟持用基準板31はワークが切断される方向の端部にスリット31bを有し、ワイヤ11は、スリット31bを通過する。
【0050】
これにより、ワイヤがたわみ、ワイヤがワークの切断される方向に下がったとしても、ワイヤが挟持用基準板と接触することがない。その結果、ワイヤの挙動が変化し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。また、ワークが、単一部材の基準面(挟持用基準板)と挟持用保持部材との間を下降するので、ワークが安定し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。また、接着剤を用いていないため、多大な時間を要する接着工程や剥離工程が不要となり、切断工程全体の時間を大幅に短縮させることができる。
【0051】
本実施態様のワーク切断装置100では、挟持用基準板31は、ワークが切断される方向の端部にスリットを有し、端部が櫛歯状に形成されている。すなわち、櫛歯部31cの間にワイヤ11が貫通可能なスリット31bを有する。これにより、スリット31bの間隔を短くし、ワイヤ11を通すスリット31bとワイヤ11を通さないスリット31bを設けることができる。その結果、複数のワイヤ間隔を自在に選ぶことができる。また、ワイヤ間隔を短くする場合、1回に切断できる片状ワークの個数が増える。また、ワークが、単一部材の基準面(挟持用基準板の櫛歯)と挟持用保持部材との間を下降するので、ワークが安定し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。
【0052】
本実施態様のワーク切断装置100では、挟持用保持部材32が複数あり、挟持用保持部材32の間をワイヤ11が通過することが好ましい。これにより、ワイヤがたわみ、ワイヤが切断方向に下がったとしても、挟持用保持部材の間をワイヤが通過するため、ワイヤが挟持用保持部材と接触することがない。その結果、ワイヤの挙動が変化し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。また、ワークが、単一部材の基準面(挟持用基準板)と挟持用保持部材との間を下降するので、ワークが安定し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。
【0053】
本実施態様のワーク切断方法では、複数のブロック状ワーク2の端面同士を押し当てて重ねたワーク集合体1を準備し、ワーク集合体1をワーク切断装置100に投入するワーク投入工程(ステップS2)と、ワーク集合体1を同時に複数の片状ワークに切断する複数のワイヤ11を有するワーク切断部10に対して、ワーク切断装置100の挟持用基準板31及び挟持用保持部材32がワーク集合体1を保持し、ワーク集合体が切断される方向に押し出す切断工程(ステップS3)と、を含み、ワークが切断される方向の端部で挟持用基準板31のスリット31bを貫通するワイヤがブロック状ワーク2を切断する。
【0054】
これにより、ワイヤがたわみ、ワイヤがワーク集合体1を切断する方向に下がったとしても、ワイヤが挟持用基準板と接触することがない。その結果、ワイヤの挙動が変化し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。また、ワークが、単一部材の基準面(挟持用基準板)と挟持用保持部材との間を下降するので、ワークが安定し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。また、接着剤を用いていないため、多大な時間を要する接着工程や剥離工程が不要となり、切断工程全体の時間を大幅に短縮させることができる。
【0055】
(実施形態2)
図11は、実施形態2に係る挟持用保持部材の概略図である。本実施形態に係る挟持用保持部材32は、ワークが切断される方向の端部が櫛歯状となっており、櫛歯部の間に複数のスリット(第2のスリット)が形成されていることに特徴がある。次の説明においては、実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0056】
本実施形態の挟持用保持部材32は、ワーク集合体1側の面からみると図11に示すように挟持用保持部材35、挟持用保持部材36、挟持用保持部材37と、を含んでいる。図11に示すように、複数の挟持用保持部材35、挟持用保持部材36、挟持用保持部材37は、それぞれ、実施形態1の挟持用保持部材と異なり、幅広となっておりワイヤ間隔ごとに切断方向(上下方向)に分割されていない一体の部材である。また、挟持用保持部材35と挟持用保持部材36との間の空間Sにワイヤ11が通過している。また、挟持用保持部材36と挟持用保持部材37との間の空間Sにワイヤ11が通過している。複数の挟持用保持部材35、挟持用保持部材36、挟持用保持部材37は、実施形態1の挟持用保持部材と同じように、摺動部35A、36A、37Aと、テーパ部35B、36B、37Bとを含んでいる。
【0057】
挟持用保持部材35、挟持用保持部材36、挟持用保持部材37は、ワーク集合体1が切断される方向(矢印U方向)の端部に複数の櫛歯部35D、36D、37Dを有している。また、櫛歯部35D、36D、37Dの各々の間に複数のスリット35C、36C、37Cが形成されている。
【0058】
空間Sの幅は、ワイヤ11の直径よりも広い。ワイヤ11は、挟持用保持部材35と挟持用保持部材36との間、又は挟持用保持部材36と挟持用保持部材37との間の空間Sを通過しており、ワイヤ11がたわみ、ワイヤ11が切断方向に下がったとしてもワイヤ11と挟持用保持部材35、36、37とは接触することがない。これにより、ワイヤ11の挙動が変化し、ワーク集合体1への切断精度に影響が生じるおそれが低減されている。また、ワークが、単一部材の基準面(挟持用基準板)と挟持用保持部材との間を下降するので、ワークが安定し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。
【0059】
空間Sを設けることにより、ブロック状ワーク2が複数の挟持用保持部材35、36、37で保持される。これにより、ブロック状ワーク2への圧力が均等となる。なお、挟持用保持部材35、36、37を1枚の板材としてもよい。この場合、空間Sはなくなり、空間Sが存在する部分は、櫛歯部の間のスリットとなる。
【0060】
スリット35C、36C、37Cは、各々平行で集合体1が切断される方向(矢印U方向)に延びて形成されている。スリット35C、36C、37Cの幅は、ワイヤ11の直径よりも広い。櫛歯部35D、36D、37Dの集合体1が切断される方向(矢印U方向)における各々の長さは、ワイヤ11の直径よりも長い。また、ワイヤ11は、挟持用保持部材35、36、37のスリット35C、36C、37Cを貫通している。これにより、ワイヤ11がたわみ、ワイヤ11が切断方向に下がったとしても、スリット35C、36C、37Cは、集合体1が切断される方向(矢印U方向)に延在して形成されているため、ワイヤ11が挟持用保持部材35、36、37を含む挟持用基準板32と接触することがない。これにより、ワイヤ11の挙動が変化し、ワーク集合体1への切断精度に影響が生じるおそれが低減されている。また、ワークが、単一部材の基準面(挟持用基準板)と挟持用保持部材との間を下降するので、ワークが安定し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。
【0061】
図12は、実施形態2に係る挟持用保持部材と切断工程との関係を説明する説明図である。図12に示す挟持用保持部材35を代表して説明する。図12は、挟持用保持部材35によりブロック状ワーク2が保持されており、ブロック状ワーク2が上述した押出手段である押し出しプッシャ40により集合体1が切断される方向(矢印U方向)に移動する。切断により、ワイヤ11が切断方向に下がったとしてもワイヤ11と挟持用保持部材35とは接触することはない。ブロック状ワーク2は、ワイヤ11により切断されて片状ワーク2Qとなる。片状ワーク2Qの切断幅QTは、ワイヤ11の間隔となる。例えば10mm以下とすることができる。挟持用保持部材35が櫛歯部35Dの幅を狭くすると、スリット35C同士の間隔を狭くすることができる。これにより、片状ワーク2Qの切断幅QTが小さくなる。
【0062】
上述したように本実施形態のワーク切断装置100では、挟持用保持部材35は、切断方向Uの端部が櫛歯状となっており、櫛歯部35Dの間にワイヤ11が貫通可能な切断方向に長いスリット35Cを有する。これにより、スリットの間隔を短くし、ワイヤを通すスリット31bとワイヤを通さないスリット31bを設けることができる。その結果、複数のワイヤ間隔を自在に選ぶことができる。また、ワイヤ間隔を短くする場合、1回に切断できる片状ワークの個数が増える。
【0063】
また、本実施形態のワーク切断方法は、ワイヤ11が挟持用保持部材35と挟持用保持部材36の間の空間S又は集合体1が切断される方向(矢印U方向)の挟持用保持部材35の端部に有するスリット35Cを通過する。これにより、ワイヤがたわみ、ワイヤが切断方向に下がったとしても、挟持用保持部材の間をワイヤが通過するため、ワイヤが挟持用保持部材と接触することがない。その結果、ワイヤの挙動が変化し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。また、ワークが、単一部材の基準面(挟持用基準板)と挟持用保持部材との間を下降するので、ワークが安定し、ワークへの切断精度に影響が生じるおそれを低減できる。
【0064】
(変形例)
図13は、ワーク切断装置の具体的な構成を示す斜視図である。上述した実施形態1、実施形態2のワーク切断装置100において、位置決め用基準板21、挟持用基準板31は、片面を位置決め用基準面21a、挟持用基準面31aとしている。図14は、変形例に係るワーク切断装置の具体的な構成を示す斜視図である。図14のワーク切断装置101では、位置決め用基準板21、挟持用基準板31は、両面を位置決め用基準面21a、挟持用基準面31aとしている。例えば、十字形状の仕切板90を設け、この仕切板90を位置決め用基準板21、挟持用基準板31として利用し、4箇所分のワーク収納部を設けることで、ワーク集合体1の収納量を増やすことができる。押出プッシャ40は、ワーク収納部毎の押出部40a〜40dを有する。図15は、ワーク集合体1の変形例を示す概略図である。ワーク集合体1としては、ブロック状ワークが直方体形状のものに限らず、例えば図15に示すような瓦状ワーク300を多段に積み重ねたものであってもよい。切断されてできる片状ワークに要求される厚みの整数倍の長さに形成されてその両端の端面が垂直状態で平行な形状のものであれば、同様に適用できる。なお、上述した実施形態1、実施形態2の挟持用保持部材32は組み合わせて使用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 ワーク集合体
2、2A〜2L ブロック状ワーク
2a、2b、2c、2Q 片状ワーク
10 ワーク切断部
11 ワイヤ
21 位置決め用基準板
21a 位置決め用基準面
22 位置決め用保持部材
31 位置決め用基準板
31a 位置決め用基準面
31b スリット
31c 櫛歯部
32、35、36、37 挟持用保持部材
33 スリット
35C、36C、37C スリット
35D、36D、37D 櫛歯部
40 押出プッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロック状ワークの端面同士を押し当てて重ねた集合体であるワークを同時に複数の片状ワークに切断する複数のワイヤを有するワーク切断部と、
前記ワーク切断部の前記ワイヤによる切断面に平行で前記ワイヤとの位置関係が設定された位置決め用基準面を有する位置決め用基準板と、前記位置決め用基準面に前記ワークを押し当てる状態で前記位置決め用基準面に直交する方向にずれないように前記ワークを位置決めする位置決め用保持部材と、を有するワーク位置決め体と、
前記位置決め用基準面に直交する挟持用基準面を有する挟持用基準板と、前記挟持用基準板に対向配置されて前記ワークが切断される方向の端部にスリットを有する挟持用保持部材を有し、ワイヤ長手方向に位置する前記ワークの両端を挟持するワーク挟持体と、
前記ワークを、位置固定された前記ワーク切断部に対して前記切断方向に押し出す押出手段と、を含み、
前記ワイヤが前記スリットを通過することを特徴とするワーク切断装置。
【請求項2】
前記挟持用基準板は、前記ワークが切断される方向の前記挟持用基準板の端部が櫛歯状に形成されている請求項1に記載のワーク切断装置。
【請求項3】
前記ワーク挟持体は、前記挟持用保持部材を複数有し、隣接する前記挟持用保持部材の間を前記ワイヤが通過する請求項1又は2に記載のワーク切断装置。
【請求項4】
前記挟持用保持部材は、前記ワークが切断される方向の端部に第2のスリットを有し、前記ワイヤが前記第2のスリットを通過する請求項1から3のいずれか1つに記載のワーク切断装置。
【請求項5】
複数のブロック状ワークの端面同士を押し当てて重ねた集合体としてワークを準備し、前記ワークをワーク切断装置に投入するワーク投入工程と、
前記ワークを同時に複数の片状ワークに切断する複数のワイヤを有するワーク切断部に対して、ワーク切断装置の挟持用基準板及び挟持用保持部材が前記ワークを保持し、前記かつ押し出す切断工程と、を含み、
前記挟持用基準板の前記ワークが切断される方向の端部でスリットを貫通する前記ワイヤが前記ブロック状ワークを切断することを特徴とするワーク切断方法。
【請求項6】
前記ワイヤは、前記挟持用保持部材の間、又は前記ワークが切断される方向の前記挟持用保持部材の端部に有する第2のスリットを通過する請求項5に記載のワーク切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−139781(P2012−139781A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294188(P2010−294188)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】